従来のデジタル画像出力は、「1」と「0」と、すなわち「ON」と「OFF」とで構成される2値画像が主である。近年、作像エンジンの進歩と高画質画像のニーズの高まりにより、デジタル画像出力においても、1画素で複数の階調を表現できる少値画像形成装置が市場に出回っている。
ここでいう少値とは、一般的に言われる「多値」、「2値」に対する比較であり、情報量としては「多値」≧「少値」>「2値」の関係となり、便宜上、2値以上であるが多値と呼ぶには情報量の少ないものに対して少値と表現する。通常、画像形成するために入力される画像データとして、1画素当たり8bit(256値)程度の情報量をもった多値データが使用される。一方、実際に入力画像データを画像形成して出力する画像形成装置の表現力は1画素当たり1〜3bit程度の少値である。
画像形成装置に一般的に使用されている2値化処理および少値化処理を適用した場合のドットパターンを図17に示す。少値化処理は色剤の濃淡を利用した「濃度変調方式」と異なるサイズのドットを利用した「ドットサイズ変調方式」、さらにはその両方を合わせた方式の3つが主に使用されている。
図17に示すようなドットによる階調表現では、基本的に制御可能なドットサイズで情報量が決定する。制御できる段階が多ければ多い程情報量が増え、原画像データに近い高品質な出力画像が得られるが、前記したように一般的な出力装置、特に最近普及著しいインクジェット記録装置等の多くは、1〜3段階程度の制御しかできない。濃度変調方式と組み合わせてある程度の改善は図れるが、その分、色剤や記録ユニットの占める割合が増えるため、コストや装置のサイズから来る制約により、倍程度にしか改善できない。
1画素当たりの情報量不足を補うため、単位面積当たりのドット数を制御する事により階調表現を行う中間調処理と呼ばれる「ディザ法」や「誤差拡散法」が広く使われる。
ディザ法は、入力された多値画像データに対して、所定の方法で作成された閾値マトリクスとの比較を行い、その閾値以上(あるいは以下)の値を示す画素のみをドットに置き換える。ON/OFFのみの2値に変換する場合、例えば図18に示す閾値マトリクスを適用し、3値以上の組み合わせをもつ少値に変換する場合、例えば図19に示すように再現可能なドットサイズに応じた閾値マトリクスを適用して各閾値マトリクスを入力画像データと比較して対応するドットに置き換える。
誤差拡散法の処理は、2値誤差拡散法の手順は図20に示すように、画素毎に閾値処理を行い、その際の誤差を保持しつつ後の計算に所定の比率で反映させる。誤差拡散法では、ディザ処理では強制的に切り捨てられる情報も出力画像にフィードバックさせる事ができ、解像力等の面でディザ画像を上回る品質を得られる。
さらに、個々のドットのサイズや相互間距離を小さくし、ディザ法や誤差拡散法によって作成されるドットパターンを見分けづらくしてドットパターンとして人間の目に認識できないようにし、1画素で多値表現を行うのと同等の効果を得るため高解像度化がなされている。一方、高解像度化すると、従来よりも小さなドットを形成する技術に加えてドット位置精度の面でもより高度な制御が必要とされてコストアップし、また、1ドット当たりの被覆面積が小さくなるため記録に時間がかかる。
実際の市場におけるニーズには、速度やコストよりも高画質が要求されるケースの他に、あるレベル以上の画像品質が得られるならば速度やコストを最優先するケースも存在する。従来の技術開発では、高解像度化の延長で考えられる場合が多く、高解像度のまま「ドット形成速度を上げる」「記録ユニットの実装密度を上げる」といったハードウエアによる対処法が取られる。これは、安価な装置でも画質を向上させるアプローチではなく、あくまでも高画質機の高速化を図るものである。実際このような高速化を図った装置では、コストや実装面積の観点から制限がかかるため、記録シーケンスそのものを変更しない限り大幅な速度アップが実現できる訳ではない。また、記録シーケンスを変更した場合も、そのままでは高解像度用の画像処理が適用できなくなるため、新たな記録シーケンスに応じた画像処理が必要となるが、従来の装置では単純な画像処理が適用されるだけで、積極的に画像品質を向上させるアプローチはあまり見られない。
特許文献1では、多階調画像をディザマトリクスを用いて各ドット2値あるいは多値の画像データに変換する階調再現方法において、ディザマトリクスにより多階調画像が一部の濃度において閾値化されたときに、所定の方向のライン基調に形成され、かつ基調以外の部分においてはハイパスフィルター特性を持つことを特徴とする階調再現方法が提案されている。
画像処理において、形成される画像の解像度が人間の目の分解能を超える程の高解像度化が実現できれば、どのような処理を用いても理論上画質に影響は無いが、逆に、人間の視覚で判別できる程度の解像度では、処理そのものに起因する不具合が目に付く可能性が生じる。
例えば、図21(a)の入力画像データを300dpi程度で低解像度記録する場合、Bayer型ディザ処理を施すと図21(b)に示すような出力画像データが得られ、誤差拡散処理を施すと図21(c)に示すような出力画像データが得られる。Bayer型ディザ処理や誤差拡散処理は、単に階調レベルと面積率の整合を取るだけでなく、ドットの配置に偏りが生じないようにほぼ均等に配置され、配置パターンそのものも目に留まりにくい高周波特性を持つように調整されている。
これらの処理を600dpi、1200dpiといった高解像度記録に適用すると、ドットの配置パターンが殆ど目に付かず、ドットの分布にムラも無い非常に良好な画像品質を得ることができる。一方、150dpi、300dpiといった低解像度記録を行うと、高周波特性を持つように調整された処理であっても、ドットの配置パターンが目に付く。
例えば、図22(a)に示す入力画像データをBayer型ディザ処理して、実寸で72dpiという相当に粗い画像で出力すると、図22(b)に示すように特有のテクスチャーが生じて変化している部分とドットが綺麗に整列してテクスチャーの全く無い部分とが入り交じる。
誤差拡散処理では、図21(c)に示すように一見ランダムに見える配置でドットが形成され、全ての階調レベルにおいてドット配置のランダム性が維持されるため、階調レベルによりテクスチャーが切り替わらず定型のテクスチャーが存在しないことで、記録装置における機械的な変動に対する干渉が発生し難く、またドット配置にある程度の自由度が得られるため、Bayer型ディザ処理等に比べて高い解像特性を得られる。一方、図23の濃度と粒状度との関係図に基づいて、300dpiで記録した場合の粒状度を比較すると、誤差拡散処理はBayer型ディザ処理に比較して粒状度が大きくなるため、ランダム性が低解像度でノイズ成分として認識され易く、官能評価ではBayer型ディザ処理の様に整然と揃ったテクスチャーが発生する方が良好に受け取られる傾向にある。
このように、ドットの配置により形成されるテクスチャーパターンの善し悪しが画質に大きく作用するため、低解像度で良好な画像品質を得るには、整列性の良いドット配置パターンを形成し、それを各階調レベルに渡って変化させない、もしくは、変化を感じさせないことが必要である。
ディザ法により1〜3bit程度で少値化処理して低解像度で画像形成する場合、閾値マトリクスで、すべての中間調レベルにおいて常に整列性を持ったドット配置パターン(以下、「基調」と称する)を維持した階調再現を行うことにより画像品質を向上でき、特に、ドット径変調が可能なインクジェット記録装置において好適に印字できる。
図24に示すように、用紙27の送りに合わせて小型のヘッド214及びキャリッジ213等を含む記録ユニットが主走査方向移動しながら記録を行う際、副走査方向の紙送り精度や主走査方向のヘッド移動速度にムラが発生すると、ドットの基調と干渉して縦横のスジが認識される。例えば、図25(a)に示すように垂直・水平に基調の揃ったBayer型ディザ処理の一階調パターンを出力すると、図25(b)に示すように主走査・副走査の変動A及びBと基調とが同期しやすい。人間の目は0°や90°(180°や270°)方向に対して感度が高いので、垂直・水平に揃いやすい基調は避ける方が好ましい。干渉を起こしにくいランダム型は、低解像度においてノイズ成分が強調して認識されるため好ましくない。
斜め万線基調のドット配置を用いれば、主走査方向及び副走査方向のいずれの変動に対しても干渉しにくい効果が得られるため好ましい。特に、図26(a)に示す45°斜め万線基調や図26(b)に示す135°斜め万線基調などは、主走査方向及び副走査方向のいずれの変動に対しても等しく干渉しにくい効果を得るためのぞましい。さらに、人間の視覚は斜め方向に対してはやや感度が鈍いため、基調をそろえた場合でも垂直・水平の基調に比べて基調自体の存在が目立たない利点がある。
図26(a)や図26(b)の斜め万線基調は「万線型ディザ」として電子写真記録で用いられる。電子写真記録では、帯電した光半導体上にレーザーで潜像を形成し、トナーを付着・転写させることで記録を行うので、レーザーのパワー変調によりドットのサイズを何段階にも制御できる反面、トナーの付着・転写不良が発生し易いため、あまり小さいドットによる階調表現は適していないことから、できるだけドットを集中させて徐々に大きなドットを形成していく面積変調方式のディザ(AMディザ)が一般的に採用される。万線型ディザは、このAMディザの一種であり、指向性はあるものの、ドットを渦巻き状に成長させる「集中型ディザ」よりも記録密度(線数)を高められるという利点がある。
電子写真記録では、図27(a)に示すように、ドットサイズだけでなくドット形成位置をずらすことも可能であるため、図27(b)に示すようにドットをいくら配置しても、つまり階調レベルが変化しても斜線形状を崩さずに階調を表現できる。一方、インクジェット記録装置では、図28(a)に示すように、ドット形成位置はあくまでも記録解像度によって決まるピッチに固定されているため、図28(b)に示すように、僅か数ドット増えただけで基調が変わる。一般的なディザ処理では、処理機構を単純化して高速化と低コスト化を図るため、同じマスクが正方形状にタイリングされ、たとえ1ドットの増加であっても、タイリングの周期により垂直・水平に揃ったパターンが認識される。例えば、図29(a)に示すような4×4のマスクを用いて図29(b)に示すようにタイリングを行った場合、全体として見ると垂直・水平にドットが揃うため、図29(c)に示すように格子状の基調になる。
図30(a)に示すように一階調レベル当たり1ドットのマスクを図30(b)に示すようにタイリングすると、図30(c)に示すように垂直・水平の格子基調となり、図31(a)に示すように一階調レベル当たり2ドットのマスク(これ自体は斜めにドットが配置されている)を図31(b)に示すようにタイリングすると、図31(c)に示すように斜め基調となるものの、45°の基調と135°の基調とが交わった基調となる。図32(a)に示すように、一階調レベル当たり3ドット以上のマスクを図32(b)に示すようにタイリングすると、図32(c)に示すように一方向の斜め万線基調を維持してタイリングによる基調変化を回避できる。
一階調レベル当たり3ドット以上を同時に形成すると、1ドットの場合と同じ階調再現能力を得るために3×3=9倍以上のサイズのマスクサイズが必要となる。9倍以上という値は大きいようにも見えるが、誤差拡散処理に必要とされるバッファメモリ等と比較すると微々たるものであり、極端に大きなマスクを基準としない限り、処理速度低下やコストアップに影響しない。マスクの縦横のサイズがコンピュータの処理し易い、すなわち、メモリ上に展開した際に端数の発生しない8の倍数になるよう設定することで高速化が図られる。
図33(a)に示すような斜め万線基調となる基準マスクを基準として、図33(b)に示すように4ドット同時発生時のマスクを形成し、さらに図33(c)に示すように基準となるマスクの1マス1マスを、必要な階調数となる様にさらに細かいサブマトリクスへと分割する。この際、分割するサブマトリクスは基準となるマスクと相似形の斜め万線型とすることで、基調を崩すパターンが発生するのを防ぐ。例えば、図33(d)はサブマトリクスを3×3としたもので36階調を表現できる。また、図33(e)はサブマトリクスを4×4としたもので64階調を表現できる。このようなサブマトリクス化によって、斜め万線基調を崩すような別の基調の発生を抑制できる。
斜め万線基調等の所定の方向のライン基調に形成される閾値マトリクス(ディザマトリクス)を使用する場合、図34(a)や図34(b)に示すように階調の連続性が維持される濃度がある一方、例えば図35(a)に示す階調グラデーション画像のA部等の一部の濃度において、図35(b)に示すように低線数化して階調の連続性が途切れて画質低下が発生する場合がある。
図36は、人間の視覚特性を表したグラフを示したものである。人間の視覚の空間周波数特性は、網膜上の空間周波数fから次の式1で近似される。
低線数化した濃度範囲における濃度間のドット配置を変え、空間周波数分析による人間の視覚の空間周波数特性を適用し空間周波数特性の低いものを抽出したハイパスフィルタ特性及び所定方向のライン基調を持たせるディザマトリクスを用いることにより、階調の連続性を維持できる。ディザマトリクスのライン基調以外の部分に図37(a)に示す例のようなパターンを持たせると、ライン基調以外の部分は図37(b)に示すようなハイパスフィルタ特性を持つ。
例えば、図37(a)のA部の濃度部分において図38(a)に示すライン基調の部分と図38(b)に示すハイパスフィルタ特性を持つライン基調以外の部分とを組み合わせた図38(c)に示すようなディザマトリクスを用いることで、図38(d)に示すように所定の方向のライン基調に形成され、かつ基調以外の部分においてハイパスフィルタ特性を持つディザマトリクスによる階調グラデーション画像が得られる。
ディザ法では、低い濃度側で設定された閾値ドットは、高い濃度側でも必ず存在するため、例えば図39(a)に示すような所定の方向のライン基調に形成され、かつ基調以外の部分においてハイパスフィルタ特性を持つディザマトリクスの一部の濃度間において、図39(b)に示すように濃度が低い側をAマスク、図39(b)に示すように濃度が高い側をBマスクとすると、Aマスクに存在するライン基調はBマスクにも必ず存在し、AマスクとBマスクとの差分(B−A)から得られる図39(d)に示すような差分画像(差分パターン)は、図39(e)に示すようなハイパスフィルタ特性を持つ。
所定の方向のライン基調に形成され、かつ基調以外の部分においてハイパスフィルタ特性を持つディザマトリクスを用いてディザ処理することにより、低線数化を抑制して所定の方向のライン基調の連続性を高め、連続した階調表現による所望の品質の多階調画像を再現できる。この場合、所定の方向のライン基調を斜め方向とする、万線基調とすることにより、斜め方向のライン基調が画像形成装置による横スジ状のノイズを低減し、より高品質な多階調画像の出力を得る。
特開2004−80065号公報
第1の実施形態にかかる画像処理装置であるホスト装置1は図1に示すように、CPU11とROM12とRAM13と外部I/F14と入力部15とプリンタドライバ16とを備える。CPU11は、ROM12に記憶された画像データを作成する種々のアプリケーションソフトや、ホスト装置1全体を制御する制御プログラム等をRAM13に読み出して実行する。外部I/F14は、画像形成装置2と接続されており、画像形成装置2は、ホスト装置1から出力される画像データに基づいて画像を印刷する。入力部15は、印刷される画像データの解像度や印刷する紙種等の出力条件を入力する。
プリンタドライバ16は、CCM処理部161とBG/UCR・γ補正部162とズーミング処理部163と階調再現部164とパターン記憶部165とを有し、CPU11で実行されるアプリケーションソフト等で作成された多階調画像から2値または多値の低階調画像を作成して外部I/F14を介して画像形成装置2に転送する。階調数は接続された画像形成装置2で対応可能な範囲の値である。なお、プリンタドライバ16は、ROM12や外部の記録媒体に記憶されてCPU11を動作させるプログラムとして実現してもよい。
アプリケーションソフト等で作成した多階調画像はCCM処理部161、BG/UCR・γ補正部162及びズーミング処理部163で処理され、階調再現部164に入力される。階調再現部164は階調再現方法を実行し、階調再現方法にはディザマトリクスを用いたディザ処理が含まれる。
ディザ処理に用いられるディザマトリクスは図2(a)に示すような階調グラデーション画像を形成し、低階調において図2(b)に示すように斜め方向のライン基調に形成され、かつ図2(c)に示すように基調以外の部分においてハイパスフィルタ特性をもつ図2(d)のような構成を有する。所定の方向のライン基調に形成され、かつ基調以外の部分においてハイパスフィルタ特性を持つディザマトリクスを用いてディザ処理することにより、低線数化を抑制して所定の方向のライン基調の連続性を高め、連続した階調表現により所望の品質に階調再現できる。この場合、所定の方向のライン基調を斜め方向とする、万線基調とすることにより、斜め方向のライン基調が画像形成装置による横スジ状のノイズを低減し、より高品質に階調再現した出力を得る。
パターン記憶部165は、非干渉パターンと変更ドットパターンと変更階調データと変更ディザマトリクスが、解像度及び用紙サイズごとに記憶されている。例えばマトリクスサイズ3×3のディザマトリクスが低階調において図3(a)に示すような斜め方向のライン基調を形成する場合、図3(b)に示すパターンをもつ入力画像データに対するディザ処理後の出力画像データは図3(c)に示すように入力画像データと同じになる。一方、図3(d)のようなチェッカーパターンをもつ入力画像データに対するディザ処理後の出力画像データは図3(e)に示すように、ディザマトリクスと干渉しない部分においてドット抜けを生じる。ディザマトリクスと干渉しない部分をもつ図3(d)に示すパターンのように、ディザ処理後にドット抜けを生じるパターンを非干渉パターンとしてパターン記憶部165に記憶している。
非干渉パターンは、入力画像データ自体が周期的なパターンをもち、ディザマトリクスに対して干渉と非干渉とを繰り返したり完全に非干渉となるようなパターン等をいい、例えばディザマトリクスの基調と周期の異なるチェッカーパターン等を含む。非干渉パターンと変更ドットパターンと変更階調データと変更ディザマトリクスとを複数、出力条件ごとに記憶することで、より高精度にドット抜けを防止できる。
非干渉パターンに対しては、図3(g)に示すように、斜め方向のライン基調を維持しながらドット数を維持することが望ましい。そのため、非干渉パターンに一致する入力画像データを図3(f)に示すようなディザマトリクスに干渉する変更ドットパターンに変更し、階調を変更し、ディザ処理後の図3(g)に示す出力画像データに変更する。そのため、パターン記憶部165には、各非干渉パターンに対応して変更ドットパターンと階調データとを記憶している。ドットパターンまたは階調データの変更のみで図3(g)に示すような出力画像データが得られる場合には、変更ドットパターンまたは変更階調データのいずれか一方のみを記憶しておく。さらに、ディザマトリクスを変更すれば図3(g)に示すような出力画像データが得られる場合には、変更に用いる変更ディザマトリクスを記憶しておく。
階調再現方法を図4のフロー図に従って説明する。階調再現部164は、入力部15で入力された出力条件にしたがって、パターン記憶部165に記憶された非干渉パターンの1つを選択する(ステップS1)入力された多階調画像内に選択された非干渉パターンが含まれているかマッチングを行い(ステップS2)、入力された多階調画像内に非干渉パターンが含まれている場合には、入力された多階調画像の非干渉パターンに相当するドットパターンをパターン記憶部165に記憶された変更ドットパターンに変更し(ステップS3)、パターン記憶部165に記憶された変更階調データに従って階調を変更し、ディザ処理に使用するディザマトリクスをパターン記憶部165に記憶された変更ディザマトリクスに変更する(ステップS4)。階調再現部164は、ドットパターンの変更と階調の変更とディザマトリクスの変更の後、または、入力された多階調画像内に非干渉パターンが含まれていない場合には、全ての非干渉パターンに対してマッチングを行ったか判断し(ステップS5)、全ての非干渉パターンに対してマッチングを行った場合には、多階調画像をディザ処理して出力画像データを作成する(ステップS6)。
非干渉パターンのマッチング、ドットパターンの変更、階調データの変更、ディザマトリクスの変更を行うことにより、入力画像データとディザマトリクスとの非干渉によるドット抜けを抑止した出力画像データを作成できる。入力画像データの階調データを変更することにより、入力画像データのパターンを変換することにより生じる出力画像の色再現の違いを抑止できる。
多色の画像形成装置には、等和色であるシアン、マゼンタ、イエローの3つの基本色を用いたカラー印刷装置や、明度等を加味して所望の色彩の外観を向上させるためにブラックを加えた4色の原色を用いるインクジェットカラー印刷装置や、基本色を組み合わせた多次色を予め用意して多くの色を用いて高画質に印刷するカラー印刷装置等がある。多色の画像形成装置で画像形成する場合、画像データを複数の色成分に分解して各色成分の原画像データを入力画像データとして色成分単位で擬似階調表現処理を行い、各色成分単位でのライン基調の連続性を高めるため、結果として単色画像及び多色画像において、より高画質な画像を形成できる。本実施形態の階調再現方法を多色画像データの少なくとも1つの色成分の入力画像データに適用することにより、高画質に階調再現した多色画像を出力できる。
画像形成装置2は例えばインクジェット記録装置であり、図5の機構部の斜視図と図6の機構部の側面図とに示すように、印字機構部21と給紙系22と排紙系23と給紙カセット24と手差しトレイ25と排紙トレイ26とを備え、内部に印字機構部21を収納し、用紙27を給紙カセット24または手差しトレイ25から給送し、印字機構部21で用紙27に所要の画像を記録し、後面側に装着された排紙トレイ26に排紙する。
印字機構部21は、主ガイドロッド211と従ガイドロッド212とキャリッジ213とヘッド214とインクカートリッジ215と主走査モータ216と駆動プーリ217と従動プーリ218とタイミングベルト219とを有する。主ガイドロッド211と従ガイドロッド212とは、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であり、キャリッジ213は、後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド211に摺動自在に嵌装され、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド212に摺動自在に載置されている。
キャリッジ213は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドをもつヘッド214を、インク滴吐出方向を下方に向けて装着し、上側に、ヘッド214に各色のインクを供給するための各インクタンク(インクカートリッジ)215を交換可能に装着している。インクカートリッジ215は、大気と連通する大気口を上方にもち、ヘッド214へインクを供給する供給口を下方にもち、内部にインクが充填された多孔質体をもち、多孔質体の毛管力によりヘッド214へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
ヘッド214は、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のインクジェットヘッドをもつものであってもよい。ヘッド214は、インク流路の壁面の少なくとも一部を形成する振動板と振動板を変形させる圧電素子(圧電素子)とをもつピエゾ型インクジェットヘッドの他、インク流路の壁面の少なくとも一部を形成する振動板とこれに対向する電極とをもち静電力で振動板を変形変位させてインクを加圧する静電型ヘッド、圧電素子を用いるものであって振動板の座屈変形を用いるヘッド、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることにより圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のヘッド等を用いてもよい。
主走査モータ216は駆動プーリ217を正逆に回転駆動して、駆動プーリ217と従動プーリ218との間に張装したタイミングベルト219に固定されたキャリッジ213を図6の紙面に垂直な主走査方向に往復駆動させる。
給紙部22は、給紙ローラ221とフリクションパッド222とガイド部材223と搬送ローラ224と搬送コロ225と先端コロ226と副走査モータ227と印写受け部材228とを有する。給紙カセット24にセットされた用紙27は、給紙ローラ221とフリクションパッド222とにより分離給紙されてガイド部材223に案内され、搬送ローラ224で反転させて搬送され、搬送ローラ224の周面に押し付けられる搬送コロ225と搬送ローラ224からの用紙27の送り出し角度を規定する先端コロ226とにより、ヘッド214の下方側に搬送される。搬送ローラ224は副走査モータ227によってギヤ列を介して回転駆動される。印写受け部材228は、用紙ガイド部材としてキャリッジ213の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ224から送り出された用紙27を記録ヘッド214の下方側で案内する。
排紙部23は、搬送コロ231と拍車232と排紙ローラ233と拍車234とガイド部材235とガイド部材236と回復装置237とを有する。印写受け部材228の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送コロ231及び拍車232は、回転駆動して用紙27を排紙方向へ送り出し、排紙ローラ233及び拍車234は用紙27を排紙トレイ26に送り出し、ガイド部材235及びガイド部材236は排紙経路を形成する。
キャリッジ213を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド214を駆動し、用紙27を停止させてインクを吐出して1行分を記録し、用紙27を所定量搬送後に次の行を記録する。記録終了信号、または、用紙27の後端が記録領域に到達した信号を受けて記録動作を終了して用紙27を排紙する。
ヘッド214の吐出不良を回復する回復装置237はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段とを有し、キャリッジ213の移動方向右端側の記録領域を外れた位置に配置される。印字待機中にキャリッジ213が回復装置237側に移動し、ヘッド214がキャッピング手段でキャッピングされ、吐出口部(ノズル孔)が湿潤状態に保たれ、インク乾燥による吐出不良が防止される。記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する(パージする)ことにより全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段がヘッド214の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段により吐出口からインクとともに気泡等が吸い出され、吐出口面に付着したインクやゴミ等がクリーニング手段により除去され、吐出不良が回復される。吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
記録ヘッド214を構成するインクジェットヘッドは、図7の分解斜視図、図8の液室長手方向に沿う断面図に示すように流路形成部材である流路形成基板241と振動板242とノズル板243とノズル244と加圧室245とインク供給路246と共通液室247とインク供給口248と耐液性薄膜249と圧電素子250とベース基板251とスペーサ部材252と圧電材料253と内部電極254とヘッドフレーム255とFPCケーブル256とヘッド駆動回路(ドライバIC)257とを有する。
流路形成基板241は単結晶シリコン基板で形成され、下面に振動板242が接合され、上面にノズル板243が接合されている。流路形成基板241と振動板242とノズル板243とは、液滴であるインク滴を吐出するノズル244が連通するインク流路である加圧室245と、流体抵抗部となるインク供給路246と、インク供給路246を介して加圧室245にインクを供給する共通液室247とを形成し、流路形成基板241のインクに接する面となる加圧室245とインク供給路246と共通液室247との各壁面には有機樹脂膜からなる耐液性薄膜249が成膜されている。
各加圧室245に対応した積層型の圧電素子250は図9の要部拡大図に示すように、振動板242の外面側(液室と反対面側)に接合され、ベース基板251に接合して固定され、図9に示すように圧電材料253と内部電極254とを交互に積層して構成される。圧電常数がd33である圧電素子250の伸縮により加圧室245を収縮、膨張させる。圧電素子250に駆動信号が印加され充電が行われると伸長し、圧電素子250に充電された電荷が放電すると反対方向に収縮する。
圧電素子250の列の周囲にはスペーサ部材252がベース基板251に接合され、ベース基板251とスペーサ部材252とに、外部から共通液室247にインクを供給するインク供給口248を形成する貫通穴が形成されている。流路形成基板241の各加圧室245となる貫通穴と、インク供給路246となる溝部と、共通液室247となる貫通穴とは、結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングして形成される。
流路形成基板241の外周部及び振動板242の下面側外縁部は、エポキシ系樹脂またはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したヘッドフレーム255に接着接合し、ヘッドフレーム255とベース基板251とは図示しない部分において接着剤等により相互に固定されている。圧電素子250は、駆動信号を与える半田接合、ACF(異方導電性膜)接合、ワイヤボンディング等によりFPCケーブル256と接続されている。FPCケーブル256には、各圧電素子250に選択的に駆動波形を印加する駆動回路257が実装されている。
振動板242は図10の液室短手方向に沿う断面図に示すように薄肉部258と厚肉部259と厚肉部260と厚肉部261と厚肉部262とをもち、ニッケルの金属プレートからエレクトロフォーミング法で製造されている。振動板242の加圧室245に対応する部分に、変形を容易にするための薄肉部258と、圧電素子250と接合するための厚肉部259と、液室間隔壁に対応する部分の厚肉部260とが形成され、平坦面側が流路形成基板241に接着剤接合され、厚肉部側がヘッドフレーム255に接着剤接合されている。振動板242の液室間隔壁に対応する厚肉部260とベース基板251との間には厚肉部261を介して支柱部262が介設されている。支柱部262は圧電素子250と同じ構成をもつ。
ノズル板243は、各加圧液室245に対応して直径10〜30μmのノズル244が形成され、流路形成基板241に接着剤接合されている。複数のノズル244は、複数のドット形成手段を構成し、図11のノズル板の平面図に示すようにノズル244の列(ノズル列)を主走査方向に対して直交させて配置し、ノズル244のピッチは2×Pnである。1つのヘッドには距離L隔てた2列のノズル列を副走査方向にピッチPnだけずらして千鳥状に配置されており、ピッチPnの画像を1回の主走査及び副走査で形成できる。
ノズル板243としては、ステンレスやニッケル等の金属、金属とポリイミド樹脂フィルム等の樹脂との組み合わせ、シリコン、それらの組み合わせからなるものを用いることができる。ノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、インクとの撥水性を確保するため、メッキ被膜、あるいは撥水剤コーティングなどの周知の方法で撥水膜が形成されている。
選択的に20〜50Vの駆動パルス電圧を印加された圧電素子250は、積層方向に変位して振動板242をノズル244方向に変形させ、加圧液室245の容積/体積変化により加圧液室245内のインクを加圧し、ノズル244からインク滴を吐出(噴射)させる。インク滴の吐出に伴って加圧液室245内の液圧力が低下し、インク流れの慣性によって加圧液室245内に若干の負圧が発生した状態で、圧電素子250への電圧の印加をオフ状態にすると、振動板242が元の位置に戻って加圧液室245が元の形状になりさらに負圧が発生する。発生した負圧により、インク供給口248から共通液室247、流体抵抗部であるインク供給路246を経て加圧液室245内にインクが充填される。ノズル244のインクメニスカス面の振動が減衰して安定した後、圧電素子250にパルス電圧を印加して次のインク滴を吐出させる。
画像形成装置2は図12の制御系の構成図に示すように、CPU271とROM272とRAM273と外部I/F274と画像メモリ275と操作パネル276と駆動制御部277とを備える。CPU271は、ROM272に記憶された画像形成装置2全体を制御する制御プログラム等をRAM273に読み出して実行する。パラレル入出力(PIO)ポート274は、接続されたホスト装置1から転送される画像データ等の各種情報、データ、各種センサからの検知信号等を受信し、ホスト装置1や操作パネル276に所要の情報を送信する。画像メモリ275は受信した画像データを記憶する。操作パネル276は、画像形成装置2の各種操作を行う。
駆動制御部277は、入力バッファ278とPIOポート279と駆動波形生成回路280とヘッド駆動回路281とドライバ282を備える。ホスト装置1から送られる画像データの転送速度とCPU271の処理速度との差等を吸収する。ドライバ282は、キャリッジ213の主走査方向の移動走査と搬送ローラ224の回転による用紙27の所定量の搬送とを行うため、PIOポート279を介して与えられる駆動データに応じて主走査モータ216と副走査モータ227とを各々駆動制御する。
CPU271は、ホストから送られる画像データを処理してヘッドの並びに対応した縦横変換を行い、インク滴を大滴と小滴と非印字との3値で打ち分けるために必要な2ビットの駆動データSDを生成する。図13のヘッド駆動制御に係わる部分のブロック図に示すように、CPU271はPIOポート279を介してヘッド駆動回路281に、駆動データSDとクロック信号CLKとラッチ信号LATと、大滴に対応した駆動波形と小滴に対応した駆動波形とを選択するための駆動波形選択信号M1〜M3とを出力する。CPU271はROM81に格納した駆動波形データを読み出して駆動波形生成回路280に与える。
駆動波形生成回路280はD/Aコンバータ283と増幅器284と電流増幅器285とをもち、圧電素子250に印加する駆動波形Pvを簡単な構成で生成する。D/Aコンバータ283はCPU271から与えられる駆動波形データをD/A変換してアナログ信号として出力し、増幅器284はアナログ信号を実際の駆動電圧まで増幅し、電流増幅器285は増幅器284の出力をヘッドの駆動による電流を十分供給できるように増幅する。駆動波形生成回路280は、例えば図15(a)に示すような1駆動周期内に複数の駆動パルスを含む駆動波形Pvを生成し、ヘッド駆動回路281に与える。
ヘッド駆動回路281は図14のヘッド駆動回路のブロック図に示すように、シフトレジスタ286とラッチ回路287とデータセレクタ288とレベルシフタ289とトランスミッションゲート290とをもつ。シフトレジスタ286はCPU271からのクロック信号CKにより駆動データSDを取り込み、ラッチ回路287はシフトレジスタ286のレジスト値をラッチ信号LATでラッチし、データセレクタ288はラッチ回路287にラッチされた2ビットの駆動データに応じて駆動波形選択信号M1〜M3(ロジック信号)の1つを選択して出力し、レベルシフタ289はデータセレクタ288の出力(ロジック信号)を駆動電圧レベルに変換して出力する。トランスミッションゲート290は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)14の各ノズルに対応する圧電素子250に接続され、レベルシフタ289により選択された駆動波形選択信号M1〜M3の長さに応じて駆動波形生成回路280からの駆動波形Pvをオン/オフ(開閉)制御し、開状態になっているチャンネルに対して駆動波形Pvを構成する駆動パルスを印加する。
例えば、図15(a)に示すような複数の駆動パルスを含む駆動波形Pvが与えられているとき、期間T0〜T1の間だけ開状態になるトランスミッションゲート290からは図15(b)に示すように1個の駆動パルスが出力されて圧電素子250に印加されるので、吐出される滴の大きさは小滴となる。期間T0〜T2の間だけ開状態になるトランスミッションゲート290からは図15(c)に示すように2個の駆動パルスが出力されて圧電素子250に印加されるので、吐出される滴の大きさは中滴となる。期間T0〜T3で開状態になるトランスミッションゲート290からは図15(d)に示すように5個の駆動パルスが出力されて圧電素子250に印加されるので、吐出される滴の大きさは大滴となる。
複数の駆動パルスを含む駆動波形Pvを生成し、圧電素子250に印加する駆動パルス数を選択することにより、1つの駆動波形から小滴用と中滴用と大滴用との各波形を生成しているので、駆動波形を供給する回路や信号線が1つでよく、コスト低減、回路基板、伝送線の小型化が図れる。
第2の実施形態に係る画像形成装置3は図16に示すように、第1の実施形態に係る画像形成装置2にさらに画像処理部31を備え、画像処理部31は第1の実施形態に係るホスト装置1と同様のズーミング処理部163と階調再現部164とパターン記憶部165とを有し、PIOポート274を介してホスト装置4に接続されている。ホスト装置4は、プリンタドライバ41にCCM処理部161とBG/UCR・γ補正部162とを有し、ズーミング処理部163と階調再現部164とを有しない点で第1の実施形態に係るホスト装置1と異なり、他の構成はホスト装置1と同様である。
画像処理部31は、ホスト装置1で作成されCCM処理部161とBG/UCR・γ補正部162とで処理された画像データを、ズーミング処理部163及び階調再現部164で処理してドットパターンを作成する。ズーミング処理部163と階調再現部164との処理は第1の実施形態と同様である。画像形成装置3は、作成された画像データにしたがって画像を印刷する。なお、画像処理部31は、ROM273や外部の記録媒体に記憶されてCPU271を動作させるプログラムとして実現してもよい。
なお本発明は、画像形成装置2とホスト装置1との両方の機能を有した画像形成装置としてもよく、ドット再現で画像を形成できる熱転写記録装置等の画像形成装置、レーザープリンタやLEDプリンタなどの電子写真方法を用いた画像形成装置等にも適用できる。