近年、例えば記録媒体として光記録媒体を使用して、情報を記録又は再生を行なう分野においては、小型で大容量化の光記録再生装置の開発がなされている。大容量化を実現するために、光ヘッドから射出される光の短波長化と対物レンズの高NA(NA:開口数)化によるビームスポット径の縮小化の開発が進んでいる。
一般的に光記録媒体は、情報記録面が透明な光透過層で覆われており、記録時又は再生時にはその光透過層を介して光が照射される。光透過層は、光記録媒体製造時に情報記録面を形成させる基板である場合や、形成後の情報記録面を保護するカバー層である場合がある。
NAを大きくすると、対物レンズと基板との角度変化によるコマ収差が発生しやすくなる。この角度変化の原因には、光記録媒体自体の反り、光記録媒体を回転させるスピンドルモータの傾き、光ヘッドに搭載される対物レンズ駆動機構によって発生する傾き等があるが、量産性を保ってNA増加分に見合って角度精度を上げるのは困難である。
一方、対物レンズは、ある特定の光学的厚みの光透過層を介したときに、光記録媒体の情報記録面上に球面収差の少ないビームスポットを形成するように設計されるため、光透過層の厚さが設計時の想定光学的厚さに対して誤差を持つと球面収差が発生してしまう。この光透過層の厚さの誤差による球面収差もNAが大きくなるにつれ非常に大きくなり、光記録媒体の光透過層の光学的厚さ誤差の影響を無視できなくなってくる。
尚、光学的厚みとは、光が透過する光記録媒体の光透過層の厚みと屈折率によって決まるものであり、光記録媒体の光透過層の厚みが異なっても、光記録媒体の光透過層を通過させて生成したビームスポットの球面収差の大きさが一致する場合に光学的厚みが等しいとする。記録層が複数の層からなっている場合も、それぞれの光透過層の厚みと屈折率によって、光学的厚みが決まる。
光記録媒体の光透過層の厚さ変化によって発生する球面収差を補正する方法として、図27に示すような、板ばねを用いたアクチュエータが知られている(例えば特許文献1)。図27は、従来技術に係る板ばねを用いたアクチュエータの斜視図である。
同図に示すように、従来技術に係るアクチュエータは、球面収差補正用のレンズ1がレンズホルダ2に取り付けられている。レンズホルダ2には、コイル3がレンズ1の光軸を巻く方向に巻かれて取り付けられている。レンズホルダ2は、2枚の平行な板ばね4a、4bの一端で支持されている。2枚の平行な板ばね4a、4bの一端は、固定部材5によって固定され、他端は中間部材9により固定されている。また、板ばね4a、4bの反対側には、永久磁石6がコイル3と微小の間隔を持って設置されている。永久磁石6は、鋼板等の強磁性体からなるヨーク7に取り付けられ、ヨーク7がベース8に取り付けられている。また、永久磁石6は、コイル3に面する側が例えばN極となっており、図27において、矢印Aの方向に磁化している。ベース8と平行な板ばね4a、4bとはブロック10で固定されている。
そして、コイル3に電流を流すと、永久磁石6で発生した磁場中を電流が通過することになり、コイル3にローレンツ力が発生する。これによって、レンズホルダ2にはレンズ1の光軸方向に力が加わる。レンズホルダ2は平行な板ばね4a、4bで支持されているため、このローレンツ力によって板ばね4a、4bが撓み、レンズホルダ2は光軸方向に移動する。
このように、球面収差補正用のレンズ1を移動させることにより、対物レンズから光記録媒体に入射する光の球面収差を変化させ、光記録媒体で発生する球面収差を相殺していた。
この作用の詳細について、図31を参照しつつ説明する。図31(a)は、光記録再生装置の光記録媒体近傍の断面図であり、アクチュエータの長手方向(Y方向)からみた断面図である。光源(図示しない)から射出された光ビームは、レンズホルダ2内の球面収差補正用のレンズに入射し、球面収差補正用のレンズを透過して立ち上げミラー20によって反射されて対物レンズ22に入射する。そして、対物レンズ22によって光記録媒体23の情報記録面上に集光される。このとき、レンズホルダ2(球面収差補正用のレンズ)を光軸方向に移動させることにより、光記録媒体に入射する光ビームの球面収差を変化させて光記録媒体上での球面収差を相殺していた。
尚、板ばねを用いる利点として、光記録媒体に多層記録媒体を用いたときに、層間ジャンプ時の応答(動作)が速いことが挙げられる。更に、光記録媒体の基板の厚さの誤差分布が大きい光記録媒体に対して、フィードバック制御による駆動を行なう場合にも有利である。
しかしながら、図27に示すように、永久磁石6がレンズホルダ2の1面のみに設置されているため、コイル3の板ばね4a、4b側で発生するローレンツ力と、永久磁石6側で発生するローレンツ力との大きさと方向が異なってしまう。この従来技術の場合、永久磁石6側で発生するローレンツ力の方が板ばね4a、4b側で発生するローレンツ力よりも大きくなる。
このローレンツ力の差について具体的に説明する。図27に示すように、永久磁石6は矢印Aの方向に磁化している場合、コイル3の永久磁石6側での磁束密度は、コイル3の板ばね4a、4b側の磁束密度よりも大きくなる。このような状態で、コイル3に矢印Bの方向に電流を流すと、コイル3の永久磁石6側には、ベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)にローレンツ力が働き、コイル3の板ばね4a、4b側にはベース8に向かう方向(矢印Z2の方向)にローレンツ力が働く。コイル3の永久磁石6側での磁束密度は、コイル3の板ばね4a、4b側での磁束密度よりも大きいため、コイル3の永久磁石6側に働くローレンツ力は、コイル3の板ばね4a、4b側に働くローレンツ力よりも大きくなる。
このように、コイル3の永久磁石6側と板ばね4a、4b側とでは、互いに反対方向の力が働き、コイル3の永久磁石6側に働くローレンツ力の方が大きいため、レンズ1及びレンズホルダ2は、ベース8からは離れる方向(矢印Z1の方向)に移動する。
ところがローレンツ力の大きさが異なることにより、光軸方向への移動に伴ってレンズ1及びレンズホルダ2に傾きが生じると、レンズ1の光軸に対して角度がずれ、コマ収差や非点収差等の別の収差が発生してしまうという問題が発生する。従って、球面収差を相殺しようとしても、別の収差が発生することにより、光記録媒体の情報記録面上で収差の少ないビームスポットを生成することはできなかった。この問題について、図4を参照しつつ説明する。
図4は、アクチュエータの側面図であり、レンズホルダ2と、板ばね4a、4bと、固定部材5とが示されている。まず、コイル3に電流が流れていないときは、ローレンツ力は発生しないため、図4(a)に示すように、レンズホルダ2はレンズ1の光軸Oに対して平行状態を維持している。
そして、上述したように、コイル3に電流を流すと、コイル3の永久磁石6側には、ベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)にローレンツ力が働き、コイル3の板ばね4a、4b側にはベース8に向かう方向(矢印Z2の方向)にローレンツ力が働く。また、レンズホルダ2の永久磁石6側で発生するローレンツ力の大きさは、板ばね4a、4b側で発生するローレンツ力よりも大きくなる。その結果、図4(c)に示すように、板ばね4aの撓みの形状と板ばね4bの撓みの形状が異なり、レンズホルダ2に傾きが生じ、光軸Oに対して平行状態を維持することができず、コマ収差や非点収差等の収差が発生してしまう。
この問題を解決するため、図28乃至図30に示すように、レンズ1及びレンズホルダ2を両側から挟み込むように一対の永久磁石6を配置したアクチュエータが知られている(例えば、特許文献2)。図28は、従来技術に係るアクチュエータの斜視図であり、図29は、従来技術に係るアクチュエータの上面図であり、図30は従来技術に係るアクチュエータの側面図である。
図28乃至図30に示すように、アクチュエータの厚さ方向(図におけるX方向)の両側からレンズ1及びレンズホルダ2を挟みこむように、一対の永久磁石6を配置している。この一対の永久磁石6は、同じ極、例えばN極が対向するように配置されており、図28及び図29に示すように、矢印Aの方向に磁化している。
このような状態で、コイル3に矢印Bの方向に電流を流すと、コイル3の両辺に同じ大きさで、ベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)にローレンツ力が働く。このように、レンズ1及びレンズホルダ2の両側に永久磁石6を配置することにより、コイル3の両辺に同じ方向に、同じ大きさのローレンツ力を発生させることが可能となる。そのことにより、レンズ1及びレンズホルダ2を光軸方向に平行に移動させることができるため、光軸Oに対する角度ずれを抑えることができ、コマ収差や非点収差等の別の収差の発生を防止することが可能となる。
特開2003−45067号公報(段落[0026]−[0033]、第4図)
特開2003−115127号公報(第10図)
以下、本発明の実施形態に係る光ヘッド用のアクチュエータについて、図1乃至図26を参照しつつ説明する。
[第1の実施の形態]
本願発明の第1の実施形態に係るレンズ用のアクチュエータの構成及び作用について、図1乃至図3を参照しつつ説明する。図1は第1の実施形態に係るアクチュエータの斜視図であり、図2は第1の実施形態に係るアクチュエータの上面図であり、図3は第1の実施形態に係るアクチュエータの側面図である。
(構成)
図1乃至図3に示すように、第1の実施形態に係るアクチュエータは、球面収差補正用のレンズ1がレンズホルダ2の内部に樹脂で固定されて取り付けられている。レンズホルダ2は、導電性がなく軽量なPPS(ポリフェニレンサルファイド)、液晶ポリマー等からなる。
レンズホルダ2には、コイル3がレンズ1の光軸Oを含むように巻かれて取り付けられている。コイル3は、エナメル銅クラッドアルミ線等からなる。レンズホルダ2は、上下方向(Z方向)から平行な板ばね4a、4bで挟まれており、板ばね4a,4bの長手方向の一端で支持されている。尚、本実施形態においては、レンズ1の光軸Oを含むようにコイル3が巻かれて取り付けられているが、本願発明はそれに限られない。レンズ1の光軸Oを含まずに、光軸Oと平行な直線を含んで、レンズ1とは別に巻かれていて、レンズホルダ2と一体となっていても良い。
平行な板ばね4a、4bは、レンズホルダ2を支持している端の反対側の一端が、固定部材5によって固定されている。このとき、平行な板ばね4a、4bは、レンズホルダ2及び固定部材5を上下から挟むように樹脂で固定されている。また、平行な板ばね4a、4bは、XY平面から見ると、コの字型となっている。つまり、板ばね4a及び4bは、それぞれ互いに向かい合う2つの板ばねを有しており、互いに向かい合う2つの板ばねは固定部材5側で繋がっている。それら2つの板ばねでレンズホルダ2を上下から挟んで固定している。このように、コの字型となっているため、板ばね4a、4bのばね定数が小さくなり、同じ電圧を加えた場合であっても、感度が良くなり、可動範囲が広がる。
尚、コの字型形状の板ばね4a及び4bを用いずに、ただの4本の板ばねによりレンズホルダ2を上下から挟んでレンズホルダ2を支持することも可能である。しかしながら、薄い板ばねを用いるため、4本の板ばねがそれぞれ歪んだり、曲がったりするおそれがあり、形状の安定性に問題がある。本実施形態に係るアクチュエータのように、コの字状に向かい合う2つの板ばねを繋げれば、組み立てやすくなり、更に、板ばね4a及び4bが機能する際も一体になって動くので、形状の安定性が増す。
また、固定部材5には、導電性がなく軽量なPPSや液晶ポリマー等が用いられている。固定部材5はベース8に固定されているため、平行な板ばね4a、4bは固定部材5を介してベース8に取り付けられている。
尚、コイル3の両端はレンズホルダ2の上下面に樹脂で仮固定された後、平行な板ばね4a、4bに半田で固定される。このようにコイル3を平行な板ばね4a、4bに接続して、平行な板ばね4a、4bを電極として使用し、コイル3に電流を流す。
レンズホルダ2を間にして、板ばね4a、4bの反対側には、永久磁石6aがコイル3と微小の間隔を持って配置されている。また、板ばね4a、4bのコの字形状部には永久磁石6aと対になる永久磁石6bが配置されている。従って、永久磁石6aと永久磁石6bとで、板ばね4a、4bの長手方向(Y方向)からレンズホルダ2を挟み込んでいることになる。レンズホルダ2と永久磁石6aとの間の距離と、レンズホルダ2と永久磁石6bとの間の距離がと等しくなるように、永久磁石6aと永久磁石6bが配置されている。このように配置することにより、永久磁石6a及び6bは、レンズホルダ2の重心を中心として互いに点対称の位置に配置されることになる。また、永久磁石6aと永久磁石6bは、同じ極、例えばN極が対向するように配置されており、図1及び図2に示すように、矢印Aの方向に磁化している。更に、永久磁石6aの磁力と永久磁石6bの磁力は等しい。
永久磁石6a、6bは、ヨーク7がそれぞれ取り付けられ、ヨーク7はベース8に取り付けられている。ヨーク7には、軟磁性材料である軟鋼や鍛鉄等が用いられる。このように、磁性材料を用いることにより、永久磁石6a、6bとヨーク7との間で磁路を形成し、永久磁石6a、6bから発せられる磁束のアクチュエータ外への漏れを低減することができる。また、ヨーク7とベース8とを一体化させてもよい。つまり、ヨーク7とベース8とを同じ金属板で一体的に作製してもよい。このことにより、アクチュエータを構成する部品数を削減することができ、製造コストを削減することが可能となる。
(作用)
以上のような構成を有するアクチュエータによると、以下のような好適な作用を奏することが可能となる。まず、このアクチュエータを使用するために、平行な板ばね4a、4bの固定部材5側の端にリード線等を半田等で固定し、電気回路基板へ接続する。
そして、平行な板ばね4a、4bに電圧を印加することにより、コイル3に電流を流す。例えば、図2に示すように、矢印Bの方向に電流を流す。コイル3に流れる電流は、永久磁石6aと永久磁石6bとで発生した磁場中を通過することにより、コイル3にローレンツ力が発生する。
ここで、コイル3に発生するローレンツ力の方向と大きさについて説明する。図2に示すように、コイル3の永久磁石6a側にはベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)にローレンツ力が働く。また、コイル3の永久磁石6b側にもベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)にローレンツ力が働く。このように、コイル3の永久磁石6a及び6b側には、同じ方向(矢印Z1の方向)にローレンツ力が働くことになる。また、レンズホルダと永久磁石6aとの間の距離と、レンズホルダ2と永久磁石6bとの間の距離とが等しくなるように、永久磁石6a及び6bが配置されているため、コイル3の永久磁石6aと永久磁石6b側とには、同じ大きさのローレンツ力が発生することになる。
一方、コイル3において、永久磁石6a及び6bと直交する部分には、ベース8に向かう方向(矢印Z2の方向)にローレンツ力が発生する。永久磁石6a及び6bと直交する部分の磁束の向きは、アクチュエータの内側から外側に向かう方向となっているため、ベース8に向かう方向(矢印Z2の方向)にローレンツ力が発生する。従って、コイル3において、永久磁石6a及び6bと直交する部分には、永久磁石6a及び6b側の部分に発生するローレンツ力と反対の方向にローレンツ力が発生することになる。
しかしながら、コイル3において、永久磁石6a及び6bと直交する部分の磁束の大きさは、永久磁石6a及び6b側の部分の磁束の大きさよりも小さい。従って、コイル3において、永久磁石6a及び6bと直交する部分に発生するローレンツ力は、永久磁石6a及び6b側の部分に発生するローレンツ力よりも小さくなる。従って、レンズホルダ2には全体としてベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)に力が働くことになる。その結果、レンズホルダ2はベース8から離れる方向(矢印Z1の方向)に移動することになる。
そして、レンズホルダ2は平行な板ばね4a、4bで支持されているため、ローレンツ力によって板ばね4a、4bが撓み、レンズホルダ2は光軸方向に移動する。レンズホルダ2の2辺には同じローレンツ力が加わるため、レンズホルダ2はレンズ1の光軸Oと平行を保って光軸方向に移動する。この作用について、図4(b)を参照しつつ詳しく説明する。
図4(b)は、第1の実施形態に係るアクチュエータの側面図であり、レンズホルダ2と、板ばね4a、4bと、固定部材5とが示されている。コイル3に電流を流すと、レンズホルダ2の両側に同じ方向(矢印Z1の方向)に同じ大きさのローレンツ力が発生するため、モーメントの大きさが等しくなり、モーメントの釣り合いが取れる。つまり、コイル3に発生するローレンツ力の中心がレンズホルダ2の重心2bと実質的に一致し、レンズホルダ2の重心2bの周りのモーメントは「0」となる。そのことにより、図4(b)に示すように、板ばね4aの撓みの形状と板ばね4bの撓みの形状とが同じとなり、レンズホルダ2は光軸Oに対して平行状態を維持しながら上下に移動することとなる。
従って、光軸方向への移動に伴ってレンズホルダ2に傾きが生じて光軸Oに対して角度がずれることもないため、コマ収差や非点収差等の収差は発生することもない。
以上のように、球面収差補正用のレンズ1を光軸方向に移動させることにより、対物レンズから光記録媒体に入射する光の球面収差を変化させ、光記録媒体において発生する球面収差を相殺して、光記録媒体上で収差の少ないビームスポットを生成することが可能となる。そして、レンズホルダ2の2辺に同じローレンツ力を加えることにより、レンズホルダ2を光軸Oと平行を保って移動させることが可能となる。そのことにより、従来技術で発生していたコマ収差や非点収差等の別の収差の発生を抑制することが可能となり、他の収差を発生させることなく、光記録媒体上で収差の少ないビームスポットを生成することが可能となる。
尚、本実施形態においては、永久磁石6a及び6bを、レンズホルダ2の重心を中点として互いに点対称の位置に配置したが、本願発明はそれに限られない。永久磁石6a及び6bを非対称の位置に配置しても、磁場の分布や電流値を調整することにより、平行にレンズホルダ2を移動させることができる。
また、永久磁石6を板ばね4a、4bの長手方向から挟み込んでいるため、短手方向から挟み込む場合と比べて、アクチュエータの厚さを薄くすることが可能となる。そして、本実施形態のアクチュエータを備えることにより、光ヘッド及び光記録再生装置の厚さを薄くすることが可能となる。換言すると、レンズホルダ2を平行に移動させるために永久磁石を2つ配置したにもかかわらず、アクチュエータの厚さを薄くすることが可能となる。この効果について、図31を参照しつつ説明する
図31(a)は、光記録再生装置の光記録媒体近傍の断面図であり、光記録媒体23と、光記録媒体23上に光を集光させる対物レンズ22と、本実施形態に係るアクチュエータと、アクチュエータを収容するハウジング32と、立ち上げミラー20とが示されている。同図は、図1乃至図3において示されているアクチュエータの長手方向(Y方向)からみた断面図である。図31(b)は、上述したように従来技術に係るアクチュエータの断面図である。本実施形態に係るアクチュエータにおいては、永久磁石6はアクチュエータの長手方向(Y方向)に配置されているため、短手方向(X方向)に配置されている従来技術に係るアクチュエータと比較すると、アクチュエータの厚さは薄くなる。従って、アクチュエータが薄くなった分、従来技術と比較して、光記録再生装置を薄型化することが可能となる。
[第2の実施の形態]
本願発明の第2の実施形態に係るレンズ用のアクチュエータの構成及び作用について、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は第2の実施形態に係るアクチュエータの斜視図であり、図6は第2の実施形態に係るアクチュエータの上面図である。
(構成)
図5及び図6に示すように、第2の実施形態に係るアクチュエータは、第1の実施形態に係るアクチュエータとほぼ同じ構成を有しており、板ばね4a、4bの長手方向(Y方向)からレンズホルダ2を挟み込むように、一対の永久磁石6a、6bが配置されている。また、永久磁石6a及び6bは、同じ極、例えばN極が対向するように配置されている。しかしながら、第2の実施形態に係るアクチュエータは、板ばね4a及び4bの構造が異なり、その点が本実施形態の特徴となる。
本実施形態に係る板ばね4aは、互いに向かい合う2つの板ばねを有しており、更に、それら2つの板ばねは板ばね4cにより互いに繋がっている。板ばね4bも板ばね4aと同様に、互いに向かい合う2つの板ばねを有しており、それら2つの板ばねは板ばね4dにより互いに繋がっている。
このように、互いに向かい合う2つの板ばねを繋げることにより、組み立てやすくなり、更に、板ばね4a及び4bが機能する際も一体となって動くため、板ばね4a及び4bの形状の安定性が増す。
以上のような構成を有するアクチュエータによると、第1の実施形態に係るアクチュエータと同様に、レンズホルダ2の両側に永久磁石6を配置することで、レンズホルダ2を光軸Oと平行に保って移動させることが可能となる。また、永久磁石6を板ばね4a、4bの長手方向から挟み込んでいるため、アクチュエータの厚さを薄くすることが可能となる。
[第3の実施の形態]
本願発明の第3の実施形態に係るレンズ用のアクチュエータの構成及び作用について、図7乃至図9を参照しつつ説明する。図7は第3の実施形態に係るアクチュエータの斜視図であり、図8は第3の実施形態に係るアクチュエータの上面図であり、図9は第3の実施形態に係るアクチュエータの側面図である。
図7乃至図9に示すように、第3の実施形態に係るアクチュエータは、第1及び第2の実施形態に係るアクチュエータとほぼ同じ構成を有しており、板ばね4a、4bの長手方向(Y方向)からレンズホルダ2を挟み込むように、一対の永久磁石6a、6bが配置されている。また、永久磁石6a及び6bは、同じ極、例えばN極が対向するように配置されている。しかしながら、第3の実施形態に係るアクチュエータは、板ばね4a及び4bの構造が異なり、その点が本実施形態の特徴となる。
平行な板ばね4a、4bは、レンズホルダ2を支持している端の反対側の一端が、固定部材5によって固定されている。このとき、平行な板ばね4a、4bは、レンズホルダ2及び固定部材5を上下から挟むように樹脂で固定されている。更に、平行な板ばね4a、4bは、内部が除去された中抜き構造となっている。中抜きされているため、板ばね4a、4bのばね定数は、中抜きされていない状態と比較して小さくなる。そのことにより、同じ電圧を加えた場合であっても、中抜きされていない板ばねと比べて、感度が良くなり、可動範囲が広がる。また、板ばね4a及び4bは、中抜き構造となっているため、第1及び第2の実施形態に係るアクチュエータの板ばね4a、4bよりも更に形状の安定性が良くなる。
以上のような構成を有するアクチュエータによると、第1及び第2の実施形態に係るアクチュエータと同様に、レンズホルダ2の両側に永久磁石6を配置することで、レンズホルダ2を光軸Oと平行に保って移動させることが可能となる。また、永久磁石6を板ばね4a、4bの長手方向から挟み込んでいるため、アクチュエータの厚さを薄くすることが可能となる。
(実施例)
ここで、第3の実施形態に係るアクチュエータの動作について、更に、図10に示す具体例を挙げて説明する。図10は、第3の実施形態に係るアクチュエータの動作を示すグラフである。横軸は板ばね4a及び板ばね4bに印加する電圧値を示しており、縦軸はレンズホルダ2の移動量を示している。同図に示すように、電圧0[V]のときはレンズホルダ2の移動量は0[mm]であるが、電圧を印加することにより、レンズホルダ2が移動することが分かる。つまり、コイル3に電流を流すことにより、コイル3にローレンツ力が発生し、その結果、レンズホルダ2が移動することになる。例えば、電圧1.0[V]のときには、移動量は約0.5[mm]となる。また、電圧−1.0[V]のときには、移動量は約−0.7[mm]となり、電圧1.0[V]を印加した場合の移動方向と反対の方向にレンズホルダ2が移動することになる。このように、板ばね4a及び4bに電圧を印加してコイル3に電流を流すことにより、レンズホルダ2を移動させ、光記録媒体上で収差の少ないビームスポットを生成する。
[第4の実施の形態]
本願発明の第4の実施形態に係るレンズ用のアクチュエータの構成及び作用について図11及び図12を参照しつつ説明する。図11は第4の実施形態に係るアクチュエータの上面図であり、図12は第4の実施形態に係るアクチュエータの側面図である。
図11及び図12に示すように、第4の実施形態に係るアクチュエータは、第1乃至第3の実施形態に係るアクチュエータとほぼ同じ構成を有しており、板ばね4a、4bの長手方向(Y方向)からレンズホルダ2を挟み込むように、一対の永久磁石6a、6bが配置されている。また、永久磁石6aと永久磁石6bは、同じ極、例えばN極が対向するように配置されている。更に、板ばね4a及び4bは、第3の実施形態と同様に、内部が除去された中抜き構造となっている。しかしながら、レンズホルダ2の構造が異なり、その点が本実施形態の特徴となる。
本実施形態に係るレンズホルダ2には、上部かつ、板ばね4a、4bの長手方向(Y方向)で固定部材5の方向に突出した突出部2aが設けられている。突出部2aは、上下方向(Z方向)から2枚の平行な板ばね4a、4bで挟まれており、板ばね4a、4bの一端で支持されている。また、レンズホルダ2の上部は、中空になっており、内部にレンズ1が固定されている。コイル3は、レンズホルダ2の下部に取り付けられており、レンズ1の光軸Oを巻く方向に巻かれている。
そして、板ばね4a、4bの長手方向(Y方向)からレンズホルダ2の下部を挟み込むように、一対の永久磁石6が配置されている。板ばね4a、4bは永久磁石6bの上方を越えて、その一端がレンズホルダ2に設けられた突出部2aに固定されており、他端が固定部材5に固定されている。従って、第3の実施形態と異なり、永久磁石6bは、板ばね4a、4bの中抜き部分に通されておらず、板ばね4a、4bの下方に配置されている。
以上のような構成を有するアクチュエータによると、第1乃至第3の実施形態に係るアクチュエータと同様に、レンズホルダ2の両側に永久磁石6を配置することで、レンズホルダ2を光軸Oと平行を保って移動させることが可能となる。
また、永久磁石6を板ばね4a、4bの長手方向から挟み込んでいるため、アクチュエータの厚さを薄くすることが可能となる。更に、永久磁石6bは板ばね4a、4bの下方に配置されており、中抜き部分を通して配置されていないため、第3の実施形態よりも更にアクチュエータの厚さを薄くすることが可能となる。
その理由について詳しく説明する。第3の実施形態に係るアクチュエータの場合、板ばね4a、4bの中抜き部分を通して永久磁石6bを配置しているため、板ばね4a、4bの短手方向(X方向)の幅は、永久磁石6bの幅よりも広くする必要がある。つまり、板ばね4a、4bの幅は、永久磁石6bを通すための中抜き部分の幅と、板ばね4a、4bの縁部分の幅との合計となる。
一方、第4の実施形態に係るアクチュエータの場合、中抜き部分を通して永久磁石6bを配置する必要がないため、板ばね4a、4bの幅を、永久磁石6bの幅と同じ広さ、更に永久磁石6bの幅よりも狭くすることができる。
更に具体的に説明する。例えば、永久磁石6bの幅(X方向の幅)をd1とする。第3の実施形態に係るアクチュエータの場合、中抜き部分の幅をd1より広くする必要があり、更に、その幅に板ばね4a、4bの縁部分の幅を加えた広さが、板ばね4a、4bの幅となる。つまり、第3の実施形態に係るアクチュエータの板ばね4a、4bの幅は、「中抜き部分の幅(>d1)+板ばね4a、4bの縁部分の幅」となる。
一方、第4の実施形態に係るアクチュエータの場合、中抜き部分に永久磁石6bを通さないため、板ばね4a、4b自体の幅を永久磁石6bの幅と同じd1まで狭めることができる。更に、板ばね4a、4bの幅は永久磁石6bの幅に依存しないため、板ばね4a、4bの幅をd1より狭くしても良い。従って、本実施形態においては、板ばね4a、4bの幅をd1以下にすることができる。
第4の実施形態に係るアクチュエータの場合、その厚さを永久磁石6の幅まで薄くすることができるので、光ヘッド及び光記録再生装置の厚さを更に薄くすることが可能となる。
尚、本実施形態においては、板ばね4a、4bは中抜きされているが、永久磁石6bを中抜き部分に通す必要がないため、中抜きがない状態であっても構わない。
[第5の実施の形態]
本願発明の第5の実施形態に係るレンズ用のアクチュエータの構成及び作用について図13乃至図15を参照しつつ説明する。図13は第5の実施形態に係るアクチュエータの上面図であり、図14は第5の実施形態に係るアクチュエータの側面図であり、図15は第5の実施形態に係るアクチュエータの正面図である。
第5の実施形態に係るアクチュエータは、第3の実施形態に係るアクチュエータとほぼ同じ構成をなしているが、固定部材5の構成が異なっている点が特徴となる。
(構成)
図13乃至図15に示すように、固定部材5には、レンズ1の光軸Oと平行(図13乃至図15におけるZ方向)に、2つの穴(又はねじ穴)が形成されており、ベース8にも固定部材5の穴の位置に対応して、固定部材5の穴よりも径が小さい2つのねじ穴が形成されている。更に、固定部材5には、ベース8側の面に板ばね4a、4bの長手方向に向けて溝14aが形成されており、ベース8にも固定部材5の溝14aの位置に対応して、溝14bが形成されている。
固定部材5の2つの穴(又はねじ穴)には、それぞれ、ねじ11が通されており、更に、ねじ11は、ベース8の穴に通されている。また、ねじ11の片方にはばね12が通されている。また、ベース8の溝14bにシャフト13が固定されており、そのシャフト13を介して固定部材5がベース8の上に設置されている。従って、固定部材5はシャフト13を支点として、ねじ11によってベース8に固定されている。尚、ねじ11、ばね12及びシャフト13が本願発明の「第1の角度調整手段」に相当する。
(作用)
以上のような構成を有するアクチュエータによると、以下のような好適な作用を奏することができる。図15に示すように、シャフト13を軸として、ばね12が通されていない方のねじ11を回すことにより、固定部材5の板ばね4a、4bの短手方向に対する傾き(図13乃至図15において、X方向に対する傾き)を調整する。つまり、ばね12が通されていない方のねじ11を回して固定部材5を締め付けたり、緩めたりすることにより、レンズホルダ2とベース8とが平行となるように固定部材5の角度を調整する。レンズ1は、レンズ1の光軸Oがレンズホルダ2と直交するようにレンズホルダ2に取り付けられているので、レンズホルダ2とベース8とを平行にして、光軸Oがベース8と直交するように、板ばね4a、4bの短手方向(X方向)の角度調整を行なう。
以上のように、固定部材5にねじ11とばね12を設けることにより、板ばね4a、4bの短手方向(X方向)の角度調整を行なうことが可能となる。そのことにより、板ばね4a、4bをレンズホルダ2や固定部材5に取り付けるときに発生し得るひねり、曲がり又は傾き等によるレンズホルダ2の傾きを補正(調整)することができるため、コマ収差や非点収差等の収差の発生を抑制することが可能となる。
尚、本実施形態においては、溝14a、14bを形成してその溝14a、14bにシャフト13を設け、そのシャフト13を支点して角度調整をしたが、例えば、ベース8に突起を設け、その突起を支点として角度調整をしてもよい。
[第6の実施の形態]
本願発明の第6の実施形態に係るレンズ用のアクチュエータの構成及び作用について図16乃至図19を参照しつつ説明する。図16は第6の実施形態に係るアクチュエータの斜視図であり、図17は第6の実施形態に係るアクチュエータの上面図であり、図18及び図19は第6の実施形態に係るアクチュエータの側面図である。
第6の実施形態に係るアクチュエータは、第5の実施形態に係るアクチュエータと同様に、固定部材5に角度調整手段としてのねじ11、ばね12及びシャフト13が設けられており、更に、ベース8にも角度調整手段が設けられている点が特徴である。
(構成)
図16及び図18に示すように、本実施形態に係るヨーク7は、コの字型の構造をなしている。つまり、永久磁石6a側のヨークと永久磁石6b側のヨークとは、ベース8の上に設置されているヨークを介して繋がっている。
また、図16及び図19に示すように、ベース8にはレンズホルダ2の位置に対応して、側壁15が設けられている。この側壁15は、ベース8の短手方向(図におけるX方向)からレンズホルダ2と面するようにベース8に設けられており、側壁15には穴15aが形成されている。この側壁15が本願発明の「第2の角度調整手段」に相当する。
更に、本実施形態のアクチュエータを収容するハウジング(図示しない)には、側壁15の穴15aに嵌るピンが設けられている。そして、穴15aにピンを嵌めて穴15aを軸としてアクチュエータを回転させることにより、ベース8とハウジングとの間でベース8の長手方向(Y方向)の角度を調整することが可能となる。尚、側壁15にピンを形成し、ハウジングにそのピンが嵌る穴を形成してもよい。そのような構造であっても、ピン(穴)を軸としてアクチュエータを回転させることにより、Y方向の角度を調整することができる。
また、角度調整によるレンズ1に対する光軸ずれを小さくするために、角度調整の中心は、レンズ1の前側主点と後側主点との間、若しくは主点近傍であることが望ましい。
尚、本実施形態に係るアクチュエータの場合、ベース8に設けられた側壁15による磁場への影響を防止するため、ベース8及び側壁15の材質はAl(アルミニウム)合金等の非磁性材料にする。このように、ベース8を非磁性材料で構成すると、磁性材料からなるヨーク7と一体化させることができない。そのため、ヨーク7は上記のように、コの字型の形状をなしており、各永久磁石6a、6bに接しているヨーク7が互いに磁気的に繋がるようにしている。
以上のように、固定部材5にねじ11とばね12とを設けるとともに、ベース8に側壁15を設けることにより、板ばね4a、4bの短手方向の角度調整を行なうとともに、ベース8とハウジングとの間で、板ばね4a、4bの長手方向の角度調整を行なうことが可能となる。そのことにより、板ばね4a、4bをベース8に取り付けるときに発生し得るひねり、曲がり又は傾き等を抑えることができ、コマ収差や非点収差等の収差の発生を抑制することが可能となる。
また、アクチュエータから磁束が漏れるのを軽減するために、ヨーク7の上に別のヨークを設置してもよい。例えば、図20に示すように、レンズ1の位置に対応して穴7bが形成された補助ヨーク7aを用いる。この補助ヨーク7aをヨーク7の上に設置し、永久磁石6から出る磁束がアクチュエータの外に漏れるのを軽減する。レンズ1から出射される光は、補助ヨーク7aの穴7bを通過してアクチュエータの外に出射することとなる。尚、図17乃至図19には、補助ヨーク7aが設置されたアクチュエータが示されている。
[第7の実施の形態]
本願発明の第7の実施形態として、本願発明のアクチュエータを備えた光ヘッド及びそれを備えた光記録再生装置の光学系の構成及び作用について、図21及び図22を参照しつつ説明する。図21は、第7の実施形態に係る光記録再生装置の光学系を示す側面図であり、図22は、第7の実施形態に係る光記録再生装置の光学系を示す上面図である。尚、本実施形態では光再生装置として説明する。
図21及び図22に示すように、光源16を発した光ビームは回折格子17に入射し、回折格子17においてトラッキングエラー信号生成用の3ビームに分けられる。回折格子17を透過した光ビームはコリメートレンズ18に入射して平行光とされ、ビームスプリッタ19にP偏光として入射する。ビームスプリッタ19はP偏光を90%程度透過させ、10%程度反射させるようになっている。
ビームスプリッタ19を透過した光ビームは、球面収差補正用エキスパンダ29で球面収差が可変とされる。そして、立ち上げミラー20により光路が曲げられて1/4波長板21に入射する。この1/4波長板21を透過する際に光ビームは円偏光とされ、対物レンズ22に入射する。球面収差補正用エキスパンダ29は、球面収差補正用レンズ29aと球面収差補正用レンズ29bとからなり、ここでは、球面収差補正用レンズ29bが球面収差補正用レンズのアクチュエータ31に搭載されている。このアクチュエータが本願発明のアクチュエータに相当する。
対物レンズ22において光ビームは集束光とされ、光記録媒体23の情報記録面上の情報記録トラック上に集光される。対物レンズ22は、光記録媒体23に対して少なくともフォーカシング方向及びトラッキング方向に移動可能な対物レンズアクチュエータ24に搭載されている。
光記録媒体23の情報記録面で反射された光は対物レンズ22を透過し、1/4波長板21において1/4波長板21までの往路と直交する方向の直線偏光に変換される。そして、立ち上げミラー20で反射されてビームスプリッタ19にS偏光として入射する。ビームスプリッタ19は、S偏光を100%程度反射する。そして、反射された光ビームは凸レンズ25において集束光とされ、アナモフィックレンズ26においてフォーカスエラー信号生成用の非点収差が付与される。その後、受光素子27に入射し、受光素子27の受光部において電気信号に変換される。
この電気信号は変調/復調回路(図示しない)に送られ、そこで復調されて情報信号として外部に出力される。この動作により光情報媒体23に記録された情報信号の再生が行なわれる。
尚、往路光学系においてビームスプリッタ19で反射された10%程度の光ビームは、フロントモニタ用受光素子28に入射する。そして、フロントモニタ用受光素子28の受光部により光源16の出力モニタ用の電気信号に変換され、その電気信号は光源16の出力のフィードバック制御に用いられることとなる。
また、光記録媒体23として多層記録媒体を用いる多層記録媒体用光記録再生装置に本願発明のアクチュエータを備えてもよい。この多層記録媒体用光記録再生装置においては、上記で説明した光記録再生装置が有する機能の他、光ヘッドに含まれる対物レンズの結像位置を他の層に移動させるフォーカスジャンプ機能や、球面収差補正を行なう球面収差補正機能が備えられている。例えば2層の光記録媒体の場合、1層目から2層目に再生位置を切り替えるときに、フォーカスジャンプ機能は、光ヘッドに含まれる対物レンズの結像位置を1層目から2層目へと移動させる。また、焦点が2層目にあるとき、媒体中を通過する光の光路長が1層目よりも厚くなるため、単層の光記録媒体よりも大きい球面収差補正を必要とし、球面収差補正機能がその球面収差補正を行なう。
[第8の実施の形態]
本願発明の第8の実施形態として、本願発明のアクチュエータを備えた光ヘッド及びそれを備えた別の光記録再生装置の構成及び作用について図23及び図24を参照しつつ説明する。図23は、第8の実施形態に係る光ヘッド及び光記録再生装置の光学系を示す側面図であり、図24は、第8の実施形態に係る光ヘッド及び光記録再生装置の光学系を示す上面図である。尚、本実施形態では光再生装置として説明する。
図23及び図24に示すように、光源16を発した光ビームは回折格子17に入射し、回折格子17においてトラッキングエラー信号生成用の3ビームに分けられる。回折格子17を透過した光ビームはビームスプリッタ19にP偏光として入射する。ビームスプリッタ19はP偏光を90%程度透過させ、10%程度反射させるようになっている。
ビームスプリッタ19を透過した光ビームは、コリメートレンズ30により略平行光とされるが、更にこのコリメートレンズ30がアクチュエータ31によって光軸方向に移動することにより、光学系全体での球面収差量が可変とされている。このように、本実施形態においては、コリメートレンズ30を動かすことで球面収差の補正が可能となっている。そのことにより、光学素子数を削減し、製造コストの削減を図ることができる。そして、立ち上げミラー20により光路が曲げられて1/4波長板21に入射する。この1/4波長板21を透過する際に光ビームは円偏光とされ、対物レンズ22に入射する。
対物レンズ22において光ビームは集束光とされ、光記録媒体23の情報記録面上の情報記録トラック上に集光される。対物レンズ22は、光記録媒体23に対して少なくともフォーカシング方向及びトラッキング方向に移動可能な対物レンズアクチュエータ24に搭載されている。
光記録媒体23の情報記録面で反射された光は対物レンズ22を透過し、1/4波長板21において1/4波長板21までの往路と直交する方向の直線偏光に変換される。そして、立ち上げミラー20で反射されてコリメートレンズ30に入射する。コリメートレンズ30において集束光とされ、アナモフィックレンズ26においてフォーカスエラー信号生成用の非点収差が付与される。その後、受光素子27に入射し、受光素子27の受光部において電気信号に変換される。
尚、往路光学系においてビームスプリッタ19で反射された10%程度の光ビームは、フロントモニタ用受光素子28に入射する。そして、フロントモニタ用受光素子28の受光部により光源16の出力モニタ用の電気信号に変換され、その電気信号は光源16の出力のフィードバック制御に用いられることとなる。
以上のように、コリメートレンズを動かすことで球面収差の補正が可能となり、光学素子の数を減らし、装置のコストを削減することが可能となる。
[第9の実施の形態]
本願発明の第9の実施形態として、本願発明のアクチュエータを備えた光記録再生装置の構成について図25を参照しつつ説明する。図25は、第9の実施形態に係る光記録再生装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る光記録再生装置40は、チャッキング手段(図示しない)によりスピンドルモータ49にチャッキングされた光記録媒体23に、情報の記録を行ったり、光記録媒体23から情報の再生を行ったりする。光ヘッド41は、スライダ機構を備えたシャーシ(図示しない)に設けられており、粗動モータ48で光記録媒体23の径方向に移動可能となっている。
光ヘッド41から出力された電気信号は、信号演算部42に入力され、信号演算部42はその電気信号の演算、増幅を行なう。尚、この信号演算部42を光ヘッド41に搭載してもよい。また、コントローラ43内には、フォーカスサーボ追従回路、トラッキングサーボ追従回路、レーザコントロール回路が含まれており、光ヘッド41及びスピンドルモータ49の動作を制御する。これらの回路は物理的な回路ではなく、コントローラ43内で実行されるソフトウェアであってもよい。そして、コントローラ43では、光ヘッド41からの電気信号に基づいて、データ再生信号の他、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等のサーボ信号の算出が行なわれる。尚、コントローラ43が本願発明の「算出手段」に相当する。データ再生信号は、図示しないデジタル信号処理回路により、波形等化、波形整形が行われ、その後、図示しないD/Aコンバータでアナログ信号とされて出力される。情報の記録を行う場合は、記録データをレーザ駆動信号に変換し、レーザ駆動回路44により光ヘッド21にレーザ駆動信号を供給してデータの記録を行う。
アクチュエータ駆動回路45は、フォーラスエラー信号やトラッキングエラー信号等を受けて、光ヘッド41の対物レンズのフォーカス位置制御及びトラッキング位置制御を行なう。更に、球面収差補正レンズ用のアクチュエータの位置制御を行なう。このアクチュエータ駆動回路45が本願発明の「制御手段」に相当する。また、スピンドルモータ駆動回路47は、スピンドルモータ49を駆動し、光記録媒体23の回転制御を行ない、粗動モータ駆動回路46は、粗動モータ48を駆動して光ヘッド41を光記録媒体23の半径方向に移動させる。また、レーザ駆動回路44は光ヘッド41にレーザ駆動信号を供給し、光ヘッド41の光源の出力を制御する。尚、このレーザ駆動回路44を光ヘッド41に搭載してもよい。
更に、本実施形態の光記録再生装置40は、装置全体を制御するCPU、メモリ、外部と信号の送受信を行なうインターフェイス等を有している。
ここで、図26を参照しつつ球面収差補正レンズ用のアクチュエータの制御について詳しく説明する。図26は、アクチュエータのレンズホルダ2の側面図である。このアクチュエータには、第1乃至第5の実施形態に係るアクチュエータが用いられる。
同図に示すように、レンズホルダ2の表面に遮光板51が取り付けられており、レンズホルダ2と一体となって動くようになっている。また、その遮光板51の位置に対応して、フォトインタラプタ52が、アクチュエータを格納するハウジング(図示しない)又はアクチュエータのベース8に取り付けられている。フォトインタラプタ52は、遮光板51が挿入される挿入部53を有している。その挿入部53には、光を発光する発光部54が設けられており、その発光部54から発せられた光を受光する受光部55が、発光部54に向かい合って設置されている。
そして、レンズホルダ2の移動とともに遮光部51が移動し、発光部54と受光部55との間に遮光板51が挿入されることになる。発光部54と受光部55との間に遮光板51が挿入されると、発光部54から受光部55に到達する光量が変化する。
受光部55は光記録再生装置40のコントローラ43に接続されており、受光部55が受光した光量に応じた信号がコントローラ43に出力される。コントローラ43は、受光部55からの信号を受けてレンズホルダ2の位置を算出する。そして、予めメモリ(図示しない)に記憶させておいた目標とする位置と、受光部55から受けた信号から算出した位置との差を比較し、目標位置にレンズホルダ2を動かすようにアクチュエータ駆動回路45に信号を出力する。アクチュエータ駆動回路45は、コントローラ43からの信号を受けてレンズホルダ2に取り付けられているコイル3に流すべき電流の量を調整する。そして、レンズホルダ2を目標位置に留めておくように、コイル3に電流を流し、フィードバック制御を行なう。
次に、具体例について説明する。ここで、レンズホルダ2のフルストローク(レンズホルダ2の最下位置から最上位置までの距離)を「1」とした場合、レンズホルダ2の最下位置から目標位置までの距離をMとし、レンズホルダ2の最下位置から検出位置までの距離をXとする。また、レンズホルダ2を最上位置に移動させるためにコイル3に流す電流値をItとし、レンズホルダ2を最下位置に移動させるためにコイル3に流す電流値をIbとする。また、レンズホルダが検出位置Xにあって、受光部55で発光部54からの光を受光したときに、受光部55から出力される電流の値をIxとし、レンズホルダ2が目標位置Mにあって、受光部55で発光部54からの光を受光したときに、受光部55から出力される電流の値をImとする。
このように、位置及び電流値を定義すると、目標位置M及び検出位置Xは以下の式で表される。
検出位置X=(Ix−Ib)/(It−Ib)
目標位置M=(Im−Ib)/(It−Ib)
上記の式から、検出位置Xのときに受光部54から出力される電流値Ix及び目標位置Mのときに受光部54から出力される電流値Imが導かれ、以下の式で表される。
Ix=X(It−Ib)+Ib=X×It+(1−X)Ib
Im=M(It−Ib)+Ib=M×It+(1−M)Ib
レンズホルダ2の位置Xを常に目標位置Mにするために、受光部の出力電流IxがImとなるように、コントローラ43がアクチュエータ駆動回路45に信号を送信する。そして、アクチュエータ駆動回路45が目標電流Imだけコイル3に電流を流す。このようにコイル3に電流を流すことにより、レンズホルダ2の位置を制御し、光記録媒体上で収差の少ないビームスポットを生成する。
また、遮光板51の代わりに反射板をレンズホルダ2に取り付け、発光部54から発光された光を反射板で反射して受光部55でその反射光を受光するようにしても良い。
尚、光記録再生装置として説明したが、光信号の再生を専用に行う光再生装置であってもよい。