JP2005300983A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ベルト部材を用いた定着装置における潤滑剤の漏洩を抑える。
【解決手段】 用紙Pに担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動可能な定着ロール61と、外周面を定着ロール61に接触しながら移動可能であって、内周面に潤滑剤が塗布されたエンドレスベルト62と、エンドレスベルト62の内周面を押圧するように配置され、エンドレスベルト62を定着ロール61に圧接させる圧力パッド64と、エンドレスベルト62の内周面から漏洩する潤滑剤を拭き取る潤滑剤拭き取り部材85とを備えている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、定着装置等に関し、より詳しくは例えば電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置等に関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)を一様に帯電し、この感光体ドラムを画像情報に基づいて制御された光で露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像をトナーによって可視像(トナー像)とし、このトナー像を感光体ドラム上から記録紙に転写した後、定着装置によってこのトナー像を記録紙に定着している。
かかる画像形成装置に用いられる定着装置は、図10に示したように、円筒状の芯金111の内部に加熱源114を備え、その芯金111に耐熱性弾性体層112と、その外周面に離型層113とが積層して形成された定着ロール110と、この定着ロール110に対して圧接配置され、芯金121に耐熱性弾性体層122と、その外周面に耐熱性樹脂被膜あるいは耐熱性ゴム被膜による離型層123とが積層して形成された加圧ロール120とで構成されている。そして、定着ロール110と加圧ロール120との間に、未定着トナー像を担持した記録紙を通過させて、未定着トナー像に対して加熱と加圧とを行うことによって、記録紙にトナー像を定着している。このような定着装置は、ロールニップ方式と呼ばれて、一般に広く利用されている。
ところで、加熱ロール方式の定着装置において高速化を図ろうとする場合には、トナーと記録紙に充分な熱量が供給できるように、ニップ幅を定着速度に比例して広くすることが必要となる。ニップ幅を広くする方法として、定着ロールと加圧ロールとの間の荷重を大きくする方法や、弾性体層の厚さを厚くする方法、さらにはロール径を大きくする方法がある。
しかし、荷重を大きくする方法や、弾性体層の厚さを厚くする方法では、ロールの撓みに起因するニップ幅の形状がロール軸に沿って不均一になることから、定着むらや紙しわが生じる等といった画像品質上の問題が発生する。また、ロール径を大きくする方法では、装置の大型化を招くとともに、ロールを室温から定着可能温度に上昇させるまでの時間(ウォームアップタイム)が長くなるという問題がある。
そこで、これらの問題を解消して、画像形成装置の高速化に対応した定着装置を実現するべく、本出願人は、表面が弾性変形する回転可能な定着ロールと、この定着ロールに接触したまま走行可能なエンドレスベルトと、このエンドレスベルトの内側に非回転状態で配置された圧力パッドとを具備し、圧力パッドによって、定着ロールとの接触面が形成されるようにエンドレスベルトを定着ロールに圧接させ、エンドレスベルトと定着ロールとの間にシートを通過させることができるようにベルトニップを設けるとともに、定着ロールの表面のうち、シートの出口側を局部的に弾性変形させるように構成した定着装置に関する技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。
かかる特許文献1に記載した定着装置(「ベルトニップ方式」という。)では、従来のロールニップ方式の定着装置における加圧ロールに代え、圧力パッドを用いてエンドレスベルトを定着ロールに圧接させている。このような構成を採用することにより、定着ロールとエンドレスベルトとによって形成されるベルトニップの幅が従来の定着ロールと加圧ロールとのロールニップの幅よりも容易に大きくすることができるとともに、ニップ部において均一で高いニップ圧を付与することができるので、高速化への対応が可能となり、しかも装置の小型化を図ることも容易である。
さらには、定着ロールに圧接させるエンドレスベルトの熱容量は小さく、加えて圧力パッドが非回転状態で配置されていることから、定着ロールから伝わる熱が外部に発散され難い構成を実現している。そのため、定着ロールの回転が開始されても、定着ロールからエンドレスベルト側に奪われる熱量は少なく、トナーの溶融に際しての熱効率を高めることができるとともに、ベルトニップでの温度低下量も小さいことから、トナーの定着性の向上を図ることができるという利点も有している。
特許第3298354号公報(第4-7頁)
ところで、上記した特許文献1に記載したようなベルトニップ方式の定着装置では、ニップ部においてワイドニップを形成するとともに、均一で高いニップ圧を付与することができるが、圧力部材(圧力パッド)によりエンドレスベルトを定着ロールに圧接させる構成を採用していることから、圧力部材とエンドレスベルトとの間には摺動摩擦が発生する。そのため、圧力部材とエンドレスベルトとの摺擦面に直接潤滑剤を塗布するか、または圧力部材上に低摩擦部材を配置しておき、この低摩擦部材とエンドレスベルトとの摺擦面に潤滑剤を塗布することで、圧力部材とエンドレスベルトとの摺動性(滑り性)の向上を図っている。
そして、この圧力部材とエンドレスベルトとの摺擦面に潤滑剤を供給するに際しては、エンドレスベルトの内周面に接触するように潤滑剤供給部材を配置して、潤滑剤供給部材からエンドレスベルトの内周面に潤滑剤を塗布し、エンドレスベルトの回動に伴って摺動部まで潤滑剤を搬送する方法が採用されている。
しかしながら、例えば圧力部材上に低摩擦部材を配置した構成においては、圧力部材とエンドレスベルトとの間は加圧されているために、エンドレスベルトと低摩擦部材との摺動部に供給された潤滑剤に対して、摺動部から押し出すような力が作用することとなるため、摺動部の両端部から潤滑剤の漏洩が生じ易い。
また、圧力部材とエンドレスベルトとの間は加圧されていることから、エンドレスベルトの内周面に塗布された潤滑剤の一部がエンドレスベルトと低摩擦部材との間の摺動部に入り込むことができずに摺動部入口領域で滞留し、エンドレスベルトが回動を重ねるのに伴って、この滞留した潤滑剤が摺動部入口領域において両端部側に拡がり、外部に漏洩する場合もある。
このようにして摺動部から潤滑剤が漏洩すると、漏洩した潤滑剤がエンドレスベルトの外周面側に回り込んで、搬送されてきた記録紙を汚損する可能性があった。
そこで本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ベルト部材を用いた定着装置における潤滑剤の漏洩を抑えることにある。
かかる目的のもと、本発明の定着装置は、記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、回動可能な回動部材と、外周面を回動部材に接触しながら移動可能であって、内周面に潤滑剤が塗布されたベルト部材と、ベルト部材の内周面を押圧するように配置され、ベルト部材を回動部材に圧接させる圧力部材と、ベルト部材の内周面から漏洩する潤滑剤を拭き取る潤滑剤拭き取り部材とを備えたことを特徴としている。
ここで、潤滑剤拭き取り部材は、圧力部材の長手方向に亘る領域の外側において、ベルト部材の内周面に接触して配置された構成とすることができる。また、圧力部材とベルト部材との間に、圧力部材とベルト部材との摺動抵抗を低減する低摩擦部材をさらに備え、潤滑剤拭き取り部材は、低摩擦部材の幅方向に亘る領域の外側において、ベルト部材の内周面に接触して配置された構成とすることもできる。その場合に、潤滑剤拭き取り部材は、圧力部材に配設されたことを特徴とすることもできる。
また、潤滑剤拭き取り部材は、ベルト部材の外周面における非通紙領域に接触して配置された構成とすることができる。さらに、潤滑剤拭き取り部材は、ベルト部材の端部エッジ面に接触して配置された構成とすることもできる。
さらにまた、ベルト部材の幅方向の移動を制限するベルトガイド部材をさらに備え、潤滑剤拭き取り部材は、このベルトガイド部材に配設されたことを特徴とすることもできる。
また、潤滑剤拭き取り部材は、フッ素樹脂からなる不織布または多孔質のフッ素樹脂からなる潤滑剤吸収材を備えたことを特徴とすることもできる。さらに、回動部材を加熱する加熱部材、またはベルト部材を加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とすることもできる。
また、本発明を画像形成装置として捉え、本発明の画像形成装置は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、記録材上に転写されたトナー像を記録材に定着する定着手段とを含み、定着手段は、回動可能な回動部材と、回動部材に接触しながら移動可能なベルト部材と、ベルト部材の内周面を押圧するように配置され、ベルト部材を回動部材に圧接させる圧力部材と、ベルト部材と圧力部材との摺動部に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材と、ベルト部材の内周面から漏洩する潤滑剤を拭き取る潤滑剤拭き取り部材とを備えたことを特徴としている。
本発明の効果として、ベルト部材を用いた定着装置における潤滑剤の漏洩を抑えることにより、記録紙の汚損を抑制して高品質な画像を提供することが可能となった。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回動させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定されている。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。
一方、二次転写ロール22は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
さらに、本実施の形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図1に示すような画像形成装置では、図示しない画像読取装置(IIT)や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置(IPS)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが当接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
次に、本実施の形態の画像形成装置に用いられる定着装置60について説明する。図2は本実施の形態の定着装置60の構成を示す側断面図である。定着装置60は、回動部材の一例としての定着ロール61、ベルト部材の一例としてのエンドレスベルト62、およびエンドレスベルト62を介して定着ロール61から押圧される圧力部材の一例としての圧力パッド64により主要部が構成されている。
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612、および離型層613を積層して構成された円筒状ロールであり、回転自在に支持されている。
定着ロール61の内部には、発熱源としてのハロゲンヒータ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンヒータ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、150℃)を維持するように調整している。
エンドレスベルト62は、継ぎ目がない無端状のベルトであり、エンドレスベルト62の内部に配置された圧力パッド64とベルトガイド部材63、さらにはエンドレスベルト62の両端部に配置されたエッジガイド部材80(後段の図3参照)によって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されるように配置されている。
ここで、図3はエンドレスベルト62が支持される構成を説明する断面構成図であり、用紙Pの搬送方向下流側から見た定着装置60の一方の端部領域を示している。
図3に示したように、エンドレスベルト62の内部に配置されたホルダ65の両端部にエッジガイド部材80が固設されている。エッジガイド部材80は、ニップ部Nとその近傍に対応する部分に切り欠きが形成された円筒状、すなわち断面がC形状のベルト走行ガイド部801、このベルト走行ガイド部801の外側に設けられ、エンドレスベルト62の外径よりも大きな外径で形成されたフランジ部802、さらにフランジ部802の外側に設けられ、エッジガイド部材80を定着装置60本体に位置決めして固定するための保持部803で構成されている。
そして、エンドレスベルト62の両端部では、ニップ部Nとその近傍を除いて、両端部の内周面がベルト走行ガイド部801の外周面に支持され、エンドレスベルト62はベルト走行ガイド部801の外周面に沿って回動する。したがって、ベルト走行ガイド部801は、エンドレスベルト62がスムーズに回動することができるように摩擦係数の小さな材質で形成され、さらには、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成されている。
また、フランジ部802は、ホルダ65の両端部において対向するように配置された両フランジ部802の内側面が、エンドレスベルト62の幅と略一致する間隔を持つように配置されている。そして、エンドレスベルト62が回動する際には、エンドレスベルト62の端部がフランジ部802の内側面に当接することによって、エンドレスベルト62の幅方向への移動(ベルトウォーク)が制限されている。このように、エンドレスベルト62は、エッジガイド部材80によって片寄りが規制されるように支持されている。
また、エンドレスベルト62の両端部を除く長手方向の領域では、エンドレスベルト62は圧力パッド64とベルトガイド部材63とに支持されている(図2も参照)。そして、エンドレスベルト62の両端部を除く領域では、エンドレスベルト62の内周面が圧力パッド64とベルトガイド部材63とに摺擦しながら回動する。
ベルトガイド部材63は、エンドレスベルト62の内部に配置されたホルダ65に取り付けられ、エンドレスベルト62がスムーズに回動することができるように、摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率の低い材質で形成するのが好ましい。
次に、圧力パッド64は、エンドレスベルト62の内側において、エンドレスベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。圧力パッド64は、幅の広いニップ部Nを確保するためのプレニップ部材64aをニップ部Nの入口側(上流側)に配置している。また、定着ロール61表面を局所的に押圧することで、トナー像表面を平滑化して画像光沢を付与するとともに、定着ロール61表面に歪み(凹み)を与えて用紙Pにダウンカールを形成するための剥離ニップ部材64bをニップ部Nの出口側(下流側)に配置している。さらに、圧力パッド64には、エンドレスベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、エンドレスベルト62と接する面に低摩擦シート68が設けられている。
なお、かかる圧力パッド64と低摩擦シート68とは、金属製のホルダ65に支持されている。
そして定着ロール61は、図示しない駆動モータに連結されて矢印C方向に回転し、この回転に従動してエンドレスベルト62も定着ロール61と同じ方向に回動する。図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって導かれて、ニップ部Nに搬送される。そして、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、用紙P上のトナー像はニップ部Nに作用する圧力と、定着ロール61から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置60では、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹形状のプレニップ部材64aによりニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
なお、ニップ部Nの下流側近傍には、剥離ニップ部材64bによって定着ロール61から剥離された用紙Pを完全に定着ロール61から分離し、画像形成装置の排出部へ向かう排紙通路に誘導するための剥離補助部材70が配設されている。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている。
次に、定着装置60を構成する各部材について詳細に述べる。まず定着ロール61では、コア(基材)611は、鉄、アルミニウム、SUS等の熱伝導率の高い金属で形成された外径25mm、長さ350mmの円筒体で構成されている。
耐熱性弾性体層612は、耐熱性の高い弾性体で構成され、特に、硬度が15〜45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましい。具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。
離型層613には、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂が用いられるが、トナーに対する離型性や耐摩耗性の観点から、フッ素樹脂が適している。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が使用できる。離型層613の厚みは、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmに構成している。
エンドレスベルト62は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じないように、原形が直径30mmの円筒形状に形成された継ぎ目がない無端ベルトであり、ベース層と、このベース層の定着ロール61側の面または両面に被覆された離型層とから構成されている。ベース層は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のポリマーにより形成され、その厚みは、30〜200μm、好ましくは50〜125μm、より好ましくは75〜100μm程度である。ベース層の表面に被覆される離型層としては、フッ素樹脂、例えばPFA、PTFE、FEPで形成され、その厚みは5〜100μm、好ましくは10〜30μm程度である。
エンドレスベルト62の内部に配置された圧力パッド64は、上述したように、プレニップ部材64a、剥離ニップ部材64bで構成され、バネや弾性体によって定着ロール61を付勢するようにホルダ65に支持されている。プレニップ部材64aには、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体や板バネ等を用いることができ、定着ロール61側の面は、ほぼ定着ロール61の外周面に倣う凹状曲面で形成されている。
剥離ニップ部材64bは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。
低摩擦シート68は、エンドレスベルト62内周面と圧力パッド64との摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減するために圧力パッド64のエンドレスベルト62内周面側に設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が適している。具体的には、シンタード成型したPTFE樹脂シート、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、またガラス繊維にフッ素樹脂からなるスカイブフィルムシートを加熱融着サンドした積層シート、FEPフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることができる。
なお、低摩擦シート68は、表面に孔がなく浸潤性、透過性のない材質で形成されることが望ましい。低摩擦シート68を表面に孔がなく浸潤性、透過性のない材質で形成することで、潤滑剤が低摩擦シート68に滲み込むことを抑制できるので、摺動部において潤滑剤が失われず、潤滑剤の安定的な維持を可能とする。また、潤滑剤がプレニップ部材64aに滲み込んで膨潤し、ニップ圧が低下することを防ぐこともできる。
ここで、低摩擦シート68は、圧力パッド64のエンドレスベルト62内周面側に配置される構成であれば、低摩擦シート68を圧力パッド64と別体に構成しても、圧力パッド64と一体的に構成しても、いずれでもよい。
また、ホルダ65に配設されたベルトガイド部材63は、上述したように、エンドレスベルト62の内周面と摺擦するため、摩擦係数が低く、かつ、エンドレスベルト62から熱を奪い難いように熱伝導率が低い材質が適しており、PFAやPPS等の耐熱性樹脂が用いられる。
さらに、ホルダ65には、定着装置60の長手方向に亘って潤滑剤供給部材67が配設されている。潤滑剤供給部材67は、エンドレスベルト62内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。また、エンドレスベルト62の内周面や低摩擦シート68表面の摩耗を防止する効果も有している。
なお、潤滑剤としては、定着温度環境下での長期使用に対する耐久性を有し、かつ、エンドレスベルト62内周面との濡れ性を維持できるものが適している。例えば、シリコーンオイルやフッ素オイル等の液体状のオイルや、固形物質と液体とを混合させたグリース等、さらにはこれらを組み合わせたものを用いることができる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等が挙げられるが、摺動抵抗を低減させる効果や取り扱い性の観点から、アミノ変性シリコーンオイルが好適である。
続いて、本実施の形態の定着装置60に配設された潤滑剤拭き取り部材85について説明する。図4は、本実施の形態の定着装置60の構造を説明する一方の端部部分の斜視図である。図4に示したように、本実施の形態の定着装置60では、エンドレスベルト62の内部であって、圧力パッド64が配置された長手方向に亘る領域よりも両端部側(外側)において、エンドレスベルト62内周面に接触するように潤滑剤拭き取り部材85が配設されている。
潤滑剤拭き取り部材85は、アミノ変性シリコーンオイル等の潤滑剤を吸収して保持できる潤滑剤吸収材によって主要部が構成されている。そして、潤滑剤拭き取り部材85は、圧力パッド64上に配置された低摩擦シート68とエンドレスベルト62との摺動部の両端部から漏れ出て、エンドレスベルト62の内周面に付着した潤滑剤を、潤滑剤吸収材によって拭き取って内部に保持するように機能する。
ここで、低摩擦シート68とエンドレスベルト62との摺動部両端からエンドレスベルト62の外周面への潤滑剤の漏洩について述べる。本実施の形態の定着装置60では、上述したように、潤滑剤供給部材67がエンドレスベルト62内周面に接触するように配置され、エンドレスベルト62内周面に対してアミノ変性シリコーンオイル等の潤滑剤を常時塗布している。潤滑剤供給部材67によって潤滑剤が塗布されたエンドレスベルト62は、回動してニップ部Nに搬送され、エンドレスベルト62内周面に塗布された潤滑剤の大部分は、圧力パッド64上の低摩擦シート68とエンドレスベルト62との摺動部内に供給される。
ところが、圧力パッド64とエンドレスベルト62との間には押圧力が作用しているため、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との間の摺動部に入り込むことができない潤滑剤も存在する。そのため、この摺動部に入り込めない潤滑剤が摺動部の入口領域に徐々に滞留して、この滞留した潤滑剤が摺動部入口領域において両端部側に次第に移動していき、低摩擦シート68の両端部からエンドレスベルト62の内周面を経て、エンドレスベルト62の外周面に潤滑剤が漏洩する場合がある。
また、低摩擦シート68とエンドレスベルト62との摺動部内に供給された潤滑剤においても、圧力パッド64とエンドレスベルト62との間の押圧力によって外側に押し出される力が働くことから、摺動部の内部においても両端部側に移動する潤滑剤が存在する。そのため、低摩擦シート68の両端部からエンドレスベルト62の内周面へ潤滑剤が漏れ出て、同様にエンドレスベルト62の外周面に漏洩することもある。
なお、エンドレスベルト62内周面に塗布する潤滑剤量については、潤滑剤供給部材67によって摺動部入口領域で滞留が生じないように所定の量に制御することも可能である。しかし、摺動部入口領域に全く滞留を生じないように塗布量を制御するとすれば、例えば画像形成装置の立ち上げ時等において潤滑剤の粘度が低いために塗布量が低下した場合には、低摩擦シート68とエンドレスベルト62との摺動部への供給量が不足することもあり得る。そのため、エンドレスベルト62の円滑な回動を確保する観点からは、潤滑剤供給部材67においては、摺動部入口領域で多少の滞留が生じる程度に塗布量を設定するのが適切である。
そこで、本実施の形態の定着装置60では、エンドレスベルト62の内部であって、圧力パッド64が配置された長手方向に亘る領域よりも両端部側(外側)におけるエンドレスベルト62内周面、すなわち本実施の形態の定着装置60のように圧力パッド64上に低摩擦シート68が設置された構成においては、低摩擦シート68の端部よりも外側(低摩擦シート68の幅方向に亘る領域の外側)の領域のエンドレスベルト62内周面と接触するように、潤滑剤拭き取り部材85を配設している。図5は、潤滑剤拭き取り部材85が配置される領域を説明する図である。図5に示したように、エンドレスベルト62の内周面においては、低摩擦シート68の端部から両側部側(外側)に潤滑剤が漏洩し、潤滑剤の漏洩範囲はエンドレスベルト62の両端部側に拡大していく。そのため、低摩擦シート68の端部よりも外側の領域(低摩擦シート68の幅方向に亘る領域を含んでもよい)に潤滑剤拭き取り部材85を配置することで、エンドレスベルト62の内周面に漏洩した殆どの潤滑剤を拭き取ることができる。
このように、本実施の形態の定着装置60では、低摩擦シート68の端部よりも外側の領域のエンドレスベルト62の内周面に接触するように、潤滑剤拭き取り部材85を設けることによって、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との間の摺動部入口領域に滞留した潤滑剤や、ニップ部Nの内部から押し出された潤滑剤が、低摩擦シート68の端部からエンドレスベルト62の内周面へ漏れ出た際に、この潤滑剤を潤滑剤拭き取り部材85によって吸収することで、潤滑剤のエンドレスベルト62の外周面への漏洩を抑制することができる。
潤滑剤拭き取り部材85を配置するエンドレスベルト62の内周面における位置としては、上述したように、低摩擦シート68の端部よりも外側の領域を含む領域であれば、エンドレスベルト62の回動経路上のいずれに配置してもよいが、低摩擦シート68の端部から両側部側(外側)に潤滑剤が漏洩するため、漏洩源である低摩擦シート68の端部、またはその下流側近傍に潤滑剤拭き取り部材85を配置するのが好適であり、潤滑剤拭き取り部材85は低摩擦シート68の端部に接触させて配置してもよい。また、その場合には、潤滑剤拭き取り部材85は、圧力パッド64に配設する構成や、エッジガイド部材80に配設する構成を採ることもできる。
なお、低摩擦シート68を配設しない場合や、低摩擦シート68を圧力パッド64と一体的に構成した場合には、圧力パッド64の端部から両側部側(外側)に潤滑剤が漏洩することとなるため、圧力パッド64の端部よりも外側の領域を含む領域に潤滑剤拭き取り部材85を配置する。その際には、漏洩源である圧力パッド64の端部、またはその下流側近傍に潤滑剤拭き取り部材85を配置するのが好適である。
また、潤滑剤拭き取り部材85を構成する潤滑剤吸収材としては、例えばフェルト(不織布)、摩擦係数が低く形成されているPTFE不織布からなるゴアテックス(登録商標)メンブレン、さらにはフッ素樹脂を多孔質に形成したもの等を用いることができる。ここで、多孔質に形成されたフッ素樹脂としては、PTFE樹脂等のフッ素樹脂を一軸或いは二軸方向に延伸成型して多孔質化したもの、または焼結成型して多孔質化したものを用いることができる。また、この場合の形態としては、フィルム形状のものを積層して構成したもの、織布形状のもの、フィルムと織布とを貼り合せた形状のもの等を適宜選定することができる。
なお、潤滑剤拭き取り部材85において、潤滑剤吸収材としてフェルトのような軟らかい材質のものを使用する場合には、潤滑剤吸収材の変形を抑制するため潤滑剤拭き取り部材85のエンドレスベルト62回動方向下流側に背板を設け、潤滑剤吸収材を補強するように構成するのが好ましい。
次に、潤滑剤拭き取り部材85の配設位置として、潤滑剤拭き取り部材85は、エンドレスベルト62の外部において、エンドレスベルト62の外周面に接触するように配設することもできる。その場合に、エンドレスベルト62の外周面の非通紙領域においてエンドレスベルト62と接触するように潤滑剤拭き取り部材85を配設することで、低摩擦シート68の端部から漏洩してエンドレスベルト62の外表面に回り込んだ潤滑剤を拭き取り、エンドレスベルト62の通紙領域に潤滑剤が拡がることを抑えることが可能である。
ここで、図6は、潤滑剤拭き取り部材85をエンドレスベルト62の外周面に接触するように配設した構成を説明する図であり、定着装置60の一方の端部領域を下流側から示している。図6に示したように、潤滑剤拭き取り部材85は、ニップ部Nの下流側近傍であって、長手方向両端部の非通紙領域において、エッジガイド部材80のフランジ部802に固定されている。そして、潤滑剤拭き取り部材85のエンドレスベルト62を介したエンドレスベルト62の内周面側には、ベルト走行ガイド部801が位置している。すなわち、図7(エッジガイド部材80の内側面側を示した平面図)に示すように、潤滑剤拭き取り部材85はベルト走行ガイド部801によってバックアップされてエンドレスベルト62の外周面に接触するので、エンドレスベルト62の外周面に対して適度な押圧をしながら、この外周面上に漏れ出た潤滑剤を効果的に拭き取ることができる。
この場合、潤滑剤拭き取り部材85を非通紙領域に配置するのは、通紙領域まで含んだ領域に配置すると、潤滑剤拭き取り部材85によって拭き取られた潤滑剤が、再度エンドレスベルト62に塗布されて、通紙領域を通過する用紙Pを汚損する恐れがあるからである。したがって、潤滑剤拭き取り部材85をエンドレスベルト62の外周面に接触するように配設する場合には、潤滑剤拭き取り部材85は、通紙領域の外側の非通紙領域であって、ベルト走行ガイド部801が配設された領域に配置するのが好適である。さらには、漏洩源である低摩擦シート68の端部の下流側近傍が好ましい。
さらには、潤滑剤拭き取り部材85の配設位置として、潤滑剤拭き取り部材85は、エンドレスベルト62の外部において、エンドレスベルト62の端部エッジ面に接触するように配設することもできる。このように、エンドレスベルト62の端部エッジ面に接触するように潤滑剤拭き取り部材85を配設することで、エンドレスベルト62の内周面からエンドレスベルト62の外表面に潤滑剤が回り込む際に、潤滑剤を拭き取ることが可能である。
ここで、図8は、潤滑剤拭き取り部材85をエンドレスベルト62の端部エッジ面に接触するように配設した構成を説明する図であり、定着装置60のエッジガイド部材80の内側面側を示した平面図である。図8に示したように、潤滑剤拭き取り部材85は、エッジガイド部材80のフランジ部802に内挿されるように配設されるとともに、ベルト走行ガイド部801の外側に円環状に形成されている。そして、潤滑剤拭き取り部材85は、エンドレスベルト62の回動に際してエンドレスベルト62の端部エッジ面が接触するように配置されている。このように構成することで、エンドレスベルト62の内周面からエンドレスベルト62の端部に拡がった潤滑剤を、エンドレスベルト62の端部エッジ面において拭き取ることができるので、エンドレスベルト62の外表面に潤滑剤が漏洩するのを抑制することが可能となる。
なお、ベルト走行ガイド部801の外側に形成された潤滑剤拭き取り部材85は、ベルト走行ガイド部801が配設された領域の全域に亘って配置することは必ずしも必要なく、その一部の領域にのみ配置しても、潤滑剤の漏洩を抑制することが可能である。
また、潤滑剤拭き取り部材85をエンドレスベルト62の端部エッジ面に接触するように配設した構成では、エンドレスベルト62の回動に伴ってエンドレスベルト62に対するスラスト力が大きく働く場合があり、その際にはエンドレスベルト62の端部エッジ面における摺動抵抗が大きくなって、エンドレスベルト62に歪みや破損が生じ易くなる。そのため、エンドレスベルト62と潤滑剤拭き取り部材85との摺動抵抗を小さいレベルに維持するように、潤滑剤拭き取り部材85を構成する潤滑剤吸収材としては、摩擦係数が低く形成されているPTFE不織布からなるゴアテックス(登録商標)メンブレンや、フッ素樹脂を多孔質に形成したものが特に好ましい。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置60では、圧力パッド64が配置された長手方向に亘る領域よりも両端部側(特に、圧力パッド64上に低摩擦シート68を設置した構成では、低摩擦シート68の端部よりも外側の領域)のエンドレスベルト62内周面と接触するように、潤滑剤拭き取り部材85を配設した構成を有している。また、潤滑剤拭き取り部材85は、エンドレスベルト62外周面の非通紙領域に接触するように配設するか、さらにはエンドレスベルト62の端部エッジ面に接触するように配設した構成とすることもできる。
このように構成することで、低摩擦シート68(または圧力パッド64)の端部からエンドレスベルト62に潤滑剤が漏洩しても、潤滑剤拭き取り部材85によって拭き取ることができるので、漏洩した潤滑剤がエンドレスベルト62の外周面側の通紙領域に拡がることを抑えることができる。そのため、定着装置60に搬送されてきた用紙Pが、潤滑剤で汚損されることがなく、高品質の画像の提供を長期に亘って維持することが可能となる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、加熱手段として発熱源を有する定着ロール61を用い、加圧手段として圧力パッド64が押圧されたエンドレスベルト62を用いた定着装置60が搭載された画像形成装置について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いた定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図9は、本実施の形態における定着装置90の構成を示す側断面図である。図9に示すように、本実施の形態の定着装置90では、定着ベルト92が用紙Pのトナー像担持面側に配置されている。定着ベルト92の内側に発熱源としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ82が配設され、セラミックヒータ82からニップ部Nに熱を供給するように構成している。
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成しても、いずれでもよい。
一方、回動部材の一例としての加圧ロール91は定着ベルト92に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印D方向に回転し、この回転により定着ベルト92が従動回転するように構成されている。加圧ロール91は、コア (円柱状芯金)911と、コア911の外周面に被覆した耐熱性弾性体層912と、さらに耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層913とが積層されて構成されている。
また、定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性樹脂やSUS、ニッケル等の金属で形成されたベース層921と、このベース層921の加圧ロール91側の面または両面に被覆されたフッ素樹脂等からなる離型層922とから構成されている。
さらに、ニップ部Nの下流側近傍には、定着ベルト92から剥離された用紙Pを完全に定着ベルト92から分離し、画像形成装置の排出部へ向かう排紙通路に誘導するための剥離補助部材70が配設されている。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている。
そして、図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって定着装置90のニップ部Nに導かれる。用紙Pがニップ部Nを通過する際には、用紙P上のトナー像は、ニップ部Nに作用する圧力と、定着ベルト92側のセラミックヒータ82から供給される熱とによって定着される。本実施の形態の定着装置90でも、加圧ロール91とセラミックヒータ82との間でニップ部Nを広く構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
ここで、本実施の形態の定着装置90においては、セラミックヒータ82が配置された長手方向に亘る領域よりも両端部側(特に、セラミックヒータ82上に低摩擦シート68を設置した構成では、低摩擦シート68の端部よりも外側の領域)の定着ベルト92の内周面と接触するように、潤滑剤拭き取り部材85を配設した構成を有している。また、潤滑剤拭き取り部材85は、定着ベルト92外周面の非通紙領域に接触するように配設するか、さらには定着ベルト92の端部エッジ面に接触するように配設した構成とすることもできる。
このように構成することで、低摩擦シート68の端部から定着ベルト92に潤滑剤が漏洩しても、潤滑剤拭き取り部材85によって拭き取ることができるので、漏洩した潤滑剤が定着ベルト92の通紙領域に拡がることを抑えることができる。そのため、定着装置90に搬送されてきた用紙Pが、潤滑剤で汚損されることがなく、高品質の画像の提供を長期に亘って維持することが可能となる。
なお、本実施の形態の定着装置90では、潤滑剤拭き取り部材85は、発熱源であるセラミックヒータ82の近傍、またはセラミックヒータ82に接触して配設されるため、潤滑剤拭き取り部材85を構成する潤滑剤吸収材として、摩擦係数が低いことと同時に、耐熱性を有する材質で形成している。
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未定着トナー像を定着する定着装置への適用がある。また、インクジェット方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用、例えば記録紙(用紙)上に担持された未乾燥インク像を乾燥する定着装置への適用がある。
本発明の画像形成装置を示した概略構成図である。 実施の形態1に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 エンドレスベルトが支持された状態を説明する定着装置の端部の断面図である。 定着装置の構造を説明する一方の端部部分の斜視図である。 潤滑剤拭き取り部材が配置される領域を説明する図である。 潤滑剤拭き取り部材をエンドレスベルトの外周面に接触するように配設した構成を説明する図である。 エッジガイド部材の内側面を示した平面図である。 エッジガイド部材の内側面を示した平面図である。 実施の形態2に係る定着装置の構成を示す側断面図である。 従来の定着装置の構成を示す側断面図である。
符号の説明
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、11…感光体ドラム、12…帯電器、13…レーザ露光器、14…現像器、15…中間転写ベルト、16…一次転写ロール、17…ドラムクリーナ、20…二次転写部、60,90…定着装置、61…定着ロール、62…エンドレスベルト、63…ベルトガイド部材、64…圧力パッド、64a…プレニップ部材、64b…剥離ニップ部材、65…ホルダ、66…ハロゲンヒータ、67…潤滑剤供給部材、68…低摩擦シート、69…温度センサ、70…剥離補助部材、80…エッジガイド部材、801…ベルト走行ガイド部、802…フランジ部、82…セラミックヒータ、85…潤滑剤拭き取り部材、91…加圧ロール、92…定着ベルト

Claims (10)

  1. 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
    回動可能な回動部材と、
    外周面を前記回動部材に接触しながら移動可能であって、内周面に潤滑剤が塗布されたベルト部材と、
    前記ベルト部材の内周面を押圧するように配置され、当該ベルト部材を前記回動部材に圧接させる圧力部材と、
    前記ベルト部材の内周面から漏洩する潤滑剤を拭き取る潤滑剤拭き取り部材と
    を備えたことを特徴とする定着装置。
  2. 前記潤滑剤拭き取り部材は、前記圧力部材の長手方向に亘る領域の外側において、前記ベルト部材の内周面に接触して配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記圧力部材と前記ベルト部材との間に、当該圧力部材と当該ベルト部材との摺動抵抗を低減する低摩擦部材をさらに備え、前記潤滑剤拭き取り部材は、当該低摩擦部材の幅方向に亘る領域の外側において、当該ベルト部材の内周面に接触して配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  4. 前記潤滑剤拭き取り部材は、前記圧力部材に配設されたことを特徴とする請求項2または3記載の定着装置。
  5. 前記潤滑剤拭き取り部材は、前記ベルト部材の外周面における非通紙領域に接触して配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  6. 前記潤滑剤拭き取り部材は、前記ベルト部材の端部エッジ面に接触して配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  7. 前記ベルト部材の幅方向の移動を制限するベルトガイド部材をさらに備え、前記潤滑剤拭き取り部材は、当該ベルトガイド部材に配設されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  8. 前記潤滑剤拭き取り部材は、フッ素樹脂からなる不織布または多孔質のフッ素樹脂からなる潤滑剤吸収材を備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  9. 前記回動部材を加熱する加熱部材、または前記ベルト部材を加熱する加熱部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  10. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
    前記定着手段は、
    回動可能な回動部材と、
    前記回動部材に接触しながら移動可能なベルト部材と、
    前記ベルト部材の内周面を押圧するように配置され、当該ベルト部材を前記回動部材に圧接させる圧力部材と、
    前記ベルト部材と前記圧力部材との摺動部に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材と、
    前記ベルト部材の内周面から漏洩する潤滑剤を拭き取る潤滑剤拭き取り部材と
    を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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