JP2005240766A - 液体ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】 液体ポンプのポンプケーシング内に形成される排出流路の内方に向かって突出する突出部において、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、該突出部での異物の通過性を向上する。
【解決手段】 ポンプケーシング12の吐出部23の内面に、ボリュート状の流路50(排出流路)の内方に向かって突出する突出部12bを形成する。この突出部12bによって、ボリュートの捲き始め部51と捲き終わり部52とが区画される。そして、羽根車11の回転軸方向から見て、前記突出部12bの先端に、羽根車11の出口径D2の0.04〜0.12倍の範囲内の曲率半径を有するR部12cを形成する。
【選択図】 図12

Description

本発明は、液体ポンプに関し、特に、異物等の通過性を向上させた高通過性ポンプの技術分野に属する。
従来より、液体を吐出するポンプとして、種々のものが知られていて、例えば、特許文献1に示すように、内部に螺旋状の流路が形成された羽根車を備えたものや、スクリュータイプの羽根車を備えたものなどがある。そして、このようなポンプの場合、一般的に、羽根車を囲むようにボリュート状のポンプケーシングが設けられていて、このポンプケーシング内に形成された排出流路によって、羽根車から吐出された液体が効率良くポンプ外へ排出されるようになっている。
より詳しくは、前記ポンプケーシングは、該ケーシング内の排出流路が出口側に向かって徐々に断面積の大きくなる渦巻き状に形成されているとともに、ボリュートの捲き終わり付近には、前記排出流路の内方に向かって突出する突出部が設けられていて、この突出部によってボリュートの捲き終わり部分と捲き始め部分とが区分され、羽根車から吐出された液体がケーシング内を再循環しないようになっている。なお、ポンプ効率を考慮した場合、前記突出部の先端は、例えば、特許文献2の図1に示すように、ポンプケーシング内の流れを阻害しないような鋭角にするのが好ましい。
特公昭28−5840号公報 特表昭61−501939号公報
しかしながら、上述のようなポンプケーシングを備えるポンプにおいて、夾雑物等の異物が混入した汚水等を吐出させる場合、異物が羽根車内やポンプケーシング内で詰まり、流路を閉塞するという問題があった。特にポンプケーシングでは、前記突出部の先端に異物が引っ掛かり易く、閉塞を生じ易い。
そのようなポンプケーシング内の突出部での異物の詰まりを解消するためには、例えば、該突出部の先端に大きなRを形成するか、該突出部と羽根車との間隔を拡げるなどして、異物の通過性を向上することが考えられるが、この場合には、前記ポンプケーシング内を再循環する液体の流量が増大するため、ポンプ効率を極端に悪化させることとなる。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体ポンプのポンプケーシング内に形成される排出流路の内方に向かって突出する突出部の構造に工夫を凝らして、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、該突出部での異物の通過性を向上することにある。
前記目的を達成するために、本発明の解決手段では、ポンプケーシング内に形成される排出流路の内方に向かって突出する突出部の先端側に、ポンプ効率を極端に悪化させることなく該突出部での異物の通過性を向上できる所定の曲率半径を有するR部を形成した。
具体的には、請求項1の発明では、液体を外周側に吐出する羽根車と、該羽根車の外周を囲んで、吐出された流体を周方向に送り出すボリュート状の排出流路が形成されたポンプケーシングと、を備え、該ポンプケーシングには、ボリュートの捲き終わり部と捲き始め部とを区分するように、両者の間で前記排出流路の内方に向かって突出する突出部が設けられている液体ポンプを対象とする。そして、前記突出部の先端側には、前記羽根車の回転軸線の方向に見て、該羽根車の出口径に対して0.04倍から0.12倍の範囲の曲率半径を有するR部が形成されているものとする。
この構成により、羽根車から吐出された液体をポンプ外へ排出する排出流路の内方に向かって突出し、ボリュートの捲き始め側と捲き終わり側とを区分する突出部において、その先端側に形成されたR部の曲率半径を前記突出部と羽根車との間隔が極端に拡がらないような適当な大きさにしたので、ボリュートの捲き終わり側から捲き始め側に流れるポンプ内の再循環流量が極端に増大することなく、すなわち、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、突出部先端での異物の引っ掛かりを防止することができる。
また、前記R部の曲率半径を、羽根車の出口径に対する比で特定したため、その比に基づいて突出部の先端にR部を形成すれば、羽根車の出口径が異なるポンプにおいても、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、異物の通過性を向上できるという上述の作用を得ることができる。なお、同型のポンプであれば、ポンプ内の液体の流れは、ポンプのサイズとほぼ相似の関係にあるため、羽根車の出口径に基づいて、突出部の先端側に形成するR部の形状を決めておけば、どのサイズのポンプでも同じような作用を得ることができる。
上述の構成において、排出流路は、ボリュートの捲き終わり部から捲き始め側に向かって連続する所定範囲内に、流路の断面積が上流側から下流側に向かって小さくなる部位を有するのが好ましい(請求項2の発明)。
こうすれば、ボリュートの捲き終わり部から所定範囲において、羽根車とポンプケーシングとの間に形成される排出流路の断面積は上流側よりも小さくなるので、該ボリュートの捲き終わり位置での液体の速度が、従来の一般的なポンプケーシング(ボリュート捲き終わりに向かって徐々に流路断面積が大きくなるポンプケーシング)の場合に比べて速くなり、液体の圧力上昇が抑えられる。これにより、突出部によって区画された捲き終わり側と捲き始め側との液体の圧力差が小さくなり、前記捲き終わり部からポンプケーシングの突出部を越えて捲き始め部側に流れ込む液体の流量(再循環流量)を減少させることができるため、該突出部での異物の詰まりをより効果的に防止することができる。
ここで、所定範囲とは、ボリュートの捲き終わり部から捲き始め側に向かって周方向に30度から120度の範囲のことである。
また、上述のように排出流路の断面積を所定範囲で上流側より小さくするのではなく、ボリュートの捲き終わり部から捲き始め側に向かって周方向に所定角度(30度から210度の範囲内に設定するのが好ましい)まで断面積が略一定になるようにしてもよい(請求項3の発明)。
なお、排出流路の断面積が略一定とは、30度毎の流路断面積の変化が0.5%以内であることを意味する。すなわち、前記所定角度内において、或る位置での流路断面積と、それよりも捲き終わり部側へ30度進んだ位置での流路断面積とを比べた場合に、断面積の変化が0.5%以内であればよい。
請求項1の発明に係る液体ポンプによれば、排出流路の内方に向かって突出する突出部の先端に、所定の曲率半径を有するR部を形成したので、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、該突出部での異物の通過性を向上することができる。
請求項2及び3の発明によれば、ポンプケーシングのボリュート捲き終わり部から或る範囲内で排出流路の断面積を略一定若しくは上流側より小さくなるようにしたので、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、再循環流量を低減することができ、突出部での異物の詰まりをより効果的に防止することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(汚水処理用ポンプの全体構成)
図1に示すように、実施形態に係る汚水処理用ポンプ10(液体ポンプ)は、ターボ式の水中ポンプであり、このポンプ10は、羽根車11と、該羽根車11を覆うポンプケーシング12と、該羽根車11を回転させる密閉型の水中モータ13とを備えている。
前記水中モータ13は、ステータ14及びロータ15からなるモータ16と、該モータ16を覆うモータケーシング17とを備えている。該ロータ15の略中心には上下方向に延びる駆動軸18が配設されていて、該駆動軸18は、軸受19,20によって回転自在に支持されている。そして、前記駆動軸18の下端部は、羽根車11に連結されていて、これにより、前記水中モータ13の回転が該羽根車11に伝達されるようになっている。
前記ポンプケーシング12は、詳しくは後述するように、羽根車11を覆うとともに、該羽根車11から吐出される汚水(液体)をポンプ外へ排出する流路50(排出流路)を形成するもので、その内部には、断面視で略半円状に湾曲した側壁12aによって外周側を囲まれてポンプ室26が形成されていて、このポンプ室26内に後述する羽根車11の吐出部28(図2参照)が収容されている。そして、図1及び図12に示すように、該羽根車11がポンプケーシング12内に配置された状態で、前記ポンプ室26の一部が、前記流路50を構成している。
また、前記ポンプケーシング12の下部には、図1に示すように、下方に突出した吸込部21が形成されていて、この吸込部21には、下方に向かって開口した吸込口22が形成されている。この吸込口22は、後述する羽根車11の吸込口29に連通している。一方、前記ポンプケーシング12の側部には、側方に突出した吐出部23が形成されていて、この吐出部23の先端に吐出口24が形成されている。この吐出口24は前記流路50の出口になっていて、前記羽根車11から吐出された汚水は該吐出口24からポンプ外へ排出されることになる。
(羽根車)
前記羽根車11には、図2に示すように、軸方向の下側から上側に向かって順に、吸込部27と吐出部28とが設けられている。これらの吸込部27及び吐出部28は、いずれも略円筒形状に形成されていて、該吐出部28は吸込部27よりも大径に構成されている。そして、該吐出部28と吸込部27との間には、全周に亘ってフランジ部40が形成されていて、図1に示すように、該羽根車11の吐出部28と吸込部27とを上下に仕切るようになっている。すなわち、この羽根車11は、吸込部27と吐出部28とがフランジ部40で仕切られたクローズタイプの羽根車である。
前記吸込部27の下端には、図2及び図3に示すように、下方に向かって開口した吸込口29が設けられている一方、前記吐出部28の上側には、上端壁30が形成されている。そして、その上端壁30の中心部には、前記駆動軸18の先端を挿入するための挿入穴32が形成されており、この挿入穴32の周囲には前記駆動軸18を取り付けるための取付部31が形成されている。
前記上端壁30の上面の一部(ここでは、上端壁30の半分で、羽根車11の重量が大きい側)には、図2に示すように、下方に窪んだ窪み33が形成されていて、これにより、前記羽根車11の全体の重量バランスを均一化し、回転の安定性を高めるようになっている。ただし、前記上端壁30の窪み33の大きさや形状は、何ら限定されるものではない。また、窪み33は必ずしも必要ではなく、該上端壁30の形状は特に限定されるものではない。例えば前記上端壁30の上面は面一であってもよい。
一方、前記羽根車11の吐出部28には、図6、図9及び図11に示すように、側方に向かって開口する吐出口34が形成されていて、羽根車11の内部には、図8〜図11に示すように、前記吸込部27の吸込口29から前記吐出口34に至る螺旋状の1次流路35(螺旋状流路)が区画形成されている。すなわち、前記吐出口34は、図11に示すように、前記螺旋状の1次流路35の延長方向に向かって開口するように形成されている。なお、本明細書では、この1次流路35を区画している区画壁を1次羽根36と称する。
また、前記吐出部28の外周面上の一部には、図3及び図5〜図11に示すように、その外周面に沿って延びるように内側に窪んだ2次流路37が形成されていて、この2次流路37は、前記吐出口34で前記羽根車11内に形成された前記1次流路35の下流側と連続するようになっている。そして、前記2次流路37は羽根車11の半周以上の長さにわたって吐出部28を周回し、図11に示すように、2次流路37の下流端は、吐出口34の近傍にまで延びるように形成されている。この2次流路37の長さは、半周以上且つ1周未満が好ましいが、特に限定されるものではない。
すなわち、前記2次流路37は、非螺旋状の流路であり、その流路中心は羽根車の軸線と直交する直交面上に位置している。この2次流路37を区画している区画壁を2次羽根38(羽根部)と称すると、該2次羽根38はいわゆる半径流形の羽根であり、この2次羽根38によって汚水は外周側(径方向外側)に吐出されることになる。
さらに、図11に示すように、2次羽根38の羽根出口角θ2は、1次羽根36の羽根出口角θ1よりも小さく設定されている。ここで、羽根出口角とは、羽根の出口側の先端と円周接線とのなす角で定義される。そして、前記羽根車11では、1次羽根36の出口側の先端(下流端)36Aが、2次羽根38の上流端と連続していて、1次羽根の出口端と2次羽根の入口端との境界部分が曲線で連続的に、すなわち1次羽根と2次羽根とが滑らかにつながるように形成されている。
なお、通常、羽根の設計の際には、羽根の曲線を表す所定の関数を用いることが多い。本実施形態では、1次羽根36と2次羽根38とが、異なる関数によって設計されている。
以上のような羽根車11の構成により、汚水は以下のように羽根車11の吸込口29から吸い込まれて外周側へ吐出されることになる。まず、水中ポンプ13によって羽根車11が回転し、この回転によって該羽根車11の1次羽根36が下側の吸込口29から汚水を上方へ吸い込む。そして、吸い込まれた汚水は該羽根車11内の螺旋状の1次流路35を通過して、吐出口34及び2次羽根38によって外周側に吐出される。
このように、羽根車11の吸込口29から吸い込んだ汚水を1次羽根36及び2次羽根38の両方で搬送することにより、吐出圧力を高めることができ、ポンプ効率を向上させることができる。また、吸込口29から吐出口34に至る1次流路35は滑らかな螺旋状に形成されているので、流路内のよどみ域は少なく、汚水は1次流路35内を円滑に流れる。そのため、汚水に含まれる夾雑物等の異物は、羽根車11の内部で詰まりにくい。したがって、異物の通過性を良好に保つことができ、通過性向上と効率向上との両立を図ることができる。
(ポンプケーシング)
次に、前記ポンプケーシング12の構造について以下で詳細に説明する。なお、図12は、流路50の内方に向かって突出する突出部12bの先端に所定の曲率半径を有するR部12cを形成した場合のポンプケーシング12の断面図(図1のXII−XII線断面図)である。
前記ポンプケーシング12は、図12に示すように、羽根車11を囲むように形成されたもので、該ポンプケーシング12の側壁12aと該羽根車11との間隔は、ボリュートの捲き始め部51側よりも捲き終わり部52側の方が大きくなるように形成されている。そして、その側壁12aと羽根車11の外周との間に形成された環状の空間(前記ポンプ室26の一部)が、該羽根車11の外周側に吐出された汚水をポンプケーシング12の吐出口24からポンプ外へ排出するための流路50を構成している。すなわち、該流路50は、羽根車11を中心としてボリュートと呼ばれる渦巻き状に形成されている。
このようなポンプケーシング12の構成により、上述のとおり、前記羽根車11から吐出された汚水が該ポンプケーシング12の側壁12aによって受け止められて、前記流路50を介して該ポンプケーシング12の吐出口24まで流れることとなる。
また、前記ポンプケーシング12の吐出部23には、前記流路50側の内面からボリュートの捲き終わり部52に向かって、すなわち、該流路50の内方に向かって突出するように舌部と呼ばれる突出部12bが形成されている。この突出部12bは、ボリュートの捲き終わり部52側と捲き始め部51側とを区分するものであり、これにより、羽根車11から吐出された汚水を効率良くポンプケーシング12の吐出口24へ流す一方、ボリュートの捲き終わり部52側から捲き始め部51側に流れる汚水の流量(前記羽根車11の周囲を再循環する再循環流量)を低減するようになっている。
ここで、ボリュートの捲き終わりとは、ポンプケーシング12内の流路50の方向が円周方向から径方向に変化する位置であり、捲き始めとは、前記突出部12bを挟んで前記捲き終わり位置とは反対側の位置である。すなわち、ボリュートの捲き始め位置は、通常、ポンプケーシング12と羽根車11の外周との間隔、すなわち前記流路50の幅が最小になっている部分である。
そして、本願発明の特徴部分であるが、図示の如く羽根車11の回転軸線方向で見て、前記突出部12bの先端には、R部12cが形成されていて、このR部12cの曲率半径は、前記羽根車11の出口径D2に対して0.04〜0.12倍の範囲内に設定されている。前記R部12cの曲率半径をこのような範囲内に設定した場合の効果については、後述の確認試験において詳細に説明するが、前記突出部12bの先端が鋭角になっている従来構造(図12に示す点線部分)に比べて、前記突出部12bに異物が引っ掛かり難くなるとともに、R半径のあまり大きくない上述の範囲内であれば、汚水が前記突出部12bに衝突した際に生じる衝突損失を極端に増大させることがないのに加えて、前記突出部12bと羽根車11との間隔はあまり拡がらず、上述の再循環流量を低減するという機能も損なわないため、ポンプ効率を極端に悪化させることがない。なお、ポンプ効率と異物の通過性との両立を考慮した場合、上述の範囲のうち最も好ましいのは、前記羽根車11の出口径D2に対して前記R部12cの曲率半径が略0.08倍の場合である。
しかも、前記R部12cの曲率半径を羽根車11の出口径D2に対する比で定義することによって、ポンプ内の汚水の流れは該ポンプのサイズとほぼ相似の関係にあることから、どのようなサイズのポンプでも、ポンプ効率を極端に悪化させることなく、異物の通過性を向上することができる。
また、前記突出部12bの先端にR部12cを形成することで、ポンプケーシング12を鋳造する際に、該突出部12bの先端側での割れが生じ難くなり、生産効率を向上することができる。
ここで、羽根車11の出口径D2とは、羽根車中心から羽根の下流端までの直線距離を2倍した値であり、本実施形態の羽根車11では、羽根車中心から2次羽根38の下流端までの直線距離を2倍した値に相当する。なお、本実施形態の場合、この値は、図11及び図12に示すように、羽根車11のフランジ部40の直径に等しい。
さらに、前記ポンプケーシング12は、ボリュートの捲き終わり部52から所定範囲において、流路50の幅、すなわち該流路50の断面積が上流側から下流側に向かって徐々に小さくなるように形成されている。こうすることで、前記流路50がボリュート捲き始め部51側から捲き終わり部52側に向かって徐々に大きくなっていく従来構造のもの(図12に示す点線部分)に比べて、ボリュートの捲き終わり部52付近での汚水の流れを速くすることができ、該捲き終わり部52付近での汚水の圧力上昇を抑えて、捲き始め部51との圧力差を小さくすることができる。
したがって、捲き終わり部52側から捲き始め部51側への汚水の再循環流量をさらに低減することができるため、前記突出部12bに異物がより詰まり難くなる。しかも、前記ポンプケーシング12のボリュートの捲き終わり部52から所定範囲の流路50の断面積だけを上流側よりも小さくすることで、或る程度、吐出圧を高めることができ、ポンプ効率を極端に悪化させることはない。
特に、前記流路50の断面積が小さくなり始める点を、ボリュートの捲き終わり部52から捲き始め部51側に向かって周方向に30度〜120度の範囲(図12に示す範囲α)内に設定した場合には、より効果的である。
(突出部先端のR部の効果の確認試験)
上述のように、ポンプケーシング12内の流路50の内方に向かって突出する突出部12bの先端に、所定の曲率半径を有するR部12cを形成した場合の効果を確認するために、以下のような確認試験を行った。なお、図14は、本確認試験を行うための試験装置Aの構成を示す概略構成図であり、図15及び図16は、それぞれ、流量に対する異物の通過率を示すグラフである。
確認試験は、図14に示す試験装置Aを用いて、異物が汚水処理用ポンプ10内を通過するかどうかを確認したものであり、該試験装置Aは、ポンプ10の下半部が水中に沈められる水槽60と、一端側が該ポンプ10の吐出部23に連結される一方、他端側が前記水槽60の側方から内方に向かって貫通し、該水槽60内で開口するように配設された配管61と、により構成される。なお、前記配管61には、該配管61内を流れる液体の圧力及び流量をそれぞれ計測するための圧力計62及び流量計63が配設されている。
また、前記ポンプ10は、流路50の断面積がボリュートの捲き始め側から捲き終わり側に向かって徐々に大きくなる従来構造のケーシングと、上述の羽根車11とを組み合わせたもので、突出部12bの先端に形成されるR部12cの曲率半径は、羽根車11の出口径D2に対して0.017〜0.089倍の範囲内とした。
上述のような構成の試験装置Aを用いて、以下の要領で確認試験を実施した。まず、前記水槽60内に2種類の異物(本確認試験では、Lサイズのストッキング、340mm×830mmのタオルを使用)をそれぞれ投入し、吸込口29からポンプ10内に吸い込ませる。その後、該ポンプ10内に吸い込まれた異物は、羽根車11内の螺旋状流路35を通り、吐出口34からポンプケーシング12の流路50内に排出され、該流路50内を通過した後、ポンプケーシングの吐出口24から前記配管61内に流れるため、異物がポンプ10内を通過したかどうかは、前記水槽60内に開口する前記配管61の他端側の吐出口61aから異物が排出されたかどうかにより確認することができる。なお、前記水槽60は、その下面が透明になっていて、異物が前記ポンプ10の羽根車11内を通過したかどうかを下方から確認できるようになっている。そのため、異物が羽根車11内を通過したのを確認した後、前記吐出口61aから異物が排出されなければ、前記ポンプケーシング12内で異物が詰まっていることになる。今回の確認試験では、異物が羽根車11内を通過した場合のみを評価の対象とする。
このようにして求められた異物の投入回数Nに対する前記ポンプ10の通過回数に基づいて、以下の算出式により異物の通過率αを評価した。
Figure 2005240766
ここで、βnは異物がポンプ10内を通過した回数を示し、1回で通過した場合にはβn=1、ポンプ10の再起動1回目で通過した場合にはβn=2/3、ポンプ10の再起動2回目で通過した場合にはβn=1/3、再起動2回で通過しない場合にはβn=0というように、ポンプ10の再起動回数によって通過回数の重み付けを行った。なお、ポンプ10の再起動とは、一旦、電源をOFF状態にした後、再度、ON状態にすることを意味しており、通常、ポンプ内で閉塞が生じた場合には、このような再起動を行うことによって、ポンプ内に逆流を生じさせて、閉塞を生じている異物が流れるようにしている。
上述の試験方法による試験結果を図15及び図16に示す。各図中において、Qは流量、Qnは最高効率点流量、rは舌部係数(r=R1/D2、R1は突出部12b先端のR半径、D2は羽根車11の出口径)を、それぞれ示す。
図15及び図16の試験結果より、前記突出部12bのR部12cの曲率半径が大きい(r=0.050及び0.089)場合には、R部12cの曲率半径が小さい場合(r=0.017)よりも異物の通過性が良いことが分かる。特に、ポンプ10内の流量Qが最高効率点流量Qnに等しい場合(Q/Qn=1)には、その傾向が顕著である。これにより、前記R部12cの曲率半径が羽根車11の出口径D2に対して0.04〜0.12倍の範囲内にあれば、ポンプケーシング12内に異物が詰まり難くなることが確認された。なお、流量Qが多い場合には、流れが速いため異物はほとんど通過してしまい、逆に流量Qが極端に少ない場合には試験時のばらつき等が大きいため、前記突出部12bのR部12cの曲率半径の影響を正確に確認することができなかった。
また、同一のポンプケーシング12に対して出口径D2の異なる2種類の羽根車11(出口径D2とR部12cの曲率半径との比は0.04〜0.12の間)を適用した場合についても確認試験を行ったが、その場合にも上述の試験結果と同様の結果が得られ(図示省略)、このことからも、突出部12bの先端に形成されるR部12cの曲率半径が、羽根車11の出口径D2に対して0.04〜0.12倍の範囲内であれば、異物の通過性が確実に向上することを確認できた。
一方、特に図示しないが、前記突出部12bのR部12cの曲率半径を変化させた場合のポンプ効率について確認したところ、今回の確認試験における突出部12bのR部12cの曲率半径の範囲(r=0.017〜0.089)内では、いすれの場合もほぼ同じぐらいの効率であった。このことから、R部12cの曲率半径がr=0.04〜0.12の範囲内でも、突出部12bの先端が鋭角になっている従来構造の場合のポンプ効率と同等かそれよりも若干低めになるものと考えられ、この範囲内でポンプ効率が極端に悪化することはない。
したがって、ポンプケーシング12内に形成される流路50の内方に向かって突出する突出部12bの先端に、羽根車11の出口径D2の0.04〜0.12倍の曲率半径を有するR部12cを形成することにより、先端が鋭角の場合に比べて、異物の通過性を向上することができる。しかも、R部12cの曲率半径が上述の範囲内であれば、ポンプ効率は、突出部12bの先端が鋭角の場合と同等かそれよりも若干低めになるだけで、極端に悪化することはない。
また、上述のように、前記突出部12bの先端に形成されるR部12cの曲率半径を羽根車11の出口径D2に対する比で定義することにより、その比が上述の範囲内にあれば、例えば、出口径D2の異なる羽根車11を同一のポンプケーシング12に適用した場合など、どのようなサイズのポンプであっても、上述の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
尚、本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、ボリュートの捲き終わり部52から所定範囲において、ポンプケーシング12内の流路50の断面積が上流側から下流側に向かって徐々に小さくなるようにしているが、これに限らず、図13に示すように、ボリュートの捲き終わり部52から所定角度まで、流路50の断面積が略一定になるようにしてもよい。この場合でも、流路50の断面積を所定範囲で小さくする場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、前記所定角度は、ボリュートの捲き終わり部52から捲き始め部51側に向かって周方向に30度〜210度の範囲内(図中のβの範囲)にするのが好ましい。
また、ポンプ10内の再循環流量の低減等の効果は期待できないが、前記ポンプケーシング12は、ボリュートの捲き始め部51から捲き終わり部52側に向かって流路50の断面積が徐々に大きくなる従来構造のものであってもよい。
さらに、前記実施形態では、ポンプケーシング12内の流路50の断面積が、上流側から下流側に向かって徐々に小さくなるようにしているが、これに限らず、一旦、該流路50の断面積が小さくなった後に、途中で該流路50の断面積が一定になるようにしてもよい。
さらにまた、前記実施形態では、螺旋状の流路35を区画形成する1次羽根36と外周面上に形成された2次羽根38とからなる羽根車11を用いるようにしているが、この限りではなく、どのようなタイプの羽根車を用いてもよい。
また、前記実施形態では、羽根車11は吸込口29が鉛直下向きに開口するような姿勢に設置されていたが、羽根車11の設置姿勢は何ら限定されない。例えば、吸込口29が横方向を向くように、羽根車11を横置き設置することも勿論可能である。前述の説明における上下方向は、説明の便宜上の方向であり、実際の設置方向を限定するものではない。
以上説明したように、本発明は、液体を搬送する液体ポンプにおいて、特に、夾雑物等を含んだ汚水を搬送する場合に有用である。
汚水処理用ポンプの断面図である。 羽根車を上方から見た斜視図である。 羽根車を下方から見た斜視図である。 羽根車の平面図である。 図4のD1方向矢視図である。 図4のD2方向矢視図である。 図4のD3方向矢視図である。 図5のVIII−VIII線断面図である。 図6のIX−IX線断面図である。 図7のX−X線断面図である。 図5のXI−XI線断面図である。 図1のXII−XII線断面図である。 他の実施形態に係る図12相当図である。 確認試験用の試験装置の構成を示す概略構成図である。 異物(ストッキング)の通過確認試験を行った場合の試験結果を示す図である。 異物(タオル)の通過確認試験を行った場合の図15相当図である。
符号の説明
10 汚水処理用ポンプ(液体ポンプ)
11 羽根車
12 ポンプケーシング
12b 突出部
12c R部
23 吐出部
24 吐出口
35 1次流路
36 1次羽根
37 2次流路
38 2次羽根
50 流路(排出流路)
51 捲き始め部
52 捲き終わり部
2 羽根車の出口径

Claims (3)

  1. 液体を外周側に吐出する羽根車と、該羽根車の外周を囲んで、吐出された流体を周方向に送り出すボリュート状の排出流路が形成されたポンプケーシングと、を備え、該ポンプケーシングには、ボリュートの捲き終わり部と捲き始め部とを区分するように、両者の間で前記排出流路の内方に向かって突出する突出部が設けられている液体ポンプであって、
    前記突出部の先端側には、前記羽根車の回転軸線の方向に見て、該羽根車の出口径に対して0.04倍から0.12倍の範囲の曲率半径を有するR部が形成されていることを特徴とする液体ポンプ。
  2. 請求項1において、
    排出流路は、ボリュートの捲き終わり部から捲き始め側に向かって連続する所定範囲内に、流路の断面積が上流側から下流側に向かって小さくなる部位を有することを特徴とする液体ポンプ。
  3. 請求項1において、
    排出流路は、ボリュートの捲き終わり部から捲き始め側に向かって周方向に所定角度までの断面積が略一定になっており、前記所定角度は、30度から210度の範囲内に設定されていることを特徴とする液体ポンプ。
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