JP2005294810A - アルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】禁制帯幅が1.4eV程度と大きく、しかも安価な材料によるアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】超高真空下、Si(111)基板1を600℃に加熱した状態でBa2のみを堆積し、膜厚20nm程度のBaSi2 薄膜3を成長させ、次に、前記BaSi2 薄膜3をテンプレート(種結晶)として、この上に、基板温度とBa4およびSi5の供給を同じ状態に固定して、Sr6を供給して、Ba1-x Srx Si2 膜7をエピタキシャル成長させる。
【選択図】図1
【解決手段】超高真空下、Si(111)基板1を600℃に加熱した状態でBa2のみを堆積し、膜厚20nm程度のBaSi2 薄膜3を成長させ、次に、前記BaSi2 薄膜3をテンプレート(種結晶)として、この上に、基板温度とBa4およびSi5の供給を同じ状態に固定して、Sr6を供給して、Ba1-x Srx Si2 膜7をエピタキシャル成長させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、アルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法及び装置に関するものである。
これまで、Si基板上にエピタキシャル成長する半導体で、その禁制帯を制御可能な材料は、SiGeなどごく一部に限られていた。また、禁制帯幅の制御も、Siの禁制帯幅1.1eVよりも小さくする方向の制御に限られていた。従って、今でも半導体は禁制帯幅1.1eVのSi素材が主流のままである。
ところで、BaSi2 のBaの一部をSrで置換したBa1-x Srx Si2 のバルク結晶の作製は、20年も前の下記非特許文献1に報告されているが、いまだにこの結晶が金属であるのか、半導体であるのかさえ分かっておらず、また半導体であればどのような禁制帯幅を持つのかについては評価されていない。
特開平9−110592号公報
特開2000−294553号公報
J.Evers,Journal of Solid State Chemistry32,77−86(1980)
上記した従来のSi素材の半導体装置は、その製品を宇宙に持って行っても放射線で誤動作したり、太陽電池に利用しても良好なエネルギー変換効率が得られない。これは、何れもSiの禁制帯幅が1.1eVと小さいことに起因しており、例えば太陽光発電であれば禁制帯幅を1.4eV程度に拡げることが求められる。こうした要望に対して幾つかの試みが成されたが安価に提供するまでには至っていない。
本発明は、上記状況に鑑みて、禁制帯幅が1.4eV程度と大きく、しかも安価な材料であるアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
〔1〕アルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、アルカリ土類金属を用いた半導体であるBaSi2 に、該Ba以外のアルカリ土類金属を添加することで禁制帯幅を制御可能にすることを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba以外のアルカリ土類金属がSr、Ca、Mgであることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba以外のアルカリ土類金属がSrであり、超高真空下、Si(111)基板を600℃に加熱した状態でBaのみを堆積し、膜厚20nm程度のBaSi2 薄膜を成長させ、次いで、前記BaSi2 薄膜をテンプレート(種結晶)として、この上に、基板温度とBaおよびSiの供給を同じ状態に固定して、Srを供給して、Ba1-x Srx Si2 膜をエピタキシャル成長させることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba蒸着レートを1nm/分、Si蒸着レートを0.7nm/分に固定して照射し、Sr蒸着レートを0.01〜2.4nm/分、基板温度を550〜600℃、蒸着時間を60〜80分としたことを特徴とする。
〔5〕上記〔2〕記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba以外のアルカリ土類金属がSrであり、超高真空下、ガラス基板を加熱した状態でBaのみを2〜3秒照射し、その後、Ba,Sr,Siを同時に照射し、多結晶Ba1-x Srx Si2 膜を成長させることを特徴とする。
〔6〕上記〔5〕記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba蒸着レートを1.0nm/分、Si蒸着レートを0.7nm/分に固定して照射し、Sr蒸着レートを0.01〜2.4nm/分、基板温度を300〜400℃、蒸着時間を60〜80分としたことを特徴とする。
〔7〕アルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜装置であって、上記〔1〕〜〔6〕の何れか一項記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法を用いて製造される。
SiとBaからなるBaSi2 という半導体は、Si基板上にエピタキシャル成長可能である。BaSi2 のBaの一部を他のアルカリ土類元素(例えばSr)で置換することで、Ba1-x Mx Si2 (M=Sr,Ca,Mg)を作製することができるが、この材料は、III −V族化合物半導体と同様に禁制帯幅の制御が可能なため、Si上にエピタキシャル成長できる多様な禁制帯幅を持つ材料を提供できる。
また、BaSi2 の禁制帯幅は1.1eVと、Siと同じであるが、光吸収係数が100倍も大きい。このため、混晶化により、Ba1-x Mx Si2 (M=Sr、Ca、Mg)の禁制帯幅を太陽電池に最適な1.4eV付近まで拡張することで、資源の豊富なBa、Siの豊富な資源を利用し、光吸収係数も大きく、薄膜で安価な、これまでに無い太陽電池材料を提供することができる。
さらに、Si基板に代えて、安価なガラス基板上に、簡単な堆積法でBa1-x Mx Si2 の多結晶薄膜を成長させることができ、太陽電池用多結晶薄膜を製作できる。この太陽電池用多結晶薄膜は、光吸収係数も大きい上に、禁制帯幅が1.4eV近辺に制御でき、高効率で安定な薄膜を得ることができる。
本発明では、半導体素材の主流であるSiにBa,Sr,Ca,Mgという安価なアルカリ土類金属を組み合わせることにより、上記の目的を達成する。すなわち、熱したSi基板上にBaのみを堆積してBaSi2 種結晶を作り、このBaSi2 種結晶の上に、Ba,Si,Srを同時に照射してエピタキシャル成長させ、このBaSi2 混晶層に対してBa成分の一部をSr、Ca、Mgで置換して、Ba1-x Mx Si2 (M=Sr、Ca、Mg)を作製する。この置換により禁制帯幅が拡がり、その制御が可能になる。本発明の原理による太陽電池は、光吸収係数が大きい上に禁制帯幅が1.4eV近辺に制御できるため、エネルギー変換効率が高く、特に環境の厳しい宇宙機器用には最適である。
また、ガラス基板を加熱し、そのガラス基板上にまずBaのみを2〜3秒照射し、その後、Ba,Sr,Siを同時に照射し、Ba1-x Srx Si2 の多結晶薄膜を成長させることができる。
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造工程断面図、図2はそのBaSi2 の結晶構造(斜方晶)の模式図である。
まず、図1(a)に示すように、超高真空下で、Si(111)基板1を600℃に加熱した状態で、Ba2のみを堆積し、膜厚20nm程度のBaSi2 薄膜3を熱反応堆積法(Reactive Deposition Epitaxy:RDE法)で形成する。ここで、BaSi2 の結晶構造は、図2に示すようである。つまり、a=0.891nm、b=0.672nm、c=1.153nmであり、Baが8個、Siが16個含まれている斜方晶である。
次いで、そのBaSi2 薄膜3をテンプレート(種結晶)として、図1(b)に示すように、直接Ba4,Si5,Sr6を同時に照射してMBE(分子線エピタキシー成長)法により、Ba1-x Srx Si2 膜7′を形成する。なお、蒸着時間は60〜80分である。
このとき、基板温度を600℃に、Ba4の蒸着レートを1.0nm/分に、Si5の蒸着レートを0.7nm/分にそれぞれ固定して、Sr(蒸着レート0.01〜2.4nm/分)6を供給すると、図1(c)に示すように、Ba1-x Srx Si2 膜7がエピタキシャル成長する。
ここで、Ba1-x Srx Si2 膜7にSr6が取り込まれていることは、図3に示すX線回折(XRD)の結果から明らかである。また、Baに対するSrの供給量を増やすにしたがって、2θ=62.5度に存在している回折ピークが2つに分かれていることが分かる。ここで、低角側(2θ=62.5度)のピークはテンプレートのBaSi2 薄膜3の(600)面からの回折であり、一方、高角側(2θ=64.0度)のピークは、Srが添加されることによって格子定数が小さくなったBa1-x Srx Si2 膜7の(600)面からの回折である。格子定数が変わっているので、当然この膜の禁制帯幅は、Srの添加に伴って変化していると言える。
また、図3によれば、θ−2θXRDスペクトルからBa1-x Srx Si2 膜がエピタキシャル成長していることが明らかである。
図4はBaSi2 結晶(図2)のa軸の長さのSr/Ba蒸着レート比依存性を示す図である。
この図から、Baに対するSr(Sr/Ba比)の増加に従ってa軸の長さが短くなり、Srが最高でBaサイトの約7割を置換したと言える。
上記したように、SiとBaからなるBaSi2 という半導体は、Si基板上にエピタキシャル成長可能である。上記実施例ではSrを用いたが、BaSi2 のBaの一部を他のアルカリ土類元素(例えば、Ca,Mg)で置換して、Ba1-x Mx Si2 (M=Ca、Mg)を作製してもよい。
このようにして作製した本発明の半導体材料は、III −V族化合物半導体と同様に禁制帯幅の制御が可能である。すなわち、本発明によれば、Si上にエピタキシャル成長できる多様な禁制帯幅を持つ材料を提供できる。
また、BaSi2 の禁制帯幅は1.1eVとSiと同じであるが、光吸収係数が100倍も大きい。このため、混晶化により、Ba1-x Mx Si2 (M=Sr、Ca、Mg)の禁制帯幅を太陽電池に最適な1.4eV付近まで拡張することで、光吸収係数も大きく、かつ薄膜で安価なBa、Siを用いて、これまでに無い太陽電池材料を提供することができる。
図5は本発明の他の実施例を示すアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造工程断面図である。ここでは、Ba1-x Srx Si2 膜の形成について説明する。
まず、図5(a)に示すように、超高真空下で、ガラス基板11を加熱した状態(400℃)で、先にBa12のみを2〜3秒照射する。
次に、Ba13,Si14,Sr15を同時に照射して多結晶薄膜であるBa1-x Srx Si2 膜16′を形成する。
このとき、基板温度を400℃に、Ba13の蒸着レートを1.0nm/分に、Si14の蒸着レートを0.7nm/分にそれぞれ固定して、Sr(蒸着レート0.01〜2.4nm/分)15を供給すると、図5(c)に示すように、多結晶薄膜であるBa1-x Srx Si2 膜16が成長する。
このようにして得られたBa1-x Srx Si2 膜16のθ−2θXRDカーブが図6に示されている。ここでは、Baに対するSrの添加量を変化させて作製した試料についてX線回折を行っている。回折ピークの主なものを指数付けしたが、その他の回折ピークもBaSi2 薄膜およびBaSrSi2 膜16の回折ピークと考えられる。括弧内は形成された膜厚を示す。なお、成長温度は400℃である。
このように、上記した実施例で示したSi基板から安価なガラス基板に置換しても同様の性能を発揮することができることが明らかとなった。そして、安価なガラス基板上に、テンプレートなしの簡単な堆積法で太陽電池用多結晶薄膜を製作したところ、光吸収係数も大きい上に禁制帯幅が1.4eV近辺に制御でき、高効率で安定な多結晶薄膜を得ることができた。
因みに、ガラス基板11を加熱した状態で、多結晶BaSi2 薄膜を形成しようと、Ba(蒸着レート2nm/min)とSi(蒸着レート1nm/min)を同時に照射してもBaSi2 薄膜は形成されない。また、先にSiを照射し、その後、BaとSiを同時に照射してもBaSi2 は形成されない。これは、図7に示すθ−2θX線回折の結果(基板温度400℃で成膜)で、回折ピークが現れていないことからも判断できる。つまり、ガラス基板上にはアモルファス膜が形成されていると言える。図7において、括弧内は形成された膜厚を示す。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法及び装置は、太陽電池、Si基板上の電子デバイスなどに利用可能である。
1 Si(111)基板
2,12 Ba
3 BaSi2 薄膜(テンプレート)
4,13 Ba(蒸着レート1.0nm/分)
5,14 Si(蒸着レート0.7nm/分)
6,15 Sr(0.01〜2.4nm/分)
7,7′,16,16′ Ba1-x Srx Si2 膜
11 ガラス基板
2,12 Ba
3 BaSi2 薄膜(テンプレート)
4,13 Ba(蒸着レート1.0nm/分)
5,14 Si(蒸着レート0.7nm/分)
6,15 Sr(0.01〜2.4nm/分)
7,7′,16,16′ Ba1-x Srx Si2 膜
11 ガラス基板
Claims (7)
- アルカリ土類金属を用いた半導体であるBaSi2 に、該Ba以外のアルカリ土類金属を添加することで禁制帯幅を制御可能にすることを特徴とするアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法。
- 請求項1記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba以外のアルカリ土類金属がSr、Ca、Mgであることを特徴とするアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法。
- 請求項2記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba以外のアルカリ土類金属がSrであり、超高真空下、Si(111)基板を600℃に加熱した状態でBaのみを堆積し、膜厚20nm程度のBaSi2 薄膜を成長させ、次いで、前記BaSi2 薄膜をテンプレート(種結晶)として、この上に、基板温度とBaおよびSiの供給を同じ状態に固定して、Srを供給して、Ba1-x Srx Si2 膜をエピタキシャル成長させることを特徴とするアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法。
- 請求項3記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba蒸着レートを1.0nm/分、Si蒸着レートを0.7nm/分に固定して照射し、Sr蒸着レートを0.01〜2.4nm/分、基板温度を550〜600℃、蒸着時間を60〜80分としたことを特徴とするアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法。
- 請求項2記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba以外のアルカリ土類金属がSrであり、超高真空下、ガラス基板を加熱した状態でBaのみを2〜3秒照射し、その後、Ba,Sr,Siを同時に照射し、多結晶Ba1-x Srx Si2 膜を成長させることを特徴とするアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法。
- 請求項5記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法において、前記Ba蒸着レートを1.0nm/分、Si蒸着レートを0.7nm/分に固定して照射し、Sr蒸着レートを0.01〜2.4nm/分、基板温度を300〜400℃、蒸着時間を60〜80分としたことを特徴とするアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法。
- 請求項1〜6の何れか一項記載のアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜の製造方法を用いて製造されるアルカリ土類金属を用いた混晶半導体薄膜装置。
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