以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明に係る白金抵抗体式温度センサの第1実施形態を示している。当該温度センサは基板10を備えており、この基板10は、高純度のアルミナ(Al2O3)を含む材料でもって緻密な構造を有するように形成されている。なお、当該本第1実施形態では、上述した高純度のアルミナを含む材料(以下、高純度アルミナ材料ともいう)として、アルミナを99.9(%)以上含む材料が採用されている。なお、基板10は、当該温度センサの支持板としての役割をも果たす。
また、当該温度センサは、白金抵抗体20、両リード30及び帯状の揮発抑制層40を備えており、白金抵抗体20は、図1及び図3にて示すごとく、基板10の表面11のうち図示上側部位(以下、白金抵抗体側部位ともいう)の中央部上に形成されている。ここで、白金抵抗体20は白金(Pt)からなるもので、この白金抵抗体20は、図1にて図示上下方向に蛇行状となるように、図示左方から図示右方にかけて、基板10の表面11上に形成されている。これに伴い、白金抵抗体20は、図1にて図示左右下端部を、左右両側接続端部21とするように形成されている。
両リード30は、外部回路との接続用電極としての役割を果たすもので、当該両リード30は、図1にて示すごとく、基板10の表面11のうち図示下側部位(以下、リード側部位ともいう)の中央部上にて、互いに並行となるように図示上下方向に沿い白金(Pt)でもって形成されている。当該両リード30のうち図1にて図示左側リード30は、その図示上端左側隅角部にて、白金抵抗体20の左側接続端部21と一体に形成されており、一方、右側リード30は、その図示上端右側隅角部にて、白金抵抗体20の右側接続端部21と一体に形成されている。
揮発抑制層40は、白金(Pt)からなるもので、この揮発抑制層40は、図1にて示すごとく、白金抵抗体20の周囲をその左側接続端部21側から右側接続端部21側にかけて囲うように、基板10の表面11のうち上記白金抵抗体側部位の外周部上に沿いコ字状に形成されている。これにより、揮発抑制層40は、その形成材料である白金の揮発に伴い白金蒸気圧を発生し白金抵抗体20の揮発を抑制する役割を果たす。なお、図1において、揮発抑制層40のうち図示左右両側部41は、白金抵抗体20の蛇行方向に沿い位置しており、揮発抑制層40のうち図示上側部42は、白金抵抗体20の各上側蛇行端部に対向して位置している。
また、当該温度センサは、接着層50及び覆蓋層60を備えている。接着層50は、図2及び図3にて示すごとく、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を覆うように、基板10の表面11のうち上記白金抵抗体側部位上に接着形成されている。ここで、揮発抑制層40は接着層50に接している。本第1実施形態では、当該接着層50は、基板10と同様に、上述した高純度アルミナ材料でもって多孔質な構造を有するように形成されている。覆蓋層60は、基板10と同様に、上述した高純度アルミナ材料でもって、接着層50上に積層して形成されており、この覆蓋層60は、接着層50と共に、白金抵抗体20の保護層としての役割を果たす。
以上のように構成した温度センサの製造方法について図4〜図11を参照して説明する。まず、白金(Pt)を用いて、上記高純度アルミナ材料からなる基板10の表面11の全面に亘り、スパッタリングにより、薄膜(例えば、膜厚1.2(μm))状の白金膜70を形成する(図4にて図示左側の平面図及び図示右側の側面図参照)。なお、基板10は、上記高純度アルミナ材料でもって緻密な構造を有するように形成さている。
然る後、当該白金膜70にフォトリソグラフィ処理により所定のパターニング処理を施して、白金抵抗体20、両リード30及び揮発抑制層40を、上述のような構成を有するように、基板10の表面11上に薄膜状にて形成する(図5にて図示左側の平面図、図示中央側の側面図及び図示右側の断面図並びに図1〜図3参照)。
このように基板10の表面11上にパターニング形成した白金抵抗体20、両リード30及び揮発抑制層40にエージング処理を施し、然る後、上記高純度アルミナ材料を、ペースト状にて、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を介し基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位(図6にて図示左側の平面図及び図示右側の側面図参照)上に塗布或いはスクリーン印刷し、接着層50となるペースト層80として形成する。ついで、覆蓋層60を当該ペースト層80上に積層する(図7にて図示右側の平面図及び図示左側の側面図参照)。
このように覆蓋層60をペースト層80、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を介し基板10の表面11上に積層してなる構造体を所定の高温(例えば、1150(℃)〜1300(℃)の範囲の温度)の雰囲気(以下、焼成雰囲気ともいう)内にて焼成する。これにより、当該温度センサの製造が終了する。なお、覆蓋層60を基板10の表面11上に所定の圧力にて加圧した状態で焼成するようにしてもよい。
このようにして製造される温度センサにおいては、ペースト層80が接着層50となって基板10の表面11上に接着されるとともに、覆蓋層60が接着層50上に接着される。これにより、覆蓋層60は、接着層50により、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にしっかりと固着される。
このとき、白金抵抗体20及び揮発抑制層40は接着層50により覆われた状態で基板10の表面11上に保持される。このような状態では、白金抵抗体20がその左側接続端部21から右側接続端部21にかけて揮発抑制層40により囲われている。
従って、上述のような焼成雰囲気内における焼成の過程においては、当該焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスが、接着層50の外周部から接着層50と基板10の境界面或いは接着層50と覆蓋層60との境界面を通り、揮発抑制層40及び白金抵抗体20に到達する。ここで、上述のごとく白金抵抗体20の周囲に揮発抑制層40が形成されているため、多くの高温の酸化性ガスは、まず、揮発抑制層40に達する。また、揮発抑制層40が白金で形成されているから、当該揮発抑制層40は、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発する。このため、揮発抑制層40の揮発により生ずる白金蒸気圧が白金抵抗体20の近傍において高くなる。
また、白金抵抗体20は、揮発抑制層40と同様に白金で形成されていることから、当該白金抵抗体20も、上記雰囲気内の高温の酸化性ガスによって揮発しようとする。しかし、上述のように、揮発抑制層40の揮発による白金蒸気圧が白金抵抗体20の近傍において高くなるため、当該白金蒸気圧が白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。
従って、白金抵抗体20に対し上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスが到達しても、当該白金抵抗体20は殆ど揮発しない。その結果、当該温度センサの製造過程において、上述のような焼成処理がなされても、白金抵抗体20は、焼成前の外形形状をそのまま維持し、温度センサとしての正常な抵抗値をそのまま維持し得る。
また、基板10を上述のように高純度アルミナ材料でもって形成するため、当該基板10にはピンホールが少なく、白金抵抗体20、揮発抑制層40や両リード30のパターン形成においてエッチング処理が短時間で済み、サイドエッチの発生が比較的少なくなる。その結果、各白金抵抗体式温度センサの性能上のばらつきが減少する。
また、基板10を上述のように高純度アルミナ材料でもって形成するため、白金に対する基板10の不純物による反応が少なくなり、白金抵抗体20の耐久性が向上する。
また、基板10を上述のように高純度アルミナ材料でもって形成するため、白金抵抗体20や揮発抑制層40のパターン形成の際にその膜厚を均一にすることができる。これにより、接着層50が白金抵抗体20や揮発抑制層40を介し基板10の表面上により一層良好に形成され得る。これに伴い、接着層50と基板10の表面との間の接着性がより一層密になり、その結果、温度センサの外気が、接着層50と基板10との間の境界には、より一層入り込みにくく、白金抵抗体20が外気中の成分(例えば酸素成分)により酸化されることもない。
次に、上述のように製造した温度センサを用いた温度検出例について説明する。当該温度センサを、自動車に搭載した内燃機関の排気管内に配置する。このような状態において、自動車を走行させれば、当該内燃機関はその排気管内に排気ガスを排出する。この排気ガスの温度は高温(例えば、1000(℃))であるから、当該温度センサは、高温の排気ガスの雰囲気(以下、排気ガス雰囲気ともいう)中に晒されることとなる。
これに伴い、当該排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスは、上述と実質的に同様に、接着層50やこの接着層50と基板10との境界面或いは接着層50と覆蓋層60との境界面を通り、揮発抑制層40及び白金抵抗体20に到達する。ここで、揮発抑制層40は上述のように白金で形成されているから、当該揮発抑制層40は、上記排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発する。このため、揮発抑制層40の揮発による白金蒸気圧が、白金抵抗体20の近傍において高くなる。
また、白金抵抗体20は、上述のように白金で形成されていることから、当該白金抵抗体20も、上記排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発しようとする。しかし、上述のように、揮発抑制層40の揮発による白金蒸気圧が白金抵抗体20の近傍において高くなるため、当該白金蒸気圧が白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。
従って、白金抵抗体20に対し上記排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスが到達しても、当該白金抵抗体20は殆ど揮発しない。よって、当該温度センサによる排気ガスの温度の検出過程において、白金抵抗体20は、その製造直後の外形形状をそのまま維持し、細くなることもなく正常な抵抗値をそのまま維持し得る。このことは、当該温度センサは良好な高温耐久性を永く保持し得ることを意味する。その結果、当該温度センサによれば、常に、内燃機関の排気ガスの高い温度を良好に精度よく検出し得る。
ちなみに、本第1実施形態の温度センサの高温耐久性を評価するために、次の4つの比較例(以下、比較例1〜比較例4という)を準備し、これら各比較例及び本第1実施形態の温度センサに対し耐久性試験を施した。この耐久性試験としては、炉内の酸化性ガスを含む1000(℃)の雰囲気内にて150(時間)の間、上記各比較例及び本第1実施形態の温度センサを晒す試験を採用した。但し、上記各比較例は次のような構成を有する。
比較例1は、図8にて示すごとく、本第1実施形態の温度センサにおいて揮発抑制層40を有しない点を除き、当該温度センサと同様の製造工程により準備する。なお、接着層50は、白金抵抗体20のみを覆うように、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上に形成されている。
比較例2は、図9にて示す構成を有するように準備する。即ち、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を、本第1実施形態の温度センサと同様に、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にパターニング形成してエージング処理を施す。然る後、白金抵抗体20及び揮発抑制層40の内周部を覆うようにして、上記高純度アルミナ材料を、ペースト状にて、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にスクリーン印刷して、内側保護層110となるペースト層をパターニング形成する。
ついで、揮発抑制層40の外周部及び内側保護層110となるペースト層を覆うようにして、旭ガラス株式会社製AP5710型結晶化ガラスを、ペースト状にて、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にスクリーン印刷して、断面コ字状の外側保護層120となるペースト層をパターニング形成し、然る後、焼成処理を施して、比較例2とする。
比較例3は、図10にて示す構成を有するように準備する。即ち、本第1実施形態の温度センサと同様に、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にパターニング形成してエージング処理を施す。然る後、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を覆うようにして、旭ガラス株式会社製AP5710型結晶化ガラスを、ペースト状にて、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にスクリーン印刷して、接着層130となるペースト層をパターニング形成する。ついで、覆蓋層60を、接着層130となるペースト層上に積層し、焼成処理を施して、比較例3とする。
比較例4は、図11にて示す構成を有するように準備する。即ち、本第1実施形態の温度センサと同様に、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にパターニング形成してエージング処理を施す。然る後、白金抵抗体20及び揮発抑制層40を覆うようにして、コーニング株式会社製の96(%)の酸化珪素ガラス(SiO2ガラス)を含む材料を、ペースト状にて、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にスクリーン印刷して、接着層140となるペースト層をパターニング形成する。ついで、覆蓋層60を、接着層140となるペースト層上に積層し、焼成処理を施して、比較例4とする。
以上のようにして準備した比較例1〜比較例4及び本第1実施形態の温度センサに対し上記耐久性試験を行ったところ、次の表1にて示す結果が得られた。
この表1は、比較例1〜比較例4及び本第1実施形態の温度センサ毎に、上記耐久性試験前の室温雰囲気内における白金抵抗体20の抵抗値と当該耐久性試験後の24(℃)の温度雰囲気内における白金抵抗体20の抵抗値とを比較して、白金抵抗体20の抵抗値の増大の度合いを抵抗値変化率でもって示したものである。
ここで、当該抵抗値変化率は、次式(1)により求められる。但し、上記耐久試験後の24(℃)の温度雰囲気内における白金抵抗体20の抵抗値をRfとし、上記耐久試験前の室温雰囲気内における白金抵抗体20の抵抗値をRpとする。
抵抗値変化率={(Rf−Rp)/Rp}×100(%)・・・(1)
当該表1によれば、本第1実施形態の温度センサの白金抵抗体20の抵抗値の変化は、上記耐久性試験の前後において、0.3(%)と、1(%)以下になっている。これに対し、比較例1〜比較例4の各白金抵抗体20の抵抗値は、上記耐久性試験の前後において、本第1実施形態の温度センサの白金抵抗体20の抵抗値の変化に比べて、かなり大きく変化することが分かる。このように抵抗値変化が大きい理由は次の通りである。
本第1実施形態の温度センサを比較例1と比較した場合、比較例1が本第1実施形態の温度センサの揮発抑制層40を有さないことから、当該比較例1では高温雰囲気内における白金抵抗体20の揮発化が進む。このために、白金抵抗体20の抵抗値変化が、本第1実施形態の温度センサよりも比較例1の方がかなり大きい。
また、本第1実施形態の温度センサを比較例2と比較した場合、この比較例2の内側保護層110及び外側保護層120の構成が図9にて示すごとく本第1実施形態の温度センサの接着層50及び覆蓋層60の構成と異なる。また、内側保護層110は接着層50と同様の形成材料からなるが、外側保護層120は、覆蓋層60の形成材料である上記高純度アルミナ材料とは異なり、旭ガラス株式会社製AP5710型結晶化ガラスで形成されている。
ここで、高温においては、当該結晶化ガラスがその一部にて融解し、電気化学的反応が、溶解したガラス成分と白金抵抗体20との間に発生し、白金抵抗体20が劣化する。このために、白金抵抗体20の抵抗値変化が、本第1実施形態の温度センサよりも比較例2の方がかなり大きい。このことは、上述のように高純度アルミナ材料を覆蓋層60の形成材料とすることで、比較例2に比べて、白金抵抗体20の上記ガラス成分との電気化学的反応による劣化を良好に抑制し得ることを意味する。
また、本第1実施形態の温度センサを比較例3と比較した場合、当該温度センサの図2にて示す断面構造は、比較例3の図10にて示す断面構造と同一である。しかし、比較例3の接着層130の形成材料は、本第1実施形態の温度センサの接着層50の形成材料である上記高純度アルミナ材料とは異なり、上述のAP5710型結晶化ガラスで形成されている。このために、白金抵抗体20の抵抗値変化が、本第1実施形態の温度センサよりも比較例3の方がかなり大きい。このことは、上述のように高純度アルミナ材料を接着層50の形成材料とすることで、比較例3に比べて、白金抵抗体20の上記ガラス成分との電気化学的反応による劣化を良好に抑制し得ることを意味する。
また、本第1実施形態の温度センサを比較例4と比較した場合、当該温度センサの図2にて示す断面構造は、比較例4の図11にて示す断面構造と同一である。しかし、比較例4の接着層140の形成材料は、本第1実施形態の温度センサの接着層50の形成材料である上記高純度アルミナ材料とは異なり、上述した酸化珪素ガラスを含む材料でもって形成されている。このために、白金抵抗体20の抵抗値変化が、本第1実施形態の温度センサよりも比較例4の方がかなり大きい。
以上より、本第1実施形態の温度センサは、上記耐久性試験において、白金抵抗体20の揮発化及び上記ガラス成分との電気化学的反応が殆ど進まないことから、比較例1〜比較例4に比べ、高温耐久性に極めて優れていることが分かる。
なお、本第1実施形態における温度センサの揮発抑制層40は、以下の各実施形態にて述べる揮発抑制層(揮発抑制層と同様の役割を果たすリードを含む)と共に、当該温度センサを700(℃)以上の雰囲気内に配置する場合に、当該揮発抑制層によってもたらされる上記作用効果が特に著しく発揮され得る。
(第2実施形態)
図12〜図18は、本発明に係る温度センサの第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、図12〜図14にて示すごとく、上記第1実施形態において、左右両側リード90、100が、両リード30及び揮発抑制層40に代えて、採用された構成となっている。
左右両側リード90、100は、図12にて示すごとく、基板10の表面11の図示左右方向中央を基準にして、図示左右対称的な構成を有するように当該表面11上に白金(Pt)でもって形成されている。
左側リード90は、コ字状リード部91を備えており、このリード部91は、基板10の表面11のうち図12にて図示上側部位(上記白金抵抗体側部位)の左側部上において、白金抵抗体20の図示左側部を左側からコ字状に囲うように形成されている。
ここで、当該リード部91は、その連結部92にて、白金抵抗体20の左側においてその蛇行方向に並行に位置しており、当該リード部91の上下両側腕部93は、白金抵抗体20の左側部を挟むように並行に位置している(図12参照)。また、下側腕部93は、白金抵抗体20の左側接続端部21と一体となっている。
また、左側リード90は、直線状リード部94を備えており、このリード部94は、基板10の表面11の下側部位(上記リード側部位)上の中央側にて、リード部91の下側腕部93から下方へ直線状に延出するように形成されている。
一方、右側リード100は、コ字状リード部101を備えており、このリード部101は、基板10の表面11のうち図12にて図示上側部位(上記白金抵抗体側部位)の右側部上において、白金抵抗体20の図示右側部を右側からコ字状に囲うように形成されている。
ここで、当該リード部101は、その連結部102にて、白金抵抗体20の右側においてその蛇行方向に並行に位置しており、当該リード部101の上下両側腕部103は、白金抵抗体20の右側部を挟むように並行に位置している(図12参照)。また、下側腕部103は、白金抵抗体20の右側接続端部21と一体となっている。なお、上下両側腕部103は、図12にて示すごとく、上下両側腕部93に対し狭隙を介し対向している。
また、右側リード100は、直線状リード部104を備えており、このリード部104は、基板10の表面11の下側部位(上記リード側部位)上の中央側にて、リード部101の下側腕部103から下方へ直線状に延出するように形成されている。
本第2実施形態において、上記第1実施形態にて述べた接着層50は、白金抵抗体20及び両リード90、100の各コ字状リード部91、101を覆うように、基板10の表面11のうち上記白金抵抗体側部位上に形成されている。また、上記第1実施形態にて述べた覆蓋層60は、本第2実施形態においても、接着層50上に積層して形成されている。
次に、以上のように構成した本第2実施形態の温度センサの製造方法について図15〜図18を参照して説明する。まず、上記第1実施形態と同様に、白金でもって、スパッタリングにより、基板10の表面11の全面に亘り、白金膜70を形成する(図15にて図示左側の平面図及び右側の側面図参照)。
然る後、当該白金膜70に、フォトリソグラフィ処理及びエッチング処理でもってパターニング処理を施して、上述のような構成を有するように、白金抵抗体20、両リード90、100を基板10の表面11上に薄膜状に形成する(図16にて図示左側の平面図、図示中央側の側面図及び図示右側の断面図並びに図12〜図14参照)。
このように白金抵抗体20、両リード90、100をパターニング形成した後、上記第1実施形態と同様に、上記高純度アルミナ材料を、ペースト状にて、白金抵抗体20及び両リード90、100の各リード部91、101を介し、基板10の表面11の図17にて図示左側部位(上記白金抵抗体側部位)上に塗布或いはスクリーン印刷しペースト層80として形成する。ついで、覆蓋層60をペースト層80上に積層する(図18にて図示左側の平面図及び図示右側の側面図参照)。
このようにペースト層80、白金抵抗体20及び両リード90、100を介し基板10の表面11上に覆蓋層60を積層してなる構造体を、所定の高温(例えば、1150(℃)〜1300(℃)の範囲の温度)の雰囲気内にて焼成する。これにより、本第2実施形態における温度センサの製造が終了する。
以上のようにして製造される本第2実施形態の温度センサにおいては、覆蓋層60は、上記第1実施形態と同様に、接着層50となったペースト層80の接着作用により、基板10の表面11の上記白金抵抗体側部位上にしっかりと固着される。
このとき、白金抵抗体20及び両コ字状リード部91、101は接着層50により覆われた状態で基板10の表面11上に保持される。このような状態では、白金抵抗体20の左側部がその左側からコ字状リード部91により囲われ、一方、白金抵抗体20の右側部はその右側からコ字状リード部101により囲われている。
従って、上述のような高温の雰囲気内における焼成の過程において、当該雰囲気内の高温の酸化性ガスは、接着層50やこの接着層50と基板10との境界面或いは接着層50と覆蓋層60との境界面を通り、両コ字状リード部91、101及び白金抵抗体20に到達する。ここで、両コ字状リード部91、101は上述のごとく白金で形成されているから、当該両コ字状リード部91、101は、当該雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発する。このため、両コ字状リード部91、101の揮発による白金蒸気圧が、上記第1実施形態にて述べた揮発抑制層40の揮発による場合と同様に、白金抵抗体20の近傍で高くなる。
また、白金抵抗体20は、リード90、100と同様に白金で形成されていることから、当該白金抵抗体20も、上記雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発しようとする。しかし、上述のように、両コ字状リード部91、101の揮発による白金蒸気圧が白金抵抗体20の近傍で高くなるため、当該両コ字状リード部91、101の揮発による白金蒸気圧が白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。
従って、白金抵抗体20に対し上記雰囲気内の高温の酸化性ガスが到達しても、当該白金抵抗体20は殆ど揮発しない。その結果、本第2実施形態において、当該温度センサの製造過程において、上述のような焼成処理がなされても、白金抵抗体20は、焼成前の外形形状をそのまま維持し、正常な抵抗値をそのまま維持し得る。
また、本第2実施形態では、各コ字状リード部91、101が、リードとしての役割に加え、上述のごとく、上記第1実施形態にて述べた揮発抑制層40と同様の役割をも果たし、白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。従って、本第2実施形態では、揮発抑制層40のような揮発抑制層を別途採用する必要がない。
次に、上述のように製造した本第2実施形態の温度センサを用いた温度検出例について説明する。当該温度センサを上記第1実施形態と同様に自動車に搭載の内燃機関の排気管内に配置する。このような状態において、自動車を走行させれば、当該内燃機関はその排気管内に排気ガスを排出する。この排気ガスは高温であるから、当該温度センサは、高温の排気ガス雰囲気中に晒されることとなる。
これに伴い、当該排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスは、上述と実質的に同様に、接着層50やこの接着層50と基板10との境界面或いは接着層50と覆蓋層60との境界面を通り、両コ字状リード部91、101及び白金抵抗体20に到達する。ここで、両コ字状リード部91、101は白金で形成されているから、当該両リード部91、101は、当該排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発し、両リード部91、101の白金蒸気圧が白金抵抗体20の近傍で高くなる。
また、白金抵抗体20は、上記第1実施形態にて述べたように、揮発抑制層40と同様に白金で形成されていることから、当該白金抵抗体20も、当該排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発しようとする。しかし、上述のように、両コ字状リード部91、101の揮発による白金蒸気圧が白金抵抗体20の近傍で高くなるため、当該両コ字状リード部91、101の揮発による白金蒸気圧が、白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。従って、白金抵抗体20に対し上記排気ガス雰囲気内の高温の酸化性ガスが到達しても、当該白金抵抗体20は殆ど揮発しない。
よって、本第2実施形態においても、上記第1実施形態にて述べたと同様に、温度センサによる排気ガスの温度の検出過程において、白金抵抗体20は、その製造直後の外形形状をそのまま維持し、細くなることもなく正常な抵抗値をそのまま維持し得る。その結果、本第2実施形態における温度センサも、上記第1実施形態と同様に、良好な高温耐久性を永く保持し得るのは勿論のこと、常に、内燃機関の排気ガスの高い温度を良好に精度よく検出し得る。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図19及び図20は、本発明に係る白金抵抗体式温度センサの第3実施形態を示している。この第3実施形態においては、上記第1実施形態にて述べた白金抵抗体式温度センサにおいて、揮発抑制層40(図2参照)に代えて揮発抑制層150を採用した構成となっている。
当該揮発抑制層150は、図19及び図20にて示すごとく、接着層50と覆蓋層60との間に介装されている。ここで、揮発抑制層150は、接着層50の表面の全体に亘り、揮発抑制層40と同様の形成材料(白金)でもって積層状に形成されている。また、覆蓋層60は、揮発抑制層150の表面の全体に亘り積層状に設けられている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
また、本第3実施形態にいう温度センサの製造にあたり、白金を用いて、そのスパッタリングにより、覆蓋層60上に揮発抑制層150を形成し、その後、揮発抑制層150の覆蓋層60とは反対側の面を接着層50となるペースト層80(図6参照)の側に位置させるようにして、揮発抑制層150をペースト層80上に積層し、然る後、上記焼成雰囲気内にて焼成する。その他の製造工程は上記第1実施形態と同様である。
このように構成した本第3実施形態では、上述のごとく、揮発抑制層150が、接着層50と覆蓋層60との間にこれら接着層50と覆蓋層60との境界面の全面に亘り介装されている。
従って、上述のような焼成雰囲気内における焼成の過程においては、当該焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスが、白金からなる揮発抑制層150の外周部と接触する。このため、当該揮発抑制層150が上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発する。これに伴い、揮発抑制層150の揮発により生ずる白金蒸気圧が、接着層50を通り、白金抵抗体20の近傍において高くなる。ここで、揮発抑制層150は上述のごとく接着層50の面全体に亘るように形成されているから、揮発抑制層150からの白金蒸気圧は、白金抵抗体20を全体的に覆うように作用する。
また、上記焼成の過程においては、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスが、接着層50の外周部から接着層50と基板10の境界面或いは接着層50と揮発抑制層150との境界面を通り、白金抵抗体20に到達する。従って、白金抵抗体20は上記高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発しようとする。しかし、上述のごとく、揮発抑制層150からの白金蒸気圧が、白金抵抗体20を全体的に覆うように作用しながら高く維持されるため、当該白金蒸気圧が白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。その結果、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガスが白金抵抗体20に到達しても、この白金抵抗体20は殆ど揮発しない。
また、本第3実施形態にいう温度センサが上記第1実施形態にて述べたと同様に内燃機関の排気管内の温度の検出に使用される場合、排気管内の排気ガスの高温の雰囲気中に含まれる高温の酸化性ガスが当該温度センサに作用しても、上述した焼成雰囲気内の高温酸化性ガスに対する白金抵抗体20の揮発抑制と同様に、白金抵抗体20の揮発が良好に抑制される。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図21〜図23は、本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態では、上記第1実施形態にて述べた温度センサ(図2及び図3参照)において、ガラス材料からなる略環状の封止層160を付加的に採用した構成となっている。
当該封止層160は、図21〜図23にて示すように、接着層50の外周面及び覆蓋層60の外周面のうち接着層50の近傍側外周面部を覆うように、かつ、基板10の外周面のうち接着層50の近傍側コ字状外周面部(接着層50の外周面のうち両リード30側外周面部を除くコ字状外周面部に対応する)を覆うように、形成されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
このように構成した本第4実施形態においては、上述のごとく、封止層160が、接着層50の外周面を覆うように、この接着層50の外周面を介し覆蓋層60の接着層50の近傍側外周面部から基板10の接着層50の近傍側コ字状外面部に亘って形成されている。
従って、接着層50の基板10或いは覆蓋層60との境界面が、封止層160によって、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガス或いは上記内燃機関の排気管内の雰囲気内の高温の酸化性ガスから封止される。その結果、白金抵抗体20が当該酸化性ガスから良好に遮断されるので、揮発抑制層40の白金蒸気圧の作用と相まって、上記酸化性ガスの影響による当該白金抵抗体20の揮発がより一層良好に抑制され得る。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
(第5実施形態)
図24〜図26は、本発明の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、上記第1実施形態にて述べた温度センサ(図2及び図3参照)において、新たに、両リード170及び封止層180を採用した構成となっている。
両リード170は、両リード30を外部回路に接続するためのもので、これら両リード170は、図24及び図26にて示すごとく、両リード30上に沿い設けられて当該両リード30から封止層180を介し外方へ延出している。
封止層180は、図24〜図26にて示すごとく、基板10、接着層50、覆蓋層60、両リード30及び両リード170のうち両リード30上に沿う両リード部位を外方から被覆して包囲するように、ガラス材料でもって形成されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
このように構成した本第5実施形態においては、封止層180が上述のごとく形成されているから、接着層50の基板10或いは覆蓋層60との境界面が、封止層180によって、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガス或いは上記内燃機関の排気管内の雰囲気内の高温の酸化性ガスから封止される。このため、白金抵抗体20が当該酸化性ガスから良好に遮断されるので、上記第4実施形態にて述べたと同様に、揮発抑制層40の白金蒸気圧の作用と相まって、上記酸化性ガスの影響による当該白金抵抗体20の揮発がより一層良好に抑制され得る。
(第6実施形態)
図27〜図29は、本発明に係る温度センサの第6実施形態を示している。この第6実施形態の温度センサは、上記第1実施形態にて述べた温度センサにおいて、基板10及び揮発抑制層40に代えて、基板200及び揮発抑制層210を採用した構成を有する。
基板200は、上記第1実施形態にて述べた基板10の形成材料と同様の形成材料でもって形成されており、この基板200は、図27にて図示左右方向において、基板10(換言すれば、上記第1実施形態にて述べた接着層50及び覆蓋層60)より延出するように広く形成されている。また、当該基板200は、その図27にて図示上端部において、接着層50及び覆蓋層60よりも上方へ延出するように形成されている。
これにより、基板200の表面201は、接着層50及び覆蓋層60の図27にて図示左右両側及び図示上側において接着層50及び覆蓋層60の外周側へコ字状に延出している。なお、基板200の表面201において上述のようにコ字状に延出する部位を、以下、コ字状延出表面部位202という。
揮発抑制層210は、上記第1実施形態にて述べた揮発抑制層40と同様に、白金(Pt)からなるもので、この揮発抑制層210は、図27〜図29から分かるように、上記第1実施形態にて述べた白金抵抗体20の周囲をその左側接続端部21側から右側接続端部21側にかけて囲うように、基板200の表面201に沿いコ字状に形成されている。
ここで、揮発抑制層210は、上記第1実施形態にて述べた揮発抑制層40とは異なり、基板200の表面201において、白金抵抗体20の周囲からコ字状延出表面部位202に亘り形成されている。なお、以下、揮発抑制層210のうちコ字状延出表面部位202に対するコ字状対応部位及びこの対応部位を除くコ字状部位を、それぞれ、外側抑制層部211及び内側抑制層部212ともいう。
また、本第6実施形態において、上記第1実施形態にて述べた接着層50は、図27〜図29にて示すごとく、白金抵抗体20及び揮発抑制層210のうち内側抑制層部212を覆うように、基板200の表面201のうち図27にて図示上側部位上に接着形成されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
以上のように構成した本第6実施形態の温度センサの製造方法について説明する。上記第1実施形態と実質的に同様にして、白金抵抗体20、両リード30及び揮発抑制層210を、上述のような構成を有するように、基板200の表面201にパターニング処理でもって薄膜状にて形成する。なお、基板200は、上記第1実施形態にて述べた基板10と同様に、上記高純度アルミナ材料でもって緻密な構造を有するように形成さている。
然る後、上記高純度アルミナ材料を、ペースト状にて、白金抵抗体20及び揮発抑制層210の内側抑制層部212を介し基板200の表面201の図27にて図示上側部位上にスクリーン印刷し、接着層50となるペースト層として形成する。ついで、覆蓋層60を当該ペースト層上に積層する。
このように覆蓋層60が、接着層50となるペースト層、白金抵抗体20及び揮発抑制層210の内側抑制層部212を介し、基板200の表面201上に積層されてなる構造体を、上記第1実施形態にて述べたと同様に上記焼成雰囲気内にて焼成する。これにより、本第6実施形態にいう温度センサの製造が終了する。
以上のような製造工程においては、接着層50の形成に先立ち、基板200が、揮発抑制層210の外側抑制層部211を、接着層50の外側に露呈させるように、当該接着層50よりも広く形成される。従って、揮発抑制層210の内側抑制層部212及び白金抵抗体20を介し基板200の表面201に接着層50を形成する際に、当該接着層50の形成が容易となる。
また、揮発抑制層210は、上記第1実施形態にて述べた揮発抑制層40よりも、大きな体積を有する。従って、揮発抑制層210が上述した高温の酸化性ガスに起因して発生する白金蒸気圧は、揮発抑制層40よりも増大する。その結果、白金抵抗体20の揮発がより一層良好に抑制される。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
ちなみに、本第6実施形態の温度センサの高温耐久性を評価するために、次の2つの比較例(以下、比較例5及び比較例6という)を準備して、これら各比較例5、6及び本第6実施形態の温度センサに対し耐久性試験を施した。
この耐久試験にあたり、各比較例5、6及び本第6実施形態の温度センサの各素子を、代わる代わる、直流電圧5(V)の直流電源及び固定抵抗と直列に接続する回路を準備した。そして、本第6実施形態では、上記第1実施形態にて述べた耐久試験のもと、上記直流電源の直流電圧を、上記固定抵抗を介し、各比較例5、6及び本第6実施形態の温度センサのいずれかの素子に印加して通電することで行った。但し、各比較例5、6は次のような構成を有する。
比較例5としては、上記第1実施形態にて述べた比較例1(図8参照)を用いた。また、比較例6としては、上記第1実施形態にて述べた温度センサ(図1〜図3参照)を用いた。
しかして、上述のように本第6実施形態の耐久試験を行ったところ、次の表2にて示す結果が得られた。
この表2によれば、比較例2、即ち、上記第1実施形態にて述べた温度センサの高温耐久性は、比較例1に比べて、大幅に向上しているが、本第6実施形態の温度センサの高温耐久性は、比較例2よりもさらに向上していることが分かる。
(第7実施形態)
図30〜図32は、本発明に係る温度センサの第7実施形態を示している。この第7実施形態においては、上記第1実施形態にて述べた基板10、接着層50及び覆蓋層60が、その各左側面及び各右側面及び各上側面(図31及び図32参照)にて、揮発抑制層40の左側、右側及び上側の外面と一致するように、小さく形成されている。
また、本第7実施形態では、帯状の揮発抑制層220が、図30〜図32にて示すように、接着層50の外周面のうち両リード30側を除くコ字状外周面部を覆うように形成されている。ここで、当該揮発抑制層220は、基板10及び覆蓋層60の各外周面のうち上述した接着層50のコ字状外周面部に対応してその近傍に位置する各外周面部(図31及び図32参照)をも、接着層50のコ字状外周面部と共に覆うように形成されている。なお、本第7実施形態においても、揮発抑制層220は、揮発抑制層40と同様の形成材料でもって形成されている。
また、本第7実施形態では、基板10の表面11上に白金抵抗体20、揮発抑制層40、接着層50及び覆蓋層60を上記第1実施形態にて述べたと同様に形成した後において、揮発抑制層220が上述のような構成となるように形成される。
なお、揮発抑制層220は、白金ペーストを、上記構成となるように基板10、接着層50及び覆蓋層60の上記各コ字状外周面部に沿い塗布した後焼成することにより形成される。
以上によれば、本第7実施形態では、揮発抑制層220が揮発抑制層40に加え採用されているから、温度センサとしての揮発抑制層全体の体積は、上記第6実施形態と同様に大きくなる。従って、両揮発抑制層40、220が上述した高温の酸化性ガスに起因して発生する白金蒸気圧は、揮発抑制層40単独の場合よりも増大する。その結果、白金抵抗体20の揮発がより一層良好に抑制される。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
(第8実施形態)
図33〜図35は、本発明の第8実施形態を示している。この第8実施形態では、上記第6実施形態において、ガラス材料からなる環状の封止層230を付加的に設けた構成が採用されている。
当該封止層230は、図33〜図35にて示すごとく、上記第6実施形態にて述べた揮発抑制層210のコ字状外側抑制層部211及び両リード30のうち白金抵抗体20の近傍側部位を介し、基板200の表面201の図33にて図示上側部位上に、接着層50及び覆蓋層60の各外周面を覆うように形成されている。その他の構成は上記第6実施形態と同様である。
このように構成した本第8実施形態においては、上述のごとく、封止層230が、接着層50及び覆蓋層60の各外周面を覆うように、揮発抑制層210のコ字状外側抑制層部211及び両リード30のうち白金抵抗体20の近傍側部位を介し、基板200の表面201の図33にて図示上側部位上に形成されている。
従って、接着層50の基板200或いは揮発抑制層210との境界面や接着層50の覆蓋層60との境界面が、封止層230によって、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガス或いは上記内燃機関の排気管内の雰囲気内の高温の酸化性ガスから封止される。その結果、白金抵抗体20が当該酸化性ガスから良好に遮断されるので、揮発抑制層210の白金蒸気圧の作用と相まって、上記酸化性ガスの影響による当該白金抵抗体20の揮発がより一層良好に抑制され得る。その他の作用効果は上記第6実施形態と同様である。
なお、封止層230の形成にあたっては、ガラスペーストを、接着層50の焼成前或いは焼成後に、接着層50及び覆蓋層60の各外周面を覆うように、揮発抑制層210のコ字状外側抑制層部211及び両リード30のうち白金抵抗体20の近傍側部位を介し、基板200の表面201の図33にて図示上側部位上に塗布し、然る後、接着層50の焼成と共に焼成し或いは接着層50の焼成後に焼成し、封止層230として形成するようにしてもよい。
(第9実施形態)
図36〜図38は、本発明の第9実施形態を示している。この第9実施形態では、上記第6実施形態において、封止層240を付加的に設けた構成が採用されている。
封止層240は、図36〜図38にて示すごとく、上記第6実施形態にて述べた温度センサを、その図示下側部位を除き、外方から被覆して包囲するように、ガラス材料でもって形成されている。なお、上記図示下側部位は、上記第6実施形態にて述べた温度センサのうち両リード30の接着層50の近傍部位に対応する部位を含まない。その他の構成は、上記第6実施形態と同様である。
このように構成した本第9実施形態においては、封止層240が上述のごとく形成されているから、接着層50の基板200或いは揮発抑制層210との境界面や接着層50の覆蓋層60との境界面が、封止層240によって、上記焼成雰囲気内の高温の酸化性ガス或いは上記内燃機関の排気管内の雰囲気内の高温の酸化性ガスから封止される。
このため、白金抵抗体20が当該酸化性ガスから良好に遮断されるので、上記第8実施形態にて述べたと同様に、揮発抑制層210の白金蒸気圧の作用と相まって、上記酸化性ガスの影響による当該白金抵抗体20の揮発がより一層良好に抑制され得る。その他の作用効果は上記第6実施形態と同様である。
(第10実施形態)
図39及び図40は、本発明に係る温度センサの第10実施形態を示している。この第10実施形態では、上記第6実施形態にて述べた温度センサにおいて、揮発抑制層250を、揮発抑制層210に加えて採用した構成となっている。
当該揮発抑制層250は、図39及び図40にて示すごとく、接着層50と覆蓋層60との間に介装されている。ここで、揮発抑制層250は、接着層50の表面の全体に亘り、揮発抑制層210と同様の形成材料(白金)でもって積層状に形成されている。また、覆蓋層60は、揮発抑制層250の表面の全体に亘り積層状に設けられている。その他の構成は上記第6実施形態と同様である。
また、本第10実施形態にいう温度センサの製造にあたっては、白金を用いて、そのスパッタリングにより、覆蓋層60の裏面に揮発抑制層250を形成し、その後、揮発抑制層250の覆蓋層60とは反対側の面を、接着層50となるペースト層の側に位置させるようにして、当該ペースト層上に揮発抑制層250を積層し、然る後、上記焼成雰囲気内にて焼成する。その他の製造工程は上記第1実施形態と同様である。
このように構成した本第10実施形態では、揮発抑制層210の他に、揮発抑制層250が、上述のごとく、接着層50と覆蓋層60との間にこれら接着層50と覆蓋層60との境界面の全面に亘り介装されている。
従って、上述のような高温の酸化性ガスが、揮発抑制層210の外側抑制層部211の外表面及び揮発抑制層250の外周部の双方と接触する。このため、両揮発抑制層210、250が、共に、高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発する。
これに伴い、両揮発抑制層210、250の揮発により生ずる白金蒸気圧が、接着層50を通り、白金抵抗体20の近傍において高くなる。ここで、揮発抑制層250は上述のごとく接着層50の面全体に亘るように形成されているから、揮発抑制層250からの白金蒸気圧は、揮発抑制層210からの白金蒸気圧と相まって、白金抵抗体20を全体的に覆うように作用する。
従って、揮発抑制層250からの白金蒸気圧が、白金抵抗体20を全体的に覆うように作用しながら、揮発抑制層210からの白金蒸気圧と相まって、高く維持される。このため、両揮発抑制層210、250からの白金蒸気圧が白金抵抗体20の揮発を良好に抑制する。その結果、高温の酸化性ガスが白金抵抗体20に到達しても、この白金抵抗体20は揮発しない。
なお、上記第10実施形態においては、揮発抑制層250は、接着層50と覆蓋層60との間にて、例えば、千鳥格子状或いは縞状に白金でもって形成されていてもよい。
(第11実施形態)
図41〜図43は、本発明の第11実施形態を示している。この第11実施形態では、上記第6実施形態にて述べた温度センサ(図27〜図29参照)において、揮発抑制層210に代えて、両内側揮発抑制層260、270及び外側揮発層280を設けた構成が採用されている。
両内側抑制層260、270は、接着層50の裏面と基板200の表面201の上側部位との間に白金抵抗体20をその周囲から囲うように埋設されて、基板200の表面201の上側部位上に互いに対称的なL字形状にて形成されている。
ここで、内側揮発抑制層260は、白金抵抗体20の図41にて図示左側部を左側接続端子21から当該白金抵抗体20の蛇行方向先端部の左右方向中央にかけて、L字状に囲うように白金でもって形成されている。一方、内側揮発抑制層270は、白金抵抗体20の図41にて図示右側部を右側接続端子21から当該白金抵抗体20の蛇行方向先端部の左右方向中央にかけて、L字状に囲うように白金でもって形成されて、その先端部にて、内側抑制層260の先端部に対向している。
本第11実施形態では、揮発抑制層260は、その基端部にて、白金抵抗体20の左側接続端子21と共に、左側リード30の内端部と一体となるように形成されている。一方、揮発抑制層270は、その基端部にて、白金抵抗体20の右側接続端子21と共に、右側リード30の内端部と一体となるように形成されている。
外側抑制層280は、両内側揮発抑制層260、270から分離するように、上記第6実施形態にて述べたコ字状延出表面部位202に沿い白金でもってコ字状に形成されて、接着層50及び覆蓋層60の外側に露呈している。その他の構成は、上記第6実施形態と同様である。
このように構成した本第11実施形態においては、両内側揮発抑制層260、270が揮発抑制層210のコ字状の内側抑制層部212(図27参照)に実質的に相当し、外側揮発層280が揮発抑制層210のコ字状の外側抑制層部211(図27参照)に実質的に相当する。
従って、両内側揮発抑制層260、270がコ字状の内側抑制層部212と実質的に同様の役割を果たし、外側揮発層280がコ字状の外側抑制層部211と実質的に同様の役割を果たす。その結果、本第11実施形態においても、上記第6実施形態と実質的に同様の作用効果が達成され得る。
(第12実施形態)
図44〜図46は、本発明に係る白金抵抗型温度センサの第12実施形態を示している。この温度センサは、覆蓋層300を備えており、この覆蓋層300は、当該温度センサの支持層としての役割を果たす。なお、本第12実施形態においても、覆蓋層300は、上記各実施形態にて述べた高純度アルミナ材料でもって形成されている。
また、本第12実施形態にいう温度センサは、図44〜図46から分かるように、左右両側リード310、320及び揮発抑制層330を備えている。左側リード310は、図44にて示すごとく、直線状リード部311及び内外両側パッド部312、313を、図示略コ字状となるように、白金(Pt)でもって一体に形成して構成されている。
直線状リード部311は、図44にて示すごとく、覆蓋層300の表面301のうち左側部位に帯状に形成されている。内側パッド部312は、直線状リード部311の図44にて図示上端部から右側へL字状に延出するように覆蓋層300の表面301に沿い帯状でもって形成されている。本第12実施形態では、直線状リード部311は、内側パッド部312と共に、内側揮発抑制層部としての役割をも果たす。
また、外側パッド部313は、図44にて示すごとく、覆蓋層300の表面301の図示左側下部上にて、リード部311の下端部から右側へL字状に延出するように覆蓋層300の表面301に沿い四角状でもって形成されている。
右側リード320は、図44にて示すごとく、内外両側パッド部321、322を、図示L字状となるように、白金(Pt)でもって一体に形成して構成されている。外側パッド322は、覆蓋層300の表面301の図示右側下部上にて、外側パッド部313と並んで間隔をおいて形成されている。なお、当該外側パッド部322は、外側パッド部313と共に、外部回路の両接続端子に接続される。
内側パッド部321は、図44にて示すごとく、覆蓋層300の表面301に沿い外側パッド部322の内端部から図示左側へ帯状に延出して形成されている。
揮発抑制層330は、図44にて示すごとく、覆蓋層300の表面301に沿いその図示上側部から右側中間部位にかけてL字状となるように白金(Pt)でもって一体に形成されている。
また、本第12実施形態にいう温度センサは、図45及び図46にて示すごとく、接着層340を備えており、この接着層340は、図44にて示すごとく、揮発抑制層330の内縁部のほぼ全体、左側リード310のうち直線状リード部311の内縁部、内側パッド部312及び外側パッド部313の内側パッド部312に対する対向縁部並びに右側リード320の内側パッド部321及びこの内側パッド部321に対する外側パッド部322の近傍部位を介し、覆蓋層300の表面301のほぼ中央部上に沿い形成されている。なお、当該接着層340は、上記第1実施形態にて述べた高純度アルミナ材料でもって多孔質な構造を有するように形成されている。
また、本第12実施形態にいう温度センサは、図44〜図46にて示すごとく、白金抵抗体350及び基板360を備えている。白金抵抗体350は白金(Pt)からなるもので、この白金抵抗体350は、図44にて図示左右方向に蛇行状となるように、図示上方から図示下方にかけて、基板360の裏面361上に形成されている。これに伴い、白金抵抗体350は、図44にて図示上下端部を、上下両側接続端部351とするように形成されている。本第12実施形態では、白金抵抗体350の上下両側端部351は、接着層340に形成した上下両側貫通孔部341(図46参照)を通り左側リード310の内側パッド部312及び右側リード320の内側パッド部321上にそれぞれ接触するように形成されている。
基板360は、上記第1実施形態にて述べた高純度のアルミナ(Al2O3)を含む材料でもって緻密な構造を有するように形成されている。なお、本第12実施形態では、覆蓋層300を支持層として用いることで、基板360は、覆蓋層と同様の役割をも果たす。
以上のように構成した本第12実施形態の温度センサの製造方法について説明する。まず、覆蓋層300を準備する。然る後、白金(Pt)を用いて、覆蓋層300の表面301の全面に亘り、スパッタリングにより、上記第1実施形態にて述べた白金膜70と同様の白金膜を形成する。
ついで、このように形成した白金膜にフォトリソグラフィ処理により所定のパターニング処理を施して、左右両側リード310、320及び揮発抑制層330を、上述のような構成を有するように、覆蓋層300の表面301上に薄膜状にて形成し、ついで、上記第1実施形態にて述べたと同様にエージング処理する。
然る後、上記高純度アルミナ材料を、ペースト状にて、揮発抑制層330の内縁部のほぼ全体、左側リード310のうち直線状リード部311の内縁部、内側パッド部312及び外側パッド部313の内側パッド部312に対する対向縁部並びに右側リード320の内側パッド部321及びこの内側パッド部321に対する外側パッド部322の近傍部位を介し、覆蓋層300の表面301のほぼ中央部上に塗布或いはスクリーン印刷し、接着層340となるペースト層として形成する。ついで、このように形成したペースト層にパターニング処理を施して、上下両側貫通孔部341を形成する。
一方、白金(Pt)を用いて、上記高純度アルミナ材料からなる基板360の裏面361の全面に亘り、スパッタリングにより、上記第1実施形態にて述べた白金膜70と同様に白金膜を形成する。ついで、このように形成した白金膜にフォトリソグラフィ処理により所定のパターニング処理を施して、白金抵抗体350を、上述のような構成を有するように基板360の裏面361上に形成し、上記第1実施形態にて述べたと同様にエージング処理する。
然る後、基板360を、白金抵抗体350を介し、接着層340上に積層する。このとき、白金抵抗体350が、その上下両側接続端部351にて、 接着層340となるペースト層の上下両側貫通孔部341を通り、左側リード310の内側パッド部312及び右側リード320の内側パッド部321上にそれぞれ接触するように、基板360側から覆蓋層300に向けて押圧される。
このように基板360を接着層340に積層してなる構造体を上記第1実施形態にて述べたと同様の焼成雰囲気内で焼成する。これにより、本第12実施形態にいう温度センサの製造が終了する。
このようにして製造される温度センサにおいては、白金抵抗体350が、基板360と接着層340との間に挟持された状態にて、当該接着層340により被覆される。ここで、白金抵抗体350は、左右両側リード310、320及びL字状の揮発抑制層330でもって、その内側に包囲される。
従って、高温の酸化性ガスが、左右両側リード310、320及びL字状の揮発抑制層330を介し覆蓋層300と接着層340との境界面或いは接着層340と基板360の境界面を通り、白金抵抗体350に到達する。
ここで、上述のごとく白金抵抗体350の周囲に左右両側リード310、320及びL字状の揮発抑制層330が形成されているため、多くの高温の酸化性ガスは、まず、左右両側リード310、320及び揮発抑制層330に達する。また、左右両側リード310、320及び揮発抑制層330が白金で形成されているから、当該左右両側リード310、320及び揮発抑制層330は、高温の酸化性ガスの影響を受けて揮発する。このため、左右両側リード310、320及び揮発抑制層330の揮発により生ずる白金蒸気圧が白金抵抗体350の近傍において高くなる。
また、白金抵抗体350も白金で形成されていることから、当該白金抵抗体350は、上記雰囲気内の高温の酸化性ガスによって揮発しようとする。しかし、上述のように、左右両側リード310、320及び揮発抑制層330の揮発による白金蒸気圧が白金抵抗体350の近傍において高くなるため、当該白金蒸気圧が白金抵抗体350の揮発を良好に抑制する。
従って、白金抵抗体350に対し高温の酸化性ガスが到達しても、当該白金抵抗体350は殆ど揮発しない。その結果、白金抵抗体350は、外形形状をそのまま維持し、温度センサとしての正常な抵抗値をそのまま維持し得る。
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記第1実施形態において、揮発抑制層40は、基板10の表面11上に形成するのではなく、接着層50の基板10側の面に形成するようにしてもよい。
(2)また、上記第3実施形態において、揮発抑制層150は、接着層50と覆蓋層60との境界面の全体に亘り形成することに代えて、当該境界面の一部に形成するようにしてもよい。
(3)揮発抑制層40は、上記第1実施形態にて述べた例とは異なり、白金抵抗体20の周囲の少なくとも一部に対応する形状にて、当該白金抵抗体20の周囲の少なくとも一部に対応するように接着層50と基板10の表面との間に形成するようにしてもよい。
(4)白金抵抗体20、350、両リード30、90、100、310、320及び揮発抑制層40、330は、薄膜状に限ることなく、厚膜状に形成してもよい。
(5)基板10、360、接着層50、340や覆蓋層60、300は、上記高純度アルミナ材料に限ることなく、アルミナを主成分とする材料或いは一般にセラミックスを主成分とする材料で形成してもよい。
(6)接着層50或いは340は、多孔質材料からなる多孔質層であればよい。なお、接着層50或いは340の気孔率は40(%)〜70(%)の範囲以内の値であることが望ましい。