JP2006334710A - 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】表面被覆サーメット製切削工具の硬質被覆層を、(a)いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.1〜5μmの合計平均層厚を有する密着性Ti化合物層と、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Ti1−XCr)C1−Y(ただし、原子比で、X:0.005〜0.05、Y:0.45〜0.55)、を満足する改質Ti系炭窒化物層からなる下部層、(b)1〜15μmの平均層厚を有するα型Al層からなる上部層、以上(a)および(b)で構成し、かつ、前記(a)の下部層における改質Ti系炭窒化物層は、特定の傾斜角度数分布グラフ、を示すこと。
【選択図】 図2

Description

この発明は、特に鋼や鋳鉄などの高速重切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有するα型酸化アルミニウム(以下、α型Al23で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
特開平6−31503号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削効率の向上を目的として、切削速度を高速化し、かつ切り込みや送りなどを大きくする高速重切削条件での切削加工が行われる傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを切削条件の厳しい高速重切削加工、すなわち切刃部にきわめて高い機械的負荷が加わる高速重切削加工に用いた場合、これを構成する硬質被覆層は下部層のTi化合物層による高温強度、同上部層のα型Al23層による高温硬さおよび耐熱性を具備するものの、前記Ti化合物層による高温強度が不十分であるために、前記の機械的高負荷に対して満足に対応することができず、この結果硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層の耐チッピング性向上をはかるべく、これの下部層であるTi化合物層を構成するTiCN層、すなわちTi化合物層のうちで相対的に高い高温強度を有するTiCN層に着目し、研究を行った結果、
(a)従来被覆サーメット工具の硬質被覆層において、下部層を構成するTi化合物層のうちのTiCN層(以下、従来TiCN層という)は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CHCN:0.5〜3%、N2:10〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件(通常条件という)で蒸着形成されるが、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CrCl:0.01〜0.5%、CHCN:0.5〜3%、N2:30〜45%、Ar:残り、
反応雰囲気温度:900〜1020℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件、すなわち上記の通常条件に比して、反応ガスのキャリアガスであるH2ガスをArガスに代えると共に、N2ガスの相対量を増加させ、かつCrClガスをきわめて少量加え、さらに反応雰囲気温度を相対的に高くした条件で蒸着形成して、
組成式:(Ti1−XCr)C1−Y(ただし、原子比で、X:0.005〜0.05、Y:0.45〜0.55)、
を満足するTi系炭窒化物層を形成すると、この結果のTi系炭窒化物層(以下、「改質Ti系CN層」で示す)は、上記の従来TiCN層と同様の結晶構造、すなわち格子点にTi、Cr、炭素(C)、および窒素(N)からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有するが、前記従来TiCN層に比して一段とすぐれた高温強度を有すること。
(b)上記の従来TiCN層と上記(a)の改質Ti系CN層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で例示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来TiCN層は、図3に例示される通り、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記改質Ti系CN層は、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークは、グラフ横軸の傾斜角区分に現れる高さおよび傾斜角区分位置が前記改質Ti系CN層におけるCrの含有割合を調整することにより変化すること。
(c)上記の通り、上記改質Ti系CN層の形成に際して、層中のCr含有割合を、上記の通りTiとの合量に占める原子比で0.005〜0.5とすることによって、前記改質Ti系CN層の傾斜角度数分布グラフで、シャープな最高ピークが傾斜角区分の0〜10度の範囲内に現れ、かつ、前記0〜10度の範囲内に存在する度数割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるのであり、したがって、前記改質Ti系CN層中のCr含有割合が前記の範囲から低い方に外れても、あるいは高い方に外れても、傾斜角度数分布グラフにおけるシャープな最高ピークが傾斜角区分の0〜10度の範囲から外れ、かつ、、前記0〜10度の範囲内に存在する度数数割合も45%未満になってしまい、この場合は一段の高温強度の向上を図ることができないこと。
さらに、上記改質Ti系CN層のCr成分には、上記の作用の他に、層中にCr成分を含有しない上記従来TiCN層に比して、層自体の高温強度を向上させる作用もあり、この場合その含有割合がTiとの合量に占める原子比で0.005(0.5原子%)未満では所望の高温強度向上効果が現れず、一方その含有割合が同0.05(5原子%)を越えると、急激に軟化し、高熱発生を伴なう高速切削では切刃部に偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなることからも、その含有割合はTiとの合量に占める原子比で0.005〜0.5とする必要がある。
(d)硬質被覆層の上部層が前記α型Al23層、下部層が上記Ti化合物層で構成され、かつ前記Ti化合物層のうちの1層が、2.5〜15μmの平均層厚を有し、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜10度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れ、かつ前記0〜10度の範囲内に存在する度数割合が45%以上を占める改質Ti系CN層からなる被覆サーメット工具は、前記改質Ti系CN層が上記従来TiCN層に比して一段と高い高温強度を有するので、同上部層であるα型Al23層が具備するすぐれた高温硬さおよび耐熱性と相俟って、特にきわめて高い負荷のかかる高速重切削加工でも、前記硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、上記工具基体の表面に蒸着形成した硬質被覆層を、
(a)いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.1〜5μmの合計平均層厚を有する密着性Ti化合物層と、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1−XCr)C1−Y(ただし、原子比で、X:0.005〜0.05、Y:0.45〜0.55)、
を満足する改質Ti系CN層からなる下部層、
(b)1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層からなる上部層、
以上(a)および(b)で構成し、かつ、上記(a)の下部層における改質Ti系CN層は、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフ、
を示してなる、高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層について、上記の通りに数値限定した理由を以下に説明する。
(a)下部層の密着性Ti化合物層
密着性Ti化合物層は、工具基体と上部層であるα型Al23層および改質Ti系CN層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が0.1μm未満では、所望のすぐれた密着性を確保することができず、一方前記密着性は5μmまでの合計平均層厚で充分であることから、その合計平均層厚を0.1〜5μmと定めた。
(b)下部層の改質Ti系CN層
上記の改質Ti系CN層の傾斜角度数分布グラフの傾斜角区分における最高ピーク位置および前記最高ピークが存在する所定の傾斜角区分内に存在する度数割合は、上記の通り層中のCr含有割合(X値)をTiとの合量に占める原子比で、0.005〜0.5とすることによって、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークを存在させ、かつ前記0〜10度の範囲内に存在する度数割合を、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上とすることができるものであり、したがって、その含有割合が0.005未満でも、0.05を越えても、前記最高ピーク位置の現れる傾斜角区分が0〜10度の範囲内から外れ、さらに前記0〜10度の範囲内に存在する度数割合は45%未満となってしまい、高速重切削加工で、硬質被覆層にチッピングが発生しない、すぐれた高温強度向上効果を確保することができないものとなる。
また、改質Ti系CN層におけるC成分には層の硬さを向上させ、一方N成分には高温強度を向上させる作用があり、これら両成分を共存含有することにより高い硬さとすぐれた強度を具備するようになるものであり、したがって、層中のN成分の含有割合(Y値)がC成分との合量に占める原子比で0.45未満では所望の強度を確保することができず、一方その含有割合(Y値)が同じく0.55を越えると、相対的にC成分の含有割合が少なくなり過ぎて、所望の高硬度が得られなくなることから、Y値を原子比で0.45〜0.55と定めた。
このように前記改質Ti系CN層は、上記の通り従来TiCN層に比して、一段とすぐれた高温強度を有するようになるが、その平均層厚が2.5μm未満では所望のすぐれた高温強度向上効果を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を2.5〜15μmと定めた。
(c)上部層のα型Al23
α型Al23層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を最表面層として、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、機械的負荷がきわめて高い鋼や鋳鉄などの高速重切削加工でも、硬質被覆層の下部層のうちの1層である改質Ti系CN層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で20時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.05mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120412に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで20時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、硬質被覆層の下部層として、密着性Ti化合物層および改質Ti系CN層からなる下部層を表3に示される条件で、表4に示される組み合わせおよび目標層厚で蒸着形成し、ついで同じく表3に示される条件にて、上部層としてのα型Al23層を同じく表4に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の下部層として、密着性Ti化合物層および従来TiCN層を表3に示される条件で、表5に示される組み合わせおよび目標層厚で蒸着形成し、さらに上部層としてのα型Al23層を、表3に示される条件で、かつ同じく表5に示される目標層厚で蒸着形成することにより従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具と従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する改質Ti系CN層および従来TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
この結果得られた各種の改質Ti系CN層および従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフにおいて、{112}面が最高ピークを示す傾斜角区分、並びに0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体の傾斜角度数に占める割合を表4,5にそれぞれ示した。
上記の各種の傾斜角度数分布グラフにおいて、表4に示される通り、本発明被覆サーメット工具1〜13の改質Ti系CN層は、いずれも{112}面の測定傾斜角の分布が0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れ、かつ0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合が45%以上である傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、表5に示される通り、従来被覆サーメット工具1〜13の従来TiCN層は、いずれも{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在せず、0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合も30%以下である傾斜角度数分布グラフを示すものであった。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具5の改質Ti系CN層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆サーメット工具5の従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有する密着性Ti化合物層、改質Ti系CN層および従来TiCN層、さらにα型Al23層からなることが確認された。また、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、
被削材:JIS・SNCM415の丸棒、
切削速度:360m/min、
切り込み:4mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の湿式連続高速高切り込み切削試験(通常の切削速度および切り込み量は、それぞれ200m/minおよび1.5mm)、
被削材:JIS・FC350の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:380m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.55mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Bという)での鋳鉄の湿式断続高速高送り切削試験(通常の切削速度および送りは250m/minおよび0.3mm/rev)、
被削材:JIS・S25Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:420m/min、
切り込み:5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:8分、
の条件(切削条件Cという)での炭素鋼の湿式断続高速高切り込み切削試験(通常の切削速度および切り込み量は、それぞれ280m/minおよび1.5mm)を行い、いずれの切削試験(水溶性切削油使用)でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Figure 2006334710
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表4〜6に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の下部層のうちの1層が、{112}面の傾斜角が0〜10度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示すと共に、前記0〜10度の傾斜角区分範囲内に存在する度数の合計割合が45%以上を占める傾斜角度数分布グラフを示す、機械的負荷がきわめて高い鋼や鋳鉄の高速重切削でも、前記改質Ti系CN層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の下部層のうちの1層が、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示す従来TiCN層で構成された従来被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも高速重切削では硬質被覆層の高温強度不足が原因で、硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高い高温強度が要求される高速重切削加工でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層の下部層を構成する改質Ti系CN層および従来TiCN層における結晶粒の{112}面の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 本発明被覆サーメット工具5の硬質被覆層の下部層を構成する改質Ti系CN層の{112}面の傾斜角度数分布グラフである。 従来被覆サーメット工具5の硬質被覆層の下部層を構成する従来TiCN層の{112}面の傾斜角度数分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に蒸着形成した硬質被覆層を、
    (a)いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜5μmの合計平均層厚を有する密着性Ti化合物層と、2.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Ti1−XCr)C1−Y(ただし、原子比で、X:0.005〜0.05、Y:0.45〜0.55)、
    を満足する改質Ti系炭窒化物層からなる下部層、
    (b)1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有するα型酸化アルミニウム層からなる上部層、
    以上(a)および(b)で構成し、かつ、上記(a)の下部層における改質Ti系炭窒化物層は、
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフ、
    を示すこと、を特徴とする高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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