JP2005246952A - 車両用防音断熱材及びその表層材 - Google Patents

車両用防音断熱材及びその表層材 Download PDF

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Abstract

【課題】 車両用防音断熱材を、不燃性・耐炎性・耐熱性に優れたものとする。また、廃車時のリサイクル又は焼却処分を容易にする。
【解決手段】 コア材2にポリエステル繊維等の熱可塑性有機繊維を主構成材料とする不織布マットを用いる。表層材3に耐炎化アクリル繊維からなる不織布マットを用いる。コア材2の片面又は両面に表層材3をニードルパンチ加工により接合する。また、表層材3の耐炎化アクリル繊維中に熱溶融性有機繊維を混合し、表層材3の加熱加圧により、熱溶融性有機繊維を溶融させて耐炎化アクリル繊維を結合することが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車のエンジンルーム等に用いられる車両用防音断熱材及びその表層材に関するものである。
自動車のエンジンルーム等には、エンジンノイズやロードノイズを低減し、エンジン又は外部の熱を遮断する目的で、各種の防音断熱材が用いられている。そして、エンジンルーム内の高温化及び排気ガスの高温化のために、近年、不燃性に近い防音断熱材を使用したいという意向が強まってきた。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ガラス繊維、有機繊維又は無機繊維からなる繊維マットの表面に硬質樹脂層を設けた防音断熱材が記載されている。特許文献3には、コア材に発泡プラスチック材料を用い、表層材にガラス繊維やセラミック繊維等の無機繊維を用いた防音断熱材が記載されている。また、近年、難燃剤により耐熱性を改善した有機繊維、例えば、難燃ポリエステル繊維を用いた防音断熱材も提案されている。
特公平5−718号公報 特公平4−72980号公報 特表2002−514551号公報
ところが、従来の防音断熱材によると、次のような問題点があった。
(1)コア材又は表層材に無機繊維を用いた防音断熱材は、重量が嵩むうえ、廃材をリサイクルすることが困難で、また、焼却処分することもできなかった(特許文献1,2,3)。
(2)表層材に硬質樹脂材料を用いた防音断熱材は、柔軟性に乏しく、耐熱性も不充分であった(特許文献1,2)。
(3)難燃性有機繊維を用いた防音断熱材は、材料コストが高くついた。
本発明の目的は、上記課題を解決し、車両用防音断熱材において、不燃性・耐炎性・耐熱性に優れるものとすること、柔軟性に優れるものとすること、廃車時のリサイクル又は焼却処分を容易にすること、また、軽量かつ安価に構成できるようにすることにある。
本発明は、コア材の少なくとも片面に、耐炎化有機繊維を含む表層材が接合されている車両用防音断熱材である。
ここで、車両用防音断熱材の使用対象となる車両は、特に限定されず、乗用車・オートバイ・バス・トラック・フォークリフト等の自動車、電車・ディーゼル機関車・蒸気機関車等の鉄道車両、その他の各種車両を例示できる。
また、車両における使用箇所も、特に限定されず、各種の熱源・騒音源の周辺において使用できる。熱源・騒音源としては、エンジン(内燃機関)、モータ等の動力発生装置及びそれに付帯する機器、変圧器、車載の燃料電池・改質器・電装品等を例示できる。より具体的な使用場所・使用部位としては、例えば自動車においては、エンジンルーム(例えばボンネットフード部、エンジンカバー部、アンダー部、コンプレッサー部、ダッシュアウター部(ダッシュパネルのエンジンルーム側の面)等)、排気部品周辺部(例えば、排気管や触媒の周辺)、車室(例えばフロア部、ルーフ部、ダッシュインナー部(ダッシュパネルの車室側の面)等)等の部位に適用でき、特にエンジンルームや排気部品周辺部に最適である。
車両用防音断熱材の使用場所・使用部位に応じ、表層材をコア材の両面に接合してもよく、表層材をコア材の片面のみに接合してもよい。多くの適用部位において、表層材をコア材の両面に接合すれば最も好ましい耐熱性が得られる。しかし、適用部位が防音断熱材の片側のみにエンジン等の熱源が存在するような部位であって、かつ防音断熱材の反対側に金属板等の不燃体が当接又は近接するような部位(例えば後述するボンネットパネルの裏面等)である場合には、表層材をコア材の片面(前記熱源が存在する側)のみに接合しても必要な耐熱性・耐炎性が得られる。
[表層材]
表層材の材料は、耐炎化有機繊維を含むものであればよい。耐炎化有機繊維は、有機繊維を例えば200〜300℃で焼成炭化した難燃性の繊維であり、空気中では燃えないが、800℃以上で焼却が可能である。このため、表層材に高度の不燃性・耐炎性・耐熱性を付与できるうえ、廃材処分も可能である。さらに、耐炎化有機繊維には、電気絶縁性があるとか、接触皮膚障害性がないとかという特徴もある。また、耐炎化有機繊維は、接炎しても収縮しないので、コア材が収縮した場合でも、その部位の繊維は凝集するが、全体的には原形を維持し、形状変化がみられない。従って、高温下での使用に際し、防音断熱材の形状を保持し、車体パネル等からの剥離を防止できる。
耐炎化有機繊維の耐炎化前の有機繊維としては、特に限定されないが、アクリル繊維(特にポリアクリルニトリル(PAN)繊維)が好ましい。アクリル繊維は、これを例えば200〜300℃で焼成炭化すると、炭素繊維や無機繊維と比較し、軽量で柔軟性に富んだ耐炎化有機繊維を生成する。この耐炎化アクリル繊維は、LOI値(限界酸素指数:繊維が燃焼を維持するために必要最低限の酸素体積分率)が50〜60と、他の有機繊維と比較し格段に高い耐炎性を発揮する。従って、表層材に耐炎化アクリル繊維を用いた防音断熱材は、特に、エンジンルームの高温発熱部位に好適である。なお、耐炎化アクリル繊維としては、例えば、東邦テナックス社製の商品名パイロメックス、旭化成工業社製の商品名ラスタン、ゾルテック(ZOLTEC)社製の商品名PYRON、エスジーエル(SGL)社製の商品名PANOX等を使用できる。
表層材は、耐炎化有機繊維のみからなるものでもよいが、耐炎化有機繊維と他繊維との混合でもよい。他繊維としては、特に限定されないが、リサイクル性の点では有機繊維が好ましく、さらには、後述するヒートセットにより耐炎化有機繊維の結合機能がある熱溶融性有機繊維が好ましい。耐炎化有機繊維と他繊維との混合率は、特に限定されないが、他繊維が難燃性でないものである場合には、耐炎化有機繊維が70重量%以上含まれることが好ましく、他繊維が難燃性のものである場合には、耐炎化有機繊維が10重量%以上含まれることが好ましい。他繊維が熱溶融性有機繊維である場合については、さらに詳しく後述する。
表層材の形態としては、特に限定されないが、不織布マット又は織布を例示できる。不織布マットは、織布と比較し、軽量、安価であるうえ、例えばニードルパンチ加工によりコア材と表層材とを強固に結合し、双方の剥離を防止できる利点がある。不織布マットの製法による種類としては、特に限定されないが、次の種類を例示できる。
ア:耐炎化有機繊維のウェブ(他繊維を含む時は耐炎化有機繊維と他繊維との混合繊維ウェブ)がニードルパンチ加工されたもの。これには、繊維の表面の毛羽立ちを抑える目止め処理(目止め剤の塗布・含浸等)を加えたものを含む。
イ:耐炎化有機繊維のウェブ(他繊維を含む時は耐炎化有機繊維と他繊維との混合繊維ウェブ)がバインダを含んで加圧されたもの。
ウ:耐炎化有機繊維と熱溶融性有機繊維との混合繊維ウェブが熱溶融性有機繊維が溶融する程度に加熱され且つ加圧された(ヒートセット)もの。これには、混合繊維ウェブが、ヒートセット前にニードルパンチ加工されたものを含む。
エ:耐炎化有機繊維(他繊維を含む時は耐炎化有機繊維と他繊維との混合繊維)を用いた抄紙法によるもの
上記ウにおいて、混合された熱溶融性有機繊維は、その全部又は一部がヒートセットにより耐炎化有機繊維に溶着し、冷却後は固化して耐炎化有機繊維の間を結合している。このため、表皮材の耐摩耗性を向上させ、成形性を確保することができる。
この熱溶融性有機繊維としては、ポリエステルやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等を例示できる。特に、相対的に溶融点の高い有機材料(樹脂)からなる芯部と溶融点の低い有機材料(樹脂)からなる鞘部とで構成される芯鞘構造の繊維(例えば、PET/PET、PE/PP、PP/PET)は、ヒートセットにより鞘部が溶けて耐炎化有機繊維同士を結合し、ヒートセット後も芯部が残って耐炎化有機繊維間を連絡して保持するので、緻密で均質な表層材を成形できる。
熱溶融性有機繊維の混合率は、特に限定されないが、下限は、3重量%が好ましく、5重量%がより好ましく、10重量%が最も好ましい。3%未満になると、前記結合機能が低下し、表層材の成形性が低下する。上限は、難燃性の熱溶融性有機繊維を用いる場合は、70重量%が好ましいが、通常の(難燃性ではない)熱溶融性有機繊維を用いる場合は、30重量%が好ましく、25重量%がより好ましい。通常の熱溶融性有機繊維の混合率が30重量%を超えると、表層材の不燃性が低下する。よって、通常の熱溶融性有機繊維の混合率は、3〜30重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、10〜25重量%が最も好ましい。
表層材の質量(目付)は、特に限定されないが、不織布マットであっても織布であっても20〜300g/m2 が好ましく、30〜100g/m2 がより好ましく、50〜100g/m2 が最も好ましい。表層材の目付が20g/m2 未満になると、表層材の耐炎性・耐熱性が不足し、また、不織布を編成しにくくなる。一方、表層材の目付が300g/m2を超えると、表層材の原料コストが高くつく。
[コア材]
コア材の材料としては、特に限定されないが、繊維、発泡樹脂等を例示できる。繊維としては、特に限定されないが、有機繊維、無機繊維等を例示できる。
カ:有機繊維としては、容易にリサイクル又は焼却処分できる点で、コア材の主材料に熱可塑性有機繊維を用いるとよい。熱可塑性有機繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等を使用でき、再生繊維も使用できる。ポリオレフィン系樹脂繊維(特にポリエステル繊維)は、難燃性があり、防音・断熱性がよく、軽量であるうえ、再生繊維についてもバージン材と同等の物性を発揮するため、コア材の不織布マットに好適である。なお、必要に応じ、熱可塑性有機繊維(ポリエステル繊維等)に難燃剤(例えば、酸化アンチモン等の無機系難燃剤、赤リン、有機リン化合物等のリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤)や撥水材を添加してもよい。
キ:無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維、バサルト繊維を含む鉱物繊維、金属繊維等を例示できる。但し、無機繊維は、不燃性である反面、リサイクル性は劣る。
コア材の形態としては、特に限定されないが、繊維からなる場合には不織布マット又は織布を例示できる。不織布マットは、織布と比較し、軽量、安価であるうえ、例えばニードルパンチ加工によりコア材と表層材とを強固に結合し、双方の剥離を防止できる利点がある。また、コア材に比較的厚い不織布マットを用い、これをニードルパンチ加工により圧縮することで、コア材の繊維密度を容易に高めることができ、優れた防音・断熱効果が得られる。
好ましいコア材は、熱可塑性有機繊維を主構成材料とする不織布マットであり、不織布マット中の熱可塑性有機繊維の含有率は50〜100重量%が好ましい。前記のとおり、熱可塑性有機繊維は、リサイクルが容易であり、焼却処分も可能である。また、熱可塑性有機繊維は表層材の耐炎化有機繊維と協働して、防音断熱材に自己消火機能を与える。つまり、コア材の熱可塑性有機繊維が加熱により収縮すると、表層材の耐炎化有機繊維が凝集し、コア材側への酸素の供給を遮断する。このため、万一、コア材に着火した場合でも、速やかに消火し、延焼を未然に防止することができる。
[表層材とコア材との結合]
表層材とコア材との結合手段は、特に限定されないが、次の手段を例示できる。
サ:表層材とコア材とが、ニードルパンチ加工により接合している。
シ:表層材とコア材とが、表層材に混合した前記熱溶融性有機繊維又はコア材に用いた前記熱可塑性有機繊維の熱溶融による溶着により接合している。
ス:表層材とコア材とが、その間に介装された接着シート(フィルム、不織布等)により接合している。接着シートは熱溶融性のものも含む。
セ:表層材とコア材とが、その間に塗布された液状接着剤により接合している。
上記接合手段は2種類以上を組み合わせてもよい。例えば、ニードルパンチ加工と合わせ、コア材の熱可塑性有機繊維(例えばポリエステル繊維同士又はポリエステル繊維)と表層材の耐炎化有機繊維とを前者の溶着により結合してもよい。
[その他]
表層材及びコア材のいずれか一方又は両方に、撥水材、撥油材等を添加し、車両における水や油の飛散から防音断熱材を保護することが好ましい。
本発明に係る車両用防音断熱材によれば、コア材の少なくとも片面に耐炎化有機繊維を含む表層材が接合しているので、不燃性・耐炎性・耐熱性に優れ、柔軟性にも優れる。さらに、表層材が、耐炎化有機繊維と熱溶融性有機繊維との混合繊維ウェブが熱溶融性有機繊維が溶融する程度に加熱され且つ加圧されてなる不織布であると、耐摩耗性が向上し、成形性を確保できる。また、コア材が、熱可塑性有機繊維を主材料とする不織布マットであると、廃車時のリサイクル又は焼却処分が容易であり、また、軽量かつ安価に構成できる効果がある。
(1)車両(例えば自動車)用防音断熱材は、コア材に熱可塑性有機繊維を主構成成分とする不織布マットを用い、表層材に耐炎化有機繊維からなる不織布マットを用い、コア材の少なくとも片面に表層材を(例えばニードルパンチ加工により)接合する。適用部位としては自動車の特にエンジンルームに最適であり、表層材をコア材の両面に接合すれば最も好ましい耐熱性が得られる。不織布マット中の熱可塑性有機繊維の含有率は50〜100重量%が好ましい。コア材の熱可塑性有機繊維としては、ポリオレフィン系樹脂繊維(特にポリエステル繊維)が好適である。表層材の耐炎化有機繊維としては、アクリル繊維の焼成炭化材が好ましい。表層材の質量(目付)は20〜300g/m2が好ましい。
(2)車両用防音断熱材は、コア材の少なくとも片面に耐炎化有機繊維を含む表層材が接合しており、表層材は、耐炎化有機繊維と熱溶融性有機繊維との混合繊維ウェブが熱溶融性有機繊維が溶融する程度に加熱され且つ加圧されてなる不織布である。コア材には、熱可塑性繊維を主材料とする不織布マットを用いるとよい。
図1,図2は本発明を自動車用防音断熱材に具体化した実施例1を示す。この防音断熱材1は一枚のコア材2と一枚の表層材3とから二層に構成されている。コア材2には、ポリエステル繊維からなる厚手(例えば6〜30mm)の不織布マットが用いられている。表層材3には、耐炎化アクリル繊維からなる薄手(例えば1〜3mm)の不織布マットが用いられている。なお、表層材3の不織布マットは、エンジンルームに適応できるように、目付が20〜300g/m2 である。
表層材3はコア材2の片面にニードルパンチ加工により接合されている。ニードルパンチ加工に際しては、ポリエステル繊維製の不織布マットと耐炎化アクリル繊維製の不織布マットとを重ね合わせ、2本のローラ間で圧縮し、ローラ表面の鉤針を両方のマットに貫通させ、各マットの繊維を絡み合わせ、コア材2と表層材3とを一体化する。その後、製品形状に成形し、防音断熱材1を完成する。なお、図において、Pはニードリング箇所を示す。ニードルパンチ加工の密度(ペネ数)は5〜30が適当である。
この防音断熱材1は、例えば、図5に示すように、自動車11のエンジンルーム12において、エンジン13の音と熱を遮断するボンネットインシュレータとして使用される。防音断熱材1の取り付けに際しては、表層材3がエンジン13に対向するように、コア材2がボンネットパネル14の裏面にリベット又はスナップ等の手段によって貼り付けられる。
図3,図4は本発明を自動車用防音断熱材に具体化した実施例2を示す。この防音断熱材5は一枚のコア材2と二枚の表層材3とから三層に構成されている。コア材2及び表層材3には、実施例1と同じ材料が用いられている。そして、3枚の不織布マットを重ね合わせてニードルパンチ加工することで、コア材2の両面に表層材3が接合されている。この場合は、両面ニードルパンチ加工であるから、加工密度は実施例1の倍数(10〜60)が適当である。
上記実施例の防音断熱材1,5によれば、次のような作用効果が得られる。
(1)コア材2と表層材3の両方に有機繊維を用いたので、廃車時のリサイクルが容易であり、焼却処分も可能である。
(2)コア材2と表層材3の両方に不織布マットを用いたので、ニードルパンチ加工により高密度の繊維集合材を容易に製造でき、優れた防音・断熱効果を発揮できる。
(3)表層材3の不織布マットに空気中で燃えない耐炎化アクリル繊維を用いたので、防音断熱材1の片面又は両面に難燃性を与え、コア材2を万一の火炎から保護できる。
(4)耐炎化アクリル繊維は高温下で形状を維持するので、コア材2の熱による反りや湾曲を抑えて防音断熱材1,5の形状を保持し、車体パネル等からの剥離を防止できる。
(5)コア材2にポリエステル繊維を用いたので、ポリエステル繊維の熱収縮を利用し、防音断熱材1,5に自己消火性能を与え、これを実質的に難燃材とすることができる。
(6)ポリエステル繊維及び耐炎化アクリル繊維は、無機繊維や炭素繊維と比較し、軽量であり柔軟性に富むため、実装重量を軽減でき、車体パネル等への形状追従性がよく、組付作業も容易であり、車内各部の防音断熱材として広範囲に使用できる。
(7)ポリエステル繊維は難燃有機繊維と比較し安価であり、耐炎化アクリル繊維は炭素繊維と比較し安価であるから、高機能の防音断熱材1,5を安価に製造できる。
上記難燃性を検証するために、以下の燃焼試験を行った。
<燃焼試験1>
図6は、米国において自動車の火災防止対策として定められた水平燃焼試験法(FMVSS 302)を示す。試料片は実施例1の防音断熱材1(厚さ12mm)であり、規定寸法(長さ350mm×幅100mm)に切断して使用した。そして、(a)に示すように、試料片1を鉄板21で挟んで水平に保持し、バーナ22を試料片1の下側に置き、火炎23を試料片1の開放部一端に15秒間あて、燃焼状況を観察した。
その結果、試料片1には着火しなかった。試料片1の裏面では、(b)に示すように、接炎部分でポリエステル繊維(コア材2)が収縮し、凹陥部24が生じた。試料片1の表面では、(c)に示すように、ポリエステル繊維の収縮部位で耐炎化アクリル繊維(表層材3)が密に凝集し、この凝集部25によりポリエステル繊維がカバーリングされていた。試料片1に着火しない理由は、凝集部25がポリエステル繊維側への酸素供給を遮断したからであると推定できる。また、耐炎化アクリル繊維の全体形状に変化はなく、試料片1のどこにも剥離箇所が見られなかった。このことから、防音断熱材1の自己消火性能と形状保持性能を検証することができた。
<燃焼試験2>
図7は、米国の民間検査機関が定めたプラスチック材料の燃焼試験法(UL94)を示す。試料片は実施例1,2の防音断熱材1,5(厚さ12mm)であり、規定寸法(長さ125mm×幅13mm)に切断して使用した。そして、(a)に示すように、試料片1,5を金網27の上に載せて水平に保持し、バーナ22の火炎23を金網27の下側から試料片1,5の一端に10秒間あて、燃焼状況を観察した。また、この水平試験法とは別に、試料片1,5を垂直に保持して火炎をあてる垂直試験法も実施した。
水平・垂直試験の結果、試料片1,5には着火しなかった。試料片1の場合は、(b)に示すように、接炎部分(先端部分)でポリエステル繊維(コア材2)が収縮し、その部分で耐炎化アクリル繊維(表層材3)に凝集部25が生じた。試料片5の場合は、(c)に示すように、表裏の耐炎化アクリル繊維がポリエステル繊維の収縮部を包み込むような形態で凝集した。どちらの試料片1,5でも、凝集部25がポリエステル繊維をカバーリングし、その他の部位に耐炎化アクリル繊維の形状変化は見られず、剥離箇所もなかった。このことから、燃焼試験1の場合と同様、防音断熱材1,5の自己消火性能と形状保持性能を検証することができた。
図8〜図10は本発明を自動車用防音断熱材に具体化した実施例3を示す。図8,図9に示すように、この防音断熱材31は、一枚のコア材32と一枚の表層材33と一枚の両面接着シート34とから三層に構成されている。コア材32には、実施例1,2と同様、ポリエステル繊維からなる厚手(例えば6〜30mm)の不織布マットが用いられている。表層材33には、耐炎化アクリル繊維を主材料とする薄手(例えば0.5〜3mm)の不織布マットが用いられている。そして、コア材32の不織布マットの片面に、表層材33の不織布マットが両面接着シート34に含浸又は塗布した接着剤により接合されている。
図10に示すように、表層材33の不織布マット35は、耐炎化アクリル繊維36と芯鞘構造のポリエステル繊維(PET/PET繊維)37とから構成されている。ポリエステル繊維37は、耐炎化アクリル繊維36中に10〜25重量%の割合で混合されている。ポリエステル繊維37の芯部37aは融点が約220〜240℃であり、鞘部37bは融点が約160〜180℃である。そして、不織布マット35をニードルパンチ加工(P)した後に加熱加圧することにより、ポリエステル繊維37が耐炎化有機繊維36に溶着されている。なお、表層材33の目付は、適用部位に応じて適宜に選定でき、例えば前記30〜100g/m2 の範囲が好ましい。
防音断熱材31の製造にあたっては、まず、図10(a)に示すように、耐炎化アクリル繊維36にポリエステル繊維37を混合し、両方の繊維36,37をカード機で開繊し、ニードルパンチ加工(P)により絡み合わせて、不織布マット35を編成する。次に、(b)に示すように、不織布マット35を約200℃に加熱して、ポリエステル繊維37の鞘部37bを溶融状態にする。この状態で、(c)に示すように、不織布マット35をコールドロール38で加圧し、鞘部37bの溶融樹脂37cにより耐炎化アクリル繊維36を結合して、表層材33をヒートセットする。ポリエステル繊維37の芯部37aは溶融せずに残って、耐炎化有機繊維間を連絡して保持する。その後、図9に示すように、表層材33を両面接着シート34でコア材32に接合し、防音断熱材31を製品形状に成形する。
この実施例3の防音断熱材31によれば、実施例1,2の作用効果(1)〜(7)に加え、次のような特有の作用効果が得られる。
(8)耐炎化アクリル繊維36中にポリエステル繊維37をバインダとして混合したので、表層材33の耐摩耗性を改善して、防音断熱材31の耐久性を改善できるとともに、表層材33の強度を高めて、防音断熱材31を容易に成形できる。
(9)ニードルパンチ加工後の不織布マット35を加熱加圧することにより、ポリエステル繊維37を耐炎化アクリル繊維36に溶着するので、表層材33の成形時の取扱いが容易となり、かつ、表層材33を各部均一な繊維密度と厚さで高精度に成形できる。
(10)ポリエステル繊維37が芯鞘構造であるため、鞘部37bの溶融樹脂37cでポリエステル繊維37を耐炎化アクリル繊維36に結合し、芯部37aで耐炎化アクリル繊維36同士の間隔を保持して、表層材33を緻密で均質な繊維集合体とすることができる。
(11)ポリエステル繊維37の混合率を10〜25重量%としたので、表層材33の耐熱性を低下させることなく強度を大幅に改善できる。
(12)表層材33の目付を例えば30〜100g/m2として、表層材33の重さ及び厚さを最適化し、防音断熱材31を自動車11のみならず各種の車両に汎用できる。
(13)表層材33の不織布マット35は、加熱加圧により圧縮されているので、防音断熱材31をエンジンルーム等の限られたスペースにコンパクトな形態で装着できる。
(14)コア材32と表層材33との接合に両面接着シート34を用いたので、双方を広い接着面積で強固に接合できる。
なお、実施例3の防音断熱材31の難燃性を検証するために、実施例1,2と同様の燃焼試験を行った結果、表層材33の全体形状に変化はなく、表層材33のどこにも剥離が見られなかった。このことから、実施例3の防音断熱材31に、実施例1,2と同様の自己消火性能と形状保持性能を検証することができた。
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)実施例3の防音断熱材31において、コア材32の両面に表層材33を接合する。こうすれば、より高度の不燃性・防炎性・耐熱性が得られる。
(2)実施例3の防音断熱材31において、コア材32に表層材33をニードルパンチ加工により接合する。こうすれば、同じニードルパンチ加工設備を用いて、コア材32の成形工程と表層材33の成形工程とコア材32及び表層材33の接合工程とを連続的に実施できて、防音断熱材31の生産性・不燃性が向上する。
(3)実施例1,2の防音断熱材1,5において、コア材2に表層材3を接着シートにより接合する。
(4)実施例1,2,3の防音断熱材1,5,31において、コア材2,32をガラス繊維やセラミック繊維等の無機繊維を主材料として成形する。こうすれば、より高度の不燃性が得られる。
本発明に係る自動車用防音断熱材の実施例1を示す斜視図である。 図1の防音断熱材の断面図である。 本発明に係る防音断熱材の実施例2を示す斜視図である。 図3の防音断熱材の断面図である。 防音断熱材の適用例を示す自動車の正面図である。 燃焼試験1の説明図である。 燃焼試験2の説明図である。 本発明に係る自動車用防音断熱材の実施例3を示す斜視図である。 図8の防音断熱材の断面図である。 図8の防音断熱材の製造方法を示す工程図である。
符号の説明
1 防音断熱材(実施例1)
2 コア材
3 表層材
5 防音断熱材(実施例2)
31 防音断熱材(実施例3)
32 コア材
33 表層材
34 両面接着シート
35 不織布マット
36 耐炎化アクリル繊維
37 芯鞘構造のポリエステル繊維

Claims (4)

  1. コア材の少なくとも片面に耐炎化有機繊維を含む表層材が接合している車両用防音断熱材。
  2. 表層材は、耐炎化有機繊維と熱溶融性有機繊維との混合繊維ウェブが熱溶融性有機繊維が溶融する程度に加熱され且つ加圧されてなる不織布である請求項1記載の車両用防音断熱材。
  3. コア材は、熱可塑性有機繊維を主材料とする不織布マットである請求項1又は2記載の車両用防音断熱材。
  4. 耐炎化有機繊維と熱溶融性有機繊維との混合繊維ウェブが熱溶融性有機繊維が溶融する程度に加熱され且つ加圧されてなる不織布である車両用防音断熱材用表層材。
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