JP2005279909A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】表面被覆サーメット製切削工具が、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、Ti化合物層、(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有する。
【選択図】なし

Description

この発明は、特に鋼や鋳鉄などの高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、酸化アルミニウム(以下、Al2 3 で示す)の結晶粒界にY(イットリウム)が0.01〜10質量%の割合で偏析含有し、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、かつ、1〜15μmの平均層厚を有する蒸着α型Al系酸化物[以下、Y含有Al2 3 で示す]層、または同平均層厚の蒸着α型Al2 3 層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
また、一般に、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層や蒸着α型Y含有Al2 3 層および蒸着α型Al2 3 層が粒状結晶組織を有し、さらに、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物、例えばCH3CNを含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
特開2004−1154 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを切削条件の最も厳しい高速断続切削、すなわち切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し機械的熱的衝撃の加わる高速断続切削に用いた場合、硬質被覆層の下部層であるTi化合物層は高い高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を示すものの、同上部層を構成する蒸着α型Y含有Al2 3 層や蒸着α型Al2 3 層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有するものの、十分な高温強度を具備するものでないために、機械的熱的衝撃に対してきわめて脆く、これが原因で硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Y含有Al2 3 層および蒸着α型Al2 3 層に着目し、これの耐チッピング性向上をはかるべく研究を行った結果、
工具基体の表面に、通常の化学蒸着装置で、下部層として、通常の条件で、上記Ti化合物層を形成した後、同じく通常の条件で、
組成式:(Al1−X 2 3
で現した場合、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、X値が原子比で、0.001〜0.01を満足する組成にすると共に、結晶構造がκ型またはθ型の結晶構造を有するYを固溶含有したAl系酸化物[以下、(Al,Y)2 3 で示す]層を蒸着形成し、ついで、前記(Al,Y)2 3 層の表面に、同じく化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:体積%で、TiCl:0.2〜3%、CO:0.2〜10%、Ar:5〜50%、H:残り、
反応雰囲気温度:900〜1020℃、
反応雰囲気圧力:7〜30kPa、
時間:25〜100分、
の条件で処理して、
組成式:TiO
で表わした場合、オージェ分光分析装置で測定して、Z値がTiに対する原子比で1.2〜1.9、を満足するTi酸化物層を0.1〜2μmの平均層厚で形成し、この状態で、加熱変態処理、望ましくは圧力:7〜50kPaのAr雰囲気中、温度:1000〜1200℃に10〜120分間保持の条件で加熱変態処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造の(Al,Y)2 3 層をα型結晶構造の(Al,Y)2 3 層に変態させると、前記変態前の(Al,Y)2 3 層の表面に形成したTi酸化物層の作用で、前記κ型またはθ型の結晶構造からα型結晶構造への変態が全面同時的に発生し、変態時に発生する割れ(クラック)が同時発生的に形成されるようになることから、前記変態発生割れは、きわめて微細に、かつ一様に分散分布した状態となると共に、前記加熱変態の進行が著しく促進されることから、結晶粒の成長が著しく抑制され、この結果形成された加熱変態α型(Al,Y)2 3 層は、変態発生割れが層全体に亘って微細にして均一化された組織を有し、機械的熱的衝撃に対してきわめて強固なものとなるので、硬質被覆層の上部層が前記加熱変態α型(Al,Y)2 3 層、下部層が上記Ti化合物層(このTi化合物層には上記の条件での加熱変態処理では何らの変化も起らない)で構成された被覆サーメット工具は、特に激しい機械的熱的衝撃を伴なう高速断続切削加工でも、前記加熱変態α型(Al,Y)2 3 層のもつ前記の特性によって、高強度を有する前記Ti化合物層の共存と相俟って、硬質被覆層におけるチッピング発生が著しく抑制され、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること、
(b)上記(a)の加熱変態α型(Al,Y)2 3 層と、これの加熱変態前のκ型またはθ型の結晶構造を有する(Al,Y)2 3 層と同じ組成を有するが、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有する(Al,Y)2 3 層[以下、蒸着α型(Al,Y)2 3 層という]および蒸着α型Al2 3 層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の前記表面研磨面の法線に対する傾斜角を測定し、前記個々の結晶粒が示す0〜45度の範囲内の測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分し、各区分内に存在する測定傾斜角を区分毎に集計してなるポールプロットグラフを作成した場合、前記蒸着α型(Al,Y)2 3 層および蒸着α型Al2 3 層は、いずれも図3に前記蒸着α型(Al,Y)2 3 層で例示される通り、26〜36度の広い範囲内に傾斜角区分のなだらかな最高ピークが現れるのに対して、前記加熱変態α型(Al,Y)2 3 層は、図2に例示される通り、1〜11度の範囲内の狭い範囲に傾斜角区分の最高ピークが現れること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有し、かつ、
組成式:(Al1−X 2 3
で表わした場合、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、X値が原子比で0.001〜0.01を満足する(Al,Y)2 3 層の表面に、
組成式:TiO
で表わした場合、オージェ分光分析装置で測定して、Z値がTiに対する原子比で1.2〜1.9、を満足するTi酸化物層を0.1〜2μmの平均層厚で化学蒸着形成した状態で、加熱変態処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有する(Al,Y)2 3 層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の前記表面研磨面の法線に対する傾斜角を測定し、前記個々の結晶粒が示す0〜45度の範囲内の測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分し、各区分内に存在する測定傾斜角を区分毎に集計してなるポールプロットグラフにおいて、1〜11度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れ、かつ1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型(Al,Y)2 3 層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層について、上記の通りに数値限定した理由を以下に説明する。
(a)下部層(Ti化合物層)の平均層厚
Ti化合物層は、自体が高強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層である加熱変態α型(Al,Y)2 3 層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)Ti酸化物層の組成(Z値)および平均層厚
Ti酸化物層は、上記の通り蒸着κ型またはθ型(Al,Y)2 3 層の加熱変態α型(Al,Y)2 3 層への加熱変態を全面同時的に開始して、加熱変態時に発生する割れを微細化および均一化するほか、前記加熱変態を促進し、処理時間の短縮化によって結晶粒の成長を抑制する作用を有し、したがって、上記のポールプロットグラフで、測定傾斜角:1〜11度の範囲内に最高ピークが現れる加熱変態α型(Al,Y)2 3 層を形成するのに不可欠であるが、そのZ値がTiに対する原子比で1.2未満でも、また同1.9を越えても、さらにその平均層厚が0.1μm未満でも前記の作用を十分に発揮させることができず、この結果ポールプロットグラフで、測定傾斜角:1〜11度の範囲内に最高ピークが現れる加熱変態α型(Al,Y)2 3 層の形成は困難となるものであり、一方前記作用は2μmの平均層厚で十分であり、これ以上の厚さは不必要であることから、そのZ値をTiに対する原子比で1.2〜1.9、その平均層厚を0.1〜2μmとそれぞれ定めた。
(c)上部層[加熱変態α型(Al,Y)2 3 層]のYの含有割合および平均層厚
加熱変態α型(Al,Y)2 3 層は、構成成分であるAlの作用ですぐれた高温硬さと耐熱性を有し、同Yの作用で高温強度の向上したものになるが、Yの割合(X値)が、Alとの合量に占める割合で、原子比で(以下同じ)0.001未満では、所望の高温強度向上効果を発揮することができず、一方Yの割合が同0.01を越えると、Y成分が結晶粒界に析出するようになって六方晶結晶格子に乱れが生じ、加熱変態処理でのκ型またはθ型結晶構造からα型結晶構造への変態進行を阻害するようになることから、Yの含有割合(X値)を0.001〜0.01と定めた。
また、加熱変態α型(Al,Y)2 3 層の平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な高温硬さと耐熱性を具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、機械的熱的衝撃がきわめて高い鋼や鋳鉄などの高速断続切削でも、硬質被覆層の上部層を構成する加熱変態α型(Al,Y)2 3 層がすぐれた高温硬さと耐熱性を有し、さらにすぐれた高温強度を具備することから、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、硬質被覆層の下部層としてTi化合物層を、表5に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成し、ついで同じく表3に示される条件にて、結晶構造がκ型またはθ型の(Al,Y)2 3 層を同じく表5に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成し、ついで前記κ型またはθ型の(Al,Y)2 3 層の表面に、Ti酸化物層を同じく表4に示される条件で表5に示される組み合わせで蒸着形成した状態で、これに30kPaのAr雰囲気中、温度:1100℃に20〜100分の範囲内の所定の時間保持の条件で加熱変態処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造の(Al,Y)2 3 層をα型結晶構造の(Al,Y)2 3 層に変態させてなる加熱変態α型(Al,Y)2 3 層を硬質被覆層の上部層として形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
なお、上記本発明被覆サーメット工具1〜13の製造に際しては、それぞれ別途試験片を用意し、この試験片を同じく化学蒸着装置に装入し、前記試験片の表面にTi酸化物層が形成された時点で装置から取りだし、前記κ型またはθ型の(Al,Y)2 3 層および前記Ti酸化物層の組成(X値およびZ値)および層厚を電子線マイクロアナライザー(EPMA)、オージェ分光分析装置、および走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)した。この結果、いずれも目標組成および目標層厚と実質的に同じ組成および平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
また、比較の目的で、表6に示される通り、硬質被覆層の上部層として同じく表3に示される条件で、同じく表6に示される目標層厚の蒸着α型(Al,Y)2 3 層を形成し、かつ上記のTi酸化物層の形成および上記条件での加熱変態処理を行わない以外は同一の条件で比較被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具と比較被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する加熱変態α型(Al,Y)2 3 層と蒸着α型(Al,Y)2 3 層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、ポールプロットグラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記ポールプロットグラフは、上記の加熱変態α型(Al,Y)2 3 層および蒸着α型(Al,Y)2 3 層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の前記表面研磨面の法線に対する傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記個々の結晶粒が示す0〜45度の範囲内の測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分し、各区分内に存在する測定傾斜角を区分毎に集計することにより作成した。
この結果得られた各種の加熱変態α型(Al,Y)2 3 層および蒸着α型(Al,Y)2 3 層のポールプロットグラフにおいて、(0001)面が最高ピークを示す傾斜角区分をそれぞれ表5,6に示した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具2の加熱変態α型(Al,Y)2 3 層のポールプロットグラフ、図3は、比較被覆サーメット工具2の蒸着α型(Al,Y)2 3 層のポールプロットグラフをそれぞれ示すものである。
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および比較被覆サーメット工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者ではいずれも目標組成と実質的に同じ組成を有するTi化合物層と加熱変態α型(Al,Y)2 3 層からなり、かつ表面部に加熱変態処理前に蒸着形成されたTi酸化物層の存在も確認された。一方後者でも、いずれも同じく目標組成と実質的に同じ組成を有するTi化合物と蒸着α型(Al,Y)2 3 層からなることが確認された。また、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜13および比較被覆サーメット工具1〜13について、
被削材:JIS・SCr420の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・S50Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は250m/min)、
被削材:JIS・FCD600の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Cという)でのダクタイル鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7に示した。
Figure 2005279909
Figure 2005279909
Figure 2005279909
Figure 2005279909
Figure 2005279909
Figure 2005279909
Figure 2005279909
表5〜7に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも加熱変態α型(Al,Y)2 3 層の(0001)面がポールプロットグラフで1〜11度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示し、機械的熱的衝撃がきわめて高く、かつ高い発熱を伴なう鋼や鋳鉄の高速断続切削でも、硬質被覆層の上部層を構成する加熱変態α型(Al,Y)2 3 層がすぐれた耐チッピング性を発揮することから、切刃部のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の上部層が、前記ポールプロットグラフでは26〜36度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示す蒸着α型(Al,Y)2 3 層からなる比較被覆サーメット工具1〜13においては、高速断続切削では前記蒸着α型(Al,Y)2 3 層が高温強度不足のために激しい機械的熱的衝撃に耐えられず、切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に厳しい切削条件となる高速断続切削でもすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層を構成する各種加熱変態α型(Al,Y)2 3 層および蒸着α型(Al,Y)2 3 層における結晶粒の(0001)面の傾斜角の測定範囲を示す概略図である。 本発明被覆サーメット工具2の硬質被覆層を構成する加熱変態α型(Al,Y)2 3 層の(0001)面のポールプロットグラフである。 比較被覆サーメット工具2の硬質被覆層を構成する蒸着α型(Al,Y)2 3 層の(0001)面のポールプロットグラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層として、化学蒸着形成した状態でκ型またはθ型の結晶構造を有し、かつ、
    組成式:(Al1−X 2 3
    で表わした場合(上記組成式における「Y」はイットリウムを示す)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定して、X値が原子比で0.001〜0.01を満足するAl系酸化物層の表面に、
    組成式:TiO
    で表わした場合、オージェ分光分析装置で測定して、Z値がTiに対する原子比で1.2〜1.9、を満足するTi酸化物層を0.1〜2μmの平均層厚で化学蒸着形成した状態で、加熱変態処理を施して、前記κ型またはθ型の結晶構造を有するAl系酸化物層の結晶構造をα型結晶構造に変態してなると共に、
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の前記表面研磨面の法線に対する傾斜角を測定し、前記個々の結晶粒が示す0〜45度の範囲内の測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分し、各区分内に存在する測定傾斜角を区分毎に集計してなるポールプロットグラフにおいて、1〜11度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れ、かつ1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al系酸化物層、
    以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を有する表面被覆サーメット製切削工具。
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