JP2014221011A - 細胞培養用支持体の製造方法、細胞培養用支持体および細胞培養方法 - Google Patents

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Hisatoshi Kobayashi
尚俊 小林
靖 玉田
Yasushi Tamada
靖 玉田
堂彦 寺田
Dohiko Terada
堂彦 寺田
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Abstract

【課題】化学修飾することなく再生フィブロイン材料の表面の性質を制御することが可能な細胞培養用支持体の製造方法、および細胞培養用支持体を提供する。また、このような細胞培養用支持体を用いた細胞培養方法を提供する。
【解決手段】細胞の培養に用いる細胞培養用支持体の製造方法であって、フィブロイン水溶液1Lを塗布し乾燥させてシート状の成形体1を得る工程と、85体積%以上のアルコール水溶液Lに成形体を接触させる工程と、を有する細胞培養用支持体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養用支持体の製造方法、細胞培養用支持体および細胞培養方法に関するものである。
カイコの吐出する繭糸は、フィブロインと呼ばれるタンパク質からなる一対の繊維と、それらを束ねる糊成分であるセリシンと呼ばれるタンパク質から構成されている。繭糸からセリシンを除去して得られる繊維状のフィブロインは、免疫不活性、高い力学強度、生分解性などから優れたバイオマテリアルとして注目を集めている。
フィブロイン繊維は、臭化リチウム溶液に溶解した後、透析して脱塩することでフィブロイン水溶液とすることができる。このフィブロイン水溶液からフィルムやスポンジ、またはナノファイバー等、いわゆる再生フィブロイン材料が作製され、特に生体材料の研究分野においてそれらの有用性が盛んに研究されている。再生フィブロイン材料は、手術用縫合糸として用いられる絹糸と同様に、ヒトの体内において免疫反応を惹起することのない生体適応性を有しており、高い引張強度などの優れた力学的性質と、体内で分解吸収される生分解性を兼ね備えた生体材料であることが知られている。
一般に、フィブロインは細胞接着性を有している材料として認識されており、再生フィブロイン材料についても、細胞を培養するための支持体として利用し、実際に細胞を培養させた実験例がある(例えば、特許文献1,2、非特許文献1〜3参照)。
特開平11−243948号公報 特開平11−253155号公報
Journal of Materials Chemistry, 2012, 22, p.14330. Advanced Materials, 2012, 24, p.2824. Journal of Biomedical Materials Research A, 2011, 98A, p.567.
再生フィブロイン材料の表面(以下、「フィブロイン表面」と略することがある)への細胞の接着形態は、細胞の培養に用いられている市販の細胞培養用ポリスチレン(Tissue Culture PS、TCPS)への接着形態とは異なることも広く知られている。例えば、骨芽細胞は、TCPSの表面では紡錘形に伸長した形態で接着するのに対して、フィブロイン表面では数個から数十個の細胞が凝集塊を形成しながら接着する様子が観察される。
培養する細胞の増殖や分化といった挙動は、細胞が接着する支持体の表面の形状や官能基の種類などに起因する支持体の表面の性質に大きく左右される。しかし、上述のようにフィブロイン表面に対する細胞の接着挙動はTCPS上とは大きく異なることから、フィブロイン表面の性質はTCPSの表面の性質と大きく異なっていると予想される。TCPSを用いた実験により蓄積されてきた一般的な知見を適用し、細胞挙動のコントロールや細胞動態を適切に予測するためにも、再生フィブロイン材料の表面の性質をTCPSと同様の接着性を示すように変更する技術が求められている。
また、培養する細胞の増殖や分化といった挙動は、当然ながら細胞の種類によって大きく異なる。多数の種類の細胞培養を好適に実施するためには、培養する細胞の種類に応じて、適切な表面性質の支持体を選択する必要がある。このような要求に対し、再生フィブロイン材料の表面を化学修飾し、フィブロイン表面への細胞の接着性を制御することは可能であるが、化学修飾に用いる化合物によっては、再生フィブロイン材料の臨床応用が困難となり、応用の範囲が狭くなりやすい。
そのため、再生フィブロイン材料の表面を化学修飾することなく、フィブロイン表面の性質を制御することができる技術が求められていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、化学修飾することなく再生フィブロイン材料の表面の性質を制御することが可能な細胞培養用支持体の製造方法、および細胞培養用支持体を提供することを目的とする。また、このような細胞培養用支持体を用いた細胞培養方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、細胞の培養に用いる細胞培養用支持体の製造方法であって、フィブロイン水溶液を塗布し乾燥させてシート状の成形体を得る工程と、85体積%以上のアルコール水溶液に前記成形体を接触させる工程と、を有する細胞培養用支持体の製造方法を提供する。
また、本発明の一態様は、細胞の培養に用いる細胞培養用支持体であって、水中に溶解したフィブロインを形成材料とし、前記フィブロインの水溶液を塗布し乾燥させたシート状の成形体を、85体積%以上のアルコール水溶液に接触させて得られる細胞培養用支持体を提供する。
また、本発明の一態様は、上述の細胞培養用支持体の表面に、前記細胞培養用支持体に対応した細胞を播種して培養する細胞培養方法を提供する。
本発明によれば、化学修飾することなく再生フィブロイン材料の表面の性質を制御することが可能な細胞培養用支持体の製造方法、および細胞培養用支持体を提供することができる。また、このような細胞培養用支持体を用いた細胞培養方法を提供することができる。
本実施形態の細胞培養用支持体の製造方法を示す工程図である。 各接着時間における細胞形態の観察結果を示す写真である。 各接着時間における細胞形態の観察結果を示す写真である。 各接着時間における細胞形態の観察結果を示す写真である。 各接着時間における細胞形態の観察結果を示す写真である。 各接着時間における細胞形態の観察結果を示す写真である。 各接着時間における細胞形態の観察結果を示す写真である。 骨芽細胞についての増殖曲線である。 繊維芽細胞についての増殖曲線である。 得られた細胞形態のアスペクト比を表すヒストグラムである。 pH6〜9において測定されたζ電位を示すグラフである。
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態に係る細胞培養用支持体の製造方法、細胞培養用支持体および細胞培養方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
(細胞培養用支持体の製造方法、細胞培養用支持体)
本実施形態の細胞培養用支持体の製造方法は、細胞の培養に用いる細胞培養用支持体の製造方法であって、フィブロイン水溶液を塗布し乾燥させてシート状の成形体を得る工程と、85体積%以上のアルコール水溶液に前記成形体を接触させる工程と、を有することとしている。
また、本実施形態の細胞培養用支持体は、細胞の培養に用いる細胞培養用支持体であって、水中に溶解したフィブロインを形成材料とし、前記フィブロインの水溶液を塗布し乾燥させたシート状の成形体を、85体積%以上のアルコール水溶液に接触させて得られるものである。
以下、順に説明する。
図1は、本実施形態の細胞培養用支持体の製造方法を示す工程図である。まず、図1(a)に示すように、フィブロイン水溶液を塗布して乾燥させてシート状の成形体を得る。
フィブロインは、蚕の繭糸からセリシンを除去して得られる繊維状のものを好適に用いることができる。フィブロインは、例えば、細片に切断した繭を塩基性水溶液で煮沸した後、残存する塩基性水溶液とセリシンとを水洗して除去することで得られる。ここで用いる塩基性水溶液としては、フィブロインを過度に溶解させないように低濃度ものを用いる。また、繭からセリシンを除去することが可能であれば、他の方法を採用することもできる。
得られたフィブロインは、水に溶解し水溶液として用いる。フィブロイン水溶液は、例えば、フィブロインを、上記セリシンの除去に用いたものよりも高いpHの塩基性水溶液に溶解した後、得られる溶解液を透析して脱塩することで得られる。
このようにして得られるフィブロイン水溶液1Lを塗布し塗膜1Fを得る。得られた塗膜1Fを乾燥させることで、シート状に成形したフィブロインの成形体1を得ることができる。
ここで、「シート状」とは、成形体の厚みが、厚み方向に直交する二次元方向の広がりと比べて小さくなっている形状のことを指し、厚みが極薄のフィルム状のものから、肉厚の板状のものまでを含む。
フィブロイン水溶液1Lの塗布の方法としては、フィブロイン水溶液をムラなく塗布ことが可能であれば、通常知られた方法を採用することができる。例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、スロットコート法、ダイコート法及びスクリーン印刷法などを挙げることができる。
得られた塗膜の乾燥の方法としては、後述する不溶化処理を阻害せず、また目的とする細胞培養用支持体の劣化を伴わなければ、通常知られた方法を採用することができる。例えば、空気中に放置する風乾、加熱乾燥、真空乾燥などを挙げることができる。これらの乾燥方法の中では風乾が好ましい。また、適宜送風して乾燥を促進させることとしてもよい。
なお、図1(b)に示すように、得られた成形体1は、適宜切削加工を施して小片2としてもよい。
次いで、図1(c)に示すように、得られた成形体1(図では成形体1の小片2)を、85体積%以上のアルコール水溶液Lに接触させる。
図1(a)に示すフィブロイン水溶液1Lに含まれるフィブロインは、結晶性が低く水溶性を有している。そのため、一般に、フィブロイン水溶液から得られた糸やシート等の成形体は、フィブロインの結晶化度を高め、水に対する溶解度を低下させるため、不溶化処理と呼ばれるアルコール処理が施される。
不溶化処理として、一般的には、メタノールやエタノールなどのアルコールを用いて70体積%〜80体積%程度のアルコール水溶液を調製し、このアルコール水溶液に15分〜60分ほど浸漬する処理が行われる。フィブロインは、不溶化処理の際にいかなる濃度のアルコール水溶液を用いたとしても、βシート構造からなるII型結晶を形成し、結晶化度はある平衡的な値まで上昇するといわれている。
しかし、発明者が詳細に検討したところ、用いるアルコール水溶液の濃度によって、不溶化処理後の成形体の表面の性質が異なることが分かった。すなわち、用いるアルコール水溶液の濃度を一般に用いられている濃度よりも高濃度とすることで、不溶化処理後の成形体の表面の性質を制御可能し、球状様の細胞による細胞凝集性をなるべく避け、伸展した細胞形態で培養可能な成形体とすることができることが分かった。
この検討結果を利用して、図1に示す本実施形態の細胞培養用支持体の製造方法においては、85体積%以上のアルコール水溶液Lに、成形体の小片2を接触させて不溶化処理を行う。
アルコール水溶液Lに成形体を接触させることで、フィブロイン水溶液1Lに由来し成形体が内包する水と、アルコール水溶液Lと、の濃度差により生じる浸透圧により、成形体内部の水がしみ出し、成形体内ではフィブロイン同士が接触しやすくなる。フィブロイン同士が接触した部分では、分子間力や水素結合によりフィブロインの結晶化が進行し、その結果、成形体が不溶化すると考えられている。
アルコールとしては、メタノールやエタノールを好適に用いることができる。また、目的とする細胞培養用支持体を用いた細胞の培養や、細胞培養用支持体を生体材料として用いた場合に、悪影響を与えない程度であれば、プロパノール、ブタノール、PEG(ポリエチレングリコール)などのアルコールが少量含まれていてもよい。
アルコール水溶液Lを成形体の小片2に接触させる方法としては、不溶化処理が可能であれば種々の方法を選択することができる。例えば、図1(c)に示すように成形体の小片2をアルコール水溶液Lに浸漬してもよく、成形体の小片2に対し十分量のアルコール水溶液Lを散布または塗布することとしてもよい。
アルコール水溶液Lによる成形体の不溶化処理の時間は、10秒以上5日以下が好ましく、30秒以上2日以下がより好ましい。
アルコール水溶液Lによる成形体の不溶化処理の温度は、−97.8℃(100%メタノールの凝固点)以上78.4℃(100%エタノールの沸点)以下が好ましく、−38℃(エタノール50体積%溶液の凝固点)以上65℃(100%メタノールの沸点)以下がより好ましい。
このように、85体積%以上のアルコール水溶液を用いて、フィブロイン製の成形体の小片2を不溶化することで、球状様の細胞による細胞凝集性をなるべく避け、伸展した細胞形態で培養可能な細胞培養用支持体3を製造することができる。
得られる細胞培養用支持体3は、不溶化処理時のアルコール水溶液の濃度によって表面の性質を制御しているものであり、化学修飾をしているわけではない。そのため、生体への適合性や生分解性などの性質については、フィブロインの性質を有しており、生体材料としても好適なものとなる。
以上のような細胞培養用支持体の製造方法によれば、化学修飾することなく再生フィブロイン材料の表面の性質を制御することが可能となる。
以上のような細胞培養用支持体によれば、化学修飾することなく再生フィブロイン材料の表面の性質が制御されたものとなる。
(細胞培養方法)
本実施形態の細胞培養方法は、上述の細胞培養用支持体の表面に、前記細胞培養用支持体に対応した細胞を播種して培養することとしている。
「細胞培養用支持体に対応した細胞」とは、細胞培養用支持体の製造時の不溶化処理において、アルコール水溶液の濃度を規定した細胞のことである。すなわち、本実施形態の細胞培養方法では、培養する細胞に適した表面の性質となるように不溶化処理された細胞培養用支持体の表面に、細胞を播種して培養する。
以上のような細胞培養方法によれば、目的の細胞に適した表面の性質を有する細胞培養用支持体を選択することで、好適に細胞の培養を行うことができる。細胞培養用支持体は、化学修飾することなく再生フィブロイン材料の表面の性質が制御されたものであるため、培養後に得られる細胞培養用支持体と細胞との複合体を生体材料として用いることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
[実施例]
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[1.細胞培養実験]
(フィブロイン水溶液の作製)
細片に切断した繭を0.02mol/Lの炭酸ナトリウム中で30分間煮沸(95〜98℃)した後、熱水で洗浄してセリシンを除き、フィブロイン繊維を得た。
得られたフィブロイン繊維を9mol/Lの臭化リチウムに室温で溶解し、約60g/Lのフィブロイン溶解液を作製した。
次いで、透析チューブ(MWCO:5000〜8000)を用い、水に対してフィブロイン溶解液を3日間透析した後、遠心処理(20000rpm×30min)することにより、不純物の除去を行うことで、フィブロイン水溶液を得た。
(キャストフィルム(成形体)の作製)
フィブロイン水溶液をポリスチレンシャーレに注ぎ入れ、風乾してキャストフィルム(成形体)を作製した。このとき、乾燥状態のフィルムの目付け(単位面積当たりの質量)が4.4g/cmとなるように、フィブロイン水溶液の量を調節した。
(細胞培養用支持体の作成)
得られたフィルム状の成形体を、直径13mmのディスク状に打ち抜き、小片を作成した。
次いで、作成した小片同士が重ならないように、種々の濃度のエタノール水溶液(60体積%、70体積%、80体積%、90体積%、95体積%)に24時間浸漬して不溶化処理を施して、細胞培養用支持体(以下、「支持体」と称する)を得た。
(細胞培養)
支持体を純水で十分に洗浄した後、細胞培養用24穴プラスチックプレートに入れてガラスリングで固定し、リン酸緩衝食塩水を満たして一晩静置した。
各支持体上に15000個の細胞を播種し、播種後4時間、24時間、48時間および、72時間後に細胞の接着形態の観察を行った。培養する細胞は、骨芽細胞(MG63)、線維芽細胞(L929)、上皮細胞(HCE−T)とした。
また、ブランクとしてTCPS上にて、各細胞について培養を行った。
また、骨芽細胞および繊維芽細胞については、各時間において接着細胞を回収し、細胞数をコールタカウンタ方式自動計測器(Merck社製、Scepter2.0)により計測した。各回収時間において、3つの支持体上の細胞について細胞数の計測を行った。
(結果)
図2〜7は、種々の濃度のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体で培養した細胞について、各接着時間における細胞形態を位相差顕微鏡により観察した結果を示す写真であり、図2,3は骨芽細胞(MG63)に関する結果、図4,5は線維芽細胞(L929)に関する結果、図6,7は上皮細胞(HCE−T)に関する結果をそれぞれ示す。
図2,3に示すように、骨芽細胞を培養した場合、80体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体へ骨芽細胞を播種したものでは、フィブロイン上で形成される典型的な細胞凝集塊が観察された。初期接着(播種から4時間後)の段階において、個々の細胞は独立して球状のまま接着しているが、24時間後には数個の細胞からなる凝集塊が形成され、その後、培養時間の経過とともに凝集塊はその大きさを増し、支持体表面は増殖した細胞で覆われた。
60体積%エタノール水溶液および70体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体を用いた場合においても、ほぼ同じ挙動が観察された。
一方、90体積%エタノール水溶液および95体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体へ播種した場合には、初期接着から細胞は紡錘形に伸展して接着し、その後、凝集塊などが形成されることなく増殖して支持体表面を覆う様子が観察された。この接着形態は、参考例として行ったTCPS上での培養結果とほぼ同じであった。
図4,5に示すように、線維芽細胞を培養した場合、骨芽細胞の場合ほど明確な差異は認められないものの、初期接着において80体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体を用いた場合と、90体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体を用いた場合とで、接着細胞の伸展性に違いが認められた。
80体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体を用いた場合には、細胞はすべて球状に近い形で接着しているのに対して、90体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体を用いた場合には、紡錘形または円形に薄く伸展接着している細胞が多く見受けられた。
播種後24時間が経過した後にも、80体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体上では、細胞が球状のままであるのに対し、90体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体上では、仮足を伸ばし、TCPS上で見られるような接着形態を呈することが観察された。
さらに、播種後72時間の段階において、80体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体の場合には、緩やかに凝集する傾向が見られるのに対して、90体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体の場合には、凝集する傾向は見られなかった。
図6,7に示すように、上皮細胞を培養した場合、いずれの濃度のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体においても、顕著な差は確認できなかった。初期接着において、いずれのエタノール濃度で不溶化処理した支持体にも個々の細胞がほぼ独立して接着していた。また、24時間後には、いずれの支持体においても仮足を伸ばして接着しており、上皮細胞特有の敷石状のドメイン構造を形成し始めていた。
図8,9は、骨芽細胞および繊維芽細胞についての増殖曲線である。図8,9の横軸は、培養日数(単位:日)であり、縦軸は細胞数(単位:個)である。
図8に示すように、骨芽細胞の結果においては、90体積%および95体積%のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体においては、培養3日目の時点でTCPS上での細胞数を上回っていた。一方、80体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体では、いずれもTCPS上の細胞数よりも少ない結果となっていた。
図9に示すように、線維芽細胞の結果においては、いずれの支持体上でもTCPS上ほど増殖しなかったものの、80体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体上では、80体積%未満のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体上の場合よりも、3日目の時点で約2倍程度の細胞数にまで増殖した。
以上の結果から、85体積%以上のエタノール水溶液で成形体を不溶化処理することにより、球状様の細胞による細胞凝集性をなるべく避けて、伸展した細胞形態での培養が可能であることが分かった。
[2.細胞形態の測定]
培養する細胞として繊維芽細胞(NIH3T3)を用い、不溶化処理で用いるアルコール水溶液の濃度を80.0体積%、82.5体積%、85.0体積%、87.5体積%、90.0体積%としたこと以外は、上記「1.細胞培養実験」と同様にして培養を行った。また、参考例として、ガラス上で培養を行った。
図10は、得られた細胞形態のアスペクト比を表すヒストグラムである。危険率1%でのF検定の結果、80体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体上での細胞形態と、82.5体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体上での細胞形態との間に有意差は認められなかった。
一方、80体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体上での細胞形態と、85体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体上での細胞形態との間には有意な差があることが確認された。85体積%以上のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体上では、82.5体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体と比べ、細胞が伸展し、アスペクト比が増大した細胞形態を有していた。
また、ガラス表面上での細胞形態と、87.5体積%および90体積%エタノール水溶液で不溶化処理した支持体上での細胞形態と、の間に有意差は認められず、いずれにおいても、82.5体積%以下のエタノール水溶液で不溶化処理した支持体と比べ、細胞が伸展し、アスペクト比が増大した細胞形態を有していた。
以上の結果から、85体積%以上のエタノール水溶液でフィブロイン材料表面を処理することにより、細胞が伸展して付着できるようになることが分かった。
[3.表面物性測定]
上記「1.細胞培養実験」の「フィブロイン水溶液の作製」において作製したフィブロイン水溶液を用い、スピンコート法によって、スライドガラス上にフィブロイン薄膜を形成して、25℃で一晩風乾した。
フィブロイン薄膜が形成されたスライドガラスを、エタノール水溶液(70体積%、90体積%)に室温で24時間浸漬することにより、表面のフィブロインを不溶化した。不溶化処理の後、RO水(逆浸透膜で処理した水)で十分に水洗し、不溶化フィブロイン薄膜付きスライドグラス(以下、試料と称する)を得た。
試料上の不溶化フィブロイン薄膜について、ζ電位測定実験(大塚電子、ELS−8000)を用いて、ζ電位を測定した。測定においては、pH7.4に調製した5mmol/L塩化ナトリウムを含む5mmol/Lリン酸緩衝液を用い、25℃で測定を行った。各エタノール濃度における試料数(n)はn=6とした。
図11は、pH6〜9において測定されたζ電位を示すグラフである。図11の横軸はpH、縦軸はζ電位(単位:mV)である。
測定の結果、pH7〜8の範囲において、70体積%エタノール水溶液により不溶化したフィブロイン表面のζ電位は、−26mV〜−28mVの値であるのに対し、90体積%エタノール水溶液で不溶化したフィブロイン表面のζ電位は、−32mV〜−33mVであった。
以上の結果から、濃度の異なるアルコール水溶液でフィブロインを不溶化処理することにより、不溶化されたフィブロイン表面は、異なる性質を有することが分かった。
これらの結果から、本発明の有用性が確かめられた。
1…成形体、1L…フィブロイン水溶液、3…細胞培養用支持体、L…アルコール水溶液

Claims (3)

  1. 細胞の培養に用いる細胞培養用支持体の製造方法であって、
    フィブロイン水溶液を塗布し乾燥させてシート状の成形体を得る工程と、
    85体積%以上のアルコール水溶液に前記成形体を接触させる工程と、を有する細胞培養用支持体の製造方法。
  2. 細胞の培養に用いる細胞培養用支持体であって、
    水中に溶解したフィブロインを形成材料とし、前記フィブロインの水溶液を塗布し乾燥させたシート状の成形体を、85体積%以上のアルコール水溶液に接触させて得られる細胞培養用支持体。
  3. 請求項2の細胞培養用支持体の表面に、前記細胞培養用支持体に対応した細胞を播種して培養する細胞培養方法。
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