JP2005256082A - 浸炭処理部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軸部に横穴(油穴)を有するシャフト類など自動車の駆動系部品等に使用できる、ねじり疲労強度に優れた浸炭(若しくは浸炭浸窒)処理部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 鋼材の化学組成を、質量割合にてC:0.15〜0.3%、Mn:0.2〜1.0%、Si:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.01〜0.03%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、B:0.0005〜0.005%を含むとともに残部が実質的にFeとし、鋼材鋳造時の冷却速度、熱間圧延時の加熱温度・仕上げ温度・圧下率を調節することにより、鋼材中の長径が3μm以上の介在物粒子の平均アスペクト比を6.0以下、かつ前記介在物粒子の面積率を0.6%以下とし、さらに鋼材への浸炭時間を調整して、軸部半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比を0.015〜0.08とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高いねじり疲労強度が要求される自動車などの駆動系部品、特にシャフト類の製造方法に関するものである。
自動車の駆動系に使用される部品、特にシャフト類はねじり疲労強度が問題となることが多い。ねじり疲労強度を向上するために高周波焼入れ部品がよく用いられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、歯車と一体になったシャフトなど形状が非常に複雑な部品は素材を焼入れ処理する前に切削・研削等して所要の形状に加工する必要があるが、高周波焼入れ用鋼材はC含有量が0.4〜0.7%程度(以下、成分割合を表す%は質量%とする。)と高く被削性に劣るためこのような部品には適用が難しい。そこでより高い被削性を要求される部品に対しては、高周波焼入れ用鋼材よりC含有量を低くして(0.1〜0.25%程度)被削性を向上させた浸炭用鋼材を用い、これを所要の形状に切削加工した後、浸炭(あるいは浸炭浸窒)処理して表面硬度を高めたり転動疲労性を付与するなどの方法が用いられている(例えば、特許文献2参照)。さらに浸炭処理部品は、高周波焼入れ部品よりも高い曲げ疲労強度等が得られることも知られており、浸炭処理部品のねじり疲労強度向上に対してもニーズが高まっている。
しかしながら、高周波焼入れ部品のねじり疲労強度向上に関しては数多くの提案がなされているが(例えば、前記特許文献1参照)、浸炭処理部品に関しては曲げ疲労やピッチング性向上についての知見は多いものの、ねじり疲労強度についての知見はほとんど見当たらないのが現状である。
特に、自動車の駆動系に使用されるシャフトは、軸受等を介して自動車本体に保持されるため摺動部を有し、この摺動部に潤滑油を供給するため、軸部に横穴(油穴)が設けられている。そのため、軸部がトルクを伝達する際にはこの横穴(油穴)の端部に応力集中が生じ、ここから破壊が生じるおそれが高い問題がある。
特許第2774118号公報 特許第3081927号公報
そこで本発明の目的は、軸部に横穴(油穴)を有するシャフト類など自動車の駆動系部品などとして使用できる、ねじり疲労強度に優れた浸炭処理部品を製造する方法を提供することにある。
前記の目的を達成するために、発明者らは浸炭鋼のねじり疲労による破壊機構を解明すべく鋭意研究を遂行し、それにより得られた知見に基づいて発明を完成させた。
すなわち、回転曲げ疲労における応力状態が引張―圧縮の繰り返しであるのに対し、ねじり疲労においては、せん断的な応力を受ける状態となっている。そのため引張―圧縮の繰り返しによる一般的な疲労破壊とは、き裂の発生、伝播挙動が異なるといわれている。高周波焼入れ鋼のねじり疲労についてはいくつかの知見が報告されており、モードIとモードIIIのき裂伝播が疲労寿命に影響することが報告されている。しかし浸炭鋼のねじり疲労については、そのき裂伝播挙動がほとんど調べられていないのが実状であった。今回、発明者らがこれについて検討した結果、浸炭鋼のねじり疲労は高周波焼入れ鋼のねじり疲労とは異なり、強度が高い浸炭部ではモードIき裂が伝播するが、強度が低い芯部では鋼材の圧延方向と平行な面上を進展するモードIIき裂により破壊が起ることが判明した。また疲労寿命には、モードIIき裂伝播速度が重要な影響を及ぼすことが分かり、モードIIき裂伝播速度の低減がねじり疲労寿命の延長に有効であることが分かった。
なお、上記モードI〜IIIき裂は破壊力学において一般的に用いられるき裂の名称であり、モードIき裂は開口型き裂とも呼ばれ、き裂を開口するように引張応力が働いており
、またモードIIき裂は面内せん断型き裂、モードIIIき裂は面外せん断型き裂とも呼ばれ、ともにせん断応力が作用している(図1参照;図中、1はき裂、2は応力の方向、3はき裂の伝播方向である。)。シャフト類などの軸部品にねじり応力をかけた場合、モードIき裂は軸に対して45°傾いた方向、モードIIき裂は軸と平行な方向、モードIIIき裂は軸に対して垂直な方向に進展する。
ねじり疲労寿命を律速するモードIIき裂伝播速度に影響を及ぼす要因を検討した結果、鋼材中に存在する介在物の形態、量および分布が大きく影響することが分かった。すなわち、一般的に用いられる鋼材には不純物としてSが0.002〜0.02%程度含まれており、鋼材中に硫化物(MnSが多いが、Ti、Zr、REMなどの硫化物もある)が少なからず存在している。また硫化物以外にも酸化物(Al、Ca、Mgなどの酸化物)や硫化物と酸化物との複合物も存在している。本発明では、これらを総称して介在物という。これら介在物により構成される粒子のうち、長径が3μm以上のものは、その大半が硫化物あるいは硫化物とその他の化合物(酸化物など)との複合物であり、そのような介在物粒子の多くはビッカース硬さが母相に比べて低いために、鋼材の圧延時に展伸したものである。そして、このような介在物粒子は母相との硬度差が大きいために疲労き裂の伝播経路となりやすい。そして、介在物粒子が偏平となるほど、また介在物粒子の量が多いほど、さらには介在物粒子が母相中に偏在して存在するほど、疲労き裂の伝播速度が大きくなることが分かった。発明者らは、鋼材の化学組成および製造条件を調整することにより、このような長径3μm以上の介在物粒子の形態、量および分布を制御することで、疲労き裂の伝播速度を低減し、浸炭鋼のねじり疲労強度を向上させることができることを見出した。
一方、長径が3μm未満の微細な介在物粒子は、サイズそのものが小さいことから、その形態、分布、量にかかわらず、ねじり疲労強度にほとんど影響を及ぼさないことが分かった。
また、後述するように、軸部に設けた横穴の端部など集中荷重が生じる部分の浸炭(または浸炭窒化)処理による有効硬化層深さがねじり疲労強度に強く影響することを見出した。
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
請求項1の発明は、軸部を有し、該軸部に横穴を有する浸炭処理部品の製造方法であって、化学組成が、質量割合にてC:0.15〜0.3%、Mn:0.2〜1.0%、Si:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.01〜0.03%、Cr:0.6〜1.2%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、B:0.0005〜0.005%を含むとともに残部が実質的にFeであり、かつ、圧延方向に平行な任意の断面において長径が3μm以上の介在物粒子の平均アスペクト比が6.0以下、かつ前記介在物粒子の面積率が0.6%以下である浸炭用鋼材を、概ね前記浸炭処理部品の形状に成形し、ついで浸炭処理又は浸炭窒化処理して、前記軸部の半径に対する、前記横穴の0.9〜1mm深さの位置(前記横穴の端部の面取りを行っていない場合には当該横穴の端部から0.9〜1mm深さの位置をいい、前記横穴の端部の面取りを行っている場合には当該面取りの端部から0.9〜1mm深さの位置をいう。)における横穴内面の有効硬化層深さの比を0.015〜0.08とすることを特徴とする浸炭処理部品の製造方法である。
請求項2の発明は、軸部を有し、該軸部に横穴を有する浸炭処理部品の製造方法であって、化学組成が、質量割合にてC:0.15〜0.3%、Mn:0.2〜1.0%、Si:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.01〜0.03%、Cr:0.6〜1.2%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、B:0.0005〜0.005%を含むとともに残部が実質的にFeであり、かつ、圧延方向に平行な任意の断面において長径が3μm以上の介在物粒子の平均アスペクト比ARと前記介在物粒子の面積率Afと前記介在物粒子の分布指数Fが下式を満たす浸炭用鋼材を、概ね前記浸炭処理部品の形状に成形し、ついで浸炭処理又は浸炭窒化処理して、前記軸部の半径に対する、前記横穴の0.9〜1mm深さの位置(前記横穴の端部の面取りを行っていない場合は当該横穴の端部から0.9〜1mm深さの位置をいい、前記横穴の端部の面取りを行っている場合は当該面取りの端部から0.9〜1mm深さの位置をいう。)における横穴内面の有効硬化層深さの比を0.015〜0.08とすることを特徴とする浸炭処理部品の製造方法である。
−21.4×AR+414.2×F−80.8×Af−30≧0…式(1)
ここに、F=X1/(A/n)1/2…式(2)、
A:前記断面における任意の観察視野の面積、n:前記観察視野内に存在する前記介在物粒子の数、X1:前記観察視野内に存在する前記介在物粒子すべてについて、それぞれの前記介在物粒子ごとに最も近接して存在する別の前記介在物粒子までの距離を実測し、この実測距離を算術平均して求めた値である。
なお、上記請求項1および2の発明において、「圧延方向」とは、鋼材が圧延、鍛造等により延伸される方向のことである。
請求項3の発明は、前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にNi:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜0.5%のうち1種又は2種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の浸炭処理部品の製造方法である。
請求項4の発明は、前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にTi:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.1〜0.5%のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の浸炭処理部品の製造方法である。
請求項5の発明は、前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にCa:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、Zr:0.0005〜0.05%、Te:0.0005〜0.05%のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の浸炭用部品の製造方法である。
請求項6の発明は、前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にPb:0.01〜0.1%、Bi:0.01〜0.05%のうち1種又は2種を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の浸炭用部品の製造方法である。
〔作用〕
以下、本発明において鋼材の化学組成と、介在物粒子の形態、量および分布と、軸部の半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比とを上記のごとくに限定した理由を説明する。
(A)化学組成
a)C
Cは最終的に得られる浸炭(若しくは浸炭浸窒)処理部品の芯部強度を確保するため欠くことのできない元素であり、0.15%以上とする必要がある。一方、0.3%を超えてCを含有させると芯部靭性が劣化するほか、被削性や冷間鍛造性が低下して加工性を損なう。よって、C含有量は0.15〜0.3%とする。なお、C含有量のより好ましい範囲は0.18〜0.23%である。
b)Si
Siは強化元素あるいは脱酸性元素として有効に作用する反面、0.35%を超えてSiを含有させると浸炭中の粒界酸化を助長して疲労特性を劣化させるとともに冷間鍛造性にも悪影響を及ぼす。よって、Si含有量は0.35%以下とする。
c)Mn
Mnは鋼材の脱酸に有効な元素であり、その効果を有効に発揮させるためには0.2%以上とする必要がある。一方、1.0%を超えてMnを含有させると、しま状組織の生成を助長して割れが発生したり、冷間加工性や被削性を劣化させる。よって、Mn含有量は0.2〜1.0%とする。
d)S
Sは硫化物を生成し、被削性の向上に寄与するが、0.01%未満ではその効果が小さく、一方、0.03%を超えるとねじり疲労強度を低下させる。よって、S含有量は0.01〜0.03%とする。
e)P
Pは0.015%を超えると結晶粒界に偏析して靭性および疲労強度を低下させる。よって、P含有量は0.015%以下とする。
f)Cr
Crは焼入れ性を高め、十分な強度を得るために有効な元素であり、その効果を有効に発揮させるためには0.6%以上とする必要がある。一方、1.2%を超えてCrを含有させると、粒界強度が低くなるため、ねじり疲労強度が低下する。よって、Cr含有量は0.6〜1.2%とする。
g)Al
Alは鋼材の脱酸作用を有すると同時に、窒素と結合してAlNを生成し、結晶粒の粗大化を防止する作用を有しており、その効果を有効に発揮させるためには0.005%以上含有させる必要があるが、その効果は0.05%で飽和し、それを超えると酸素と結合して非金属介在物となり靭性、疲労強度などを低下させる。よって、Al含有量は0.005〜0.05%とする。
h)N
Nは鋼中でAl、V、Ti、Nbなどと結合して窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有しており、その効果を有効に発揮させるためには0.002%以上含有させる必要があるが、その効果は0.05%で飽和し、それを超えると窒化物が介在物となって靭性、疲労強度を低下させる。よって、N含有量は0.002〜0.05%とする。
i)B
Bは少量で焼入れ性を向上させる効果を有し、高価な合金元素を低減できる。また粒界強度を向上し、ねじり疲労強度を向上させる効果も有する。その効果を有効に発揮させるためには0.0005%以上の添加が必要であるが、0.005%を超えて添加すると有害なB化合物を生成して靭性や加工性を低下させる。よってB含有量は0.0005〜0.005%とする。
j)Ni、Mo
Ni、Moは、それぞれ焼入れ性を高めるないしは焼入れ組織を微細化する作用を有しているので、これらの元素のうち1種又は2種以上を含有させるのが好ましい。これらの元素のうち、特にNiは焼入れ後の組織を微細化して耐衝撃性の向上に寄与し、その効果を有効に発揮させるためには0.1%以上含有させる必要があるが、その効果は1.5%で飽和しそれを超えての添加は経済的に全く無駄である。よって、Ni含有量は0.1〜1.5%とする。Moは不完全焼入れ組織の低減と粒界強度の向上に有効に作用し、その効果を有効に発揮させるためには0.1%以上含有させる必要があるが、一方、0.5%を超えて添加すると被削性を低下させる。よって、Mo含有量は0.1〜0.5%とする。
k)Ti、Nb、V
Ti、Nb、Vは、それぞれ炭素や窒素と結合して炭化物や窒化物を生成し結晶粒を微細化して靭性や疲労強度を向上させる効果を有するので、これらの元素のうち1種又は2種以上を含有させるのが好ましい。その効果を有効に発揮させるためには、それぞれTiで0.005%以上、Nbで0.005%以上、Vで0.01%以上含有させる必要があるが、その効果はTiで0.1%、Nbで0.1%、Vで0.5%でそれぞれ飽和し、それを超えると大型の介在物が生成し、かえって靭性を低下させる。よって、各元素の含有量は、Ti:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.1〜0.5%とする。
l)Ca、Mg、Zr、Te
Ca、Mg、Zr、Teは、それぞれ硫化物系介在物を球状化させる働きがあり、ねじり疲労強度の向上に有効であると同時に横目靭性(圧延または鍛造による部材の延伸方向と等しい方向から応力を加えたときの靭性)等の機械的特性も向上させるので、これらの元素のうち1種又は2種以上を含有させるのが好ましい。その効果を有効に発揮させるためには、それぞれの元素を0.0005%以上含有させる必要があるが、その効果はCaで0.01%、Mgで0.01%、Zrで0.5%、Teで0.5%でそれぞれ飽和し、それを超えると大型の介在物が生成し、かえって靭性を低下させる。よって、各元素の含有量は、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、Zr:0.0005〜0.05%、Te:0.0005〜0.05%とする。
m)Pb、Bi
Pb、Biは、それぞれ被削性を向上させるので、これらの元素のうち1種又は2種を含有させるのが好ましい。その効果を有効に発揮させるためには、それぞれの元素を0.01%以上含有させる必要があるが、Pbについては0.1%を超える添加、Biについては0.05%を超える添加はそれぞれ横目靭性、疲労強度等の機械的特性を劣化させる。よって、各元素の含有量は、Pb:0.01〜0.1%、Bi:0.01〜0.05%とする。
(B)介在物粒子の形態、量および分布
前述したように、長径が3μm未満の微細な介在物粒子は、ねじり疲労強度にほとんど影響を及ぼさないことから、長径が3μm以上の介在物粒子(以下、単に「介在物粒子」または「粒子」という。)についてのみ形態、量および分布を規定した。
a)介在物粒子の形態
粒子の平均アスペクト比ARが6.0を超えると粒子の偏平度が過度となり疲労き裂伝播速度が上昇し、ねじり疲労強度が低下するので、AR≦6.0とすることが望ましい。ここに、アスペクト比とは粒子の長径/短径で定義される値であり、平均アスペクト比とは任意の観察視野内に存在する全粒子のアスペクト比を算術平均した値である。
b)介在物粒子の量
粒子の面積率Af(単位:%)が0.6%を超えると母相中に存在する粒子数が増加して疲労き裂伝播速度が上昇し、ねじり疲労強度が低下するので、Af≦0.6とすることが望ましい。ここに、面積率とは任意の鋼材断面における任意の観察視野内に存在する全粒子の合計面積/観察視野の面積で定義される値を%で表したものである。なお、後述の実施例(表1、2参照)より、ねじり疲労強度を高く維持するためには、AR≦6.0とAf≦0.6とを同時に満たすことがより望ましい。
c)介在物粒子の分布
粒子の平均アスペクト比ARが6.0を超える場合または粒子の面積率Afが0.6%を超える場合であっても、粒子の分布指数Fの値を大きくすることによって下記に再掲した式(1)を満たすようにすることにより、粒子が母相中に偏在することなく万遍なく分散して存在するので、疲労き裂伝播速度が抑制され、ねじり疲労強度が高く維持される(表2の試験No.11、116、118、120参照)。なお、下記に再掲した式(2)の定義より分布指数Fの値は0から1までのいずれかの値をとるものであり、観察視野内に存在するすべての粒子が平均距離(A/n)1/2に等しい間隔で等間隔に並んでいる場合には1に等しく、粒子が偏在することにより最近接粒子までの距離が短い粒子数が増加するにしたがい1より小さくなり0に近づくものである。したがって、式(1)を満たすようにFの値を大きくして1に近づけることは、粒子を母相中に万遍なく分散して存在させるようにすることを意味する。
〔再掲〕
−21.4×AR+414.2×F−80.8×Af−30≧0…式(1)
ここに、F=X1/(A/n)1/2…式(2)、
A:鋼材断面における任意の観察視野の面積、n:前記観察視野内に存在する粒子数、X1:前記観察視野内に存在する粒子すべてについて、それぞれの粒子ごとに最も近接して存在する別の粒子までの距離を実測し、この実測距離を算術平均して求めた値である。
(C)軸部半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比
横穴内面の浸炭による硬化層は、横穴の端部(軸部表面)近傍ではエッジの影響で深くなる傾向があり、正確な有効硬化層深さが評価できないため、有効硬化層深さの測定は横穴の端部から0.9〜1mm深さの位置で、横穴内面に垂直な方向に行う(ただし、軸部半径の大きい部品の場合は硬化層を深くするため、横穴の端部から0.9〜1mm深さの位置では軸部表面からの浸炭の影響が生じる場合は、軸部表面からの浸炭の影響を受けない位置、例えば軸部半径の10%の深さの位置で測定を行う。)。なお、図2の横穴の断面図に示すように、応力集中を緩和する目的で横穴4の端部aに面取りが行われる場合があるが、この場合には、面取り端部b近傍で硬化層が深くなる傾向があるので、面取り端部bから0.9〜1mm深さの位置cで有効硬化層深さの測定を行う。本明細書における「横穴の0.9〜1mm深さの位置」とは、横穴4の端部aの面取りを行っていない場合には横穴4の端部aから0.9〜1mm深さの位置をいい、横穴4の端部aの面取りを行っている場合には面取り端部bから0.9〜1mm深さの位置をいう。なお、有効硬化層深さは、JIS G0557記載の方法により測定したものである。ここで、軸部半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比を0.015未満とした場合には硬化層が浅すぎるため、内部の低硬度の非浸炭層で、き裂が発生・伝播しやすく疲労強度が低下する。また、浸炭処理後の部品の静的強度も確保できない。一方、この比が0.08を超える場合には横穴の内表面で発生したき裂は、浸炭した硬化層では粒界を伝播するために伝播速度が速く、かつ浸炭されていない芯部に達したときにはき裂が大きくなっていることからき裂先端の応力拡大係数が大きくなり、かえって疲労寿命が低下する。軸部半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比の好ましい範囲は0.02〜0.05であり、さらに好ましい範囲は0.025〜0.04である。なお、横穴内面の有効硬化層深さの絶対値そのものでなく、軸部半径に対する相対的な比を指標として選択したのは以下の理由による。つまり、軸部半径の異なる部品に対し、軸部表面に一定の大きさのせん断応力を掛けた場合、軸部内部において同じせん断応力となる深さは軸部半径に比例して深くなる。また、軸部表面の硬化層深さと横穴内面の有効硬化層深さとは、通常ほぼ比例関係にある。以上より、一定の大きさのせん断応力に対して同等の疲労寿命が得られる指標として、軸部の半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比を採用したものである。
上述のように、浸炭用鋼材の化学組成と、この鋼材中の長径が3μm以上の介在物粒子の平均アスペクト比(形態)、面積率(量)および分布指数(分布)と、軸部の半径に対する浸炭後の横穴内面の有効硬化層深さの比とを制御することにより、浸炭処理部品のねじり疲労強度を向上できる。
なお、以下の発明の実施の形態において、浸炭用鋼材中の介在物粒子の形態・量・分布と、浸炭後の横穴内面の有効硬化層深さを制御する方法について説明する。
以上述べたように、本発明により製造した浸炭処理部品は、軸部に横穴を有していてもねじり疲労強度に優れているので、油穴のあるシャフト類など自動車の駆動系部品等を安価に提供できるようになった。
本発明の浸炭処理部品は、通常以下の(1)〜(4)の工程を経て製造される。
(1)溶鋼製造工程:精錬炉や溶解炉で本発明の化学組成の範囲となるよう成分調整された溶鋼を製造する。
(2)ビレット鋳造工程:この溶鋼を鋳造してビレットを作製する。
(3)加工工程:このビレットを圧延・鍛造・機械加工により所要の形状の浸炭用部材に加工する。
(4)浸炭(浸炭浸窒)処理工程:この浸炭用部材を浸炭(浸炭浸窒)処理し、さらに焼入れ・焼戻し処理を施して浸炭処理部品を得る。
以下、各工程における製造条件等について詳細に説明する。
(1)溶鋼製造工程
精錬炉や溶解炉として、転炉、高周波誘導溶解炉、アーク炉等を用い、本発明の化学組成の範囲となるよう、通常行われる成分調整手段により溶鋼の成分を調整することができる。例えばS含有量は生石灰などの脱硫剤を適量添加して0.1%以下に調整すればよいが、脱硫剤コストが過度に上昇しない0.005%程度以上の範囲で行うことが望ましい。また、Ca、Mg、Zr、Teは溶鋼中で酸化物を作りやすい代表的な元素である。これらの元素を溶鋼に添加すると微細な酸化物が生成し、これが硫化物の核生成サイトとなるため、主として硫化物からなる介在物粒子を鋳造後のビレット中に均一に分散させることができる。また、これらの元素は介在物中に固溶し、介在物粒子の展伸を抑制する効果もある。これらの元素を単独で添加する場合、その添加量は多いほどこれらの効果は大きくなるが過剰の添加はコストを上昇させるため、0.02%以下とするのがより好ましく、0.001〜0.01%とするのがさらに好ましい。また、これらの元素を2種以上複合添加することにより、これらの効果をさらに増大させることができる。この場合の添加量は、単独で添加する場合と同様の理由で、総量で0.02%程度以下とするのがより好ましく、0.001〜0.01%とするのがさらに好ましい。
(2)ビレット鋳造工程
ビレット鋳造時の冷却速度が遅い場合、液相中に晶出した介在物粒子が凝集して粗大化し、平均アスペクト比が上昇して、ねじり疲労強度が低下するおそれがある。そのため、冷却速度は150℃/h以上とする必要があり、200℃/h以上とすることが好ましい(表1の試験No.1、10参照)。ここでいう冷却速度とは、(凝固開始温度―凝固終了温度)/(凝固開始から凝固終了までの時間)で定義されるものを意味する。
(3)加工工程
部品の大きさ・形状の複雑さ等に応じて熱間圧延、熱間鍛造、機械加工等の加工方法を適宜組合せて加工を行う。例えば歯車等と一体となったシャフト類の場合、ビレットを熱間圧延または熱間鍛造して概略所要形状に加工した後、少なくとも複雑な形状である歯車部はさらに切削や研削による成形が必要となる。またこの際に軸部に横穴(油穴)を開けておく。熱間圧延または熱間鍛造を行う際のビレットの加熱温度は1100〜1300℃、好ましくは1150〜1200℃とし(表1の試験No.1〜4参照)、圧延または鍛造仕上げ温度は1000〜1150℃、好ましくは1050〜1150℃とする(表1の試験No.1〜6参照)。一般的に高温になるほど、鋼材の母相である鋼組織は介在物粒子に比べ相対的により軟化するので、ビレット加熱温度および圧延または鍛造仕上げ温度を高くするほど介在物粒子は展伸しにくくなり、圧延または鍛造後の鋼材中の介在物粒子の平均アスペクト比は小さくなるため、ねじり疲労強度は上昇する。しかし、過度に高温にすると鋼組織の粗大化により却って圧延または鍛造後の鋼材の機械的強度が低下したり、加熱炉の燃料消費量が増大するなどの問題が生じるので上記温度範囲とすることが望ましい。圧延または鍛造による圧下率は98%以下、より好ましくは96%以下、さらに好ましくは92%以下とする(表1の試験No.1、7〜9参照)。ここに圧下率とは、圧延(または鍛造)前の圧下方向に垂直なビレット断面積をS1、圧延(または鍛造)後の圧下方向に垂直な部材断面積をS2としたとき、(S1−S2)/S1×100(単位:%)で定義される値である。圧下率が高くなるほど介在物粒子の展伸が顕著になるため、圧下率は上記範囲に制限することが望ましい。
(4)浸炭(浸窒)処理工程
浸炭処理は通常、ガス浸炭法を用いて、機械加工後の部材を900〜1000℃程度に加熱された加熱炉中で、COやCH4を含有する浸炭ガス雰囲気中に所定時間保持して、部材表面から所要の深さまでCを拡散浸透させて行う。浸炭深さは、浸炭ガス雰囲気中の保持時間を変更することにより調節することができる。あるいは、ガス浸炭法にかえて、液体浸炭法や固体浸炭法を用いてもよい。また、浸炭ガス中にNH3等を添加して浸炭と同時に浸窒を行う浸炭浸窒を行うこともできる。浸炭(浸炭浸窒)が終了した部材を水中または油中で焼入れし、さらに170〜200℃程度の温度で焼戻しを行う。そして、必要によりさらにショットピーニングを行って浸炭処理部品表面に圧縮応力を付与させて機械的性質をより向上させてもよい。
以上の工程により製造された浸炭処理部品は、本発明により規定される化学組成を有し、かつ、介在物粒子の形態、量および分布が本発明により規定される所定の条件を満たし、さらに、軸部の半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比が本発明により規定される所定の範囲となるよう制御されているので、ねじり疲労強度に優れたものが得られる。
本発明の作用効果を確認するため、化学組成を種々変更して溶製したビレットを圧延または鍛造温度、圧下率等を種々変更して鋼材を作成し、この鋼材中の介在物の形態、量および分布状態の測定を行った。また、この鋼材を機械加工してねじり疲労試験片を作製し、これを通常の浸炭処理およびショットピーニング処理を行った後、横穴内面の有効硬化層深さを測定するとともに、ねじり疲労試験を実施してねじり疲労強度を測定した。以下、さらに詳細に説明を行う。
ビレットの溶製は、転炉または高周波誘導溶解炉で製造した溶鋼を鋳造して行った。転炉で溶製されたビレットは□155mm×10mLの角柱形である。また、高周波誘導溶解炉で溶製されたビレットは上面がφ245mm、底面がφ210mm、高さが350mmの円錐台形であり、重量が約150kgである。
なお、前述した介在物粒子の粗大化によるねじり疲労強度の低下に及ぼす影響を調査するため、鋳造時の冷却速度を120℃/hと360℃/hの2水準に変化させてビレットの鋳造を行った。
また、熱間圧延または熱間鍛造の条件による介在物粒子の形態等およびねじり疲労強度に及ぼす影響を調査するため、上記により鋳造されたビレットを加熱温度1050〜1280℃、仕上げ温度850〜1120℃、圧下率86〜99%の範囲で種々変更させて熱間圧延または熱間鍛造を行い、直径が約50〜80mmの丸棒を作製した。
この丸棒を30mm厚さに輪切りにし、これからさらに介在物粒子が展伸された方向と平行な切断面を有する試験片を切り出し、介在物粒子の長径と短径が測定できるサンプルを作製した。なお試験片切り出し位置は、鋼材の検査通則JIS G 0303にしたがって定めた。この試験片を、介在物粒子が展伸された方向と平行な切断面が観察できるように、光学顕微鏡と画像取り込み装置・画像解析ソフトウエアが一体に組み込まれている画像解析装置(株式会社ニレコ製、形式:LUZEX F〔LUZEXは登録商標である〕)にセットし、介在物粒子の形態・量・分布を測定した。測定倍率は100倍、観察領域は丸棒の直径の1/4の位置を中心として5.5mm×5.5mmの範囲とし、この観察領域内に存在する長径が3μm以上の介在物粒子すべてについて測定を行った。画像取り込みはRGBで行い、その二値化レベルをRは125/180、Gは110/180、Bは120/180(それぞれの分母の値180はフルスケールを意味する)とし、さらに介在物粒子がマトリックス(母相)に対して十分区別できるよう画像の明るさ(グレーレベル)とコントラストを調整した。
一方、ねじり疲労試験用の試験片は、直径52mmの丸棒を適当な長さに切断した後、機械加工により全長230mm、平行部の外径20mm、内径10mmの管状に成形し、さらに長手方向中央部(すなわち平行部の長手方向中央部)に直径3mmの横穴を開けたものとした。なお横穴部には応力集中を避けるため、リーマー深さ0.8mmで深さ方向に対して45°のテーパー状のリーマー加工を施した。そして、この試験片を925℃×150min(基準)の条件で浸炭処理し、さらに850℃で10min保持したのち焼入れ処理を行い、その後、180℃程度で120minの焼戻し処理を行った。ねじり疲労試験はJIS Z 2273に基づいて、片振り、周波数5Hzでトルクを4水準(700、800、900、1200N・m)変更し、片振りで行った。そしてこのねじり疲労試験結果を図3に示すように、トルクを縦軸に、そのトルクにより破壊に至った繰り返し数を横軸にプロットし、これらのプロットから外挿により10万回寿命となるトルクを求め、このトルクから計算した応力を片振り疲労限とした。なお、トルクから応力を計算する際には横穴の存在による応力集中を考慮する必要があるが、簡便のためここでは横穴の存在による応力集中を無視し、平滑材として計算した応力を用いた。
試験条件および試験結果を表1〜3に示す。
表1は、溶鋼の化学組成を一定にして、鋳造時の冷却速度、熱間圧延または熱間鍛造時の加熱温度、仕上げ温度および圧下率を変更したときの介在物粒子の形態・量・分布(平均アスペクト、面積率、分布関数)、横穴内面の有効硬化層深さ(軸部半径(=平行部の外径の1/2)に対する横穴内面の有効硬化層深さの比)、およびねじり疲労強度(片振りねじり疲労限)に及ぼす影響を調査した結果をまとめたものである。表中、○印は本発明の規定値を満足し、×印は満足しないことを表す。溶鋼の化学組成は鋳造後も実質的に変化しないといえるので、表1の溶鋼より鋳造されたビレットの化学組成は、本発明(請求項1、2)の規定する浸炭用鋼材の化学組成の範囲を満足するものといえる。また、AR≦6、かつAf≦0.6を満たす場合を○、満たさない場合を×で表しており、式(1)左辺の値が0以上のときを○、0未満のときを×で表している。また、軸部半径に対する横穴内面の有効硬化層深さの比が本発明の規定値の範囲内のときを○、範囲外のときを×で表している。そして、片振りねじり疲労限が400N/mm2以上のときを○、400N/mm2未満のときを×で表している。
この表1の実験後のサンプルの有効硬化層深さを測定した結果、横穴端部(平行部表面)における有効硬化層深さはすべて0.6〜0.7mmの範囲内であったが、横穴深さ0.9〜1mm位置での横穴内面における有効硬化層深さは表1に示す通り0.4〜0.5mm(軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比は0.04〜0.05)であった。
鋳造時の冷却速度、熱間圧延または熱間鍛造時の加熱温度、仕上げ温度、および熱間圧延または熱間鍛造時の圧下率が適切である試験No.1〜3、5、8、および9の場合には、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつAR≦6かつAf≦0.6を満たし、さらに上記の通り、軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比が本発明の規定する0.015〜0.08の範囲にあって請求項1の発明に相当し、片振りねじり疲労限が400N/mm2以上という優れたねじり疲労強度が得られることを確認した。
なお、上記試験のうち、試験No.1、8、および9の場合については、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつ式(1)を満たし、さらに軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比が0.015〜0.08の範囲にあり、請求項2の発明にも相当している。
これに対し、熱間圧延または熱間鍛造時の加熱温度が低い試験No.4、仕上げ温度が低い試験No.6、圧下率が高い試験No.7、および鋳造時の冷却速度が遅い試験No.10の場合には、鋼材中における介在物の形態やその分布状態が悪く本発明の規定する条件を満足せず、片振りねじり疲労限が400N/mm2未満に低下した。
次に、表2および3は、鋳造時の冷却速度、熱間圧延または熱間鍛造時の加熱温度および仕上げ温度を一定にして、溶鋼の化学組成と熱間圧延または熱間鍛造時の圧下率を変更したときの介在物粒子の形態・量・分布、ねじり疲労強度、および横穴内面における有効硬化層深さ(軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比)に及ぼす影響を調査した結果をまとめたものである。なお、試験条件を表2に、試験結果を表3に分けて示す。表中の○および×印の意味は表1と同じである。
この表2および3の実験後のサンプルの有効硬化層深さを測定した結果、横穴端部(平行部表面)における有効硬化層深さはすべて0.6〜0.7mmの範囲内であったが、横穴深さ0.9〜1mm位置での横穴内面における有効硬化層深さは表3に示す通り0.3〜0.5mm(軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比は0.03〜0.05)であった。
この表2および3からも明らかなように、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつAR≦6かつAf≦0.6を満たし、さらに軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比が本発明の規定する0.015〜0.08の範囲にあって請求項1の発明に相当する試験No.101〜106、108、110、および111の場合には、片振りねじり疲労限が400N/mm2以上という高いねじり疲労強度が得られることを確認した。
また、上記のAR≦6かつAf≦0.6の条件を満たさない場合であっても、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつ式(1)を満たし、さらに軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比が本発明の規定する0.015〜0.08の範囲にあって請求項2の発明に相当する試験No.107および109の場合にも、片振りねじり疲労限が400N/mm2以上という高いねじり疲労強度が得られることを確認した。
特に、Ni、Moが所定量添加された試験No.104〜106、Mg、Ca、Te、Zrが所定量添加された試験No.107〜110、およびTiが所定量添加された試験No.111の場合には、これらの元素を添加していない試験No.101〜103の場合の片振りねじり疲労限550〜565N/mm2に比して20〜25N/mm2高い、570〜590N/mm2が得られた。
一方、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲から外れた試験No.112〜120の場合には、試験No.113を除いて、片振りねじり疲労限が400N/mm2に達せず、十分なねじり疲労強度を得ることができなかった。なお、試験No.113の場合、溶鋼のC含有量が0.36%であり本発明の規定するC:0.15〜0.3%を外れているにもかかわらず、片振りねじり疲労限は400N/mm2以上が得られたが、被削性が劣り、ビレットからねじり疲労試験片への機械加工が困難であった。
さらに、ねじり疲労強度に及ぼす軸部半径に対する有効硬化層深さの比の影響について検討し、その結果を表4および5に示した。有効硬化層深さは浸炭条件を変更することによって変化させた。具体的には、浸炭温度は925℃に固定し、保持時間を変えることによって行った。浸炭処理後、上記表1および表2、3の実験と同様にして、介在物粒子の形態・量・分布(平均アスペクト、面積率、分布関数)、横穴内面の有効硬化層深さ(軸部半径に対する有効硬化層深さの比)、およびねじり疲労強度を調査した。試験条件を表4に、試験結果を表5に分けて示す。
横穴端部(平行部表面)における有効硬化層深さは0.7〜1.0mmであったが、横穴内面の有効硬化層深さは約0.1〜0.8mm(軸部半径に対する有効硬化層深さの比は約0.01〜0.08)であった。溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつAR≦6かつAf≦0.6を満たし、さらに軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比が本発明の規定する0.015〜0.08の範囲にあって請求項1の発明に相当するNo.201、202、205、および206の場合には、片振りねじり疲労限が400N/mm2以上という優れたねじり疲労強度が得られることを確認した。なお、上記試験はすべて、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつ式(1)を満たし、さらに軸部半径に対する横穴内面における有効硬化層深さの比が0.015〜0.08の範囲にあり、請求項2の発明にも相当している。
これに対し、軸部半径に対する有効硬化層深さの比が0.015未満である試験No.203および207の場合と、軸部半径に対する有効硬化層深さの比が0.08を超える試験No.204および208の場合には片振りねじり疲労限が400N/mm2未満に低下した。
さらに、軸部半径が異なる浸炭処理部品の場合にも本発明が適用できることを確認するため、上記試験片より寸法が大きい試験片を用いた場合において、ねじり疲労強度に及ぼす軸部半径に対する有効硬化層深さの比の影響について予測計算を行った。具体的には、予測計算に用いたねじり疲労試験用の試験片は、表4および5の試験No.202と同じ溶鋼成分および鍛造・圧延条件で作製した鋼材を用い(したがって、溶鋼の化学組成が本発明の規定する範囲を満足し、かつAR≦6かつAf≦0.6を満たす)、試験片は平行部の外径36mm(軸部半径18mm)の中実棒状とし、上記試験片と同様の横穴を加工形成し、横穴内面有効硬化層深さを0.20〜1.20mmの範囲で変化させたものとし、各横穴内面有効硬化層深さの試験片ごとに片振りねじり疲労限を予測した。予測計算の結果を表6に示す。表6より明らかなように、軸部半径が異なる場合でも、軸部半径に対する有効硬化層深さの比が本発明の規定する0.015〜0.08の範囲内にある試験No.302および303の場合には、片振りねじり疲労限が400N/mm2以上という優れたねじり疲労強度が得られることが予測されるのに対し、この比が上記規定範囲外である試験No.310および304の場合には、片振りねじり疲労限が400N/mm2未満に低下することが予測される。
Figure 2005256082
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き裂の種類を説明する図であり、(a)はモードIき裂、(b)はモードIIき裂、(c)はモードIIIき裂を示す。 横穴内面の有効硬化層深さを測定する位置を説明する断面図である。 ねじり疲労試験結果から10万回寿命となるトルクを求める方法を説明するグラフ図である。

Claims (6)

  1. 軸部を有し、該軸部に横穴を有する浸炭処理部品の製造方法であって、
    化学組成が、質量割合にてC:0.15〜0.3%、Mn:0.2〜1.0%、Si:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.01〜0.03%、Cr:0.6〜1.2%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、B:0.0005〜0.005%を含むとともに残部が実質的にFeであり、かつ、
    圧延方向に平行な任意の断面において長径が3μm以上の介在物粒子の平均アスペクト比が6.0以下、かつ前記介在物粒子の面積率が0.6%以下である浸炭用鋼材を、
    概ね前記浸炭処理部品の形状に成形し、ついで浸炭処理又は浸炭窒化処理して、前記軸部の半径に対する、前記横穴の0.9〜1mm深さの位置(前記横穴の端部の面取りを行っていない場合は当該横穴の端部から0.9〜1mm深さの位置をいい、前記横穴の端部の面取りを行っている場合は当該面取りの端部から0.9〜1mm深さの位置をいう。)における横穴内面の有効硬化層深さの比を0.015〜0.08とすることを特徴とする浸炭処理部品の製造方法。
  2. 軸部を有し、該軸部に横穴を有する浸炭処理部品の製造方法であって、
    化学組成が、質量割合にてC:0.15〜0.3%、Mn:0.2〜1.0%、Si:0.35%以下、P:0.015%以下、S:0.01〜0.03%、Cr:0.6〜1.2%、Al:0.005〜0.05%、N:0.002〜0.05%、B:0.0005〜0.005%を含むとともに残部が実質的にFeであり、かつ、
    圧延方向に平行な任意の断面において長径が3μm以上の介在物粒子の平均アスペクト比ARと前記介在物粒子の面積率Afと前記介在物粒子の分布指数Fが下式を満たす浸炭用鋼材を、
    概ね前記浸炭処理部品の形状に成形し、ついで浸炭処理又は浸炭窒化処理して、前記軸部の半径に対する、前記横穴の0.9〜1mm深さの位置(前記横穴の端部の面取りを行っていない場合には当該横穴の端部から0.9〜1mm深さの位置をいい、前記横穴の端部の面取りを行っている場合には当該面取りの端部から0.9〜1mm深さの位置をいう。)における横穴内面の有効硬化層深さの比を0.015〜0.08とすることを特徴とする浸炭処理部品の製造方法。
    式 −21.4×AR+414.2×F−80.8×Af−30≧0
    ここに、Afの単位は%であり、
    F=X1/(A/n)1/2
    A:前記断面における任意の観察視野の面積、n:前記観察視野内に存在する前記介在物粒子の数、X1:前記観察視野内に存在する前記介在物粒子すべてについて、それぞれの前記介在物粒子ごとに最も近接して存在する別の前記介在物粒子までの距離を実測し、この実測距離を算術平均して求めた値である。
  3. 前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にNi:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜0.5%のうち1種又は2種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の浸炭処理部品の製造方法。
  4. 前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にTi:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.1〜0.5%のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の浸炭処理部品の製造方法。
  5. 前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にCa:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、Zr:0.0005〜0.05%、Te:0.0005〜0.05%のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の浸炭用部品の製造方法。
  6. 前記浸炭用鋼材の化学組成が、質量割合にて更にPb:0.01〜0.1%、Bi:0.01〜0.05%のうち1種又は2種を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の浸炭用部品の製造方法。

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