以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された下引層と、該下引層上に形成された感光層とを備える。上記下引層は、以下に説明する特定の複合金属酸化物粒子を含有する。
先ず、本発明に係る複合金属酸化物粒子について説明する。複合金属酸化物粒子は、第1の金属酸化物を主成分とする粒子(以下、場合により「基材粒子」という)の表面上に第2の金属酸化物を主成分とする層を有する粒子であり、第2の金属酸化物を主成分とする層は基材粒子の表面全体を覆っていることが好ましい。なお、第2の金属酸化物を主成分とする層は、均一な膜厚を有していることが好ましいが、局所的に膜厚の厚い部分があってもよい。
複合金属酸化物粒子は、基材粒子の表面を各種の方法で処理することにより得ることができる。基材粒子としては、市販されている一般的な金属酸化物粒子を利用することができる。なお、基材粒子としては、電子写真特性に影響を与える電気特性に優れるものが好ましい。
基材粒子としては、具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化アルミニウム等の金属酸化物を主成分とするものが好ましく、これらの1種の材料からなるものがより好ましい。これらの中でも、酸化チタンが電気特性の点から特に好ましい。酸化チタンには、結晶構造上、ルチル型及びアナタース型、並びに非晶質のものがあるが、何れのものでも好適に利用することができる。
基材粒子の平均粒径は、200nm以下であることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。平均粒径が、10nm以下であると複合金属酸化物粒子とした場合に、下引層中に分散させることが困難となり、電気特性等の改善が不十分となる傾向がある。他方、200nmを越えると、複合金属酸化物粒子とした場合に下引層中にそれがリークポイントとなりやすく、良好な画像を得ることが困難となる傾向がある。
基材粒子の粒径は、BETによる方法や遠心沈降による粒度分布測定から得られるD50等の一般的な方法により求めることができる。なお、BET法とは粒子にガスを吸着させ、吸着させたガスの減量から粒子の持つ比表面積を求める方法である。BET比表面積をS(m2/g)とし、粒子の比重をρとすると、粒子の比表面積径(BET径(μm))は、6/(S・ρ)から求めることができる。この場合、粒径は粒子が球形であるとの仮定に基づいた粒径を示すため、球形に近い粒子ほど走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いた顕微鏡像で観察した粒径とほぼ近い値が得られる。
基材粒子の表面を処理する方法としては、例えば、上記第1の金属酸化物を主成分とする粒子の表面を有機金属化合物を用いて又は硫酸塩を用いて処理する方法が挙げられる。なお、かかる表面処理に用いる有機金属化合物や硫酸塩の金属の種類は、複合金属酸化物粒子の電気特性をさらに向上させる観点から、基材粒子の金属と異なる種類のものが選択される。
有機金属化合物を用いた表面処理としては、有機金属化合物を含む溶液を基材粒子の表面に塗布し、その有機金属化合物に含まれる金属の酸化物(第2の金属酸化物)からなる皮膜を基材粒子上に形成する表面処理方法が挙げられる。より具体的には、先ず、有機金属化合物を溶媒に添加し、所定量の有機酸を添加して表面処理用溶液を調製する。次に、この表面処理用溶液を基材粒子表面に塗布して乾燥する。そして、その基材粒子を焼成することで、第2の金属酸化物を主成分とする層が基材粒子上に形成する(例えば、特開昭58−156533号公報参照)。
表面処理用溶液に添加する有機金属化合物としては、通常使用されるものが使用できる。有機金属化合物としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機錫化合物、有機鉄化合物、有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらの中でも、有機亜鉛化合物が好ましく、ジエトキシ亜鉛、ジブトキシ亜鉛等がより好ましい。
硫酸塩を用いた表面処理としては、先ず、基材粒子の溶液(例えば、基材粒子の懸濁液)に硫酸塩を添加して混合し、その溶液を中和する。得られた溶液をフィルタリングして基材粒子を分離し、その基材粒子を洗浄して加熱する。このようにして、第2の金属酸化物を主成分とする層が基材粒子上に形成する(例えば、資源・素材学会誌107(1991)No.12、P914参照)。硫酸塩としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸錫、硫酸鉄、硫酸アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、硫酸亜鉛がより好ましい。
本発明に係る複合金属酸化物粒子においては、第2の金属酸化物が酸化亜鉛であることが好ましい。複合金属酸化物粒子が酸化亜鉛を主成分とする層を有する場合には、その複合金属酸化物粒子は、その粒子表面における電荷注入性等の特性が特に優れている。第2の金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、複合金属酸化物粒子の基材粒子の金属と、亜鉛との元素比は、7:3〜9:1であることが好ましい。この元素比により、複合金属酸化物における酸化亜鉛の被覆率が推定される。この元素比は、蛍光X線測定により求めることができる。具体的には、校正用サンプルからそれぞれの元素からのピーク強度比を得て検量線を作成し、それから複合金属酸化物粒子の基材粒子に含まれる金属と亜鉛との元素比を測定する。また、第2の金属酸化物が酸化亜鉛である場合には、優れた電荷注入性等の特性により、電子写真特性が好適に制御されて画質欠陥が抑制されることから、その体積抵抗率を所定の値に制御することは特に必要とされない。
本発明に係る複合金属酸化物粒子は、以上説明した構成を有するものであり、その体積抵抗率(Ω・cm)が所定の値に制御されたものである。体積抵抗率を制御する際には、先ず、複合金属酸化物粒子の体積抵抗率に対する所定のパラメータを設定する。パラメータとしては、例えば、複合金属酸化物粒子における第1の金属と第2の金属との元素比、複合金属酸化物粒子における基材粒子の平均粒径と第2の金属酸化物を主成分とする層の膜厚との関係がある。
次に、体積抵抗率と、所定のパラメータとの相関を求める。その相関は、例えば、体積抵抗率をY軸にとり、所定のパラメータをX軸にとって、グラフを作成するなどして求めることができる。その相関に基づき、所定の体積抵抗率となるように複合金属酸化物粒子は作製される。例えば、所定のパラメータを複合金属酸化物粒子における第1の金属と第2の金属との元素比とした場合、体積抵抗率とその元素比との相関を求め、その体積抵抗率が所定の値となるように複合金属酸化物粒子の元素比を設定する。そして、複合金属酸化物粒子の元素比が設定された条件を満たすように、作製の際の基材粒子の粒径や表面処理の際に用いる溶液の配合比などの条件を調整して、複合金属酸化物粒子は作製される。
なお、体積抵抗率は、第1の金属酸化物の体積抵抗率と、第2の金属酸化物の体積抵抗率との間の値となるように調整されることが好ましい。さらに、複合金属酸化物粒子では、その体積抵抗率は第1の金属酸化物を主成分とする粒子で主に調整し、電荷注入性などの特性は第2の金属酸化物を主成分とする層で調整することが好ましい。
複合金属酸化物粒子として、例えば、第2の金属酸化物が酸化チタンの場合、その体積抵抗率は、104〜1010Ω・cmに制御されることが好ましく、105〜108Ω・cmに制御されることがより好ましい。また、第2の金属酸化物が酸化亜鉛の場合、その体積抵抗率は、104〜1010Ω・cmに制御されることが好ましく、105〜108Ω・cmに制御されることがより好ましい。
複合金属酸化物粒子は、分散性の改善や経時による粒子の吸湿防止等の諸特性改善のために、その表面がシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等の有機化合物で処理されることが好ましい。これらの中でも、シランカップリング剤が、複合金属酸化物粒子の分散性を向上させる点で、特に好ましい。
このようにして得られた上記特定の複合金属酸化物粒子を下引層4に含有させて形成し、さらにその下引層4上に感光層3を形成することで、電気的リークが生じ難くなるように電子写真感光体1の電気特性を制御できる。
以下、電子写真感光体の好適な実施形態について詳述する。図1〜3はそれぞれ電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1及び2に示す電子写真感光体は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層5)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層6)とに機能が分離された感光層3を備えるものである。また、図3は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。なお、感光層3は、基本的には単層構造であっても、電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された積層構造であってもよい。積層構造の場合、電荷発生層5と電荷輸送層6の積層順序はいずれが上層であってもよい。
図1に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6が順次積層された構造を有するものである。また、図2に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層7が順次積層された構造を有するものである。また、図3に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層4、単層型感光層8、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
次に、図1を参照して、電子写真感光体1の各要素について詳述する。
導電性支持体2としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基体上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;上記基体上に酸化インジウム、酸化錫等の導電性金属化合物を蒸着したもの;上記基体上に金属箔をラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散して、上記基体上に塗布し導電処理したものが挙げられる。なお、導電性支持体2の形状は、ドラム状、シート状、又はプレート状のいずれであってもよい。
導電性支持体2として金属パイプ基体を用いる場合、かかる基体の表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等の処理が行われていてもよい。
下引層4は、本発明に係る複合金属酸化物粒子及び結着樹脂を含んで構成される。
結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
なお、結着樹脂としては、外部からの電子写真感光体1に対する導電性物質の貫入を阻止するために、ある程度以上の高い硬度を有する樹脂を用いることが好ましい。
下引層4は、上記材料を用いて下引層形成用塗布液を調製し、かかる塗布液を導電性支持体2上に塗布し乾燥することにより形成される。
下引層4における本発明に係る金属酸化物粒子の含有量は、下引層4が適当な電気的抵抗を得るために調整される。金属酸化物粒子の含有量は、下引層4の固形分全量を基準として10〜60体積%が好ましく、20〜50体積%がより好ましい。
下引層4は、レーザ光源による干渉防止のために、光散乱剤の添加、又は表面の粗面化により、光散乱機能を付与することが好ましい。光散乱剤としては、屈折率の異なる金属酸化物粒子や有機粒子粉体等の散乱性粒子が挙げられる。これらは光散乱機能を有するが、さらにその粒径により下引層4の粗面化にも寄与する。なお、粒子の平均粒径が、1μm以上である場合、好ましくは2μm以上である場合には、下引層4の粗面化が可能である。散乱性微粒子の含有量は粗面化の程度により調整が可能であるが、下引層4の固形分全量を基準として3〜10体積%程度が好ましい。更に、下引層4には、シリカ粒子(例えば、シリコーンボール)、アルミナ粒子等の粒子を含有させてもよい。かかる粒子は、数百nm程度の微粒子であってもよく、かかる粒子の凝集効果により光を散乱化させることも可能である。
下引層4の電気的抵抗は、107〜1013Ω・cmに設定することが好ましい。電気的抵抗が107Ω・cm未満であると十分なリーク耐性が得られ難くなる傾向がある。他方、1013Ω・cmを超えると残留電位の上昇が生じ易くなる傾向がある。なお、電気的抵抗は導電性物質の電気的抵抗と、その含有量により制御することができる。
また、接触帯電時の電流リークの一因となる外部からの導電性物質(例えば、導電粉)の貫入を防止し、耐久性の高い電子写真感光体を形成するためには、下引層4の硬度を高くすることが有効である。したがって、下引層4のビッカース硬度を30以上にすることが好ましい。
下引層4の膜厚は、3〜40μmであることが好ましく、5〜40μmであることがより好ましい。下引層4の膜厚は厚い方が電子写真感光体1の外部からの導電性物質の貫入を阻止しやすくなり、電気的リークの抑制に効果的である。なお、膜厚が3μm未満では、電気的リークの抑制効果が不十分となる傾向がある。他方、膜厚が40μmを超えると、成膜が困難となり、また残留電荷の増加による画質低下を生じやすくなる傾向がある。
下引層4は、1層の構成としてもよく、必要に応じて2層以上の構成としてもよい。例えば、導電性支持体2上に導電層を備え、その導電層上に下引層を備える構成でもよく、上述した下引層を第1の下引層とし、その第1の下引層上に第2の下引層を備える構成でもよい。なお、上記の下引層は、中間層と称される場合もある。第2の下引層を設ける場合、感光層3を形成する際の濡れ性改善やブロッキング性の強化等を目的として、下記の結着樹脂を含む第2の下引層を形成することができる。また、第2の下引層は、本発明に係る複合金属酸化物粒子を含有してもよい。
結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
また、上記結着樹脂を含む第2の下引層には、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子等を含有する有機金属化合物等が含まれていてもよい。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。これらの有機金属化合物の中でも、ジルコニウム又はシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れており、好ましい。
有機シリコン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。特に好ましく用いられる有機シリコン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
第2の下引層は、感光層3の濡れ性改善の他に、電気的なブロキング層としての役割も果たす。第2の下引層の膜厚は0.1〜3μmが好ましい。膜厚が3μmを超えると、電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす傾向がある。
電荷発生層5は、電荷発生材料を含んで構成される。
電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物及びセレン合金、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機系光導電体及びこれらを色素増感したもの;無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、錫フタロシアニン、ガリウムフタロシアニン等の各種フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、トリスアゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料及び染料が用いられる。また、これらの有機顔料は、一般に数種の結晶型を有している。特にフタロシアニン顔料では、α型、β型等をはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、いずれの結晶型でもよい。
優れた性能が得られる電荷発生材料としては、以下(1)〜(3)の化合物が例示できる。(1)Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°、10.0°、25.2°及び28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるヒドロキシガリウムフタロシアニン。(2)Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°、16.5°、25.4°及び28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるクロルガリウムフタロシアニン。(3)Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°、24.2°及び27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型に代表されるチタニルフタロシアニン。なお、結晶の形状や測定方法により、これらのピーク強度の位置が微妙にこれらの値から外れることもあるが、X線回折パターンが基本的に一致しているものであれば同じ結晶型であると判断できる。
電荷発生層5は、電荷発生材料を下引層4上に真空蒸着することにより、又は有機溶剤及び結着樹脂とともに電荷発生層形成用塗布液を調製し、下引層4上に塗布することにより形成される。
電荷発生層形成用塗布液を調製する際に用いる結着樹脂としては、ビスフェノールAタイプやビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂及びその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることが可能である。電荷発生層形成用塗布液を調製する際、電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が望ましい。なお、電荷発生材料は、結着樹脂中に、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、ダイノーミル、サンドミル、コロイドミル等を用いて分散させることができる。
電荷発生層5の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.0μmがより好ましい。
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成される。図1に示す電子写真感光体1では、電荷輸送層6は導電性支持体2から最も遠い側に配置されている。
電荷輸送材料としては、下記のものが例示できる。2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2−メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質。
クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質。或いは、以上例示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
電荷輸送層6に用いられる結着樹脂としては、任意のものを用いることができるが、特に電荷輸送材料と相溶性を有し適当な強度を有するものが望ましい。
結着樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールCやビスフェノールTP等からなる各種のポリカーボネート樹脂及びその共重合体、ポリアリレート樹脂及びその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、アチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述の構造のものを含めて各種の変性体を用いることが可能である。特に下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有するものが好ましい。
ここで、上記式(I)中、Aは、−CR9R10−、アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO2−を表し、R1〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は環状炭化水素基を示す。但し、R9とR10とは、互いに結合して環状炭化水素基を形成してもよい。上記Aで示されるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
上記R1〜R8で示されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1〜12の直鎖状のアルキル基、及び炭素数3〜12の分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
上記R1〜R8で示される環状炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素数3〜10の環状炭化水素基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂としては、これらの繰り返し単位を複数組み合わせた共重合体構造を有していても構わない。
結着樹脂として用いられる重合体の分子量は、膜厚や溶剤等の成膜条件によって適宜選択されるが、通常は粘度平均分子量で3000〜30万が好ましく、2万〜20万がより好ましい。
図1に示す電子写真感光体1において、電荷輸送層6は導電性支持体2から最も遠い側に配置されており、電子写真感光体の表面層となっている。この場合、電子写真感光体表面の潤滑性向上のために、必要に応じて電荷輸送層6中にフッ素系樹脂粒子が含有されることが好ましい。さらに、電荷輸送層6には、シリコン含有電荷輸送性高分子が含有されることが好ましい。なお、図2及び3に示す電子写真感光体1のように、感光層3に保護層7が設けられている場合には、シリコン含有電荷輸送性高分子及び/又はフッ素系樹脂粒子は、保護層7に含有されることが好ましい。
特に重合トナーを用いたカラー電子写真装置においては、トナーの離型性向上のために電荷輸送層6中にフッ素系樹脂粒子を加えることは、高画質獲得のために効果的である。
フッ素系樹脂粒子としては、フッ素原子を含有する樹脂を主成分とするものが好ましい。このような樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の中から1種又は2種以上を適宜選択することが望ましい。これらの中でも、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が特に好ましい。
上記フッ素系樹脂粒子の一次粒径は、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。一次粒径が、0.05μm未満であると分散時に凝集が発生しやすくなる傾向がある。他方、1μmを超えると画質欠陥が発生し易くなる傾向がある。
フッ素系樹脂粒子の含有量は、電荷輸送層6に含まれる固形分全量を基準として、3〜40質量%が好ましく、4〜30質量%がより好ましい。含有量が、3質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による改質効果が不十分となる傾向がある。他方、40質量%を越えると、光通過性が低下し、繰返し使用による残留電位の上昇が生じる傾向がある。
また、フッ素系樹脂粒子に加えて、分散助剤等として無機粒子を含有させることが好ましい。無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸銅、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ニッケル、アンチモン、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化錫、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムが挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好ましい。また、これらは、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用する。
シリカ粒子は、化学炎CVD法により製造されるものが好ましい。具体的には、クロルシランガスを酸素−水素混合ガス又は炭化水素−酸素混合ガスの高温火炎中で気相反応させて、製造されるシリカ粒子が好ましい。
また、無機粒子としては、粒子表面を疎水化処理されたものが好ましい。疎水化処理剤としては、例えば、シロキサン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等が用いられる。
シロキサン化合物としては、ポリジメチルシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
無機粒子の一次粒径は、0.005〜2.0μmが好ましく、0.01〜1.0μmがより好ましい。一次粒径が、0.005μm未満であると感光体表面の機械的強度が不十分となる傾向、また、分散時の凝集が進みやすくなる傾向がある。他方、2μmを超えると感光体表面粗さが大きくなりクリーニングブレードが摩耗、損傷してクリーニング特性が悪化し、画像ボケが発生し易くなる傾向がある。
無機粒子の含有量は、電荷輸送層6に含まれる固形分全量を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。含有量が、0.1質量%未満では無機粒子の分散による改質効果が不十分となる傾向がある。他方、30質量%を越えると繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくる傾向がある。
結着樹脂中に、フッ素系樹脂粒子、又は無機粒子を分散させる際は、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌機、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等を使用することもできる。
電荷輸送層6は、上に示した電荷輸送材料及び結着樹脂とを適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成することができる。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素系の溶剤、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状若しくは直鎖状エーテル、又はこれらの混合溶剤等を用いることができる。また、電荷輸送層形成用塗布液において、電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は10:1〜1:5が好ましい。
また、電荷輸送層形成用塗布液の分散安定性を向上させ、さらに塗膜形成時の凝集を防止するために、分散助剤を少量添加することが有効である。分散助剤として、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
中でも、フッ素系ポリマーさらにはフッ素系クシ型グラフトポリマーが分散助剤として有効であり、フッ素系クシ型グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂が好ましい。分散助剤の添加量は、固形分全量を基準として、0.01〜5質量%の割合が好適である。
電荷輸送層6は、上記電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布することで形成される。塗布は、電子写真感光体1の形状や用途に応じて浸漬塗布法、リング塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の塗布法を用いて行うことができる。乾燥は、室温での指触乾燥の後に加熱乾燥するのが好ましい。加熱乾燥は、30℃〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが望ましい。
電荷輸送層6の膜厚は、5〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。
電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、或いは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
より具体的には、フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
有機イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。有機燐系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィート等が挙げられる。
有機硫黄系及び有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系或いはアミン系等の1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系等の誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他の化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート等が挙げられる。
また、感光層3には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることが好ましい。電子受容性物質としては、例えば、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等をあげる事ができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
図3に示すように、感光体1は単層型感光層8を備えるものであってもよい。この単層型感光層8は、上述した電荷発生材料及び電荷輸送材料を含んで構成される。
単層型感光層8の形成は、公知の方法で行うことが可能である。例えば、電荷発生材料、電荷輸送材料、及び結着樹脂を溶媒に溶かして、単層型感光層形成用塗布液を調製し、それを下層(図3では、下引層4)上に塗布して乾燥することで形成することができる。また、単層型感光層8の膜厚は、通常の範囲に設定される。
図2及び3に示すように、感光体1には保護層7を設けてもよい。この保護層7は、結着樹脂の他、通常使用される材料を用いて構成される。
なお、保護層7は、電子写真感光体の耐磨耗性を向上させ感光体寿命を向上させたり、現像剤とのマッチングを向上させたり、電子写真感光体の帯電時の電荷輸送層6の化学的変化を防止する等の目的から設けられる。したがって、このような目的に応じて保護層7は、例えば、絶縁性の樹脂を含む保護層、電荷輸送性を付与した高分子化合物を含む電荷輸送性保護層、又は金属酸化物等の抵抗制御剤を含む抵抗制御型保護層等として設けられる。
結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物等が挙げられる。
保護層7を抵抗制御型保護層として構成する場合、保護層7に含有される抵抗制御用粒子としては、カーボンブラックや金属、金属酸化物等を用いることができる。この金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン被覆酸化スズ、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したものが挙げられる。
また、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物等も抵抗制御剤として用いることができる。
また、抵抗制御用半導電性微粒子としては、電気的抵抗が109Ω・cm以下であり、白色、灰色又は青白色を呈する平均粒径が0.3μm以下(好ましくは0.1μm以下)の微粒子が適当である。この微粒子により保護層を実質的に透明にすることが可能である(特開昭57−30847号、特開昭57−128344号参照)。また、分散性向上のために、これらの微粒子の表面を、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等の有機化合物で処理してもよい。
抵抗制御型保護層は、上記結着樹脂中に上記金属酸化物を分散して成膜される。抵抗制御型保護層の膜厚は光透過率が低くならない程度、すなわち15μm以下にすることが好ましく、0.5μm〜9μmがより好ましい。
また、保護層7は、顔料を含有してもよい。この場合、顔料は結着樹脂中に分散して成膜されるが、顔料の含有量は、適当な塗膜抵抗を得るために調整される。保護層7が顔料を含有する場合、その含有量は、固形分全量を基準として、10〜60体積%が好ましく、20〜50体積%がより好ましい。
また、一方で意図的に帯電装置と接触させて電荷を直接注入させる注入帯電方式を用いる電子写真装置に適用する場合には、電荷の注入性を向上させるため保護層の抵抗値を下げる必要があり顔料の含有量はより多い条件に設定される。
保護層7は、外部から感光体に貫入する導電性物質を阻止するために、ある程度以上の高い硬度を有する樹脂を含むことが好ましい。
ここで、保護層7が、高い硬度(例えば、ビッカース硬度で30以上の高い硬度)を有する樹脂を更に含む場合は、耐摩耗強度が高くなることに加えて厚膜化が可能となるため、感光体の寿命を一層向上させることが可能である。
また保護層7は、ポリマー成分中に電荷輸送性機能を織り込んだ高分子電荷輸送剤や、シリコーンハードコート剤等の強靭なコート剤中に低分子の電荷輸送剤を分子分散させる等して電荷輸送機能をもたせた樹脂成分を含んでもよい。ポリマー成分中に電荷輸送機能を織り込んだ高分子電荷輸送剤(電荷輸送性高分子)を含む保護層の例としては、シリコーンポリマー中に電荷輸送材料機能基を織り込んだシリコン含有電荷輸送性高分子を含有する保護層の例が挙げられる。
電荷輸送性高分子化合物としては、ポリビニカルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、特開平5−232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、又はポリシラン等を挙げることができる。また、電荷輸送性高分子として、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとからなるブロック共重合体又はグラフト共重合体を使用することもできる。
電荷輸送性高分子が、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として含有する場合は、高い電荷輸送能と好ましい機械的特性を有しているので好ましい。また、トリアリールアミン構造がペンダント型ではなく、主鎖中に含まれている場合は、さらに好ましい。ペンダント型であると、ペンダント同士が会合し、電荷トラップを形成し電荷輸送性を悪化させる場合が多い。しかし、このように主鎖中に含有されていることでこのような問題を回避できる。さらに、トリアリールアミン構造が下記一般式(II)又は(III)で示される構造の少なくとも1種以上を繰り返し単位として含有する場合は特に好ましい。
ここで、式(II)中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を示し、X
1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X
2及びX
3はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリーレン基を示し、L
1は枝分れ若しくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示し、m及びnは、それぞれ独立に0又は1を示す。
ここで、式(III)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を示し、L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示す。
上記一般式(II)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を示し、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
X1は、芳香族環構造を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示す。X1の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、メチレンジフェニル基、シクロヘキシリデンジフェニル基、オキシジフェニル基、チオジフェニル基等、又はこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、若しくはハロゲン置換体等が挙げられる。この中でも特に置換又は無置換のビフェニレン基が電荷輸送性の点で、特に好ましい。
X2及びX3はそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアリーレン基を示し、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基等、及びこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、又はハロゲン置換体等が挙げられる。
L1は枝分れ若しくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示し、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮する限り任意であるが、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサン結合等から選ばれる結合基を含み、且つ炭素数が20以下であるものが好ましい。その具体例としては、下記式(L1−1)〜(L1−8)で示されるものが挙げられる。
上記一般式(III)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を示し、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、炭素数1〜12個のアルキル基又はアルコキシ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示し、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、炭素数が20以下のものが好ましい。その具体例としては、下記式(L2−1)〜(L2−5)に示すものが挙げられる。
また、上記一般式(II)中のL1又は一般式(III)中のL2がエステル結合を有する場合は、機械的特性に優れ、電荷輸送能に優れるため、特に好ましい。
この保護層7を形成するための保護層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、リングコーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
また電荷輸送層6の項目で説明したフッ素系樹脂粒子等の固体潤滑剤を含有させることにより表面の潤滑性を向上させることも可能である。
また保護層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、アルコール等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層3を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
保護層8の膜厚は0.1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
積層型電子写真感光体における、各層の形成方法は、特に制限はなく目的に応じて公知の方法を採用し得る。なお、上述したように、各層ごとに、その層の構成材料を溶剤に溶解又は分散させてなる各層用の塗布液を調製し、この塗布液を順次、塗布し乾燥する方法が好ましい。
(電子写真装置)
図4は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。図4に示した電子写真装置100は、タンデム型であり、いわゆる中間転写方式の電子写真装置である。図4に示す電子写真装置100は、複写機、レーザービームプリンター等として使用できる。電子写真装置100は、4つの画像形成ユニット120a、120b、120c、及び120dを備えている。4つの画像形成ユニット120a〜120dは、中間転写体108の一部に沿って並列に配置されている。
ここで、各画像形成ユニット120a〜120dは、ドラム状の電子写真感光体101a〜101dを備えており、電子写真感光体101a〜101dは所定の方向(紙面上は反時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能である。なお、電子写真感光体101a〜101dは、上述した本発明の電子写真感光体である。
各電子写真感光体101a〜101dに対しては、その回転方向に沿って接触帯電方式の帯電装置103a〜103d、現像装置102a〜102d、1次転写装置104a〜104d、クリーニング装置106a〜106dが順次配置されている。現像装置102a〜102dには、トナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーが供給可能であり、白黒画像はもちろんのこと、カラー画像も形成できる。また、1次転写装置104a〜104dはそれぞれ中間転写体108を介して電子写真感光体101a〜101dに当接している。
なお、現像装置102a〜102dは、図4ではY、M、C、Kのトナー色の順に配置されている。トナー色の配置は、例えば、M、Y、C、K等システムの画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
さらに、電子写真装置100の所定の位置には露光装置107(ROS;Razer Output Scanner)が配置されている。露光装置107は、原稿画像の色分解・結像露光光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナーによる走査露光系等を有している。露光装置107から出射されたレーザ光は、レーザ光105a〜105dに分岐されて、各画像形成ユニット120a〜120dにおける帯電後の電子写真感光体101a〜101dの表面に照射されるようになっている。これにより、電子写真感光体101a〜101dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写体108上に重ねて転写される。
中間転写体108は無端ベルト状であり、駆動ロール114、バックアップロール113及びテンションロール115により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく電子写真感光体101a〜101dと同じ周速度で回転可能となっている。中間転写体108は、駆動ロール114及びバックアップロール113の中間に位置するその一部が電子写真感光体101a〜101dと接している。
また、2次転写装置109は、中間転写体108を介してバックアップロール113と当接するように配置されている。また、バックアップロール113と2次転写装置109との間を通過した中間転写体108は、例えば駆動ロール114の近傍に配置されたクリーニングブレード(図示せず)により表面を清浄化された後、次の画像形成プロセスに供される。
また、電子写真装置100内の所定の位置にはトレイ111が設けられている。トレイ111内には被転写媒体112として用紙が入っており、トレイ111内の被転写媒体112は搬送装置(図示せず)により2次転写装置109とバックアップロール113との間に搬送される。被転写媒体112は、さらには相互に当接する2個の定着ロール110の間に順次移送され、電子写真装置100の外部に排出される。
以下、上述した電子写真装置100を用いた画像形成方法について、説明する。
電子写真装置100においては、電子写真感光体101a〜101dを回転駆動させると、これに連動して帯電装置103a〜103dが駆動する。そして、電子写真感光体101a〜101dの表面を所定の極性、電位に一様に帯電させる(帯電工程)。次に、表面が一様に帯電された電子写真感光体101a〜101dは、露光装置107から出射されたレーザ光105a〜105dによって像様に露光され、感光体101a〜101d表面に静電潜像が形成される(露光工程)。
静電潜像は、現像装置(反転現像装置としての単色用の現像装置)102a〜102dのトナーにより現像され、電子写真感光体101a〜101dの表面にトナー像が形成される(現像工程)。このときのトナーは二成分系トナーでも、一成分系トナーでもよい。
このトナー像は、感光体101a〜101dと中間転写体108との界面(ニップ部)を通過する過程で、1次転写装置104a〜104dから中間転写体108に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体108の外周面に順次、1次(中間)転写される(中間(一次)転写工程)。なお、感光体101a〜101dから中間転写体108に印加される1次転写バイアスは、上記トナーとは逆極性(+)でバイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+2kV〜+5kVの範囲である。
このように各画像形成ユニット120a〜120dにより異なる色のトナー像が中間転写体108に重畳転写され、カラートナー像が形成される。そして、このトナー像は、2次転写装置109による接触帯電作用により中間転写体108から被転写媒体112に転写され(二次転写工程)、定着ロール110によりカラートナー像が被転写媒体112に定着され、カラー画像が形成される。
なお、電子写真感光体101a〜101d上に残存するトナーは、クリーニング装置106a〜106dによって清掃・除去される。そして、電子写真感光体101a〜101dは、次の複写サイクルに供される。
図5は、本発明の電子写真装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図5に示した電子写真装置200は、中間転写体を備えない電子写真装置であり、図4に示す電子写真装置と同様に、4つのドラム状の電子写真感光体201a〜201dが用紙搬送用ベルト206に沿って相互に並列に配置されている。なお、電子写真感光体201a〜201dは、例えば、電子写真感光体201aがイエロー、電子写真感光体201bがマゼンタ、電子写真感光体201cがシアン、電子写真感光体201dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である。
ここで、電子写真装置200に搭載されている電子写真感光体201a〜201dはそれぞれ上述した本発明の電子写真感光体である。
そして、電子写真感光体201a〜201dのそれぞれは所定の方向(紙面上は時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能であり、その回転方向に沿って帯電装置202a〜202d、露光装置203a〜203d、現像装置204a〜204d、転写装置211a〜211d、クリーニング装置205a〜205dが配置されている。
露光装置203a〜203d、現像装置204a〜204d、転写装置211a〜211d、クリーニング装置205a〜205dとしては、通常使用するものを使用できる。また、電子写真装置200においては、帯電装置202a〜202dとして、スコロトロン帯電装置を使用する。現像装置204a〜204dのそれぞれにはトナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーが供給可能である。また、転写装置211a〜211dはそれぞれ用紙搬送用ベルト206を介して電子写真感光体201a〜201dに当接している。
なお、現像装置204a〜204dは、図5ではY、M、C、Kのトナー色の順に配置されているが、これは、例えば、M、Y、C、K等システムの画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
これにより、図4における電子写真装置100と同様にして、電子写真感光体201a〜201dの回転工程において帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程が順次行われる。
用紙搬送用ベルト206はロール207,208,209,210により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく電子写真感光体201a〜201dと同じ周速度で回転可能となっている。
また、電子写真装置200内の所定の位置にはトレイ213が設けられており、トレイ213内には被転写媒体212である用紙が備えられている。被転写媒体212は、電子写真感光体201a〜201dと転写装置211a〜211dとの間、さらには相互に2つのロールが当接する定着装置215の間に順次移送された後、電子写真装置200の外部に排紙される。これにより、被転写媒体212上に電子写真感光体201a〜201dに形成されたトナー像が順次転写されることによって画像(白黒画像、又はカラー画像)が形成され、その画像が定着される。
図6は、本発明の電子写真装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図6に示した電子写真装置300は、中間転写体を備える電子写真装置であり、帯電装置が接触帯電方式である。
電子写真装置300は、電子写真感光体301を備えており、その回転方向に沿って、帯電装置303、露光装置305、現像装置302、中間転写体308、及びクリーニング装置306を備えている。ここで、帯電装置303は接触帯電方式であり、現像装置302は、マゼンタ現像装置302a、シアン現像装置302b、ブラック現像装置302c及びイエロー現像装置302dの4つの現像ユニットを備える多色用現像装置である。
また、電子写真装置300には、中間転写体308を介して電子写真感光体301と当接するように第1転写装置304が配置されており、その中間転写体308上に第2転写装置309が当接するように配置されている。また、電子写真装置300は、定着装置310として熱ローラ定着装置を備えている。
なお、電子写真装置300のように接触帯電方式の帯電装置303及び中間転写体308を備える場合でも、上記本発明の電子写真感光体を備える場合には、画質欠陥を十分に防止することができる。
すなわち、接触帯電方式の帯電装置303を用いた場合には、ピンホールなど電子写真感光体301の局所的な不均一部に接触帯電時に加わる局所的な高電場によって電気的リークを生じ、これが画質欠陥となって生じる場合がある。
このピンホールリークは、電子写真装置300内から発生した導電性物質が電子写真感光体301に接触、さらには電子写真感光体301中に貫入することで、接触帯電方式の帯電装置303と電子写真感光体301の導電性支持体との導電路を形成してしまうために生じる場合もある。顕著な場合には、電子写真装置300内の他の部材から混入したカーボンファイバーやキャリア粉などの導電性物質が電子写真感光体301中に突き刺さり、接触帯電方式の帯電装置303からのリーク点を形成することもある。
さらに、接触帯電方式の帯電装置303を用いた場合には、電子写真感光体301の局所的な劣化部に、接触帯電方式の帯電装置303の局所的な高電場が加わり生じたピンホールリークが画質欠陥となって生じる場合もある。
また、電子写真装置300のように中間転写体308を備える場合には、カラー各色の画質欠陥がそのままカラー色個数分の画質欠陥となるため、被転写媒体312上に各色多数の色点欠陥を生じる場合もある。
例えば、1本の電子写真感光体301と中間転写体308の位置を同期させて複数回色の異なる像を重ね合わせてカラー画像を形成する方式の電子写真装置300では、電子写真感光体301の電気的リークによる画質欠陥は画像上同じ位置に形成される。また、微妙な同期のずれにより、画像上には色欠陥が数十μm程度ずつ位置ずれを起こした色連点欠陥(4色の場合は、4色連点欠陥)となって現れ、一個の欠陥が単独に存在する以上に、大きく目立った欠陥となって生じる場合もある。
このような欠陥は、通常用いられる状態ではほとんど発生しないが、現像装置302、中間転写体308、帯電装置303などの構成部材が劣化した場合に発生する。
これらの現像装置302、中間転写体308、帯電装置303などの構成部材は、後述するように導電性物質を多く含有している。例えば、中間転写体308においては、抵抗を制御するために、カーボンブラックや金属酸化物などの導電性粒子を分散し抵抗調整を行っている。また、現像装置302においては、キャリアとして鉄粒を含有し、トナーの抵抗制御のために酸化チタン等の導電性粒子が添加されている。接触帯電方式の帯電装置303においても、カーボンブラックや金属酸化物が導電性物質として用いられている。これらの構成部材が劣化すると、構成部材から導電性物質が剥離して分離し、電子写真感光体301表面に貫入する場合がある。この場合、貫入された導電性物質が引き金となり、接触帯電方式の帯電装置303により電子写真感光体301に異常電流が生じて帯電異常点となり、プリント時には画質欠陥となって発生することになる。
以上説明したように、電子写真装置300のように接触帯電方式の帯電装置303及び中間転写体308を備える場合には、その使用に伴い画質欠陥が発生し易くなるが、本発明の電子写真感光体を用いることで、上述したような画質欠陥を十分に抑制することが可能となる。
電子写真感光体301は、上述したように本発明の電子写真感光体であり、ドラム状のものである。この電子写真感光体301は、感光体ドラムと称されることがある。この電子写真感光体301は、矢印方向(反時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能に備えられている。
現像装置302とクリーニング装置306との間には、無端ベルト状の中間転写体308が電子写真感光体301と接するように配置されている。この中間転写体308は、3つのローラ及び第1転写装置304によって、矢印の時計方向に電子写真感光体301と同じ周速度をもって回転可能になっている。第1転写装置304上に位置する中間転写体308の一部は、電子写真感光体301と接している。上記3つのローラのうち、第1転写装置304の隣に位置するローラと、第2転写装置309としての転写ローラとは対向して配置されている。これらに接するようにして被転写媒体312がその界面をこれらの回転駆動力によって移動するようになっている。
電子写真装置300においては、電子写真感光体301を回転駆動させる。これと連動して帯電装置303が駆動し、電子写真感光体301の表面を所定の極性、電位に一様に帯電させる(帯電工程)。次に、表面が一様に帯電された電子写真感光体301は、露光装置305によって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される(露光工程)。
続いて静電潜像は、現像装置302によって現像される(現像工程)。より具体的には、まず上記現像装置302に備えられる4つの現像ユニットのうちブラック現像装置302cにより、ブラックトナーによる現像が行われる。次に、上記現像装置302が回転し、イエロー現像装置302dが、電子写真感光体301に対向する位置に移動する。そしてこのイエロー現像装置302dにより、イエロートナーによる現像が行われる。次に、上記現像装置302が回転し、マゼンタ現像装置302aが、電子写真感光体301に対向する位置に移動する。そしてこのマゼンタ現像装置302aにより、マゼンタトナーによる現像が行われる。次に、上記現像装置302が回転し、シアン現像装置302bが、電子写真感光体301に対向する位置に移動する。そしてこのシアン現像装置302bにより、シアントナーによる現像が行われる。その結果、4色のトナーによる転写が行われ、目的のカラー画像に対応したカラートナー像が電子写真感光体301上に形成される。
なお、以上の4色での現像は1色ごとに独立して行われ、その1色についての現像が行われている間、他の色による現像は行われていないので、その1色についての現像は他の色の現像装置の影響を受けることはない。具体的には、目的の画像の第1の色成分像(例えばブラック成分像)に対応した静電潜像がまず形成される。次いで、ブラック現像装置302cによりその静電潜像がブラックトナーで現像される。この時、イエロー現像装置302d、マゼンタ現像装置302a、シアン現像装置302bの各現像装置は、オフ状態になっているので電子写真感光体301には作用せず、ブラックトナーによる現像像は他の現像装置302a〜302dの影響を受けない。以上により、4色のトナーによる現像が電子写真感光体301上に順次行われる。
このトナー像は、電子写真感光体301と中間転写体308との界面(ニップ部)を通過する過程で、駆動する第1転写装置304から中間転写体308に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体308の外周面に順次、1次(中間)転写される(第1転写工程)。なお、電子写真感光体301から中間転写体308への4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスは、上記トナーとは逆極性(+)でバイアス電源から印加される。なお、この電子写真装置300においては、電子写真感光体301から中間転写体308への4色のトナー画像の重畳転写の際に、第2転写装置309及び中間転写体クリーナ315を中間転写体308から離間させることができる。
この後、電子写真感光体301上に残存するトナーは、クリーニング装置306によって清掃・除去される。そして、電子写真感光体301は、次の複写サイクルに供される。
一方、中間転写体308上に重畳転写された合成カラートナー像は、第2転写装置309による接触帯電作用(転写バイアス)によって、中間転写体308と第2転写装置309との当接ニップに、給紙カセット311から順次所定のタイミングで供給される被転写媒体312上に転写される(第2転写工程)。
次に、この被転写媒体312は、定着装置310としての熱ローラ定着装置内に移され、その内部において、被転写媒体312上のトナー像が熱定着される。以上により、被転写媒体312上に所望の画像が形成される。そして、被転写媒体312への画像形成終了後に、中間転写体308上の残留トナーは、中間転写体クリーナ315により清掃・除去される。
さらに、電子写真装置300におけるサブシステムについて説明する。
帯電装置303としては、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴム、ブレード等を用いた接触型帯電装置を用いることができる。上記電子写真感光301は、例えば、このような帯電装置により、感光体が負帯電極性の場合には通常−300〜−1000Vに帯電される。
帯電部材としては、イオン導電性、電子伝導性等の適当な抵抗が得られるあらゆる材質の帯電部材を用いることができる。
露光装置305としては、特に制限はなく、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッター光等の光源を、所望の像様に露光できる光学系等が挙げられる。光源の波長も電子写真感光体301の分光感度に適したものであれば、可視光、赤外光を問わない。また単独の露光光源を用いたものでもマルチビーム方式のレーザを用いたものでもよい。
現像装置302は、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触或いは非接触させて現像する一般的な現像方法を用いることができ、正規現像、反転現像の何れも使用可能である。現像装置302としては、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて上記電子写真感光体301に付着させる機能を有する公知の現像装置を用いることができる。
第一転写装置304は、現像により電子写真感光体301上に形成したトナー像を中間転写体に転写することができる。なお、以下においてトナー像の中間転写体308への転写を「第一転写」と称する。
第一転写装置304としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電装置、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電装置やコロトロン転写帯電装置等の公知の転写帯電装置を用いることができる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点では、接触型転写帯電装置が望ましい。なお、上記転写帯電装置の他、剥離帯電装置等を併用することもできる。また、上記第一転写の際に、第一転写装置304から上記電子写真感光体301に付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、更に交流を重畳させて使用してもよい。上記第一転写装置304における設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電装置の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、一次転写電流としては+100〜+400μA、一次転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
上記中間転写体308の構造としては、一般的には多層構造であり、例えば、導電性支持体上に、少なくともゴム、エラストマー、樹脂等から形成される弾性層と、少なくとも1層の被覆層とを設けてなる構造等が挙げられる。上記中間転写体308の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ローラ形状、ベルト形状等が好適に挙げられる。これらの中でも、画像の重ねあわせ時の色ズレ、繰り返し使用による耐久性、他のサブシステムの配置の自由度の取り易さ等の点で、無端ベルト形状が特に好ましい。
上記中間転写体308の材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたものが好適に用いられる。これらの中でも、ポリイミド系樹脂にカーボン粒子を分散させたものを好適に用いることができる。
上記中間転写体308の表面抵抗値としては、例えば、108〜1016Ω・cmが好ましい。上記体積抵抗率が、108Ω・cm未満であると画像に滲みや太りが生じやすくなる傾向がある。他方、1016Ω・cmを超えると画像の飛び散りの発生や、中間転写体シートの除電の必要性が発生し易くなる傾向があり、何れの場合も好ましくない。上記中間転写体308の膜厚としては、例えば50〜200μm程度が好ましい。
第2転写装置309は、中間転写体308上のトナー像を一括して被転写媒体312に転写する機能を有する。なお、以下において、トナー像の被転写媒体312への転写を「第2転写」と称する。
第2転写装置309としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、上記第1転写装置304として例示したものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、上記第1転写装置と同様に接触型転写帯電装置が好ましい。また、上記第2転写の際に、上記第2転写装置から中間転写体308に付与される転写電流には、通常直流帯電が使用されるが、更に交流電流を重畳させて使用してもよい。第2転写装置309における設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電装置の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、2次転写電流としては+100〜+400μA、1次転写電圧としては+2000〜+5000Vを設定値とすることができる。
電子写真装置300は、上述した装置以外に、例えば、上記電子写真感光体301に対して光除電を行う光除電装置、被転写媒体312上に第2転写したトナー像を定着する定着装置310、上記電子写真感光体301をクリーニングするクリーニング装置306、中間転写体308をクリーニングする中間転写体用クリーニング装置315等を必要に応じて用いることができる。なお、上述したその他の装置を用いて各工程が行われる。例えば、光除電工程であれば光除電装置を、定着工程であれば定着装置315を用いて好適に実施できる。
なお、上記光除電装置としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。その光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体301の半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力設定される。上記定着装置としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着装置、例えば熱ロール定着装置、オーブン定着装置等が挙げられる。
(プロセスカートリッジ)
次に、本発明の電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジについて説明する。
図7は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
プロセスカートリッジ400は、ケース420内に、電子写真感光体401とともに帯電装置408、露光装置410、現像装置411、クリーニング装置413及び除電装置414を取り付けレール416を用いて組み合わせて一体化したものである。かかるプロセスカートリッジ400は、転写装置412と、定着装置415と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
本実施例では、複合金属酸化物粒子を作製した後に、それを用いて電子写真感光体を製造した。なお、複合金属酸化物粒子の作製におけるTiとZnとの元素比は、予め得られた複合金属酸化物粒子の体積抵抗率と元素比との相関に基づいて、複合金属酸化物粒子が所定の体積抵抗率を有するように決定されたものである。
(複合金属酸化物粒子1)
平均粒径15nmの酸化チタン粒子(MT150W、テイカ社製)100部を150℃にて5時間加熱乾燥した。その酸化チタン粒子と、ジエトキシ亜鉛50部と、プロパノール500部とを攪拌混合し、プロパノールを減圧蒸留にて除去した。さらに、150℃にて2時間の焼き付けを行い、酸化チタン粒子上に酸化亜鉛層を有する平均粒径30nmの複合金属酸化物粒子1を得た。
(複合金属酸化物粒子2)
平均粒径50nmの酸化チタン粒子(MT600B、テイカ社製)の懸濁液200g/Lに硫酸亜鉛を加え攪拌した。その懸濁液に30g/Lの水酸化ナトリウム溶液を加え中和し、フィルタリング、洗浄を行った。得られた粒子を、150℃で乾燥後、400℃で焙焼してグラインドし、酸化チタン粒子上に酸化亜鉛層を有する平均粒径55nmの複合金属酸化物粒子2を得た。
(複合金属酸化物粒子3)
平均粒径50nmの酸化チタン粒子(MT600B、テイカ社製)100部を150℃にて5時間加熱乾燥した。その酸化チタン粒子と、ジブトキシ亜鉛40部と、ブタノール500部とを攪拌混合し、ブタノールを減圧蒸留にて除去した。その後、150℃にて2時間の焼き付けを行い、酸化チタン粒子上に酸化亜鉛膜をコートして複合金属酸化物粒子を得た。さらに、この複合金属酸化物粒子100部をトルエン500部と攪拌混合し、その溶液にシランカップリング剤(KMB603、信越化学社製)5部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留し、150℃で2時間の焼付けを行い、平均粒径55nmの複合金属酸化物粒子3を得た。
(複合金属酸化物粒子4)
平均粒径70nmの酸化亜鉛粒子(MZ150、テイカ社製、比表面積15m2/g)100部をトルエン500部と攪拌混合し、テトラブトキシチタネート(オルガチックスTA25)100部をさらに添加して攪拌混合した。その後、トルエンを減圧蒸留し、120℃で2時間の焼き付けを行い、酸化亜鉛粒子上に酸化チタン層を有する平均粒径76nmの複合金属酸化物粒子4を得た。
以上、得られた複合金属酸化物粒子1〜4の元素比と、体積抵抗率とを測定した。なお、元素比は蛍光X線測定で行い、例えば、複合金属酸化物粒子1では、校正用サンプルを用いてTiとZnに由来するピーク強度比から検量線を作成し、その後、実際のサンプルを測定して元素比を求めた。また、参考のために、平均粒径15nmの酸化チタン粒子(MT150W、テイカ社製)、平均粒径50nmの酸化チタン粒子(MT600B、テイカ社製)、平均粒径200nmの酸化アンチモンドープ酸化チタン・酸化スズ粒子(W1、三菱マテリアル社製)及び平均粒径400nmの酸化スズコート硫酸バリウム粒子(三井金属社製)についても、元素比と、体積抵抗率とを測定した。得られた結果を表3に示す。なお、酸化チタン粒子では、チタンの元素比が100%であり、酸化アンチモンドープ酸化チタン・酸化スズ粒子及び酸化スズコート硫酸バリウム粒子は、体積抵抗率が制御されていないものである。
(実施例1)
30mmΦ、肉厚1mmのアルミニウム基体を導電性支持体とし、この導電性支持体上に下引層を形成した。すなわち、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)を6部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)を12部、複合金属酸化物粒子1を41部、シリコーンボール(トスパール120、東芝シリコーン社製)を3部、レベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)を100ppm、及びメチルエチルケトを52部混合した。その混合物を、バッチ式ミルにて10時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基体上に塗布し、150℃で30分の乾燥硬化を行い、膜厚18μmの下引層を形成した。
次に、電荷発生材料として、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)の少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°の位置に回折ピークを有するクロルガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、及びn−ブチルアルコール300部からなる混合物を、サンドミルにて4時間分散した。得られた電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布して乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン20部と、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン20部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60部と、テトロヒドロフラン280部と、トルエン120部と、を十分に溶解混合した。その溶液に、洗浄した4フッ化エチレン樹脂粒子10部を加えて混合し、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにて分散した。得られた電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布して乾燥し、膜厚28μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、導電性支持体上に、下引層、電荷発生層、及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体を実施例1の電子写真感光体とした。
(実施例2〜3)
実施例1において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、実施例2では複合金属酸化物粒子2に、実施例3では複合金属酸化物粒子3に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体をそれぞれ実施例2の電子写真感光体、実施例3の電子写真感光体とした。
(比較例1)
実施例1において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、平均粒径15nmの酸化チタン粒子(MT150W、テイカ社製)に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体を比較例1の電子写真感光体とした。
(比較例2)
実施例1において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、平均粒径50nmの酸化チタン粒子(MT600B、テイカ社製)に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体を比較例2の電子写真感光体とした。
(画像テスト)
得られた実施例1〜3及び比較例1〜2の電子写真感光体を用いて、下記の条件で画像テストを行った。
接触帯電方式の帯電装置及び中間転写体を備えるタンデム方式のカラー電子写真装置(富士ゼロックス社製、DocuCenter Color320CP)に得られた電子写真感光体を搭載して、画像形成を行った。なお、この電子写真装置は、図4に示す電子写真装置と同様の構成を有するものである。この画像テストは、温度28℃、湿度85%の環境条件下で行った。連続1万枚の印字試験を行い、印字初期の画像濃度と1万枚印字後の画像濃度とを測定し、1万枚印字後の濃度変化を求め、さらにリーク等によるプリント中の黒点(画像欠陥)の個数を測定した。得られた結果を表4に示す。
表4に示した結果からわかるように、実施例1〜3の電子写真感光体を用いた場合には、1万枚印字後の濃度変化も抑制されており、画質欠陥も十分に抑制されることが確認された。他方、比較例1〜2の電子写真感光体を用いた場合には、1万枚印字後の濃度変化が大きく、画質欠陥が生じることが確認された。
(実施例4)
直径84mmφx340mm、肉厚1mmのアルミニウム基体を導電性支持体とし、この導電性支持体上に下引層を形成した。すなわち、アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)を12部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)を8部、複合金属酸化物粒子1を23部、シリコーンボール(トスパール120、東芝シリコーン社製)を3部、レベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)を0.01部及びメチルエチルケトンを100部からなる混合物を、サンドミルにて2時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基体上に塗布し、150℃で30分の乾燥硬化を行い、膜厚6μmの下引層を形成した。
次に、電荷発生材料として、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)の少なくとも9.7°、24.2°、及び27.3°の位置に強い回折ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン15部、結着樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、及びn−ブチルアルコール300部からなる混合物を、サンドミルにて4時間分散した。得られた電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布して乾燥し、膜厚0.25μmの電荷発生層を形成した。
次に、ジ(3,4−ジメチルフェニル)(4−フェニルフェニル)アミン2部と、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン2部と、ビスフェノールZポリカーボネート(分子量4万)6部と、テトラヒドロフラン80部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2部とを十分に溶解混合した。得られた電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布して120℃で40分間乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
次に、電荷輸送層上に保護層を形成した。先ず、下記式(IV)で示される化合物と、下記式(V)で示される化合物とを準備した。
上記式(IV)で示される化合物2部、及び上記式(V)で示される化合物2部をイソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部、及び蒸留水3部の混合溶液に溶解させた。その溶液に、イオン交換樹脂(0.5部)を加え室温で24時間加水分解させてから、イオン交換樹脂をろ過して分離し、アルミニウムトリスアセチルアセトナートを0.1部、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)を0.4部加えて、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に塗布し、150℃で1時間の乾燥を行うことにより、膜厚3μmの保護層を形成した。このようにして、導電性支持体上に、下引層、電荷発生層、電荷輸送層、及び保護層を形成し、得られた電子写真感光体を実施例4の電子写真感光体とした。
(実施例5〜7及び比較例3〜6)
実施例4において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、実施例5では複合金属酸化物粒子2に、実施例6では複合金属酸化物粒子3に、実施例7では複合金属酸化物粒子4に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体をそれぞれ実施例5〜7の電子写真感光体とした。
また、実施例4において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、比較例3では平均粒径15nmの酸化チタン(MT150W、テイカ社製)に、比較例4では平均粒径50nmの酸化チタン(MT600B、テイカ社製)に、比較例5では平均粒径200nmの酸化アンチモンドープ酸化チタン・酸化スズ(W1、三菱マテリアル社製)に、比較例6では平均粒径400nmの酸化スズコート硫酸バリウム(三井金属社製)に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例1と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体をそれぞれ比較例3〜6の電子写真感光体とした。
(画像テスト)
得られた実施例4〜7及び比較例3〜6の電子写真感光体を用いて、下記の条件で画像テストを行った。すなわち、接触帯電方式の帯電装置及び中間転写体を備える電子写真装置(富士ゼロックス社製、フルカラープリンターDocuPrint−C620)に、実施例4〜7及び比較例3〜6の電子写真感光体を搭載し、画像テストを行った。
なお、この画像テストに用いる電子写真装置は、図6に示す構成を有している。すなわち、接触帯電方式の帯電装置の下に設置された電子写真感光体(ドラムカートリッジ)の下にベルト状の中間転写体を有している。また、現像装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の回転現像装置を備えており、異なる色での電子写真感光体の位置が同期している設定となっている。
かかる電子写真装置を用いて画像テストを行ったところ、初期状態ではリークによる色連点の発生が無い良好な画質が得られた。そこで、現像機や中間転写体の劣化に伴って現像装置や中間転写体からの導電性物質の放出が生じ、電子写真感光体上に突き刺った場合を想定して、現像機の中に意図的に長さ120μm、径7μmφの導電性カーボンフィラー5mgを添加して、1万枚の印字テストにより、4色連続欠陥の発生確認の画像テストを行った。この場合、現像装置から生じる導電性フィラーが電子写真感光体上に無数に突き刺さってリークを発生しやすい状態となっている。得られた結果と、電子写真感光体の下引層の形成時に用いた、粒子の種類を表5に示す。
表5に示した結果からわかるように、実施例4〜7の電子写真感光体を用いた場合には、フィラーが電子写真感光体上に刺さっていると考えられるにも、拘わらず接触帯電方式の帯電装置による電気的リークは十分に抑制されており、4色連点欠陥の発生のない良好な画質が得られることが確認された。他方、比較例3〜6の電子写真感光体を用いた場合には、電気的リークの発生により、4色連点欠陥が生じていることが確認された。また、実施例4〜6の電子写真感光体を用いた場合と、実施例7の電子写真感光体を用いた場合とを比較すると、第2の金属酸化物が酸化亜鉛である実施例4〜6の電子写真感光体を用いた場合の方が画質欠陥をより十分に抑制できることが確認された。
(実施例8)
直径84mmφx340mm、肉厚1mmのアルミニウム基体を導電性支持体とし、この導電性支持体上に下引層を形成した。すなわち、複合金属酸化物粒子1を60部及び共重合ナイロン(CM−8000、東レ社製)を80部混合し、それをメタノール1800部に溶解させた。さらに、複合金属酸化物粒子1を480部加え、ボールミルで5時間分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム基体上に塗布し、160℃で100分の乾燥硬化を行い、膜厚6μmの下引層を形成した。
次に、電荷発生材料として、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.1°の位置に明瞭な回折ピークが得られるヒドロキシガリウムフタロシアニン15部と、結着樹脂としてのブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)10部と、n−ブチルアルコール300部とからなる混合物を、サンドミルにて4時間分散した。得られた電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布して乾燥し、膜厚0.25μmの電荷発生層を形成した。
次に、ジ(3,4−ジメチルフェニル)(4−フェニルフェニル)アミン2部と、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン2部と、ビスフェノールZポリカーボネート(分子量4万)6部とを、それぞれテトラヒドロフラン80部及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2部の混合溶液に加えて十分に溶解混合した。得られた電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布して120℃で40分間乾燥し、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、導電性支持体上に、下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体を実施例8の電子写真感光体とした。
(実施例9〜10及び比較例7〜8)
実施例8において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、実施例9では複合金属酸化物粒子2に、実施例10では複合金属酸化物粒子3に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例8と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体をそれぞれ実施例9〜10の電子写真感光体とした。
また、実施例8において、下引層を形成する際に用いた複合金属酸化物粒子1を、比較例7では平均粒径15nmの酸化チタン粒子(MT150W、テイカ社製)に、比較例8では平均粒径50nmの酸化チタン粒子(MT600B、テイカ社製)に代えた以外は、同様の方法で導電性支持体上に下引層を形成した。さらに、実施例8と同様にして、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、得られた電子写真感光体をそれぞれ比較例7〜8の電子写真感光体とした。
(画像テスト)
得られた実施例8〜10及び比較例7〜8の電子写真感光体を用いて、下記の条件で画像テストを行った。
用紙搬送用ベルトを備えるタンデム方式のカラー電子写真装置(富士ゼロックス社製、ColorDocuTech 60)に得られた電子写真感光体を搭載して、画像形成を行った。なお、この電子写真装置は、図5に示す電子写真装置と同様の構成を有するものである。この画像テストは、温度28℃、湿度85%の環境条件下で行った。連続1万枚の印字試験を行い、電子写真感光体の外周面上の画像形成領域における電位むら(V)を測定した。また、印字初期のドラム濃度と1万枚印字後のドラム濃度、リーク等によるプリント中の画像欠陥の個数を測定した。なお、電位ムラは、240箇所測定位置を定め、得られた測定値の最小値と最大値との差から求めた。得られた結果を表6に示す。
表6に示した結果からわかるように、実施例8〜10の電子写真感光体を用いた場合には、黒点の発生の抑制された良好な画質が得られることが確認された。他方、比較例7〜8の電子写真感光体を用いた場合には、電気的リークの発生により、黒点欠陥が生じていることが確認された。
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、100,200,300…電子写真装置、400…プロセスカートリッジ。