JP2005271572A - 電磁波吸収性及び加工性に優れた電子機器部材用樹脂塗装金属板 - Google Patents

電磁波吸収性及び加工性に優れた電子機器部材用樹脂塗装金属板 Download PDF

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Abstract

【課題】 電磁波吸収性及び加工性に優れた電子機器部材用樹脂塗装金属板を提供する。
【解決手段】 金属板の裏面または表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、20〜60%(質量%の意味、以下、同じ)の磁性粉末を含有する磁性塗膜が、厚さ:3〜50μmで被覆されたものである電子機器部材用樹脂塗装金属板である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に電子・電気・光学機器等(以下、電子機器で代表させる場合がある)における筐体等の構成素材として有用な、電磁波吸収性及び加工性に優れた電子機器部材用樹脂塗装金属板に関し、更には、放熱性;放熱性及び自己冷却性;耐疵付き性及び耐指紋性;導電性等の特性が高められた電子機器部材用樹脂塗装金属板に関するものである。
近年、電子機器の高性能化・小型化が進むなか、電子機器から発生する電磁波を外部に漏洩しないような特性(電磁波シールド性)が要求されており、こうした特性を如何に実現するかが電子機器設計者にとって重要な課題となっている。電子機器からの漏洩電磁波が多くなると、その電子機器の周辺の配置された精密機械等の誤作動を招くことになりかねない。こうした観点から日本では、電子機器からの不要放射レベルを規制する自主規制規格として運用されているVCCI規格において、波長域30MHz〜1GHzの漏洩電磁波が規制されている。
一方、電子機器には良好な放熱性も要求されており、こうした放熱性を良好にするには、電子機器の筐体に空気穴が有る構造とすることが有効である(この点は、後程詳述する)。しかしながら、こうした構造では、電磁波シールド性という観点からすれば決して好ましいものとは言えず、空気穴の存在は電磁波が却って漏洩し易い箇所となる。即ち、電子機器の筐体において、放熱性を良好にする構造は、電磁波シールド性からすれば却ってマイナスの要因となるものであり、構造面からすれば放熱性と電磁波シールド性は相反する特性となる。
この様に電子機器の構造面からでは上述した制約があることから、別の角度から電磁波シールド性を良好にする為の技術が提案されている。例えば「電磁波は、空気穴や配線穴から漏れるだけでなく、鋼板同士の隙間からも漏れる」ことに着目し、「導電性に優れた鋼板を用いれば、鋼板同士の隙間を減らすことができるので電磁波の漏洩を減少できる」という観点から、電子機器の筐体の素材として、電気亜鉛めっき鋼板等の導電性に優れた素材が使用されている。しかしながら、この方法ではせいぜい、鋼板同士の隙間から漏れる電磁波しか減らすことが出来ず、空気穴や配線穴からの電磁波の漏れを防止することは出来ず、良好な電磁波シールド性が得られない。
一方、電磁波吸収特性を有するシートやテープを電磁波発信源や筐体隙間に貼り付けることによって、漏洩電磁波の発生を減少する技術も提案されている。例えば、特許文献1には、Cr:5〜35%程度含むFe基合金からなる軟磁性粉末を、ゴムや樹脂に分散させた電磁波吸収体について提案されている。また、特許文献2には、熱硬化性樹脂からなる絶縁性シートに軟磁性金属粉末を分散させた電磁波吸収体について提案されている。これらの技術は、電磁波吸収性の面からすれば優れているといえる。
しかしながら、上記特許文献では、優れた電磁波吸収性を達成する目的で、樹脂中に、実質的に多量(10体積%以上)の磁性粉末を含有させる必要があり、そうすると膜厚も厚くなって(例えば、1mm以上)加工性が困難となる為、電磁波発信源の表面や電子機器隙間等の極く限られた箇所にしか適用し難いという欠点がある。
一方、特許文献3には、ステンレス鋼からなる薄片状粉体を合成樹脂製材料からなる基材中に混合・分散させて形成した電磁波吸収層を、金属からなる電波反射層に積層した電波吸収体が提案されている。この技術は、より高い周波数の電磁波(1GHz以上)の吸収を達成するために提供されたものであるが、上記電磁波吸収層は前述した特許文献と同様、実質的に多くの磁性粉末を含有させる必要があり、また膜厚も厚くなって(1.5〜3.5mm程度)加工性の点で問題があり、折り曲げ加工等の苛酷な加工が要求される電子機器用筐体の構成素材として適用することは困難である。
一方、電子機器の高性能化・小型化に伴い、近年では、電子機器等のシャーシ内部における発熱量が増大(高温化)し、高熱化するといった問題が生じている(電子機器内部の高熱化)。電子機器の内部温度は通常雰囲気温度で約40〜70℃、最高で100℃程度の高温になることがあるが、そうすると、IC、CPU(半導体素子)、ディスク、モーター等の耐熱温度を超える為、安定操業に支障をもたらすことが指摘されている。更に温度が上昇すると半導体素子が壊れて故障する等し、電子機器部品の寿命が低下するといった問題も抱えている。
そこで、電子機器に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る新規な電子機器部材用筺体(筺体本体、フレーム、シールドケース、液晶等のバックパネル等)の提供が切望されている。
この様な用途に使用される表面処理材として、例えば特許文献4には、基材表面に外層塗膜と内層塗膜とを備え、当該内層塗膜の熱放射率が70%以上である熱放射性表面処理材が;特許文献5には、基材表面に少なくとも1層の塗膜を備えており、表面処理材としての熱放射率が60%以上である熱放射性表面処理材が、夫々、開示されている。これらの特許文献はいずれも、内部で熱を生じる家電製品等の筺体(外側の箱状体を指す)や放熱板等の用途に使用されるものであり、本発明と適用対象(用途)は共通するが、放熱性を高める為の基本的思想が相違しており、その具体的手段も相違するものである。
即ち、これらの特許文献はいずれも、「内部で発生した熱を、圧縮機→放熱器→放熱板の順に伝播させ、放熱板から熱を速やかに放散させる為には、放熱板(表面)の熱放射性を高める必要がある」という思想のもとに、表面の熱放率が高い表面処理材を提供するものであり、当該表面処理材の裏面の放射率については全く考慮していない。換言すれば、上記特許文献の思想は、「電子機器内部の熱源(発熱体)と表面処理材を接触させ、当該熱源から放出される熱量を、熱伝導によって表面処理材(の裏面)に吸熱させた後、(表面処理材の表面から)熱放射によって放散させよう(熱伝導→放射)」というものであって、本発明の如く「電子機器内部の熱源(発熱体)から放出される熱(輻射熱)を、裏面の放熱塗膜で吸収(放射)し、この熱を表面の塗膜から放射させる(放射→放射)」という基本的思想(後記する)は異なるものである。実際のところ、上記特許文献の表面処理材は、表面の放射率を高くする為の手段しか開示されておらず、裏面の放射率を高くすることは全く意図していない為、裏面は無塗装(塗膜なし)であり、本発明の如く裏面を放熱塗膜としたり、或いは裏面に塗膜を設けて所定の放射率を確保するといった構成は全く開示されていない。
その他、特許文献6には、熱器具部材に使用される遠赤外線放射板(基材に、遠赤外線特性を有するセラミック層が形成されたもの)の製造方法が開示されている。しかしながら、上記特許文献3の遠赤外線放射板は、約200〜300℃といった非常に高温下での放熱特性が要求される熱器具(代表的にはストーブ等)の分野に使用されるものであり、本発明塗装体の如く、特に、内部温度が通常雰囲気温度で約40〜70℃、最高でも100℃程度となる電子機器部材への適用については、全く意図していない。従って、両者は、適用対象(用途)が異なる発明である。また、上記特許文献には、電子機器から放出される熱量を「基板の裏面」→「基板の表面」へと吸収→放射させるという本発明独自の技術的思は、全く開示されていない。
更に上述した放熱特性に加え、電子機器の筺体には、当該筺体自体の温度上昇を抑える作用も要求される。これにより、電子機器製品の稼動中に、消費者が当該筺体に触れてやけど等する危険を防止でき、安全な製品を提供できるからである。この「電子機器の筺体自体の温度上昇を抑える特性」を、前述した「放熱性」と区別する目的で、本発明では特に、「自己冷却性」と呼ぶ。これらの両特性に優れた筺体を得るに当たり、前述した放熱対策(ヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法や、金属板に穴をあけてファンを取り付ける方法等)を採用したのでは、やはり、同様の問題が見られる。従って、これらの両特性を備えた筺体の提供も切望されている。
また、電子機器の筺体には、上述した特性に加え、更に導電性にも優れることが要求されている。しかしながら、従来使用されている黒色塗装鋼板(黒色塗膜が被覆された鋼板)等は、黒色塗膜の膜厚が厚すぎて電気抵抗値が高くなり、特に電子機器に適用するには所望のアースがとれないといった問題がある。
更に電子機器の筺体には、耐疵付き性も要求されている。例えば黒色金属板は、取扱い時や加工時等において、疵が非常に発生し易く(耐疵付き性の低下)、また、指紋が付着すると目立ち易い(耐指紋性の低下)という問題を抱えている。
このうち「耐疵付き性」の改善に関しては、皮膜硬度を高めたり、皮膜中にワックスを添加して皮膜の潤滑性を高める等の方法が施されている。しかしながら、上記方法による改善効果には限界があり、例えば黒色金属板を折曲げ加工する等、苛酷な加工が要求される場合には、皮膜硬度や潤滑性をあまり高くすることができない、といった不具合を有している。
そこで、これらの問題を一挙に解決し得る金属板として、特許文献7には、黒色塗膜にクリアー塗膜を被覆した導電性黒色表面処理金属板が開示されている。これは、「クリアー塗膜は、導電性付与に有効であると共に、特に耐疵付き性及び耐指紋性を著しく高める作用がある」という知見に基づいて出願されたものであり、折曲げ加工が必要な用途にも適用可能である。しかしながら、その後の研究により、クリアー塗膜では、皮膜の疵は改善し得ても鋼板のエッジ等に発生した疵そのものを抑えることは困難であることが分った。また、クリアー塗膜が被覆された金属板は、黒色塗膜の色調がそのまま外観として反映される為、色調によっては疵や指紋が目立ち易くなり、クリアー塗膜形成による改善効果が充分に発揮されない場合がある。
そこで本発明者らは、クリアー塗膜に代わり、上記課題を解決し得る新しい塗膜を提供すべく、白色顔料及び/又は光輝顔料に着目して検討した。
上記顔料自体は公知であり、白色顔料として酸化チタン等;光輝顔料(メタリック顔料)として、パール顔料、アルミニウム顔料等が代表的に挙げられる。これらの顔料は、反射した光によってキラキラ感、メタリック感、パール感等を呈し、変化に富んだ意匠性に優れた外観をもたらすことから、自動車、各種印刷物、OA機器等の様々な用途に使用されているが、当該顔料を、耐疵付き性や耐指紋性の改善目的で使用してみようとする発想は全くない。
例えば特許文献8〜10には、種々の光輝顔料/メタリック塗料/改質真珠光沢顔料が開示されているが、いずれも、これら顔料の特性(光輝感、光反射量等)改善という本来の目的の為に提案されたものに過ぎず、耐疵付き性や耐指紋性との関係で、上記顔料が如何なる作用を発揮し得るか、更には上記顔料を含む樹脂塗膜をどの様に制御すれば耐疵付き性等が改善されるのか、といった点について、何も教示するところがない。
特開2000−200990号公報 特許請求の範囲等 特開2002−111276号公報 特許請求の範囲等 特開2001−274587号公報 特許請求の範囲等 特開2002−228085号公報(特許請求の範囲、第1〜4欄) 特開2002−226783号公報(特許請求の範囲、第1〜3欄) 特開平3−120378号公報(特許請求の範囲、第4頁右上欄) 特開2001−18322号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−363771号公報(特許請求の範囲等) 特開平10−330657号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−12795号公報(特許請求の範囲等)
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、優れた電磁波吸収性及び加工性を発揮し得、必要によって良好な放熱性;放熱性及び自己冷却性;耐疵付き性及び耐指紋性;導電性を兼ね備えており、特に電子機器筺体における構成素材として有用な電子機器部材用樹脂塗装金属板を提供することにある。
上記課題を達成し得た本発明の電子機器部材用樹脂塗装金属板は、下記(I)〜(VI)の態様を包含するところに要旨を有するものである。
(I)電磁波吸収性及び加工性に優れた電子機器部材用塗装金属板(以下、第一の塗装体と呼ぶ場合がある)
これは、金属板の裏面または表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、20〜60%(質量%の意味、以下、特に明記しない限り、「%」とは「質量%」を意味する)の磁性粉末を含有する磁性塗膜が、鋼板表面に厚さ:3〜50μmで被覆された塗装板である。
本発明で用いる磁性粉末としては、軟磁性フェライトや磁性金属粉末が挙げられるが、いずれを用いるにしても体積換算すると10体積%程度に相当するものである。また、磁性塗膜を構成する樹脂は、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
本発明の塗装金属板において、上記磁性塗膜には、更に導電性付与剤を20〜40%程度添加して磁性塗膜に導電性を付与することができるが、この場合には良好な導電性を維持するために皮膜厚さは3〜15μmであることが好ましい。また導電性付与剤を添加する場合には、導電性付与剤と磁性粉末の合計含有量が30〜60%であることが好ましい。
(II)電磁波吸収性、加工性、及び放熱性に優れた電子機器部材用塗装金属板(以下、第二の塗装体と呼ぶ場合がある)
これは、上記第一の塗装体において、下記(II-1)または(II-2)を満足しており、且つ、下記(II-3)を満足する塗装板である。
(II-1)金属板の裏面には、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆され、金属板の表面には1μm超の放熱塗膜が被覆されており、
(II-1-i)該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、カーボンブラックを1%以上含有しており、
カーボンブラックを含有しない面には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有するか;或いは、
(II-1-ii)該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、酸化チタンを30%以上含有しており、
酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有している。
(II-2)金属板の両面に前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、金属板の裏面には、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆され、金属板の表面には1μm超の放熱塗膜が被覆されており、
(II-2-i)該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも一方には、カーボンブラック(好ましい平均粒径は5〜100nmである)を1%以上含有しており、
カーボンブラックを含有しない面には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有するか、或いは、
(II-2-ii) 該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも一方には、酸化チタンを30%以上含有しており、酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有している。
(II-3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足する。
a×b≧0.42 … 式(1)
a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
(III)電磁波吸収性、加工性、放熱性、及び自己冷却性に優れた電子機器部材用塗装金属板(以下、第三の塗装体と呼ぶ場合がある)
これは、上記第一の塗装体において、下記(III-1)または(III-2)を満足しており、且つ、下記(III-3)を満足する塗装板である。
(III-1)金属板の裏面には前記磁性塗膜が、金属板の表面には1μm超の放熱塗膜が被覆されており、
該表面の放熱塗膜は、放熱性添加剤を1%以上含有しており、
該裏面の磁性塗膜は、更に放熱性添加剤を1%以上含有しても良いか;または
(III-2)金属板の両面に前記磁性塗膜が被覆されており、
該表面の磁性塗膜は、放熱性添加剤を1%以上含有しており、
該裏面の磁性塗膜は、更に放熱性添加剤を1%以上含有しても良い。
(III-3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足する。
b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
(IV)電磁波吸収性、加工性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた電子機器部材用塗装金属板(以下、第四の塗装体と呼ぶ場合がある)
これは、上記第一の塗装体において、下記(IV-1)または(IV-2)を満足しており、且つ、下記(IV-3)及び(IV-4)を満足する塗装板である。
(IV-1)金属板の裏面には前記磁性塗膜が被覆されており、該磁性塗膜は黒色添加剤を含有しても良く、該黒色添加剤を含有する磁性塗膜は、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
該金属板の表面には、黒色添加剤を含有する黒色塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されている。
(IV-2)金属板の両面に前記磁性塗膜が被覆されており、
このうち少なくとも表面の磁性塗膜は、黒色添加剤を含有する黒色磁性塗膜であり、
該表面の黒色磁性塗膜には、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されており、
該裏面には、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良い。
(IV-3)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
(IV-4)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
また、上記白色顔料及び/又は光輝顔料として好ましいのは酸化物系顔料であり、なかでも酸化チタンを含有するものが最も推奨される。
(V)電磁波吸収性、加工性、放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた電子機器部材用塗装金属板(以下、第五の塗装体と呼ぶ場合がある)
これは、上記第一の塗装体において、下記(V-1)または(V-2)を満足しており、且つ、下記(V-3)〜(V-5)を満足する塗装板である。
(V-1)金属板の裏面に、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、該放熱性磁性塗膜が黒色添加剤を含有するときは、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
該金属板の表面に、1μm超の放熱塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されており、
(V-1-i)該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、少なくともカーボンブラックを1%以上含有しており、
カーボンブラックを含有しない面は、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有しているか;或いは
(V-1-ii)該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、少なくとも酸化チタンを30%以上含有しており、
酸化チタンを含有しない面は、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有している。
(V-2)金属板の両面に、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、
(V-2-i)該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも片面は、カーボンブラックを1%以上含有しており、
カーボンブラックを含有しない面は、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有しており、
少なくとも表面の放熱性磁性塗膜に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されているか;或いは
(V-2-ii)該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも片面は、酸化チタンを30%以上含有しており、
酸化チタンを含有しない面は、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有しており、
少なくとも表面の放熱性磁性塗膜に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されている。
(V-3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足する。
a×b≧0.42 … 式(1)
a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
(V-4)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
(V-5)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
(VI)電磁波吸収性、加工性、放熱性、自己冷却性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた電子機器部材用塗装金属板(以下、第六の塗装体と呼ぶ場合がある)
これは、上記第一の塗装体において、下記(VI-1)または(VI-2)を満足しており、且つ、下記(VI-3)〜(VI-5)を満足する塗装板である。
(VI-1)金属板の裏面に前記磁性塗膜が被覆されており、該磁性塗膜は黒色添加剤を含有しても良く、該磁性塗膜が黒色添加剤を含有するときは、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
該金属板の表面には、黒色添加剤を1%以上含有する1μm超の黒色放熱塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されているか;または
(VI-2)金属板の両面に前記磁性塗膜が被覆されており、
該表面の磁性塗膜は、黒色添加剤を1%以上含有する1μm超の黒色放熱性磁性塗膜であり、
裏面の磁性塗膜は、放熱性添加剤を1%以上含有しても良く、
このうち少なくとも表面の黒色放熱性磁性塗膜は、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されている。
(VI-3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足する。
b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
(VI-4)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
(VI-5)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
また、上記白色顔料及び/又は光輝顔料として好ましいのは酸化物系顔料であり、なかでも酸化チタンを含有するものが最も推奨される。
上記第一〜第六の塗装体は、特に電子機器部材の筺体として有用である。
また、本発明には、閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、該電子機器部品は、その外壁の全部または一部が前述した第一〜第六の塗装体で構成されているものも包含される。
本発明によれば、上記構成を採用することによって、優れた電磁波吸収性及び加工性を発揮し得、必要によって放熱性;放熱性及び自己冷却性;耐疵付き性及び耐指紋性;導電性も兼ね備えており、特に電子機器における構成素材として有用な電子機器部材用樹脂塗装金属板を提供することができる。
上述した通り、本発明の電子機器部材用樹脂塗装金属板は、下記(I)〜(VI)の態様を包含するものである。
(I)電磁波吸収性及び加工性に優れた樹脂塗装金属板(第一の塗装体)
(II)上記(I)の塗装体において、更に放熱性に優れた樹脂塗装金属板
(第二の塗装体)
(III)上記(I)の塗装体において、更に放熱性及び自己冷却性に優れた塗装体
(第三の塗装体)
(IV)上記(I)の塗装体において、更に耐疵付き性及び耐指紋性に優れた塗装体
(第四の塗装体)
(V)上記(I)の塗装体において、放熱性、耐疵付き性及び耐指紋性に優れた
樹脂塗装金属板(第五の塗装体)
(VI)上記(I)の塗装体において、放熱性、自己冷却性、耐疵付き性、及び
耐指紋性に優れた樹脂塗装金属板(第六の塗装体)
まず、上記(I)について説明する。
(I)電磁波吸収性及び加工性に優れた樹脂塗装金属板(第一の塗装体)
本発明の第一の塗装体は、金属板の裏面または表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、20〜60%の磁性粉末を含有する磁性塗膜が、厚さ:3〜50μmで被覆されたものであるところに特徴がある。
まず、上記構成に到達した経緯について簡単に説明する。
電子機器から発生する電磁波は、鋼板に対して吸収するよりも反射することが多いことが判明している。かかる観点から、本発明者らは、加工性を低下させることなしに電磁波吸収性にも優れた金属板を提供する為には、電磁波吸収性筐体を構成する塗装鋼板において少なくとも裏面(筐体を構成する内部側面のこと;本明細書では「裏面」と呼ぶ)に、比較的薄い磁性塗膜を必要最小限の磁性粉を含有させた状態で形成してやれば、筐体内部で発生した電磁波が多重反射し、最終的に空気穴などから筐体外部に漏洩する電磁波の減衰が期待できるのではないかと考えた。
即ち、図1(本発明の金属板による電磁波吸収性の原理を説明する図)に示す様に、筐体1内に電磁波発信源2が存在する場合に、この電磁波発信源2から発信された電磁波は、矢印A1〜A5に示すように筐体1の内面に何回か反射した後に、空気穴3等から外部に漏洩することになる(図中、4は筐体隙間を示す)。そして、1回の反射における減衰(素材鋼板比)が2dB(デシベル)とした場合には、例えば5回の多重反射によって10dBの電磁波シールド効果が発揮されることになる。この電磁波減衰効果は、素材鋼板単独のものと比較すると、電界強度が1/3になることを意味する。こうした観点から、本発明の塗装金属板では、各要件を規定した次第である。
次に、上記第一の塗装体を構成する各要件について説明する。
まず、上記塗装体を特徴付ける磁性皮膜について説明する。
(I-1)磁性塗膜中に、磁性粉末を20〜60%含有
本発明で用いる磁性粉末(電磁波吸収添加剤)は特に限定されず、代表的には軟磁性フェライト粉末や磁性金属粉末等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
但し、いずれの磁性粉末を用いるにしても、磁性塗膜への添加量は合計で20〜60%とする必要がある。この添加量が20%未満では電磁波吸収特性が発揮され難く、60%を超えると電子機器部材用樹脂塗装金属板として要求される特性(曲げ加工性、皮膜密着性および耐食性)が劣化する傾向にある。好ましい添加量は、使用する磁性粉末の種類や磁性塗膜の膜厚(後記する)等によっても変化し得るが、概ね、25%以上、50%以下;より好ましくは30%以上、45%以下である。
上記磁性粉末のうち、軟磁性フェライト粉末としては、軟磁性のNi−Zn系フェライト粉末やMn−Zn粉末等が挙げられる。
また、磁性金属粉末としては、パーマロイ(Ni−Fe系合金でNi含有量が35%以上のもの)やセンダスト(Si−Al−Fe系合金)等が挙げられる。代表的には、後記する実施例に記載のものを使用すれば良い。
尚、上記塗装体では、電磁波吸収性及び加工性の向上に加えて導電性も高めたい場合がある。その場合は、上述した磁性粉末のうち特に磁性金属粉末の使用が有用であり、当該磁性金属粉末を磁性塗膜に添加するだけで、更に導電性も高めることができる。上記磁性金属粉末中に、導電性付与剤として有用なNiが既に含まれているからである。
一方、上述した磁性粉末のうち軟磁性フェライト粉末を使用する場合には、これ単独で導電性を向上させることは困難である。従って、導電性の向上も意図する場合には、磁性塗膜中に、軟磁性フェライト粉末の他に、後述する導電性付与剤(導電性フィラー)を添加することが好ましく、これらの含有量を適切に制御することが好ましい(この点については、後述する)。
上記の磁性粉末は、平均粒径が15μm以下であることが好ましく、大粒径(例えば、20μm以上)の粉末はできるだけ除去することが好ましい。これによって、磁性塗膜の形成が容易となって、加工性、耐食性の低下を抑制できる。
ここで、上記磁性粉末の平均粒径は、一般的な粒度分布計によって分級後の磁性粉末粒子の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小粒径側からの積算値50%の粒度(D50)を意味する。斯かる粒度分布は、磁性粉末粒子に光を当てることにより生じる回折や散乱の強度パターンによって測定することができ、この様な粒度分布計としては、例えば、日機装社製のマイクロトラック9220FRAやマイクロトラックHRA等が例示される。
尚、上述した好ましい平均粒径を満足する磁性粉末は、市販品を使用しても良い。例えば後記する実施例に記載の磁性粉末が挙げられる。
(I-2)磁性塗膜の膜厚を3〜50μm
更に本発明では、上記磁性塗膜の膜厚を3〜50μmとする。上記膜厚が3μm未満、及び50μm超では曲げ加工性、皮膜密着性および耐食性が低下してしまう。好ましい膜厚は、使用する磁性粉末の種類や添加量等によっても変化し得るが、概ね、4μm以上、40μm以下;より好ましくは5μm以上、30μm以下である。
尚、上述した磁性皮膜は、金属板の少なくとも裏面(電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側)に形成されていれば良い。電磁波シールド性は、電子機器部材の内側で問題となるからである。具体的には上記第一の塗装体には図8に示す通り、裏面に磁性皮膜が被覆されている態様[図8(a)]と、表裏面に磁性皮膜が被覆されている態様[図8(b)]の両方が包含される。尚、図8中、21は磁性粉末、22は金属板である。
以上が、本発明における磁性塗膜の特徴部分に関する説明である。
尚、上記磁性塗膜を構成する樹脂(ベース樹脂)の種類としては、電磁波吸収性の観点からは特に限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、およびこれらの混合または変性した樹脂などを適宜使用することができる。但し、本発明の塗装金属板は電子機器の筐体として使用されるので、曲げ加工性、皮膜密着性および耐食性などの特性が要求されることを考慮すると、ポリエステル樹脂若しくは変性ポリエステル樹脂(例えば、不飽和ポリエステル樹脂にエポキシ樹脂を加えて変性させた樹脂)であることが好ましい。この磁性塗膜には、架橋剤を添加することができる。こうした架橋剤としては、例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物が挙げられ、これら1種または2種以上を0.5〜20%の範囲で添加することが好ましい。
一方、更に上記塗装体の電磁波吸収性を高めたいときは、導電性を付与すれば良いことが知られている。こうした観点からすれば、磁性塗膜中に導電性付与剤を添加する方法が有用である。この様な導電性付与剤としては、Ag,Zn,Fe,Ni,Cu等の金属単体やFeP等の金属化合物が挙げられる。このうち、特に好ましいのはNiである。尚、その形状は特に限定されないが、より優れた導電性を得るためには、麟片状のものを使用することが推奨される。
上記導電性付与剤の添加量は概ね、磁性塗膜中に20〜40%とすることが好ましいが、厳密には、使用する磁性粉末の種類等に応じてその添加量を適切に調整することが推奨される。前述した通り、磁性粉末として軟磁性フェライト粉末を用いる場合には、それ単独で導電性を付与することはできない為、上記範囲内(20〜40%)のなかでも、導電性付与剤をできるだけ多く添加することが好ましい(例えば25%以上)。これに対して、磁性粉末として磁性金属粉末を用いる場合は、それ自体で導電性を有しているので、上記範囲内(20〜40%)のなかでも、できるだけ少なく添加するのが良い(例えば30%以下)。
一方、導電性付与剤は、上記磁性粉末と同様に加工性等に悪影響を及ぼす恐れがあることを考慮すれば、磁性塗膜中に含まれる導電性付与剤と磁性粉末の合計含有量は60%以下とすることが好ましい。
これらを総合的に勘案すれば、磁性塗膜中に磁性粉末と導電性付与剤を両方添加する場合には、まず、磁磁性粉末として軟磁性フェライト粉末を用いるときには、その含有量を20〜40%程度とし、導電性付与剤の含有量を20〜40%程度(合計で60%以下)とすることが好ましく;一方、磁性粉末として磁性金属粉末を用いるときには、その含有量を30〜50%程度とし、導電性付与剤の含有量を10〜30%(合計で60%以下)とすることが好ましい。
また、本発明に用いられる金属板としては特に限定されず、例えば冷延鋼板、熱延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、5%Al−Znめっき鋼板、55%Al−Znめっき鋼板、Al等の各種めっき鋼板、ステンレス鋼板等の鋼板類や、公知の金属板等を全て適用することができる。
更に上記金属板は、耐食性向上、塗膜の密着性向上等を目的として、クロメート処理やリン酸塩処理等の表面処理が施されていてもよいが、一方、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよく、いずれの態様も本発明の範囲内に包含される。
以下、ノンクロメート処理した金属板について説明する。
上記「ノンクロメート処理」する方法(下地処理)は特に限定されず、通常、使用される公知の下地処理を行えば良い。具体的には、リン酸塩系、シリカ系、チタン系、ジルコニウム系等の下地処理を、単独で、若しくは併用して行うことが推奨される。
尚、一般にノンクロメート処理すると耐食性が低下することから、耐食性向上の目的で、塗膜中または下地処理の際、防錆剤を使用しても良い。上記防錆剤としては、シリカ系化合物、リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、ポリリン酸塩系化合物、イオウ系有機化合物、ベンゾトリアゾール、タンニン酸、モリブデン酸塩系化合物、タングステン酸塩系化合物、バナジウム系化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、これらを単独で若しくは併用することができる。特に好ましいのは、シリカ系化合物(例えばカルシウムイオン交換シリカ等)と、リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、ポリリン酸塩系化合物(例えばトリポリリン酸アルミニウム等)との併用であり、シリカ系化合物:(リン酸塩系化合物、亜リン酸塩系化合物、またはポリリン酸塩系化合物)を、質量比率で0.5〜9.5:9.5〜0.5(より好ましくは1:9〜9:1)の範囲で併用することが推奨される。この範囲に制御することにより、所望の耐食性と加工性の両方を確保することができる。
上記防錆剤の使用によりノンクロメート処理金属板の耐食性は確保できるが、その反面、防錆剤の添加による加工性低下も知られている。その為、塗膜の形成成分として、特にエポキシ変性ポリエステル系樹脂及び/又はフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂、及び架橋剤(好ましくはイソシアネート系樹脂及び/又はメラミン系樹脂、より好ましくは両者の併用)を組合わせて使用することが推奨される。
このうちエポキシ変性ポリエステル系樹脂及びフェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂(例えばビスフェノールAを骨格に導入したポリエステル系樹脂等)は、ポリエステル系樹脂に比べ、耐食性及び塗膜密着性に優れている。
一方、イソシアネート系架橋剤は加工性向上作用(加工後の外観向上作用を意味し、後記する実施例では、密着性曲げ試験におけるクラック数で評価している)を有しており、これにより、防錆剤を添加したとしても優れた加工性を確保することが可能となる。
また、メラミン系架橋剤は、優れた耐食性を有することが本発明者らの検討結果により明らかになった。従って、本発明では、前述した防錆剤と併用することにより、非常に良好な耐食性が得られることになる。
これらのイソシアネート系架橋剤及びメラミン系架橋剤は単独で使用しても良いが、両者を併用すると、ノンクロメート処理金属板における加工性及び耐食性を一層向上させることができる。具体的には、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、メラミン系樹脂を5〜80質量部の比率で含有することが推奨される。メラミン系樹脂が5質量部未満の場合、所望の耐食性が得られず、一方、メラミン系樹脂が80質量部を超えると、イソシアネート系樹脂の添加による効果が良好に発揮されず、所望の加工性向上作用が得られない。より好ましくは、イソシアネート系樹脂100質量部に対し、10質量部以上、40質量部以下、更により好ましくは15質量部以上、30質量部以下である。
次に、本発明の第二の塗装体[上記(I)の塗装体において、更に放熱性に優れた樹脂塗装金属板]、及び第三の塗装体[上記(I)の塗装体において、更に放熱性及び自己冷却性に優れた塗装体]について説明する。まず、これらに共通する基本思想について説明する。
本発明者らは、上記第一の塗装体において、電子機器に要求される本来の特性(防水・防塵等に伴う気密性確保、小型化・軽量化、低コスト等)を満足しつつ、当該電子機器内部温度の低減化(放熱特性)をも達成し得る電子機器部材用塗装体を提供すべく、特に、当該塗装体自体の放熱性改善を中心に鋭意検討してきた。その結果、金属板の表裏面に、所定の塗膜を被覆すれば所期の目的が達成されることを見出した。
そのメカニズムは、「電子機器内部の熱源(発熱体)から放出される熱(輻射熱)を、裏面の塗膜で吸収(放射)し、この熱を、表面の放熱塗膜から放射させる」というものであり、所謂『熱スルー方式』の考えを、電子機器部材にうまく適用したところに最大の特徴がある。この様な『熱スルー方式』の考えを、電子機器部材に適用し、電子機器から放出される熱量を、「金属板の裏面」→「金属板の表面」へと吸収→放射させた塗装体は従来知られておらず、新規である。
次に、各塗装体について説明する前に、第二の塗装体(放熱性に優れた塗装体)と、第三の塗装体(放熱性及び自己冷却性に優れた塗装体)の関係について説明する。
第二の塗装体も第三の塗装体も、共に前述した「熱スルー」の考えを電子機器部材に適用して放熱性の向上を図る点で、基本思想は一致する。しかしながら、両者は、究極的に目指す解決課題(主な解決課題)、当該解決課題を解決する為の技術的思想、及び構成は相違する。即ち、第二の塗装体では、放熱性の向上(電子機器内部温度の低減化)を最大の解決課題として掲げており、「表面・裏面の赤外線放射率の積はできるだけ高い程好ましい」という思想のもと、表面・裏面を、放熱塗膜を構成する一体として捉えて当該放熱塗膜の構成を特定しているのに対し;第三の塗装体では、上述した「熱スルーの考え」を利用して放熱特性を或る程度維持しながら、且つ、「塗装体自体の温度上昇抑制」を最大の解決課題として掲げており、「表裏面の赤外線放射率について積極的に差を設け、裏面の赤外線放射率は表面よりも低く、表面の赤外線放射率はできるだけ高くすることにより、塗装体に吸収された熱を放出させる」という思想のもと、表面・裏面の塗膜構成を夫々、別々に捉えて制御している点で、両者は、目指す方向性が異なる発明ともいえる。
即ち、第二の塗装体では、放熱性に極めて優れるものの、自己冷却性に劣る態様も包含している。一方、第三の塗装体は、自己冷却性に極めて優れたものであるが、放熱性に関しては、第二の塗装体に比べると若干低い態様も包含している。この様な両者の相違を一層明らかにすべく、第二の塗装体で定める領域[上式(1)を満足する放熱特性に優れた範囲]を図5に;第三の塗装体で定める領域[上式(3)を満足する放熱特性に優れた範囲と、上式(2)を満足する自己冷却性に優れた範囲との重複部分]を図6に、夫々、示す。これらの塗装体は、互いに重なり合う部分[表裏面の赤外線放射率の積が高い為に放熱特性に優れており、且つ、裏面に比べて表面の赤外線放射率が高い為に自己冷却性にも優れている]も包含しているが、当該部分は、放熱特性及び自己冷却性の双方に極めて優れた領域である。
以下、本発明に係る各塗装体について、説明する。
(II)上記(I)の塗装体において、更に放熱性に優れた樹脂塗装金属板(第二の塗装体)
上記第二の塗装体は、前述した基本思想をベースとしてなされたものであり、前述した第一の塗装体において、上記(II-1)または(II-2)を満足しており、且つ、上記(II-3)を満足することにより放熱性が高められたところに特徴がある。
まず、上記(II-1)または(II-2)を定めた趣旨について説明する。
前述した通り、本発明の基本態様である塗装体(第一の塗装体)は、少なくとも裏面側(電子機器部材用塗装体の内側)の電磁波吸収性に優れていることが要求される。従って、上記第二の塗装体においても、第一の塗装体と同様、裏面のみに磁性塗膜が形成される態様(II-1)と、表裏面に磁性塗膜が形成される態様(II-2)との、二つに大別される。
一方、放熱性向上という観点からすると、金属板の表裏面に1μm超の放熱塗膜が形成されており、且つ、(i)当該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、カーボンブラックを添加しており、カーボンブラックを含有しない面には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を添加するか;或いは、(ii)当該放熱塗膜のうち少なくとも一方は、酸化チタンを添加しており、酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤を添加することが必要であり、これにより、所望の放熱特性[上記(II-3)]を確保することができる。
この様に上記第二の塗装体は、電磁波吸収性・加工性向上の為に要求される要件と、放熱性向上の為に要求される要件を勘案して定められたものである。
以下、(II-1)または(II-2)の態様について、図9を参照しつつ、説明する。
(II-1)金属板の裏面にのみ、前述した要件を満足する磁性塗膜が形成されている態様[図9(a)]
この場合、裏面には3〜50μmの磁性塗膜が形成されている。従って、所望の放熱特性を得る為にはまず、反対側の表面に、1μm超の放熱塗膜を被覆することが必要であり(これにより、表裏面に塗膜が形成されることになる)、且つ、表裏面を放熱塗膜とする為に、各塗膜には、放熱性を有する添加剤(放熱性添加剤)を添加することが必要である[図9(a)を参照]。尚、図9中、21は磁性粉末、22は金属板、23は放熱性添加剤である。
更に上記第二の塗装体で規定する所望の放熱性[上記(II-3)]を確保する為には、放熱性添加剤として、特に放射率の高いカーボンブラック(または酸化チタン)を、少なくとも片面の塗膜に添加しておくことが必要であり、カーボンブラックを含有しない面(または酸化チタンを含有しない面)には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤(または酸化チタン以外の放熱性添加剤)を添加する。勿論、両面にカーボンブラック(または酸化チタン)を添加すれば、放熱特性に一層優れた塗装体が得られるので、極めて有用である。
かかる趣旨から、上記(II-1)では、裏面の磁性塗膜、及び表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、カーボンブラック(または酸化チタン)を含有しており、カーボンブラックを含有しない面(または酸化チタンを含有しない面)には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤(または酸化チタン以外の放熱性添加剤)を含有している旨、定めた次第である。
以下、順次、説明する。
(II-1-i)磁性塗膜または放熱塗膜のうち少なくとも一方は、カーボンブラックを1%以上含有し;カーボンブラックを含有しない面には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有
カーボンブラックは、優れた放熱性を有する黒色添加剤であり、本発明では所望の放熱特性を得る為に、磁性塗膜または放熱塗膜のうち少なくとも片面が、カーボンブラックを含有していることが推奨される。
尚、磁性塗膜または放熱塗膜のうち少なくとも一方は、カーボンブラックのみ含有されていても良いが、その他の黒色添加剤や、黒色添加剤以外の放熱性添加剤を併用しても良い(これらの例示は、後記する)。但し、所望の放熱性を確保する為には、黒色添加剤中、カーボンブラックの占める比率を10%以上(好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上)に制御することが推奨される。カーボンブラックは、他の代表的な黒色添加剤(酸化物系の添加剤等)に比べて比重が小さい為、質量比率で換算した場合は、少ない比率でも充分所望の放熱効果が発揮されることになる。最も好ましいのは、黒色添加剤がカーボンブラックのみで構成される黒色塗膜である。
ここで、塗膜中に含まれるカーボンブラックの含有量は、当該塗膜の膜厚との関係で適切に制御する必要があるが、1%以上添加することが推奨される。基本的にはカーボンブラックの添加量が多い程、優れた放熱特性が得られることから、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。尚、その上限は放熱特性との関係では特に制限されないが、15%以上になると塗装性が悪くなる他、耐疵付き性等も低下する。従って、塗装性等を考慮した場合は上限を15%未満とすることが好ましく、より好ましい順に13%、12%である。
ここで、塗膜中のカーボンブラックの添加量は、以下の方法により、測定することができる。
まず、被験体(分析サンプル)に溶媒を加えて加温し、被験体中の有機物を分解する。使用する溶媒の種類は、ベース系樹脂の種類によっても異なり、各樹脂の溶解度に応じて、適宜、適切な溶媒を使用すれば良いが、例えば、ベース樹脂としてポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂を用いる場合は、水酸化ナトリウム−メタノール溶液を添加した容器(ナス型フラスコ等)に被験体を加え、この容器を70℃のウォーターバスで加温し、被験体中の有機物を分解すれば良い。
次いで、この有機物をガラスフィルター(孔径0.2μm)で濾別し、得られた残渣中の炭素を、燃焼赤外線吸収法により定量し、塗膜中のカーボンブラック濃度を算出する。
また、カーボンブラックの平均粒径は5〜100nmに制御することが好ましい。平均粒径が5nm未満では、所望の放熱特性が得られない他、塗料の安定性が悪く、塗装外観に劣る。一方、平均粒径が100nmを超えると放熱特性が低下するのみならず、塗装後外観が不均一となってしまう。好ましくは10nm以上、90nm以下;より好ましくは15nm以上、80nm以下である。尚、放熱特性に加え、塗膜安定性、塗装後外観均一性等を総合的に勘案すれば、カーボンブラックの最適平均粒径は概ね20〜40nmとすることが推奨される。
本発明では、上記平均粒径を満足するカーボンブラックとして市販品を使用しても良く、例えば、三菱化学製「三菱カーボンブラック」(平均粒径13〜75μm)等の使用が推奨される。尚、本発明に用いられる黒色添加剤の平均粒径は、上記市販品のパンフレットにも記載されている通り、電子顕微鏡による算術平均径によって算出すれば良い。
また、上述したカーボンブラック以外の放熱性添加剤(「CB以外の放熱性添加剤」)としては、例えば、黒色添加剤としてFe,Co,Ni,Cu,Mn,Mo,Ag,Sn等の酸化物、硫化物、カーバイドや黒色の金属微粉等;黒色添加剤以外の放熱性添加剤として、TiO2、ジルコニア、ユージライト、チタン酸アルミニウム、βスポジューメン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、六方晶窒化ホウ素、酸化鉄、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のセラミックス;Al粉(鱗片状のAlフレーク等)等が挙げられ、これらを単独、若しくは2種以上を併用しても良い。所望の放熱特性を確保する為には、上記「CB以外の放熱性添加剤」の含有量を合計で10%以上とし、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。
これらのうち好ましいのは、TiO2等のセラミックス、Alフレークであり;更に好ましいのはTiO2である。
例えばTiO2を使用する場合、TiO2を約30〜70%含有する塗膜を、約5〜50μm形成させると、概ね、0.8前後の赤外線放射率が得られる。上記塗膜中に、更にカーボンブラック等の黒色添加剤等を添加すれば、赤外線放射率は一層大きくなる。また、表面にメタリック調外観を付与したいときは、表面の塗膜にAlフレークを使用することが推奨される。この場合、Alフレークの含有量を5〜30%とし、当該塗膜の膜厚を約5〜30μmとすれば、約0.6〜0.7の赤外線放射率が得られる。
この様な平均粒径を満足する放熱性添加剤として市販品を使用しても良く、例えばTiO2としてテイカ株式会社製のTiO2(平均粒径0.2〜0.5μm);Alフレークとして昭和アルミパウダー製のLB584(平均粒径25μm)等の使用が推奨される。尚、本発明に用いられる「CB以外の放熱性添加剤」の平均粒径は、前述したカーボンブラックの市販品[三菱化学製「三菱カーボンブラック」(平均粒径13〜75μm)]のパンフレットにも記載されている通り、電子顕微鏡による算術平均径によって算出すれば良い。
(II-1-ii)磁性塗膜または放熱塗膜のうち少なくとも一方は、酸化チタンを30%以上含有し;酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有
上記第二の塗装体では、カーボンブラックの代わりに酸化チタンを使用しても良い。酸化チタンは、カーボンブラックに次いで放射率の高い放熱性添加剤だからである。
尚、酸化チタンを使用する場合は、その添加量を30%以上(好ましくは40%以上)とし、酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤(前述した「CB以外の放熱性添加剤」のうち、酸化チタンを除いたもの、更にカーボンブラックも含まれる)を1%以上(好ましくは3%以上)とする。これらの詳細は前述した通りである。
表面の放熱塗膜の膜厚:1μm超
上記(II-1-i)及び(II-1-ii)のいずれにおいても、表面の放熱塗膜の膜厚は、1μm超とすることが必要である。この下限は、所望の放熱特性を確保する為に定められたものであり、上記膜厚が1μm未満では、放熱性添加剤を多く添加しても所望の放熱特性が得られない。好ましい下限は順に、3μm、5μm、7μm、10μmである。
尚、その上限は、放熱特性との関係では特に制限されないが、電子機器部品への適用を意図している関係で、加工性の向上も要求されること;特に曲げ加工時における塗膜のクラックや剥離等の発生防止等を考慮すると、50μm以下(より好ましい順に、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下)に制御することが推奨される。
更に、良好な加工性を備えると共に、優れた導電性も確保する為には、12μm以下(より好ましい順に11μm以下、更により好ましくは10μm以下)に制御することが推奨される。
ここで、表面・裏面の塗膜に添加される樹脂(放熱塗膜を形成するベース樹脂)の種類は、放熱特性の観点からは特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等を適宜使用することができる。但し、本発明塗装体は電子機器の筺体として使用される為、放熱性に加え、加工性の向上も要求されることを考慮すると、上記ベース樹脂は、非親水性樹脂[具体的には、水との接触角が30°以上(より好ましくは50°以上、更により好ましくは70°以上)を満足するもの]であることが好ましい。この様な非親水性特性を満足する樹脂は、混合度合や変性の程度等によっても変化し得るが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の使用が好ましく、なかでもポリエステル系樹脂の使用が推奨される。
更に上記塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、カーボンブラック/酸化チタンの他、防錆顔料、シリカ等の顔料も添加しても良い。或いは、これら以外の他の放熱性添加剤[例えば、ジルコニア、ユージライト、チタン酸アルミニウム、βスポジューメン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、六方晶窒化ホウ素、酸化鉄、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のセラミックス;Al粉(鱗片状のAlフレーク等)等を1種または2種以上]も、本発明の作用を損なわない範囲で、添加することができる。
また、上記塗膜には、架橋剤を添加することができる。本発明に用いられる架橋剤としては、例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上、0.5〜20重量%の範囲で添加することが推奨される。
(II-2)金属板の表裏面に、前述した要件を満足する磁性塗膜が形成されている態様[図9(b)]
この場合、表裏面には3〜50μmの磁性塗膜が形成されている。所望の放熱特性を得る為には、上記磁性塗膜を放熱塗膜とすることが必要であり、その為には、各塗膜に放熱性添加剤を添加することが必要である[図9(b)を参照]。
具体的な構成は、前述した第二の塗装体(II-1)と同様である。
(II-3) 式(1):a×b≧0.42
式中、a及びbは、金属板の表裏面に塗膜が被覆された塗装体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率において、表面の赤外線積分放射率a、裏面の赤外線積分放射率bを夫々、意味する。
上記の赤外線積分放射率は後述する方法で測定され、表面若しくは裏面の赤外線積分放射率を夫々、別々に測定することができる。
ここで、上記「赤外線積分放射率」とは、換言すれば、赤外線(熱エネルギー)の放出し易さ(吸収し易さ)を意味する。従って、上記赤外線放射率が高い程、放出(吸収)される熱エネルギー量は大きくなることを示す。例えば物体(本発明では塗装体)に与えられた熱エネルギーを100%放射する場合には、当該赤外線積分放射率は1となる。
尚、本発明では、100℃に加熱したときの赤外線積分放射率を定めているが、これは、本発明塗装体が電気機器用途(部材等によっても相違するが、通常の雰囲気温度は概ね、50〜70℃で、最高で約100℃)に適用されることを考慮し、当該実用レベルの温度と一致させるべく、加熱温度を100℃に定めたものである。
本発明における赤外線積分放射率の測定方法は以下の通りである。
装置:日本電子(株)製「JIR−5500型フーリエ変換赤外分光
光度計」及び放射測定ユニット「IRR−200」
測定波長範囲:4.5〜15.4μm
測定温度:試料の加熱温度を100℃に設定する
積算回数:200回
分解能 :16cm-1
上記装置を用い、赤外線波長域(4.5〜15.4μm)における試料の分光放射強度(実測値)を測定した。尚、上記試料の実測値は、バックグラウンドの放射強度及び装置関数が加算/付加された数値として測定される為、これらを補正する目的で、放射率測定プログラム[日本電子(株)製放射率測定プログラム]を用い、積分放射率を算出した。算出方法の詳細は以下の通りである。
Figure 2005271572
式中、
ε(λ) :波長λにおける試料の分光放射率(%)
E(T) :温度T(℃)における試料の積分放射率(%)
M(λ,T) :波長λ、温度T(℃)における試料の分光放射強度
(実測値)
A(λ) :装置関数
FB(λ) :波長λにおける固定バックグラウンド(試料によって
変化しないバックグラウンド)の分光放射強度
TB(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の
分光放射強度
B(λ,T) :波長λ、温度T(℃)における黒体の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
λ1,λ2 :積分する波長の範囲
を夫々、意味する。
ここで、上記A(λ:装置関数)、及び上記KFB(λ:固定バックグラウンドの分光放射強度)は、2つの黒体炉(80℃、160℃)の分光放射強度の実測値、及び当該温度域における黒体の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)に基づき、下記式によって算出したものである。
Figure 2005271572
式中、
160℃(λ,160℃):
波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
80℃(λ,80℃):
波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
160℃(λ,160℃):
波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
80℃(λ,80℃):
波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度
(ブランクの理論式からの計算値)
を夫々、意味する。
尚、積分放射率E(T=100℃)の算出に当たり、KTB(λ,TTB)を考慮しているのは、測定に当たり、試料の周囲に、水冷したトラップ黒体を配置している為である。上記トラップ黒体の設置により、変動バックグランド放射(試料によって変化するバックグラウンド放射を意味する。試料の周囲からの放射が試料表面で反射される為、試料の分光放射強度の実測値は、このバックグランド放射が加算された数値として表れる)の分光放射強度を低くコントロールすることができる。上記のトラップ黒体は、放射率0.96の疑似黒体を使用しており、前記KTB[(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の分光放射強度]は、以下の様にして算出する。
TB(λ,TTB)=0.96×KB(λ,TTB
式中、KB(λ,TTB)は、波長λ、温度TTB(℃)における黒体の
分光放射強度を意味する。
本発明に係る第二の塗装体は、この様にして測定した赤外線(波長4.5〜15.4μm)の積分放射率[上記E(T=100℃)]であって、前述したa及びbの積(a×b)が0.42以上[式(1)]を満足するものである。上記「a×b」で算出される数値(塗装体から放出される赤外線積分放射率の積)は、塗装体自体の放熱効果を示す指標として有用であり、上式を満足する塗装体は、上記波長域において、平均して高い放射特性を発揮することから、上記第一の塗装体における放熱特性の目標レベルを「a×b≧0.42」に定めた。「a×b」(最大で1)の値は大きい程(1に近ければ近い程)、優れた放熱特性を発揮し、好ましい順に、0.49以上、0.56以上、0.61以上、0.64以上、0.72以上である。
尚、上記第二の塗装体では、上述した放熱特性の目標レベルを満足する限り、表面の赤外線放射率と、裏面の赤外線放射率の関係は特に限定されず、表面と裏面の赤外線放射率が異なる態様、及び両面が同程度の放射率を有する態様の両方を包含する。これに対し、本発明に係る第三の塗装体では、放熱性に加え、自己冷却性の向上を主目的としており、裏面に比べ、表面の赤外線放射率が高い塗装体のみに限定している点で、両者は相違する[詳細は、第三の塗装体の項で詳述する]。
具体的には、上式(1)「a×b≧0.42」の放熱特性を満足する限りにおいて、表面/裏面は、任意の赤外線放射率を定めることができる。但し、赤外線放射率の最大値は1であるから、上式(1)を満たす為には、少なくとも片面の赤外線放射率を0.42以上;a×b≧0.56を満たす為には、少なくとも片面の赤外線放射率を0.56以上;a×b≧0.64を満たす為には、少なくとも片面の赤外線放射率を0.64以上とすることが必要である。
ここで、片面の赤外線放射率は大きければ大きい程好ましく、少なくとも片面の赤外線放射率が0.65以上を満足するものは好ましい態様である。より好ましい順に、0.7以上、0.75以上、0.8以上である。両面が0.65以上の塗装体は、更に好ましい。
更に上記第二の塗装体では、上記赤外線(波長4.5〜15.4μm)の任意の波長域における分光放射率の最大値Aと最小値Bとの差(A−B)は0.35以下であることが好ましい。この「A−B」は、上記赤外線波長域における「放射率の変化幅」を表すもので、「A−B≦0.35」とは、上記赤外線波長域のいずれにおいても、安定して高い放射特性を発揮することを示している。従って、上記要件を満足するものは、例えば、放出される赤外線の波長が異なる部品を種々搭載した電子機器等の用途への適用も可能となる等、電子機器部材用への用途の拡大が期待されるものである。具体的には、上記の如く測定した任意の放射率を測定し、当該波長域における分光放射率の最大値(A)と最小値(B)との差(A−B)を「放射率の変化幅」として算出する。上記「A−B」の値は、小さければ小さい程、安定した放熱特性を得ることができ、より好ましくは0.3以下、更により好ましくは0.25以下である。
(III)上記(I)の塗装体において、更に放熱性及び自己冷却性に優れた塗装体(第三の塗装体)
上記第三の塗装体は、前述した基本思想をベースとしてなされたものであり、上記第一の塗装体において、上記(III-1)または(III-2)を満足しており、且つ、上記(III-3)を満足することにより放熱性及び自己冷却性が高められたところに特徴がある。
まず、上記(III-1)及び(III-2)を定めた趣旨について説明する。
上記第三の塗装体もその前提として、電磁波吸収性及び加工性に優れていることが要求される為、磁性塗膜は、少なくとも裏面に形成されていることが必要であり、具体的には裏面のみに磁性塗膜が形成される態様(III-1)と、表裏面に磁性塗膜が形成される態様(III-2)の二つが包含される。
一方、放熱性及び自己冷却性の向上という観点からすると、金属板の表面に1μm超の放熱塗膜が形成されており(裏面の磁性塗膜は、必ずしも放熱塗膜とする必要はない)、且つ、表面の放熱塗膜、及び裏面の磁性塗膜には、放熱性添加剤を含有することが必要であり、これにより、所望の放熱特性及び自己冷却性[上記(III-3)]を確保することができる。
この様に上記第三の塗装体は、電磁波吸収性向上の為に要求される要件と、放熱性及び自己冷却性の向上の為に要求される要件を勘案して定められたものである。
以下、これら(III-1)及び(III-2)の態様について、個別に説明する。
(III-1)金属板の裏面にのみ、前述した要件を満足する磁性塗膜が形成されている態様
この場合、裏面には3〜50μmの磁性塗膜が形成されている。従って、所望の放熱特性及び自己冷却性を得る為にはまず、反対側の表面に、1μm超の放熱塗膜を被覆することが必要であり(これにより、表裏面に塗膜が形成されることになる)、且つ、少なくとも表面を放熱塗膜とする為に、当該塗膜には放熱性添加剤を含有することが必要である。また、所望の自己冷却性を確保する為には、表面の赤外線放射率は裏面に比べ、高くして上式(2)を満足することが必要であり、且つ、放熱特性は、少なくとも上式(3)を満足することが必要である。
一方、裏面については、3〜50μmの磁性塗膜が形成されている為、所望の放熱特性が得られる限り、放熱性添加剤を更に添加することは必ずしも必要ではない。上記磁性塗膜のみで、或る程度の放射率を確保できるからである。即ち、前述した「表面の塗膜」は、優れた自己冷却性を確保する為に放熱塗膜とする必要があるが、「裏面の塗膜」は、所望の特性が得られる限り、必ずしも放熱塗膜とする必要はない。従って、上記第三の塗装体には、金属板の裏面に塗膜が施されていない「片面塗装鋼板」は包含されない(塗膜なし原板の赤外線放射率は概ね0.04で、所望の自己冷却性は得られない)が、上式(2)を満足する限りにおいて、任意の塗膜を採用することができる。勿論、裏面の磁性塗膜にも、放熱性添加剤を添加すれば、より優れた放熱特性が得られることは言うまでもない。
かかる趣旨から、第三の塗装体(III-1)では、表面の放熱塗膜は、放熱性添加剤を含有しており、裏面の磁性塗膜は、更に放熱性添加剤を含有しても良い旨、定めた次第である。
まず、上記態様において、「表面の放熱塗膜の膜厚:1μm超」については、前記(II)に詳述した通りである。
また、使用する放熱性添加剤としては、前記(II)に記載の放熱性添加剤(カーボンブラック、酸化チタンを含む)が挙げられる。従って、上記第三の塗装体では前述した第二の塗装体と異なり、放射率の高いカーボンブラックや酸化チタンに限定されず、Alフレーク等の放熱性添加剤も、後記する(III-3)を満足する限りにおいて、使用することができる。
具体的には、前述した黒色金属板において、表面塗膜の放射率に応じて、適宜、添加量及び塗膜厚を適切に調整して裏面の塗膜を形成することができる。尚、黒色添加剤を用いて裏面の塗膜を形成する場合、裏面が放熱性を殆ど有しない場合であっても、表面塗膜の赤外線放射率さえ、適切に制御すれば、所望の自己冷却性を確保することができる。
或いは、上記の添加剤を全く添加せず、塗膜厚を所定範囲(約2.5μm以上)に制御した塗膜も採用することができる。塗膜中に含まれる樹脂のみによっても、或る程度の放熱特性が得られるからである。
具体的には、例えば塗膜形成樹脂として非親水性のポリエステル系樹脂を使用する場合は、塗膜厚を概ね、2.5μm以上に調整すれば良い。
(III-2)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足する。
b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
上記第三の塗装体は前述した構成を採用しており、塗装体自体の温度上昇が抑えられるので、当該塗装体を電子機器の筺体として使用したとき、電子機器稼動時に、取扱者が触れたとしても「熱くない」と感じる等、取扱者側から見て安全な電子機器を提供することができる。しかも上記塗装体は、良好な放熱性も兼ね備えているので、これらの両特性を兼ね備えた電子機器部材は、更なる用途の拡大をもたらす点で非常に有用である。
まず、自己冷却性の指標について説明する。
式(2):b≦0.9(a−0.05)
上式(2)は、裏面の赤外線放射率に比べ、表面の赤外線放射率を高くし、塗装体に吸収された熱を外気側へ移動させる放熱効果を示す指標として定めたものであり、塗装体自体の温度上昇を抑制する「自己冷却性」の指標として有用である。上式は、「金属板の裏面(電子機器内部側)に比べ、金属板の表面(外気側)の赤外線放射率を高くした塗膜を施すことにより、塗装体自体の温度上昇を抑制しよう」という思想のもと、所望の自己冷却性(後記するΔT2で0.5℃以上)を確保できる表面・裏面の赤外線放射率の関係式を特定したものである。
塗装体を電子機器の筺体に使用する場合、筺体内部面(裏面)の赤外線放射率を高めると、電子機器内熱源から放出される赤外線吸収量が増加し、塗装体自体の温度は上昇してしまう。一方、筺体外部面(表面)の放射率を高めれば、塗装体から外気に向けて放出する赤外線放出量が増加し、塗装体の温度も低下する。本発明は、この様な知見に基づき、種々の実験を重ねて上式を定めたものであり、本発明によれば、金属板の裏面側で吸収(放射)される熱量よりも、金属板の表面側から放射される熱量が大きくなるので、塗装体自体の温度上昇を効率よく抑えることが可能になる。
この様に金属板の表面と裏面に放熱特性の異なる塗膜を設け、放熱特性の水準を或る程度維持しつつ、しかも塗装体の温度上昇をも抑制させた塗装体は従来知られておらず、新規であると考える。
従って、上記第三の塗装体では、aとbの赤外線放射率の差が大きい程、優れた自己冷却性が得られる。具体的には、上式(2)を変形した式(0.9a−b≧0.045)中、左辺(0.9a−b)の計算値をQ値としたとき、このQ値が大きい程好ましい。好ましい順に、0.13以上、0,24以上、0.35以上、0.47以上である。
式(3):(a−0.05)×(b−0.05)≧0.08
上式(3)は、第三の塗装体における放熱特性の指標を、表裏面の赤外線積分放射率の積によって特定したもので、左辺[(a−0.05)×(b−0.05)]の計算値R値が大きい程、放熱特性に優れていることを示す。
上記第三の塗装体における放熱特性のレベル(後記するΔT1に換算するとΔT1≧1.5℃)は、第二の塗装体のレベル(後記するΔT1≧2.6℃)に比べ、許容範囲が広い。これは、第三の塗装体では自己冷却性の向上を主な解決課題として掲げており、当該課題を達成する限りにおいては、放熱特性のレベルは、第二の塗装体に比べて若干低い態様をも包含し得るという知見に基づき、定めたものである。
(IV)上記(I)の塗装体において、更に耐疵付き性及び耐指紋性に優れた塗装体(第四の塗装体)
上記第四の塗装体は、上記第一の塗装体において、上記(IV-1)または(IV-2)を満足しており、且つ、上記(IV-3)〜(IV-4)を満足することにより、耐疵付き性及び耐指紋性が高められたところに特徴がある。
まず、上記(IV-1)及び(IV-2)を定めた趣旨について説明する。
上記第四の塗装体もその前提として、電磁波吸収性及び加工性に優れていることが要求される為、磁性塗膜は、少なくとも裏面に形成されていることが必要であり、具体的には裏面のみに磁性塗膜が形成される態様(IV-1)と、表裏面に磁性塗膜が形成される態様(IV-2)の二つが包含される。
一方、黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性の向上という観点からすると、少なくとも表面を黒色とし、当該黒色面に、所定の白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜を形成する必要がある。上記第四の塗装体は、黒色金属板を電子機器部材の構成素材へ適用することを意図しており、疵や指紋の防止が要請される表面に上記樹脂塗膜を被覆し、黒色金属板の色調を、疵や指紋が目立ち難い色調に調整する隠蔽作用を発揮させるものだからである。
上記(IV-1)及び(IV-2)は、かかる観点から定められたものであり、以下、図10を参照しつつ、説明する。
(IV-1)金属板の裏面にのみ、前述した要件を満足する磁性塗膜が形成されている態様[図10(a)]
この場合、表面は、黒色添加剤を含有する黒色塗膜と、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜の二層構成とする[図10(a)]。この様な二層塗膜とすることにより、所望の耐疵付き性及び耐指紋性が発揮される。尚、図10中、24は白色顔料/光輝顔料である。
一方、裏面には前述した磁性塗膜が被覆されており、当該磁性塗膜には、必要に応じて黒色添加剤を添加しても良い。尚、裏面の磁性塗膜が黒色添加剤を含有する場合は、更に白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、これにより、裏面側においても、優れた耐疵付き性及び耐指紋性を確保することができる。
以下、上記「黒色塗膜」と「樹脂塗膜」について、夫々、説明する。
黒色塗膜について
本発明における「黒色塗膜」とは、黒色添加剤を含有する塗膜を意味する。上記黒色添加剤としては、要するに黒色に着色し得るものであれば特に限定されず、種々の黒色添加剤が挙げられる。前述した通り、上記第四の塗装体では、黒色金属板における耐疵付き性等を改善する為に、当該黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する所定の樹脂塗膜を被覆したところに特徴があり、黒色塗膜自体については限定する趣旨はないからである。本発明に用いられる黒色添加剤としては、代表的にはカーボンブラックが挙げられるが、その他、Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Mo,Ag,Sn等の酸化物、硫化物、カーバイドや黒色の金属微粉等を使用することもできる。
上記黒色塗膜における他の要件、例えば黒色添加剤の種類、黒色塗膜中に添加される樹脂(黒色塗膜を形成するベース樹脂)の種類、添加し得る他の成分(防錆顔料、シリカ、架橋剤等)等については、前記(II)に記載した通りである。
この様な構成からなる黒色塗膜の膜厚は上限及び下限ともに、耐疵付き性及び耐指紋性との関係では特に限定されないが、耐食性や加工性等を考慮すると、好ましい下限は1μm、より好ましくは3μmである。
また、上記黒色塗膜には、Ni等に代表される導電性フィラーを含有しても良く、これにより、優れた導電性を確保することができる。但し、黒色塗膜に導電性フィラーを添加する場合は、膜厚の下限を2μmに制御することが好ましく、これにより、クロムフリー塗装体であっても(後記する通り、本発明にはクロムフリー塗装体も包含される)、耐食性と導電性の両方を確保することができる。より好ましい下限は3μm、更により好ましくは5μmである。
一方、上記黒色塗膜の膜厚の上限に関しては、本発明塗装体は特に電子機器部品への適用を意図しており、当該用途との関係上、加工性の向上も要求されること;また、曲げ加工時における塗膜のクラックや剥離等の発生防止等を考慮すると、膜厚の上限を50μm(より好ましい順に、45μm、40μm、35μm、30μm)に制御することが推奨される。
尚、良好な加工性を備えると共に、優れた導電性も確保する為には、黒色塗膜及び樹脂塗膜に導電性フィラー(後記する)を添加することが推奨されるが、この場合は、当該導電性フィラーを添加した黒色塗膜の膜厚と、前述した樹脂塗膜の膜厚を合計で、13μm以下(より好ましい順に、12μm以下、11μm以下、10μm以下)とすることが好ましい。
上記黒色塗膜が施される金属板としては特に限定されず、例えば冷延鋼板、熱延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、5%Al−Znめっき鋼板、55%Al−Znめっき鋼板、Al等の各種めっき鋼板、ステンレス鋼板等の鋼板類や、公知の金属板等を全て適用することができる。
上記金属板は、耐食性向上、塗膜の密着性向上等を目的として、クロメート処理やリン酸塩処理等の表面処理が施されていてもよいが、一方、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよく、いずれの態様も本発明の範囲内に包含される。
尚、上記第四の塗装体を特徴付ける「樹脂塗膜」については、(IV-3)に詳述する。
(IV-2)金属板の表裏面に、前述した要件を満足する磁性塗膜が形成されている態様[図10(b)]
この場合は、少なくとも表面の磁性塗膜を、黒色添加剤を含有する黒色磁性塗膜とし、当該表面の黒色磁性塗膜には、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されており、該裏面には、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良い。
このうち、黒色添加剤等に関する要件は、前記(IV-1)に記載した通りである。
(IV-3)白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜の膜厚及び含有量
本発明では、上記樹脂塗膜の膜厚を0.5〜10μm、当該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量を、合計で1〜25%とする。これらの範囲を外れたものは、所望の耐疵付き性及び耐指紋性が得られないことを、後記する実施例により確認している。
以下、上記規定について説明する前に、まず、本発明における「樹脂塗膜」の意義、及び当該樹脂塗膜に含まれる白色顔料/光輝顔料の種類について説明する。
前述した通り、上記樹脂塗膜は、黒色側表面の一方または両方に被覆されるものであり、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有するものである。本発明では、これらの顔料を、本来の添加目的(意匠性付与)の為に被覆するのではなく、黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性の改善という、従来とは全く異なる添加目的で被覆するものであり、その為に、上記樹脂塗膜の膜厚を0.5〜10μmに制御し、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量を合計で1〜25%に調節する樹脂塗装金属板全体の色調(L値)を44.0〜60.0に制御したところに最大の特徴がある。
前述した通り、白色顔料や光輝顔料は、光輝感(メタリック色調)やパール感を付与する顔料として公知である。しかしながら、本発明では、これらの顔料を含有する樹脂塗膜が所定範囲を満足する場合は、極めて優れた耐疵付き性及び耐指紋性の作用を発揮し得、皮膜に発生した疵は勿論のこと、従来のクリアー塗膜では対処できなかった疵(鋼板のエッジ等に発生した疵そのもの)をも抑制できることを見出した点に技術的意義を有しており、耐疵付き性及び耐指紋性との関係で、上記樹脂塗膜の膜厚及び顔料添加量を所定範囲に制御するという技術的思想は、本発明独自のものであり、従来全く知られていなかったものである。
ちなみに前述した特許文献8〜10は、意匠性向上といった観点から、これら顔料の改質技術を開示しているに過ぎず、耐疵付き性や耐指紋性の改善については全く意図していない。その為、上記特許文献では、光輝顔料等を含有する樹脂塗膜の膜厚を約15μm若しくはそれ以上(20〜70μm)と厚く被覆しており、これでは所望の耐指紋性等の改善効果が得られないことを、実験により確認している(後記する実施例を参照)。
本発明に用いられる顔料のうち光輝顔料は、受けた光を反射して塗膜にメタリック感やパール感(光干渉性模様)等の意匠性を与えるものであり、例えばアルミニウム粉等の金属粉、ステンレス鋼フレーク等の金属フレーク、雲母(マイカ)、マイカシャスアイアンオキサイド(MIO、鱗片状酸化鉄)、ガラスフレーク、ブロンズ顔料等が挙げられる。各光輝顔料には、これらをコーティングしたものも包含されており、例えば樹脂コーティングアルミニウム粉、シリカコーティングアルミニウム粉、フッ素化合物コーティングアルミニウム粉、ハステロイドコーティングガラスフレークの他;雲母を主成分とし、その表面を各種金属酸化物(二酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ等)または各種着色顔料で被服したものも包含され、例えばパール雲母(酸化チタン被覆マイカ)等のパール顔料(例えばメルクジャパン製のIriodin103W II、Iriodin121WII、Iriodin111WII等)等の使用が推奨される。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
また、本発明に用いられる白色顔料は、塗膜に白色度を付与する目的で添加される顔料であり、例えば酸化チタン[具体的にはテイカ(株)製のJP301、JP603、JP806、JRNC等]、鉛白、亜鉛華、白亜等が挙げられる。
これらの白色顔料/光輝顔料は夫々、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。従って、白色顔料を2種以上使用するもの、光輝顔料を2種以上使用するもの、白色顔料の少なくとも1種及び光輝顔料の少なくも1種を使用するものが挙げられ、いずれの態様も全て、本発明の範囲内に包含される。
これらの顔料のうち、特に耐疵付き性及び耐指紋性の向上という観点からすれば、酸化物系の添加剤を含有する白色顔料/光輝顔料が好ましく、なかでも酸化チタンを含有するものが、より好ましい。具体的には、白色顔料として酸化チタン;光輝顔料として、酸化チタンを含有するもの、例えば雲母を主成分とし、その表面を上述した金属酸化物で被覆したもの、特に酸化チタン被覆マイカ(メルクジャパン製のIriodin111WII等)等]の使用が推奨される。
また、上記光輝顔料/白色顔料の平均粒径は、使用する顔料の形状によっても相違するが、例えば粒状の場合は概ね、0.1〜10μm(好ましくは0.2μm以上、5μm以下;更に好ましくは3μm以下);鱗片状(フレーク状)の場合は概ね、5〜50μm(好ましくは10μm以上、40μm以下;更に好ましくは30μm以下)とすることが推奨される。平均粒径が各下限値を下回ると、顔料添加による、疵や指紋の隠蔽力が低下して膜厚を高める必要があるが、膜厚をあまり高くすると、加工性等の低下を招いてしまう(後記する)。一方、平均粒径が各上限値を超えると、塗膜の外観に色調ムラが発生し易くなる。
より詳細には例えば酸化チタンの場合は、平均粒径を0.1μm以上、0.4μm以下とし;酸化チタン被覆マイカの場合は、平均粒径を5μm以上、50μm以下、厚さを0.2μm以上、3μm以下にすることが好ましい。
ここで、上記顔料の平均粒径は、一般的な粒度分布計によって分級後の顔料粒子の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小粒径側からの積算値50%の粒度(D50)を意味する。斯かる粒度分布は、粒子に光を当てることにより生じる回折や散乱の強度パターンによって測定することができ、この様な粒度分布計としては、例えば、日機装社製のマイクロトラック9220FRAやマイクロトラックHRA等が例示される。
尚、上述した好ましい平均粒径を満足する顔料は、市販品を使用しても良い。例えば酸化チタン被覆マイカとして、メルクジャパン製のIriodin103W II(平均粒径10〜60μm)、Iriodin121WII(平均粒径5〜25μm)、Iriodin111WII(平均粒径15μm以下)等;酸化チタンとして、テイカ(株)製のJR301(平均粒径0.30μm)、JR603(平均粒径0.28μm)、JR806(平均粒径0.25μm)、JRNC(平均粒径0.37μm)等が挙げられる。
次に、上記第四の塗装体を特徴付ける要件(樹脂塗膜の膜厚、及び樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量)について説明する。
まず、上記樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmとする。この膜厚が0.5μm未満では、耐疵付き性及び耐指紋性向上作用が不充分である。好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2μm以上である。一方、膜厚が10μmを超えると加工性が低下する。好ましくは6μm以下、より好ましくは5μm以下である。
尚、上記樹脂塗膜中に、導電性向上の目的で導電性フィラーを添加する場合は、当該樹脂塗膜の上限を6μmとすることが推奨される。6μmを超えると、所望の導電性が発揮され難いからである。好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下である。
更に上記白色顔料/光輝顔料の樹脂塗膜全体に占める比率は、合計で1〜25%とする。1%未満では、ベース塗料に対する顔料の添加量が少なくて耐疵付き性及び耐指紋性の向上作用が不十分となるからである。一方、25%を超えると、塗膜の伸びが低下し、苛酷な曲げ加工を行なうと塗膜にクラック、更には塗膜剥離が発生する恐れがある。より好ましくは2%以上、20%以下;更により好ましくは3%以上、15%以下である。
上記樹脂塗膜中に添加される樹脂(ベース樹脂)の種類は、耐疵付き性及び耐指紋性の観点からは特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等を適宜使用することができる。本発明塗装体を特に、電子機器の筺体として使用する場合は、放熱性(後記する)の他に耐食性、加工性の向上も要求されることを考慮すると、上記ベース樹脂は、非親水性樹脂[具体的には、水との接触角が30°以上(より好ましくは50°以上、更により好ましくは70°以上)を満足するもの]であることが好ましい。この様な非親水性特性を満足する樹脂は、混合度合や変性の程度等によっても変化し得るが、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびそれらの混合または変性した樹脂等の使用が好ましく、なかでもポリエステル系樹脂若しくは変性したポリエステル系樹脂(エポキシ変性ポリエステル系樹脂、フェノール誘導体を骨格に導入したポリエステル系樹脂等の熱硬化性ポリエステル系樹脂または不飽和ポリエステル系樹脂)の使用が推奨される。
更に上記塗膜には、本発明の作用を損なわない範囲で、防錆顔料、塗料流動性向上剤(シリカ粒子や酸化アルミニウム等)を添加しても良い。
また、上記塗膜には、架橋剤を添加することができる。本発明に用いられる架橋剤としては、例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物等が挙げられ、これらを1種または2種以上、0.5〜20%の範囲で添加することが推奨される。
(IV-4)樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0
本発明の樹脂塗装金属板は、上述した構成からなるものであり、当該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値が44.0〜60.0を満足するものである。ここでL値は、小さい程白色度が大きい(黒い)ことを意味している。
ここで、L値を特に上記範囲に定めたのは以下の理由による。前述した通り、本発明は黒色金属板における耐疵付き性及び耐指紋性が著しく改善された樹脂塗装金属板を提供するものであるが、本発明者らが塗膜の色調と、疵・指紋との関係について検討したところ、塗膜の色調が黒色の場合は、疵や指紋が白く目立っており;一方、塗膜の色調が白色の場合は、疵や指紋が暗く目立つことが判明した。そうすると、「塗膜の疵や指紋を目立ち難くする為には、塗膜の色調を所定範囲に調整すれば良い」ことになる。本発明は、この様な知見に基づき、樹脂塗装金属板の色調(L値)を上記範囲に定めた次第である。
上記L値が44.0未満では、疵や指紋が白く目立ってしまい、所望の耐疵付き性及び耐指紋性が得られない。好ましくは46以上、より好ましくは48以上である。尚、L値が60.0を超えると、疵や指紋が暗く目立ってしまう。好ましくは56以下、より好ましくは52以下である。
上記塗装体において、耐疵付き性及び耐指紋性に加えて、導電性も高めたい場合には、黒色金属板及び/又は樹脂塗膜に、例えば導電性フィラーを添加することが推奨される。この導電性フィラーは、黒色金属板のみ、樹脂塗膜のみに添加しても良いし、或いは、黒色金属板及び樹脂塗膜の両方に添加しても良い。両方に導電性フィラーを添加すれば、非常に優れた導電性が得られるが、用途によっては、片面のみに導電性フィラーを添加しても良く、これによっても、所定の導電性を確保することができる。また、両面が黒色金属板の場合は、少なくとも一方のみに添加すればよい。
ここで、本発明に用いられる導電性フィラーとしては、Ag、Zn、Fe、Ni、Cu等の金属単体;FeP等の金属化合物が挙げられる。なかでも特に好ましいのはNiである。尚、その形状は特に限定されないが、より優れた導電性を得る為には、鱗片状のものを使用することが推奨される。
また、上記導電性フィラーの含有量は塗膜形成成分(ポリエステル樹脂等のベース樹脂の他、必要に応じて添加される架橋剤、更には黒色添加剤及び導電性フィラー、及び必要に応じて添加される添加剤も含めた、塗膜を形成する成分すべてを意味する)100%(固形分換算)に対し、合計で10〜50%とする。10%未満では所望の効果が得られない。好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更により好ましくは35%伊かである。一方、導電性フィラーの含有量が50%を超えると加工性が低下する。特に、塗装金属板の如く高度の曲げ加工性が要求される部位に適用する場合には、45%以下とすることが推奨される。より好ましくは40%以下、更により好ましくは35%以下である。
尚、黒色金属板として、黒色下地処理された金属板を使用する場合にも、上述した要件を満足する導電性フィラー含有樹脂塗膜を形成することにより、良好な導電性を確保することができる。
(V)上記(I)の塗装体において、更に放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた塗装体(第五の塗装体)
上記第五の塗装体は、上記第一の塗装体において、上記(V-1)または(V-2)を満足しており、且つ、前述した(V-3)[前記(II-3)と同じ]を満足することにより放熱性が高められており;前述した(V-4)及び(V-5)[前記(IV-3)及び(IV-4)と同じ]を満足することにより、耐疵付き性及び耐指紋性が高められたところに特徴がある。
このうち、(II-3)、(IV-3)及び(IV-4)は、前述した通りである。
次に、上記(V-1)及び(V-2)を定めた趣旨について説明する。
上記第五の塗装体もその前提として、電磁波吸収性及び加工性に優れていることが要求される為、磁性塗膜は、少なくとも裏面に形成されていることが必要であり、具体的には裏面のみに磁性塗膜が形成される態様(V-1)と、表裏面に磁性塗膜が形成される態様(V-2)の二つが包含される。
一方、放熱性の向上という観点からすると、前述した第二の塗装体に規定する要件(II-3)を満足することが必要である。
また、耐疵付き性及び耐指紋性の向上という観点からすると、前述した第四の塗装体[(IV-3)及び(IV-4)]に規定する要件を満足することが必要である、
この様に上記第五の塗装体は、電磁波吸収性向上の為に要求される要件と、放熱性向上の為に要求される要件と、耐疵付き性及び耐指紋性の向上の為に要求される要件を勘案して定められたものである。
(VI)上記(I)の塗装体において、更に放熱性、自己冷却性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた塗装体(第六の塗装体)
上記第六の塗装体は、前述した第一の塗装体において、上記(VI-1)または(VI-2)を満足しており、且つ、上記(VI-3)及び(VI-4)[前述した(III-3)及び(III-4)と同じ]を満足することにより、放熱性及び自己冷却性が高められており;上記(IV-5)及び(IV-6[前述した)(IV-3)及び(IV-4)]を満足することにより、耐疵付き性及び耐指紋性が高められたところに特徴がある。
上記第六の塗装体もその前提として、電磁波吸収性及び加工性に優れていることが要求される為、磁性塗膜は、少なくとも裏面に形成されていることが必要であり、具体的には裏面のみに磁性塗膜が形成される態様(VI-1)と、表裏面に磁性塗膜が形成される態様(IV-2)の二つが包含される。
一方、放熱性及び自己冷却性の向上という観点からすると、前述した第三の塗装体に規定する要件[前記(III-3)及び(III-4)]を満足することが必要である。
また、耐疵付き性及び耐指紋性の向上という観点からすると、前述した第四の塗装体に規定する要件[前記(IV-5)及び(IV-6)と同じ]を満足することが必要である、
この様に上記第六の塗装体は、電磁波吸収性向上の為に要求される要件と、放熱性及び自己冷却性向上の為に要求される要件と、耐疵付き性及び耐指紋性の向上の為に要求される要件を勘案して定められたものであり、その結果、前述した要件を定めた次第である。その詳細は前述した通りである。
次に、本発明の塗装体を製造する方法について説明する。本発明の塗装体は、上記成分を含む塗料を、公知の塗装方法で金属板の表面に塗布し、乾燥させて製造することができる。塗装方法は特に限定されないが、例えば表面を清浄化して、必要に応じて塗装前処理(例えばリン酸塩処理、クロメート処理など)を施した長尺金属帯表面に、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法などを用いて塗料を塗工し、熱風乾燥炉を通過させて乾燥させる方法などが挙げられる。被膜厚さの均一性や処理コスト、塗装効率などを総合的に勘案して実用上好ましいのは、ロールコーター法である。
尚、金属板として樹脂塗装金属板を使用する場合には、樹脂被膜との密着性または耐食性の向上目的で、塗装前処理としてリン酸塩処理またはクロメート処理を施しても構わない。但し、クロメート処理材については、樹脂塗装体使用中のクロム溶出性の観点から、クロメート処理時のCr付着量を35mg/m2以下に抑制することが好ましい。この範囲であれば、下地クロメート処理層からのクロム溶出を抑えることが可能だからである。また、従来のクロメート処理材は必要に応じて設けられる上塗り塗装の耐水密着性が、6価クロムの溶出に伴って、湿潤環境下において低下する傾向にあるが、上記金属板では溶出が抑制されるため、上塗り被膜の耐水密着性が悪化することはない。
或いは、前述したクロムフリーの下地処理を、ロールコーター法、スプレー法、浸漬処理法等により施せば、ノンクロメートタイプの塗装体を得ることができる。
更に本発明には、閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、該電子機器部品は、その外壁の全部または一部が上記電子機器部材用塗装体で構成されている電子機器部品も包含される。上記電子機器部品としては、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等の複写機;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等が挙げられる。
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本願発明に含まれる。
実施例1:電磁波吸収性、加工性、放熱性、導電性、及び加工性に関する検討(1)
本実施例では、金属板の表裏面に、表1及び2に示す種々の磁性粉末、導電性付与材剤(Ni)及び黒色添加剤(カーボンブラック)を添加したときにおける電磁波吸収性、加工性、放熱性、導電性、及び加工性を調べた。
具体的には素地鋼板として電気亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm;表裏面に夫々、Zn付着量:20g/m2)を用い、これに表1及び2に示す各種添加剤(磁性粉末、導電性付与剤、カーボンブラック)を添加した磁性塗膜(ベース樹脂:エポキシ変性ポリエステル、架橋剤:イソシアネート)を両面(表裏面)に形成し、得られた各塗装金属板における電磁波吸収性、導電性、加工性、放熱性等の特性を評価した。尚、各特性は下記(1)〜(4)の評価方法に従って夫々、評価した。
(1)電磁波吸収性評価方法
そのI[電磁波吸収性(A)]
図2は、塗装金属板における電磁波吸収性能を評価する方法を説明する為の図である。直方体形状の筐体1内に、高周波ループアンテナ5を設置し、磁界結合させるように構成されている。この高周波ループアンテナ5は、コネクタ(図示せず)を介して同軸ケーブル6の一端に接続され、同軸ケーブル6の他端はネットワークアナライザ7に接続されている。ネットワークアナライザ7では、周波数を掃引しながら電磁波を発生し、同軸ケーブル6、高周波ループアンテナ5を経由して筐体1内に入力(高周波入力波:矢印B)するようにされている。筐体1の共振周波数では、入力された電磁波が蓄積されるために、反射量が少なくなる特性が観察される(図3参照)。そして、この高周波反射波は、観察値としてネットワークアナライザ7に入力(高周波反射波:矢印C)される。
このとき、筐体1における下記(1)式で求められるQ値を計測すれば、筐体1内で蓄積されるエネルギーの大きさが分かる。尚、下記(1)式から求められるQ値は、アドミタンス軌道が満足する条件から、求まる周波数差Δfと共振周波数frから計算されるものである(例えば、中島将光著、「森北電気工学シリーズ3 マイクロ波工学 −基礎と原理−」森北出版株式会社発行、第159〜163頁)。
Q値=fr/Δf ‥‥(1)
上記(1)式から求められるQ値が小さくなるほど、筐体1内で蓄積されるエネルギーが減ることを意味する。従って、Q値が小さくなる程、筐体1から外部に反射される電磁界レベルも減ることになる。実際の測定に当たっては、106×156×200(mm)の大きさの筐体1を使用して行なった。
このときの様子を模式的に図4に示すが、この図は、Ez=0、TE011という最も低い周波数の共振モードでの電磁界分布を図示したものであり、図中、Eは高周波磁界、Fは高周波電界を夫々示している。上記Ezはz方向の電界強度を意味し、TE011は、共振モードの電磁界分布の姿態を示している。このTEは、z方向に波が進むとして、その横方向に電界が存在することを意味している。添字「011」は、x、y、z方向に対して、y及びz方向には電界の強度分布が1つあり、x方向には電界の強度分布が変化しないことを示している(例えば、上記文献第141〜144頁参照)。
また、図4に示した電磁界分布は、以下の式で表せる。
z=H011・cos(ky・y)・sin(kz・z)
y=(−kz・ky/kc 2)・H011・sin(ky・y)・cos(kz・z)
x=(−jωμky/kc 2)・H011・sin(ky・y)・sin(kz・z)
ここで、ky=π/b、kz=π/c、kc=kyである。b、cは図4の直方体(筐体1)のy、z方向の長さ、jは虚数、ωは各周波数、μは空気の透磁率を夫々示す。
このときの共振モ−ドの共振周波数は約1220MHzである。評価に際しては、直方体の6面をステンレス鋼板として場合を基準としてQ0値(測定結果:1740)とし、次に底面の1面(106mm×156mmの面)と、側面の2面(106mm×200mmの2面)の計3面を、試作した試験用サンプル鋼板に変更して測定したQ値をQ1値として、Q1/Q0の比(減衰率)を計算することによって試験サンプルの電磁波吸収効果[電磁波吸収性(A)]を確認した。
本発明では、上記方法によって算出されるQ1/Q0の比(減衰率)が0.970以下のものを「本発明例」として評価する。
そのII[電磁波吸収性(B)]
上述したQ値測定方法(そのI)では、測定装置の内面の全表面積に対して、サンプル鋼板の占める面積割合が約30%程度であり、サンプル鋼板による電磁波吸収効果が小さくなって、その効果が分かり難いことがあった。そこで、サンプル鋼板の内面に占める割合を100%近くまで(即ち、筐体内面の全面まで)高めることのできる筐体を作製した。
図12はこの筐体を構成するSUS製フレーム(枠体)を示す説明図であり、図12(a)は平面図、12図(b)は正面図、12図(c)は左側面図を夫々示している。尚、このフレームは上下左右が対象となるように構成されており、従って底面図は平面図[図12(a)と、背面図は正面図[図12(b)]と、右側面図は左側面図[12(c)]と、夫々同一に現れるものである。
図12に示したフレームに、図13、14に示すサンプル鋼板およびSUS板を貼りつけて(取り付けネジ)、筐体(240×180×90mm)とした。尚、図13(a)はフレームの正面・背面部分に配置されるサンプル鋼板(2枚)、図13(b)はフレームの左右側面部分に配置されるサンプル鋼板(2枚)、図14(a)は上面部分に配置されるSUS板、図14(b)は底面部分に配置されるSUS板を、夫々示している。また、本筐体の共振周波数は、約1GHzである。
上記のような構成によって、筐体を作製すればその内面が100%に近い割合までサンプル鋼板で占めることができる。また、取り付けネジは、そのピッチを20〜40mmとし、接触抵抗を低減しているので、多数個のネジ止めを要するものである。ネジ止めは、トルクを管理することによって、Q値測定の再現性を高めることができる。こうした筐体を用いてQ値を測定し(前記図2)、下記の式によって電磁波吸収性(B)を算出した。
サンプル鋼板の電磁波吸収性(dB)=10×log10([EG]/[A])
但し、[EG]:基板となる電気亜鉛めっき鋼板のQ値
[A] :サンプル鋼板のQ値:
本発明では、上記方法によって算出された値(dB)が高いほど電磁波吸収性に優れると評価されるものであり、0.50dB以上のものを「本発明例」として評価する。
(2)導電性評価方法
導電性測定装置として三菱化学社製「ロレスタEP」、プローブは三菱化学社製4探針プローブ(ESPプローブ:MCP−TPO8P)を使用し、サンプルの抵抗率を測定した。本発明では、下記評価基準に基づいた結果が◎または○のものを「本発明例」として評価する。
[評価基準]
◎:0.1mΩ未満
○:0.1〜1Ω未満
△:1〜106Ω未満
×:106Ω以上
(3)加工性評価方法
JIS K 5400に準拠した耐屈曲性試験(180°密着曲げ試験)を行ない、試験後の皮膜の割れ(クラック)およびテーピング後の皮膜の剥離程度を目視にて観察し、下記の基準で評価した。本発明では、下記評価基準に基づいた結果が◎、○または△のものを「本発明例」として評価する。
[評価基準]
◎:異常なし
○:僅かにクラック、剥離あり
△:クラック、剥離あり
×:クラック、剥離全面発生
(4)放熱特性の評価方法
表面・裏面の放熱特性を調べる目的で、前述した方法に基づいて表面・裏面の赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率を測定すると共に、下記方法により、ΔT1で示される放熱性を評価した。
[ΔT1の測定(放熱特性の評価)]
ΔT1は、金属板(黒色塗膜が被覆されていない/黒色下地処理されていない裸ままの原板)を用いた場合に比べ、本発明塗装体を用いた場合には、如何に電子機器の内部温度を低減できるかという指標を定めたものであり、本発明では、ΔT1を測定する装置として、特に、図4に示す独自の放熱性評価装置を用いた。図4の装置は、電子機器等の用途で想定される雰囲気温度(電子機器部材の種類等によって雰囲気温度は異なるが、概ね50〜70℃、最高で100℃程度)の放熱特性を評価し得る装置として極めて有用であり、これにより、電子機器用途を模擬した実用レベルでの放熱効果を正しく評価することが可能となる。
具体的には図7は、内部空間が100mm(縦)×130mm(横)×100mm(高さ)である直方体の装置である。図7中、11は供試材(被験体、測定面積は100×130mm)、12は断熱材、13は発熱体[底面積は1300mm2、当該発熱体面積内で引ける最も長い直線の長さ(図7では、対角線の長さ)は164mm]、15は測温装置である。
このうち発熱体13には、シリコンラバーヒーターを用い、その上にアルミ板(赤外線放射率は0.1以下)を密着したものを使用する。また、図7のT1位置[内部空間の中央部(発熱体3から50mm上方)]に、測温装置15として熱電対を固定する。尚、発熱体からの熱輻射の影響を排除する目的で、熱電対の下部をカバーしておく。また、断熱材12は、その種類や使用態様等によって箱内雰囲気温度が変化する(放熱性にも影響する)為、赤外線放射率が0.03〜0.06の金属板[例えば電気亜鉛めっき鋼板(JIS SECC等)]を用い、後記する方法によってT1位置の雰囲気温度(絶対値温度)が約73〜74℃の範囲になる様、断熱材の張り方等を調整する。その他、放熱性に影響を及ぼす因子(例えば供試材の固定法等)についても、同様にT1位置の雰囲気温度(絶対値温度)が約73〜74℃の範囲になる様に調整する。
次に上記装置を用いて放熱特性(ΔT1)を評価する方法について説明する。
測定に当たっては、外気条件(風等)によるデータのバラツキをなくす目的で、測定条件を、温度:23℃、相対湿度:60%に制御しておく。
まず、各供試材11を設置し、電源を入れてホットプレート13を140℃にまで加温する。ホットプレートの温度が安定して140℃となり、T1位置の温度が60℃以上になっていることを確認した後、一旦、供試材を取外す。箱内温度が50℃まで下がった時点で、再び供試材を設置し、設置してから90分後の箱内温度を夫々測定する。次に、上記供試材を用いたときの温度と、塗膜を施さない無塗装原板を用いたときの温度の差(ΔT1)を算出する。
尚、ΔT1は、各供試材につき5回ずつ測定し、そのうち上限、下限を除いた3点のデータの平均値を、本発明におけるΔT1と定めた。
この様にして算出されたΔT1は大きい程、放熱特性に優れていることを示しており、本実施例では、下記基準で相対評価した。尚、本発明に係る第二の塗装体では、◎及び●の塗装体を、「当該塗装体における優れた放熱性を発揮するもの」として評価している。
◎:3.5≦ΔT1
●:2.7≦ΔT1<3.5
○:1.5≦ΔT1<2.7
△:1.0≦ΔT1<1.5
×:ΔT<1.0
これらの結果を、磁性塗膜構成と共に下記表1、及び2に示す。
Figure 2005271572
Figure 2005271572
上記表より、以下の様に考察できる。
まず、磁性塗膜に関する要件(磁性粉末の含有量、及び磁性塗膜の膜厚)が本発明の範囲を満足する供試材(No.1〜10、15〜24、27、28)はいずれも、電磁波吸収性および加工性の点で良好な特性が発揮されている。
尚、電磁波吸収性に関して補足説明すると、上記供試材では減衰率が3〜15%程度となっているが、測定に用いた装置の内部は実際の電子機器と比べて簡単な構造であることから、実際の電子機器に本発明にかかる塗装鋼板を用いた場合には、更に多重反射が増加し、漏洩電磁波を大きく減衰させることができるものと推察される。また、電子機器の本体および本体内ユニットのカバー・筐体等に本発明の塗装鋼板を用いることによって、ユニットに適用した鋼板の内面皮膜によるユニットからの漏洩電磁波を減衰が期待でき、更にユニットから漏洩する電磁波は、ユニットに適用した塗装鋼板の外面皮膜および本体に適用した塗装鋼板の内面皮膜によって多重反射による減衰が期待できることから、本体から漏洩する電磁波は大きく減衰させることができることが予想される。
特に上記供試材のうち、磁性粉として磁性金属粉末(パーマロイ)を用いた例(No.15〜24)では、導電性添加剤の有無に拘らず、優れた導電性が発揮されている。また、磁性粉として導電性を有さないNi−Zn軟磁性フェライトを用いた例(No.1〜10)では、上記磁性粉単独では良好な導電性は発揮されないが(No.1〜5)、磁性塗膜中に適量の導電性付与剤を添加すると、優れた導電性が発揮されている(No.6〜10)。
更に、カーボンブラックが塗膜厚との関係で適切に添加されたもの(No.7〜10、22〜24、27、28)は、優れた放熱性が得られている。
これに対し、本発明で規定する要件のいずれかが外れる供試材は夫々、以下の不具合を有している。
まず、No.11は、磁性塗膜の膜厚が2μmと、本発明の範囲を下回る例であり、電磁波吸収性は良好であるが、加工性に劣っている。
一方、No.12は、磁性塗膜の膜厚が60μmと、本発明の範囲を超える例であり、電磁波吸収性及び加工性の双方が低下している。尚、No.12には、放熱性添加剤としてカーボンブラックを添加していないが、放熱性の評価が△と、カーボンブラックを添加しない例(放熱性の評価は×)に比べて高くなっている理由は、樹脂皮膜の膜厚が60μmと厚くなっている為である。
また、No.13及び25は、磁性粉末の添加量が10%と、本発明の範囲を下回る例であり、加工性は良好であるが、電磁波吸収性が低下している。
一方、No.14及び26は、磁性粉末の添加量が70%と、本発明の範囲を超える例であり、電磁波吸収性は良好であるが、加工性が低下している。
実施例2:電磁波吸収性、加工性、放熱性、及び自己冷却性に関する検討(2)
本実施例では、金属板の裏面または両面に、表3に示す種々の磁性粉末(A〜E)及び放熱性添加剤(H〜J)、必要に応じて導電性付与材剤[Ni(平均粒径15〜20μm)]を添加した塗膜を形成したときにおける電磁波吸収性、加工性、放熱性、及び導電性を調べた。このときの電磁波吸収性は、実際に電子機器に適用される場合の状態に合わせるため、裏面を評価した。
尚、表中、各添加剤の詳細は以下の通りである。
[磁性粉末]
A:Ni−Zn系軟磁性フェライト
[戸田工業(株)製BSN−125、平均粒径13.0μm]
B:Mn−Zn系軟磁性フェライト
[戸田工業(株)製KNS−415、平均粒径9.9μm]
C:パーマロイ(78%Ni)
[日本アトマイズ加工(株)製SFR−PC78、平均粒径5.7μm]
D:パーマロイ(45%Ni)
[日本アトマイズ加工(株)製SFR−PB45、平均粒径5.8μm]
E:センダスト
[日本アトマイズ加工(株)製SFR−FeSiAl(84.5-10-5.5)、
平均粒径6.9μm]
[放熱性添加剤]
H:カーボンブラック
[三菱化学製「三菱カーボンブラック」、平均粒径25nm]
I:酸化チタン [テイカ(株)製JR301、平均粒径0.3μm]
J:Alフレーク
[昭和アルミパウダー(株)製LB584、平均粒径25μm]
具体的には素地鋼板として電気亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm;表裏面に夫々、Zn付着量:20g/m2)を用い、これに表3に示す各種添加剤(磁性粉末、放熱性添加剤、及び導電性付与剤)を添加した磁性塗膜(ベース樹脂:エポキシ変性ポリエステル、架橋剤:イソシアネート)を片面(表面)または両面(表裏面)に形成し(120×150mm)、得られた各塗装金属板における電磁波吸収性、加工性、及び導電性について実施例1と同様にして評価すると共に、表面・裏面の放熱特性を調べる目的で、実施例1に記載の方法により、表面・裏面の赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率、及びΔT1で示される放熱特性を調べると共に、以下の方法により、ΔT2で示される自己冷却性(自己冷却性については、一部の例についてのみ)を評価した。
[ΔT2の測定(自己冷却性の評価)]
ΔT2(=T2B−T2A)は、金属板(塗膜が被覆されていない裸ままの原板)を用いた場合に比べ、本発明塗装体を用いた場合には、電子機器稼動時における塗装体自体の温度上昇を如何に抑えられるかという指標(自己冷却性)を定めたものであり、図7に示す独自の放熱性評価装置を用いて算出した。
式中、T2Aは、供試材として上記表3のNo.1〜7を測定したときの塗装体温度を;T2Bは、供試材として塗膜が被覆されていない金属板を使用したときの温度を、夫々、意味する。ΔT2の測定は、各供試材につき5回ずつ行い、そのうち上限、下限を除いた3点のデータの平均値を、本発明におけるΔT2と定め、下記基準で相対評価した。
尚、上記ΔT2は大きければ大きい程、自己冷却性に優れていることを意味しており、本発明に係る第三の塗装体では、◎及び○の塗装体を、「優れた自己冷却性を発揮するもの」として評価している。
◎:1.5≦ΔT2
○:0.5≦ΔT2<1.5
×:ΔT2<0.5
尚、上記塗装体における表面及び裏面の放射率、並びにΔT1のデータは、前述した表3に示す通りであるが、本発明に係る第三の塗装体では、ΔT1が◎、●及び○の塗装体を、「当該塗装体における優れた放熱性を発揮するもの」として評価している。ちなみに前述した第二の塗装体では、ΔT1が◎及び●及の塗装体を、「当該塗装体における優れた放熱性を発揮するもの」と評価している。この様に放熱性(ΔT1)に関する評価基準が異なるのは、放熱性に関して言えば、第三の塗装体は第二の塗装体に比べると若干低い態様も包含しているからである。
これらの結果を表4に記載する。尚、表4には、電磁波吸収性、及び加工性に関する結果は省略している。
Figure 2005271572
Figure 2005271572
これらの表より以下の様に考察することができる。
表3のNo.1〜17のうちNo.1〜18は、裏面にのみ磁性塗膜を形成した例;No.9〜17は、表裏面に磁性塗膜を形成した例であり、いずれにおいても、磁性塗膜中には放熱性添加剤を添加している。更に必要に応じて、表面/裏面にNiを添加している。
表4に示す通り、上記No.1〜17はいずれも、磁性粉末及び放熱性添加剤の添加量、並びにこれらの添加剤を含有する磁性塗膜の膜厚が、本発明の範囲を満足している為、電磁波吸収性(表4には示さず)及び放熱性に優れており、更にNiを添加したものは、導電性にも優れている。
また、上記No.のうちQ値≧0.045、及びR値≧0.08と、自己冷却性の要件を満足するNo.4〜6、9、11、16は、更に自己冷却性にも優れている。
実施例3:電磁波吸収性、放熱性、自己冷却性、耐疵付き性、及び耐指紋性に関する検討(3)
本実施例では、金属板の裏面または両面に、表5に示す種々の磁性粉末(実施例2のA、C、E)及び放熱性添加剤(実施例2のH)、必要に応じて導電性付与材剤(実施例2のNi)を含有する磁性塗膜;並びに光輝顔料としてパール顔料(メルクジャパン製Iriodin111WII、平均粒径15μm以下)、必要に応じて導電性付与材剤(実施例2のNi)を含有する樹脂皮膜を形成したときにおける電磁波吸収性、加工性、放熱性、自己冷却性、導電性、耐疵付き性、及び耐指紋性を調べた。
具体的には素地鋼板として電気亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm;表裏面に夫々、Zn付着量:20g/m2)を用い、これに表5に示す各種添加剤(磁性粉末、及びカーボンブラック、更に必要に応じてNi)を添加した磁性塗膜(ベース樹脂:エポキシ変性ポリエステル、架橋剤:イソシアネート)を片面(表面)または両面(表裏面)に形成した後、更に表5に示す光輝顔料を添加した樹脂皮膜(ベース樹脂:ポリエステル樹脂を用い、架橋剤としてメラミン樹脂を使用)を形成した(120×150mm)。
この様にして得られた各塗装金属板における電磁波吸収性、加工性、導電性、表面/裏面の赤外線の積分放射率放熱特性、放熱特性(ΔT1)、及び自己冷却性(ΔT2)について実施例2と同様にして評価すると共に、耐疵付き性及び耐指紋性について、以下の方法に基づいて評価した。このときの電磁波吸収性は、実際に電子機器に適用される場合の状態に合わせるため、裏面を評価した。
[耐疵付き性]
図11に、本実施例で行なった耐疵付き性試験の概略図を示す。まず、上記供試材を50×100mmにカットし、その表面(樹脂塗膜が施されている側)における耐疵付き性試験を調べる目的で、サンドペーパー(#2400、20×20mm)に500gのおもり(直径50mmの円柱)をかけた状態にて、供試材の長さ方向(100mm)にわたって合計50往復摺動した後、摺動部の外観変化(疵)を下記基準で目視評価した。本発明の第一の塗装体では、◎、●及び○の供試材を「本発明例」と評価している。
◎:疵が殆ど目立たない
●:疵が目立ち難い
○:疵がやや目立つ
×:疵が目立つ
尚、上記の試験方法は、前述した特許文献1(クリヤー塗膜の形成により、耐疵付き性等を高めたもの)や先願(特願2002−217145)で実施した耐疵付き性試験に比べ、より過酷な条件下における耐疵付き性を評価したものである。
[耐指紋性評価]
ワセリンを手に十分なじませてから各供試材に指紋を付け、指紋の目立ち易さを下記基準にて目視評価した。本発明の第一の塗装体では、◎、●及び○の供試材を「本発明例」と評価している。
◎:指紋が殆ど目立たない
●:指紋が僅かに目立つ
○:指紋が若干目立つ
×:指紋が目立つ
これらの結果を表6に示す。尚、表6には、電磁波吸収性、及び加工性に関する結果は省略している。
Figure 2005271572
Figure 2005271572
上記表より以下の様に考察することができる。
表6のNo.1〜9のうちNo.1〜4は、裏面にのみ黒色の磁性塗膜を形成した例;No.5〜9は、表裏面に黒色の磁性塗膜を形成した例であり、いずれにおいても、磁性塗膜中には放熱性の黒色添加剤としてカーボンブラックを添加している。更に必要に応じて、表面/裏面にNiを添加している。
表6に示す通り、上記No.1、3、5、7、及び9はいずれも、磁性塗膜に関する要件(磁性粉末、及び放熱性添加剤の含有量、並びに磁性塗膜の膜厚)及び樹脂皮膜に関する要件(光輝顔料の含有量、樹脂皮膜の膜厚、及びL値)が本発明の範囲を満足している為、電磁波吸収性及び加工性(表5には示さず)、放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れており、更にNiを添加したものは、導電性にも優れている。
また、上記No.のうちQ値≧0.045、R値≧0.08と、自己冷却性の要件を満足するNo.1、7〜9は、更に自己冷却性にも優れている。
これに対し、No.2、4、6、及び8は、樹脂塗膜を形成しない例であり、耐疵付き性及び耐指紋性が低下した。
実施例4:電磁波吸収性、耐疵付き性、及び耐指紋性に関する検討(4)
本実施例では、金属板の裏面または両面に、表7に示す種々の磁性粉末(実施例2のA、C、及びD)及び黒色添加剤(実施例2のカーボンブラック)、必要に応じて導電性付与材剤(実施例2のNi)を含有する磁性塗膜;並びに表7に示す種々の白色顔料/光輝顔料、必要に応じて導電性付与材剤(実施例2のNi)を含有する樹脂皮膜を形成したときにおける電磁波吸収性、加工性、導電性、耐疵付き性、及び耐指紋性を調べた。
具体的には素地鋼板として電気亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm;表裏面に夫々、Zn付着量:20g/m2)を用い、これに表7に示す各種添加剤(磁性粉末、及びカーボンブラック、更に必要に応じてNi)を添加した磁性塗膜(ベース樹脂:エポキシ変性ポリエステル、架橋剤:イソシアネート)を片面(表面)または両面(表裏面)に形成した後、更に表7に示す白色顔料/光輝顔料を添加した樹脂皮膜(ベース樹脂:ポリエステル樹脂を用い、架橋剤としてメラミン樹脂を使用)を形成した(120×150mm)。
表中、各顔料の詳細は以下の通りである。
[白色顔料/光輝顔料]
X:パール顔料 (メルクジャパン製Iriodin111WII、平均粒径15μm以下)
Y:酸化チタン [テイカ(株)製JR301、平均粒径0.3μm]
Z:Alフレーク[昭和アルミパウダー製LB584、平均粒径25μm]
この様にして得られた各塗装金属板における電磁波吸収性、導電性、耐疵付き性、及び耐指紋性について、実施例3と同様にして評価した。このときの電磁波吸収性は、実際に電子機器に適用される場合の状態に合わせるため、裏面を評価した。
これらの結果を表7に示す。尚、表7には、電磁波吸収性(A)、及び加工性に関する結果は省略している。
Figure 2005271572
上記表より以下の様に考察することができる。
表5のNo.1〜14のうちNo.1〜9は、裏面にのみ磁性粉末を含有する例;No.10〜14は、表裏面に磁性粉末を含有する例であり、少なくとも表面(黒色塗膜)の耐疵付き性及び耐指紋性を調べる目的で、その上に、白色顔料/光輝顔料を含有する樹脂皮膜を形成している。更に必要に応じて、表面/裏面にNiを添加している。
表7に示す通り、上記No.1〜14はいずれも、磁性塗膜に関する要件(磁性粉末の含有量、及び磁性塗膜の膜厚)及び樹脂皮膜に関する要件(白色顔料/光輝顔料の含有量、樹脂皮膜の膜厚、及びL値)が本発明の範囲を満足している為、電磁波吸収性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れており、更にNiを添加したものは、導電性にも優れている。
本発明の塗装金属板による電磁波吸収性の原理を説明する図である。 塗装金属板における電磁波吸収性能の評価方法を説明する図である。 入力された電磁波が筐体の共振周波数で反射量が少なくなる状態を説明する図である。 電磁波吸収性を測定したときの状態を模式的に示した説明図である。 本発明に係る第二の塗装体における、放熱特性に優れた範囲を示すグラフである。 本発明に係る第三の塗装体における、自己冷却性と放熱特性の双方に優れた範囲を示すグラフである。 ΔT1(放熱性)及びΔT2(自己冷却性)の測定に使用した装置の概略図である。 第一の塗装体の概要を示す説明図である。 第二の塗装体の概要を示す説明図である。 第四の塗装体の概要を示す説明図である。 耐疵付き性試験の概略図である。 電磁波吸収性(B)を測定するための筐体を構成するSUS製フレーム(枠体)を示す説明図である。 フレームの左右側面部分に配置されるサンプル鋼板の形状を示す説明図である。 フレームの上面部分および底面部分に配置されるサンプル鋼板の形状を示す説明図である。
符号の説明
1 筐体
2 電磁波発信源
3 空気穴
4 筐体隙間
5 高周波ループアンテナ
6 同軸ケーブル
7 ネットワークアナライザ
11 供試材(被験体)
12 断熱材
13 発熱体
14 防護部材(カバー)
15 測温装置
21 磁性粉末
22 金属板
23 放熱性添加剤
24 白色顔料/光輝顔料

Claims (21)

  1. 金属板の裏面または表裏面(ここで、裏面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板の内側を意味し、表面とは電子機器部材用樹脂塗装金属板から見て外気側を意味する)に、20〜60%(質量%の意味、以下、同じ)の磁性粉末を含有する磁性塗膜が、厚さ:3〜50μmで被覆されたものであることを特徴とする電磁波吸収性及び加工性に優れた電子機器部材用樹脂塗装金属板。
  2. 前記磁性粉末が軟磁性フェライト粉末である請求項1に記載の樹脂塗装金属板。
  3. 前記磁性粉末が磁性金属粉末である請求項1に記載の樹脂塗装金属板。
  4. 前記磁性塗膜を構成する樹脂は、ポリエステル系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
  5. 前記磁性塗膜の少なくとも一方には、更に導電性付与剤が20〜40%含まれると共に、該導電性付与剤を含有する磁性塗膜の厚さが3〜15μmである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
  6. 前記導電性付与剤と磁性粉末の含有量が合計で30〜60%である請求項5に記載の樹脂塗装金属板。
  7. 更に放熱性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂塗装金属板であって、下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)を満足することにより放熱性が高められたものである樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面には、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆され、金属板の表面には1μm超の放熱塗膜が被覆されており、
    該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、カーボンブラックを1%以上含有しており、
    カーボンブラックを含有しない面には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有しているか;または
    (2)金属板の両面に前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、
    該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも一方には、カーボンブラックを1%以上含有しており、
    カーボンブラックを含有しない面には、カーボンブラック以外の放熱性添加剤を10%以上含有している。
    (3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足する。
    a×b≧0.42 … 式(1)
    a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
    b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
  8. 前記カーボンブラックの平均粒径は5〜100nmである請求項7に記載の樹脂塗装金属板。
  9. 更に放熱性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂塗装金属板であって、下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)を満足することにより放熱性が高められたものである樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面には、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆され、金属板の表面には1μm超の放熱塗膜が被覆されており、
    該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、酸化チタンを30%以上含有しており、
    酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有しているか;または
    (2)金属板の両面に前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、
    該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも一方には、酸化チタンを30%以上含有しており、
    酸化チタンを含有しない面には、酸化チタン以外の放熱性添加剤を1%以上含有している。
    (3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足する。
    a×b≧0.42 … 式(1)
    a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
    b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
  10. 更に、放熱性及び自己冷却性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂塗装金属板であって、下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)を満足することにより、放熱性及び自己冷却性が高められたものである樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面には前記磁性塗膜が、金属板の表面には1μm超の放熱塗膜が被覆されており、
    該表面の放熱塗膜は、放熱性添加剤を1%以上含有しており、
    該裏面の磁性塗膜は、更に放熱性添加剤を1%以上含有しても良いか;または
    (2)金属板の両面に前記磁性塗膜が被覆されており、
    該表面の磁性塗膜は、放熱性添加剤を1%以上含有しており、
    該裏面の磁性塗膜は、更に放熱性添加剤を1%以上含有しても良い。
    (3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び(3)を満足する。
    b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
    (a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
    a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
    b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
  11. 更に、耐疵付き性及び耐指紋性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂塗装金属板であって、
    下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)及び(4)を満足することにより、耐疵付き性及び耐指紋性が高められたものである請求項7に記載の樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面には前記磁性塗膜が被覆されており、該磁性塗膜は黒色添加剤を含有しても良く、該黒色添加剤を含有する磁性塗膜は、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
    該金属板の表面には、黒色添加剤を含有する黒色塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されているか;または
    (2)金属板の両面に前記磁性塗膜が被覆されており、
    このうち少なくとも表面の磁性塗膜は、黒色添加剤を含有する黒色磁性塗膜であり、
    該表面の黒色磁性塗膜には、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されており、
    該裏面には、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良い。
    (3)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
    (4)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
  12. 前記白色顔料及び/又は光輝顔料は酸化物系顔料である請求項11に記載の樹脂塗装金属板。
  13. 前記白色顔料及び/又は光輝顔料は、酸化チタンを含有するものである請求項11または12に記載の樹脂塗装金属板。
  14. 更に、放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器部材用樹脂塗装金属板であって、
    下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)〜(5)を満足することにより、放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性が高められたものである樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面に、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、該放熱性磁性塗膜が黒色添加剤を含有するときは、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
    該金属板の表面に、1μm超の放熱塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されており、
    該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、少なくともカーボンブラックを1%以上含有しており、
    カーボンブラックを含有しない面は、放熱性添加剤を10%以上含有しているか;または
    (2)金属板の両面に、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、
    該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも片面は、カーボンブラックを1%以上含有しており、
    カーボンブラックを含有しない面は、放熱性添加剤を10%以上含有しており、
    少なくとも表面の放熱性磁性塗膜に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されている。
    (3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足する。
    a×b≧0.42 … 式(1)
    a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
    b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
    (4)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
    (5)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
  15. 前記カーボンブラックの平均粒径は5〜100nmである請求項14に記載の樹脂塗装金属板。
  16. 更に、放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の電子機器部材用樹脂塗装金属板であって、
    下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)〜(5)を満足することにより、放熱性、耐疵付き性、及び耐指紋性が高められたものである樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面に、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、該放熱性磁性塗膜が黒色添加剤を含有するときは、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
    該金属板の表面に、1μm超の放熱塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されており、
    該裏面の放熱性磁性塗膜、及び該表面の放熱塗膜のうち少なくとも一方は、少なくとも酸化チタンを30%以上含有しており、
    酸化チタンを含有しない面は、放熱性添加剤を1%以上含有しているか;または
    (2)金属板の両面に、前記磁性塗膜であって放熱性を有する放熱性磁性塗膜が被覆されており、
    該放熱性磁性塗膜のうち少なくとも片面は、酸化チタンを30%以上含有しており、
    酸化チタンを含有しない面は、放熱性添加剤を1%以上含有しており、
    少なくとも表面の放熱性磁性塗膜に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されている。
    (3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が下式(1)を満足する。
    a×b≧0.42 … 式(1)
    a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
    b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
    (4)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
    (5)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
  17. 更に、放熱性、自己冷却性、耐疵付き性、及び耐指紋性に優れた請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂塗装金属板であって、
    下記(1)または(2)を満足しており、且つ、下記(3)〜(5)を満足することにより、放熱性、自己冷却性、耐疵付き性、及び耐指紋性が高められたものである樹脂塗装金属板。
    (1)金属板の裏面に前記磁性塗膜が被覆されており、該磁性塗膜は黒色添加剤を含有しても良く、該磁性塗膜が黒色添加剤を含有するときは、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されていても良く、
    該金属板の表面には、黒色添加剤を1%以上含有する1μm超の黒色放熱塗膜、及び白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されているか;または
    (2)金属板の両面に前記磁性塗膜が被覆されており、
    該表面の磁性塗膜は、黒色添加剤を1%以上含有する1μm超の黒色放熱性磁性塗膜であり、
    裏面の磁性塗膜は、放熱性添加剤を1%以上含有しても良く、
    このうち少なくとも表面の黒色放熱性磁性塗膜は、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆されている。
    (3)該樹脂塗装金属体を100℃に加熱したときの赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が、下式(2)及び下式(3)を満足する。
    b≦0.9(a−0.05) … 式(2)
    (a−0.05)×(b−0.05)≧0.08… 式(3)
    a:表面(樹脂塗装金属板から見て外気側)の赤外線積分放射率
    b:裏面(樹脂塗装金属板の内側)の赤外線積分放射率
    (4)該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25%である。
    (5)該樹脂塗装金属板の色調は、日本電色株式会社製色差計(SZS−Σ90)で測定したL値で44.0〜60.0を満足する。
  18. 前記白色顔料及び/又は光輝顔料は酸化物系顔料である請求項16または17に記載の樹脂塗装金属板。
  19. 前記白色顔料及び/又は光輝顔料は、酸化チタンを含有するものである請求項16〜18のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
  20. 電子機器部材の筺体として用いられるものである請求項1〜19のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
  21. 閉じられた空間に発熱体を内蔵する電子機器部品であって、
    該電子機器部品は、その外壁の全部または一部が請求項1〜20のいずれかに記載の樹脂塗装金属板で構成されていることを特徴とする電子機器部品。
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