JP2005249955A - 鍵盤楽器の鍵 - Google Patents

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Abstract

【課題】 より良好な吸水性を確保でき、それにより、より良好な演奏性を確保できる鍵盤楽器の鍵を提供する。
【解決手段】 電子ピアノ2の鍵1は、ABS樹脂で構成された鍵本体部10と、この鍵本体部10の上面に接着された薄板状の押鍵部11とを備えている。この押鍵部11は、ABS樹脂で構成されたベース11bと、このベース11b内に分散した状態で添加された親水性ポリマー11aとを備えている。電子ピアノ2の演奏時、演奏者の指先に生じた汗は、親水性ポリマー11aにより吸収される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、合成樹脂を用いながらも、指先が演奏中に滑りにくく、良好な演奏性を有する鍵盤楽器の鍵に関する。
従来、鍵盤楽器の鍵として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この鍵は、水酸基を含有しないアクリレート樹脂で構成され、その内部には、多数の多孔性粒子が分散した状態で添加されている。これらの多孔性粒子は、ハイドロキシアパタイトなどで構成され、その一部が鍵の表面に露出している。鍵盤楽器の演奏中、演奏者の指先の汗は、多孔性粒子の気孔によって物理的に捕捉・吸収され、その結果、アクリレート樹脂のみで構成された鍵と比べて、指先が滑りにくくなり、良好な演奏性が確保される。
特開平3−287198号公報
上記従来の鍵盤楽器の鍵によれば、ハイドロキシアパタイトなどの多孔性粒子の気孔により、演奏者の指先の汗を物理的に捕捉・吸収するものであるので、その吸水能力が、天然象牙を押鍵面に貼り付けた鍵と比べるとかなり低い。具体的には、天然象牙を貼り付けた鍵の吸水率が十数〜20wt%程度であるのに対して、従来の鍵の吸水率は1.5wt%に過ぎない(特許文献1の第1表のデータ)。そのため、天然象牙を貼り付けた鍵と比べると、指先が滑りやすいことで、演奏性がよくないという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、より良好な吸水性を確保でき、それにより、より良好な演奏性を確保できる鍵盤楽器の鍵を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る鍵盤楽器の鍵は、鍵本体部と、鍵本体部の上部に設けられ、親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂で構成され、押鍵するための押鍵部と、を備えることを特徴とする。
一般に、親水性ポリマーは、その親水基で水分を捕捉・吸収するものであるため、水分を気孔によって物理的に捕捉・吸収する多孔性粒子と比べて、より良好な吸水能力を備えていることが知られている。したがって、この鍵盤楽器の鍵によれば、押鍵部が親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂で構成されているので、多孔性粒子をアクリレート樹脂に添加した従来の鍵と比べて、より良好な吸水性を確保でき、それにより、より良好な演奏性を確保することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵において、第1の合成樹脂は、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂およびアクリル樹脂の1つであることを特徴とする。
この鍵盤楽器の鍵によれば、押鍵部が、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂およびアクリル樹脂の1つで構成されているので、良好な耐久性および加工性を確保でき、さらに、天然象牙を貼り付けた鍵に近い外観を確保することができる。その結果、高い商品性を確保できる。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の鍵盤楽器の鍵において、鍵本体部は、親水性ポリマーを添加していない第2の合成樹脂および木質の一方で構成され、押鍵部は、鍵本体部に接着されていることを特徴とする。
この鍵盤楽器の鍵によれば、押鍵部を、鍵本体部と別個の部品として製作することができるので、鍵全体を1種類の合成樹脂の一体成形により製作する場合と比べて、親水性ポリマーの添加量を減らすことができ、その分、製造コストを削減することができる。また、鍵全体を、親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂で構成した場合、その寸法が親水性ポリマーの吸水状態に起因して伸縮することで、加工後の寸法精度を確保するのが難しくなり、その結果、雑音が生じるなどの、品質の低下を招くおそれがある。これに対して、本発明の鍵によれば、押鍵部のみを親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂で構成すればよいので、加工後の鍵本体部の寸法精度すなわち鍵全体の寸法精度を、親水性ポリマーを添加していない合成樹脂で鍵全体を構成した場合とほぼ同等に確保することができ、品質の低下を回避することができる。さらに、鍵本体部を木質で構成した場合には、鍵をアコースティックピアノに適用することができる。
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載の鍵盤楽器の鍵において、鍵本体部は、親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂および親水性ポリマーを添加していない第2の合成樹脂の一方で構成され、押鍵部と一体成形されていることを特徴とする。
この鍵盤楽器の鍵によれば、鍵本体部および押鍵部が一体成形されるので、これらを別個の部品として製作する場合と比べて、工数を減らすことができ、その分、鍵の製作に要する時間を短縮できる。また、鍵本体部が親水性ポリマーを添加していない第2の合成樹脂で構成されている場合には、前述した理由により、鍵全体を、親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂のみで構成した場合と比べて、加工後の鍵本体部の寸法精度すなわち鍵全体の寸法精度を、親水性ポリマーを添加していない合成樹脂で鍵全体を構成した場合とほぼ同等に確保することができ、品質の低下を回避することができる。
本発明の一実施形態に係る鍵およびこれを適用した電子ピアノの鍵盤部の構成を示す断面図である。 白鍵の押鍵部および鍵本体部を示す分解斜視図である。 白鍵の押鍵部の構成を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る鍵盤楽器の鍵について説明する。図1に示すように、本実施形態の鍵は、鍵盤楽器としての電子ピアノ2に適用されたものであり、この電子ピアノ2は、その鍵盤部に、シャーシ3と、シャーシ3に回動自在に支持された白鍵1aおよび黒鍵(図示せず)からなる多数の鍵1(白鍵1aを1つのみ図示)と、鍵1ごとに設けられ、シャーシ3に回動自在に支持された多数のハンマー4(1つのみ図示)などを備えている。
シャーシ3は、前後の連結部材5,5などを介して棚板6上に固定されており、その前端部の上面には、2つの下限ストッパ3a,3aが、前後方向に間隔を存して取り付けられている。各下限ストッパ3aは、鍵1の下方への回動を規制するためのものであり、フェルトで構成されている。また、シャーシ3の前端部の下面には、2つの上限ストッパ3b,3bが、下限ストッパ3a,3aに対応する位置にそれぞれ取り付けられている。これらの下限ストッパ3a,3aはそれぞれ、鍵1およびハンマー4の上方への回動を規制するためのものであり、フェルトで構成されている。さらに、シャーシ3の後端寄りの部分には、鍵スイッチ7が鍵1ごとに取り付けられている。
ハンマー4は、その後端寄りの部分がシャーシ3に回動自在に支持され、後端の押圧部4aが、鍵スイッチ7に上方から対向しているとともに、前端部にウエイト4bを有している。このウエイト4bにより、ハンマー4は、図中の反時計回りに付勢され、それにより、離鍵状態(図1に示す状態)では、押圧部4aが、後述する鍵本体部10のアクチュエータ部10cに常に当接する状態に保持される。
本実施形態の鍵1では、白鍵1aおよび黒鍵はほぼ同様に構成されているので、以下、白鍵1aを例にとって説明する。白鍵1aは、図1,2に示すように、鍵本体部10と、鍵本体部10の上面に取り付けられた押鍵部11とを備えている。鍵本体部10は、第2の合成樹脂としてのアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)の成形品で構成されており、前後方向に延び、後端部には、回動軸10aが設けられている。この回動軸10aは、左右方向(図中の奥行き方向)に延びるとともに、シャーシ3の軸受部3cに回動自在に取り付けられており、それにより、鍵本体部10は、シャーシ3に回動自在に支持されている。
また、鍵本体部10には、L字状のストッパ部10b,10bおよびアクチュエータ部10cが設けられている。このアクチュエータ部10cには、離鍵状態では、前述したように、ハンマー4の押圧部4aが下方から当接しており、それにより、ストッパ部10bは、上限ストッパ3bに当接した状態に保持される。また、押鍵時には、白鍵1aが、回動軸10aを中心として下限ストッパ3aに当接する位置まで反時計回りに回動し、アクチュエータ部10cが押圧部4aを下方に押圧する。これに伴い、ハンマー4が時計回りに回動するとともに、押圧部4aが鍵スイッチ7を押下し、オン動作させる。その結果、鍵スイッチ7は、発音動作を行うためのオン信号を発音回路部(図示せず)に出力する。
一方、押鍵部11は、断面L字状で、上カバー部11Aおよび前カバー部11Bを一体に形成したものであり、この上カバー部11Aは、鍵本体部10の上面と同様の平面形状を有し、接着剤(例えば酢酸ビニル系接着剤)を介して、鍵本体部10の上面に取り付けられている。また、前カバー部11Bは、鍵本体部10の前面と同様の平面形状を有し、接着剤を介して、鍵本体部10の前面に取り付けられている。また、図3に示すように、この押鍵部11は、第1の合成樹脂としてのABS樹脂のベース11bと、その内部に分散した状態で添加された多数の粒子状の親水性ポリマー11aで構成されている。
この親水性ポリマー11aは、その粒径が数百nm単位のポリオキシエチレン鎖を有する架橋ポリアクリルアミドで構成されており、良好な吸水性を備えている。この親水性ポリマー11aは、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびアクリル酸をコモノマーとして用い、ポリ(オキシエチレン)メタクリレートを分散安定剤として用い、さらに、親水性有機溶媒を分散媒として用いた分散重合により生成されたものである。
また、親水性ポリマー11aは、押鍵部11の内部ではベース11b内にほぼ均一に分散している一方、押鍵部11の表面側の部分では、その表面に偏在している。これは、押鍵部11を、親水性ポリマー11aをABS樹脂の原料に混入させながら成形加工した際、親水性ポリマー11aの特性に起因して発生する事象である。
以上のように構成された本実施形態の鍵1によれば、4wt%程度の吸水率を得られることが実験により確認できた。すなわち、押鍵部11が親水性ポリマー11aを添加したABS樹脂で構成されているので、多孔性粒子をアクリレート樹脂に添加した従来の鍵(吸水率1.5wt%)よりも良好な吸水性を確保することができ、それにより、より良好な演奏性を確保することができる。これは、一般に、親水性ポリマーが、その親水基で水分を捕捉・吸収するものであるため、水分を気孔によって物理的に捕捉・吸収する多孔性粒子と比べて、より良好な吸水能力を備えていることに起因する。これに加えて、本実施形態の鍵1では、前述したように、親水性ポリマー11aが、その特性に起因して押鍵部11の表面側に偏在するように構成されるので、良好な吸水性をより効果的に得ることができる。
また、鍵本体部10および押鍵部11がいずれも、ABS樹脂で構成されているので、良好な耐久性および加工性を確保でき、さらに、天然象牙を貼り付けた鍵に近い外観を確保することができる。その結果、高い商品性を確保できる。また、押鍵部11を、鍵本体部10と別個の部品として製作することができるので、鍵1全体を1種類の合成樹脂の一体成形により製作する場合と比べて、親水性ポリマー11aの添加量を減らすことができ、その分、製造コストを削減することができる。
また、鍵1全体を、親水性ポリマー11aを添加したABS樹脂で構成した場合、その寸法が親水性ポリマー11aの吸水状態に起因して伸縮することで、加工後の寸法精度を確保するのが難しくなり、その結果、雑音が生じるなどの、品質の低下を招くおそれがある。これに対して、本実施形態の鍵1によれば、押鍵部11のみを親水性ポリマー11aを添加したABS樹脂で構成すればよいので、加工後の鍵本体部10の寸法精度すなわち鍵1全体の寸法精度を、鍵1全体を親水性ポリマー11aを添加していないABS樹脂で構成した場合とほぼ同等に確保することができ、品質の低下を回避することができる。
なお、実施形態は、親水性ポリマーとして、ポリオキシエチレン鎖を有する架橋ポリアクリルアミドを用いた例であるが、親水性ポリマーはこれに限らず、主鎖および側鎖に親水基を備えたポリマーであればよい。例えば、親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコール/ポリアクリル酸系ポリマーを用いてもよい。
また、実施形態は、本発明を電子ピアノの鍵に適用した例であるが、本発明の鍵はこれに限らず、アコースティックピアノなどの様々な鍵盤楽器に適用可能であることは言うまでもない。
さらに、実施形態は、押鍵部11のベース11bおよび鍵本体部10をABS樹脂で構成した例であるが、これらをアクリロニトリルスチレン樹脂またはアクリル樹脂で構成してもよい。このようにした場合、ABS樹脂を用いた場合と同様に、良好な耐久性および加工性を確保できるとともに、天然象牙を貼り付けた鍵に近い外観を確保することができる。さらに、押鍵部11のベース11bおよび鍵本体部10をそれぞれ、ABS樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂およびアクリル樹脂のうちの、互いに異なる材質で構成してもよい。
一方、鍵本体部10を木質で構成してもよい。このようにした場合、鍵1をアコースティックピアノに適用することができる。
また、実施形態は、押鍵部11および鍵本体部10を別個の部品とした例であるが、これらを一体成形することにより、鍵1を製作するようにしてもよい。その場合、親水性ポリマーを、押鍵部11のみに添加してもよく、鍵1全体に添加してもよい。このようにした場合、押鍵部11および鍵本体部10を別個の部品として製作する場合と比べて、工数を減らすことができ、その分、鍵1の製作時間を短縮できる。
符号の説明
1 鍵
1a 白鍵
2 電子ピアノ(鍵盤楽器)
10 鍵本体部
11 押鍵部
11a 親水性ポリマー

Claims (4)

  1. 鍵本体部と、
    当該鍵本体部の上部に設けられ、親水性ポリマーを添加した第1の合成樹脂で構成され、押鍵するための押鍵部と、
    を備えることを特徴とする鍵盤楽器の鍵。
  2. 前記第1の合成樹脂は、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂およびアクリル樹脂の1つであることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵。
  3. 前記鍵本体部は、前記親水性ポリマーを添加していない第2の合成樹脂および木質の一方で構成され、前記押鍵部は、前記鍵本体部に接着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鍵盤楽器の鍵。
  4. 前記鍵本体部は、前記親水性ポリマーを添加した前記第1の合成樹脂および前記親水性ポリマーを添加していない第2の合成樹脂の一方で構成され、前記押鍵部と一体成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鍵盤楽器の鍵。
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