JP2005297661A - 自動車用内装材、空調吹出口、インストルメントパネル及び自動車用内装材の製造方法 - Google Patents

自動車用内装材、空調吹出口、インストルメントパネル及び自動車用内装材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 柔らかさ、しなやかさ、或いは緩衝性等に優れる上に、例えば、空調吹き出し口に用いた場合でも周囲との一体感が得られる自動車用内装材を提供すること
【解決手段】 自動車用内装材20の空調吹き出し口は、芯材21、クッション材22、編物又は織物から成る布製の表層材23が順に積層されて形成される。表層材23の裏面には、目止め用ラミネート材25が貼付されている。表層材23には、部分的に吹き出し部23Aが形成されている。クッション材22の対応する部分は、通気性素材22Bから形成され、芯材21の対応する部分には多数の貫通孔21aが形成されている。この空調吹き出し口では、芯材21の裏側からダクトからの送風が流入し、通気性素材22Bを介して表層材23の開口部23Aから吹き出す。
【選択図】 図3

Description

本発明は、自動車用内装材等及びその製造方法に関し、特に、自動車用インストルメントパネル等に用いるのに好適な内装材及びその製造方法に関する。
従来、自動車用インストルメントパネル等には、エアコン等と接続された空調吹き出し口が形成されている。かかる空調吹き出し口は、通常、ベンチレータ(VENT)と呼ばれる射出成形樹脂によるルーバータイプが一般的である。また、特に、大口径の空調吹き出し口では、いわゆるパンチングメタル等も使用されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、上述したインストルメントパネル等に用いる自動車用内装材としては、高級感を付与したり、ソフトな肌触わり感を付与するために、例えば、不織布などの繊維基材シートを、例えばABS樹脂などの芯材に接着剤で一体的に結着した積層体を加熱軟化した状態で成形型で加圧成形したもの等が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、この特許文献2には、表層材に布を用いた自動車用内装材が記載されている。
特開平11−115549号公報 特開平6−114990号公報
しかしながら、例えば、自動車用インストルメントパネルには、柔らかさ、しなやかさ、或いは緩衝性等が要求されるのに対し、上述した空調吹き出し口に用いる従来のルーバータイプやパンチングメタル等の自動車用内装材は、硬質素材であるため、上記した柔らかさ等の要求を満足することができない。
また、特に、高級自動車用インストルメントパネルには、空調吹き出し口と分からないような周囲との一体感が得られるのが望ましいところ、たとえ色調は合わせられても、硬質素材であることから、触感は周囲のインストルメントパネルとは異なり、見た目にも一体感がないため、明らかに空調吹き出し口と分かってしまう。
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、柔らかさ、しなやかさ、或いは緩衝性等に優れる上に、例えば、空調吹き出し口に用いた場合でも周囲との一体感が得られる自動車用内装材及びその製造方法を提供することにある。
上記目的達成のため、本発明に係る自動車用内装材は、(1)表層材に単繊維の編物又は織物から成る布を使用するようにした。また、(2)布の一部分に空調用の開口部を織り込み、又は空調用の開口部を編み、吹き出し口を形成するようにした。
即ち、本発明に係る自動車用内装材は、少なくとも単繊維の編物又は織物から成る表層材と、クッション材と、芯材とが順に積層されてなることを特徴とする。かかる構成によれば、表層材に単繊維の編物又は織物から成る柔らかい素材である布を使用するので、かかる自動車用内装材を用いたインストルメントパネル全体が柔らかく、触感、見た目にも一体感を出せるので、商品性が向上する。
また、本発明に係る自動車用内装材は、前記表層材にポリエステルエラストマーの単繊維から成る編物又は織物を用いたことを特徴とする。かかる構成によれば、表層材に弾性を持った単繊維から構成される素材を用いたので、押した時に柔らかい触感が得られる。また、単繊維から成る素材を用いたので、素材自体からゴミが出ないため、清潔感ある商品性に優れた自動車用内装材を提供できる。更に、回復力が高く、繰り返し変形が加わっても繊維がへたらない。
また、本発明によれば、上記自動車用内装材を用いて形成された空調吹き出し口であって、前記表層材には、編目又は織目により通気孔が形成されていると共に、前記クッション材には、通気性を有する素材が用いられていることを特徴とする空調吹き出し口が得られる。これにより、布地を使うことで周囲のインストルメントパネル部品との見た目、触感の一体感がある空調吹き出し口を構成できる。
前記空調吹き出し口において、前記クッション材に抗菌及び/又は脱臭の機能材料を混入しても良い。これにより、空調吹き出し口の商品性を更に高めることも可能である。
また、本発明によれば、上記自動車用内装材を用いて形成されたインストルメントパネルであって、空調吹き出し口を含み、該空調吹き出し口における前記表層材には、編目又は織目により通気孔が形成されていると共に、該空調吹き出し口における前記クッション材には、通気性を有する素材が用いられていることを特徴とするインストルメントパネルが得られる。布をインストルメントパネル全体へ適用したので、各パネル部品が目立たないインストルメントパネルが得られる。また、パネル部品としての吹き出し部と周辺部が同一素材により形成されているので、商品性が向上する。更に、乗員衝撃を緩和し、レイアウトの自由度を向上できる。乗員の衝撃を緩和できるので、金属では難しい部位でも空調吹き出し口を形成できる。
また、上記空調吹き出し口を含むインストルメントパネルを脱着式とし、水洗可能な構造としたことを特徴とするインストルメントパネルを構成することもできる。これにより、更に、商品性を向上させることも可能である。
本発明に係る自動車用内装材の製造方法は、少なくとも編物又は織物から成る表層材と、クッション材と、芯材とが順に積層されてなる自動車用内装材の製造方法であって、
前記表層材の表面に分離可能な第1のシート部材を貼り、前記表層材の裏面に第2のシート部材を貼る工程と、前記第1のシート部材により気密を保持しつつ前記表層材に所望の成形性を付与する真空成形工程と、前記表層材及び前記芯材を発泡型にセットして発泡体を充填発泡し、前記表層材と前記芯材とを一体化する発泡工程と、前記芯材に通気性を有するクッション材を貼り合わせた別部品を作製しておく工程と、該別部品を一体化された前記表層材と前記芯材とに嵌め込む工程と、前記表層材の表面に貼ってある前記第1のシート部材を剥離する工程とを、少なくとも有することを特徴とする。これにより、製造工程においてセパレートフィルム等を用いて、編目や織目、更には開口部といった隙間のある素材に対しても気密性(真空性)を付与して真空成形等を可能にすることができる。
また、本発明に係る自動車用内装材の製造方法は、前記第1のシート部材は、真空、発泡成形時の前記表層材の編目又は織目の目止め(気密保持)の機能を有し、前記第2のシート部材は、前記表層材の編目又は織目より高圧の樹脂が含浸し、当該表層材の表面へ流出するのを防止する機能を有することを特徴とする。
尚、本発明によれば、隙間のある素材を真空状態で賦形し、又は隙間のある素材を真空状態で他の素材に貼り合わせて成形する素材の成形方法において、前記隙間のある素材に分離可能なシート部材を貼って真空状態を保持することにより前記賦形又は他の素材に貼り合わせて成形することを可能としたことを特徴とする素材の成形方法が得られる。
本発明によれば、(1)表層材に柔らかい素材である布を適用できるので、インストルメントパネル全体が柔らかく、触感、見た目にも一体感を出せるので、商品性が向上する。
(2)空調吹き出し口を目立たなくすることができるので、大口径の空調吹き出し口を設けてもデザイン性が低下しない。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用内装材を用いて成形されたインストルメントパネルの全体構成を示す斜視図である。このインストルメントパネル11は、略中央位置に後述する空調吹き出し口を構成する部分パッド部12を一体に形成してなるインストルメントパネルであって、このインストルメントパネル11は、その全体が、後述する図2に示すように、芯材21、クッション材22、単繊維の編物又は織物から成る布製の表層材23が順に積層された3層構造を有し、表面が当該布製の表層材23で覆われた自動車用内装材20から成るインストルメントパネル本体部材13から構成されている。また、インストルメントパネル本体部材13の一部には、比較的口径の大きい空調吹き出し口を構成する部分パッド部12が一体的に形成されている。尚、インストルメントパネル本体部材13の左右両端側には、比較的小径の空調吹き出し口16も形成されている。
つぎに、図1に示したインストルメントパネル11に用いられる自動車用内装材20の特に、上記大口径の空調吹き出し口を構成する部分パッド部12の基本構造を説明する。図2は、図1に示したインストルメントパネル11の部分パッド部12に用いられる自動車用内装材20の基本構成を示す概略断面図である。
図2に示すように、自動車用内装材20は、基本的に、芯材21、クッション材22、単繊維の編物又は織物から成る布製の表層材23が順に積層された3層構造を形成している。芯材21には、例えば、PP樹脂、ABS樹脂等の樹脂成形品が用いられている。クッション材22のうち、例えば、後述する図3に示すように、吹き出し口以外の部分は弾性発泡体22Aから成り、吹き出し口の部分は、ポリエステルエラストマーの単繊維をランダム構造にした通気性を有する(中空の)クッション材22Bが用いられている。または、吹き出し口の部分は、三層編みによる単繊維の立体構造体(柱、筋交構造を編組織に応用した素材)を用いるポリエステル、ナイロン等を用いても良い。クッション材22Bに単繊維から成る中空体を用いることで、ポリウレタン(Pu)発泡品に比べて軽量化でき、通気抵抗も低くできる。尚、以上と異なり、吹き出し口もそれ以外の部分も含むインストルメントパネル全体のクッション材をポリエステルエラストマーの単繊維をランダム構造にした通気性を有する(中空の)クッション材により構成し、熱プレスの圧力等を変えることにより吹き出し口とそれ以外の部分とでクッション材の厚みや密度を変えるようにしても良い(吹き出し口の部分は密度を小さくして通気性を確保する)。このようにすれば、吹き出し口とそれ以外の部分とを同一の素材により構成できるので、部品も少なくなり、また、作業性も向上する。
表層材23には、ポリエステルエラストマーの単繊維から成る編物又は織物が用いられている。単繊維であり、尚且つ、エラストマーが含まれているため、弾性がある上に熱による加工が可能である。
尚、本発明者等の研究により、例えば、クッション材(中空素材)22Bに、上記ポリエステルエラストマーの単繊維をランダム構造にしたクッション材を用い、表層材23に、ポリエステルエラストマーの単繊維から成る編物又は織物を用いた場合には、同程度の粗さの開口形状を持つパンチングメタルの空調吹き出し口と、略同程度の通気抵抗となることが分かった。
図2に示す自動車用内装材20は、表層材23に本物の布地を使っており、押した時に適度な弾性がある。また、クッション材22Bに単繊維から成る中空素材を使っているので、ウレタン発泡品より軽量である。尚、ウレタン発泡型が不要になるという効果も得られる。
尚、芯材21、クッション材22、表層材23それぞれの素材は以上のものに限定されない。但し、芯材21、クッション材22、表層材23を共に同じ系列の樹脂(例えば、ポリエステル系)で統一すれば、リサイクル時にそれぞれに分解してリサイクルに供する必要が無くなるので、リサイクル性が向上する。即ち、自動車用内装材20を、各構成材料ごとに分解しなくても、そのままリサイクルに使用できる。
次に、図1に示したインストルメントパネルにおける空調吹き出し口周辺部の概略断面図を図3に示す。
図3に示すように、自動車用内装材20の空調吹き出し口周辺部は、大きく芯材21、クッション材22、布製の表層材23が順に積層された3層構造を形成している。尚、表層材23の裏面(下面)には、目止め用ラミネート材(弾性発泡シート)25が貼付されている。
表層材23は、全体が編物又は織物から形成され、部分的に開口部(吹き出し部)23Aが形成されている。即ち、表層材23は、開口部(吹き出し部)23Aとして編目又は織目が粗となった部分と、周辺のインストルメントパネル部品と一体となるように、編目又は織目が密となった部分とを有している。クッション材22は、全体として弾性発泡体22Aから形成されているが、表層材23の開口部23Aに対応する部分は、通気性素材(通気性を有する中空体)22Bから形成されている。尚、芯材21は、表層材23の開口部23Aに対応する部分(21B)には、多数の小孔(貫通孔)21aが形成されている。図3に示すように、この空調吹き出し口では、芯材21の下側(裏側)からダクトからの送風が小孔(貫通孔)21aから流入し、通気性素材22Bを介して表層材23の開口部23Aから吹き出すようになっている。
この空調吹き出し口を形成する自動車用内装材20は、部分的に開口部23Aを設けた布製の柔らかい表層材23を、目止め用ラミネート材(弾性発泡シート)25及び2種類のクッション材22(弾性発泡体22A、通気性素材22B)を介して芯材21(21A、21B)に貼り合わせて形成されている。
図4は、表層材23の構成を簡略化して示す図であり、(a)は、その正面図、(b)は、その断面図である。
表層材23は、伸縮性、柔軟性、耐久性のある繊維を用いた編物又は織物から成る本物の布製であり、図4(a)、(b)に示す23Bは、表層材23の編目又は織目を表している。また、表層材23の開口部(吹き出し部)23Aは、図4(a)、(b)に示すように、多数の開口孔23aが編まれ又は織物で形成されている。
このように、表層材23は、本実施形態では、空調の吹き出し口を形成するものであり、自動車用内装材20の表面層として意匠の面で従来の空調の吹き出し口には無い、新しい見栄えを表現するものである。また、インストルメントパネルに用いる内装材として、編物又は織物から成る本物の布製であることから、金属製の内装材や樹脂の射出品から成る内装材と比べて、ソフトな触感を表現でき、更に、押した時の柔らかさが得られる。しかも、編物又は織物により多数の開口孔23aを形成できるので通気性を容易に得ることができ、編み方又は織り方次第で様々な開口形状を形成できるので、開口形状の設計の自由度が高い。尚、表層材23は編物又は織物から成る布地により構成するが、開口形状、開口位置の自由度及び伸縮性を考慮すると、布地としては織物よりも編物が望ましく、例えば、ニット編み等により構成できる。
また、表層材23としては、第1に、真空成形等の加工ができるものであること、第2に、乗員の安全性確保等の観点から、弾性を有するものであること、第3に、自動車用内装材として用いられるので、長期間使用してもへたらないものであること、ゴミが付きにくい或いは出にくいものであること、更には、掃除できるものであることが望ましい。掃除については、掃除機等により表層材23の布地を清掃可能であるが、自動車用内装材20による空調吹き出し口を持つインストルメントパネルを脱着式とし、水洗可能な構造とすることも可能である。
一方、図3に示した通気性素材(中空体)22Bは、表層材23の開口部(吹き出し部)23Aがインストルメントパネル表面から沈み込み、或いは空気噴出時に浮き上がるのを防止する機能を持つと共に、意匠的には、表層材23の開口部(吹き出し部)23Aから中が見えてしまうのを防止する機能も持つ。また、表層材23と同様に、押した時の柔らかさを得る役割も有している。
また、通気性素材(中空体)22Bは、表層材23の開口部(吹き出し部)23Aに対応する部分に配置されるものであるから、通気性素材(中空体)22Bとしては、第1に、通気抵抗が低いものであること、第2に、組み込んだ時に凝縮したりせず、中空を保持できるものであること、第3に、上述したように、表層材23の開口部(吹き出し部)23Aの沈み込みを防止する等の観点から、弾性回復力を有するものであること、第4に、意匠的な観点からは、表層部から見て目立たないものであることが望ましい。
さて、かかる自動車用内装材20を形成する技術を開発するにあたっては、編目、織目、開口部といった隙間のある素材(表層材23)を賦形し、或いはクッション材22を介して芯材21に貼り合わせて内装材20を形成するには、以下のような問題点があった。
(1)編目・織目23B、吹き出し部の開口孔23a等の隙間があるので、そのままでは真空成形等の従来の予備賦形工法を適用できない。
(2)芯材21との接着に発泡成形或いは射出成形を用いる場合、表層材23の隙間より高圧の樹脂が含浸し、表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)へ流出する。
(3)芯材21との接着に発泡成形或いは射出成形を用いる場合、中空体22Bの隙間より高圧の樹脂が含浸し、表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)へ流出する。
即ち、表層材23を賦形する場合、真空成形にて賦形しようとすれば、隙間があるが故に、真空破壊を起こしてしまう。また、表層材23をクッション材22を介して芯材21に貼り合わせる場合、発泡により或いは樹脂を射出して一体化しようとすれば、高圧流動樹脂が浸透し、表層材23の隙間から樹脂が表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)へ回り込んでしまうという問題点があった。即ち、隙間がある素材に成形性を付与し、製品化する加工技術の開発が必要であった。
そこで、本発明者らは、上記問題点に鑑みて、賦形或いは貼り合わせにより自動車用内装材20を製造する技術を開発するべく鋭意研究を重ねた結果、上記問題点を解決し得る製造技術を見出し、本発明を完成するにいたった。
図5は、本実施形態に係る自動車用内装材の一実施例としての空調吹き出し口周辺部を製造する工程を示す図である。
即ち、図5(a)に示すように、まず、表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)に、セパレートフィルム24を粘着剤等を用いて貼り、表層材23の裏面には、ラミネートフィルム25を接着剤等を用いて貼る。その後表層材の開口部(吹き出し部)23Aの対応する部分のラミネートフィルム25を抜く。尚、予め開口部23Aを先に抜いたラミネートフィルムを貼着してもよい。また、セパレートフィルム24は、真空、発泡、射出等の成形時の表層材23の編目又は織目23Bや開口孔23aの目止め(気密保持)用のフィルムであり、成形時に表層材23に傷が付くのを防止する役割も持っている。更に、セパレートフィルム24、ラミネートフィルム25は、必ずしも粘着剤等を用いて表層材23に貼り合わせる必要はなく真空成形時、発泡成形時に表層材を隙間無く覆っていればよい。例えば、ラミネートシート25の表面を高温加熱し半溶融状態で圧着させても良い。尚、セパレートフィルム24としては、第1に、表層材23に用いる素材との密着性があり、成形後簡単に剥離できること、第2に、真空成形に使用可能であること、この為に、表層材23と同じ熱特性を有すること及び加熱成形後にもその形状を保持できること、第3に、剥離時に粘着剤等が表層材23に転写しないことが望ましい。また、ラミネートフィルム25は、発泡、射出成形時の目止め(ポリウレタン[Pu]、PP系発泡材等の含浸防止)用のフィルムであり、本実施形態では、上記したセパレートフィルム24と異なり製造後も剥離されずに完成品に残るものであるから、押した時の柔らかさが得られるような素材を選定するのが望ましい。尚、ラミネートフィルム25としては、第1に、発泡、射出成形時に表層材23の意匠面に漏れが無いこと、第2に、発泡材、成形材との密着性が良いこと、第3に、真空成形に使用可能であること、この為に、表層材23と同じ熱特性を有すること及び加熱成形後にもその形状を保持できることが望ましい。表層材23とラミネートフィルム25との接着剤としては、第1に、本実施形態ではラミネートフィルム25は製造後も剥離されずに完成品に残るものであるから、接着力が強いこと、第2に、中見え防止の観点からは色調が黒のものであること、第3に、乾燥後、ガス(臭気)の発生が無いものであること、第4に、真空成形後、剥離しないものであることが望ましい。
この状態で、図5(b)に示すように、真空成形(圧空成形)を行う。この時、本実施形態の製造工程では、図5(a)に示したように、表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)に真空成形時の気密保持用セパレートフィルム24を貼ってあるので、気密が保持できて予備賦形が可能である。従って、編目・織目23Bというような隙間がある素材である表層材23についても、例えば、吹き出し部を円形に窪ませる等のように、予備賦形により成形性を付与することが可能である。また、空調吹き出し口を複雑な形状に加工する場合でも、縫製無しに真空成形(圧空成形)に対応できる。即ち、本実施形態の製造工程では、かかる予備賦形により形状追従性が高くなり、所望の形状の空調吹き出し部を形成することができる。
続いて、図5(c)に示すように、上記の表層材23及び芯材21Aを発泡型にセットする。即ち、例えば、上記のように吹き出し部を円形に窪ませた表層材23を図示しない発泡型にセットし、例えばABS樹脂などの成形品である芯材21Aを発泡型100にセットする。次に、芯材21Aをセットした発泡型100を表層材23の開口部(吹き出し部)23Aの裏面側と当接するように固定(型締め)する。
更に、図5(d)に示すように、型締めをした状態で、型内に例えばポリウレタン(Pu)、PP系の発泡体等を充填発泡する。この充填発泡により、表層材23と芯材21Aとが一体化されて貼り付けられ、空調吹き出し口用パッド部品(PAD)を作製することができる。この時、本実施形態の製造工程では、図5(d)に示すように、表層材23の裏面にポリウレタン(Pu)の含浸防止用(目止め用)ラミネートフィルム25を貼ってあるので、高圧流動樹脂が表層材23の隙間(編目・織目23B)から表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)へ回り込んでしまうのを有効に防止できる。尚、本実施形態では、表層材23の開口部(吹き出し部)23Aを塞ぐ形となる発泡型100にセットすることで、高圧流動樹脂が表層材23の開口部(吹き出し部)23Aから表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)へ回り込むのを防止するようにした。
次に、図5(e)に示すように、芯材21Bに通気性素材(中空体)22Bを貼り合わせた別部品52を作製しておき、これを上記パッド部品(PAD)に嵌め込む。
続いて、上記別部品52が上記パッド部品(PAD)に嵌め込まれた状態で、図5(f)に示すように、表層材23の表面(空調吹き出し口の意匠面)に貼ってあるセパレートフィルム24を剥離する。
以上により、図5(g)に示すように、自動車用内装材20の空調吹き出し口周辺部(図1に示した部分パッド部12)が完成する。
以上に述べたように、本発明の自動車用内装材は、布をインストルメントパネルへパッド部品として適用したので、目立たない空調吹き出し口が設けられる。また、吹き出し部と周辺部が同一素材により形成されているので、商品性が向上する。更に、乗員衝撃を緩和し、レイアウトの自由度を向上できる。乗員の衝撃を緩和できるので、金属では難しい部位でも空調吹き出し口を形成できる。
特に、本発明の自動車用内装材は、構造上、本物の布地を使うことで周囲のインストルメントパネル部品との見た目、触感の一体感(金属・射出部品とは違う大口径の空調吹き出し口を設けてもデザイン性が低下しない)を出せるという作用効果を奏することができる。また、表皮と芯材の中間層に弾性を持った単繊維から構成される素材を用いることで押した時に柔らかい触感が得られる。更に、脱着が可能であり、汚れたら洗える構造にすることができる。また、クッション材に単繊維から成る中空体を用いることでポリウレタン(Pu)発泡品に比べて軽量化できる。また、空調吹き出し口周辺を発泡成形すれば角が出し易くなる。他のインストルメントパネル部品との合わせを良くするには芯材のところからリブを付けても良い。尚、金属では、急冷すると表面に結露を生じる可能性があるのに対し、表層材が布のため、急冷しても表面に結露がないという作用効果も得られる。
また、本発明の自動車用内装材の製造方法は、その製造工程上、布表面にセパレートシートを貼付するので、設計上意図的に設けた部分的な開口や隙間のある布素材も予備賦形が可能となり、縫製が不要になる(シームレスに表層材を構成できる)という作用効果が得られる。
更に、本発明の自動車用内装材は、上述した素材を選択して用いたので、以下のような作用効果を奏することができる。即ち、中空体に抗菌・脱臭等の機能材料を混ぜ込むことができる。また、本物の布地を使うことで周囲のインストルメントパネル部品との見た目、触感の一体感(金属・射出部品とは違う大口径の空調吹き出し口を設けてもデザイン性が低下しない)を出せる。更に、表皮と芯材の中間層に弾性を持った単繊維から構成される素材を用いることで押した時に柔らかい触感が得られる。脱着が可能であり、汚れたら洗える構造にできる。また、クッション材に単繊維から成る中空体を用いることでポリウレタン(Pu)発泡品に比べて軽量化できるし、通気抵抗も低くできる。尚、金属では、急冷すると表面に結露を生じる可能性があるのに対し、表層材が布のため、急冷しても表面に結露がない。
ところで、以上に述べた実施形態では、風向制御という点については言及しなかったが、例えば、中空体に風向制御のための斜面を形成できるような素材を選定すること等により、本発明の自動車用内装材を用いた風向制御が可能な空調吹き出し口を構成することも可能である。尚、例えば、運転者にピンポイントで冷気を当てる等の要求があれば、通常のルーバータイプのようにフィン等により風向制御が可能な空調吹き出し口で足りる。これに対し、高級車やファミリーカーに適用され、車室全体を、そよ風のようにじわじわと冷房する等のような要求であれば、必ずしも、以上に述べた実施形態でも十分であり、風向制御のための特別の構成は必要が無い。
また、以上に述べた実施形態では、本発明を比較的口径の大きい空調吹き出し口を構成する部分パッド部12(図1参照)に適用した例について説明したが、勿論、図1の比較的小径の空調吹き出し口16にも適用可能である。むしろ、インストルメントパネル全体を本発明の自動車用内装材により一体的に構成するのが望ましい。また、以上に述べた実施形態では、空調吹き出し口を車室前部のインストルメントパネルに形成した例を述べたが、本発明の自動車用内装材を用いた空調吹き出し口は、例えば、車室内の天井部やリア側或いはドアの内側等、どのような部位にも形成することができる。その場合、本発明の自動車用内装材は、上述した真空成形等を用いる製造工程により、布地の裁断・縫製等を必要とすることなく(即ち、シームレスに[縫い目が無く])、当該部位の空調吹き出し口を形成可能である。
更に、本発明の自動車用内装材は、例えば、センターコンソール等、他の自動車内装部品にも適用可能である。また、その場合、表層材やクッション材に通気性があることは条件とはならない。即ち、自動車用内装材の構造の発明としては、少なくとも単繊維の編物又は織物から成る表層材と、クッション材と、芯材とが順に積層されてなる自動車用内装材を用いて製作される他の自動車内装部品すべてに適用可能である。また、製造方法の発明としては、製造工程においてセパレートフィルム等を用いて気密性(真空性)を付与して真空成形等を可能にする場合であれば、空調吹き出し口等通気性が要求される自動車内装部品を形成する場合だけではなく、表層材が布地から成るために編目、織目或いは開口孔がある自動車用内装材を用いて自動車部品を形成する場合であれば、他のインストルメントパネル部品に限らずどのような自動車部品を形成する場合にも適用可能である。この場合、表層材の編目、織目或いは開口孔(即ち、隙間)は、意匠的な観点からのみ形成される場合であっても良い。
本発明の実施形態に係る自動車用内装材を用いて成形されたインストルメントパネルの全体構成を示す斜視図である。 図1に示したインストルメントパネルの部分パッド部に用いられる自動車用内装材の基本構成を示す概略断面図である。 図1に示したインストルメントパネルにおける空調吹き出し口周辺部の概略断面図である。 本発明の実施形態に係る自動車用内装材における表層材の構成を簡略化して示す図であり、(a)は、その正面図、(b)は、その断面図である。 本実施形態に係る自動車用内装材の一実施例としての空調吹き出し口周辺部を製造する工程を示す図である。
符号の説明
11 インストルメントパネル、 12 部分パッド部、
13 インストルメントパネル本体部材、 16 小径の空調吹き出し口、
20 自動車用内装材、 21 芯材、 21a 小孔(貫通孔)、 22 クッション材、 22A 弾性発泡体、 22B 通気性素材(通気性を有する中空体)、 23 表層材、 23A 開口部、 23B 表層材23の編目又は織目、 24 セパレートフィルム、 25 ラミネートフィルム、 100 発泡型

Claims (9)

  1. 少なくとも単繊維の編物又は織物から成る表層材と、クッション材と、芯材とが順に積層されてなることを特徴とする自動車用内装材。
  2. 前記表層材にポリエステルエラストマーの単繊維から成る編物又は織物を用いたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用内装材。
  3. 請求項1又は2に記載の自動車用内装材を用いて形成された空調吹き出し口であって、前記表層材には、編目又は織目により通気孔が形成されていると共に、前記クッション材には、通気性を有する素材が用いられていることを特徴とする空調吹き出し口。
  4. 請求項3に記載の空調吹き出し口において、前記クッション材に抗菌及び/又は脱臭の機能材料を混入したことを特徴とする空調吹き出し口。
  5. 請求項1又は2に記載の自動車用内装材を用いて形成されたインストルメントパネルであって、空調吹き出し口を含み、該空調吹き出し口における前記表層材には、編目又は織目により通気孔が形成されていると共に、該空調吹き出し口における前記クッション材には、通気性を有する素材が用いられていることを特徴とするインストルメントパネル。
  6. 請求項5に記載の空調吹き出し口を含むインストルメントパネルを脱着式とし、水洗可能な構造としたことを特徴とするインストルメントパネル。
  7. 少なくとも編物又は織物から成る表層材と、クッション材と、芯材とが順に積層されてなる自動車用内装材の製造方法であって、
    前記表層材の表面に分離可能な第1のシート部材を貼り、前記表層材の裏面に第2のシート部材を貼る工程と、前記第1のシート部材により気密を保持しつつ前記表層材に所望の成形性を付与する真空成形工程と、前記表層材及び前記芯材を発泡型にセットして発泡体を充填発泡し、前記表層材と前記芯材とを一体化する発泡工程と、前記芯材に通気性を有するクッション材を貼り合わせた別部品を作製しておく工程と、該別部品を一体化された前記表層材と前記芯材とに嵌め込む工程と、前記表層材の表面に貼ってある前記第1のシート部材を剥離する工程とを、少なくとも有することを特徴とする自動車用内装材の製造方法
  8. 請求項7に記載の自動車用内装材の製造方法において、前記第1のシート部材は、真空、発泡成形時の前記表層材の編目又は織目の目止め(気密保持)の機能を有し、前記第2のシート部材は、前記表層材の編目又は織目より高圧の樹脂が含浸し、当該表層材の表面へ流出するのを防止する機能を有することを特徴とする自動車用内装材の製造方法。
  9. 隙間のある素材を真空状態で賦形し、又は隙間のある素材を真空状態で他の素材に貼り合わせて成形する素材の成形方法において、前記隙間のある素材に分離可能なシート部材を貼って真空状態を保持することにより前記賦形又は他の素材に貼り合わせて成形することを可能としたことを特徴とする素材の成形方法。
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