JP2005281378A - インクセット - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐オゾン性が良好な画像を記録媒体上に記録することが可能なインクセット等を提供する。
【解決手段】 少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットであって、前記シアンインク組成物が着色剤として、可視光域(波長400〜800nm)における光吸収スペクトルが波長590〜615nmに最大吸収ピークを有する金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を含有し、
さらに前記マゼンタインク組成物が着色剤として下記の式(1):
【化1】
(前記式(1)中、Aは、アルキレン基、フェニレン基を含有するアルキレン基、又は下記式(2):
【化2】
で表される基を表し、さらにXは、NH2,OH、及びClからなる群から選ばれる基を表す。)
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするインクセット。
【選択図】 なし
【解決手段】 少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットであって、前記シアンインク組成物が着色剤として、可視光域(波長400〜800nm)における光吸収スペクトルが波長590〜615nmに最大吸収ピークを有する金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を含有し、
さらに前記マゼンタインク組成物が着色剤として下記の式(1):
【化1】
(前記式(1)中、Aは、アルキレン基、フェニレン基を含有するアルキレン基、又は下記式(2):
【化2】
で表される基を表し、さらにXは、NH2,OH、及びClからなる群から選ばれる基を表す。)
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするインクセット。
【選択図】 なし
Description
本発明は、インクセット、特に、耐オゾン性に優れた画像を形成することができるインクセットに関するものである。
近年、インクジェット記録方法が注目されている。インクジェット記録方法は、インク組成物を小滴として飛翔させ、この小滴を紙等の記録媒体(メディア)に付着させて印刷を行なう印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置により高解像度かつ高品位な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。そして、この方法を利用したインクジェット記録装置は、優れた印字品質、低コスト、比較的静かな動作、優れたグラフィック形成能により、市場に広く受け入れられている。中でも、サーマル(バブルジェット(登録商標))及び圧電ドロップ・オン・デマンドプリンターは、商業的にとりわけ成功し、オフィス及び家庭でのパソコン用プリンターとして広く用いられてきた。
さらに近年、複数のカラーインク組成物を用いたインクジェット記録方法によってカラー画像を形成して記録物を得ることが行われている。一般に、カラー画像の形成は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物の三色、さらに所望によりブラックインク組成物を加えた四色によって行われている。また、これらの四色にライトシアンインク組成物及びライトマゼンタインク組成物を加えた六色又はそれらにさらにダークイエローインク組成物を加えた七色によってカラー画像形成を行なう場合もある。このような2種以上のインク組成物を組み合わせたものがインクセットである。
上述したカラー画像の形成に用いられるインク組成物には、各色ごとのインク組成物自身が良好な発色性を有していることに加え、複数色のインク組成物を組み合わせたときに良好な中間色を発色することができること、及び得られる記録物が保存中に変退色しないこと等が求められる。
さらに最近、カラーインクジェットプリンタによる"写真画質"印刷においては、ヘッド、インク組成物、記録方法、及びメディアのそれぞれの継続的な改良がなされ、得られる画質は"銀塩写真"と遜色ないレベルとなり、"写真並"となった。その一方で、インク組成物及びメディアの改良により、カラーインクジェットプリンタを用いて得られる記録物の画像の保存性の向上が図られており、特に画像の耐光性に関しては、実用上問題のないレベルまで改良されてきた(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、画像の劣化は、光の作用によって生じるだけでなく、環境中に存在する酸化性ガス、例えばオゾンによる酸化によっても生じ、画像の退色や変色が進行する。したがって、記録物の画像の保存性をさらに向上させるためには、インク組成物によって形成された画像の耐光性を向上させるとともに、耐オゾン性もあわせて向上させることが望まれている。そのためインクジェット記録物の耐オゾン性を向上させるための様々な検討が行われており、特にインク組成物に用いる着色剤(色材)の耐オゾン性能の向上が図られてきた(例えば、特許文献3及び4参照)。
また、同系色について色濃度の異なる濃淡2種のインク組成物を含めてインクセットを構成することによって、様々な色濃度の画像を形成でき、粒状感のない画像を得ることができるようになった。このような色濃度の異なる2種のインク組成物を含むインクセットは主に写真画像の印刷に用いられるが、写真画像の形成においては、画像の粒状感を緩和又は解消するため、一般に色濃度の低いインク組成物が使用されるケースが多い。また、前述した耐オゾン性の評価においても、評価試料となる光学濃度が1.0近傍のパターンは、色濃度の低いインク組成物によって形成される。したがって、記録物の写真画像の耐オゾン性、及びインクセット全体としての耐オゾン性向上のためには、色濃度の低いインク組成物の耐オゾン性を改良することが重要である。一方、色濃度の濃いインク組成物は、極彩色の画像やグラフィックアート的なパターンの印刷に用いられるため、これらのインク組成物の耐オゾン性の改良も必要である。
さらに、ブラックインク組成物は、画像中において画像のコントラストを得るといった観点から重要な役割を果たすため、インクセットにブラックインク組成物を含めることも多い。したがって、インクセットにブラックインク組成物を含める場合は、ブラックインク組成物が優れた耐オゾン性を有するとともに、ブラックインク組成物のオゾンによる劣化速度がインクセットを構成する他のインク組成物の劣化速度と極端に違わないことが必要である。
インクセットにおいてはインクセットを構成する各インク組成物自身の耐オゾン性が良好であるとともに、各インク組成物間の耐オゾン性のバランスが良く、オゾンに晒された場合に特定色が他の色に比べて早く退色及び/又は変色しないことが必要とされる。さらに、インクセットを構成する各インク組成物において耐オゾン性を改良しようとすると、ブロンズ現象が発生する場合があり、かかるブロンズ現象を低減することも必要となる。ブロンズ現象とは、高Dutyで印刷を行った場合に、印刷された部分に見られる赤浮き現象をいい、特に色材(着色剤)として金属フタロシアニン系染料を用いたインク組成物を用いてベタ印刷(100 %Dutyの塗りつぶし印刷)などを行った場合に発生しやすい傾向が見られる。ブロンズ現象は画像全体としての色バランスを崩し、画像品質を低下させる場合がある。
本発明は、上記課題を解決すべく完成されたものであり、耐オゾン性が良好な画像を記録媒体上に記録することが可能なインクセット、そのインクセットを収容したインクカートリッジ、そのインクセットを使用した記録方法、及びそのインクセットにより記録された記録物に関するものである。
本発明のインクセットは、少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットであって、前記シアンインク組成物が着色剤として、可視光域(波長400〜800nm)における光吸収スペクトルが波長590〜615nmに最大吸収ピークを有する金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を含有し、
さらに前記マゼンタインク組成物が着色剤として下記の式(1):
(前記式(1)中、Aは、アルキレン基、フェニレン基を含有するアルキレン基、又は下記式(2):
で表される基を表し、さらにXは、NH2,OH、及びClからなる群から選ばれる基を表す。)
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするものである。
さらに前記マゼンタインク組成物が着色剤として下記の式(1):
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするものである。
さらに上記インクセットにおいては、前記金属フタロシアニン系染料が、可視光域(波長400〜800nm)の光吸収スペクトルにおいて波長590〜605nmに最大吸収ピークを有する染料であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記シアンインク組成物が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を含み、かつ前記金属フタロシアニン系染料の合計量が前記シアンインク組成物の総重量に対して1.0〜10重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記マゼンタインク組成物が前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記マゼンタインク組成物の総重量に対して2.0〜10.0重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記マゼンタインク組成物が、着色剤として下記式(3):
(前記式(3)中、Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。B1およびB2は、各々−CR1=、−CR2=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CR1=または−CR2=を表す。R5,R6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表わす。各基は更に置換基を有していてもよい。G、R1、R2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルおよびアリールチオ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。各基は更に置換されていてもよい。また、R1とR5、あるいはR5とR6が結合して5〜6員環を形成してもよい。)
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記シアンインク組成物として、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物を備え、かつ少なくとも一種のシアンインク組成物が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を含有することが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、低い色濃度を有するシアンインク組成物(以下、淡シアンインク組成物とも記す)が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記淡シアンインク組成物の総重量に対して0.4〜3.0重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、高い色濃度を有するシアンインク組成物(以下、濃シアンインク組成物とも記す)が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記濃シアンインク組成物の総重量に対して2.0〜10.0重量%であることが好ましい。
上記インクセットに濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を含める場合、淡シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)と濃シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)との比が、1:2〜1:8の範囲にあることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記シアンインク組成物が、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物の塩がリチウム塩であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記マゼンタインク組成物として、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物を備え、かつ少なくとも一種のマゼンタインク組成物が前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物のうち、低い色濃度を有するマゼンタインク組成物(以下、淡マゼンタインク組成物とも記す)が前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記淡マゼンタインク組成物の総重量に対して0.5〜3.5重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物のうち、高い色濃度を有するマゼンタインク組成物(以下、濃マゼンタインク組成物とも記す)が、前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記濃マゼンタインク組成物の総重量に対して3〜10重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物において、淡マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)と濃マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)との比が、1:2〜1:8の範囲にあることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記マゼンタインク組成物が、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物の塩がリチウム塩であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記イエローインク組成物が、着色剤として下記の式(4):
で表される化合物及び下記の式(5):
(前記式(4)及び(5)中、R5、R5 ' 、R6、及びR6 '、は独立して、CH3、OCH3を表し、Z及びZ'は、独立して、
のいずれかの構造を有するものであり、互いに同一であっても異なっていても良い。ここで、Mは、H、Li、Na、K、アンモニウム、又は有機アミン類を表し、nは1又は2の整数である。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記イエローインク組成物が、前記式(4)で表される化合物及び前記式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記イエローインク組成物の総重量に対して1〜6重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、前記イエローインク組成物が、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー58をさらに含有させてもよい。
上記インクセットにおいて、イエローインク組成物に着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー58をさらに含有させる場合は、イエローインク組成物において前記式(4)で表される化合物及び前記式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物の合計の濃度(重量%)と、C.I.ダイレクトイエロー58の濃度(重量%)との比が、4:1〜10:1の範囲にあることが好ましい。
本発明のインクセットには、さらにブラックインク組成物を備えてもよい。
本発明のインクセットにブラックインク組成物を備える場合は、前記ブラックインク組成物が、ブラック染料として下記の式(6):
(前記式(6)中、R1は置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を表し、さらにR2は置換基を有するフェニレン基又は置換基を有するナフチレン基を表し、さらにR3は少なくとも1つの二重結合及び置換基を有する5〜7員環の複素環基を表す。さらに前記R1〜R3における前記置換基は、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、NO2、NH2、C1〜C4のアルキル基、置換基を有するアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基、置換基を有するアルコキシ基、アミノ基、置換基を有するアミノ基、及び置換基を有するフェニル基からなる群から選ばれる。)
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記ブラックインク組成物においては、上記式(6)で表される化合物が、以下の式(7):
(前記式(7)中、R1〜R9は独立して、H、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、NO2、及びNH2からなる群から選ばれる基を表す。)
で表される化合物であることがさらに好ましい。
で表される化合物であることがさらに好ましい。
本発明のインクセットにおいては、上記ブラックインク組成物が前記式(6)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記ブラックインク組成物の総重量に対して0.5〜12重量%であることが好ましい。
上記インクセットにおいては、インク組成物がノニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。
上記インクセットにおいては、上記ノニオン系界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤であることがさらに好ましい。
上記インクセットにおいて、インク組成物に上記ノニオン界面活性剤を含める場合は、インク組成物に対して上記ノニオン系界面活性剤を0.1〜5重量%含めることが好ましい。
上記インクセットにおいては、インク組成物が浸透促進剤を含むことが好ましい。
上記浸透促進剤がグリコールエーテル類であることがさらに好ましい。
本発明のインクカートリッジは、上記いずれかのインクセットを一体的に又は独立に収容したことを特徴とするものである。
本発明のインクジェット記録方法は、上記いずれかのインクセット又は上記インクカートリッジを用いて記録することを特徴とするものである。
本発明の記録物は、上記いずれかのインクセット又は上記インクカートリッジを用いて記録されたことを特徴とするものである。
本発明のインクセットは、シアンインク組成物の着色剤として上記の特定の金属フタロシアニン系染料を用い、かつ、マゼンタインク組成物の着色剤として前記式(1)で表される化合物及びその塩(以下、あわせて式(1)の染料ともいう)を用いることにより、このインクセットを用いて印刷された記録物の画像の耐オゾン性を優れたものにできる。さらに、シアンインク組成物として濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を含む場合、少なくともそれらのインク組成物の一つ、特に淡シアンインク組成物の着色剤として前記特定の金属フタロシアニン系染料を用いることによって、インクセットを用いて印刷される画像の耐オゾン性を優れたものにすることができる。さらに、マゼンタインク組成物として濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含む場合、少なくともそれらのインク組成物の一つ、特に淡マゼンタインク組成物に前記式(1)の染料を用いることによって、インクセットを用いて印刷される画像の耐オゾン性を優れたものにすることができる。また、本発明のインクセットにおいては、イエローインク組成物に用いる染料として前記式(4)で表される化合物(以下、式(4)の染料ともいう)及び前記式(5)で表される化合物(以下、式(5)の染料ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも一種、又はそれにさらに加えてC.I.ダイレクトイエロー58を用いることにより、インクセットを用いて印刷される画像の耐オゾン性を優れたものにできる。本発明のインクセットにはさらにブラックインク組成物を含めることができ、ブラックインク組成物の着色剤として前記式(6)で表される化合物及びその塩(以下、あわせて式(6)の染料ともいう)、特に前記式(7)で表される化合物及びその塩(以下、あわせて式(7)の染料ともいう)を用いることにより、コントラストが優れ、かつ耐オゾン性が優れた画像を得ることができる。さらに、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族カルボン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種をシアンインク組成物及び/又はマゼンタインク組成物に添加することにより、ブロンズ現象の発生を防止すること、又は耐湿性を向上させることができる。さらにインク組成物にノニオン系界面活性剤、特にアセチレングリコール系界面活性剤を添加すること、及び/又はインク組成物に浸透促進剤、特にグリコールエーテル類を添加することによって、印刷により得られる画像の画質を向上させることができる。本発明のインクセットはインクジェット記録方法に用いるものとして好ましい。本発明のインクセットを用いて作成された記録物は優れた画質を有し、かつ耐オゾン性に優れる。
本発明者らは、複数色の各種インク組成物を組み合わせてインクセットを構成し、それを用いて形成された画像の耐オゾン性を向上させるための検討を行った。その結果、それぞれが上記の特定構造を有する染料を用いたシアン及びマゼンタインク組成物を含むインクセットを用いて画像を記録した場合、記録物の画像が耐オゾン性に優れ、かつシアン及びマゼンタのオゾンによる劣化速度の差が小さいために、ある程度オゾンによる画像の劣化が進行しても、観察者が画像全体の劣化を感じにくいインクセットを得ることができることを見いだした。
さらに本発明者らは、イエローインク組成物において上述した特定構造を有する染料を着色剤として用いた場合に、観察者が画像全体の劣化を感じにくいインクセットを得ることができることを見いだした。
さらに本発明者らは、上記インクセットにブラックインク組成物を含める場合、ブラックインク組成物に用いるブラック染料として上記特定構造を有する染料を用いた場合に、インクセットを構成する各インク組成物の耐オゾン性が良好であり、かつ各インク組成物間のオゾン劣化速度に大きな差が生じないため、ある程度オゾンによる画像の劣化が進行しても観察者が画像全体の劣化を感じにくいインクセットを得ることができることを見いだした。
さらに本発明者らは、上記インクセットにおいて、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物をシアン及び/又はマゼンタインク組成物中に含有させることによって、ブロンズ現象の発生の低減及び記録された画像の耐湿性を改善できることを見いだした。
さらに、本発明者らは、シアン及び/又はマゼンタインク組成物について、色濃度の異なる2種のインク組成物(以下、高い色濃度を有するマゼンタ及びシアンインク組成物をそれぞれ「濃マゼンタインク組成物」及び「濃シアンインク組成物」といい、低い色濃度を有するマゼンタ及びシアンインク組成物をそれぞれ「淡マゼンタインク組成物」及び「淡シアンインク組成物」という。)を含むインクセットにおいては、淡マゼンタインク組成物及び/又は淡シアンインク組成物の着色剤として上記の特定の構造を有する染料を用いる場合、特に好ましい耐オゾン性を有するインクセットにできることを見いだした。
さらに、本発明者らは、本発明のインクセットを構成するインク組成物に、特定の界面活性剤及び/又は浸透促進剤を添加することによって優れた画質の記録物を得ることができることを見いだした。
さらに、本発明者らは、本発明のインクセットはインクジェット記録方法に用いるインクセットとして好ましいことを見いだした。
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
さらに、本発明者らは、本発明のインクセットはインクジェット記録方法に用いるインクセットとして好ましいことを見いだした。
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
本発明の第一の態様に係るインクセットは、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を含む。本発明のシアンインク組成物は、着色剤として上述した特定の光吸収スペクトルを有する金属フタロシアニン系染料(以下、特定金属フタロシアニン系染料とも記す)を含み、かつマゼンタインク組成物は、着色剤として前記式(1)で表される化合物及びその塩(以下、あわせて式(1)の染料ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むものである。
本発明の第二の態様に係るインクセットは、上記第一の態様のインクセットにおいて、所望によりシアンインク組成物として色濃度の異なる少なくとも二種のシアンインク組成物、すなわち少なくとも濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物の二種を備えたインクセットであり、さらに少なくとも一種のシアンインク組成物が上記特定金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を含むものである。特に淡シアンインク組成物が、前記特定金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を含有していることが好ましい。さらにブロンズ現象の発生を防止するため、これらのシアンインク組成物には、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましい。
本発明の第三の態様に係るインクセットは、上記第一の態様又は上記第二の態様のインクセットにおいて、所望によりマゼンタインク組成物として色濃度の異なる少なくとも二種のマゼンタインク組成物、すなわち少なくとも濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物の二種を備えたインクセットであり、さらに少なくとも一種のマゼンタインク組成物が前記式(1)の染料の少なくとも一種を含むものである。特に淡マゼンタインク組成物が、着色剤として前記の式(1)の染料の少なくとも一種を含有していることが好ましい。さらに画像の耐湿性を向上させるため、これらのマゼンタインク組成物には、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましい。
上記各実施態様に係るインクセットにおいては、イエローインク組成物に用いられる着色剤が前記式(4)で表される化合物(以下、式(4)の染料ともいう。)及び前記式(5)で表される化合物(以下、式(5)の染料ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。さらに、これらの化合物とC.I.ダイレクトイエロー58とを併用することにより、イエローインク組成物の耐オゾン性と他の色のインク組成物の耐オゾン性との間に大きな差が生じないようにバランスをさらに良好に保つことができる。
本発明の第四の実施態様に係るインクセットは、上記第一、第二、又は第三の態様の各インクセットにおいて、さらにブラックインク組成物を備えたものである。ブラックインク組成物に用いるブラック染料としては前記式(6)で表される化合物及びその塩(以下、あわせて式(6)の染料ともいう。)からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
本発明のインクセットはいずれも、インク組成物を用いる記録方法に用いられ、インク組成物を用いた記録方法としては、例えば、インクジェット記録方法、ペン等の筆記具による記録方法、その他各種の印字及び印刷方法があげられる。本発明のインクセットは、特にインクジェット記録方法に用いるインクセットとして好ましい。
以下に本発明のインクセットに含まれる各インク組成物について説明する。まず、各インク組成物中に含有される着色剤について、各色のインク組成物ごとに説明する。本発明のインクセットにおいては各色のインク組成物において、特定の化学構造を有する染料を着色剤として用いることによって、インクセット全体としての耐オゾン性を優れたものにすることができる。
本発明のインクセットを構成するシアンインク組成物に用いられる着色剤について説明する。本発明においてシアンインク組成物に着色剤として用いられるシアン系染料は、可視光域(波長400〜800nm)における光吸収スペクトルが波長590〜650nmに最大吸収ピークを有する金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種である。さらに前記金属フタロシアニン系染料は、その可視光域における光吸収スペクトルの最大吸収ピークが590〜615nmであることがさらに好ましく、590〜605nmにあることが特に好ましい。
このような光吸収スペクトル特性を有する金属フタロシアニン系染料は、例えば、特開2002−105349号公報に記載された合成方法を用いて合成することができる。このような金属フタロシアニン系染料の具体的構造は、例えば、以下の式(8):
(式中、Mはプロトン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アミンのオニウムイオンまたはアンモニウムイオンを示す。mは1〜4の整数であり、nは0〜3の整数であり、かつm+nは1〜4の整数である。)
で表される化合物又は式(8)で表される化合物の混合物(以下、これらをあわせて式(8)の染料とも記す)を挙げることができる。
で表される化合物又は式(8)で表される化合物の混合物(以下、これらをあわせて式(8)の染料とも記す)を挙げることができる。
本発明に用いる金属フタロシアニン系染料としては、上記式(8)の染料であって、かつ可視光域(波長400〜800nm)における光吸収スペクトルの最大吸収ピークが上述した好ましい範囲にある染料を用いることが特に好ましい。なお、金属フタロシアニン系染料の可視光域における光吸収スペクトルの測定は、一般的な紫外可視光吸収スペクトル測定装置を用いて測定することができる。
上記式(8)の金属フタロシアニン系染料は、公知の方法を用いて以下の式(9):
(式中、Mはプロトン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アミンのオニウムイオン又はアンモニウムイオンを示す。sは2〜4の整数を表す。)
で表される化合物をクロロスルホン化したのち、アミノ化剤を反応させて合成することができる。
で表される化合物をクロロスルホン化したのち、アミノ化剤を反応させて合成することができる。
本発明において、シアンインク組成物中に含まれるシアン系染料の含有量は、上記特定金属フタロシアニン系染料のカラーバリューに応じて決められるが、本発明においては、特定金属フタロシアニン系染料が、シアンインク組成物中に、シアンインク組成物の総重量に対して1〜10重量%含まれることが好ましく、2〜6重量%含まれることがさらに好ましい。シアンインク組成物中に含まれる特定金属フタロシアニン系染料の合計量を1重量%以上にすることで、印刷したときの記録媒体上におけるインクの発色性を良好にでき、かつ必要とされる画像濃度を確保できる。また、シアンインク組成物中に含まれる特定金属フタロシアニン系染料の合計量を10重量%以下にすることで、インクジェット記録方法に用いた場合にシアンインク組成物の吐出性を良好にでき、しかもインクジェットノズルが目詰まりしにくい等の効果が得られる。
本発明のインクセットにおいては、シアンインク組成物として濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物をインクセットに含めることができる。濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を本発明のインクセットに含める場合、濃シアンインク組成物又は淡シアンインク組成物の少なくとも一つが前記特定金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を着色剤として含むことが好ましく、淡シアンインク組成物が前記特定金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を着色剤として含むことがさらに好ましい。濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物の両者が前記特定金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を着色剤として含むことが特に好ましい。
上記のとおり、インクセットに濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物を含める場合、淡シアンインク組成物中の着色剤の濃度は、着色剤として用いられる染料の種類に応じて、淡シアンインク組成物を濃シアンインク組成物と組み合わせたときに好ましいカラーバランスを有するよう適宜決定することができる。一般には、淡シアンインク組成物中に、淡シアンインク組成物の総重量に対し、着色剤である特定金属フタロシアニン系染料が合計量で0.4〜3.0重量%含まれることが好ましい。淡シアンインク組成物中の着色剤濃度を0.4重量%以上にすることにより、発色性を優れたものにすることができ、かつ着色剤濃度を3.0重量%以下にすることによって、その淡シアンインク組成物を用いて記録された画像の粒状感を低下させることができる。一方、濃シアンインク組成物中には、濃シアンインク組成物の総重量に対し、特定金属フタロシアニン系染料が合計量で2.0〜10.0重量%含まれることが好ましい。さらに、淡シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)と濃シアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)との比が、1:2〜1:8であることが好ましい。このような条件を満足させることによって、淡シアンインク組成物と濃シアンインク組成物との間に良好なカラーバランスが実現され、しかも、インクジェットノズルが目詰まりすることを防止することができる。
本発明のインクセットにおけるシアンインク組成物、又は濃シアンインク組成物及び淡シアンインク組成物においては、インクの色調の調整等のため、耐オゾン性を大きく損ねない範囲で上記特定金属フタロシアニン系染料とその他のシアン系染料を併用することができる。本発明に用いるその他のシアン系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー1,10,15,22,25,55,67,68,71,76,77,78,80,84,86,87,90,98,106,108,109,151,156,158,159,160,168,189,192,193,194,199,200,201,202,203,207,211,213,214,218,225,229,236,237,244,248,249,251,252,264,270,280,288,289,291、C.I.アシッドブルー9,25,40,41,62,72,76,78,80,82,92,106,112,113,120,127:1,129,138,143,175,181,205,207,220,221,230,232,247,258,260,264,271,277,278,279,280,288,290,326、C.I.リアクティブブルー2,3,5,8,10,13,14,15,17,18,19,21,25,26,27,28,29,38、C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,22,26,41,45,46,47,54,57,60,62,65,66,69,71等を挙げることができるが、これらに限定されない。
次に本発明のインクセットのマゼンタインク組成物に用いる着色剤について説明する。本発明におけるマゼンタインク組成物は、着色剤として前記式(1)の染料の少なくとも一種を含む。前記式(1)で表される化合物及びその塩は、いかなる方法で製造されても良いが、一例をあげると以下のような方法で製造することができる。
1)1−メチルアミノ−4−ブロモアントラキノンにベンゾイル酢酸エチルエステルを溶媒中で反応させ、1−ベンゾイル−6−ブロモ−2,7−ジヒドロ−3−メチル−2,7−ジオキソ−3H−ジベンゾ[f,ij]イソキノリンを得る。
2)次いで、上記1)で得られた化合物とメタアミノアセトアニリドを溶媒中で反応させ、3'−[1−ベンゾイル−2,7−ジヒドロ−3−メチル−2,7−ジオキソ−3H−ジベンゾ[f,ij]イソキノリン−6−イルアミノ]−アセトアニリドを得る。
3)次いで、上記2)で得られた化合物を発煙硫酸中で反応させ、トリナトリウム−6−アミノ−4−[2,7−ジヒドロ−3−メチル−1−(3−スルホナトベンゾイル)−2,7−ジオキソ−3H−ジベンゾ[f,ij]イソキノリン−6−イルアミノ]−ベンゼン−1,3−ジスルホナートを得る。
4)次いで、上記3)で得られた化合物とシアヌルクロライドとを水中で反応させて1次縮合物を得、さらにそれに式(2)に示される連結基Aを有するジアミンを反応させて2次縮合物を得る。
5)次いで、上記4)で得られた化合物をそのまま、又は加水分解、あるいはアンモニアと反応させて3次縮合物と成し、目的とする前記式(1)で表される化合物を得る。
1)1−メチルアミノ−4−ブロモアントラキノンにベンゾイル酢酸エチルエステルを溶媒中で反応させ、1−ベンゾイル−6−ブロモ−2,7−ジヒドロ−3−メチル−2,7−ジオキソ−3H−ジベンゾ[f,ij]イソキノリンを得る。
2)次いで、上記1)で得られた化合物とメタアミノアセトアニリドを溶媒中で反応させ、3'−[1−ベンゾイル−2,7−ジヒドロ−3−メチル−2,7−ジオキソ−3H−ジベンゾ[f,ij]イソキノリン−6−イルアミノ]−アセトアニリドを得る。
3)次いで、上記2)で得られた化合物を発煙硫酸中で反応させ、トリナトリウム−6−アミノ−4−[2,7−ジヒドロ−3−メチル−1−(3−スルホナトベンゾイル)−2,7−ジオキソ−3H−ジベンゾ[f,ij]イソキノリン−6−イルアミノ]−ベンゼン−1,3−ジスルホナートを得る。
4)次いで、上記3)で得られた化合物とシアヌルクロライドとを水中で反応させて1次縮合物を得、さらにそれに式(2)に示される連結基Aを有するジアミンを反応させて2次縮合物を得る。
5)次いで、上記4)で得られた化合物をそのまま、又は加水分解、あるいはアンモニアと反応させて3次縮合物と成し、目的とする前記式(1)で表される化合物を得る。
本発明のマゼンタインク組成物は、前記式(1)で表される化合物及びその塩(あわせて、式(1)の染料)の少なくとも一種を着色剤として含む。
本発明のインクセットには、マゼンタインク組成物として濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含めることができる。濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物の両者をインクセットに含める場合、両者の少なくとも一つが前記式(1)の染料を着色剤として含むことが好ましく、淡マゼンタインク組成物が前記式(1)の染料を着色剤として含むことがさらに好ましい。淡マゼンタインク組成物の耐オゾン性を向上することによって、記録物全体の画像の耐オゾン性を向上できる。最も好ましいのは、濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物の両者が前記式(1)の染料を着色剤として含むことである。
本発明のインクセットにおいて、マゼンタインク組成物中における着色剤の濃度は、着色剤として用いられる式(1)の染料のカラーバリューに基づいて適宜定めることができる。なお、本明細書において着色剤として染料を用いる場合、インク組成物中の「着色剤の濃度」を「染料の濃度」と記す場合があるが、これらの語は同じ意味で用いる。インクセットに一つのマゼンタインク組成物のみを含める場合、一般的にはマゼンタインク組成物中に式(1)の染料が合計量で2.0〜10重量%含有されることが好ましい。マゼンタインク組成物中の前記染料の濃度を2.0重量%以上とすることにより、インクとして充分な発色性を確保でき、さらに染料の濃度を10重量%以下にすることによってインクジェット記録方法に用いるインク組成物として、ノズルからの吐出性を確保することやノズル目詰まりを防止すること等が容易となる。
また、インクセットに濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含める場合、淡マゼンタインク組成物中における染料濃度は、着色剤として用いられる式(1)の染料のカラーバリューにしたがって適宜選択することができるが、一般的には淡マゼンタインク組成物中に式(1)の染料が合計量で0.5〜3.5重量%含有されていることが好ましく、1.0〜3.0重量%含有されていることがさらに好ましい。染料の濃度を0.5重量%以上にすることによって淡マゼンタインク組成物として必要な発色性を確保することができ、かつ染料の濃度を3.5重量%以下にすることによって淡マゼンタインク組成物を用いて記録された記録物の画像における粒状感を低減又は防止することができる。
インクセットに濃マゼンタインク組成物及び淡マゼンタインク組成物を含める場合、淡マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の含有量(重量%)と濃マゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の含有量(重量%)との比を1:2〜1:8にすることが好ましい。着色剤の含有量をこのような比率で構成することにより、これらのインク組成物を用いて記録された画像の粒状感を低下させることができる。さらに上記の着色剤比率とし、かつ着色剤の濃度を上述した範囲に入るインク組成物にすることにより、濃マゼンタインク組成物と淡マゼンタインク組成物との間に良好なカラーバランスを実現でき、しかもインクジェットノズルが目詰まりすることを防止できる。
本発明のインクセットのマゼンタインク組成物においては、耐オゾン性に優れることから、上述のとおり式(1)の染料の少なくとも一種を着色剤として用いることが特に好ましいが、式(1)の染料と併せてさらに下記式(3):
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を所望により着色剤として用いることができる。
上記式(3)中:Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。B1およびB2は、各々−CR1=、−CR2=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CR1=または−CR2=を表す。R5,R6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表わす。各基は更に置換基を有していてもよい。G、R1、R2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルおよびアリールチオ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。各基は更に置換されていてもよい。また、R1とR5、あるいはR5とR6が結合して5〜6員環を形成してもよい。
さらに上記式(3)で表される化合物は、以下の式(3a)で表される化合物であることが好ましい。
上記式(3a)中:Z1は、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。Z2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。R1、R2、R5、R6は、上記式(4)の場合と同義である。R3、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基またはスルファモイル基を表す。Qは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。上記Z1、Z2、R1〜R6、Qの各基は、更に置換基を有していてもよい。
以下に上記式(3)で表される化合物についてさらに詳細に説明する。
上記式(3)において、 Aは5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。 前記5員複素環のヘテロ原子の例には、N、O、およびSを挙げることができる。好しくは含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。Aの好ましい複素環の例には、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。各複素環基は更に置換基を有していてもよい。なかでも、下記一般式(a)から(f)で表されるピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましい。
上記式(3)において、 Aは5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。 前記5員複素環のヘテロ原子の例には、N、O、およびSを挙げることができる。好しくは含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。Aの好ましい複素環の例には、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。各複素環基は更に置換基を有していてもよい。なかでも、下記一般式(a)から(f)で表されるピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましい。
上記一般式(a)〜(f)のR7〜R20は、後に説明する置換基G、R1、R2と同じ置換基を表す。上記一般式(a)〜(f)のうち、好ましいのは一般式(a)、(b)で表されるピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましいのは一般式(a)で表されるピラゾール環である。
B1およびB2は、各々−CR1=、−CR2=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CR1=または−CR2=を表すが、各々−CR1=、−CR2=を表すものがより好ましい。
R5、R6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。 R5、R6で表される好ましい置換基は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルキルおよびアリールスルホニル基を挙げることができる。 さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、アシル基、アルキルまたはアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。各基は更に置換基を有していてもよい。 ただし、R5、R6が同時に水素原子であることはない。
B1およびB2は、各々−CR1=、−CR2=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子,他方が−CR1=または−CR2=を表すが、各々−CR1=、−CR2=を表すものがより好ましい。
R5、R6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。 R5、R6で表される好ましい置換基は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルキルおよびアリールスルホニル基を挙げることができる。 さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、アシル基、アルキルまたはアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。各基は更に置換基を有していてもよい。 ただし、R5、R6が同時に水素原子であることはない。
さらに、G、R1、R2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルおよびアリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
Gで表される好ましい置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキル基、またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールチオ基、およびヘテロ環チオ基が挙げられ、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換されたアミノ基、またはアシルアミノ基であり、なかでも水素原子、アリールアミノ基、アミド基が最も好ましい。各基は更に置換基を有していてもよい。
R1、R2で表される好ましい置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基およびシアノ基を挙げることができる。各基は更に置換基を有していてもよい。R1とR5あるいはR5とR6が結合して5〜6員環を形成してもよい。A、R1、R2、R5、R6、Gで表される各置換基が更に置換基を有する場合の置換基としては、上記G,R1,R2で挙げた置換基を挙げることができる。
上記式(3)で表されるアゾ染料が水溶性染料である場合には、A、R1、R2、R5、R6、G上のいずれかの位置に置換基としてイオン性親水性基をさらに有することが好ましい。置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、および4級アンモニウム基等が含まれる。該イオン性親水性基としては、カルボキシル基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。カルボキシル基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよび有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウム、テトラメチルグアニジウムイオン)が含まれる。
本発明において、上記式(3)で表されるアゾ染料のうち、特に好ましいものは、上記式(3a)で表されるものである。式(3a)中、Z1はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。Z1はσp値が0.30〜1.0の電子吸引性基であるのが好ましい。好ましい具体的な置換基については後述する電子吸引性置換基を挙げることができるが、なかでも、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜12のカルバモイル基及び炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
式(3a)中のR1、R2,R5,R6は、上記式(3)の場合と同義である。R3、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。なかでも、水素原子、アリール基、複素環基、アシル基、アルキル及びアリールスルホニル基が好ましく、水素原子、アリール基、複素環基が特に好ましい。Z2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。
式(3a)中、Qは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。なかでも、Qは5〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましい。この5〜8員環は置換されていてもよいし、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。そのなかでも、特にアリール基、複素環基が好ましい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子および炭素原子が挙げられる。5〜8員環の具体例としては、例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環およびチアン環等が挙げられる。
式(3a)で説明した上記の各基は更に置換基を有していてもよい。これらの各基が更に置換基を有する場合、その置換基としては、式(3)で説明した置換基、G、R1、R2で例示した基やイオン性親水性基が挙げられる。
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えアシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル)を挙げることができる。
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル、ペンタクロロフェニル)、および複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル)を挙げることができる。σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、上記に加え、ハロゲン原子などが挙げられる。
前記式(3)で表されるアゾ染料として特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の通りである。
(イ)R5およびR6は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基であり、さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基であり、最も好ましくは水素原子、アリール基、複素環基である。ただし、R5およびR6が共に水素原子であることは無い。
(ロ)Gは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基であり、さらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基であり、最も好ましくは水素原子、アミノ基、アミド基である。
(ハ)Aは、好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、さらに好ましくはピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましくはピラゾール環である。
(ニ)B1およびB2は、それぞれ−CR1=、−CR2=であり、そしてこれらR1、R2は、各々好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アルキル基である。
(イ)R5およびR6は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基であり、さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基であり、最も好ましくは水素原子、アリール基、複素環基である。ただし、R5およびR6が共に水素原子であることは無い。
(ロ)Gは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基であり、さらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基であり、最も好ましくは水素原子、アミノ基、アミド基である。
(ハ)Aは、好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、さらに好ましくはピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましくはピラゾール環である。
(ニ)B1およびB2は、それぞれ−CR1=、−CR2=であり、そしてこれらR1、R2は、各々好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アルキル基である。
尚、式(3)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
前記式(3)で表される化合物は、どのような方法で製造されてもよいが、例えば、以下のような方法で製造することができる。
(a)下記一般式(3b)で表される化合物と、ジアゾ化剤とを反応させてジアゾニウム塩を形成する。
(b)上記工程(a)で形成されたジアゾニウム塩を下記式(3c)で表されるカップリング剤と反応させて、上記式(3)で表される化合物を形成する。
(c)塩基の存在下で、上記工程(b)で形成された化合物をアルキル化剤、アリール化剤又はヘテリル化剤と反応させてアルキル基等の置換基を導入した上記式(3)で表される化合物を形成する。
(a)下記一般式(3b)で表される化合物と、ジアゾ化剤とを反応させてジアゾニウム塩を形成する。
(b)上記工程(a)で形成されたジアゾニウム塩を下記式(3c)で表されるカップリング剤と反応させて、上記式(3)で表される化合物を形成する。
(c)塩基の存在下で、上記工程(b)で形成された化合物をアルキル化剤、アリール化剤又はヘテリル化剤と反応させてアルキル基等の置換基を導入した上記式(3)で表される化合物を形成する。
(式(3b)及び(3c)中、A、G、B1、B2、R5、R6は上記式(3)の場合と同義である。)
さらに、上記式(3)の化合物において水溶性基を導入する場合、求電子反応を用いる。求電子反応としてはスルホン化、マンニッヒ反応、フリーデルクラフツ反応があり、中でもスルホン化が好ましい。
さらに、上記式(3)の化合物において水溶性基を導入する場合、求電子反応を用いる。求電子反応としてはスルホン化、マンニッヒ反応、フリーデルクラフツ反応があり、中でもスルホン化が好ましい。
以下に本発明において好ましく用いることのできる式(3)で表される化合物の具体例を示す。
マゼンタインク組成物、濃マゼンタインク組成物、又は淡マゼンタインク組成物中における上記式(3)で表される化合物及びその塩(これらをあわせて式(3)の染料とも記す)からなる群から選ばれる着色剤の含有量は、式(3)における各置換基の種類、溶媒成分の種類等により決められるが、そのインク組成物中に含まれる式(3)の染料を含め、そのインク組成物中に含まれる全着色剤の合計量が、そのインク組成物の総重量に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%の範囲であることがさらに好ましい。インク組成物中の着色剤の量を0.1重量%以上とすることで、記録媒体上での発色性又は画像濃度を確保でき、10重量%以下とすることで、インク組成物の粘度調整が容易となり吐出信頼性や耐目詰まり性等の特性が容易に確保できる。
そのほか、本発明の効果を損なわない範囲で前記式(3)の染料とその他のマゼンタ系染料を併用することができるが、併用されるマゼンタ系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドレッド35,42,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,151,154,158,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,336,337,361,396,397、C.I.アシッドバイオレット5,34,43,47,48,90,103,126、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48等を例示できるほか、以下の式(10)で表される化合物が例示できる。
で表される化合物である。
次に本発明のインクセットを構成するイエローインク組成物に用いられる着色剤について説明する。本発明のインクセットのイエローインク組成物に用いられる着色剤は特定構造の着色剤に限定されるものではないが、他の色のインク組成物の耐オゾン性とイエローインク組成物の耐オゾン性との間の差が小さいことが好ましい。本発明のインクセットに含まれるイエローインク組成物に用いられる着色剤は、前記式(4)で表される化合物(以下、式(4)の染料とも記す)及び前記式(5)で表される化合物(以下式(5)の染料とも記す)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが特に好ましい。イエローインク組成物の着色剤として式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることにより、他の色のインク組成物以上の耐オゾン性を有するイエローインク組成物を得ることができる。また、式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる少なくとも一種の染料とC.I.ダイレクトイエロー58とを併用することにより、オゾンによりある程度画像が劣化した後においても、画像中におけるグレー色やその他の2次・3次色が黄色味を帯びる現象を抑制でき、それによりインクセット全体の耐オゾン性を良好なものにすることができる。さらにまた、本発明においては、イエローインク組成物の色調などを調整するために耐オゾン性を大きく損ねない範囲で、式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる少なくとも一種の染料、又は式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる少なくとも一種の染料並びにC.I.ダイレクトイエロー58に、さらにその他のイエロー系染料を併用することもできる。
この併用されるその他のイエロー系染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明においてイエローインク組成物中に含まれる着色剤の濃度は、着色剤として用いられる化合物(染料)のカラーバリューにしたがって適宜決定することができるが、上記式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる少なくとも一種をイエローインク組成物中に含める場合、一般的には、前記式(4)及び式(5)の染料からなる群から選ばれた着色剤の合計量が、イエローインク組成物中に、イエローインク組成物の総重量に対して1.0〜6.0重量%含有されることが好ましい。イエローインク組成物中に含まれる前記着色剤の合計量の濃度を1.0重量%以上にすることによって良好な発色性を得ることができ、また前記着色剤の合計量の濃度を6.0重量%以下にすることによって、インクジェット記録方法に用いるためのインク組成物として必要とされるノズルからの吐出性等の特性を良好なものにし、インクノズルの目詰まりを防止することができる。
上述のようにイエローインク組成物の着色剤として上記式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる少なくとも一種とともにC.I.ダイレクトイエロー58を用いる場合、イエローインク組成物中における式(4)の染料及び式(5)の染料からなる群から選ばれる染料の合計濃度(重量%)とC.I.ダイレクトイエロー58の濃度(重量%)との比が、4:1〜10:1であることが好ましい。上記式(4)の染料及び式(5)の染料は耐オゾン性に非常に優れるため、従来用いていたような耐オゾン性に劣る他色のカラーインクと組み合わせたインクセットにおいては、オゾン曝露試験を行った後において、各色の退色程度の違いにより画像のカラーバランスが崩れて画質の劣化が認められやすくなるという現象が起こる場合があった。これに対し、本発明のシアンインク及びマゼンタインク、さらに所望によりブラックインクと組み合わせたインクセットにすることにより、各色の耐オゾン性を飛躍的に向上できることから、オゾン曝露試験後においても画像のカラーバランスが崩れることなく、長期的に画像の良好な画質を維持することができるようになる。さらにイエローインクにおいて、上述した範囲で上記式(4)の染料及び式(5)の染料とC.I.ダイレクトイエロー58を併用することにより、さらに好ましいカラーバランスに調節することが可能になり、いっそう長期にわたって印刷物の画質を良好に保つことができる。
次に本発明のインクセットを構成するブラックインク組成物に用いる着色剤について説明する。本発明のインクセットは所望によりブラックインク組成物を含んで構成することができる。本発明のインクセットにブラックインク組成物を含めることにより、良好なコントラストを有する画像を記録媒体上に形成することができる。
本発明のインクセットに含められるブラックインク組成物は、上述したとおり下記式(6):
で表される化合物及びその塩(以下、あわせて式(6)の染料とも記す)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記式(6)中、R1は置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を表す。さらに式(6)中、R2は置換基を有するフェニレン基又は置換基を有するナフチレン基を表す。さらに式(6)中、R3は少なくとも1つの二重結合及び置換基を有する5〜7員環の複素環基を表す。さらにR1〜R3における前記置換基は独立して、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、NO2、NH2、C1〜4のアルキル基、置換されたアルキル基、C1〜4のアルコキシ基、置換されたアルコキシ基、アミノ基、置換されたアミノ基、及び置換されたフェニル基からなる群から選ばれる基を表す。
さらに上記の置換されたアルキル基は、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、及びNH2基からなる群から選ばれた1種以上の基で置換されたC1〜4のアルキル基から選ばれることが好ましい。また、上記の置換されたアルコキシ基は、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、及びNH2基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基で置換されたC1〜4のアルコキシ基から選ばれることが好ましい。また、上記の置換されたアミノ基は、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、及びNH2基からなる群から選ばれた1種以上の基で置換されたC1〜4のアルキル基を1つ又は2つ有するアミノ基からなる群から選ばれることが好ましい。また、上記の置換基されたフェニル基は、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、NH2、C1〜4のアルキル基、及び置換されたC1〜4のアルキル基からなる群から選ばれる置換基を1つ又は2つ有するフェニル基からなる群から選ばれることが好ましい。
さらに本発明に用いる上記式(6)で表される化合物としては、以下の式(7):
(式(7)中、R1〜R9は独立して、H、OH、SO3H、PO3H2、CO2H、NO2、及びNH2からなる群から選ばれる基を表す。)
で表される化合物であることが特に好ましい。
で表される化合物であることが特に好ましい。
さらに本発明のブラックインク組成物に用いる化合物(6)としては、以下の式(11)〜式(17)で表される化合物が特に好ましい。
本発明のブラックインク組成物に用いる上記式(6)で表される化合物は、好ましい方法を用いて適宜合成することができるが、例えば各化合物において3つのアゾ基によって結合されている4つの対応する各構造を有するビルディングブロックをアゾカップリングによって結合することによって合成することができる。すなわち、例えば式(6)で表されるジヒドロキシナフタレン骨格部分をQで表すと、式(6)の化合物は、R3−N=N−R2−N=N−Q−N=N−R1で表すことができる。この化合物を合成する一つの具体的な方法を模式的に示すと、まずR1−NH2をジアゾ化して得られたジアゾニウム塩をQHと反応させてR1−N=N−QHとする。次にCH3CON−R2−NH2をジアゾ化して得られる化合物とR1−N=N−QHをカップリングさせてR1−N=N−Q−N=N−R2NCOCH3を合成する。この化合物のアセチル基を除去してアミノ基としてからジアゾ化し、続いてR3HとカップリングさせてR1−N=N−Q−N=N−R2−N=N−R3が合成できる。
さらに合成の具体例として前記式(11)で表される化合物の合成例を以下に説明する。
5−アセチルアミノ−2−アミノベンゼンスルホン酸(23.0g、0.10モル)を、濃硝酸(30ml)を含む水(300ml)に添加した。亜硝酸ナトリウム(6.9g)を0〜5℃の温度で10分かけて加えた。60分後、過剰の亜硝酸を分解し、得られたジアゾニウム塩溶液を、5〜10℃、pH8〜9を維持しながらゆっくりと、水(500g)に溶解しておいた1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸(32.0g、0.10モル)の溶液に添加した。この反応が定量的に進行したことは、HPLCにより確認できた。これによってカップリング生成物を含む溶液(染料ベースという)が得られた。
5−アセチルアミノ−2−アミノベンゼンスルホン酸(23.0g、0.10モル)を、濃硝酸(30ml)を含む水(300ml)に添加した。亜硝酸ナトリウム(6.9g)を0〜5℃の温度で10分かけて加えた。60分後、過剰の亜硝酸を分解し、得られたジアゾニウム塩溶液を、5〜10℃、pH8〜9を維持しながらゆっくりと、水(500g)に溶解しておいた1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸(32.0g、0.10モル)の溶液に添加した。この反応が定量的に進行したことは、HPLCにより確認できた。これによってカップリング生成物を含む溶液(染料ベースという)が得られた。
次に5−ニトロ−2−アミノベンゼンスルホン酸(43.6g、0.20モル)を、濃塩酸(60g)を含む水(500g)に添加した。亜硝酸ナトリウム(13.8g)を0〜5℃の温度で15分かけて加えた。60分後、得られたジアゾニウム塩溶液を、5〜10℃、pH6〜7を維持しながら120分かけて、あらかじめテトラヒドロフラン(1000g)を添加しておいた上記染料ベースに添加した。5時間後、生成した沈殿物を集め、乾燥器で乾燥させると、暗赤色の固形物が得られた(55.3g)。この暗赤色の固形物を水(1000ml)に溶解させて、80℃まで加熱した。水酸化ナトリウム(10g)を加え、さらに8時間温度を80℃に保った。8時間後、濃塩酸を用いてpH7〜8に調節し、溶液を放冷して室温にまで下げた。この溶液をVisking(商標)チュービングを用いて透析(50μScm-1未満)してから、フィルタを用いて濾過し、乾燥器で乾燥させると47.2gの黒色固形物が得られた。
上記で得られた黒色固形物をpH7〜9で水に再溶解させたが、pHの調整には水酸化リチウムを用いた。次いで亜硝酸ナトリウム(8.3g)を加え、10分間攪拌した。それから、この染料/亜硝酸塩の溶液を、濃塩酸(30g)を含む氷水(100ml)中に移した。放置すると温度は15〜25℃に上昇したが、そのまま3時間おいた。得られたジアゾジウム塩溶液を、15〜20℃、pH6〜7を維持しながら120分かけて、1−(4−スルホフェニル)−3−カルボキシ−5−ピラゾロン(17.9g、0.06モル)の溶液に加えた。このpHは水酸化リチウムを添加することによって維持した。次いでこの溶液をVisking(商標)チュービングを用いて透析(50μScm-1未満)し、さらにフィルタを用いて濾過し、乾燥器で乾燥させると60.0gの前記式(11)で表される化合物が黒色固形物として得られた。
式(6)で表される化合物の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び有機アンモニウム塩、並びにこれらの各種金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる2種以上を含む複合塩からなる群から選ばれる少なくとも一種が例示できる。上記アルカリ金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、及びこれらの2種以上の金属を含む塩をあげることができる。本発明においてブラックインク組成物に用いる式(6)で表される化合物の塩としては、リチウム塩及びナトリウム塩が特に好ましい。
本発明におけるブラックインク組成物は、着色剤として上記式(6)で表される化合物及びその塩(式(6)の染料)の少なくとも一種を含む。
本発明のブラックインク組成物は、上記式(6)の染料から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつその着色剤の合計量がブラックインク組成物の総重量に対して0.5〜12重量%含まれることが好ましく、1.0〜9.0重量%含まれることがさらに好ましい。ブラックインク組成物中に含まれる式(6)の染料の合計量が0.5重量%以上の場合、そのインク組成物を用いて記録媒体に画像等を記録したときに、充分良好な発色や高い画像濃度を得ることができる。また、ブラックインク組成物中に含まれる式(6)の染料の合計量を12重量%以下にすることにより、そのインク組成物の粘度を好ましい値に調節することができ、またインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出量を安定化することができ、さらにインクジェットヘッドの目詰まりを防止することができる。
以上本発明の各インク組成物に用いる着色剤及びそのインク組成物中における着色剤の含有量について説明したが、以下、各インク組成物に含まれる他の成分について説明する。
本発明における各インク組成物は、上述した着色剤(染料)を適当な溶媒に溶解して得ることができる。上記各インク組成物において着色剤を溶解するための溶媒としては、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液を主溶媒として用いることが好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を用いることができる。また、長期保存の観点から、紫外線照射や過酸化水素添加などの各種化学滅菌処理を施した水を用いることが好ましい。本発明のインクセットを構成する各インク組成物における水の含有量は、インク組成物の40〜90重量%であることが好ましく、50〜80重量%であることがさらに好ましい。
本発明における各インク組成物は、上述のとおり、溶媒として水とともに水溶性有機溶剤を用いることができる。この水溶性有機溶剤としては、染料を溶解する能力を有するものが好ましく、かつ蒸気圧が純水よりも小さいものが好ましい。
本発明において用いる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アセトニルアセトン等のケトン類、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール等が好ましいが、これらに限定されるものではない。水とともに水溶性有機溶剤をインク組成物の溶媒として用いることによって、インクヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させること、及び他の特性をほとんど変化させずにインク組成物の粘度を下げる等の調節を容易に行うことができる。
本発明において用いる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アセトニルアセトン等のケトン類、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール等が好ましいが、これらに限定されるものではない。水とともに水溶性有機溶剤をインク組成物の溶媒として用いることによって、インクヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させること、及び他の特性をほとんど変化させずにインク組成物の粘度を下げる等の調節を容易に行うことができる。
また、糖類から選ばれる少なくとも一種の保湿剤を、本発明の各インク組成物に含有させることができる。インク組成物に保湿剤を含有させることにより、インクジェット記録方法にインク組成物を用いた場合、インクからの水分の蒸発を抑制してインクを保湿することができる。本発明に用いる糖類としては、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等が好ましい。なお、上述した水溶性有機溶剤も保湿剤として働く場合がある。
上記水溶性有機溶剤及び/又は保湿剤は合計で、インク組成物中に5〜50重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%含有させることができる。これらの含有量を5重量%以上にすることによって良好なインクの保湿性が得られ、かつ50重量%以下にすることによって、インク組成物の粘度をインクジェット記録方法に用いるための好ましい粘度に調整することができる。
次に、本発明のインクセットにおいて、シアン及び/又はマゼンタインク組成物中に、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物又はその塩から選ばれる少なくとも一種を含有させることが好ましい。2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を添加することによって、シアンインク組成物のブロンズ現象の発生を防止することができ、またマゼンタインク組成物の耐湿性を向上させることができる。上記ブロンズ現象とは、一般に、シアン系染料を含有したインク組成物を用いてインクジェット専用記録媒体(特に光沢系記録媒体)等にベタ印刷などの高Duty印刷を行った部分に赤浮きがみられる現象として知られている。ブロンズ現象が発生した場合、画像全体のカラーバランスが不均一になり画質が低下するため、良好な画像が得られなくなる。
本発明で用いられる上記の2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物のうち、特に好ましいものとしては、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物のアルカリ金属塩があげられる。さらに前記アルカリ金属塩の中でも特にリチウム塩を用いることが好ましい。リチウム塩を用いた場合、上記ブロンズ現象の発生を防止できるだけでなく、インクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなるという効果が得られる。
上記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物又はその塩としては、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、3−メトキシ−2−ナフトエ酸、3−エトキシ−2−ナフトエ酸、3−プロポキシ−2−ナフトエ酸、6−メトキシ−2−ナフトエ酸、6−エトキシ−2−ナフトエ酸、及び6−プロポキシ−2−ナフトエ酸等、並びにそれらの塩、特にリチウム塩を例示できる。特に好ましいものは、2−ナフトエ酸及びそのリチウム塩である。
2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物の塩をインク組成物中に添加する場合、塩の形態でインク中に添加する方法、又は相当する2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びそれと塩を形成しうる塩基とを別々にインク組成物中に添加する方法のいずれの方法を用いることもできる。さらに本発明においては2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができ、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物とその塩の両者を併用することもできる。
本発明のシアンインク組成物及び/又はマゼンタインク組成物に上記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群(以下、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等という)から選ばれる少なくとも一種を添加する場合、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等がこれらのインク組成物中に合計量で0.1〜10重量%含まれることが好ましく、0.5〜5重量%含まれることがさらに好ましい。インク組成物中に含まれる2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の量は、それ自身の種類、インク組成物中に含まれる染料の種類、インク組成物に用いられる溶媒の種類等によって、適宜好ましい量を定めることができる。
2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等をシアンインク組成物中に添加する場合、インク組成物中に含まれるシアン染料の量(重量%)と2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の量(重量%)の比が1:0.1〜1:10であることが好ましく、1:0.3〜1:6であることがさらに好ましい。シアンインク組成物中のシアン染料の含有量を1とした場合、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族カルボン酸等の含有量を0.1よりも多くすることで、ブロンズ現象の発生を低減することができ、さらに2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の含有量を10よりも少なくすることで、インクジェットノズルの目詰まりを防止することができる。
一方、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等をマゼンタインク組成物に添加する場合は、インク組成物中に含まれるマゼンタ染料の量(重量%)と2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の量(重量%)の比が1:0.5〜1:10であることが好ましく、1:1〜1:6であることがさらに好ましい。マゼンタインク組成物中のマゼンタ染料の含有量を1とした場合、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の含有量を0.5よりも多くすることで、高湿度環境下における画像の滲みによる画質の劣化を低減することができ、さらに2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等の含有量を10よりも少なくすることで、インクジェットノズルの目詰まりを防止することができる。
本発明のインクセットを構成するインク組成物に添加するその他の好ましい添加剤についてさらに以下に説明する。
本発明のインクセットを構成するインク組成物には、ノニオン系界面活性剤を含有させることが好ましい。ノニオン系界面活性剤を添加することによって、インク組成物の記録媒体への浸透性が優れたものになり、印刷時にインク組成物が記録媒体上に速やかに定着されうる。さらに記録媒体上にインク組成物によって記録された1つのドットができるだけ真円に近いことが好ましいが、ノニオン系界面活性剤をインク組成物中に含有させることにより、1ドットによって形成される像の真円度を高めることができ、得られる画像の画質を向上できるという効果が得られる。
本発明のインクセットを構成するインク組成物には、ノニオン系界面活性剤を含有させることが好ましい。ノニオン系界面活性剤を添加することによって、インク組成物の記録媒体への浸透性が優れたものになり、印刷時にインク組成物が記録媒体上に速やかに定着されうる。さらに記録媒体上にインク組成物によって記録された1つのドットができるだけ真円に近いことが好ましいが、ノニオン系界面活性剤をインク組成物中に含有させることにより、1ドットによって形成される像の真円度を高めることができ、得られる画像の画質を向上できるという効果が得られる。
本発明に用いるノニオン界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤が好ましいが、これに限定されるものではない。本発明のインク組成物に用いるアセチレングリコール系界面活性剤としては、特に以下の式(18):
(式(18)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、C1〜C6の直鎖、環式又は分枝アルキル鎖を表し、さらにA1O及びA2Oはそれぞれ独立してC2〜C3のオキシアルキレン鎖、例えばオキシエチレン若しくはオキシプロピレン、又はC2〜C3のアルキレンオキサイドが重合又は共重合して得られるポリオキシアルキレン鎖、例えばポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、若しくはポリオキシエチレンプロピレン鎖を表す。また式中、n及びmはA1O又はA2O単位、すなわちオキシアルキレンの繰り返し数を表し、0≦n<30、0≦m<30、及び0≦n+m<50を満たす数である。)
で表される化合物を用いることが好ましい。このアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール465(商標)、サーフィノール104(商標)(以上商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)、オルフィンPD001(商標)、オルフィンE1010(商標)(以上商品名、日信化学工業株式会社製)を例示することができ、これらから選ばれる少なくとも一種を本発明のインクセットを構成するインク組成物に添加することが好ましい。
で表される化合物を用いることが好ましい。このアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール465(商標)、サーフィノール104(商標)(以上商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)、オルフィンPD001(商標)、オルフィンE1010(商標)(以上商品名、日信化学工業株式会社製)を例示することができ、これらから選ばれる少なくとも一種を本発明のインクセットを構成するインク組成物に添加することが好ましい。
本発明においては、インク組成物中にノニオン系界面活性剤が、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜2重量%含まれるように、インク組成物にノニオン系界面活性剤を添加するのがよい。インク組成物中にノニオン系界面活性剤を0.1重量%以上含有させることによって、記録媒体に対する各インク組成物の浸透性を高くすることができる。またインク組成物中のノニオン系界面活性剤の含有量を5重量%以下にすることにより、記録媒体上にインク組成物によって形成された画像がにじみにくいという効果が得られる。
さらに、ノニオン系界面活性剤に加えて、浸透促進剤として、グリコールエーテル類をインク組成物に添加することにより、記録媒体に対するインク組成物の浸透性が向上するとともに、カラー印刷を行った場合に隣り合うカラーインクどうしの境界において、インクのブリード(ブリーディング)が減少し、非常に鮮明な画像を得ることができる。したがって、本発明のインクセットを構成するインク組成物には浸透促進剤を添加することが好ましい。
浸透促進剤として本発明に用いる上記グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が好ましいが、これらに限定されるものではない。これらのグリコールエーテル類は、インク組成物中に3〜30重量%、さらに好ましくは5〜15重量%含まれることが好ましい。グリコールエーテル類の添加量を3重量%以上にすることにより、カラー印刷時の隣り合うインク間のブリード(ブリーディング)を有効に防止でき、さらにこの添加量を30重量%以下にすることにより、画像のにじみが発生することを防止しやすくなり、かつインクの保存安定性を高めることができる。
さらに、本発明におけるインク組成物には、トリエタノールアミンやアルカリ金属水酸化物等のpH調整剤、アルギン酸ナトリウム等の水溶性ポリマー、水溶性樹脂、フッ素系界面活性剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤、溶解助剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤等から選ばれる材料を所望により添加することができる。これらの成分は、各種別に一種又は二種以上を混合して用いることができる。また、添加する必要がなければ添加しなくてもよい。当業者は本発明の効果を損なわない範囲で、選択された好ましい添加剤を好ましい量で用いることができる。なお、上記溶解助剤とは、インク組成物から不溶物が析出する場合に、その不溶物を溶解し、インク組成物を均一な溶液に保つための添加剤である。
上記溶解助剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどのピロリドン類、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、上記酸化防止剤の例としては、L−アスコルビン酸及びその塩類等が例示できるが、これらに限定されない。
上記防腐剤又は防カビ剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及び1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、及びプロキセルTN(以上商品名)等を例示できるが、これらに限定されない。
上記pH調整剤しては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類及びそれらの変性物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの金属水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム等)等のアンモニウム塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩類などが例示できるがこれらに限定されない。
本発明のインクセットを構成するインク組成物は、上述した成分から適宜選ばれた成分を含んで調製されるが、得られるインク組成物の粘度が20℃において10mPa・s未満であることが好ましい。さらに、本発明においてはインク組成物の表面張力を20℃において45mN/m以下にすることが好ましく、25〜45mN/mの範囲にすることが特に好ましい。粘度及び表面張力をこのように調整することによって、インクジェット記録方法に用いるために好ましい特性を有するインク組成物を得ることができる。この粘度及び表面張力の調整は、インク組成物に含有させる溶剤及び各種添加剤の添加量、並びにそれらの種類等を適宜調節及び選択することによって行うことができる。
なお、本発明のインクセットを構成するインク組成物は、そのpHが20℃において7.0〜10.5であることが好ましく、7.5〜10.0であることがさらに好ましい。20℃におけるインク組成物のpHを7.0以上にすることによってインクジェットヘッドの共析メッキが剥離することを防止することができ、かつインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出特性を安定化することができる。また、インク組成物のpHを20℃において10.5以下にすることによって、インク組成物が接触する各種の部材、例えばインクカートリッジやインクジェットヘッドを構成する部材が劣化されることを防ぐことができる。
さらにマゼンタ及び/又はシアンインク組成物中に、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物等を安定して溶解させるためには、20℃におけるインク組成物のpHを8.0以上にすることが好ましい。なお、本発明におけるインク組成物のpH値は、市販のpHメーターを用い、インク組成物にpH電極を直接挿入することによって測定された値である。
本発明におけるインク組成物の調製方法としては、例えば、インク組成物に含有される各種成分を充分に混合してできるだけ均一に溶解した後、孔径1.0μm のメンブランフィルターで加圧濾過し、さらに得られた溶液を、真空ポンプを用いて脱気処理して調製する方法が例示できるが、これに限定されない。
次に、上述したインク組成物を用いた本発明のインクセットは、これらを一体的に若しくは独立に収容したインクカートリッジとして用いることができ、取り扱いが便利である点等からも好ましい。インクセットを含んで構成されるインクカートリッジは当技術分野において公知であり、公知の方法を適宜用いてインクカートリッジにすることができる。
本発明のインクセット又はインクカートリッジは一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することができるが、インクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。本発明のインクセット又はインクカートリッジを用いることができるインクジェット記録方法は、インク組成物を細いノズルから液滴として吐出させ、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる記録方法も含む。本発明のインク組成物を用いることができるインクジェット記録方法の具体例を以下に説明する。
第一の方法は静電吸引方式とよばれる方法である。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又は、インク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの静電吸引方式による記録方法に用いることが好ましい。
第二の方法は、小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法である。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
第三の方法は、インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
第四の方法は、印刷信号情報に従って微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射させて記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
本発明のインクセット又はインクカートリッジは、上述した4つの方法を含むインクジェット記録方式による画像記録方法を用いて記録媒体上に画像を記録する場合に用いるインク組成物として特に好ましい。本発明のインクセットを用いて記録された記録物は優れた画質を有し、さらに耐オゾン性に優れている。
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔各インク組成物の調製〕
以下の表1及び表2に示した組成に基づき、各成分を常温において30分間攪拌した後、得られた溶液を目開き1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより各インク組成物を得た。なお表1中において、各成分の数値はインク組成物の質量を100%とした場合の各成分の重量%を示し、さらに水の量を示す「残り」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
以下の表1及び表2に示した組成に基づき、各成分を常温において30分間攪拌した後、得られた溶液を目開き1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過することにより各インク組成物を得た。なお表1中において、各成分の数値はインク組成物の質量を100%とした場合の各成分の重量%を示し、さらに水の量を示す「残り」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
また、表1及び表2中、Cはシアンインク組成物、Mはマゼンタインク組成物、Yはイエローインク組成物、Kはブラックインク組成物、LCはライトシアンインク組成物(淡シアンインク組成物)、LMはライトマゼンタインク組成物(淡マゼンタインク組成物)を表す。
表1及び表2中、シアン(Cyan)染料に該当する化合物Aとしては、特開2002−105349号公報記載の実施例5に従って合成した金属フタロシアニン系染料を用い、また化合物Bとしては同公報記載の実施例1に従って合成した金属フタロシアニン系染料を用いた。なお、化合物Aの光吸収スペクトルを図1に示した。化合物Aの可視光域(400〜800nm)における最大吸収波長は601nmである。また、化合物Bの光吸収スペクトルは図示しないが、可視光域における最大吸収波長は、606nmである。化合物A及びBの光吸収スペクトルは、各化合物を質量で1/50000に水で希釈して得た溶液について測定を行った。
Cyan染料の比較例としてはC.I.ダイレクトブルー199(C.I.Direct Blue199)を用いた。参考のため、C.I.ダイレクトブルー199の可視光域の光吸収スペクトルを図2に示した。C.I.ダイレクトブルー199の可視光域における最大吸収波長は、618nmである。
表1及び表2中、Magenta(マゼンタ)染料1は上記式(1)で表される化合物の例であって、下記式(C):
で表される化合物である。なお、式(C)中、MはNH4又はNaを表し、NH4:Na=1:1(モル比)である。またMagenta染料2〜3は上記式(3)で表される化合物の例であって、下記式(D):
で表される化合物であり、かつMagenta染料2又は3におけるR1〜R4は、それぞれ以下に示す基である。
さらに、Magenta染料4としては、上記一般式(10)で表される化合物の例として下記式(E):
で表される化合物を用いた。その他、Magenta染料として一般的なC.I.ダイレクトレッド227(C.I.Direct Red 227)を用いた。
表1及び表2中、イエロー(Yellow)染料としては、上記式(4)で表される化合物の例としてC.I.ダイレクトイエロー132を用い、さらに上記式(5)で表される化合物の例としてC.I.ダイレクトイエロー86を用いた。
表2中、ブラック(Black)染料1としては、上記式(6)で表される化合物の例として上記式(11)で表される化合物を用いた。また、一般的なBlack染料として、下記式(F):
で表される化合物をBlack染料2として用いた。
次に調製した各インク組成物を用いて表3に示す組み合わせで、実施例1〜5、及び比較例1〜5の各インクセットを作成した。なお、表3に示した組み合わせのインクセットはライトインク組成物、すなわち淡マゼンタ(Light Magenta)インク組成物及び淡シアン(Light Cyan)インク組成物を含まない。
インクジェットプリンタ Stylus Color 880(商標)(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を使用し、さらに表3に示したインクセットを用いて、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製))にイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック(ただし、インクセットがブラックインク組成物を含む場合のみブラックを含む。)からなり、それぞれの色のOD値が0.9〜1.1になるように調整されたベタ画像、並びにイエロー、マゼンタ、およびシアンを用いて、OD値が0.9〜1.1になるように調整されたグレー色のベタ画像を印刷することによって記録物を作成した。得られた記録物について、以下の耐オゾン性試験を行った。
〔耐オゾン性試験方法〕
オゾンウェザーメーターOMS−H型(商品名、(株)スガ試験機製)を使用し、24℃、60%RHの条件下、10ppm濃度のオゾンに記録物を曝露した。曝露開始から一定時間経過ごとに、濃度計(Spectrolino(商標))(Gretag社製)を使用して各印刷物に記録されている各色のOD値を測定した。測定条件は、光源をD50とし、さらに視野角を2度とした。さらに測定は、色毎に、シアンにはRed、マゼンタにはGreen、イエローにはBlueの各フィルターを用い,ブラック及びグレーについてはフィルターなし、で行った。得られた結果から次式:
ROD(%)=(D/D0)×100
(式中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。)
を用いて光学濃度残存率(ROD)を求めた。
オゾンウェザーメーターOMS−H型(商品名、(株)スガ試験機製)を使用し、24℃、60%RHの条件下、10ppm濃度のオゾンに記録物を曝露した。曝露開始から一定時間経過ごとに、濃度計(Spectrolino(商標))(Gretag社製)を使用して各印刷物に記録されている各色のOD値を測定した。測定条件は、光源をD50とし、さらに視野角を2度とした。さらに測定は、色毎に、シアンにはRed、マゼンタにはGreen、イエローにはBlueの各フィルターを用い,ブラック及びグレーについてはフィルターなし、で行った。得られた結果から次式:
ROD(%)=(D/D0)×100
(式中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。)
を用いて光学濃度残存率(ROD)を求めた。
さらに、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された各色の耐オゾン性をA〜Dにランク付けた。
[判定基準]
評価A:試験開始から24時間後のRODが70%以上である。
評価B:試験開始から12〜24時間経過後にRODが70%になる。
評価C:試験開始から6〜12時間経過後にRODが70%になる。
評価D:試験開始から6時間以内にRODが70%になる。
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を表4に示した。
[判定基準]
評価A:試験開始から24時間後のRODが70%以上である。
評価B:試験開始から12〜24時間経過後にRODが70%になる。
評価C:試験開始から6〜12時間経過後にRODが70%になる。
評価D:試験開始から6時間以内にRODが70%になる。
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を表4に示した。
さらに以下のブロンズ評価及び耐湿性評価を行った。
〔ブロンズ評価〕
実施例1〜5のインクセットについて、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙)に、1平方インチ当たり1.5〜2.2mgの打ち込み量になるようにCyan及びBlue(Cyan+Magenta)のベタ印字を行い、得られた印刷物を、光沢度計(PG−1M、日本電色工業株式会社製)を用いて測定し(測定角度60度)、光沢度を求めた。印字は、20℃40%RHと35℃60%RHの2つの環境下で行った。得られた光沢度と以下の式に基づいて計算した上昇値をブロンズ現象発生の程度を判定する基準とし、以下の判定基準に基づいて判定を行った。
上昇値=光沢度(印刷物)−光沢度(記録媒体)
[判定基準]
評価A:15未満
評価B:15以上35未満
評価C:35以上55未満
評価D:55以上
得られた結果を、表4に「ブロンズ耐性」として示した。
〔ブロンズ評価〕
実施例1〜5のインクセットについて、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙)に、1平方インチ当たり1.5〜2.2mgの打ち込み量になるようにCyan及びBlue(Cyan+Magenta)のベタ印字を行い、得られた印刷物を、光沢度計(PG−1M、日本電色工業株式会社製)を用いて測定し(測定角度60度)、光沢度を求めた。印字は、20℃40%RHと35℃60%RHの2つの環境下で行った。得られた光沢度と以下の式に基づいて計算した上昇値をブロンズ現象発生の程度を判定する基準とし、以下の判定基準に基づいて判定を行った。
上昇値=光沢度(印刷物)−光沢度(記録媒体)
[判定基準]
評価A:15未満
評価B:15以上35未満
評価C:35以上55未満
評価D:55以上
得られた結果を、表4に「ブロンズ耐性」として示した。
〔耐湿性評価〕
実施例1〜5のインクセットについて、各インク、Magenta+Yellow、Yellow+Cyan、及びCyan+MagentaからなるRed、Green、Blueの色の文字、及び白抜き文字(各色のベタ画像に、白抜きで文字を形成したもの)を、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙、光沢紙、専用光沢フィルム:いずれも商品名、セイコーエプソン株式会社製)に印刷し、これらを光の当たらない40℃85%RHの環境下に静置した。7日間静置後、文字及び白抜き文字の滲みの程度を目視により観察し、以下の判定基準に基づいて評価を行った。
[判定基準]
評価A:画像に滲みが全くみられない。
評価B:わずかに画像の輪郭がぼやけているが、ほとんど気にならない。
評価C:画像の輪郭がややぼやけているが、文字は明確に認識できる。
評価D:激しく滲みが発生している。白抜き文字は白抜き部分にインクが滲むことによって文字がほとんど判読できない。得られた結果を表4に「耐湿性」として示した。
実施例1〜5のインクセットについて、各インク、Magenta+Yellow、Yellow+Cyan、及びCyan+MagentaからなるRed、Green、Blueの色の文字、及び白抜き文字(各色のベタ画像に、白抜きで文字を形成したもの)を、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙、光沢紙、専用光沢フィルム:いずれも商品名、セイコーエプソン株式会社製)に印刷し、これらを光の当たらない40℃85%RHの環境下に静置した。7日間静置後、文字及び白抜き文字の滲みの程度を目視により観察し、以下の判定基準に基づいて評価を行った。
[判定基準]
評価A:画像に滲みが全くみられない。
評価B:わずかに画像の輪郭がぼやけているが、ほとんど気にならない。
評価C:画像の輪郭がややぼやけているが、文字は明確に認識できる。
評価D:激しく滲みが発生している。白抜き文字は白抜き部分にインクが滲むことによって文字がほとんど判読できない。得られた結果を表4に「耐湿性」として示した。
表4に示したように、本発明のインクセットを用いた実施例1〜5においては、シアン、マゼンタ、およびイエロー、さらに場合によりブラックの各色の画像、およびグレーの画像の耐オゾン性が優れることがわかる。さらに、実施例1〜5においては、画像のブロンズ耐性及び耐湿性が優れていることがわかる。
〔濃色及び淡色混合系インクによる記録物の作成〕
表1及び2に示した組成を有するインク組成物を用いて、以下の表5に示すインク組成物の組み合わせに基づき、実施例6〜12及び比較例6〜10のインクセットを作成した。この各インクセット、及びインクジェットプリンタPM930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製))に、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトシアン、ライトマゼンタ、及びブラック(ただし、インクセットがブラックインク組成物を含む場合のみブラックを含む。)からなり、それぞれの色のOD値が0.9〜1.1になるように調整されたベタ画像を印刷することによって記録物を作成した。
表1及び2に示した組成を有するインク組成物を用いて、以下の表5に示すインク組成物の組み合わせに基づき、実施例6〜12及び比較例6〜10のインクセットを作成した。この各インクセット、及びインクジェットプリンタPM930C(商品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、インクジェット専用記録媒体(PM写真用紙(商品名、セイコーエプソン株式会社製))に、イエロー、マゼンタ、シアン、ライトシアン、ライトマゼンタ、及びブラック(ただし、インクセットがブラックインク組成物を含む場合のみブラックを含む。)からなり、それぞれの色のOD値が0.9〜1.1になるように調整されたベタ画像を印刷することによって記録物を作成した。
〔耐オゾン性試験〕
実施例6〜12及び比較例6〜10の各インクセットを用いて印刷された上記の記録物について、上述した耐オゾン試験方法に準拠して耐オゾン性試験を行い、さらに上述した判定基準に基づいて評価を行った。得られた結果を表6に示した。
実施例6〜12及び比較例6〜10の各インクセットを用いて印刷された上記の記録物について、上述した耐オゾン試験方法に準拠して耐オゾン性試験を行い、さらに上述した判定基準に基づいて評価を行った。得られた結果を表6に示した。
〔ブロンズ評価〕
実施例6〜12について、上述したブロンズ評価方法に準拠してブロンズ評価を行い、さらに上述した判定基準に基づいて評価を行った。得られた結果を表6に示した。
実施例6〜12について、上述したブロンズ評価方法に準拠してブロンズ評価を行い、さらに上述した判定基準に基づいて評価を行った。得られた結果を表6に示した。
〔耐湿性評価〕
実施例6〜12について、上述した耐湿性評価方法に準拠して耐湿性試験を行い、さらに上述した判定基準に基づいて評価を行った。得られた結果を表6に示した。
実施例6〜12について、上述した耐湿性評価方法に準拠して耐湿性試験を行い、さらに上述した判定基準に基づいて評価を行った。得られた結果を表6に示した。
表6に示すように、本発明のインクセット(実施例1〜12)を用いて形成した画像は、比較例よりもシアン、マゼンタ、およびイエロー、さらに場合によりブラックの各色の画像の耐オゾン性が良好であり、さらにグレー画像の耐オゾン性が優れていることがわかる。また、本発明のインクセットを用いて形成した画像は、ブロンズ耐性及び耐湿性にもすぐれている。
Claims (33)
- 少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、及びシアンインク組成物を備えたインクセットであって、前記シアンインク組成物が着色剤として、可視光域(波長400〜800nm)における光吸収スペクトルが波長590〜615nmに最大吸収ピークを有する金属フタロシアニン系染料の少なくとも一種を含有し、
さらに前記マゼンタインク組成物が着色剤として下記の式(1):
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするインクセット。 - 前記金属フタロシアニン系染料が、可視光域(波長400〜800nm)の光吸収スペクトルにおいて波長590〜605nmに最大吸収ピークを有する染料であることを特徴とする、請求項1に記載のインクセット。
- 前記シアンインク組成物が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を含み、かつ前記金属フタロシアニン系染料の合計量が前記シアンインク組成物の総重量に対して1.0〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクセット。
- 前記マゼンタインク組成物が前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記マゼンタインク組成物の総重量に対して2.0〜10.0重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記マゼンタインク組成物が、着色剤として下記式(3):
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクセット。 - 前記シアンインク組成物として、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物を備え、かつ少なくとも一種のシアンインク組成物が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、低い色濃度を有するシアンインク組成物が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記低い色濃度を有するシアンインク組成物の総重量に対して0.4〜3.0重量%であることを特徴とする請求項6に記載のインクセット。
- 前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物のうち、高い色濃度を有するシアンインク組成物が少なくとも一種の前記金属フタロシアニン系染料を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記高い色濃度を有するシアンインク組成物の総重量に対して2.0〜10.0重量%であることを特徴とする請求項6又は7に記載のインクセット。
- 前記色濃度の異なる二種のシアンインク組成物において、低い色濃度を有するシアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)と高い色濃度を有するシアンインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)との比が、1:2〜1:8の範囲にあることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記シアンインク組成物が、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物の塩がリチウム塩である、請求項10に記載のインクセット。
- 前記マゼンタインク組成物として、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物を備え、かつ少なくとも一種のマゼンタインク組成物が前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物のうち、低い色濃度を有するマゼンタインク組成物が前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記低い色濃度を有するマゼンタインク組成物の総重量に対して0.5〜3.5重量%であることを特徴とする請求項12に記載のインクセット。
- 前記色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物のうち、高い色濃度を有するマゼンタインク組成物が、前記式(1)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記高い色濃度を有するマゼンタインク組成物の総重量に対して3〜10重量%であることを特徴とする請求項12又は13に記載のインクセット。
- 前記色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物において、低い色濃度を有するマゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)と高い色濃度を有するマゼンタインク組成物中に含まれる着色剤の濃度(重量%)との比が、1:2〜1:8の範囲にあることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記マゼンタインク組成物が、2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記2位にカルボキシル基を有するナフタレン系芳香族化合物の塩がリチウム塩である、請求項16に記載のインクセット。
- 前記イエローインク組成物が、前記式(4)で表される化合物及び前記式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記イエローインク組成物の総重量に対して1〜6重量%であることを特徴とする請求項18に記載のインクセット。
- 前記イエローインク組成物が、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー58をさらに含むことを特徴とする請求項18又は19に記載のインクセット。
- 前記イエローインク組成物において、前記式(4)で表される化合物及び前記式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物の合計の濃度(重量%)と、C.I.ダイレクトイエロー58の濃度(重量%)との比が、4:1〜10:1の範囲にあることを特徴とする請求項20に記載のインクセット。
- さらにブラックインク組成物を備えた請求項1〜21のいずか一項に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物が、ブラック染料として下記の式(6):
で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項22に記載のインクセット。 - 前記ブラックインク組成物が前記式(6)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を着色剤として含み、かつ前記着色剤の合計量が前記ブラックインク組成物の総重量に対して0.5〜12重量%であることを特徴とする請求項23又は24に記載のインクセット。
- 前記インク組成物がノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜25のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記ノニオン系界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤であることを特徴とする請求項26に記載のインクセット。
- 前記インク組成物が前記ノニオン系界面活性剤を0.1〜5重量%含むことを特徴とする請求項26又は27に記載のインクセット。
- 前記インク組成物が浸透促進剤を含むことを特徴とする請求項1〜28のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記浸透促進剤がグリコールエーテル類であることを特徴とする請求項29に記載のインクセット。
- 請求項1〜30のいずれか一項に記載されたインクセットを一体的に又は独立に収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
- 請求項1〜30のいずれか一項に記載のインクセット又は請求項31に記載のインクカートリッジを用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1〜30のいずれか一項に記載のインクセット又は請求項31に記載のインクカートリッジを用いて記録されたことを特徴とする記録物。
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JP2008533248A (ja) * | 2005-03-09 | 2008-08-21 | ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. | インクジェットインク画像形成用染料セット |
CN105452396A (zh) * | 2013-08-08 | 2016-03-30 | 日本化药株式会社 | 水性油墨组合物、喷墨记录方法及着色体 |
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2004
- 2004-03-29 JP JP2004094417A patent/JP2005281378A/ja active Pending
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