JP2005283535A - 汚染土壌の汚染形態解明方法 - Google Patents

汚染土壌の汚染形態解明方法 Download PDF

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Abstract

【課題】汚染土壌の浄化処理に先だって行う汚染状態の調査に際し、土壌粒子の汚染形態を解明することができ、汚染形態に適した浄化処理方式を選定することができる方法を提供する。
【解決手段】汚染土壌の浄化処理に先だって行う土壌の汚染状態解明方法において、電子プローブ・マイクロ・アナライザ(EPMA)によるマッピング技術を用いて、汚染土壌の粒子に存在する有害元素の濃度分布を分析し、有害元素の濃度分布の状態から汚染された土壌粒子の汚染形態を解明する。
【選択図】図1

Description

本発明は、汚染土壌の浄化処理に先だって行う土壌の汚染状態の調査方法のうち、特に、土壌の汚染形態を解明する方法に関する。
有害物質による土壌汚染が社会問題になっており、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどの無機系有害元素による汚染が発見された土地においては、汚染土壌を掘り出して取り除く処理がなされている。現在行われている汚染土地の処理の多くは、掘り出した汚染土壌中の有害物質を安定化させる処理を行った後、処分場へ搬出して埋め立て処分する方法により行われており、汚染土壌を掘り出した後には、他の場所から搬送されてきた土壌による埋め戻しが行われる。
しかし、近年、処分場の土地確保が困難になってきたことから、掘り出した汚染土壌から有害物質を取り除く浄化処理を行い、浄化処理された土壌を汚染土壌の掘り出し箇所へ埋め戻すための技術開発がなされている。ただし、汚染土壌の浄化処理を行う場合、土壌中の汚染度合いは一様ではないので、汚染範囲の土壌をすべて浄化処理すると、浄化処理を要しない清浄な土壌や基準値に達していない低濃度の汚染土壌までも処理してしまうことになり、浄化処理コストが非常に高くなる。
このため、浄化処理を要する汚染土壌だけを選別して分離し、浄化処理を効率よく行うことができる方法が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1においては、重金属で汚染された土壌をコンベアで搬送し、搬送中の土壌にX線を照射し、発生した蛍光X線を検知することにより汚染物質の濃度を検出し、汚染濃度を検出する位置の下流側で、検出された汚染濃度の値に基づいて、汚染濃度が高い部分と低い部分とで搬送経路の切換えを行い、汚染濃度が高い部分を分離する方法が示されている。
特開2003−166958号公報
ところで、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどの無機系有害元素により土壌が汚染されている形態はさまざまである。例えば、汚染している有害物質の性状により分類すると、有害物質が水溶性のものである場合、薬剤(例えば、酸性溶液)などにより溶解するものである場合、あるいは溶出量が基準値以下の難溶性のものであったりする場合などがある。又、土壌粒子内における有害物質の分布状態により分類すると、有害物質が土壌粒子と別々に存在する場合、有害物質が土壌粒子表面だけに付着している場合、有害物質が土壌粒子の内部にも存在し、土壌粒子全体に分布している場合などに分類される。
このため、汚染土壌の浄化処理を行う場合には、その汚染形態に適した浄化処理方法で実施しないと、土壌の浄化を十分にすることができなかったり、非効率の浄化処理が行われたりすることになる。このため、汚染土壌の浄化処理に際しては、土壌粒子の汚染がどのような状態になっているのか、事前に、その汚染形態を解明しておくことが必要である。
このような問題に対し、上記従来技術は、単に、汚染濃度が高い部分を分離して取り出し、浄化する土壌の処理量を少なくするだけの方法であり、その土壌に適した浄化処理方式を選定するための情報が得られる技術ではない。
本発明は、上記の問題を解決し、汚染土壌の浄化処理に先だって行う汚染状態の調査に際し、土壌粒子の汚染形態を解明することができ、汚染形態に適した浄化処理方式を選定することができる方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明に係る汚染土壌の汚染形態解明方法は、汚染土壌の浄化処理に先だって行う土壌の汚染状態解明方法において、電子プローブ・マイクロ・アナライザによるマッピング技術を用いて、汚染土壌の粒子に存在する有害元素の濃度分布を分析し、前記有害元素の濃度分布の状態から汚染された土壌粒子の汚染形態を解明することを特徴としている。
この発明によれば、土壌粒子の汚染形態が解明されるので、汚染土壌の浄化処理に際し、その汚染形態に適した浄化処理方式を採用することができる。
本発明の請求項2に記載の発明に係る汚染土壌の汚染形態解明方法は、請求項1に記載の発明において、汚染土壌の分析を2段階で行う方法であって、汚染土壌を電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を低分解能にして分析し、有害元素を含有する土壌粒子を探す第1段階の分析と、第1段階の分析により探索された有害元素を含有する土壌粒子を電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を高分解能にして分析し、土壌粒子内の有害元素の濃度分布を調べる第2段階の分析と、を行うことを特徴としている。
この発明においては、第1段階の分析で有害元素を含有する土壌粒子を探し出し、次いで、第2段階で、探索された有害元素含有粒子だけについて、電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を高分解能にして緻密なマッピングを行い、汚染された土壌粒子内の有害元素の濃度分布を調べる。
このようにして行われる土壌粒子の分析において、測定条件を低分解能にして行う分析は迅速に行われる上に、第2段階の分析では、探索された有害元素含有粒子だけの分析を行えばよいので、分析時間が大幅に短縮され、土壌粒子の汚染形態の解明が効率よく行われる。
本発明の請求項3に記載の発明に係る汚染土壌の汚染形態解明方法は、請求項1に記載の発明において、汚染土壌の分析を2段階で行う方法であって、汚染土壌の粒子に含まれる有害元素の濃度をレーザアブレーションICP質量分析装置により分析する第1段階の分析と、第1段階の分析で探索された有害元素を含む土壌粒子を電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を高分解能にして分析し、土壌粒子内の有害元素の濃度分布を調べる第2段階の分析と、を行うことを特徴としている。
この発明は、分析用供試料中の土壌粒子から有害元素を含む汚染粒子を探し出す第1段階の分析と、探索された汚染土壌粒子の粒子内の有害元素の濃度分布を調べるために、電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を高分解能にして緻密なマッピングを行う第2段階の分析との組み合わせによる方法である。この発明によれば、有害元素を含む汚染土壌粒子を探し出す第1段階の分析に、迅速、かつ高感度なレーザアブレーションICP質量分析装置を用いるので、第1段階の分析データが第2段階の分析で有効に活用されると共に、汚染形態の解明に要する分析時間が大幅に短縮される。
上記何れの分析方法においても、分析する汚染土壌を固形の分析用供試料にする手段が必要であるが、その分析用供試料の加工に際しては、汚染土壌を樹脂などに埋め込んで塊状物にしてから、切断し、切断面の研磨を行なう方法によれば、安価、かつ簡便に加工することができる。
なお、以下の説明においては、電子プローブ・マイクロ・アナライザを、EPMAと略称する。
本発明によれば、EPMAによるマッピング技術を用いて、汚染土壌の粒子に存在する有害元素の濃度分布を分析し、この汚染土壌粒子に存在する有害元素の濃度分布から、土壌粒子の汚染が表面部だけなのか、内部にもあるのか等の汚染形態が解明されるので、汚染土壌の浄化処理に際し、その汚染形態に適した浄化処理方式を採用することができる。
又、汚染土壌粒子に存在する有害元素の濃度分布を調べるEPMAによる分析を行う前段階として、EPMAの測定条件を低分解能した分析、又はレーザアブレーションICP質量分析装置による分析を行って、有害元素を含有する土壌粒子を探索しておけば、分析時間が大幅に短縮され、土壌粒子の汚染形態の解明が効率よく行われる。
図1は本発明の方法による土壌の分析が組み込まれた汚染土壌の浄化処理方法の一例を示す図である。鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどの無機系有害元素による汚染が発見された土地があった場合、その土地を分画し、区画毎に土壌のサンプリングを行う。次いで、区画毎にサンプリングしたものを篩い分けて分析試料とし、法定の手順に従って、湿式化学分析を行い、土壌中に存在する有害元素の種類及びそれらの含有率を分析する。上記有害元素の分析値が基準値以下であった区画の土壌は、浄化処理を行う必要がないが、有害元素の分析値が基準値を超えていた区画については、次の順序に従って土壌の浄化処理を行う。
a.まず、汚染が確認された区画からサンプリングされた土壌について、その中の数g〜数十gを分析用供試料に加工する。
b.この分析用供試料について、有害元素を含有する土壌粒子を探索するための迅速分析を行う。迅速分析方法としては、レーザアブレーションICP質量分析装置により土壌粒子を分析する方法、EPMAの測定条件を低分解能にして行う分析方法などにより実施する。
c.次いで、有害元素を含む土壌粒子をEPMAにより高分解能で分析し、土壌粒子内の有害元素の濃度分布を調べる。
d.EPMAの分析により得られた土壌粒子内の有害元素の分布状態により、土壌粒子の汚染が表面部だけなのか、内部にもあるのか等の汚染形態が解明される。
e.解明された汚染形態に基づいて、適切な浄化処理方法を選定し、処理を行う。
図2は分析用供試料の一例を示す写真である。分析用供試料は、汚染土地から採取し、所定の篩で篩い分けた土壌を樹脂に埋め込んだ後、極力、粒子の断面が現れる状態となる様に切断し、その切断面を研磨したものである。
なお、分析用供試料をEPMAで分析する際には、電子線が照射されるので、粒子を固めて分析用供試料にするために使用した樹脂は、カーボンや金などの蒸着を行なっても、なお、電子線照射によりダメージを受け易い。このようなことが起ると、試料室内が汚染する原因となるため、導電性の樹脂を選ぶことが、より好ましい。
図3はEPMAの概略の構成を示す図である。EPMAは試料に電子線を照射することにより、試料から発生する特性X線を検出して試料の元素分析を行う装置であり、その分析は次のように行われる。図中、2は電子線を射出する電子銃、3は集束レンズ、13は分析用供試料、1は分析用の試料ホルダである。
分析用供試料13に導電性を持たせるためにカーボンや金の蒸着を施した後、その分析用供試料13を試料ホルダ1にセットする。電子銃2から射出された電子線が集束レンズ3及び対物レンズ4で集束され、分析用供試料13上を照射する。この電子線の照射により、分析用供試料から構成元素に固有の特性X線が発生し、このX線は分光結晶5により分光され、元素毎の情報に分割される。その後、ブラッグの法則を満足する波長を持つX線のみが検出器6に到達し、特定元素の濃度に応じた信号強度が検出される。
そして、ビームスキャン回路7の操作により、電子線を特定の領域にスキャンさせ、照射位置情報とその位置における特定元素の検出強度情報をリンクさせることにより、特定有害元素のマッピングがなされる。このマッピング技術を利用することにより、土壌粒子内の特定有害元素の濃度分布が求められる。
EPMAによる特定有害元素のマッピングにおいて、緻密なマッピングを行なうためには、電子ビーム径を適切な範囲に設定する必要がある。すなわち、ビーム径が粒径に対して大きすぎると、特定有害元素のマッピングを行っても、その元素の分布を解明することができず、又、粒径に対してビーム径が小さすぎると、測定に長時間を要する。具体的には、緻密なマッピングを行なうための電子ビーム径の範囲は、土壌粒子の粒径に対して0.001〜0.05倍程度にするのがよい。
本発明においては、電子ビーム径を土壌粒子の粒径に対して0.001〜0.05倍程度に設定して行う測定を、測定条件を高分解能にして行う分析と言う。又、電子ビーム径を土壌粒子の粒径に対して0.05〜1.0倍程度に設定して行う測定を、測定条件を低分解能にして行う分析と言う。なお、EPMAによる測定を低分解能にして行う理由については、後述する。
しかし、実際には、分析用供試料13中のどの土壌粒子が特定有害元素に汚染されているのか分からず、特定有害元素が存在しない粒子、あるいは汚染度が低い粒子の分析までも行わなければならないことになるので、EPMAによる分析の効率化を図るため、EPMAによる緻密なマッピングを行う前に、次に記す2通りの方法のうちの何れかの方法により、特定有害元素が存在する土壌粒子を探索し、その土壌粒子についてだけEPMAによる緻密な分析を行なって、土壌粒子内の特定元素の濃度分布を求める。
第一の汚染粒子探索方法は、EPMAの測定条件を低分解能にし、出来るだけ広い領域から汚染粒子を探し出す。この分析において、分析する領域や分解能の具体的な数値については、土壌の粒径や調査する内容により様々であるが、本発明者が行った実験例によれば、1mm2程度の大きさの粒子に対する特定元素の濃度分布の解明を試みた場合、分析する領域を15mm×15mmにすることにより、土壌粒子の汚染の有無を判別することができた。
なお、EPMAを低分解能にした分析において、分析する領域の広さは、通常、5mm×5mm〜30mm×30mm程度にする。分析する領域の広さが5mm×5mmよりも狭いと、その中にある粒子の数が少ないので、汚染粒子が発見されないことがあり、その際には、別の領域で分析を繰り返して行わなければならない。又、分析する領域が30mm×30mmを超える広さになると、分析に長時間を要する。
なお、EPMAを低分解能にした分析において、照射する電子ビーム径は、対象とする粒子径や供試料を作製した際の粒子の密度などにより異なるが、土壌粒子の粒径に対して0.05〜1.0倍程度の範囲が適切と考える。これは、ビーム径が大きすぎる場合にはどの粒子が汚染されているのかの判別が困難になったり、粒子内における有害元素の濃化の程度が著しい場合には、局所的に強い濃化の認められる粒子を見落としたりするためである。逆に、ビーム径が小さ過ぎると、今度は測定に長時間を要することになり、迅速性が損なわれてしまうことになる。
第二の汚染粒子探索方法は、レーザ気化分析技術を用いる方法である。レーザ気化分析技術を用いる方法については、その装置の一例を図4に示す。図4において、8はレーザ発振器、9はレーザ光の方向を変える反射ミラー、13は分析用供試料、14不活性ガス吹込み口、17は分析装置である。
レーザ発振器8からパルス状のレーザ光が連続的に或いは間欠的に発振され、レーザ発振器8から発振されたレーザ光は反射ミラー9により方向を変えられ、集光レンズ10を通過した後、チャンバー11内の試料ステージ12上に設置された分析用供試料13の表面に焦点を結ぶ。チャンバー11内には、不活性ガス吹込み口14と微粒子搬出口15が設けられており、不活性ガス吹込み口14からアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスがチャンバー11内に吹き込まれ、その不活性ガスが微粒子搬出口15から排出されるようになっている。この際、レーザ光の照射により分析用供試料13の表面から気化した微粒子が不活性ガスにより搬送され、導管16を通って分析装置17へ導入される。この例においては、分析装置17として、ICP(高周波誘導結合プラズマ)質量分析器が用いられており、迅速な分析が行われる。そして、試料ステージ12を動かして、順次、分析用供試料13上の異なる位置にレーザ光を照射し、特定元素の含有量を土壌粒子毎に調べる。
図5はPbに汚染された土壌粒子をレーザ気化分析技術により探索した結果を模式的に示した図である。図5において、左の図は測定位置によって汚染度が異なる土壌粒子が存在することを示し、右の図は左の図の粒子1〜粒子3のPbの検出強度を示す。このように、土壌の汚染度は粒子によって異なっており、右の図に示した結果によれば、粒子3はPbを含まないもの、粒子2は多量のPbを含むもの、粒子1は少量のPbを含むものであった。
上記の操作により汚染が確認された土壌粒子に対して、粒子近傍の樹脂に番号を付してマーキングをしておけば、その後のEPMAによるマッピングでは、汚染されていない粒子を測定してしまう時間の無駄が省かれ、大幅な効率化が達成される。なお、図6はマーキングした土壌粒子をその後のEPMAによるマッピングの際にマッピング部を確認した電子顕微鏡写真である。
上記第一の汚染粒子探索方法又は第二の汚染粒子探索方法による第1段階の分析により、汚染土壌粒子が探索される。
次いで、第1段階の分析により探索された汚染土壌粒子だけについて、EPMAによる第2段階の分析を行う。第2段階の分析においては、電子ビーム径を土壌粒子の粒径に対して0.001〜0.05倍の範囲の所定値に設定して緻密なマッピングを行い、有害元素の粒子内濃度分布を明らかにする。
図7にEPMAにより土壌粒子内のPbの濃度分布を分析した結果を示す。図7はEPMAによりPbに汚染された土壌粒子の濃度分布を分析した結果の画像である。図中、白く見えている部分がPb元素の存在箇所である。このように、図7に示す土壌粒子は表面にPb元素が特異的に濃化しており、表面付着型の汚染形態である。
上述のように、本発明は、汚染土壌粒子を探索するための迅速な分析と、その分析により探索された汚染土壌粒子をEPMAにより高分解能でマッピングする緻密な分析とを組み合せたものであり、土壌粒子の汚染形態を効率よく調べることができる。
ところで、土壌粒子内のPbの濃度分布を調べた分析において、EPMAのみを適用した場合と、ICP質量分析器とEPMAを組み合わせて2段階で分析した場合の所要時間を比較した結果は、下記の通りであった。EPMAのみで実施の場合には、3日間を要したが、ICP質量分析器とEPMAを組み合わせて2段階で行った場合には、およそ1日を要したのみであった。
上述のように、本発明においては、汚染土壌の有害元素の分布を調べるための2段階の分析する場合、第1段階の分析では、EPMAの測定条件を低分解能にする方法と、レーザICP質量分析器を使用する方法の何れかを採用するが、レーザICP質量分析器を使用する方法を採用した場合には、次のようなことを実施することができる。
対象とする元素のみを経時的にモニタさせる方法を用いれば、レーザ光照射システムと分析装置とをコンピュータを介して連動させることもできる。すなわち、予めレーザ光照射の周期と照射位置を指定しておき、照射位置と得られた分析結果(対象元素の検出強度)との関係が求められるようなプログラミングをしておけば、無人運転による分析も可能となる。
又、分析装置としてICP質量分析装置を用いる場合には、多元素の検出や同位体の検出を同時に行うことができるので、必要に応じて測定対象以外の元素を同時にモニタリングすることにより、汚染元素が天然由来の物であるのか、人工物であるのかの判定や、年代の推定なども併せて行なうことが可能となる。
さらに、EPMAによる分析においては、特定元素のカウンターイオンとなるClやS等の元素を同時にマッピングしておけば、その濃度分布の状況から特定元素の化合形態を推測可能な場合も有り得る。
上述のようにして、土壌粒子内の有害元素の濃度分布を分析し、土壌粒子の汚染が表面部だけなのか、内部にもあるのか等の汚染形態を解明することにより、その土壌の汚染形態に適した浄化処理方式を決めることができる。
例えば、土壌の汚染形態が図7に示すような表面付着型であるときの浄化処理方式は、粒子の表面を浄化する方式が適しているものと判断される。具体的には、汚染源となっているPb化合物が水溶性であれば水洗処理を行うのがよく、又、Pb化合物が酸可溶性のものであれば、酸洗処理を行うのがよく、又、Pb化合物が難溶性のものであれば、アトリッションなどの表面研磨処理が有効であると判定される。
そして、図7に示す表面付着型のPb汚染土壌について、本発明者が行った浄化試験の結果では、360ppmのPbを含む汚染土壌が、水洗処理を行った場合には、Pb含有率が140ppmに低下し、アトリッション表面研磨処理を行った場合には、Pb含有率が110ppmまで低下した。
本発明の方法による土壌の分析が組み込まれた汚染土壌の浄化処理方法の一例を示す図である。 分析用供試料の一例を示す写真である。 EPMAの概略の構成を示す図である。 レーザ気化分析装置の概要を示す図である。 レーザ気化分析技術によりPbに汚染された土壌粒子を探索した結果を模式的に示した図である。 マーキングした土壌粒子をその後のEPMAによるマッピングの際にマッピング部を確認した電子顕微鏡写真である。 EPMAによりPbに汚染された土壌粒子の濃度分布を分析した結果の画像である。
符号の説明
1 試料ホルダ
2 電子銃
3 集束レンズ
4 対物レンズ
5 分光結晶
6 検出器
7 ビームスキャン回路
8 レーザ発振器
9 反射ミラー
10 集光レンズ
11 チャンバー
12 試料ステージ
13 分析用供試料
14 不活性ガス吹込み口
15 微粒子搬出口
16 導管
17 分析装置

Claims (3)

  1. 汚染土壌の浄化処理に先だって行う土壌の汚染状態解明方法において、電子プローブ・マイクロ・アナライザによるマッピング技術を用いて、汚染土壌の粒子に存在する有害元素の濃度分布を分析し、前記有害元素の濃度分布の状態から汚染された土壌粒子の汚染形態を解明することを特徴とする汚染土壌の汚染形態解明方法。
  2. 汚染土壌の分析を2段階で行う方法であって、汚染土壌を電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を低分解能にして分析し、有害元素を含有する土壌粒子を探す第1段階の分析と、第1段階の分析により探索された有害元素を含有する土壌粒子を電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を高分解能にして分析し、土壌粒子内の有害元素の濃度分布を調べる第2段階の分析と、を行うことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の汚染形態解明方法。
  3. 汚染土壌の分析を2段階で行う方法であって、汚染土壌の粒子に含まれる有害元素の濃度をレーザアブレーションICP質量分析装置により分析する第1段階の分析と、第1段階の分析で探索された有害元素を含む土壌粒子を電子プローブ・マイクロ・アナライザの測定条件を高分解能にして分析し、土壌粒子内の有害元素の濃度分布を調べる第2段階の分析と、を行うことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の汚染形態解明方法。
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