以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。図2は、本発明の電磁緩衝器を車両に適用した状態を示す図である。図3は、本発明の一実施の形態の変形例における電磁緩衝器の縦断面図である。
図1に示すように、一実施の形態における電磁緩衝器は、基本的には、螺子ナットたるボール螺子ナット4と、ボール螺子ナット4内に回転自在に螺合される螺子軸3と、モータ1と、螺子軸3の軸方向の加速度を検出する加速度検出手段たる加速度センサG1とで構成され、螺子軸3の上端がモータ1のシャフト1aに連結され、モータ1への電流供給によりモータ1の発生するトルクを調整し、螺子軸3にトルクを伝達し、この電磁緩衝器が伸縮する時のボール螺子ナット4の図1中上下方向の直線運動を制御することが出来るものである。
以下、詳細な構造について説明する。モータ1は、有底筒状の外筒2内に内設され、モータ1のシャフト1aは、外筒2内にボールベアリング9,10,11を介して回転自在に挿入され、また、モータ1のシャフト1aは螺子軸3に連結されている。なお、図示するところでは、螺子軸3とシャフト1aとを別部材として、それぞれを連結しているが、螺子軸3とシャフト1aとが一体的に形成されてもよい。また、外筒2の図1中上端には、車両へこの電磁緩衝器を取付ける為のブラケット20が設けられている。
モータ1は、上記螺子軸3に連結されるシャフト1aと、シャフト1aの外周に取付けられた磁石7,7と、外筒2の内周であって上記磁石7,7と対向するように取付けたコア8と、コア8に嵌装したコイル6とで構成されるブラシレスモータであって、この場合、外筒2がモータ1のフレームとしての役割を果たしている。そして、モータ1の各電極(図示せず)は、図2に示すようにECU30に接続され、モータ1にECU30から電流を供給し、モータ1が電磁力に起因するトルクを発生できるようにしてあり、所望の減衰力を得られるよう設定されている。なお、ブラシレスモータの場合には、回転子の位置検出手段としてホール素子、磁気センサや光センサ等が搭載されているので、後述する制御に当り、この位置検出手段が利用できるので、回転子の回転運動の状況(回転角や角速度等)を把握することができるので電磁緩衝器の制御に便利であるとともに、別途、回転子の位置を検出する手段を設ける必要はない。ただし、もともと位置検出手段を有しないモータ、たとえば、直流ブラシ付モータ等を使用する場合には、電磁緩衝器の制御にあたり位置検出手段を設ける方が好ましい場合がある。これについては後述する。また、位置検出手段としてのホール素子を例に取れば、外部電源から当該素子に通電しておくことが必要であるが、ブラケット20側を車両の車体側に取付けるようにし、さらに、このブラケット20を中空としておけば、ブラケット20内を介して上記通電する為の電線(図示せず)を当該素子に接続して電流を供給するとすれば、ブラケット20の図1中上端側から伸びる電線を外方の制御装置、制御回路に接続する際の取り回しも、容易となり、上記電線は車体内に収容されることとなるので、電線の損傷機会も減ずることが可能となる。また、外部電源を用いずとも、ボール螺子ナット4の回転により発電されるので、この誘導起電力によって発生される電流をホール素子に供給するか、一端外部のバッテリに蓄電しておいて、このバッテリから電流を供給するとしてもよい。ちなみに、この位置検出手段に常に通電し、後述するECU30等に接続しておくとことにより、車両の正確な車高を検出することも可能である。なお、本実施の形態においては、コイル6を外筒2側に、磁石7,7をシャフト1a側に取付けているが、コイル6をシャフト1a側に、磁石7,7
を外筒2側に取付けるとしても良い。なお、本実施の形態においてはモータ1をブラシレスモータとしているが、電磁力発生源として使用可能であれば、様々なモータ、たとえば直流モータや交流モータ、誘導モータ等が使用可能である。
シャフト1aに連結された螺子軸3は、その外周に螺子溝3aが設けられており、外筒2内に摺動自在に挿入された有底筒状の内筒5内に挿入され、さらに、この内筒5内に嵌着されたボール螺子ナット4内に回転自在に螺合されている。ここで、ボール螺子ナット4の構造は特に図示しないが、たとえば、ボール螺子ナット4の内周には、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aに符合するように螺旋状のボール保持部が設けられており、前記保持部に多数のボールが配在されてなり、ボール螺子ナット4の内部にはボールが循環可能なように前記螺旋状保持部の両端を連通する通路が設けられているものであって、螺子軸3を前記ボール螺子ナット4に螺合された場合に、螺子軸3の螺旋状の螺子溝3aにボール螺子ナット4のボールが嵌合し、螺子軸3の回転運動に伴いボール自体も螺子軸3の螺子溝3aとの摩擦力により回転するので、ラックアンドピニオン等の機構に比べ滑らかな動作が可能である。
上述のように、ボール螺子ナット4には螺子軸3が螺子溝3aに沿って回転自在に螺合され、ボール螺子ナット4が螺子軸3に対し図1中上下方向の直線運動をすると、ボール螺子ナット4はたとえば車体もしくは車軸側に固定される内筒5により回転運動が規制されているので、螺子軸3は強制的に回転駆動される。すなわち、上記機構によりボール螺子ナット4の直線運動が螺子軸3の回転運動に変換されることとなる。また、ボール螺子ナット4が図1中下方に移動して電磁緩衝器が最伸びきり状態となったときには、螺子軸3の図1中下端に設けたクッション部材15がボール螺子ナット4の図1中下端に当接して、螺子軸3がボール螺子ナット4から抜けてしまうことが防止されるとともに、最伸びきり時の衝撃を緩和し、最圧縮時には、螺子軸3が後述する内筒5の底部と当接することを防止して衝撃を緩和する。
なお、外筒2と内筒5との間にはダストシール(図示せず)が設けられ、これにより外筒2および内筒5で作られる空間に塵、埃や雨水等が侵入することが防止されている。ちなみに、外筒2内に内筒5が摺動自在に挿入されているが、外筒2と内筒5との間に環状の軸受を設けるとしてもよい。この場合には、外筒2の下端部内周が内筒5の外周面をかじってしまい外筒2と内筒5との間のシール性が劣化してしまう危険を防止できる。
また、外筒2内に内筒5が摺動自在に挿入されていることにより、内筒5およびボール螺子ナット4に対する螺子軸3の軸ぶれが防止されており、これにより、ボール螺子ナット4の一部のボール(図示せず)に集中して荷重がかかることを防止でき、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aが損傷する事態を避けることが可能である。また、ボールもしくは螺子軸3の螺子溝3aの損傷を防止できるので、螺子軸3とボール螺子ナット4の回転若しくは電磁緩衝器の伸縮方向への移動の各動作の円滑さを保つことができ、上記各動作の円滑を保てるので、電磁緩衝器として機能も損なわれず、ひいては、電磁緩衝器の故障を防止できる。
また、内筒5の図1中下端にはアイ型ブラケット21が設けられており、このアイ型ブラケット21と上述の外筒2の図1中上端に設けたブラケット20とを利用して、車両の車体と車軸との間に電磁緩衝器を介装することができるようになっている。
他方、加速度センサG1は、外筒2の側方に固定されており、この加速度センサG1は、外筒2の軸方向の加速度を検出することができるようになっている。すなわち、外筒2は軸方向に螺子軸3と一体的に移動するので、この加速度センサG1は螺子軸3の軸方向の加速度を検出できるようになっている。なお、加速度センサG1は、公知のものであるので、詳しくは説明しないが、螺子軸3の軸方向の加速度の大きさを検出して、信号を出力することができるのもとなっている。また、本実施の形態においては、加速度検出手段を加速度センサとしているが、速度センサを使用し、この速度センサの検出した螺子軸3の速度を微分器によって微分処理することにより加速度を得るとしてもよいし、車体と路面との変位を検出する変位センサを使用し、この検出された変位を微分器によって2回微分処理して加速度を得るとしてもよい。さらに、本実施の形態では、加速度センサG1を外筒2の側方に設けるとしているが、外筒2内に設けるとしてもよい。
そして、上記のように構成された電磁緩衝器は、伸縮する、すなわち、外筒2に対し内筒5が図1中上下方向に移動すると、この内筒5に連結されたボール螺子ナット4も軸方向の直線運動をする、つまり図1中上下方向の直線運動をする。このボール螺子ナット4の直線運動は、ボール螺子ナット4と螺子軸3のボール螺子機構により、螺子軸3の回転運動に変換される。
そして、螺子軸3が回転運動を呈すると、シャフト1aも回転する。すると、モータ1内のコイル6が磁石7,7の磁界を横ぎることとなり、コイル6には誘導起電力が発生し、モータ1は、上記誘導起電力に起因するシャフト1aの回転に抗するトルクを発生する。そして、このシャフト1aの回転に抗するトルクは、シャフト1aが螺子軸3に接続されているので、螺子軸3の回転を抑制し、ボール螺子ナット4の上記直線運動を抑制することとなる。なお、螺子軸3の回転に伴ってシャフト1aが回転することにより発生する誘導起電力に起因するコイル6流れる電流と、モータ1が接続される後述のECU30から供給される電流との総和により電磁力を発生し、電磁緩衝器はこの電磁力に見合った減衰力を発生することとなり、ECU30からの電流供給により、電磁緩衝器の発生減衰力を調整することができるとともに、モータ1に供給される電流量の調整によりアクチュエータとしても使用可能となっている。
したがって、上記のモータ1のシャフト1aの回転運動を抑制する作用は、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制するように働くので、ボール螺子ナット4の直線運動を抑制する減衰力として作用し、振動エネルギを吸収緩和する。また、ここで、モータ1に供給される電流量を調整すれば、モータ1が発生するトルクは減衰力として作用するだけでなく、電磁緩衝器が伸縮に対し、その伸縮を増長する方向の力としても利用でき、逆に、電磁緩衝器を積極的に伸縮させることもでき、電磁緩衝器の伸縮を自由にコントロールするが可能である。
以上、一連の動作により、電磁緩衝器は減衰力を発生するだけでなくアクチュエータとしての機能を発揮することもできる。
つづいて、この電磁緩衝器を実際の車両に適用した状態について説明する。上記のように構成された電磁緩衝器は、たとえば、4輪車であれば、図2に示したように、前後左右の4箇所の車体と車軸との間に介装される。なお、この場合には、外筒2が車体側に内筒5が車軸側に取付けられている。
そして、各電磁緩衝器のモータ1および加速度センサG1は、電磁緩衝器用のコントローラたるECU30に接続されており、さらに、ECU30は、車両にもともと設置されているECU31に接続される。このECU30は、電磁緩衝器の制御に使用されるもので、車両に生じる横加速度を検出する横加速度センサもしくは車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサもしくは横加速度センサおよびヨーレートセンサを搭載しており、さらに、モータ1へ電流供給可能なようになっている。また、ECU30は、車両にもともと設置されているECU31から車速、操舵角等の情報を入手可能とされ、具体的には、たとえば、ハードウェアとしては図示しないが、加速度センサG1、横加速度センサおよびヨーレートセンサがそれぞれ検出した螺子軸の加速度すなわちバネ上部材たる車体の上下方向の加速度(以下、「車体加速度」という)、車両の横加速度およびヨーレートの各信号を受け取り、さらに、ECU31を介して車速や操舵角等の各信号を受け取り、前記各信号に基づいて制御力を演算し、前記制御力に見合った必要電流をモータ1へ出力できるものであれば良く、具体的にはたとえば、前記各信号増幅するためのアンプと、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器と低周波及び高周波成分をカットするバンドパスフィルタと、CPU、ROM、RAM、水晶発振子及びこれらを連絡するバスラインからなるコンピュータシステムとモータ1を駆動する駆動回路とから構成され、制御力の演算に使用される制御ゲインおよび制御力の演算処理手順と制御信号出力手順は、プログラムとしてROMに予め格納させておくとする周知なシステムで良い。なお、上述のブラシレスモータとしてのモータ1の場合には、駆動回路は、たとえば、電圧源に接続されるPWM回路と、PWM回路に接続されるベースドライブ回路と、ベースドライブ回路に接続されるトランジスタインバータと、回転ロジックとで構成される周知のものが使用可能であり、その他、そのモータの種類に応じて電流量を調整可能なものが使用できる。
また、本実施の形態では、ECU30を、車両搭載済みのECU31に接続するとしているが、車速センサや操舵角センサを搭載している車両にあっては、これらセンサにECU30を直接接続するとしてもよく、この場合には、ECU30をECU31に接続する必要はない。また、もともと、各種センサおよびこれらセンサに接続されるECUを搭載した車両にあっては、電磁緩衝器側に駆動回路を搭載させるとしておけば、ECU内のROMを本発明に使用されるであろうプログラムが格納されるROMに交換して、このECUを電磁緩衝器のコントローラとして使用してもよい。なお、上記したところでは、アクティブ制御に際して、車体加速度、車両の横加速度、ヨーレート、車速、操舵角等を制御力演算に際して使用するとしているが、車体の上下方向の速度を微分して得られる加速度もしくは車体加速度以外の値で制御則に不必要なものについては使用しなくともよい。したがって、使用されるアクティブ制御の制御則に応じて、車体の上下方向の速度を微分して得られる加速度もしくは車体加速度以外の値については取捨選択して使用すればよい。なお、車体加速度については、上述したように、車体の上下方向の速度や車体の上下方向の変位を微分処理して算出することができるので、車体加速度以外に車体の上下方向の速度や車体の上下方向の変位を検出してこれらの値を車体加速度の代用として使用してもよいことは無論である。
そして、上述のように電磁緩衝器が車両に適用された場合についての作用を説明すると、車両走行中に、電磁緩衝器に路面から振動が入力されると、バネ上部材たる車体側の上下方向の加速度、すなわち、車体に連結されている螺子軸3の軸方向の加速度を加速度センサG1が検出する。そして、この検出結果をECU30に送る。さらに、ECU30には、横加速度、ヨーレート、車速、操舵角の各信号を受け取り、この各信号、すなわち、車体加速度、車両の横加速度、ヨーレート、車速、操舵角の値にもとづき、制御ゲインを決定し、あらかじめプログラムされている演算処理手順に従い電磁緩衝器が発生すべき制御力たる減衰力を演算する。この減衰力は4箇所に設置されている電磁緩衝器毎にそれぞれ算出される。そしてさらに、この演算された減衰力を電磁緩衝器に発生させるべく、各電磁緩衝器のモータ1にそれぞれ電流を供給する。
すると、モータ1は、螺子軸3の回転に伴ってシャフト1aが回転することにより発生する誘導起電力に起因するコイル6に流れる電流と、上記ECU30から供給される電流との総和により電磁力を発生し、電磁緩衝器はこの電磁力に見合った軸方向の力を発生することとなる。そして、上記ECU30の演算処理は車両走行中常に繰り返し行われ、ECU30は、この演算処理により得られる制御力たる軸方向の力を電磁緩衝器に発生させるように制御する。ここで、電磁緩衝器は、モータ1にECU30から電流供給されることにより、ボール螺子ナット4と螺子軸3との軸方向の相対移動を抑制する減衰力を発生可能と同時に、電磁緩衝器の伸長もしくは収縮を助長する方向の力を発生することが可能である。すなわち、一般の緩衝器では、その伸長もしくは収縮を抑制する方向の力、すなわち、減衰力しか発生できないが、本実施の形態における電磁緩衝器においては、モータ1に積極的に通電することにより、アクチュエータとしても使用可能となる。
したがって、従来の油圧および電磁緩衝器では、不可能であったアクティブ制御が、本発明の電磁緩衝器においてはアクティブ制御に欠かせないバネ上部材たる車体の上下方向の加速度を検出することができ、さらに、電流供給により簡易に減衰力を調整できるとともに、アクチュエータとしても使用可能であるので、従来では緩衝器以外にアクチュエータを搭載しなければ実現しなかったアクティブ制御が本発明の電磁緩衝器を車両に適用することにより可能となる。
また、電磁緩衝器の発生する減衰力を、モータに供給する電流量を調整することにより、可変にすることができるので、車両の走行状態に適した減衰力を発生することができ、これにより、車両の乗り心地を向上することができることに加えて、アクティブ制御が可能となるので、きめ細かな車両の姿勢制御が可能となり、さらに車両における乗り心地を飛躍的に向上することができる。
そして、モータに積極的に通電することにより、車高調整や車両の姿勢を自由に変化させることが可能であるので、車両の走行性能を向上することも可能である。
以上より、アクティブサスペンションを搭載していない既存車両に本電磁緩衝器を適用し、その制御に必要なECUを搭載するだけで、アクティブサスペンションを既存車両に導入することができ、また、その導入は安価である。
また、車両のバネ上加速度に基づいてモータに供給する電流量を調整してボール螺子ナットと螺子軸との軸方向の相対移動、すなわち、電磁緩衝器が介装されるバネ上部材とバネ下部材の上下方向の相対移動を制御するので、アクティブ制御により車両の走行状態および姿勢を詳細に把握しつつ適切な姿勢制御が可能となる。
さらに、モータへ電流を供給するコントローラたるECUを備えた場合には、既存車両のECUの交換や、既存車両のECUへ接続も必要とならず、アクティブサスペンションの導入が一層簡易となる。
なお、本実施の形態においては、加速度センサG1を外筒2側に設け、外筒2を車両の車体側に連結するとしているが、図2に示すようにモータ1が位置検出手段を備えていることから内筒5側に加速度センサG2を設けるとして、加速度センサG1を省略するとしてもよい。この場合には、上記位置検出手段によりモータ1のシャフト1aの回転数や回転速度を検出することができる。そして、特に回転速度を微分処理すると内筒5に対する外筒2の軸方向の相対加速度を得ることができるので、加速度センサG2で検出される内筒5の軸方向の加速度に上記相対加速度を加算すれば上記バネ上部材たる車体の車体加速度を得ることができる。したがって、特にモータ1がブラシレスモータとされるのであれば、バネ下部材に連結される内筒2のみに加速度センサG2を設けるとしてもよく、また、モータ1がブラシレスモータ以外のモータであっても、回転子の位置検出を行える位置検出手段を設けるとした場合には、同様に、内筒5のみに加速度センサG2を設けることが可能となる。この場合にも、バネ上部材たる車体の車体加速度を得ることができるので、アクティブ制御が可能となることは言うまでもない。なお、逆に外筒2を車軸側に内筒5を車体側に連結する場合には、位置検出手段を備えたもしくは位置検出手段を設けたモータを使用する限りにおいては、外筒2もしくは内筒5に、すなわち、螺子軸3側もしくはボール螺子ナット4側のどちらに加速度センサを設けてもよい。また、精密な制御を行う場合にあっては、外筒2もしくは内筒5に、すなわち、螺子軸3側もしくはボール螺子ナット4側の両方に加速度センサを設けるとしてもよい。
なお、4輪車の場合、電磁緩衝器は、各車体と車軸との間の4箇所に配在されることとなるが、一箇所のみについては、加速度センサを設けない電磁緩衝器としてもよい。すなわち、車体加速度が3箇所で検出される場合には、残りの検出されない車体加速度は、車体を剛体として考えると、3箇所の車体加速度から算出することができるからである。
またさらに、上記実施の形態の変形例について説明する。上述したところにおいては、螺子軸3が回転運動をするとしているが、この変形例では、逆に、図3に示すように、電磁緩衝器を螺子軸3の軸方向の直線運動をボール螺子ナット4の回転運動に変換して、このボール螺子ナット4の回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達する構成とされている。この場合には、ボール螺子ナット4の外周に駆動側歯車62bを設け、この駆動側歯車62bに噛合する従動側歯車62aを設け、さらに、この従動側歯車62aをモータ51のシャフト51aに連結するとして、駆動側歯車62bと従動側歯車62aで構成される歯車機構Dを介してボール螺子ナット4の回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達できるようにしておき、螺子軸3の直線運動をボール螺子ナット4の回転運動に変換し、上記回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達して上記モータ51に電磁力を発生させ、この電磁力に起因し上記シャフト51aの回転に抗するトルクを上記螺子軸3の直線運動を抑制する減衰力として利用し、ボール螺子ナット4と螺子軸3との軸方向の相対移動を抑制するとしている。
この変形例の電磁緩衝器について、詳しく説明すると、螺子軸3には、その図3中下端に電磁緩衝器が適用される箇所へ取付可能なように、アイ型ブラケット50が設けられているとともに、加速度センサG2が取付けられている。そして、この螺子軸3は、ボール螺子ナット4内に回転自在に螺合されるとともに、外筒55内に挿入されている。
また、外筒55は有底筒状であって、その図3中上端には、電磁緩衝器が適用される箇所へ取付可能なように図示しないブラケットが設けられている。したがって、この電磁緩衝器を特に車両に適用する場合には、上記アイ型ブラケット50および図示しないブラケットを介して、車体と車軸との間に電磁緩衝器を介装することが可能なようになっている。
そしてまた、外筒55の図3中下端は、中空なハウジング59に連結され、このハウジング59には、孔59a,59b,59cおよび穴59dが設けられ、外筒55は、ハウジング59の孔59a,59bと同心となるようにハウジング59に連結されている。さらに、ハウジング59の孔59a,59bの内周には、それぞれボールベアリング40,41が嵌合され、このボールベアリング40,41内には上記ボール螺子ナット4が嵌合している。したがって、ボール螺子ナット4はハウジング59に対して回転することができる。
また、ハウジング59の孔59cおよび穴59dにも、ボールベアリング42,43が設けられるとともに、このボールベアリング42,43内には、回転軸60が嵌合されている。さらに、このハウジング59には、孔59cと同芯となるように、筒65が結合されており、この筒65内には、モータ1と同様の構成のモータ51が固着されるとともに、筒65の図3中上端には、加速度センサG1が取付けられている。なお、加速度センサG1は外筒55に取付けてもよい。
上述のように、ボール螺子ナット4には螺子軸3が螺子溝3aに沿って回転自在に螺合され、螺子軸3がボール螺子ナット4に対し図3中上下方向の直線運動をすると、ボール螺子ナット4はハウジング59により図3中上下方向の移動が規制され、回転のみ許容されているので、ボール螺子ナット4は強制的に回転駆動される。すなわち、上記機構により螺子軸3の直線運動がボール螺子ナット4の回転運動に変換されることとなる。
他方、歯車機構Dは、図3に示すように、上記回転軸60に外周に形成した従動歯車62aと、ボール螺子ナット4の外周に形成した駆動歯車62bとからなり、各歯車62a、62bの歯が、互いに噛み合うように水平に配置されてハウジング59内に回転自在に挿入されおり、さらに、回転軸60は、モータ51のシャフト51aに連結されている。
なお、各歯車62a、62bは、たとえばインボリュート歯車等の周知の歯車を使用すればよく、本実施の形態では2つの歯車を使用しているが、3つ以上の歯車列を使用してもよい。
上記のように各歯車62a、62bの軸心が横方向にオフセットされていることにより、各歯車62a、62bに結合したモータ51の軸心とボール螺子ナット4の軸心が横方向にずれており、その結果、モータ51は外筒65の外側においてボール螺子ナット4の側方に並行に配置される。
そして、上記の構成をとることにより、モータ51は、ボール螺子ナット4の側方に配置されるので、従来の電磁緩衝器のようにモータ1を螺子軸3の上部に垂直に設ける必要が無いので、言い換えればモータ51を外筒55と並行に配置したことにより、緩衝器に必要なストローク確保ができ、基本長も短くすることができる。すなわち、省スペース化を図ることができる。
なお、モータ51をボール螺子ナット4の側方近傍に配置しているが、上述のように歯車列を使用して、モータ51をボール螺子ナット4から離れた位置に配置することも可能である。したがって、たとえば、モータ51のみを車体内に配置するようにして雨水や泥、飛び石などによるモータ51の損傷を防止することができる。
上記構成により、螺子軸3の図3中上下方向の直線運動によるボール螺子ナット4の回転運動は、駆動歯車62bと従動歯車62aとが互いに噛み合っているので、モータ51のシャフト51aに伝達されることとなり、その結果、モータ51が回転し、その電磁力に起因して発生するシャフト51aの回転に抗するトルクが歯車機構Dを介してボール螺子ナット4の回転を抑制する減衰力として作用する。
なお、上記したところでは、駆動歯車と従動歯車を水平配置してボール螺子ナット4の回転運動をモータ51に伝達しているが、各歯車を傘歯車として、ボール螺子ナット4に対するモータ51の取付角度を変化させることも可能である。この場合には、上記取付角度の調節が可能であるから、適用する車両の構造にあわせて、本発明にかかる電磁緩衝器を取付けることが出来ることとなる。したがって、新造又は既存車両のレイアウトに左右されずに電磁緩衝器を取付ることが可能である。また、傘歯車の種類は何でも良いが、はすば傘歯車等の円滑な伝動が可能であるものが好ましい。
さらには、ボール螺子ナット4の回転運動をモータ51のシャフト51aに伝達するには、歯車機構D以外に、摩擦車機構やベルト機構を使用してもよい。
このように構成された電磁緩衝器は、伸縮すると、螺子軸3が図3中上下に直線運動を呈することとなるが、この直線運動がボール螺子ナット4の回転運動に変換され、さらに、このボール螺子ナット4の回転運動は、歯車機構Dを介してシャフト51aに伝達される。したがって、モータ51の発生する電磁力に起因するシャフト51aの回転に抗するトルクは、ボール螺子ナット4の回転を抑制することとなり、このボール螺子ナット4の回転を抑制する作用が、螺子軸3の直線運動を抑制することとなるので、結果的に、ボール螺子ナット4と螺子軸3の軸方向の相対移動を抑制する減衰力として作用し、また、モータ51に電流を供給することにより電磁緩衝器をアクチュエータとしても使用可能である。
そして、この場合も加速度センサG1により、もしくは加速度センサG2により、もしくは、加速度センサG1,G2の一方とモータ51側で検出する螺子軸3とボール螺子ナット4との相対加速度とにより、バネ上部材たる車体の車体加速度を検出することができるので、アクティブ制御が可能となる。また、この場合にあっても、加速度センサはどちらか一方のみを使用するとしてもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。