JP4278539B2 - 電磁緩衝器 - Google Patents

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本発明は、螺子ナットに螺子軸を回転自在に螺合することにより、螺子ナットを介して螺子軸の直線運動をモータの回転運動に変換する機構を有し、モータの電磁力を減衰力として利用する電磁緩衝器に関する。
一般に車両の車体と車軸との間に懸架バネと並列にして油圧緩衝器を介在させたサスペンションが知られており、このサスペンションは車体を懸架するとともに路面からの振動等の入力を減衰して車両の乗り心地と操縦性を向上させ、或いは車体の変位を抑制して車高を一定に保持している。この油圧緩衝器は、高減衰力が得られる点で有利であるが反面、油が必要であり、この油の漏れを防止するシール機構や複雑なバルブ機構を必要とする。
そこで、最近油、エアや電源等を必要としない新しい電磁緩衝器が研究され、提案されている(特許文献1参照、非特許文献1参照)。
この電磁緩衝器の基本構造は、ボール螺子ナットに回転自在に螺合した螺子軸と、螺子軸の一端に連結され電極を短絡したモータと、で構成され、螺子軸に対しボール螺子ナットが軸方向に移動すると、螺子軸とモータのシャフトが回転し、このシャフトの回転により発生する誘導起電力によってシャフト及び螺子軸の回転方向と逆向きのトルクを上記ボール螺子ナットの直線運動を抑制する減衰力として利用するものである。
特開2003−227543号公報(段落番号0023,図1) 末松、須田,「自動車における電磁サスペンションの研究」,社団法人自動車技術会,学術講演会前刷集,2000年,No4−00
しかし、上述した従来の螺子軸とモータのシャフトを連結することにより、モータに螺子軸の回転運動を伝達する構成を採用している電磁緩衝器は、特に車両に適用する際には、以下の問題点がある。
電磁緩衝器では、螺子軸の回転数に比例した減衰力が発生するので、路面から突き上げ入力のような特に急激な軸方向の振動が入力された場合には、螺子軸の回転数も速くなるので、モータのシャフトもそれに応じて高速で回転するから、モータの発生する電磁力が大きくなり、より高い減衰力を発生することになる。
すると、車体側に衝撃が伝達されてしまい、結果的に車両における乗り心地が悪化してしまう。
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、車両における乗り心地を向上する電磁緩衝器を提供することにある。
上記した目的を達成するため、第1の課題解決手段における電磁緩衝器は、螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸に連結されるモータとを備え、モータの電磁力で螺子ナットと螺子軸の軸方向の相対移動を抑制する電磁緩衝器において、螺子軸とモータとの間に両者間の伝達トルクを変更する電磁クラッチを備え、当該電磁クラッチへの電流供給量を制御してモータの慣性モーメントによる減衰力を制御することを特徴とする。
また、第2の課題解決手段における電磁緩衝器は、支持部材に支持される螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸に連結されるモータとを備え、モータの電磁力で螺子ナットと螺子軸の軸方向の相対移動を抑制する電磁緩衝器において、支持部材と螺子ナットとの間に両者間の伝達トルクを変更する電磁クラッチを備え、当該電磁クラッチへの電流供給量を制御してモータの慣性モーメントによる減衰力を制御することを特徴とする
そして、第3の課題解決手段における電磁緩衝器は、第1の課題解決手段において、電磁クラッチは、螺子軸を回転させるトルクもしくはモータの発生する電磁力によるモータのシャフト回転させるトルクが所定のトルク以上となったときに、上記トルクの伝達を抑制もしくは解除することを特徴とする。
さらに、第4の課題解決手段における電磁緩衝器は、第2の課題解決手段において、電磁クラッチは、螺子ナットに作用するトルクが所定のトルク以上となったときに支持部材への上記トルクの伝達を抑制もしくは解除することを特徴とする。
各請求項の発明によれば、電磁クラッチにより螺子軸とモータとの間もしくは螺子ナットと支持部材との間の伝達トルクを変更することができるので、この電磁緩衝器を車両に適用したときに路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合にモータが減衰力を発生することを阻止もしくはその発生減衰力を減少することができる。したがって、車体側に衝撃が伝達されてしまうことはなく、車両における乗り心地が向上する。また、電磁クラッチへの電流供給量を制御して電磁クラッチの伝達可能なトルク自体を制御することとすれば、モータの回転子の慣性モーメントに起因する減衰力による弊害も抑制することができ、車両における乗り心地を向上することもできる。さらに、電磁クラッチを採用しているので、螺子軸の回転数がモータの許容回転速度を超えるような場合に電磁クラッチへの電流供給を断つようにしておけば、モータの異常発熱によって引き起こされるモータのコイルを形成する導線の絶縁被膜の化学変化等による絶縁性の劣化、ひいては、絶縁性の劣化による漏電、および、モータ自体の損傷等の弊害を防止することもできる。
請求項3の発明によれば、螺子ナットの上下方向の直線運動により螺子軸を回転させるトルクが、所定のトルク以上となる場合、たとえば、この電磁緩衝器を車両に適用したときに路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合には、電磁クラッチがトルク伝達を抑制もしくは解除するので、モータが減衰力を発生することを阻止もしくはその発生減衰力を減少することができる。したがって、車体側に衝撃が伝達されてしまうことはなく、車両における乗り心地が向上する。
そして、所定のトルクについては、電磁緩衝器が適用される車両に適するように、車両における乗り心地を悪化させるような振動入力時に発生するトルクに設定されることで、たとえば、路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合にのみ、トルクの伝達を解除することにより、車両における乗り心地を向上することができる。
また、請求項4の発明によれば、螺子ナットを回転させるトルクが、所定のトルク以上となる場合、たとえば、この電磁緩衝器を車両に適用したときに路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合に電磁クラッチがトルク伝達を抑制もしくは解除するので、モータが減衰力を発生することを阻止もしくはその発生減衰力を減少することができる。したがって、車体側に衝撃が伝達されてしまうことはなく、車両における乗り心地が向上する。
そして、所定のトルクについては、電磁緩衝器が適用される車両に適するように、車両における乗り心地を悪化させるような振動入力時に発生するトルクに設定されることで、たとえば、路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合にのみ、トルクの伝達を解除することにより、車両における乗り心地を向上することができる。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。図2は、電磁クラッチの縦断面図である。図3は、本発明の第2の実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。
図1に示すように、第1の実施の形態における電磁緩衝器は、モータ1と、螺子軸3と、螺子ナットたるボール螺子ナット4と、電磁クラッチDとで構成され、螺子軸3がボール螺子ナット4に螺合され、ボール螺子ナット4の図1中上下方向の直線運動を螺子軸3の回転運動に変換し、この回転運動をモータ1に伝達することによりモータ1に電磁力を発生させ、この電磁力に起因して発生する螺子軸3の回転に抗するトルクを上記ボール螺子ナット4の直線運動を抑制する減衰力として利用し、ボール螺子ナット4と螺子軸3との軸方向の相対移動を抑制することが出来るものである。
詳しく説明すると、螺子軸3は、その外周に螺子溝3aが形成され、図1中上方がボールベアリング7,8を介して回転自在に有底筒状の外筒5内に挿入されている。また、螺子軸3の上端は電磁クラッチDの一端に連結されている。さらに、螺子軸3はボール螺子ナット4内に回転自在に螺合され、その先端、すなわち、図1中下端にはクッション部材15が設けられており、ボール螺子ナット4が図1中下方に移動して電磁緩衝器が最伸びきり状態となったときには、螺子軸3の図1中下端に設けたクッション部材15がボール螺子ナット4の図1中下端に当接して、螺子軸3がボール螺子ナット4から抜けてしまうことが防止されるとともに、最伸びきり時の衝撃を緩和する。
ここで、ボール螺子ナット4の構造は特に図示しないが、たとえば、ボール螺子ナット4の内周には、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aに符合するように螺旋状のボール保持部が設けられており、前記保持部に多数のボールが配在されてなり、ボール螺子ナット4の内部にはボールが循環可能なように前記螺旋状保持部の両端を連通する通路が設けられているものであって、螺子軸3を前記ボール螺子ナット4に螺合された場合に、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aにボール螺子ナット4のボールが嵌合し、ボール螺子ナット4の図1中上下方向の直線運動に伴いボール自体も螺子軸3の螺子溝3aとの摩擦力により回転するので、ラックアンドピニオン等の機構に比べ滑らかな動作が可能である。さらに、このボール螺子ナット4は、ブラケット10を介して有底筒状の内筒6に連結されている。
他方、螺子軸3の上端に連結された電磁クラッチDの他端側には、モータ1のシャフト1aが連結されており、螺子軸3が回転すると、この電磁クラッチDを介してモータ1のシャフト1aも回転することができる。そして、モータ1は外筒5内に固定されて収納されている。ここで、モータ1は、図示はしないが、ブラシレスモータを例に取ると、フレーム内に回転自在に挿入したシャフト1aと、フレームに取付けられるコアに巻装したコイルと、シャフト1aに取付けられる複数の磁石とで構成され、磁石はコイルおよびコアに対向するように設けられている。すなわち、シャフト1aがフレームに対して回転運動を呈すると、磁石も回転するので、コイルが上記磁石の発生する磁界を横切ることにより誘導起電力を発生する。そして、モータ1の上記各電極は、制御回路等(図示せず)に接続されるか、短絡されて閉回路とされ、電磁力に起因するシャフト1aの回転に抗するトルクを発生するようにしておくことにより、所望の減衰力を得られるよう調整される。なお、ブラシレスモータの場合には、回転子の位置検出手段としてホール素子、磁気センサや光センサ等が搭載されているが、単に電磁力に起因するトルクを発生させる限りにおいては上記位置検出手段を設ける必要はない。ただし、位置検出手段を設けることにより、回転子の回転運動の状況(回転角や角速度等)を把握することができるのでモータの制御に便利である。たとえば、ホール素子を例に取れば、外部電源から当該素子に通電しておくことが必要であるが、通電する為の電線を当該素子に接続して電流を供給するとすれば良く、また、外部電源を用いずとも、シャフト1aの回転により発電されるので、この誘導起電力によって発生される電流をホール素子に供給するか、一端外部のバッテリに蓄電しておいて、このバッテリから電流を供給するとしてもよい。なお、上述したところからは、コイルをフレームに、磁石をシャフト1aに取付けているが、コイルをシャフト1aに、磁石をフレームに取付けるとしても良い。なお、本実施の形態においてはモータ1をブラシレスモータとしているが、電磁力発生源として使用可能であれば、様々なモータ、たとえば直流モータや交流モータ、誘導モータ等が使用可能である。
また、電磁クラッチDは、螺子軸3を回転させるトルクが所定のトルク以上となると、モータ1のシャフト1aとの接続を断つように設定されている。なお、電磁クラッチDは、回転運動の伝達の可不可を行える周知のものを使用すればよいが、具体的には、たとえば、図2に示すように、モータ1のシャフト1aにボールベアリング30を介して回転自在に取付けられた電磁石保持部材31と、コイル32が内設され電磁石保持部材31に固着される電磁石Mと、シャフト1aに嵌着されるクラッチ板33と、クラッチ板33に設けられた環状の摩擦板34と、シャフト1aにボールベアリング35を介して回転自在に取付けられ、かつ、螺子軸3に嵌着されるクラッチ板保持部材36と、クラッチ板保持部材36に環状板バネ37を介して揺動自在に取付けられるクラッチ板38とで構成され、上記コイル32に電流を印加すると、クラッチ板38が環状板バネ37のバネ力に抗してクラッチ板33に吸引されて当接し、これにより螺子軸3の回転がモータ1のシャフト1aに伝達され、コイル32への通電を断つと、クラッチ板38が上記環状板バネ37の復元力によりクラッチ板33から離れるので、螺子軸3の回転がシャフト1aに伝達されなくなるようになっている。
また、外筒5内には、上述の内筒6が軸受9およびブラケット10を介して摺動自在に挿入されており、外筒5の図1中下端にはダストシールSが設けられている。したがって、電磁緩衝器の構成部材は外筒5および内筒6により覆われているので、路面からの飛び石や、雨水等が直接ボール螺子ナット4、モータ1、電磁クラッチDや螺子軸3に当たることが防止されている。さらに、軸受9およびブラケット10により内筒6およびボール螺子ナット4に対する螺子軸3の軸ぶれが防止されており、ボール螺子ナット4の一部のボール(図示せず)に集中して荷重がかかることを防止でき、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aが損傷する事態を避けることが可能である。また、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aの損傷を防止できるので、螺子軸3とボール螺子ナット4の回転若しくは電磁緩衝器の伸縮方向への移動の各動作の円滑さを保つことができ、上記各動作の円滑を保てるので、電磁緩衝器として機能も損なわれず、ひいては、電磁緩衝器の故障を防止できる。
また、外筒5と内筒6との間に軸受9およびブラケット10を設けることにより、外筒5に対して内筒6が軸ずれを生じて、外筒5の上端部内周が内筒6の外周をかじる事態が防止されており、これにより、外筒5と内筒6との間のシール性の劣化も防止されている。
ちなみに、外筒5の上端には、図示しないブラケットが設けられるとともに、内筒6の下端に設けたアイ型ブラケット20により、この電磁緩衝器を、たとえば、車両の車体側と車軸側との間に介装できるようになっている。
引き続いて、作用について説明する。電磁緩衝器に伸縮する、すなわち、外筒5に対し内筒6が図1中上下方向に移動すると、この内筒5に連結されたボール螺子ナット4も上下方向の直線運動をする。そして、このボール螺子ナット4の直線運動は、ボール螺子ナット4と螺子軸3のボール螺子機構により、螺子軸3の回転運動に変換される。
ここで、電磁クラッチDが螺子軸3とシャフト1aとを接続している状態、すなわち、螺子軸3を回転させようとするトルクが所定のトルク以下で螺子軸3がシャフト1aに対し回転しえない状態では、螺子軸3が回転運動を呈すると、シャフト1aも回転する。すると、モータ1内のコイルが磁石の磁界を横ぎることとなり、コイルには誘導起電力が発生し、上述の通りモータ1の各電極を短絡等してあるから、モータ1は、上記誘導起電力に起因するシャフト1aの回転に抗するトルクを発生する。そして、このシャフト1aの回転に抗するトルクは、シャフト1aが螺子軸3に接続されているので、螺子軸3の回転を抑制し、ボール螺子ナット4の上記直線運動を抑制することとなる。
したがって、モータ1のシャフト1aの回転運動を抑制する作用は、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制するように働くので、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制する減衰力として作用し、振動エネルギを吸収緩和する。
以上、一連の動作により、電磁緩衝器としての機能を発揮することができるが、ボール螺子ナット4の上下方向の直線運動により螺子軸3を回転させるトルクが、所定のトルク以上となる場合、たとえば、この電磁緩衝器を車両に適用したときに路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合には、電磁クラッチDは電磁石内のコイルへの電流供給を断つ。すると、螺子軸3のみが回転することとなり、シャフト1aは回転せずモータ1は電磁力を発生しない。したがって、上記のような状況下では、減衰力の発生を阻止できるので、車体側に衝撃が伝達されてしまうことはなく、車両における乗り心地が向上する。
そして、上記螺子軸3を回転させるトルクが所定のトルク以下となる場合には、電磁クラッチDのコイルには通電され、通常減衰力を発生する。したがって、路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合にのみ、トルクの伝達を解除することにより、車両における乗り心地を向上することができる。また、所定のトルクについては、電磁緩衝器が適用される車両に適するように、車両における乗り心地を悪化させるような振動入力時に発生するトルクに設定されることが望ましい。
なお、上述したところでは、電磁クラッチDは、上記所定のトルク負荷時に電磁石内のコイルへの通電を断つとしているが、あらかじめ、所定のトルク負荷時に、クラッチ板33とクラッチ板38が当接していても空回りする状態、いわゆる、すべる状態となるように、クラッチ板38を吸引する力を調整しておくとしてもよい。この場合には、電磁石の規格に応じて電流量を上記状態となるように調整しておけばよい。そうすることで、電磁クラッチDは、螺子軸3の回転をダイレクトにシャフト1aに伝達しないので、モータ1のシャフト1aが回転しないか、回転しても螺子軸3の回転数より低い回転数となり、急激な振動が入力されても大きな減衰力を発生することがなく、車両における乗り心地を向上することが可能となる。
また、螺子軸3の回転数がモータ1の許容回転速度を超えるような場合に電磁クラッチDへの電流供給を断つようにしておけば、モータの異常発熱よって引き起こされるモータのコイルを形成する導線の絶縁被膜の化学変化等による絶縁性の劣化、ひいては、絶縁性の劣化による漏電、および、モータ自体の損傷等の弊害を防止することもできる。
なお、従来の電磁緩衝器の発生する減衰力は、モータの発生する電磁力に起因するもの以外に、モータの回転子、具体的には、本実施の形態にあっては、モータ1のシャフト1aおよびシャフト1aに取付けられている磁石の慣性モーメントに起因するものがある。すなわち、電磁緩衝器が発生する減衰力は、モータの回転子の慣性モーメントと螺子軸の慣性モーメントとモータの発生する電磁力の総和であり、モータの慣性モーメントは、モータのシャフトの角加速度が、緩衝器の伸縮運動の加速度に比例することから、緩衝器の伸縮運動の加速度に比例する。
そして、この上記回転子の慣性モーメントは、上述の通り上記伸縮運動の加速度に比例することから、電磁緩衝器に入力される緩衝器の軸方向の振動入力に対し、モータの電磁力に依存しない減衰力を発生することになり、特に電磁緩衝器を車両に適用する場合には、路面等からの突き上げ入力時のような特に急激な軸方向の振動が入力された場合には、より高い減衰力を発生することになる。
したがって、常に電磁力に依存した減衰力に先んじてモータの回転子の慣性モーメントによる減衰力が発生することとなり、更に上述した通り、上記モータの回転子の慣性モーメントは比較的大きいので、車両における乗り心地が悪化することとなるが、ここで、電磁クラッチDへの電流供給量を制御して、積極的にクラッチ板33とクラッチ板38がすべる状態を制御すれば、モータ1の回転子の慣性モーメントに起因する減衰力による弊害も抑制することができる。すなわち、電磁クラッチDはモータ1が発生する電磁力によるトルクの伝達を制御することもできるので、上記のように、必要以上の電磁力に起因するトルクを螺子軸3に伝達できないようにすることも可能であるので、電磁クラッチDへの電流供給量を制御して電磁クラッチDの伝達可能なトルク自体を制御することとすれば、上記慣性モーメントによる弊害を防止でき、更に車両における乗り心地を向上することもできる。
つづいて、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部材については、同一の符号を付するのみとして、詳しい説明を省略することとする。第2の実施の形態における電磁緩衝器は、図3に示すように、略第1の実施の形態と同様の構成であり、第1の実施の形態と異なるところは、第1の実施の形態では螺子軸3とモータ1のシャフト1aとの間に電磁クラッチDが設けられていたが、第2の実施の形態では、螺子軸3とモータ1aとは直接的に連結されており、さらに、内筒6とアイ型ブラケット20との間に電磁クラッチDが設けられている点である。
以下、第1の実施の形態と異なる点について詳細に説明すると、ボール螺子ナット4は、内筒6に連結されるブラケット10に嵌着されるとともに、内筒6は、支持部材たるアイ型ブラケット20に電磁クラッチDを介して連結されている。
第2の実施の形態における電磁緩衝器は、上述のように構成され、つづいて、その作用について説明する。電磁緩衝器に伸縮する、すなわち、外筒5に対し内筒6が図1中上下方向に移動すると、この内筒5に連結されたボール螺子ナット4も上下方向の直線運動をする。そして、このボール螺子ナット4の直線運動は、ボール螺子ナット4と螺子軸3のボール螺子機構により、螺子軸3の回転運動に変換される。
ここで、電磁クラッチDが内筒6の回転を阻止可能な状態、すなわち、ボール螺子ナット4を回転させようとするトルクが所定のトルク以下で内筒6がアイ型ブラケット20に対して回転しない状態では、螺子軸3が回転運動を呈すると、螺子軸3に直結されたシャフト1aも回転する。すると、モータ1内のコイルが磁石の磁界を横ぎることとなり、コイルには誘導起電力が発生し、上述の通りモータ1の各電極を短絡等してあるから、モータ1は、上記誘導起電力に起因するシャフト1aの回転に抗するトルクを発生する。そして、このシャフト1aの回転に抗するトルクは、シャフト1aが螺子軸3に接続されているので、螺子軸3の回転を抑制し、ボール螺子ナット4の上記直線運動を抑制することとなる。
したがって、モータ1のシャフト1aの回転運動を抑制する作用は、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制するように働くので、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制する減衰力として作用し、振動エネルギを吸収緩和する。
以上、一連の動作により、電磁緩衝器としての機能を発揮することができるが、ここで、ボール螺子ナット4が上下方向の直線運動を呈すると、螺子軸3が回転させられるが、同時にボール螺子ナット4にもその反力としてボール螺子ナット4を回転させるトルクが負荷されることとなる。そして、このボール螺子ナット4を回転させるトルクが電磁クラッチDで設定される所定のトルク以上となると場合、たとえば、この電磁緩衝器を車両に適用したときに路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合には、電磁クラッチDがすべりを生じて回転する。すると、ボール螺子ナット4のみが回転する場合には、螺子軸3は回転せずにシャフト1aは回転せずモータ1は電磁力を発生しない。また、ボール螺子ナット4が回転するとともに螺子軸3も回転する場合には、螺子軸3の回転数は螺子軸3のみが回転する場合の回転数より減少するのでモータ1の発生する電磁力は減少する。
したがって、いずれの場合にも、モータ1は電磁力を発生できないか、もしくは、その発生電磁力が減少するので、車体側に衝撃がダイレクトに伝達されてしまうことはなく、その結果、車両における乗り心地が向上する。
したがって、路面から突き上げ入力等の急激で大きな負荷が電磁緩衝器に入力された場合にのみ、電磁クラッチDがトルクの伝達を抑制もしくは解除することにより、車両における乗り心地を向上することができる。また、所定のトルクについては、電磁緩衝器が適用される車両に適するように、車両における乗り心地を悪化させるような振動入力時に発生するトルクに設定されることが望ましく、その所定のトルクは、電流量により調整することができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
本発明の第1の実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。 電磁クラッチの縦断面図である。 本発明の第2の実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。
符号の説明
1 モータ
1a シャフト
3 螺子軸
3a 螺子溝
4 螺子ナットたるボール螺子ナット
5 外筒
6 内筒
20 支持部材たるアイ型ブラケット
D 電磁クラッチ

Claims (4)

  1. 螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸に連結されるモータとを備え、モータの電磁力で螺子ナットと螺子軸の軸方向の相対移動を抑制する電磁緩衝器において、螺子軸とモータとの間に両者間の伝達トルクを変更する電磁クラッチを備え、当該電磁クラッチへの電流供給量を制御してモータの慣性モーメントによる減衰力を制御することを特徴とする電磁緩衝器。
  2. 支持部材に支持される螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸に連結されるモータとを備え、モータの電磁力で螺子ナットと螺子軸の軸方向の相対移動を抑制する電磁緩衝器において、支持部材と螺子ナットとの間に両者間の伝達トルクを変更する電磁クラッチを備え、当該電磁クラッチへの電流供給量を制御してモータの慣性モーメントによる減衰力を制御することを特徴とする電磁緩衝器。
  3. 電磁クラッチは、螺子軸を回転させるトルクもしくはモータの発生する電磁力によるモータのシャフト回転させるトルクが所定のトルク以上となったときに、上記トルクの伝達を抑制もしくは解除することを特徴とする請求項1に記載の電磁緩衝器。
  4. 電磁クラッチは、螺子ナットに作用するトルクが所定のトルク以上となったときに支持部材への上記トルクの伝達を抑制もしくは解除することを特徴とする請求項2に記載の電磁緩衝器。
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