JP2005272690A - 生体適合性をもつ多孔質体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均分子量が30000〜400000であるセリシンからなり、50%圧縮後の回復率が10〜100%であり、好ましくは細孔径が0.1〜1000μmであり、空孔率が70〜99%である多孔質体。
【選択図】なし
Description
本発明の多孔質体は、細孔径が0.1〜1000μmであることが好ましく、また空孔率が70〜99%であることが好ましい。
本発明の多孔質体は必要に応じ機能性物質を固定化した状態で存在させることができる。
本発明は、第2に、平均分子量が30000〜400000であるセリシンを含む水溶液をゲル化後、凍結し、次いで融解させることを特徴とする、多孔質体の製造方法である。
多孔質体を構成するセリシンの平均分子量は、30000〜400000であることが要求される。平均分子量が30000未満であると、実用的強度を有するセリシン多孔質体を構成することができない。平均分子量が400000を越えると水に溶け難く操作性が悪い。より好ましい平均分子量は40000〜200000であり、さらに好ましくは60000〜100000である。なお、本発明におけるセリシンの分子量あるいは平均分子量は、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により測定した値である。本発明において用いられるセリシンは、分子量が30000〜400000のセリシンが70〜100%を占めることが好ましく、より好ましくは95〜100%、さらに好ましくは99〜100%である。またセリシンの純度は、90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%、さらに好ましく99〜100%である。ここで、純度とは、分離精製して得られるセリシン水溶液に含まれる固形分、あるいは乾燥して得られる固形分に占めるセリシンの割合をいう。これら固形分は、フィブロインなどの蛋白質やアミノ酸、糖、脂質、核酸、色素などの繭あるいは蚕由来成分の他、塩などの不純物をわずかに含むものである。
空孔率(%)=[(A−B)/A]×100
本発明の多孔質体は、平均分子量が30000〜400000であるセリシンを含む水溶液から、セリシンを多孔質状に析出させることにより製造することができる。好ましい態様によれば、セリシン水溶液をゲル化後、凍結し、次いで融解させる方法によることができる。
セリシン水溶液のゲル化に要する時間は、セリシン水溶液が十分にゲル化する時間であり、セリシン水溶液の濃度や液量、容器の形状や材質、冷却温度や冷却方法(空気中、冷媒中など)などによって異なる。例えば、熱水抽出により得られた5重量%のセリシン水溶液を、プラスチック容器中、室温(約25℃)に放置して冷却しゲル化させる場合、直径1cm、高さ10cmの円柱形(約8cm3)にセリシン水溶液をゲル化させるのに要する時間は0.5〜1時間であり、直径9cm、高さ15cmの円柱形(約954cm3)では1〜2時間であり、短辺10cm、長辺100cm、高さ1cmのシート状(1000cm3)では0.5〜1時間であるが、それを越える時間放置しても、特段の問題は生じない。
凍結の際には、ドライアイス−メチルアルコール、液体窒素など公知の冷却剤を用いてもよい。
凍結の際の冷却速度を制御することにより、前記したように、多孔質体の細孔径を調整することができる。例えば、液体窒素などを用いて急速冷却すると、−30℃のフリーザーを用いて緩慢冷却した場合よりも細孔径の小さなセリシン多孔質体を得ることができる。
本発明の多孔質体は、柔軟でありながらも、弾性に富み、堅く握りしめても、一時的には変形するが、圧力から解放されると形状を回復することができる。さらに、水への溶解性が低いなど、機能性材料として実用に耐え得る強度を有したものである。
本発明の多孔質体は、凍結などのストレスにより起こり得る機能性物質の失活を抑制することができるため、例えば凍結感受性の高い酵素を固定させる場合にも有効である。
なお、得られたセリシンの分子量をSDS−PAGEにより測定した結果、平均分子量は約100000であった。
多孔質体をpH7.0の50mM燐酸緩衝液0.5mlに浸漬して、4℃、25℃、37℃、50℃、60℃、80℃の各温度で1時間静置した。浸漬液を0.45μmシリンジフィルター(旭テクノグラス(株)製)でろ過して夾雑物を除いた後、BCA法(PIERCE社製、Micro BCATM Protein Assay Reagent)により、浸漬液の蛋白質濃度を測定した。加熱により多孔質体を完全溶解させたときの蛋白質濃度を溶解率100%として、多孔質体の溶解率を求めた。
多孔質体をpH1.7、pH4.5の50mM塩酸緩衝液0.5mlに、また、pH6.0、pH7.0、pH8.0の50mM燐酸緩衝液0.5mlにそれぞれ浸漬して、25℃で1時間静置した。浸漬液を0.45μmシリンジフィルター(旭テクノガラス(株)製)でろ過して夾雑物を除いた後、BCA法(PIERCE社製、Micro BCATM Protein Assay Reagent)により、浸漬液の蛋白質濃度を測定した。加熱により多孔質体を完全溶解させたときの蛋白質濃度を溶解率100%として、多孔質体の溶解率を求めた。
得られた多孔質体について、実施例1と同様にして、溶解性(温度安定性、pH安定性)を評価した結果を表1および表2に示す。
得られた多孔質体をエタノールに浸漬し、細孔部にエタノールを保持した状態の多孔質体について、50%圧縮後の回復率を評価した結果を表3に示す。評価方法は次の通りである。
半径2.4cm、高さ3.0cmの円柱形の多孔質体を採取し、オートグラフを用いて、圧縮速度30mm/minで高さ比50%まで圧縮した後、同じ速度で徐圧する。徐圧後に多孔質体の高さを測定し(このときの高さをHとする)、次式により回復率を求めた。
回復率(%)=[(H−1.5)/1.5]×100
蛹を除去した家蚕繭1kgを、0.2重量%炭酸ナトリウム水溶液(pH11〜12)50リットルに浸漬し、95℃で2時間加熱処理することにより、セリシンを加水分解させ、抽出した(以下、セリシン加水分解物を、単に、セリシンと称する場合もある)。得られた抽出液を平均孔径0.2μmのフィルターでろ液して夾雑物を除去した後、ろ液を逆浸透膜により脱塩し、約0.2重量%の無色透明セリシン水溶液を得た。次いで、この水溶液をエバポレーターを用いてセリシン濃度が約2重量%になるまで濃縮した後、凍結乾燥処理を行って、セリシン加水分解物の粉体100gを得た。なお、得られたセリシン加水分解物の分子量をSDS−PAGEにより測定した結果、平均分子量は約20000であった。
すなわち、実施例2で得られた約2.5重量%のセリシン水溶液1.0mlに、マッシュルーム由来チロシナーゼ粉体(Sigma社製)100unitsを混合したものを空カラム(2.5ml)に注ぎ、氷水中で1時間静置して混合水溶液をゲル化させた後、−30℃で15時間静置して混合ゲルを凍結させた。次いで4℃で6時間静置して融解させ、チロシナーゼ固定多孔質体が充填されたカラムを得た。得られたカラムを、pH7.0の50mM燐酸緩衝液10mlで洗浄し、未固定のチロシナーゼを除去し、評価試験1、2に供した。
カラムに、基質として0.1重量%D−チロシン水溶液1.0mlをカラム上部より添加し、室温(約25℃)で1時間反応させた後、カラム上部より加圧して、カラム下部より反応液を回収した。
比較対照として、チロシナーゼ100unitsをpH7.0の50mM燐酸緩衝液1.0mlに溶解したものを、0.1重量%D−チロシン水溶液1.0mlに添加し、室温で1時間反応させた。
チロシナーゼの活性は、生成したドーパキノンの量を475nmにおける吸光度を測定することにより求めた。結果を表4に示す。
カラムに、基質として0.1重量%D−チロシン水溶液100mlをカラム上部より流速1.0ml/minで浸透させ、カラム下部より反応液を5mlずつ回収した。酵素反応は室温(約25℃)にて行った。
透過開始〜5ml、45〜50ml、95〜100mlで回収された反応液各5mlについて、評価試験1と同様にしてチロシナーゼの活性を求め、透過開始直後の活性を100%として、活性維持率を求めた。結果を表5に示す。
Claims (5)
- 多孔質体の骨格構成成分が平均分子量が30000〜400000であるセリシンからなり、50%圧縮後の回復率が10〜100%であることを特徴とする多孔質体。
- 細孔径が0.1〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体。
- 空孔率が70〜99%であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質体。
- 機能性物質が固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質体。
- 平均分子量が30000〜400000であるセリシンを含む水溶液をゲル化後、凍結し、次いで融解させることを特徴とする多孔質体の製造方法。
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