まず、本発明で適用されるポリエステル樹脂フィルム(F)について述べる。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム(F)は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)とからなる二層構成のフィルムで、金属板に直接ポリエステル樹脂フィルム層(B層)が相接して被覆されているか、若しくは白色及び/または有色顔料を20〜70質量%含有する厚みが2〜7μmの接着剤を介して、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)が最表層になるように金属板に被覆されている。
本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板は、主に絞り・しごき加工によって製缶される材料である。周知のように、しごき加工は、しごき加工前の缶体の、缶胴部の総板厚よりも小さく設けたパンチとダイスの間隔(クリアランス)に缶体を通過させて、ダイスのしごき作用点で缶胴部の厚みを薄くする、加工方法である。通常、絞り・しごき加工の場合、所望する缶サイズ、例えば350mlのビール缶サイズを得るためには、缶胴部金属板の破断防止から2回若しくは3回のしごき加工、すなわち、多段しごき加工を行っているのが一般的である。
この時、しごき加工で、ポリエステル樹脂は加工時の発熱により結晶化と缶高さ方向へ伸ばされることにより延伸化が同時に起こる。この結果、缶の外面に被覆されているフィルムは成形に追随出来ずダイスの作用点を起点とした、「カジリ」と言われる缶の高さ方向にフィルムに疵が発生する、と言った現象が起こり、激しい場合はフィルムのカジリが起点となって、金属板の破断に繋がる場合がある。金属板の破断が起こった場合、残骸を取り除く必要があることから、ライン停止となり著しく生産性を低下させる結果となる。また、フィルムが破断しても、缶体としては被覆フィルムの健全性が確保出来ないことから、実用性を有する缶にはならず、不良缶となり歩留まりの低下となり、生産性は低下する。何れにしろ好ましくない結果となる。
フィルムのしごき加工によるカジリ易さは、フィルム側から見ると「耐カジリ性」、と言った特性になるが、缶の外面側に被覆されているフィルムが、しごき加工で、「カジリ」が発生するメカニズムは明確になっていないが、発明者らの検討から、フィルムの耐カジリ性は、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)と言った耐熱性、極限粘度(IV)、フィルム厚み、結晶性等の要因が、「カジリ」の発生に関与しており、特に、高速・高加工度におけるしごき加工で、こうした「カジリ」を回避するためには、上述した要因のバランスが重要であることが明らかになり、本発明に至ったものである。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム(F)は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)とからなる二層構成のフィルムである。ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、融点(A−Tm)が235℃以上、結晶融解熱(A−Hm)及び/または冷結晶化熱(A−Hc)が25〜45J/g、ガラス転移温度(A−Tg)が65℃以上、極限粘度(A−IV)が0.58dl/g以上で、滑剤、熱安定化剤及び/または酸化防止剤を含むポリエステル樹脂フィルム層で、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、融点(B−Tm)が220℃以上、結晶融解熱(B−Hm)及び/または冷結晶化熱(B−Hc)が20〜45J/g、ガラス転移温度(B−Tg)が60℃以上、極限粘度(B−IV)が0.58dl/g以上で、熱安定化剤及び/または酸化防止剤を含むポリエステル樹脂フィルム層である。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、金属板に被覆された時最表層となることから、ダイスの作用点と直接接することとなるフィルム層である。従って、しごき加工ではダイスとの摩擦熱を直接受けるため、フィルムの耐熱性は重要となり、融点(Tm)は235℃以上が必要である。235℃未満では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点が低いため、高速・高加工度の連続成形の、特にしごき加工に耐えることが難しく、カジリの発生が起こる場合があり好ましくない。さらに、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点について言えば、前述した多段しごき加工における一回のしごき加工で板厚減少率として30%以上の場合は、240℃以上が好ましい。
本発明ではポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)の上限値は特に限定するものではないが、一般に融点の高いポリエステル樹脂は結晶性の強い傾向にあり、後述する結晶融解熱(A−Hm)や冷結晶化熱(A−Hc)との関係もあることから、一概には限定されるものでないが、大まかには260℃以下が望ましい。本発明ではポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、融点(B−Tm)が220℃以上である。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はダイスと直接接するフィルム層でないため、ダイスとの摩擦熱を直接受けることはなく、その分要求される耐熱性は若干緩やかなものが使用可能となる。
しかし、220℃未満では、耐熱性が若干劣ることからカジリが発生し易くなること、また、前述したポリエステル樹脂フィルム層(A層)との層間密着性が低下し微細なカジリが層間に達し激しいカジリに発展する場合があることから、好ましくない。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)は、好ましくは225℃以上が良い。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)の上限値も特に限定するものでないが、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点と同じか、または低いことが、ラミネート性を確保することからは好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点より低い場合は、後述するラミネート金属板の製造の面から、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)とポリエステル樹脂フィルム(B)の融点(B−Tm)の温度差が大きいと、ポリエステル樹脂フィルム層(F層)の非晶質化の加熱でポリエステル樹脂フィルム層(A層)のフィルム収縮によるフィルムずれを起こす危険性が増すため、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)とポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)の温度差は、(A−Tm)−(B−Tm)として大きくても25℃以内、好ましくは20℃以内、さらに好ましくは15℃以内が良い。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の結晶融解熱(A−Hm)及び/または冷結晶化熱(A−Hc)は、25〜45J/gの範囲であり、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の結晶融解熱(B−Hm)及び/または冷結晶化熱(B−Hc)は、20〜45J/gの範囲である。結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)は、共に樹脂の結晶性の強弱を熱量で表したもので、冷結晶化熱(Hc)は単位質量当たりの樹脂が熱で結晶化する量を熱量で示したもので、結晶融解熱(Hm)は単位質量当たりの樹脂が熱で結晶化したものが溶解する量を熱量で示したものである。従って、冷結晶化熱(Hc)が大きいことは結晶化する量が多いことを示し、結晶融解熱(Hm)が大きいことは結晶化した量が多いことを示している。
本発明に使用されるポリエステル樹脂フィルムは結晶性があるが、前述した結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)の大きい結晶性の強い樹脂では、しごき加工に追従できずカジリ易くなるため好ましくない。しかし、結晶性のポリエステル樹脂で結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)の小さな樹脂は、概して耐熱性が劣り軟質であるため、こうしたフィルムもまた耐カジリ性の点で劣る、と言った問題がある。そこで、本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に適用されるポリエステル樹脂の結晶融解熱(A−Hm)及び冷結晶化熱(A−Hc)は、一方若しくは両方の特性値として25〜45J/gの範囲とする。
25J/g未満の場合、結晶化する量が少ないため変形抵抗と言った観点からは有利であるが、耐熱性の点で劣り、かえって耐カジリ性が劣るため好ましくない。特に、しごき加工が60缶/分以上の高速の場合や加工度が50%以上の高加工度の場合、こうした現象が顕著に現れてくる危険性が高いため、好ましくない。一方、45J/gを超えると、耐熱性と言った観点からは問題ないが、結晶化する量が多いため成形に追随できなくカジリが発生する場合があり、好ましくない。
ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の結晶融解熱(B−Hm)及び冷結晶化熱(B−Hc)も、前述した変形抵抗を大きくさせない、と言った観点からは小さく方が好ましく、また、前述したようにポリエステル樹脂フィルム層(B層)は直接ダイスに接触しないため、若干軟質でも使用可能となることから、一方、若しくは両方の特性値として20〜45J/gの範囲が適用可能となる。しかし、20J/g未満の場合では、結晶化する量が少ないため成形に追随すると言った観点からは有利であるが、やはり耐熱性の点で劣り、かえって耐カジリ性が劣るため好ましくない。特に、しごき加工が60缶/分以上の高速の場合や加工度が50%以上の高加工度の場合、こうした現象が顕著に現れてくる危険性が高い。一方、45J/gを超えると、耐熱性と言った観点からは問題ないが、結晶化する量が多いため成形に追随できなくカジリが発生する場合があり好ましくない。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)のガラス転移温度(A−Tg)が65℃以上で、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度(B−Tg)は60℃以上である。ガラス転移温度(Tg)も耐カジリに関わるフィルム特性で、十分に非晶質化されたフィルムのガラス転移温度(Tg)とカジリ発生率(成形缶数に対するカジリ発生缶数の割合)とは、関係を示しており、ガラス転移温度(Tg)が低いフィルムはカジリ発生率が高い、と言った傾向がある。
本発明のように、缶の外面側となるフィルムがポリエステル樹脂フィルム(F)のように二層構成のフィルムの場合、特に、ダイスと接するポリエステル樹脂フィルム層(A層)のガラス転移温度(A−Tg)は重要で、65℃以上は必要である。65℃未満では、高速・高加工度のしごき加工でカジリが起こる時ががり、ガラス転移温度(A−Tg)が65℃より更に低いポリエステル樹脂フィルムでは、カジリの発生は顕著に現れてくる、と言った挙動を示す。従って、65℃以上あれば、前述した成形速度・加工度の範囲内では、カジリは殆ど発生はなく、良好な耐カジリ性を示す。
ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度(B−Tg)は60℃以上である。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ダイスと直接には接触していないとは言え、絞り加工時の熱やしごき加工時の熱の影響を受け、やはり軟質化してくることには変わりない。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度(B−Tg)が65℃未満では、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の軟質化の影響を受け、しごき加工で外面のポリエステル樹脂フィルム層(F層)の厚み方向のダイスへの食い込みが大きくなり、カジリが発生する場合があり、好ましくない。
ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度(B−Tg)の高い方が耐カジリ性は良く、好ましくは63℃以上、より好ましくはポリエステル樹脂フィルム層(A層)のガラス転移温度(A−Tg)である65℃以上が良い。本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)のガラス転移温度(A−Tg)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度(B−Tg)の上限値は特に限定されるものでないが、ガラス転移温度が高すぎると、カップ成形の際、カップコーナー部のフィルムにマイクロクラックが発生し易くなり、その後のしごき加工でマイクロクラックが増長する危険性があるため、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度は共に110℃以下が望ましく、より望ましくは100℃以下である。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の極限粘度(A−IV)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の極限粘度(B−IV)は共に、0.58dl/g以上である。本発明で、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の極限粘度(A−IV)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の極限粘度(B−IV)を0.58dl/g以上と限定する理由は、次の二点である。第一は、前述したように、しごき加工は、しごき加工前の缶体の缶胴部の総壁厚よりも小さく設けた、パンチとダイスの間隔(クリアランス)に缶体を通過させて、ダイスのしごき作用点で缶胴部の厚みを薄くする、加工方法であるから、ダイスの作用点に掛かる力は、直接外面フィルムに掛かることになる。この時、フィルムの機械的強度、特に厚み方向の強度が小さいと、フィルムは大きく歪みダイスに食い込んだ状態となり、成形に追随出来ないとフィルムがダイスに削られカジリとなる。従って、フィルムの厚み方向の機械的特性は重要で、極限粘度(IV)が高いほど機械的特性も高いためダイスへの食い込みが小さくなると、と考えられる。
第二は、前述した、フィルムが成形に追随し易くするためである。ポリエステル樹脂では、極限粘度(IV)が高いほど結晶化がし難いと言った特性を有している。従って、前述したしごき加工の各成形工程における加工熱や摩擦熱によって、ポリエステル樹脂は熱結晶化してくることは、成形に追随し難くなり耐カジリ性が低下してくることになる。本発明で、極限粘度(IV)をポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)、共に0.58dl/g以上に限定した理由は上記の理由からで、0.58dl/g以上であれば、良好な耐カジリ性は確保できる。ただし、極限粘度(IV)は高いほど、良いと言うものではなく、高すぎると粘性が増し過ぎるため、かえって成形に追随出来ない、と言った現象が起こる場合があり、上限値としては1.50dl/g以下にすることが好ましい。従って、ポリエステル樹脂フィルム層(F層)の極限粘度(IV)の最高範囲は、加工速度・加工度によって異なるが、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)共に、0.60〜1.50dl/gの範囲が好適である。
本発明で適用されるポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)のポリエステル樹脂は、共に結晶性のポリエステル樹脂を基本樹脂としたもので、その一例としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸と、グリコール成分としてエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ペンタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコールからなるポリエステル樹脂の共重合物やブレンド物が、前記の融点(Tm)、結晶融解熱、冷結晶化熱及びガラス転移温度の限定範囲であれば、適用できる。
更に、ポリエステル樹脂フィルム層(A)及びポリエステル樹脂フィルム層(B)のポリエステル樹脂は、熱安定化剤及び/または酸化防止剤を含むものである。ポリエステル樹脂は、製膜時の熱やラミネート時の熱、さらにはレトルト殺菌処理時の熱によって分子内の結合が切断される、と言った、熱分解や熱水分解を起こす樹脂である。特に、熱水による分解は熱分解より速い速度で起こる。熱分解や熱水分解が起こると、当然、分子量は小さくなり、その結果フィルム自身の機械的特性が低下する。また、結晶化速度も速くなり結晶化し易くなる。このことは、ポリエステル樹脂フィルムラミネート金属板の成形性の低下、特に耐カジリ性の低下に繋がることは、前述してきた通りである。
こうした現象を回避するため、本発明では熱安定化剤及び/又は酸化防止剤を含有させたポリエステル樹脂とする。熱安定化剤としては、特に限定されるものではないが、亜リン酸エステル系安定剤が好適で、その一例としてビス(2,4−ジ−第三ブチル)フェニルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、等が上げられる。
酸化防止剤としても特に限定されるものではないが、その一例として:テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)〕メタン、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、等が上げられる。含有量としては、熱安定化剤、酸化防止剤の1種又は2種以上を、ポリエステル樹脂100質量部に対して0.01〜3質量部の範囲で含有させる。
ポリエステル樹脂100質量部に対して0.01質量部未満では、前述した熱分解や熱水分解を抑制する効果が充分でなく、成形加工でパンチ離型性の低下やフィルムのマイクロクラックが発生する場合や、得られた缶の耐デント性が低下する、と言った現象が現れる場合があり、好ましくない。一方、ポリエステル樹脂100質量部に対して3質量部を超えると、前述した成形加工でパンチ離型性の低下やフィルムのマイクロクラックの発生、又、得られた缶の耐デント性の低下、と言った現象は勿論回避され、良好な成形性や耐デント性は確保されるが、その効果は飽和するだけでなく、フィルムの透明性が局部的に白っぽく濁ると言ったことが起こる場合があり、好ましくない。
本発明では、ポリエステル樹脂には、必要に応じて紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤等を配合させることも可能である。本発明におけるポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の製造方法については特に限定しない。即ち、エステル交換法又は直接重合法のいずれの方法で製造されたものであっても使用できる。又、極限粘度(IV)を高めるために固相重合法で製造されたものであってもかまわない。更に、缶に内容物を充填・密封後に実施されるレトルト殺菌処理、パストロ殺菌処理等でのポリエステル樹脂からの溶出オリゴマー量を少なくする点から、減圧固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステルを使用することは好ましい。
更に言うと、本発明に適用されるポリエステル樹脂は、結晶融解熱(Hm)及び/または冷結晶化熱(Hc)が限定される訳ではあるが、これらの特性は結晶化した量および結晶化する量を示すもので、結晶化する速度、すなわち、結晶化速度については限定していない。しかし、より高速化を達成するためには結晶化速度も重要で、本発明を実施するに際し、ポリエステル樹脂の選択については、前述したガラス転移温度(Tg)と冷結晶化熱を測定する際に求めることができる冷結晶化温度(Tc)との差は、少なくとも30℃以上、望ましくは50℃以上のポリエステル樹脂、もしくは、溶融状態から冷却してくる際の降温結晶化温度が、少なくとも180℃以下、望ましくは170℃以下のポリエステル樹脂を選定することが望ましい。前述したガラス転移温度(Tg)と冷結晶化温度(Tc)との差が小さいポリエステル樹脂や降温結晶化温度が高いポリエステル樹脂は、結晶化速度の速い樹脂である。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム(F)は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)からなる二層フィルム構成で、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)が最表層となって金属板に被覆されているが、少なくともポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが0.7〜5μmの滑剤を0.7〜2.0質量%含有させる。滑剤は耐カジリ性向上の補助剤として重要な役割を担うものであるが、大き目のサイズの滑剤が耐カジリ性向上に効果を発揮する。この理由は、明確になっている訳ではないが、次のように考えている。
すなわち、前述したように、絞り・しごき加工において、特にしごき加工では、外面フィルムは極めて小さいRを有するリング状の作用面を通過することになるため、ダイスの作用点では極めて高い面圧が掛かることになる。従って、この高い面圧が掛かるダイスの作用点を通過するためには、高い潤滑性が必要となる。このことを裏付ける事例として、カジリが発生したしごき加工工程に、同じラミネート材から得られたラミネート缶体に潤滑油を再塗布してカジリが発生したしごき加工工程で成形した場合、カジリの発生はなく良好な缶体が得られる、と言った実験事実を発明者等は見出している。
本発明において、最表層となるポリエステル樹脂フィルム層(A層)に、比較的大きな粒子径サイズの滑剤を含有させることで、耐カジリ性が向上する理由は、滑剤が潤滑性を有するのでなく、しごき加工の中で、フィルム表面に滑剤が突起として現れ、ダイスに接する際にフィルム表面に極々微小な空壁を作るために、摩擦抵抗を低下させ、前述した潤滑剤を塗布した場合と同様な作用を持つためと考えている。
本発明において、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の含有させる滑剤のサイズは、平均粒子径サイズとして0.7〜5μmであるが、平均粒子径が0.7μm未満のサイズでは、耐カジリ性の向上に殆ど効果は見られなく、好ましくない。一方、平均粒子径サイズ5μmを超えるサイズの場合は、大きなカジリは発生しないが、滑剤が脱落したことによると思われる、微細な疵がフィルム表面に発生するので好ましくない。また、平均粒子径サイズが5μmを超える場合は、ダイスの表面を傷付けたり、または削ると言ったことに繋がり、ダイスの寿命を短くする場合があり、この点からも好ましくない。
含有量としては、0.7〜2.0質量%である。0.7質量%未満では耐カジリ性の向上に殆ど効果は見られない。一方、2.0質量%を超えると、含有する粒子径のサイズにもよるが、例えば滑剤の粒子径サイズが5μm程度の場合、逆に滑剤が脱落したことによると思われる微細な疵が多数発生することが、高加工度では起こる場合があり、好ましくない。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に含有させる滑剤は、平均粒子径サイズとして0.9〜4.5μmの範囲の滑剤を0.8〜1.5質量%の範囲で含有させるのが最適である。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有させる滑剤は、耐カジリ性に直接関与しないため、特に限定するものでないが、金属板との密着性を考えると、大きい粒子径サイズの滑剤を多量に含有させることは好ましくなく、かかる意味において粒子径サイズとして0.1〜0.5μmの微粒子を0.1〜0.5質量%の範囲で含有させる程度に抑えておく方が好ましい。
ポリエステル樹脂フィルム(F)の厚みは6〜16μmである。6μm未満では、フィルム自体の強度が不十分で、接着剤を塗布する際や金属板に被覆するラミネートの際にフィルムに皺が入ったりして、良好なラミネート金属板が得られない場合が多く発生するなど、いわゆるハンドリング性に問題が多く、好ましくない。一方、16μmを超えると、上述したハンドリング性の問題はないが耐カジリ性が劣り、特に高速・高加工度のしごき加工でカジリが発生し易くなる。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の厚みおよびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の厚み、更にはA層とB層のフィルム厚み比については、特に限定するものでないが、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の厚みは、含有する滑剤の粒子径以上の厚みにすることが好ましく、例えば、含有する滑剤の粒子径が5μmの場合は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の厚みは5μm以上とすることが好ましい。
なお、本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)に適用するポリエステル樹脂は、同一組成のポリエステル樹脂でも、異なったポリエステル樹脂でもかまわないが、同一樹脂で二層化することが好ましい。この理由は、ダイスの作用点を通過する際に掛かる歪みによって、樹脂組成の異なる二層の場合、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)の界面で層間剥離が起こる、と言ったことを問題回避するためで、そのためには同一樹脂の方が好ましい。しかし、層間剥離問題が回避きるのであれば、ポリエステルフィルム(A)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)とが同一樹脂である必要はなく、広く使用は可能である。
次に、ポリエステル樹脂フィルム(F)と金属板の間に介在させる白色顔料及び/または有色顔料を含有する接着剤について述べる。本発明では、ポリエステル樹脂フィルム(F)は、白色顔料及び/または有色顔料を含有する接着剤を介して金属板に被覆されているものも使用される。特に、金属素材としてスチールを適用する場合は、缶外面の印刷外観の点で色調、特に白さは大事な要件となる。
本発明では、缶外面の色調を確保する手段として、白色顔料及び/または有色顔料を含有する接着剤を適用する。本発明では、接着剤に適用される樹脂は特に限定するものでないが、特に、主剤としてポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル−エポキシ共重合樹脂等の樹脂、硬化剤としてメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の1種または2種以上を用いた接着剤が、成形加工、特に絞り・しごき加工の点から適している。ただし、硬化剤としてフェノール樹脂を用いて場合、フェノール樹脂は発色性の樹脂であるため色調を変える可能性があるので、単独での使用は避け他の樹脂との併用と添加量には十分配慮する必要がある。
白色顔料及び/または有色顔料を含有量としては、接着剤樹脂中に20〜70質量%含有させる。接着剤中に含有させる白色顔料及び/または有色顔料の含有量と厚みは、隠蔽率に直接関与する要因であるため、印刷外観の確保の点からは重要であるが、同時に、密着性や成形加工による接着剤破壊に繋がる要因でもある。含有量について言えば、所望する色具合と使用する金属素材によって異なり、スチールを素材とする場合は、スチール素材自身の分光反射率が低いため含有量は多めにする必要があるが、アルミニウムを素材とする場合はアルミニウム自身の分光反射率が高いため、含有量は少なくて済む、ことは言うまでもない。
本発明の含有量が20質量%未満の場合は、金属板がアルミニウムの場合でも色調斑が発生してくるし、素材にスチールを適用した場合、白さが不足し、美麗な印刷外観が得られない場合があり、好ましくない。一方、含有量が70質量%を超えると、密着性や加工性の点で問題となり、絞り・しごき加工で、缶壁部で接着剤と金属表面の間で界面剥離や接着剤自身の凝集破壊を起こす場合が、特に、高加工度の成形で起こることがあり好ましくない。白色顔料及び/または有色顔料を含有させた接着剤の厚みは、2〜7μmである。
接着剤の厚みが2μm未満では、例え白色顔料及び/または有色顔料の含有量が多くても、やはり前述したように、金属板がアルミニウムの場合でも色調斑が発生してくるし、特に、素材がスチールに適した場合、白さが不足し、美麗な印刷外観が得られない場合があり、好ましくない。一方、接着剤の厚みが7μmを超えると、高加工度の絞り・しごき加工やその後行われるネック加工・フランジ加工で缶壁部の接着剤が凝集破壊を起こし、剥離する場合があり好ましくない。
接着剤中の顔料、特に白色顔料の含有量と接着剤の厚みは、当然使用する素材の金属種によって、その適正範囲は異なり、例えば、前述したように分光反射率の高いアルミニウム素材の場合は、顔料の含有量は少なく接着剤の厚みも薄くても色調および外観斑は良好なものが得られるが、分光反射率の低いスチール素材の場合は、顔料の含有量は多く接着剤の厚みも厚めでないと、色調および外観斑は良好なものが得られ難いことは言うまでもない。また、缶胴部の加工度(板厚減少率)た、更に言えば、外面の印刷デザインや使用するインキの色調等によっても、要求される白さは異なってくるので、実務的に選択する必要がある。
接着剤中に含有される白色顔料及び/または有色顔料としては、酸化チタンの微粒子、酸化アルミニウムの微粒子、炭酸カルシウムの微粒子、硫酸カルシウムの微粒子等の白色無機顔料や酸化鉄の微粒子等の有色顔料が適用でき、1種若しくは数種を組み合わせて、所望の色調を得る。なお、例えば、白さが更に必要な場合は、ポリエステル樹脂フィルムと白色顔料及び/または有色顔料の含有する接着剤の間に白インキ等を補色として介在させる等の手段を講じることは可能である。
本発明では、少なくとも缶の外面側に相当する金属板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム層(F層)の密度は1.360g/cm3 以下である。前述したように絞り・しごき加工で起こる外面フィルムのカジリは、熱結晶化による非晶質部の減少が変形抵抗を増大させ、その結果加工に追随しなくなるために起こるものものである。このことは、逆に言えば、ラミネート剤の段階で結晶化が起こっているフィルムは、カジリが発生し易い状態にあることを意味する。かかる意味において、本発明では、少なくとも缶の外面側に相当する金属板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度は1.360g/cm3 以下である。密度が1.360g/cm3 以下であることは、前述したように、被覆されているフィルムは、非晶質状態もしくは極めて非晶質状態に近い状態であることを示しており、密度を1.360g/cm3 以下にすることで、良好な耐カジリ性を確保することが可能となる。
次に、本発明に使用される金属板について述べる。
本発明では、金属板として、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板が適用される。鋼板は、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用鋼板として使用されているもの、具体的には絞り缶用、絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられている鋼板が適用される。鋼板表面の施される表面処理も同様で、通称TFS−CTと呼ばれている、鋼板の両面に片面の付着量として金属クロムが80〜150mg/m2 、その上層に金属クロム換算で10〜20mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有する電解クロム酸処理鋼板、鋼板の両面に片面の付着量として50〜1000mg/m2 、その上層に金属クロム換算で10〜15mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有するNiめっき鋼板、鋼板の両面に片面付着量として20〜2000mg/m2 のNiめっき層、その上層に片面の付着C量として1〜100mg/m2 の有機樹脂を主体とする化成処理皮膜層を有するNi−化成処理鋼板等、幅広く適用される。
アルミニウム板やアルミニウム合金板も同様で、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用アルミニウム板として使用されているもの、具体的には、絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられているアルミニウム板が適用される。アルミニウム板やアルミニウム合金板の表面処理については、アルミニウム板の両面に片面のクロム付着量として10〜60mg/m2 の化成処理を行ったリン酸クロム処理アルミニウムやその他の化成処理が施されたアルミニウム板やアルミニウム合金板等幅広く適用される。本発明のポリエステル樹脂フイルム被覆金属板を得る際のフィルムは製膜の履歴は問わず、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無配向フィルムの何れでも良い。
本発明の金属板にポリエステル樹脂フィルムを被覆する方法としては、十分に加熱された金属板にフィルムを供給して、ラミネートロールでフィルムを積層し、同時に金属板の熱でフィルムを非晶質化する一段階ラミネート方法や一旦フィルムを加熱された金属板に供給して一次接着を行い、続いて更に金属板を加熱してフィルムを非晶質化する二段階の工程で行う方法等がある。いずれの方法を採用するにしても、被覆されたポリエステル樹脂フィルム(F)の密度は1.360g/cm3 以下にする必要があることから、二段階で行うにが好ましい。
その一例として、加熱された金属板の缶の外面側となる面に、予め白色顔料及び/または有色顔料を含有する接着剤をポリエステル樹脂フィルム層(B層)に塗布・乾燥したポリエステル樹脂フィルム(F)を、接着剤が金属板と相接するように供給し、ラミネートロールを用いて缶の内面側となるフィルムを同時あるいは逐次にラミネートする方法等の周知の方法で金属板に被覆して一次接着を行った後、続けて一次接着を行ったラミネート金属板を、ポリエステル樹脂フィルム(F)の上層のあるポリエステル樹脂フィルム層(A)の融点、若しくは缶の内面用として供給したフィルムの融点の、何れか高い方の融点以上に板温として再度加熱し、延伸フィルムの場合は配向結晶を十分に壊した後、直ちに水冷または/および空冷等で急冷して得る方法、また、金属板の一方の面に予め白色顔料及び/または有色顔料を含有する接着剤をロール塗布その他の方法で塗布し、乾燥させた後、板温を上げポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(B層)が接着剤に接するように供給すると同時に、金属板の反対面に内面用フィルムを供給し、ラミネートロールで内外面を同時に圧着させて一次接着させた後、缶の内面用フィルムを引続きラミネートロールで圧着させて一次接着を行った後、前述の方法と同様に一次接着を行ったラミネート金属板を加熱、急冷して得る方法等の手段が採用できる。どの方法を採用するかは所有する設備によって、適宜選択することは言うまでもない。
一次接着を行う際の金属板の加熱方法としては、電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、高周波で誘導加熱する方法等の加熱方法が採用できるが、その後に続けて行うポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点以上、もしくは上記の金属板の他方の面に被覆した任意フィルムの融点以上の温度に板温として金属板を加熱する際は、ポリエステル樹脂フィルムが被覆されているので電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、高周波で誘導加熱する方法等の非接触加熱が好ましく、加熱ロールのような接触型加熱方式は採用しない方が良いことは言うまでもない。
又、急冷する方法としては圧縮空気や冷却された圧縮空気を吹きかけて冷却する方法、水等に浸漬して冷却する方法の単独もしくは複合で採用することが可能である。本発明のポリエステル樹脂フィルム(F)の全体の密度を1.360g/cm3 以下にするには、一次接着を行った後、続けて少なくともポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)、若しくは他の面に被覆されている内面用フィルムの融点の何れかの高い方の融点以上に金属板の板温を上げ、前述した供給するフィルムが二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルムの場合、十分に溶融して結晶を破壊すること、更には、冷却の過程で結晶化を起こさせない、ことが肝要である。特に、前述した急冷の条件は重要で、ポリエステル樹脂フィルム表面での熱伝達係数が0.0005cal/cm2 ・sec・℃以上、0.005cal/cm2 ・sec・℃未満の条件で冷却することが重要である。急冷する方法としては圧縮空気や冷却された圧縮空気を吹きかけて冷却する方法、水等に浸漬して冷却する方法の単独もしくは複合で採用することが可能である。
以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、本実施例で行った評価法は以下の通りである。
(1)ポリエステル樹脂フィルムの融点(Tm)は、ポリエステルフィルム10mgを用い、窒素気流中、示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、発熱部の積分強度を冷結晶化熱Hc(J/g)、吸熱部の積分強度を結晶融解熱Hm(J/g)、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とした。
(2)ポリエステル樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法にて測定した。
(3)ポリエステルの極限粘度(IV)は、ウベローデ粘度計でオルトクロルフェノール溶液中にポリエステルフィルムを0.100=0.003g溶解し、25.0±0.1℃で測定した。
(4)缶外面のフィルムの耐カジリ性は、連続成形缶をランダムに500缶抽出し、成形した缶体胴壁部外面のかじり発生程度を観察して評価した。
◎:カジリなく良好
○:深さを感じない微細なカジリが発生しているが実用上問題ないレベル
○〜△:フィルム表面に浅いが線状の軽微なカジリが散発しており実用性は不可
△:フィルム表面に浅い幅のある軽微なカジリが発生しており実用性は不可
×:フィルム表面に深いカジリが発生しており実用性は不可
(5)缶の外面側被膜の密着性評価
最終缶体の外面フィルムの剥離状況を肉眼で観察した。
◎:フィルムの剥離なし
×:フィルムの剥離あり(極僅かでも剥離があると実用性ない)
(6)缶の外面側の色調評価
白色顔料を含む接着剤を介してポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆されているラミネート金属板のみ、最終缶体の外面フィルムの色調を剥離状況を肉眼で観察した。
◎:色斑がなく、缶胴部のL* 値が75以上で実用性あり
×:色斑があり、若しくは缶胴部のL* 値が75以下で実用性なし
なお、実施例および比較例で用いた熱安定化剤および酸化防止剤の内容は次の通りである。
(a)熱安定化剤:ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスト−ル−ジ−ホスファイト
(b)酸化防止剤:テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチルヒドロキシハイドロシンナメ−ト)]メタン
(実施例1)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが3.5μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を1.0質量部含む融点が237℃の厚み5μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を1.0質量部含む、融点が225℃の厚み5μmのフィルム層とからなる総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmのの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム1)を作成した。フィルム1は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム1と缶の内面用フィルムとして融点が245℃で厚みが20μmの単層のポリエステフィルム(フィルムA、後述する缶の成形時に必要なフィルムで実施例および比較例とは無関係であるため、評価の対象外。以降同様)を用いて、板厚が0.19mmの鋼板の両面に、片面のNi付着量として600mg/m2 その上層に金属クロム換算で12mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有するNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム1の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を255℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト1)を作成した。
同様に、缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが3.5μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を1.0質量部含む融点が243℃の厚み5μmのフィルム層とポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を1.0質量部含む、融点が237℃の厚み5μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム2)を作成した。フィルム2は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム2と缶の内面用フィルムとして前記のフィルムAを用いて、前記のNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で一方の面にフィルム2を接着剤面が鋼板と相接するように、他方の鋼板面にはフィルムAを、ラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着した後、続いて熱風炉で鋼板板温を260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト2)を作成した。
同様に、缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが3.5μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を1.0質量部含む融点が250℃の厚み5μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を1.0質量部含む、融点が248℃の厚み5μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmのの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム3)を作成した。フィルム3は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム3と缶の内面用フィルムとして前記のフィルムAを用いて、前記のNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で一方の面にフィルム3の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の鋼板面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し、両面に一次接着した後、続いて熱風炉で鋼板板温が265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト3)を作成した。
テスト1〜テスト3で得られた缶の外面側に相当する鋼板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及び極限粘度等は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト1〜テスト3のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるようにし、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度がテスト1から得られた缶は255℃になるように、テスト2から得られた缶は260℃になるように、テスト3から得られた缶は265℃になるように熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷し、続いて呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例1のテスト2およびテスト3のラミネート鋼板は、カジリの発生もなく良好な耐カジリ性を示した。テスト1のラミネート鋼板は、テスト2およびテスト3に比べ耐カジリ性は僅かに劣り、深さを感じない微細なカジリが発生しているが実用上問題ないレベルであった。また、密着性および色調の点でもテスト1〜テスト3のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(実施例2)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが0.9μmの酸化珪素と酸化アルミを合わせて1.7質量%、熱安定化剤を1.0質量部、酸化防止剤を0.5質量部含む融点が246℃の厚み4μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が245℃の厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが8μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム4)を作成した。フィルム4は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム4と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム4の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト4)を作成した。
同様に、缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが0.9μmの酸化珪素と酸化アルミを合わせて1.7質量%、熱安定化剤を1.0質量部、酸化防止剤を0.5質量部含む融点が246℃の厚み4μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が245℃の厚み3μmのフィルム層とからなる、総厚みが7μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム5)を作成した。フィルム5は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム5と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で一方の面にフィルム5の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト5)を作成した。テスト4およびテスト5で得られた鋼板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト4およびテスト5のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるようにして、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度がテスト4およびテスト5から得られた缶は、共に260℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例2のテスト4及びテスト5のラミネート鋼板は、カジリの発生もなく良好な耐カジリ性を示し、製缶性は良好であった。また、密着性および色調の点でもテスト4及びテスト5のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(実施例3)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.5μmの酸化珪素を0.8質量%、熱安定化剤を1.0質量部、酸化防止剤を0.5質量部含む融点が246℃の厚み8μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む、融点が245℃の厚み8μmのフィルム層とからなる、総厚みが16μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を70質量%含有する厚み6.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム6)を作成した。フィルム6は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム6と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、鋼板の両面に、片面の付着量として550mg/m2 のNiめっきを行った後、フェノール樹脂と縮合リン酸を含有する化成処理液を塗布・乾燥し、片面のC付着量として10mg/m2 の化成処理を行ったNi−化成処理鋼板を、加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム6の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト6)を作成した。
テスト6で得られた鋼板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度、熱安定化剤、酸化防止剤等の詳細は表1に、フィルムの厚み、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト6のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるようにして、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が260℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例3のテスト6のラミネート鋼板は、深さを感じない微細なカジリが発生している缶が散発していたが、こうした缶でも実用上問題ないレベルであった。また、密着性および色調の点でもテスト6のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(実施例4)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.5μmの酸化珪素を1.2質量%、酸化防止剤を2.0質量部含む融点が246℃の厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は酸化防止剤を2.0質量部含む、融点が245℃の厚み10μmのフィルム層とからなる、総厚みが16μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を70質量%含有する厚み6.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム7)を作成した。フィルム7は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム7と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、板厚が0.19mmの鋼板の両面に金属クロムが110mg/m2 、更にその上層に金属クロム換算で18mg/m2 の水和酸化クロム被膜を有する電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し板温が255℃で、一方の面にフィルム7の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト7)を作成した。
テスト7で得られた鋼板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト7のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるようにして、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が260℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例4のテスト7のラミネート鋼板は、深さを感じない微細なカジリが発生している缶が散発していたが、こうした缶でも実用上問題ないレベルであった。また、密着性および色調の点でもテスト7のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(実施例5)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248の厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが9μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を70質量%含有する厚み5.0μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム8)を作成した。フィルム8は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム8と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例4で使用した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム8の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト8)を作成した。
同様に、缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層とポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが9μmの二層フィルムのB層面に、白インキを30mg/m2 となるように塗布・乾燥し、更にその上層に白色顔料を70質量%含有する厚み4.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム9)を作成した。フィルム9は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム9と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例4で使用した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム9の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト9)を作成した。テスト8およびテスト9で得られた鋼板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト8およびテスト9のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるようにし、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が53%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるように熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例5のテスト8およびテスト9のラミネート鋼板は、カジリの発生はなく良好な製缶性を示した。また、密着性および色調の点でもテスト8およびテスト9のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(実施例6)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248の厚み6μmのフィルム層とからなる、総厚みが12μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を25質量%含有する厚み5.0μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム10)を作成した。フィルム10は皺もなく、良好な形状であった。こうして得たフィルム10と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、片面の金属クロム換算として12mg/m2 の付着量を有するリン酸クロム系化成処理が施された板厚が0.28mmの3004系アルミニウム合金板を、実施例1の手順に従い加熱し、板温が255℃で一方の面にフィルム10の接着剤面がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト10)を作成した。
同様に、缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み6μmのフィルム層とからなる、総厚みが12μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を50質量%含有する厚み2.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム11)を作成した。フィルム11は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム11と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、前記のアルミニウム合金板を、実施例1の手順に従い加熱し、板温が255℃で一方の面にフィルム11の接着剤面がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト11)を作成した。テスト10およびテスト11で得られたアルミニウム合金板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト10およびテスト11のラミネートアルミニウム合金板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるようにし、100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例6のテスト10およびテスト11のラミネートアルミニウム合金板は、カジリの発生はなく良好な製缶性を示した。また、密着性および色調の点でもテスト10およびテスト11のラミネートアルミニウム合金板から得られた金属缶は良好であった。
(実施例7)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み3μmのフィルム層とからなる、総厚みが8μmの二層フィルム(フィルム12)を作成した。こうして得たポリエステル樹脂フィルム層(B層)には白色顔料を有する接着剤の塗布は行っていないフィルム12と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が260℃で、一方の面にフィルム12のポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、さらに鋼板を板温で265℃に加熱後、直ちに急冷してポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト12)を作成した。
また、同様に、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)には白色顔料を含有する接着剤の塗布は行っていないフィルム12と、缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例6で使用したアルミニウム合金板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が260℃で、一方の面にフィルム12のポリエステル樹脂フィルム層(B層)がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト13)を作成した。テスト12で得られたラミネート鋼板およびテスト13で得られたラミネートアルミニウム合金板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度、熱安定化剤、酸化防止剤等の詳細は表1に、フィルム厚みおよびフィルムの密度の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト12のラミネート鋼板およびテスト13のラミネートアルミニウム合金板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、テスト12のラミネート鋼板は80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を、テスト13のラミネートアルミニウム合金板は100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶をそれぞれ成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、テスト12およびテスト13から得られた缶は、共に缶の金属板温度が265℃になるように熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況について調べた。その結果は表2に示した。なお、色調については、白色顔料を含有する接着剤は塗布されていないため、金属素材自身の色調となるため、評価は行っていない。表2から判るように、実施例7のテスト12のラミネート鋼板およびテスト13のラミネートアルミニウム合金板は、カジリの発生は全くなく良好な製缶性を示した。また、密着性はテスト12のラミネート鋼板から得られた缶およびテスト13のラミネートアルミニウム合金板から得られた缶、共に良好であった。
(比較例1)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.5μmの酸化珪素を1.2質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が232℃の厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が218℃の厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム13)を作成した。フィルム13は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム13と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム13の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板を板温で255℃に加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト14)を作成した。
テスト14で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト14のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例1のテスト14のラミネート鋼板は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(Tm)が本発明の限定範囲より低いため、本発明例に比べ耐カジリ性が劣り、フィルム表面に浅い線状の軽微なカジリが発散しており、実用性は不可であった。密着性および色調の点ではテスト14のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(比較例2)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.5μmの酸化珪素を1.2質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が255℃/222℃の厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が255℃/222℃の厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム14)を作成した。フィルム14は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム14と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム14の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を270℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト15)を作成した。
テスト15で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト15のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例2のテスト15のラミネート鋼板は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の結晶性が本発明の限定範囲より高いこと、更にはガラス転移温度と冷結晶化温度の差が20℃程度のポリエステル樹脂であることから結晶化速度も速いこと等から、本発明例に比べ耐カジリ性が劣り、フィルム表面に深いカジリが発生しており、実用性は不可であった。密着性および色調の点ではテスト15のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(比較例3)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.5μmの酸化珪素を1.2質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み3μmのフィルム層とからなる、総厚みが9μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム15)を作成した。フィルム15は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム15と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例4で使用した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム15の接着剤面が鋼板と相接するように他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板を板温で265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト16)を作成した。
テスト16で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト16のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が53%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例3のテスト16のラミネート鋼板は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の極限粘度が低いため本発明例に比べ耐カジリ性が劣り、フィルム表面に浅いが幅のある軽微なカジリが発生しており、実用性は不可であった。また、フィルム自身の機械的強度も低いことから、カップ成形時に缶底コーナー部に微細なクラックが発生し、しごき加工によってその部位に相当する缶胴では、フィルム剥離が軽微ではあるが起こっており、この点からも実用できない缶であった。色調の点ではテスト16のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(比較例4)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、実施例2のテスト4で使用したフィルムのポリエステル樹脂を基本樹脂として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、平均粒子径サイズが0.9μmの酸化珪素を1.7質量%含む融点が246℃のポリエステル樹脂(熱安定化剤、酸化防止剤を含まない)からなる厚み4μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は融点が245℃のポリエステル樹脂フィルム(熱安定化剤、酸化防止剤を含まない)からなる厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが8μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム16)を作成した。フィルム16は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム16と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例6で使用したアルミニウム合金板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム16のポリエステル樹脂フィルム層(B層)がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト17)を作成した。
テスト17で得られたアルミニウム合金板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト17のラミネートアルミニウム合金板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例4のテスト17のラミネートアルミニウム合金板は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、共に熱安定化剤、酸化防止剤を含有していないため、基本のポリエステル樹脂は実施例2のテスト4で使用したと同じであるにもかかわらず、極限粘度が低下しており、その結果、本発明例に比べ耐カジリ性が劣り、フィルム表面に浅い線状の軽微なカジリが散発しており実用性は不可であった。
なお、極限粘度が比較例3より小さいのに評価結果が比較例3より良い理由は、素材がアルミニウムであるため、しごき加工の際にパンチとダイス間にかかる面圧が小さいためである。また、フィルム自身の機械的強度も低いことから、カップ成形時に缶底コーナー部に微細なクラックが発生し、しごき加工によってその部位に相当する缶胴では、フィルム剥離が軽微ではあるが起こっており、この点からも実用できない缶であった。色調の点ではテスト17のラミネートアルミニウム合金板から得られた金属缶は素材がアルミニウムであることから、白色度は高く良好であった。
(比較例5)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが0.5μmの酸化珪素を0.5質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み4μmのフィルム層とポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み4μmのフィルム層とからなる、総厚みが8μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム17)を作成した。フィルム17は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム17と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例6で使用したアルミニウム合金板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム17の接着剤面がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト18)を作成した。
同様に、フィルム17と前述したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム17の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト19)を作成した。テスト18で得られたアルミニウム合金板およびテスト19で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト18のラミネートアルミニウム合金板およびラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、テスト18は100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。テスト19は80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、テスト18およびテスト19から得た缶の開口部をトリミングし、両者共缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い、350mlビール缶サイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例5のテスト18のラミネートアルミニウム合金板は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に含有されている滑剤のサイズが小さく、また含有量も少ないことから、本発明例に比べ耐カジリ性が劣り、フィルム表面に浅い線状の軽微なカジリが散発しており実用性は不可であった。
また、比較例5のテスト19のラミネート鋼板も同様で、本発明例に比べ耐カジリが劣り、フィルム表面に浅いが幅のある軽微なカジリが散発しており実用性は不可であった。同じフィルム構成でありながら、テスト18のラミネートアルミニウム合金板の方がテスト19のラミネート鋼板に比べ、耐カジリ性が良好であった理由は、比較例4で述べたように、しごき加工の際にパンチとダイス間にかかる面圧の違いである。密着性および色調の点ではテスト18のラミネートアルミニウム合金板およびテスト19のラミネート鋼板から得られた金属缶は、共に良好であった。
(比較例6)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み3μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み6μmのフィルム層とからなる、総厚みが9μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム18)を作成した。フィルム18は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム18と実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム18の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板を板温で265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト20)を作成した。テスト20で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト20のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。
得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例6のテスト20のラミネート鋼板は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、粒子径が4.0μmの滑剤が含有されているにもかかわらずフィルム層厚みが3μmであり、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に含有されている滑剤のサイズに比べフィルム層厚みが薄いため、しごき加工の際にフィルム表面に浅い線状の軽微なカジリが散発しており実用性は不可であった。また、密着性および色調の点では、テスト20のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(比較例7)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を65質量%含有する厚み8.0μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム19)を作成した。フィルム19は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム19と実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム19の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉で鋼板を板温で265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト21)を作成した。テスト21で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト21のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。
得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例7のテスト21のラミネート鋼板は、接着剤の厚みが8.0μmと厚いため、密着性が本発明例に比べて劣っており、絞り加工ではフィルム剥離は確認されなかったが、しごき加工でフィルム剥離が起こり、また、204のネック加工およびフランジ加工でもフィルム剥離が開口部で起こっていた。従って、缶としては実用化できないものであった。耐カジリ性および色調の点では、テスト21のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。
(比較例8)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を15質量%含有する厚み6.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム20)を作成した。フィルム20は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム20と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例6で使用したアルミニウム合金板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム20の接着剤面がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト22)を作成した。テスト22で得られたラミネートアルミニウム合金板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト22のラミネートアルミニウム合金板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。
得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例8のテスト22のラミネートアルミニウム合金板は、耐カジリ性および密着性は良好で実用性を有しているが、本発明例に比べ接着剤中の白色顔料含有量が少量であるため、得られた缶体の缶胴部の色調斑があり、この外観では実用性は不可であった。
(比較例9)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み5μmのフィルム層とからなる、総厚みが10μmの二層フィルムのB層面に、白色顔料を70質量%含有する厚み1.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム21)を作成した。フィルム21は皺もなく、良好な形状であった。
こうして得たフィルム21と缶の内面用フィルムとして実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例6で使用したアルミニウム合金板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が255℃で、一方の面にフィルム21の接着剤面がアルミニウム合金板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト23)を作成した。テスト23で得られたラミネートアルミニウム合金板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
こうして得たテスト23のラミネートアルミニウム合金板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、100缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。
得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例9のテスト23のラミネートアルミニウム合金板は、耐カジリ性および密着性は良好で実用性を有しているが、本発明例に比べ接着剤の厚みが薄いため、得られた缶体の缶胴部の色調斑があり、この外観では実用性は不可であった。
(比較例10)
缶の外面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は平均粒子径サイズが4.0μmの酸化珪素を1.0質量%、熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み3μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は熱安定化剤を0.7質量部、酸化防止剤を0.7質量部含む融点が248℃の厚み2μmのフィルム層とからなる、総厚みが5μmの二層フィルムのB層面に白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布・乾燥し、接着剤塗布フィルム(フィルム22)を作成した。フィルム22は皺が発生していた。
こうして得たフィルム22と実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用したNiめっき鋼板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が250℃で、一方の面にフィルム22の接着剤面が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムAをラミネートロールで熱圧着し両面に一次接着をした後、続いて熱風炉でアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト24)を作成した。テスト24で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。
得られたラミネート鋼板は、フィルム22を得る時発生したフィルム皺が完全に消えず、フィルム皺部では鋼板に密着していないため気泡が発生しており、ラミネート金属板としては良好なものではなかった。従って、成形加工での耐カジリ性評価は行わなかった。フィルム厚みが5μm以下では、フィルム強度が不足しフィルム面に皺なく接着剤を塗布・乾燥させるのが難しく、ハンドリング性の点で実用上問題がある。
(比較例11)
実施例1で使用したNiめっき鋼板の一方の面に、白色顔料を65質量%含有する厚み5.5μmの接着剤を塗布した後180℃で乾燥し、続けて比較例10で作成したフィルム22の白接着剤を塗布する前の5μmのフィルムをロール圧着した後更に鋼板を加熱し、板温が255℃で鋼板の他方の面に実施例1で使用したフィルムAをロール圧着した後、続いて熱風炉で鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト25)を作成した。テスト25で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。テスト25から得られたラミネート鋼板は、フィルム22のラミネート面に皺が発生しており、ラミネート金属板としては良好なものではなかった。従って、成形加工での耐カジリ性評価は行わなかった。フィルム厚みが5μm以下では、フィルム強度が不足しフィルム面に皺なくラミネートするのが難しく、ハンドリング性の点で実用上問題がある。
(比較例12)
実施例2のテスト4を得る途中の一次接着をしたラミネート鋼板を用いて、熱風炉で鋼板板温を240℃で0.5秒間加熱した後、空冷してポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト26)を作成した。テスト26で得られたラミネート鋼板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)のポリエステル樹脂フィルム層(A層)およびポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度、極限粘度等の詳細は表1に、フィルムの密度および接着剤の詳細は表2に示した。こうして得たテスト26のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆された面が缶の外面側になるように、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。
得られた成形缶について、外面フィルムの耐カジリ性を調べた。その結果は表2に示した。更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱した後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従ってネック加工およびフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。得られた缶の外面について、ポリエステル樹脂フィルムの剥離状況および色調について調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例12のテスト26のラミネート鋼板は、本発明例に比べ耐カジリ性が劣りフィルム表面に浅いが幅のある軽微なカジリが発生しており実用性は不可であった。また、密着性の点でも本発明例に比べ劣り、カップ成型時に缶底コーナー部に微細なクラックが発生し、しごき加工によってその部位に相当する缶胴では、フィルム剥離が起こっており、また、ネック加工・フランジ加工で缶の開口部でもフィルム剥離が起こっていた。色調の点ではテスト26のラミネート鋼板から得られた金属缶は良好であった。