JP2005246598A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を有する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)上部層がAl2O3層の表面に、ZrO2層を1.5〜5μmの平均層厚で化学蒸着形成した状態で、加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有するAl2O3層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す加熱変態α型Al2O3層、以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】図1
Description
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、かつ1〜15μmの平均層厚を有する蒸着α型酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
(a)上記の通り、硬質被覆層としての蒸着α型Al2O3層は、高温硬さおよび耐熱性にすぐれるものの、高温強度が十分でなく、満足な耐チッピング性を発揮することは困難であり、一方蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有するAl2O3層は、前記蒸着α型Al2O3層に比して、相対的に高い高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮するものの、高温硬さおよび耐熱性の点で劣る性質があること。
反応ガス組成:体積%で、ZrCl4:1〜6%、、CO2:5〜15%、HCl:1〜8%、CO2:2〜10%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:3〜15kPa、
の条件で処理して、前記蒸着κ型またはθ型Al2O3層の表面に、酸化ジルコニウム(以下、ZrO2で示す)層を1.5〜5μmの平均層厚で形成し、この状態で、上記(b)の条件での加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造のAl2O3層をα型結晶構造のAl2O3層に変態させると、前記変態前のAl2O3層の表面に形成したZrO2層が、前記Al2O3層のκ型またはθ型の結晶構造からα型結晶構造への変態による体積収縮に伴なって発生する割れの進展を著しく抑制すると共に、前記変態がAl2O3層の表面全面に亘って同時的に開始するように作用し、経時的にAl2O3層の表面部から内部に進行する変態形態をとるようになることから、変態時に発生する割れは、きわめて微細に、かつ層全体に亘って一様に分散分布した状態となるほか、変態後のAl2O3層における結晶配向も変態前のκ型またはθ型Al2O3層のもつ結晶配向と同等、あるいは結晶配向に変化があってもきわめて小さなものとなり、この結果形成された加熱変態α型Al2O3層は、α型結晶構造のもつすぐれた高温硬さと耐熱性と共に、加熱変態前の蒸着κ型またはθ型Al2O3層のもつ高温強度と同等のすぐれた高温強度を具備するようになり、したがって、硬質被覆層の上部層が前記加熱変態α型Al2O3層とZrO2層、下部層が上記Ti化合物層で構成された被覆サーメット工具においては、特に激しい機械的熱的衝撃を伴なう高速断続切削加工でも前記加熱変態α型Al2O3層が、すぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、高い高温強度を有する前記Ti化合物層との共存と相俟って、硬質被覆層におけるチッピング発生が著しく抑制され、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来の蒸着α型Al2O3層は、図3に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記加熱変態α型Al2O3層は、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークは、ZrO2層の平均層厚を変化させることによりグラフ横軸の傾斜角区分に現れる位置および高さが変わること。
以上(a)〜(e)に示される研究結果を得たのである。
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造および1〜15μmの平均層厚を有するAl2O3層の表面に、ZrO2層を1.5〜5μmの平均層厚で化学蒸着形成した状態で、加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有するAl2O3層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す加熱変態α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を有する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)Ti化合物層(下部層)の平均層厚
Ti化合物層は、自体がα型Al2O3層に比して、相対的に高い高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層がすぐれた高温強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層である加熱変態α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
ZrO2層には、上記の通り蒸着κ型またはθ型Al2O3層の加熱変態α型Al2O3層への加熱変態に際して、体積収縮に伴なって発生する割れの進展を著しく抑制すると共に、前記変態をAl2O3層表面全面に亘って同時的に開始させ、経時的にAl2O3層の表面部から内部に進行する変態形態をとるようにする作用があるので、加熱変態時に発生する割れが層全体に亘って微細化および均一化する作用があり、さらに、前記ZrO2層には、平均層厚を1.5〜5μmにすると、試験結果によれば、これに対応して、傾斜角度数分布グラフにおける0〜10度の傾斜角区分範囲内に測定傾斜角の最高ピークが現れ、かつ前記0〜10度の傾斜角区分内に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上となる傾斜角度数分布グラフを示す作用があり、したがって、前記平均層厚が1.5未満では、前記加熱変態α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフの0〜10度の範囲内に現れるピーク高さが不十分、すなわち、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%未満となってしまい、この場合上記の通り、前記加熱変態α型Al2O3層に所望のすぐれた高温強度を確保することができず、この結果耐チッピング性に所望の向上効果が得られず、一方その平均層厚が5μmを越えると、最高ピークの現れる傾斜角区分が0〜10度の範囲から外れてしまい、この場合も前記加熱変態α型Al2O3層に所望のすぐれた高温強度を確保することができないことから、その平均層厚を1.5〜5μmと定めた。
蒸着κ型またはθ型Al2O3層は、上記の通り加熱変態後にすぐれた高温硬さと耐熱性、さらに傾斜角区分:0〜10度の範囲内に最高ピークが現れる傾斜角度数分布グラフを示し、すぐれた高温強度を具備する加熱変態α型Al2O3層となり、高速断続切削加工でもチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するが、その平均層厚が1μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の加熱変態α型Al2O3層および蒸着α型Al2O3層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具6の加熱変態α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆サーメット工具2の蒸着α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
さらに、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材:JIS・SCM435の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・S50Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件B)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は250m/min)、
被削材:JIS・FCD600の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件C)でのダクタイル鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造および1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層の表面に、酸化ジルコニウム層を1.5〜5μmの平均層厚で化学蒸着形成した状態で、加熱処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す加熱変態α型酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を有する表面被覆サーメット製切削工具。
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---|---|---|---|---|
JPH06220571A (ja) * | 1992-08-31 | 1994-08-09 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 切削工具用の超硬合金及び被覆超硬合金 |
JP2004017218A (ja) * | 2002-06-17 | 2004-01-22 | Mitsubishi Materials Corp | 硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具 |
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