以下、図面を用いて、この発明の実施の形態が適用される定着装置の一例を説明する。
図1は、この発明の実施の形態が適用される定着装置の一例を示す。
図1に示すとおり、定着装置1は、加熱部材(ヒートローラ)2、加圧部材(プレスローラ)3、加圧スプリング4、剥離爪5、クリーニングローラ6、誘導加熱装置7、温度検出機構8、サーモスタット9を有する。
加熱ローラ2は、所定の圧力で変形しない剛性(硬さ)を有する材質から構成されるシャフト2aと、このシャフト2aのまわりに順に配置される弾性層(発泡ゴム層,スポンジ層,シリコンゴム層)2bと、金属部材(金属導電層)2cを有する。なお、本実施の形態では、金属導電層2cの外側には、さらに例えば耐熱シリコーンゴム等の薄膜層からなるソリッドゴム層および離型層が形成されることが好ましい。
金属導電層2cは、導電性材料(たとえばニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、銅およびステンレス鋼とアルミニウムの複合材等)等により形成される。加熱ローラ2の長手方向の長さは、330mmであることが好ましい。
なお、発泡ゴム層2bは5〜10mm、金属導電層2cは10〜100μm、ソリッドゴム層は100〜200μmの厚みにそれぞれ形成されることが好ましい。本実施の形態では、発泡ゴム層2bは5mm、金属導電層2cは40μm、ソリッドゴム層は200μmおよび離型層は30μmの厚みにそれぞれ形成され、加熱ローラ2は直径40mmである。
加圧ローラ3は、所定の直径の回転軸の周囲に、所定の厚さのシリコーンゴム、もしくはフッ素ゴム等が被覆されている弾性ローラであってもよく、また、加熱ローラ2と同様に金属導電層と弾性層を有するローラであってもよい。
加圧スプリング4は、加熱ローラ2の軸線に対して所定の圧力で圧接し、加圧ローラ3は、加熱ローラ2の軸線と概ね平行に維持される。なお、加圧スプリング4は、加圧ローラ3の軸を支持する加圧支持ブラケット4aを介して、加圧ローラ3の両端から所定の圧力が供給されているため、加熱ローラ2と平行となり得る。
これにより、加熱ローラ2と加圧ローラ3の間には、所定の幅を有するニップが形成される。
加熱ローラ2は、図2を用いて後段に説明する定着モータ32により、概ね一定の速度で、矢印CWの方向に回転される。加圧ローラ3は、加圧スプリング4により所定圧力で加熱ローラ2に接触されているので、加熱ローラ2が回転されることで、加熱ローラ2と接する位置で、加熱ローラ2が回転される方向と逆の方向に回転される。
剥離爪5は、加熱ローラ2の周上であって、加熱ローラ2と加圧ローラ3とが相互に接するニップにより加熱ローラ2が回転される方向の下流側で、かつニップの近傍の所定位置に位置され、ニップを通過される用紙Pを加熱ローラ2から剥離する。なお、本発明は、本実施の形態に限定されることなく、例えばカラー画像形成のように用紙に定着させる現像剤が多量である場合は、用紙が加熱ローラから剥がれ難いため、複数の剥離爪5が設けられてもよく、また、用紙が加熱ローラから剥がれ易い場合はなくてもよい。
クリーニングローラ6は、加熱ローラ1の表面上にオフセットされたトナーや紙屑等のゴミを除去する。
誘導加熱装置7は、加熱ローラ2の外側に配置され、所定の電力が供給されて所定の磁界を加熱ローラ2に供給する加熱用コイル(励磁コイル)を、少なくとも2つ有する。加熱用コイルは、コイル毎に、励磁回路22から所定の電力が供給され、加熱ローラ2は、所定の温度に加熱される。
温度検出機構8は、加熱ローラ2の表面と非接触に設けられ、加熱ローラ2の外周面の複数箇所の温度を検出する。詳細に説明すると、温度検出機構8は、加熱ローラ2の回転方向の温度差を検知するために、加熱ローラ2の外周面のうち温度が高い部分である第1検出位置Aと、この第1検出位置Aの加熱ローラ2の回転方向下流側であって、ニップ部の直前である第2検出位置Bの温度を検出できる。
第1検出位置Aは、加熱ローラ2の外周面のうち、誘導加熱装置7の励磁コイルと向かい合う領域であることが好ましいが、例えば加熱ローラ2の回転方向に励磁コイル7の出口直後であってもよい。
すなわち、第2検出位置Bは、第1検出位置Aと、加熱ローラの回転方向において位相が異なる検出箇所であって、第1検出位置Aの数秒後の温度を検出し、また、定着動作で利用される直前の加熱ローラ2の温度を検出できる。
サーモスタット9は、加熱ローラ2の表面温度が異常に上昇する発熱異常を検知し、発熱異常が生じた場合は、誘導加熱装置7の加熱用コイルに対して供給される電力を遮断するために利用される。なお、サーモスタット9は、加熱ローラ2の表面付近に、少なくとも1つ以上備えられることが好ましい。
また、加圧ローラ3の周上には、用紙Pを加圧ローラ3から剥離するための剥離爪や、加圧ローラ3の周面に付着したトナーを除去するクリーニングローラが設けられてもよい。
トナーTを保持する用紙Pは、加熱ローラ2と加圧ローラ3との間に形成されるニップ部を通過されることで、溶融されたトナーTが用紙Pに圧着され、画像が定着される。
図2は、図1に示した定着装置の制御系を説明するブロック図を示す。また、図1に示した定着装置を矢印R側から見る概略図も併せて示されている。
図2に示すとおり、誘導加熱装置7は、誘導加熱用コイル71,72,73を含む。コイル71は、加熱ローラ2の軸方向のうち中央部分に対向して配置され、加熱ローラ2の中央部分に磁界を提供し、コイル72,73は、加熱ローラ2の軸方向のうち端部分に対向して配置され、加熱ローラ2の端部分に磁界を提供する。
温度検出機構8は、加熱ローラ2の長手方向に配置される複数の非接触温度検出素子、例えば非接触温度検出素子81,82,83,84,85を含む。非接触温度検出素子81,82,83,84,85は、1つの素子で2ヶ所以上の温度を検出できる非温度検出素であって、例えばゼーベック効果により起電力が発生するサーモパイルや、焦電効果により温度変化を検知する赤外光センサ等が利用できる。
非接触温度検出素子81は、コイル71と対向している加熱ローラ2の表面の第1検出位置81Aと、加熱ローラ2の回転方向で第1検出位置81Aの下流側であってニップ直前に位置する第2検出位置81Bの温度を検出する。非接触温度検出素子82は、コイル72と対向している加熱ローラ2の表面の第1検出位置82Aと、加熱ローラ2の回転方向で第1検出位置82Aの下流であってニップ直前に位置する第2検出位置82Bの温度を検出する。非接触温度検出素子83は、コイル73と対向している加熱ローラ2の表面の第1検出位置83Aと、加熱ローラ2の回転方向で第1検出位置83Aの下流であってニップ直前に位置する第2検出位置83Bの温度を検出する。
非接触温度検出素子84は、コイル71とコイル72の継ぎ目と対向している加熱ローラ2の表面の第1検出位置84Aと、加熱ローラ2の回転方向で第1検出位置84Aの下流であってニップ直前に位置する第2検出位置84Bの温度を検出する。非接触温度検出素子85は、コイル71とコイル73の継ぎ目と対向している加熱ローラ2の表面の第1検出位置85Aと、加熱ローラ2の回転方向で第1検出位置85Aの下流であってニップ直前に位置する第2検出位置85Bの温度を検出する。
このように、温度検出機構8は、加熱ローラ2の軸方向の温度差を検知するために第1検出位置81A〜85Aの温度を検出し、また、加熱ローラ2の回転方向の温度差を検知するために第1検出位置81A〜85Aに対応する第2温度検出箇所81B〜85Bの温度を検出する。
なお、本実施の形態において、温度検出機構8は、1つの素子で2ヶ所以上の温度を検出できる非温度検出素子を、加熱ローラ2の軸方向に5つ配置する例について説明するが、本発明はこれに限られず、例えば、検出箇所に応じた検出素子を用いてもよい。
本実施の形態のような非接触温度検出素子を利用する場合は、誘導加熱装置7が有する各コイルの中央と、それぞれのコイルの継ぎ目と対向する位置に配置されることが好ましく、誘導加熱装置7が有するコイルの個数をCX、温度検出機構8の有する非接触温度検出素子の個数をSYとすると、CX≦SY≦2CX−1であることが好ましい。
また、図2に示すとおり、メインCPU20は、IHコントローラ21、励磁回路25、温度検知回路26、モータ駆動回路27、定着モータ28、表示部29、タイマ30、RAM31、ROM32、NVRAM33、電源34と接続されている。
メインCPU20は、定着装置1の定着動作を統括する。
IHコントローラ21は、第1,第2,第3のIH制御部22,23,24を含み、温度検知回路26から入力される温度情報に基づき、熱ローラの表面を所定の温度にするような駆動信号を励磁回路25に出力し、コイル71,72,73に所定の電力を供給する。すなわち、IHコントローラ21は、コイル71,72,73にそれぞれ独立して電力を供給できる制御部である第1,第2,第3のIH制御部22,23,24を含む。
第1のIH制御部22は、温度検知回路26を介して、少なくとも非接触温度検出素子81,84,85により検出される温度情報が入力され、コイル71に所定の電力を供給するための駆動信号を励磁回路25に出力する。
第2のIH制御部23は、温度検知回路26を介して、少なくとも非接触温度検出素子82,84により検出される温度情報が入力され、コイル72に所定の電力を供給するための駆動信号SG2を励磁回路25に出力する。
第3のIH制御部24は、温度検知回路26を介して、少なくとも非接触温度検出素子83,85により検出される温度情報が入力され、コイル73に所定の電力を供給するための駆動信号SG3を励磁回路25に出力する。
なお、第1のIH制御部22は、実行される温度制御(後に説明する)に応じて、駆動信号SG2,SG3を出力できる。
すなわち、IHコントローラ21の第1,第2,第3のIH制御部22,23,24は、それぞれ、温度検知回路26から出力される加熱ローラ2の温度情報に基づき、加熱ローラ2の温度が定着に必要な定着温度T1となるように、所定の電力を供給できる。
励磁回路25は、IHコントローラ21の第1,第2,第3のIH制御部22,23,24のそれぞれから出力される励磁信号SG1〜SG3に応じて、所定の電力をコイル71〜73に供給する。詳細に説明すると、励磁回路25は、IHコントローラ21から駆動周波数である駆動信号SG1が出力されると、駆動周波数に応じた所定の大きさの電力をコイル71に出力し、駆動信号SG2が出力されると、駆動周波数に応じた所定の大きさの電力をコイル72に出力し、駆動信号SG3が出力されると、駆動周波数に応じた所定の大きさの電力をコイル73に出力する。
これにより各コイル71〜73は所定の加熱力である磁束を発生する。この加熱力は、加熱ローラ2に渦電流を発生させる基になる磁束の大きさであって、各コイル71〜73に供給される電力の大きさにより決定される。例えば用紙が加熱ローラ2の中央部を通過する場合、コイル71を励磁させる所定の電力を出力し、用紙が加熱ローラ2の中央部および端部を通過する場合は、コイル71〜73を励磁させる所定の電力を出力する。
温度検知回路26は、非接触温度検出素子81〜85と接続され、検出された加熱ローラ2の温度情報をIHコントローラ21に出力する。
なお、本実施の形態においては、非接触温度検出素子81により検出される第1検出位置81Aの温度情報を第1の温度情報N1、第2検出位置81Bの温度情報を第2の温度情報M1として以下説明する。なお、温度検知回路26は、他の非接触温度検出素子82〜85からの第1検出位置82A〜85Aの温度情報である第1の温度情報N2〜N5、および、第2検出位置82B〜85Bの温度情報である第2の温度情報M2〜M5を出力できる。
モータ駆動回路27は、加熱ローラ2を回転させる定着モータ28と接続される。
表示部29は、サービスマン点検モードを表示し、加熱ローラ2のクリーニング・交換や、温度検出機構8のクリーニングを知らせる。
タイマ30は、電源がONされてからの経過時間を検出する。例えば、ウォーミングアップに要するウォーミングアップ時間W/UTを検出できる。
RAM31は、タイマ30で検出された所定の情報を一時的に保持する。ROM32は、例えばイニシャルプログラムや、固定データを予め記憶する。NVRAM33は、格納されている情報を装置の電源がOFFされても記憶する。
また、IHコントローラ21は、RAM35とROM36と接続されている。RAM35は、差分温度情報G1,H1等の情報を一時的に保持する。ROM36は、テーブルTB1〜4を記憶する。
次に、IHコントローラ21の温度制御について説明する。
第1,第2,第3のIH制御部22,23,24は、テーブルTB1〜TB4を参照して、温度検出機構8からの検出温度情報に基づき、加熱ローラ2の軸方向および回転方向において、温度差を最小にできる温度制御を実行する。
第1,第2,第3のIH制御部22,23,24は、ウォーミングアップ時において加熱ローラ2の表面温度を定着のための設定温度T1まで迅速に上昇させるための(1)ウォーミングアップ制御と、加熱ローラ2の回転方向の温度差を最小にするための(2)回転方向温度制御と、加熱ローラ2の軸方向の温度差を最小にするための(3)軸方向温度制御とを実行する。
(1)ウォーミングアップ制御は、コイル71〜73と対向している加熱ローラ2の表面の温度を検出する非接触温度検出素子81〜83からの温度情報に基づいて制御される。
例えば、第1のIH制御部22は、非接触温度検出素子81により検出される第1検出位置81Aの温度情報(第1の温度情報N1)に基づき、テーブルTB1に規定されているコイル7Aに出力するための電力の大きさ、すなわち、駆動信号SG1である駆動周波数F1を励磁回路25に出力する。
同様にして、第2のIH制御部23は、第1検出位置82Aの第1の温度情報N2に基づき、駆動信号SG2である駆動周波数F1を励磁回路25に出力する。また、第3のIH制御部24は、第1検出位置83Aの第1の温度情報N3に基づき、駆動信号SG3である駆動周波数F1を励磁回路25に出力する。
詳細に説明すると、テーブルTB1は、図3に示すように加熱ローラ2の表面温度を定着温度T1に維持するため、加熱ローラ2の表面温度、すなわち温度検出機構8からの温度情報に基づき決定される駆動周波数F1が規定されている。この駆動周波数F1は、加熱ローラ2の表面温度がT1に近づくに従って小さくなる。
また、テーブルTB1は、加熱ローラ2の表面温度がT1よりも高くなり過ぎると、コイル71〜73のそれぞれに供給される電力を停止する判断情報も有する。すなわち、IHコントローラ21は、励磁回路25内の発振回路を停止するあるいは駆動回路25に駆動信号を出力しない等を実行し、コイル71〜73のそれぞれに供給される電力を停止できる。
(2)回転方向温度制御は、加熱ローラ2の外周面のうち温度が高い部分である第1検出位置81A〜85Aにおいて検出される第1の温度情報N1〜N5と、ニップ部の直前である第2検出位置81B〜85Bにおいて検出される第2の温度情報M1〜M5と、それぞれの差分温度情報G1〜G5に基づいて制御される。
例えば、第1のIH制御部22は、非接触温度検出素子81により検出される第1検出位置81Aの第1の温度情報N1と第2の温度情報M1の差分温度情報G1を算出し、第1,第2の差分範囲GA,GBと比較する。
詳細に説明すると、差分温度情報G1は、第1の差分範囲GA以上である場合、非温度検出素子81のクリーニング・交換、あるいは加熱ローラ2のクリ−ニング・交換が表示部29に表示される。また、差分温度情報G1は、第2の差分範囲GB以内である場合、回転方向の温度差は微小であって加熱ローラ2は回転方向に均一な温度を有すると判断される。さらに、差分温度情報G1は、第1の差分範囲GAより小さく第2の差分範囲GBより大きい場合、回転方向に温度差があると判断される。
第1のIH制御部22は、差分温度情報G1が、第1の差分範囲GA以上である場合、コイル71に供給される電力を停止し、第1の差分範囲GAより小さく第2の差分範囲GBより大きい場合、規定される所定の駆動周波数F2を駆動回路25に出力する。なお、駆動周波数F2は、差分温度情報G1の値に応じてテーブルTB2に規定されている。
なお、他の非接触温度検出素子82〜85における、第1の温度情報N1〜N5と第2の温度情報M1〜M5との差分温度情報G2〜G5も、第1,第2の差分範囲GA,GBと比較されて、回転方向温度制御が施される。
また、第1のIH制御部22は、コイル71の端部における温度情報である非接触温度検出素子84,85に基づく差分温度情報G4,G5を算出し、第1,第2の差分範囲GA,GBと比較する。なお、第1のIH制御部22は、差分温度情報G4に基づく比較結果に応じて、駆動信号SG1,SG2を出力でき、差分温度情報G5に基づく比較結果に応じて、駆動信号SG1,SG3を出力できる。
同様に、第2のIH制御部23は、差分温度情報G2を算出し、差分温度情報G2を第1,第2の差分範囲GA,GBと比較し、励磁回路25に駆動信号SG2を出力できる。また、第3のIH制御部24は、差分温度情報G3を算出し、差分温度情報G3を第1,第2の差分範囲GA,GBと比較し、励磁回路25に駆動信号SG3を出力できる。
また、回転方向温度制御は、差分温度情報G1〜G3だけに基づいて実行されてもよい。
(3)軸方向温度制御は、(31)第1の軸方向温度制御と、(32)第2の軸方向温度制御を有する。
(31)第1の軸方向の温度制御は、上に説明したウォーミングアップ制御で利用したテーブルTB1を利用し、コイル71〜73毎の加熱ローラ2の表面の温度を検出する非接触温度検出素子81〜83からの第1の温度情報に基づいて、加熱ローラ2の温度を定着温度T1に維持するための制御である。
(32)第2の軸方向温度制御は、定着動作により所定のサイズの定着用紙が通過した際、定着用紙が通過した領域(中央)と通過しない領域(端部)との間に生じる温度差を最小にするための温度制御である。
さらに、第2の軸方向の温度制御は、隣り合うコイル間の温度差を最小にするために、(321)コイルセンターモードと(322)コイル継ぎ目モードを有する。
図4は、このコイルセンターモードを説明するための参考図である。
(321)コイルセンターモードは、コイルの中央部と対向している加熱ローラ2の表面温度の検出情報に基づいて、差分温度情報H1(H2)の値に応じて規定される駆動周波数F3が設定されるテーブルTB3を利用して、隣り合うコイル間の温度制御を実行する。すなわち、コイルセンターモードは、コイル71〜73と対向している加熱ローラ2の表面の温度を検出する非接触温度検出素子81〜83からの第1の温度情報N1〜N3に基づいて制御される。
例えば、第1のIH制御部22は、第1検出位置81Aで検出される第1の温度情報N1と、第1検出位置82Aで検出される第1の温度情報N2の差分温度情報H1を算出し、テーブルTB3を参照して、差分温度情報H1の値に応じた駆動周波数F3を出力する。すなわち、第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1,N2を比較し、温度が高い方の検出箇所に対応するコイルに供給される電力を停止し、温度が低い方の検出箇所に対応するコイルにテーブルTB3の駆動周波数F3に基づく電力を供給する。
よって、第1の温度情報N1>N2である場合、第1のIH制御部22は、コイル71に供給される電力を停止し、コイル72に対応する発振回路を駆動するため駆動周波数F3を出力し、コイル72に電力を供給する。また、第1の温度情報N1<N2である場合は、逆に、コイル72に供給される電力を停止し、コイル71に対応する発振回路を駆動するため駆動周波数F3を出力し、コイル71に電力を供給する。
同様にして、第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1,N3の差分温度情報H2を算出し、テーブルTB3を参照して、差分温度情報H2の値に応じた駆動周波数F3を出力する。その後の制御は、上に説明する差分温度情報H1に基づく制御と同じであるため、図4を参照することで、省略する。
図5は、このコイル継ぎ目モードを説明するための参考図である。
(322)コイル継ぎ目モードは、コイル間の継ぎ目と対向している加熱ローラ2の表面温度の検出情報に基づいて、差分温度情報H3(後に説明するH4〜H6を含む)の値に応じて規定されている駆動周波数F4が設定されるテーブルTB4を利用して、隣り合うコイル間の温度制御を実行する。すなわち、コイル継ぎ目モードは、非接触温度検出素子81〜85からの第1の温度情報N1〜N5に基づいて制御される。
例えば、第1のIH制御部22は、第1検出位置81Aで検出される第1の温度情報N1と、第1検出位置84Aで検出される第1の温度情報N4の差分温度情報H3を算出し、テーブルTB4を参照して、差分温度情報H3の値に応じた駆動周波数F4を出力する。
すなわち、第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1,N4のうち、温度が高い方の検出箇所に対応するコイルに供給される電力を停止し、温度が低い方の検出箇所に対応するコイルにテーブルTB4に基づく電力を供給する。
よって、第1の温度情報N1>N4である場合、第1のIH制御部22は、コイル71に供給される電力を停止し、コイル72に対応する発振回路を駆動するため駆動周波数F4を出力し、コイル72に電力を供給する。また、N1<N4である場合は、逆に、コイル72に供給される電力を停止し、コイル71に対応する発振回路を駆動するため駆動周波数F4を出力し、コイル71に電力を供給する。
同様にして、第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1,N5の差分温度情報H4を算出し、テーブルTB4を参照して、差分温度情報H4の値に応じた駆動周波数F4を出力する。その後の制御は、上に説明する差分温度情報H3に基づく制御と同じであるため、図5を参照することで、省略する。
また、同様にして、第2のIH制御部23は、第1の温度情報N2,N4の差分温度情報H5を算出し、テーブルTB4を参照して、差分温度情報H5の値に応じた駆動周波数F4を出力する。その後の制御は、上に説明する差分温度情報H3に基づく制御と同じであるため、図5を参照することで、省略する。
さらに、同様にして、第3のIH制御部24は、第1の温度情報N3,N5の差分温度情報H6を算出し、テーブルTB4を参照して、差分温度情報H6の値に応じた駆動周波数F4を出力する。その後の制御は、上に説明する差分温度情報H3に基づく制御と同じであるため、図5を参照することで、省略する。
次に、本発明の定着装置に組み込まれる加熱装置制御方法について説明する。
図6は、誘導加熱装置7のうち、加熱ローラの軸方向の中央部分を加熱するためのコイル71の加熱制御方法を例に説明する。
図6に示されるとおり、定着装置の電源がONされると(S1)、加熱ローラ2および加圧ローラ3が回転され(S2)、第1のIH制御部22は、励磁回路25にコイル71に対する駆動信号SG1を出力する(S3)。
非接触温度検出素子81は、第1温度検出位置81Aにより検出される第1の温度情報N1を、温度検知回路26を介して、IHコントローラ21に出力する(S4)。
IHコントローラ21の第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1に基づき、上に説明したウォーミングアップ制御を実行する。すなわち、第1のIH制御部22は、テーブルTB1を参照し(S5)、第1の温度情報N1に基づく駆動周波数F1を、コイル71の駆動信号SG1として駆動回路25に出力する(S6)。
非接触温度検出素子81は、再び第1の温度情報N1を、温度検知回路26を介して、IHコントローラ21に出力する(S7)。IHコントローラ21の第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1が、定着温度T1に達したか否かを判断する(S8)。第1の温度情報N1が定着温度T1以上であれば(S8−YES)、上に説明した回転方向温度制御が実行される。
すなわち、非接触温度検出素子81は、第1温度検出位置81Aで検出される第1の温度情報N1と、第2温度検出位置で検出される第2の温度情報M1を、温度検知回路26を介して、IHコントローラ21に出力する(S9)。IHコントローラ21の第1のIH制御部22は、第1の温度情報N1および第2の温度情報M1に基づき、差分温度情報G1を算出する(S10)。
第1のIH制御部22は、算出した差分温度情報G1と第1の差分範囲GAを比較し(S11)、差分温度情報G1が第1の差分範囲GAより小さい場合(S11ーNO)、さらに、差分温度情報G1と第2の差分範囲GBを比較する(S12)。
差分温度情報G1が第1の差分範囲GBより大きい場合(S12ーNO)、第1のIH制御部22は、テーブルTB2を参照し(S13)、差分温度情報G1に基づく駆動周波数F2を、コイル71の駆動信号SG1として駆動回路25に出力する(S14)。そして、ステップS9に戻る。
一方、ステップS8において、非接触温度検出素子81から検出される第1の温度情報N1が定着温度T1に達しない場合(S8−NO)、ウォーミングアップ時間W/UTが経過したか否かが判断される(S15)。第1のIH制御部22は、ウォーミングアップ時間W/UTが経過していない場合(S15−NO)、ステップS4に戻って、再びウォーミングアップ制御を実行する。また、ウォーミングアップ時間W/UTが経過していた場合(S15−YES)、あるは、ステップS11において、差分温度情報G1が第1の差分範囲GA以上である場合(S11−YES)、IHコントローラ21は、コイル71〜73に供給される電力を全て停止し、表示部29に、サービスマン点検モードを表示し、温度検出機構8のクリーニング・交換、あるいは、加熱ローラ2のクリーニング・交換の時期に達したことを知らせる(S16)。
また、ステップS12において、差分温度情報G1が第1の差分範囲GB以下である場合(S12−YES)、回転方向の温度差は微小であって加熱ローラ2は回転方向に均一な温度を有すると判断され、合格信号OK81が出力される(S17)。
なお、本実施の形態においては、非接触温度検出素子81により検出される第1の温度情報N1、第2の温度情報M1について説明したが、本発明は、ステップS3において、コイル71に対する駆動信号SG1が励磁回路25に出力されると同時に、コイル72,73に対する駆動信号SG2,SG3も励磁回路25に出力されている。
ステップS4〜S8と同様に、非接触温度検出素子82,83は、第1の温度情報N2,N3を出力し、第2,3のIH制御部23,24は、第1の温度情報N2,N3が定着温度T1に達するまでウォーミングアップ制御を実行する。
その後、ステップS9〜S14と同様に、接触温度検出素子82〜85は、第1の温度情報N2〜N5,第2の温度情報M2〜M5をそれぞれ出力し、差分温度情報G2〜G5が第2の差分範囲GB以内であって、加熱ローラ2の表面温度が回転方向に均一であると判断されると、それぞれ合格信号OK82〜OK85が出力される。
よって、加熱ローラ2は、軸方向に定着温度T1になるように、また、回転方向においても均一な温度になるように制御される。
次に、図7を用いて、加熱ローラ2の軸方向の中央部分を加熱するためのコイル71の加熱制御方法について、図6に示したつづきを用いて説明する。
IHコントローラ21は、合格信号OK81〜OK85が、全て出力されたか否かが判断され(S18)、全て揃っていない場合、コイルセンターモードを実行する。
すなわち、温度検知回路26は、第1温度検出位置81Aにより検出される第1の温度情報N1を出力する(S19)。第1のIH制御部22は、テーブルTB1を参照し(S20)、第1の温度情報N1に基づく駆動周波数F1の出力があるか否かを判断し(S21)、駆動周波数F1の出力がある場合(S21―YES)、コイル71の駆動信号SG1として駆動回路25に駆動周波数F1を出力する(S22)。
一方、駆動周波数F1の出力の指示がない場合(S21―NO)、加熱ローラ2の表面温度が定着温度T1よりも高くなり過ぎであると判断され、コイル71に供給される電力を停止し(S23)、ステップS19に戻る。
続けて、コイル継ぎ目モードが実行される。非接触温度検出素子81,82は、第1の温度情報N1,N2を、温度検知回路26を介して、IHコントローラ21に出力する(S24)。IHコントローラ21は、第1の温度情報N1,N2が等しくない場合(S25−NO)、差分温度情報H1を算出する(S26)。
第1のIH制御部22は、テーブルTB3を参照し(S27)、ウォーミングアップ時間W/UTが経過していない場合(S28−NO)、差分温度情報H1に基づく駆動周波数F3の出力があるか否かを判断する(S29)。駆動周波数F3の出力がある場合(S29―YES)、コイル71の駆動信号SG1として駆動回路25に駆動周波数F3を出力する(S30)。
一方、駆動周波数F3の出力の指示がない場合(S29―NO)、コイル71に供給される電力を停止し(S31)、ステップS24に戻る。
駆動周波数F3に基づく電力がコイル71に供給された場合、また、ステップS18において合格信号OK81〜OK85が全て出力されている場合(S18−YES)、あるは、ステップS25において第1の温度情報N1,N2が等しい場合(S25−YES)、プリント指示(定着指示)があるか否かが判断され(S32)、プリント指示があれば(S32−YES)、定着動作がスタートされ(S33)、プリント指示がなければ(S32−NO)、待機モードになる(S34)。電源OFFの指示がなければ(S35―NO)、ステップS19に戻る。
なお、本実施の形態においては、非接触温度検出素子81により検出される第1の温度情報N1と、非接触温度検出素子82により検出される第1の温度情報N2について説明したが、本発明は、上に説明したとおり、図4,5に示す組み合わせにおいて、軸方向の温度差を最小に制御できる。
よって、定着用紙が加熱ローラ2の所定の領域と接触する定着動作においても、軸方向に均一な温度が維持できる。
上述のとおり、励磁コイル25は、コイル毎に異なる駆動信号SG1〜SG3を出力することができる。このため、加熱ローラ2の加熱力である電力を、非接触温度からの検出温度情報に基づき、迅速に定着温度T1に復活でき、ウォーミングアップ時間が短縮できる。また、所定のテーブルTB1〜TB4を用いて、検出温度情報に応じて誘導加熱コイルをON,OFFでき、ONする場合であっても所定の駆動周波数F1〜F4を供給する。このため、加熱ローラ2の軸方向におけるバラツキを抑制し、軸方向に一定の温度を維持するように制御できる。さらに、プリント動作時において定着用紙により熱が奪われる場合であっても、付近の非接触温度検知素子から検出される温度情報同士を比較し、軸方向における温度の差を最小にできる。このため、高温・低温オフセットにより定着用紙の画像に発生する主走査線方向の不良を防止できる。
また、ウォーミングアップ時に、加熱ローラ2を回転させながら軸方向の温度を定着温度に上昇するとともに、回転方向に異なる位相で配置される第1,2検出位置A,Bからの温度情報に基づき温度制御を実行することにより、回転方向の温度を均一にすることができる。これにより、定着時に使用されるニップ部の温度とみなせる温度を検出することができ、回転方向における温度差が最小になるため、高速機(1分間に多数枚の複写をする複写機やプリンタ等)においても良好な定着画像が得られる。
さらに、非接触温度検出機構を利用する本発明は、接触タイプの温度検出機構により加熱ローラ2の表面に形成される虞のある摺接跡の発生を防止できるため、加熱ローラ2のライフを延長できる。
なお、本実施の形態においては、5つの非接触温度検出素子を用いて説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、コイル72,73が電気的に直列に接続され、同時に制御される場合、少なくとも非接触温度検出素子81,82が配置されていればよい。
なお、本実施の形態のおいては、加圧ローラから加熱ローラに対して圧力を与える構成であるが、本発明はこれに限らず、加熱ローラから加圧ローラに圧力を与える構成であってもよい。
1・・・定着装置、2・・・加熱部材(ヒートローラ)、3・・・加圧部材(プレスローラ)、4・・・加圧スプリング、5・・・剥離爪、6・・・クリーニングローラ、7・・・誘導加熱装置、8・・・温度検出機構、9・・・サーモスタット、1,72,73・・・誘導加熱用コイル、81,82,83,84,85・・・非接触温度検出素子。