しかし、上述した従来の螺子軸とモータのシャフトを連結することにより、モータに螺子軸の回転運動を伝達する構成を採用している電磁緩衝器は、特に車両に適用する際には、通常車体と車軸との間に配在されるので、以下の問題点がある。
すなわち、電磁緩衝器は、油圧緩衝器等にはないモータを利用することから、このモータを螺子軸と直列に接続すると、電磁緩衝器全体の基本長が長くなる。
したがって、車体と車軸との間に電磁緩衝器を配設する場合、車種により車体と車軸との間のスペースには制約があり、必然的に電磁緩衝器を車両に適用するについては、電磁緩衝器本体長さをモータの長さ分だけ、短くする必要があるので、適用車両に必要なストロークが確保できない不具合を生じる危惧がある。
そこで、ストロークを確保するためには、モータを小型化すればよいが、この場合には、逆にモータが強制的に回転させられることにより発生する電磁力に起因するトルク出力が小さくなり、所望の減衰力が得られなくなる恐れがある。
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、取付スペースに制約がある部位に適用可能であって、必要なストロークを確保可能な電磁緩衝器を提供することである。
上記した目的を達成するため、第1の課題解決手段における電磁緩衝器は、支持部材に回転自在に連結される螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、モータとを備え、モータの電磁力で螺子ナットと螺子軸との軸方向の相対移動を抑制する電磁緩衝器において、上記螺子軸の直線運動を上記螺子ナットの回転運動に変換し、動力伝達手段を介して上記回転運動をモータのシャフトに伝達して当該モータに電磁力を発生させ、この電磁力に起因し上記シャフトの回転に抗するトルクを上記螺子軸の直線運動を抑制する減衰力として利用することを特徴とする。
また、第2の課題解決手段における電磁緩衝器は、第1の課題解決手段において、上記動力伝達手段を歯車機構もしくは摩擦車機構もしくはベルト機構としたことを特徴とする。
そして、第3の課題解決手段における電磁緩衝器は、第1または第2の課題解決手段において、動力伝達手段を介して複数のモータのシャフトに螺子ナットの回転運動を伝達することを特徴とする。
さらに、第4の課題解決手段における電磁緩衝器は、第2の課題解決手段において、上記歯車機構が螺子ナットの外周に形成した駆動歯車と、この駆動歯車に回転自在に噛合する1つまたは複数の従動歯車とを有してなり、モータのシャフトを従動歯車に結合した。
またさらに、第5の課題解決手段における電磁緩衝器は、第2の課題解決手段において、モータを電磁緩衝器の対して直交または略直交する方向に配置し、上記歯車機構が、螺子ナットの外周に形成した駆動傘歯車と、この駆動傘歯車に回転自在に噛合する従動傘歯車とを有してなり、従動傘歯車にモータのシャフトを結合した。
そして、第6の課題解決手段における電磁緩衝器は、第4または第5の課題解決手段において、モータを複数個設け、各モータのシャフトにそれぞれ従動側の歯車を結合し、各従動側の歯車を螺子ナットの外周に形成した駆動傘歯車に回転自在に噛合させた。
各請求項の発明によれば、螺子ナットの回転運動をモータに伝達する動力伝達手段を介して螺子ナットの軸心線とモータの軸芯線とをずらして配置することができるので、以下の効果を奏する。
電磁緩衝器本体の上端部に垂直にモータを配置する必要が無いので、緩衝器に必要なストローク確保ができ、基本長も短くすることができる。すなわち、省スペース化を図ることができる。また特に車両に適用する場合には、車両に必要な充分な緩衝器のストロークを確保ができ、さらに、基本長を短くすることができるので、車両への搭載性が向上する。そして、螺子ナットを上下方向に直線運動させて螺子軸を回転させ、さらに、この螺子軸の回転運動をモータに伝達する場合に比較しても、基本長を短くすることができ、かつ、ストローク確保の点でも有利となり、車両への搭載性も勝る。
請求項2および請求項4の発明によれば、動力伝達手段に歯車機構、摩擦車機構、ベルト機構を採用しているので、以下の効果がある。
動力伝達手段の減速比を適切な組み合わせとすることが可能であるので、所望の減衰力を得ることができる。したがって、実際に車両に適用する際に、適用車種に応じた必要な減衰力は、動力伝達手段を構成する各歯車の減速比を適切なものとすれば、モータを交換することなしに得られるので、適用車種ごとにモータの規格を変えなくてすむ。
また、減速比によって、減衰力を変化させることができるので、大きな減衰力が必要な場合でも、モータを大型化する必要が無くなる。すなわち、モータを小型化しても所望の減衰力を得ることができる。
さらに、モータを螺子ナットから離れた位置に設置することが出来るから、モータの規模にかかわらず様々な車両に適用可能である。さらに、モータを螺子ナットから離れた位置に設置することが出来るから、モータを様々な外的負荷を受けづらい位置に設置することが可能であり、モータの損傷防止という効果もある。
そしてまた、動力伝達手段の慣性モーメントとモータの回転子の慣性モーメントとの影響を、モータの小型化および動力伝達手段の仕様および減速比の設計で最適化すれば、慣性モーメントの減衰力に対する影響を抑制することができ、それにより、従来の電磁緩衝器を車両に適用した場合に比べ、車両における乗り心地を向上することが可能となる。
請求項3および請求項6の発明によれば、モータを複数個使用しているので、1つのモータの発生可能な電磁力を、複数個のモータの使用により同等の電磁力を発生することにより、各モータを小型化できるので、回転子の慣性モーメントを減少させることが可能となり、モータの回転子の慣性モーメントにより発生する減衰力の弊害をより少なくすることが可能となる。
したがって、モータの小型化により車両の乗り心地の向上及び緩衝器の伸縮運動の加速度に依存するモータの回転子の慣性モーメントにより発生する減衰力の制御の困難性という弊害を小さくすることが可能である。
また、大きい減衰力を所望した場合に、モータの大型化を避けることが出来るので、回転子の慣性モーメントはあまり大きくならず、車両の乗り心地の悪化を防ぐことが出来る。
さらに、大きい減衰力を所望した場合に、モータの大型化を避けることが出来るので、回転子の慣性モーメントはあまり大きくならず、緩衝器の伸縮運動の加速度に依存するモータの回転子の慣性モーメントにより発生する減衰力の制御の困難性という弊害を小さくすることが可能である。
そしてさらに、モータを複数とした場合には、万が一モータの1つが損傷して、当該損傷したモータが電磁力に起因するトルクを発生不能な状態となった場合でも、その場合には、他の損傷していないモータは通常通りのトルクを発生するので、減衰力を発生不能となる事態が回避される。したがって、フェールセーフを行うことができる。
さらに、請求項4の発明によれば、駆動歯車を螺子ナットの外周に形成したので、基本長を短くすることおよびストロークを確保する点で有利である。
請求項5に記載の発明によれば、電磁緩衝器にモータを取付る際に、動力伝達手段の歯車の組み合わせ又は、適切な歯車を使用することにより螺子ナットに対するモータの取付角度を調整可能であるから、適用車両の構造に左右されること無く、車両に取付ることが可能となる。したがって、新造又は既存車両のレイアウトに左右されずに電磁緩衝器を取付ることが可能である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。図2は、本発明の一実施の形態における電磁緩衝器における動力伝達手段の平面図である。
図1に示すように、本実施の形態における電磁緩衝器は、モータ1と、螺子軸3と、支持部材たるハウジング9と、螺子ナットたるボール螺子ナット4と、動力伝達手段Dとで構成され、螺子軸3がボール螺子ナット4に螺合され、螺子軸3の直線運動をボール螺子ナット4の回転運動に変換し、動力伝達手段Dを介して上記回転運動をモータ1のシャフトSに伝達して当該モータ1に電磁力を発生させ、この電磁力に起因し上記シャフトSの回転に抗するトルクを上記螺子軸3の直線運動を抑制する減衰力として利用し、ボール螺子ナット4と螺子軸3との軸方向の相対移動を抑制することが出来るものである。
以下、詳細な構造について説明する。螺子軸3には、その外周に螺子溝3aが設けられるとともに、図1中下端には、円筒状の摺動部材6がナットNにより固定され、図1中上端には車両等へ電磁緩衝器を取付けるためのアイ型ブラケット7が結合されている。そして、この螺子軸3は、円筒状の外筒5内に摺動部材6を介して摺動自在に挿入されるとともに、ボール螺子ナット4内に回転自在に螺合されている。なお、摺動部材6により外筒5およびボール螺子ナット4に対する螺子軸3の軸ぶれが防止されており、これにより、ボール螺子ナット4の一部のボール(図示せず)に集中して荷重がかかることを防止でき、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aが損傷する事態を避けることが可能である。また、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aの損傷を防止できるので、螺子軸3とボール螺子ナット4の回転若しくは電磁緩衝器の伸縮方向への移動の各動作の円滑さを保つことができ、上記各動作の円滑を保てるので、電磁緩衝器として機能も損なわれず、ひいては、電磁緩衝器の故障を防止できる。
また、外筒5の図1中下端には、外筒5を封止する封止部材21が設けられ、この封止部材21の図1中下端には、図示しない、車両等へ電磁緩衝器を取付けるためのブラケットが設けられている。したがって、特にこの電磁緩衝器を車両に敵うようする場合には、螺子軸3の図1中上端側を車体側もしくは車軸側の一方に連結し、外筒5の図1中下端を車体側もしくは車軸側の他方に連結して、車体と車軸との間に電磁緩衝器を介装することが可能なようになっている。
そしてまた、外筒5の図1中上端は、支持部材たる有底筒状のハウジング9に連結され、このハウジング9には、底部9aには、2つの孔9b,9cが設けられ、外筒5は、ハウジング9の孔9bと同心となるようにハウジング9に連結されている。さらに、ハウジング9の孔9bの内周には、ボールベアリング10が嵌合されている。また、ハウジング9の孔9cは、図1中上方側が小径であって下方側が大径となるように形成され、この大径の部位にモータ1が嵌合されている。なお、ハウジング9は外筒5と一体的に成形されてもよく、本実施の形態においては、外筒5を介してこの電磁緩衝器を適用する箇所に、支持部材たるハウジング9を取付けるとしているが、ハウジング9を直接上記適用箇所に連結するとしてもよく、さらに、ボール螺子ナット4を回転自在に支持する機能を有する部材を適用箇所側に形成するとしてもよい。
さらに、ハウジング9の図1中上端は、ハウジングキャップ13が嵌着されており、このハウジングキャップ13には、それぞれ、ハウジング9の孔9bおよび孔9cと同芯となるように孔13aおよび穴13bが設けられており、孔13a内周にはボールベアリング11が嵌合され、穴13b内周にはボールベアリング12が嵌合されている。
そして、上記ボールベアリング11内周には、ボール螺子ナット4の図1中上端が、ボールベアリング10内周には、ボール螺子ナット4の図1中下端が嵌合されている。したがって、ボール螺子ナット4は、ハウジング9およびハウジングキャップ13に対してボールベアリング10,11を介して回転運動することができる。
ここで、ボール螺子ナット4の構造は特に図示しないが、たとえば、ボール螺子ナット4の内周には、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aに符合するように螺旋状のボール保持部が設けられており、前記保持部に多数のボールが配在されてなり、ボール螺子ナット4の内部にはボールが循環可能なように前記螺旋状保持部の両端を連通する通路が設けられているものであって、螺子軸3を前記ボール螺子ナット4に螺合された場合に、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aにボール螺子ナット4のボールが嵌合し、螺子軸3の回転運動に伴いボール自体も螺子軸3の螺子溝3aとの摩擦力により回転するので、ラックアンドピニオン等の機構に比べ滑らかな動作が可能である。
上述のように、ボール螺子ナット4には螺子軸3が螺子溝3aに沿って回転自在に螺合され、螺子軸3がボール螺子ナット4に対し図1中上下方向の直線運動をすると、ボール螺子ナット4はハウジング9およびハウジングキャップ13により図1中上下方向の移動が規制され、回転のみ許容されているので、ボール螺子ナット4は強制的に回転駆動される。すなわち、上記機構により螺子軸3の直線運動がボール螺子ナット4の回転運動に変換されることとなる。
転じて、ハウジング9の孔9cに嵌合されるモータ1は、電磁力発生源として使用されるものであり、様々なモータ、たとえば直流モータや交流モータ、誘導モータ等が使用可能である。なお、モータ1とハウジング9の固定手段はモータ1が発生する電磁力による回転トルクによりモータ1自体がハウジング9に対し回転するようなことがなく、且つ、充分な耐久性のある慣用されている固定手段であれば良い。
そして、たとえば直流モータを例に取ると、特に図示しないが、直流ブラシ付モータであれば、モータ1内に磁界発生用の複数の磁石とコイルと電機子とヨークと整流子とフレームとフレームに回動自在に挿入されたシャフトSとから構成され、シャフトSには電機子が設けて導電線を巻きつけコイルを形成して、シャフトSの回転によりコイルが上記磁石の発生する磁界を横切ることにより誘導起電力を発生するものである。なお、上記直流モータの例では、その構成上電機子が回転子ということになる。
そして、モータ1は、制御回路等(図示せず)に接続されるか、直接モータ1の各電極(図示せず)同士をつなぎ閉回路としておき、且つ、電磁力に起因するシャフトSの回転に抗するトルクを発生するようにしておくことにより、モータ1に電磁力を発生するようにし、所望の減衰力を得られるよう調整しておく事が必要である。なお、この電磁緩衝器をアクティブサスペンションとして使用する場合には、積極的にモータ1に通電することにより、モータ1を駆動して緩衝器のみならずアクチュエータとして機能させることも可能である。
そして、シャフトSには、キャップ20が嵌合され、シャフトSは、キャップ20を介して後述の従動歯車2aの軸心部に嵌合される。なお、シャフトSの外周にはキー(図示せず)が設けられると同時に、キャップ20にも図2に示すようにキー20aが設けられ、シャフトSの従動歯車2aに対する空転が防止されている。また、キャップ20の図1中上端はハウジングキャップ13の穴13bに嵌合されたボールベアリング12の内周に嵌合されている。
他方、動力伝達手段Dは、図1および図2に示すように、従動歯車2aと、ボール螺子ナット4の外周に形成した駆動歯車2bとからなり、各歯車2a、2bの歯が、互いに噛み合うように水平に配置されてハウジング9内に回転自在に挿入されている。
なお、各歯車2a、2bは、たとえばインボリュート歯車等の周知の歯車を使用すればよく、本実施の形態では2つの歯車を使用しているが、3つ以上の歯車列を使用しても本発明の効果を実現可能である。
そして、従動歯車2aの軸心に設けられたシャフト挿入孔30には、キャップ20のキー20aに対応するよう上記シャフト挿入孔30にキー溝31が設けられており、上述の通り、シャフト挿入孔30にモータ1のシャフトSを内包するキャップ20が上記キー20aと上記キー溝31を符合させて嵌合される。
なお、本実施の形態では、上記キャップ20のキー10aと上記シャフト挿入孔30に設けられたキー溝31とにより、従動歯車2aのキャップ20に対する空転を防止しているが、他に慣用されている手段によって、上記空転の防止を図っても良い。
上記のように各歯車2a、2bの軸心が横方向にオフセットされていることにより、各歯車2a、2bに結合したモータ1の軸心とボール螺子ナット4の軸心が横方向にずれており、その結果、モータ1は外筒5の外側においてボール螺子ナット4の側方に並行に配置される。
なお、本実施の形態では、モータ1をボール螺子ナット4の側方近傍に配置しているが、上述のように歯車列を使用して、モータ1をボール螺子ナットから離れた位置に配置することも可能である。したがって、たとえば、モータ1のみを車体内に配置するようにして雨水や泥、飛び石などによるモータ1の損傷を防止することができる。
上記構成により、螺子軸3の図1中上下方向の直線運動によるボール螺子ナット4の回転運動は、駆動歯車2bと従動歯車2aとが互いに噛み合っているので、モータ1のシャフトSに伝達されることとなり、その結果、モータ1が回転し、その電磁力に起因して発生するシャフトSの回転に抗するトルクが動力伝達手段Dを介してボール螺子ナット4の回転を抑制する減衰力として作用する。
そして、上記の構成をとることにより、モータ1は、ボール螺子ナット4の側方に配置されるので、従来の電磁緩衝器のようにモータ1を螺子軸3の上部に垂直に設ける必要が無いので、言い換えればモータ1を外筒5と並行に配置したことにより、緩衝器に必要なストローク確保ができ、基本長も短くすることができる。すなわち、省スペース化を図ることができる。したがって、特に電磁緩衝器を車両に適用する場合には、基本長を短くすることができ、車両に必要とされる緩衝器のストロークを確保できるので、車両への搭載性が向上する。なお、動力伝達手段をボール螺子ナット4に対して軸方向上下にずらして設けると、動力伝達手段の軸方向長さ分、電磁緩衝器の基本長が長くなってしまうか、電磁緩衝器のストロークが短くなってしまうので、ボール螺子ナット4の外周に駆動歯車2bを形成する方が、基本長を短くすることおよびストロークを確保する点で有利である。
そして、本発明では、ボール螺子ナット4を図1中上下方向に直線運動させて螺子軸3を回転させ、さらに、この螺子軸3の回転運動をモータ1に伝達する場合に比較しても、基本長を短くすることができ、かつ、ストローク確保の点でも有利となり、車両への搭載性も勝る。なぜならば、螺子軸3を回転運動させ、この螺子軸3の端部に本発明と同様の動力伝達手段を適用する場合には、本発明の電磁緩衝器と同じストロークを確保するためには、最低でも動力伝達手段Dの軸方向長さ(正確にはハウジング9の図1中下端からハウジングキャップ13の図1中上端までの長さ)にボール螺子ナット4の軸方向長さを加算した長さ分だけ、本発明の電磁緩衝器より基本長を長くしなくてはならないからである。
なお、上記したところでは、駆動歯車と従動歯車を水平配置してボール螺子ナット4の回転運動をモータ1に伝達しているが、各歯車を傘歯車として、ボール螺子ナット4に対するモータ1の取付角度を変化させることも可能である。この場合には、上記取付角度の調節が可能であるから、適用する車両の構造にあわせて、本発明にかかる電磁緩衝器を取付けることが出来ることとなる。したがって、新造又は既存車両のレイアウトに左右されずに電磁緩衝器を取付ることが可能である。また、傘歯車の種類は何でも良いが、はすば傘歯車等の円滑な伝動が可能であるものが好ましい。
さらには、動力伝達手段を歯車機構以外に、摩擦車機構やベルト機構としてもよい。たとえば、摩擦車機構とする場合には、ボール螺子ナット4の外周に形成した摩擦車に、モータ1のシャフトS自体に形成もしくはシャフトSに結合した摩擦車を当接させるとすればよく、ベルト機構であれば、ボール螺子ナット4の外周に形成したプーリと、モータ1のシャフトS自体に形成もしくはシャフトSに結合したプーリとにベルトを掛架させればよい。
引き続いて、作用について説明する。電磁緩衝器に伸縮する、すなわち、外筒5に対し螺子軸3が図1中上下方向に移動すると、この螺子軸3の上下方向の直線運動はボール螺子ナット4と螺子軸3のボール螺子機構により、ボール螺子ナット4の回転運動に変換される。
すると、上記ボール螺子ナット4の回転運動は、上記動力伝達手段Dを介してモータ1のシャフトSに伝達される。
モータ1のシャフトSが回転運動を呈すると、モータ1内のコイルが磁石の磁界を横ぎることとなり、誘導起電力が発生し、上述の通りモータ1の各電極を短絡等してあり、モータ1の電磁力に起因するシャフトSの回転に抗するトルクを発生するようにコイルに電流が流れるようにしてあるため、上記シャフトSの回転に抗するトルクがシャフトSの回転運動を抑制することとなる。
このシャフトSの回転運動を抑制する作用は、上記動力伝達手段Dを介してボール螺子ナット4に伝達されるので、ボール螺子ナット4の回転運動を抑制するように働く。
すると、上記モータ1の電磁力に起因する上記シャフトSに抗するトルクは、ボール螺子ナット4の回転運動を抑制するので、外筒5に対する螺子軸3の直線運動を抑制する減衰力として作用し、振動エネルギを吸収緩和し、車両の乗り心地を向上させる。
以上、一連の動作により、電磁緩衝器としての機能を発揮することができる。 そして、実際に車両に適用する際に、適用車種に応じた必要な減衰力が、上記各歯車の減速比を適切なものとすれば、モータ1を交換することなしに得られるので、適用車種ごとにモータの規格を変えなくてすむ。
さらに、減速比によって、減衰力を変化させることができるので、大きな減衰力が必要な場合でも、モータを大型化する必要が無くなる。このことは、裏を返せば小型のモータを使用できるということである。ここで、電磁緩衝が発生する減衰力には、概ね、ボール螺子ナット4の慣性モーメントと、モータ1の回転子の慣性モーメントと螺子軸3の慣性モーメントと各歯車2a,2bの慣性モーメントとモータ1の発生する電磁力の総和であり、モータ1の回転子や各歯車2a,2bの慣性モーメントは、モータ1のシャフトSの角加速度が、上記電磁緩衝器の伸縮運動の加速度に比例することから、電磁緩衝器の伸縮運動の加速度に比例するが、モータ1の回転子や各歯車2a,2bの慣性モーメントが比較的大きく減衰力に対する影響は無視できない。そして、この上記慣性モーメントは、上述の通り上記伸縮運動の加速度に比例することから、路面等から電磁緩衝器に入力される緩衝器の軸方向の力に対し、モータ1の電磁力に依存しない減衰力を発生することになり、特に急激な軸方向の力が入力された場合には、より高い減衰力を発生することになる。したがって、常に電磁力に依存した減衰力に先んじてモータ1の回転子や各歯車2a,2bの慣性モーメントによる減衰力が発生することとなり、また、電磁緩衝器の伸縮運動の加速度に依存するモータの回転子の慣性モーメントにより発生する減衰力は制御しづらいので、上記慣性モーメントが小さければ小さいほど、上記慣性モーメントの減衰力に対する影響を抑制することができる。ここで、本実施の形態で考慮に入れなくてはならない各歯車2a,2bの慣性モーメントとモータ1の回転子の慣性モーメントとの影響を、モータ1の小型化および各歯車2a,2bの径、重量およびギア比の設計で最適化すれば、上記慣性モーメントの減衰力に対する影響を抑制することができるということであり、また、従来の電磁緩衝器を車両に適用した場合に比べ、車両における乗り心地を向上することが可能となるということである。
ここで、特に図示しなかったが、モータ1の上部がモータブラケット9に固定されて、モータ1の下部は剥き出しの状態であるが、実際に車両に適用する際には、雨、泥、石のはね等の外的負荷によるモータ1の損傷を防ぐべくモータ1を覆うカバーを取付けることが好ましい。
また、モータ1が発生する電磁力による回転トルクが歯車シャフトに伝達されることは上述のとおりであるが、動力伝達手段Dの各歯車2a、2bとの減速比を適切な組み合わせとすることにより、所望の減衰力を得られることとなるのは、上述したとおりである。
なお、上述したところでは、モータを1つ使用した電磁緩衝器を例にあげているが、ボール螺子ナット4に形成した駆動歯車に、複数の従動歯車を噛合させ、それぞれの従動歯車にモータのシャフトを連結すれば、複数のモータを設けることもできる。この場合には、モータを複数使用することが出来るので、モータを1つ使用した場合に比べて、より大きな減衰力を得ることができ、さらに、1つのモータを大型化して大きな減衰力を得るのではなく、複数のモータを利用することとしているので、モータの大型化に伴うモータの回転子の慣性モーメントの増加の影響、すなわち、慣性モーメントが大きくなることによる車両の乗り心地の悪化及び緩衝器の伸縮運動の加速度に依存するモータの回転子や歯車の慣性モーメントにより発生する減衰力の制御の困難性という弊害を小さくすることが可能である。さらに、モータを複数とした場合には、万が一モータの1つが損傷して、当該損傷したモータが電磁力に起因するトルクを発生不能な状態となった場合でも、その場合には、他の損傷していないモータは通常通りのトルクを発生するので、減衰力を発生不能となる事態が回避される。したがって、フェールセーフを行うことができる。
なお、モータを複数とする場合にも、各歯車を傘歯車とし、また、歯車機構に換えて動力伝達手段を摩擦車機構、ベルト機構をするとしてもよい。
また、上記したところでは、電磁緩衝器を特に車両に適用した場合について説明したが、通常緩衝器が使用される部位にこの電磁緩衝器を使用可能なことは無論である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。