JP4970770B2 - 対細胞非接着性材料 - Google Patents
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例えば、その一つとして、絹糸より抽出し、成形された絹タンパク質があるが、これは生体適合性を有し、且つ成形が容易な材料であることから、創傷被覆材など医療用素材として注目されている(特許文献1参照)。
絹タンパク質は、このような血清の存在下では、細胞接着性が強くなり生体内で他の細胞組織と強い反応が生じるために、それと接する組織との接着や癒着が惹起される可能性が高い。
そのため、生体環境下で癒着を防止しなければならない場合にはその使用は極めて困難であり、血液中の血清が介在する状況下で癒着を防止する生体材が求められていた。
すなわち、生体適合性を備え、且つ成形も容易で、更に血清の介在下においても対細胞非接着性を有する材料を提供することである。
なお、上記『蜂タンパク質』は吐出する以外にも蜂が何らかの方法で生成するタンパク質をも含むものである。
従って、蜂の巣をこれらのハロゲン化有機溶媒を含む処理液に加えて(すなわち浸して)攪拌し、可溶成分である蜂タンパク質とそれ以外の不溶成分とに分離することで、蜂の巣に含まれる蜂タンパク質のみを抽出することが出来る。
何故なら4℃以下では分解が殆ど生じなく、また0℃より温度を下げてマイナス温度とすると溶解速度が低下するようになるからである。
そのため、簡単な具体的な操作としては、例えばトリフロロ酢酸等への溶解においては、氷冷して分解を防ぐ方法を採用することが好ましい。
次にその形態の形成法の概略を述べる。
〔フィルム状形成法〕
本発明において蜂タンパク質をフィルム状に薄膜化するためには、上述したような不純物を除去した後の高濃度のタンパク質を含むハロゲン化有機溶液を平板上に流延し、固化した蜂タンパク質のフィルムを常温下で風乾、又は常温減圧下で乾燥することによって可能となる。
本発明で蜂タンパク質を粉体状に形成するには、不純物を除去した後の高濃度の蜂タンパク質を含むハロゲン化有機溶媒に、蜂タンパク質の溶解性を低下させるための沈殿剤を加えて蜂タンパク質を不溶化(凝固)させた後、フィルターを通して回収後、乾燥することによって可能となる。
沈殿剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤や、エーテル等が採用される。
乾燥方法としては、常温下で風乾する方法、又は常温減圧下で乾燥する方法、又は凍結乾燥し、粉砕により形成する方法がある。
或いは、粉体状形成の他の法として、後述するゲル状形成法と同様な方法で作製したゲルを凍結乾燥し、粉砕することによっても得ることができる。
本発明で蜂タンパク質を繊維状に形成するには、不純物を除去した後の高濃度の蜂タンパク質を含むハロゲン化有機溶媒を、ノズルから凝固浴に射出して糸状にし、強度を上げるために延伸と熱処理を加えることにより可能となる。
なお、凝固浴にはメタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤やアセトンが用いられる。
本発明で蜂タンパク質をゲル状物質に形成するには、ハロゲン化有機溶媒により抽出生成した蜂タンパク質を、Li−Br等よりなる中性塩水溶液に再溶解し、蒸留水中で放置(透析)することにより、ゲル化させる方法がある。
本発明で蜂タンパク質を3次元多孔質状(いわゆるスポンジ状)に形成するには、ハロゲン化有機溶媒により抽出精製した蜂タンパク質を、Li−Br等よりなる中性塩水溶液に再溶解し、蒸留水中で放置(透析)する。
そして放置することにより生成されるゲル化状物質を、今度は凍結し、その後、融解することにより3次元多孔質状物質を得る。
或いは繊維状に形成した蜂タンパク質を編成又は織成して布物質を作成し、それを用いる。
或いは、耐細胞接着性を有する他の生体材と組み合わせることにより、細胞の配向・成長を制御した材料創製のための基礎材料として利用等が考えられる。
蜂タンパク質より強制的に抽出した水溶液と、絹タンパク質より同一条件下で抽出した水溶液を用い、水溶液濃度を変化させながら細胞の増殖量比較を行ったところ、細胞は蜂タンパク質の水溶液及び絹タンパク質水溶液の濃度とは無関係にほぼ一定の増殖量を示し、かつ蜂タンパク質水溶液と、絹タンパク質水溶液双方に明確な差が発生しなかった。
すなわち、蜂タンパク質の細胞に対する毒性は、絹タンパク質の細胞に対する毒性と同程度であり、蜂タンパク質は絹タンパク質と同じく生体適合性を有する(詳細については、実施例1参照)。
蜂タンパク質及び絹タンパク質を、細胞溶液内で静置した後、および血清を含む細胞溶液内で静置した後の、タンパク質表面に付着した細胞の数を比較した。
細胞溶液内で静置した後の蜂タンパク質、及び絹タンパク質表面に付着した細胞数に差は無く、蜂タンパク質は、絹タンパク質と同レベルの対細胞接着性を示す。
また、血清を含む細胞溶液内で静置した絹タンパク質表面への付着細胞数は、細胞溶液のみで静置した付着細胞数に比べ大幅に増加し、血清介在下で対細胞接着性が増加する。
これに比較して、血清を含む細胞溶液内で静置した蜂タンパク質表面への付着細胞数は、細胞溶液のみで静置した付着細胞数に比べ、大幅に減少する。
すなわち、蜂タンパク質は血清介在下では、高い対細胞非接着性を示す(詳細については、実施例1参照)。
〔蜂タンパク質フィルムの生成〕
まずヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)の水和物を調製した。
このHFIPの水和物にスズメバチの幼虫が吐糸した繭を加え、室温にて一昼夜攪拌し、蜂タンパク質を溶解させた(200mgの巣を10mlのHFIPの水和物に溶解した)。
上記で得た蜂タンパク質のHFIP溶液をシャーレに流延し、室温にて1日間静置して溶媒を蒸発させることで、蜂タンパク質フィルム(1)が得られた。
精錬済みの家蚕絹糸(絹タンパク質)1gを濃度9mol/L の臭化リチウム水溶液15mlに40℃で半日間攪拌して溶解した。
溶解後、吸引濾過により不溶成分を取り除き、更にまた蒸留水中で透析後臭化リチウムを取り除くことにより、2wt%絹タンパク質水溶液を得た。
この水溶液を4倍に希釈した後シャーレに流延し、40℃にて2日間静置して乾燥させ、絹タンパク質のフィルムを得た。
このフィルムを水に対して不溶性にするため、メタノール中に1時間浸漬し、その後風乾することにより絹タンパク質フィルム(1)を得た。
因みに、絹タンパク質は蜂タンパク質に比べアミノ酸組成が異なるため、生体材として使用する為には多くの工程が必要であり、蜂タンパク質の成形容易性が確認される。
上記のようにして得られた蜂タンパク質フィルム(1)と絹タンパク質フィルム(2)を121℃の熱水中に1時間浸漬して、抽出して得た蜂タンパク質水溶液(1)、及び絹タンパク質水溶液(2)について、水で希釈することにより濃度を変化させ、それぞれの溶液の濃度での繊維芽細胞による細胞増殖の評価を行った。
なお、生体適合性が無い(すなわち細胞毒性を有する)ことが知られているヒドロキシ尿素溶液(HU)も併せて、比較対照とした。
ヒドロキシ尿素が有する細胞毒性により、細胞増殖が抑制されることが確認された。
これに対して、生体適合性を有する絹タンパク質水溶液(2)は、水溶液濃度にかかわらず、ほぼ一定の細胞増殖量を示し、細胞毒性がないことが確認された。
一方、蜂タンパク質水溶液(1)も、水溶液濃度にかかわらず、ほぼ一定の細胞増殖量を示し、絹タンパク質と同様に細胞毒性がないことが確認された。
蜂タンパク質は絹タンパク質と同様生体適合性を有する(図2参照)。
蜂タンパク質と絹タンパク質の、対細胞非接着性、及び血清介在下での対細胞非接着性の効果を確認した。
細胞溶液として、
溶液(1):1×105cells/mlの繊維芽細胞溶液
溶液(2):10%の血清を含む1×105cells/mlの繊維芽細胞溶液
を使用した。
そして37℃で2時間静置後、フィルム表面を生理的緩衝溶液で洗浄して未付着細胞を除去し、フィルム表面に接着した細胞の数を計測した。
このように血清が存在しない状態では、蜂タンパク質は、絹タンパク質と同程度の対細胞接着性を有することが確認された。
このように、絹タンパク質は、血清介在下では対細胞非接着性が低下することが確認された。
このように、蜂タンパク質は、血清介在下では、対細胞非接着性がさらに向上することが確認された(図3参照)。
繊維状タンパク質の持つ特有の性質を利用して、人工血管等血清が介在する使用生体材への適用が可能であり、且つ成形も容易であることから、コスト的に有利であり産業上の利用価値も極めて大である。
Claims (11)
- 蜂の幼虫が吐出するタンパク質よりなる対細胞非接着性材料。
- 蜂の幼虫が吐出するタンパク質をハロゲン化有機溶媒中で溶解させ、抽出したものであることを特徴とする請求項1記載の対細胞非接着性材料。
- 前記ハロゲン化有機溶媒が、ジクロロ酢酸、トリフロロ酢酸、又はヘキサフロロイソプロパノールであることを特徴とする請求項2記載の対細胞非接着性材料。
- ハロゲン化有機溶媒中で溶解させる温度が4℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3記載の対細胞非接着性材料。
- フィルム状に形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の対細胞非接着性材料。
- 粒子状に形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の対細胞非接着性材料。
- 繊維状に形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の対細胞非接着性材料。
- ゲル状に形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の対細胞非接着性材料。
- 3次元多孔質状に形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の対細胞非接着性材料。
- 癒着防止膜又は人工血管として用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の対細胞非接着性材料。
- 血清の存在下で使用することを特徴とする請求項1乃至請求項10記載の対細胞非接着性材料。
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