JP2005230584A - 易重合性化合物用の塔設備 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】易重合性化合物を処理するための塔設備であって、塔本体1と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラ5とを有する易重合性化合物用の塔設備において、該導入用管状部材としての導入用ノズル3が塔本体1の側面に連なっている。導入ノズル3が塔本体1の側面に対し好ましくは仰角θ=0〜85゜にて連結される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は易重合性化合物の蒸留塔、蒸発塔あるいは高沸物分解反応塔などの塔設備に関するものであり、詳しくはリボイラを有した塔設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどの易重合性化合物の製造設備では、粗(メタ)アクリル酸や粗(メタ)アクリル酸エステルの蒸留塔、あるいは高沸物を分解して(メタ)アクリル酸等を回収するための分解反応塔などの塔設備が用いられている。
【0003】
このような塔設備にあっては、塔底液の一部をリボイラに導入して加熱した後、塔底に戻すことがある。
【0004】
従来、このリボイラに塔底液を導入するための導入用管状部材は塔の下端の底面に連なるように設けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のリボイラへの塔底液導入用管状部材の接続構造によると、塔底液に含まれる重合物や重合禁止剤などが導入用管状部材に入り込み易い。そして、この重合物や重合禁止剤がリボイラに堆積して閉塞をもたらすことがある。なお、この重合禁止剤は易重合性化合物の製造工程で添加されたものである。重合物には、上流側設備から持ち込まれるものと、当該塔設備内で発生したものとがある。
【0006】
上記の閉塞に対する対策として、導入用管状部材に強制循環用のポンプが設けられている場合、導入用管状部材にストレーナを設け、重合物や重合禁止剤を濾別することがある。ところが、このストレーナの目開きを大きくすると、濾別が不十分となり、リボイラの閉塞防止効果が不十分となる。逆にストレーナの目開きを小さくすると、ストレーナの目詰りが頻発し、塔設備の操業が不安定になり易い。なお、自然循環型リボイラでは、このようなストレーナは設置できず、重合物や重合禁止剤のリボイラへの流入防止策は採用されていない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、リボイラへの重合物や重合禁止剤の流入を簡易な機構にて抑制することができ、これにより塔設備を長期にわたって安定に連続操業可能とすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の易重合性化合物用の塔設備(請求項1)は、易重合性化合物を処理するための塔設備であって、塔本体と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラとを有する易重合性化合物用の塔設備において、該導入用管状部材が塔本体の側面に連なっていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の易重合性化合物用の塔設備(請求項2)は、易重合性化合物を処理するための塔設備であって、塔本体と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラとを有する易重合性化合物用の塔設備において、該塔本体は、下端部に下方に突出するポット部を備えており、前記導入用管状部材が該ポット部の側面に連なっていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の易重合性化合物用の塔設備(請求項3)は、易重合性化合物を処理するための塔設備であって、塔本体と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラとを有する易重合性化合物用の塔設備において、該塔本体の下端から下方に塔底液の抜き出し用の管状部材が延設されており、前記導入用管状部材が該抜き出し用管状部材の側面に連なっていることを特徴とするものである。
【0011】
かかる本発明(請求項1〜3)にあっては、リボイラへの塔底液導入用管状部材が側方に延出している。この塔底液中に含まれる重合物や重合禁止剤は鉛直下方に流下しようとするので、該導入用管状部材へ入り込みにくい。このため、本発明によると、導入用管状部材を介してリボイラに流入する重合物や重合禁止剤の量が少なくなり、リボイラでの閉塞が防止される。
【0012】
本発明では、導入用管状部材の上流端付近、即ち導入用管状部材が塔本体、そのポット部あるいは抜き出し用管状部材へ連なる付近において、導入用管状部材が下流側に向って水平又は上り勾配となっていることが好ましい。このようにすれば、導入用管状部材内への重合物や重合禁止剤の流入量がさらに少ないものとなり、リボイラの閉塞がより確実に防止される。
【0013】
本発明の対象となる易重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステルの少なくとも一種が挙げられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1,2,3はそれぞれ実施の形態に係る易重合性化合物用の塔設備を示す塔下部付近の縦断面図、図4,5はこの塔設備を採用した蒸留装置及び分解反応装置の系統図である。
【0015】
図1,2,3の塔設備にあっては、塔本体1の塔底液が導入用管状部材としての導入ノズル3及び配管4を介してリボイラ5に導入され、加熱された後、配管6及びノズル7を介して塔本体1に戻されている。ノズル7は、塔本体1から突設されている。ノズル3,7の突出方向の先端にフランジ3a,7aが設けられており、配管4,6に設けられたフランジ4a,6aがそれぞれフランジ3a,7aに連結されている。
【0016】
図1,3にあっては、塔本体1の塔底鏡部下端から抜き出し用管状部材としての抜出ノズル2が鉛直下方に突設されている。図2にあっては、抜出ノズル2はポット部10の下端から鉛直下方に突設されている。この抜出ノズル2の下端に設けられたフランジ2aに対し抜出用配管11のフランジ11aが連結されている。
【0017】
図1の塔設備にあっては、導入ノズル3は塔本体1の下部側面から側方に突設されている。図2の塔設備にあっては、塔本体1は、下端部に下方に膨出するポット部10を備えており、導入ノズル3は該ポット部10の側面から突設されている。図3の塔設備にあつては、抜出ノズル2の側面から導入ノズル3が突設されている。
【0018】
いずれの塔設備にあっても、「抜き出し用管状部材の上流端付近」はこの導入ノズル3よりなる。この導入ノズル3は、水平もしくは下流側に向って上り勾配となるように設けられている。即ち、導入ノズル3は、下流側(リボイラ5に向う方向)に対し水平線に対する角度(仰角)θが0゜以上であり、好ましくは0〜85゜である。
【0019】
導入ノズル3の長さは、当該導入ノズル3の管径(内径以下、同様)の0.05倍以上、例えば0.08〜3倍であることが好ましい。この比が0.05未満のようなノズルは施工が難しく、3を超えると塔本体からの突出部が大きくなり、やはり施工上好ましくない。
【0020】
なお、図3の実施の形態では、抜出ノズル2の管径aと導入ノズル3の管径bとの比a/bは0.5以上、特に0.5〜2であることが好ましい。a/bが0.5よりも小さいと、塔底液中の固形分が導入ノズル3内に若干取り込まれ易くなる。
【0021】
いずれの実施の形態においても、導入ノズル3が水平又は上り勾配に設けられているので、塔本体1、ポット部10又は抜出ノズル2内の塔底液中に含まれる重合物や重合禁止剤が導入ノズル3内に入り込みにくく、従ってこれらがリボイラ5内に堆積して閉塞を生じさせることが防止される。
【0022】
図4は、図1の塔設備を採用したアクリル酸の蒸留装置であり、塔本体1は蒸留塔として用いられている。
【0023】
粗アクリル酸は、この蒸留塔1に導入されて蒸留され、塔底液の一部は抜出ノズル2、導入ノズル3、配管4、リボイラ5、配管6、ノズル7の順に循環される。また、塔底液は、抜出ノズル2、配管11、ポンプ12、配管13を介して残渣として取り出される。
【0024】
塔頂からの留出分は、配管19、凝縮用コンデンサ20を介して還流槽21に導入される。還流槽21内のアクリル酸の一部はポンプ22、配管23を介して塔頂に戻される。アクリル酸の残部は、この配管23から分岐した配管24を介して精製アクリル酸として取り出される。還流槽21内のガスは、ベントガスコンデンサ25で再度冷却され、凝縮したアクリル酸は還流槽21に戻り、ガス成分は真空設備26を経てベントガスとして取り出される。
【0025】
図4では図3の塔設備を採用しているが、図1又は図2の塔設備を採用してもよいことは明らかであり、この場合には、導入ノズル3の位置がそれぞれ図1,2の位置となるだけでその他の構成は図4の通りとなる。いずれの場合も塔底温度は60〜120℃特に70〜100℃が好ましく、圧力は1〜50kPa特に2〜20kPaが好ましい。
【0026】
図5は塔本体1をアクリル酸又はアクリル酸エステル製造工程で生じる高沸物の分解反応塔としたものであり、高沸物は該反応塔1に導入され、分解反応に供される。塔底液の一部は、抜出ノズル2、導入ノズル3、配管4、ポンプ40、リボイラ5、配管6、ノズル7を介して反応塔1に戻される。塔底液は、また、抜出ノズル2、配管11、ポンプ12、配管13を介して取り出される。
【0027】
ガス状分解生成物は、塔頂から配管29、塔頂ガス冷却熱交換器30を介して液槽31に導入される。液槽31内の液は、ポンプ32、配管33を介して回収液として取り出される。なお、配管33から分岐した配管34を介して塔底液の一部が前記熱交換器30に戻される。液槽31内のガスは、ベントガス冷却熱交換器35で冷却され、凝縮液は液槽に戻され、未凝縮ガスは配管36を介して取り出される。
【0028】
図5は図3の塔設備を採用しているが、図1,2の塔設備を採用してもよい。この場合は、導入ノズル3の位置が図1,2の通りとなり、その他の構成は図5の通りとなる。いずれの場合においても、分解反応温度は110〜250℃特に120〜230℃が好ましく、分解反応時間は0.5〜50時間(分解温度が低目のときは10〜50時間、高目のときは0.5〜10時間)が好ましく、圧力は減圧、常圧のいずれでもよい。
【0029】
本図に示す通り、本発明においては導入用管状部材の中間、リボイラの上流側にポンプを設けてもよい。
【0030】
以下、本発明の付随的事項について記述する。
【0031】
<易重合性化合物>
本発明の塔設備の取り扱い対象物である易重合性化合物として代表的なものは、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル類である。アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸メトキシエチル等が挙げられる。メタアクリル酸エステル類としても、これらと同様な化合物を挙げることができる。
【0032】
<アクリル酸又はアクリル酸エステル類を製造する工程>
アクリル酸を製造する工程としては、例えば、次の▲1▼〜▲3▼等が挙げられる。
▲1▼ プロピレン及び/又はアクロレインを接触気相酸化する酸化工程、酸化工程からのアクリル酸含有ガスを水と接触させてアクリル酸をアクリル酸水溶液として捕集する捕集工程、このアクリル酸水溶液から適当な抽出溶剤を用いてアクリル酸を抽出する抽出工程、引き続きアクリル酸と溶剤を分離後、精製工程を設けて精製し、更にアクリル酸ミカエル付加物、及び各工程で用いられた重合禁止剤を含む高沸液を原料として分解反応塔に供給して有価物を回収し、有価物は捕集工程以降のいずれかの工程に供給するもの
▲2▼ プロピレン及び/又はアクロレインを接触気相酸化してアクリル酸を製造する酸化工程、アクリル酸含有ガスを水と接触させてアクリル酸をアクリル酸水溶液として捕集する捕集工程、このアクリル酸水溶液を共沸分離塔内で、共沸溶剤の存在下に蒸留して塔底から粗アクリル酸を取り出す共沸分離工程、次いで酢酸を除去するための酢酸分離工程、更に高沸点不純物除去のために精製工程を設けて精製後のアクリル酸ミカエル付加物、及びこれらの製造工程で用いられた重合禁止剤を含む高沸液を原料として分解反応塔に供給して有価物を回収し、有価物は捕集工程以降のいずれかの工程に供給するもの
▲3▼ プロピレン及び/又はアクロレインを接触気相酸化してアクリル酸を製造する酸化工程、アクリル酸含有ガスを有機溶媒と接触させてアクリル酸をアクリル酸有機溶媒溶液として捕集し、水、酢酸等を同時に除去する捕集/分離工程、このアクリル酸有機溶媒溶液からアクリル酸を取り出す分離工程、さらに、これらの製造工程で用いられた重合禁止剤、有機溶媒、及びアクリル酸ミカエル付加物を含む高沸液を原料として分解反応塔に供給して有価物を回収し、有価物は捕集工程以降のいずれかの工程に供給する工程、有機溶媒を一部精製する工程からなるもの
【0033】
アクリル酸エステルを製造する工程は、例えば、アクリル酸とアルコールを有機酸、あるいはカチオン性イオン交換樹脂等を触媒として反応させるエステル化反応工程、反応で得られた粗アクリル酸エステル液を濃縮するための単位操作として抽出、蒸発、蒸留を行う精製工程よりなる。各単位操作は、エステル化反応のアクリル酸とアルコールの原料比、エステル化反応に用いる触媒種、あるいは原料、反応副生成物、アクリル酸エステル類それぞれの物性等により適宜選定される。各単位操作を経て、アクリル酸エステル精製塔で製品が得られる。精製塔塔底液はアクリル酸エステル類、β−アクリロキシプロピオン酸エステル類、β−アルコキシプロピオン酸エステル類、β−ヒドロキシプロピオン酸エステル類を主成分としたミカエル付加物を含み、更に製造工程で用いられた重合禁止剤を含む高沸液として分解反応塔に供給するか、あるいはプロセス内戻すことで有価物を回収する。
【0034】
アルコール種によっては、アクリル酸エステル製品の精製塔塔底以外の各種製造工程のいずれかから得られるアクリル酸、アクリル酸2量体(以下、ダイマー)、アクリル酸3量体(以下、トリマー)、β−アルコキシプロピオン酸類、β−アルコキシプロピオン酸エステル類を主成分とし、製造工程で用いられた重合禁止剤を含んだ高沸液もあり、ミカエル付加物を含む高沸液として分解反応塔に供給して有価物を回収し、有価物は反応工程、もしくは精製工程に供給されるものもある。
【0035】
上述のアクリル酸又はアクリル酸エステルのミカエル付加物とは、例えばアクリル酸を製造する場合のミカエル付加物として、アクリル酸2量体(以下、ダイマー)、アクリル酸3量体(以下、トリマー)、アクリル酸4量体(以下、テトラマー)等であり、アクリル酸エステルを製造する場合のミカエル付加物として、炭素数が2〜8のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル等の上述のアクリル酸エステルへのアクリル酸のミカエル付加物、具体的にはβ−アクリロキシプロピオン酸エステル、アルコールのミカエル付加物、具体的にはβ−アルコキシプロピオン酸エステル、ダイマー、トリマー、テトラマー、トリマーのエステル体、テトラマーのエステル体、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシプロピオン酸エステル類等が挙げられる。
【0036】
また、易重合性化合物であるアクリル酸又はアクリル酸エステル類の製造においては前述の通り、製造中の重合物の発生を抑制するために重合禁止剤が使用される。
【0037】
重合禁止剤として、具体的にはアクリル酸銅、ジチオカルバミン酸銅、フェノール化合物、フェノチアジン化合物等が挙げられる。ジチオカルバミン酸銅としては、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジアルキルジチオカルバミン酸銅、エチレンジチオカルバミン酸銅、テトラメチレンジチオカルバミン酸銅、ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ヘキサメチレンジチオカルバミン酸銅等の環状アルキレンジチオカルバミン酸銅、オキシジエチレンジチオカルバミン酸銅等の環状オキシジアルキレンジチオカルバミン酸銅等が挙げられる。フェノール化合物としては、ハイドロキノン、メトキノン、ピロガロール、カテコール、レゾルシン、フェノール、又はクレゾール等が挙げられる。フェノチアジン化合物としては、フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等が挙げられる。
【0038】
上記以外の物質もプロセスによっては含まれる場合があるが、その種類は本発明に影響しないことは明らかである。
【0039】
<蒸留塔>
本発明の蒸留塔とは、化学品プラントで一般に使用されるものである。
【0040】
蒸留塔の塔内には、トレイ、あるいは充填物が設置される。具体的には、トレイとしては、ダウンカマーのある泡鐘トレイ、多孔版トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクストレイ等、ダウンカマーの無いデユアルトレイ等がある。
【0041】
充填物としては、規則充填物として、スルザー・ブラザース(株)製のスルザーパック、住友重機械工業(株)製の住友スルザーパッキング、住友重機械工業(株)製のメラパック、グリッチ(株)製のジェムパック、モンツ(株)製のモンツパック、東京特殊金網(株)製のグッドロールパッキング、日本ガイシ(株)製のハニカムパック、ナガオカ(株)製のインパルスパッキング、三菱化学エンジニアリング(株)製のMCパック等がある。不規則充填物としては、ノートン(株)製のインタロックスサドル、日鉄化工機(株)製のテラレット、BASF(株)製のポールリング、マストランスファー(株)製のカスケード・ミニ・リング、日揮(株)製のフレキシリング等がある。
【0042】
本発明では、これらの種類に限定されることはなく、また一般に使用されるようにトレイ、及び充填物は1種類以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
<リボイラ>
本発明では、各塔に付属する塔底液加熱用熱交換器をリボイラとする。一般には塔内に設置される場合と塔外に設置される場合に大別されるが、本発明では塔外に設置されるものを対象とする。
【0044】
リボイラの型式としては特に限定されない。具体的には、竪型固定管板型、横型固定管板型、U字管型、2重管型、スパイラル型、角ブロック型、プレート型、薄膜蒸発器型等が挙げられる。
【0045】
<蒸発塔>
本発明の蒸発塔とは、化学品プラントで一般に使用されるものである。すなわち蒸発缶とリボイラを備え、必要によっては蒸発したガスを凝縮する冷却熱交換器、凝縮液を貯蔵する槽、凝縮液を送出するポンプ等で構成されるものである。本発明では何ら制限はない。
【0046】
<材質>
各塔の各種ノズル、塔本体、リボイラ、及び配管等の材質は、取り扱う易重合性化合物とその温度条件により選定されるが、本発明では制約とならない。例えば、易重合性物質として代表的な(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル類の製造においては、ステンレススチール類が良く使用されるがこれに限定されない。例えばSUS304,SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS317L、SUS327、あるいはハステロイ類が使用されるが、耐食性の観点からそれぞれの液物性に対応して選定すればよい。
【0047】
【実施例】
実施例1
図5の分解反応装置を用いて、高沸液の分解反応を実施した。なお、導入ノズル3の仰角θ=45°とした。また、ノズル2,3の管径a,bはいずれも155.2mm(6Bサイズ)であり、a/b=1である。配管41の管径は106.3mm(4Bサイズ)である。分解反応器は塔径1000mm、塔長2800mm、材質はハステロイCである。高沸液の組成はアクリル酸ブチル21重量%、β−ブトキシプロピオン酸ブチル65重量%、アクリロキシプロピオン酸ブチル4重量%、β−ヒドロキシプロピオン酸ブチル2重量%、ハイドロキノン3重量%、メトキシキノン2重量%、その他3重量%で、580kg/hで供給した。
【0048】
分解反応触媒として硫酸1重量%水溶液を供給液に対し10%重量比で供給し、反応圧力100kPa、分解温度190℃、滞留時間1時間で分解反応を実施した。その結果、塔底よりアクリル酸ブチル8.7重量%、β−ブトキシプロピオン酸ブチル62.5重量%、アクリロキシプロピオン酸ブチル2重量%、β−ヒドロキシプロピオン酸ブチル0.3重量%、ハイドロキノン8.7重量%、メトキシキノン5.8重量%、ブタノール0.8重量%、硫酸2.9重量%、その他9重量%で、200.1kg/hが反応残渣物として得られ、塔底より抜き出された。
【0049】
リボイラは竪型固定管板式熱交換器である。リボイラへの供給液量は、ポンプ40の出口に設置された流量計で測定され、初期値は32,000kg/hであった。塔底液は、リボイラの管側に流通させた。
【0050】
3ヶ月連続運転を行った後、運転を停止してリボイラを点検した。点検の結果、蓄積物は無く、また運転中のリボイラ供給液量は安定し、運転中の閉塞も無くかった。
【0051】
実施例2
導入ノズル3の仰角θ=0°(水平)としたこと以外は、実施例1と同様な操作を行った。
【0052】
3ヶ月連続運転を行った後、運転を停止してリボイラを点検した。点検の結果、蓄積物は無く、また運転中の閉塞も無かった。
【0053】
比較例1
導入ノズル3を塔本体1の最下部から鉛直下方に突設したこと以外は、実施例2と同様な操作を行った。
【0054】
2ヶ月運転後、リボイラ供給液量が徐々に減少し始めた。急遽、分解反応塔の運転を停止し、内部を点検した結果、リボイラの管に閉塞が確認された。
【0055】
実施例3
実施例1と同じ装置を用いて高沸液の分解を実施した。
【0056】
高沸液の組成は、アクリル酸45.3重量%、マレイン酸10重量%、アクリル酸ダイマー(アクリロキシプロピオン酸)42.4重量%、ハイドロキノン1.3重量%、フェノチアジン1重量%で、580kg/hで供給した。反応圧力72kPa、分解温度190℃、滞留時間1時間で分解反応を実施した結果、塔底よりアクリル酸8重量%、マレイン酸14重量%、アクリル酸ダイマー(アクリロキシプロピオン酸)67.2重量%、ハイドロキノン5.8重量%、フェノチアジン4.4重量%、オリゴマー、及びポリマー0.6重量%、130.5kg/hが反応残渣物として得られた。
【0057】
3ヶ月連続運転を行った後、運転を停止してリボイラを点検した。点検の結果、蓄積物は無く、また運転中のリボイラ供給液量は安定し、運転中の閉塞も無くかった。
【0058】
比較例2
導入ノズル3を塔本体1の最下部から鉛直下方に突設したこと以外は、実施例3と同様な操作を行った。
【0059】
1ヶ月運転後、リボイラ供給液量が徐々に減少し始めた。急遽、分解反応塔の運転を停止し、内部を点検した結果、リボイラの管に閉塞が確認された。
【0060】
実施例4
図4に示す蒸留装置において、内径1100mm、長さ20000mm、内部に多孔板(デュアルトレイ)21枚を設置したステンレス鋼製(SUS316)の蒸留塔を用いて粗アクリル酸の蒸留を行った。抜出ノズル2及び導入ノズル3は管径155.2mm(6Bサイズ)であり、導入ノズル3の仰角θ=0°(水平)である。配管4の途中にはポンプを設けた。配管4は導入ノズル3と同径である。粗アクリルモノマーとして、アクリル酸98.5重量%、マレイン酸0.3重量%、アクリル酸ダイマー0.3重量%を含む混合物を90℃にて1300kg/hで供給した。
【0061】
また、重合防止剤含有液体タンクよりアクリル酸にメトキノン8重量%、フェノチアジン1重量%を溶解した液をそれぞれ34kg/hと31kg/hで供給し、塔頂圧力2.8kPa、塔底圧力7.9kPa、塔頂温度53℃、塔底温度75℃で運転を実施することで、塔頂からは純度99.8重量%以上の高純度アクリル酸が得られた。
【0062】
リボイラは竪型固定管板式熱交換器で、リボイラへの供給液量は、配管4のポンプ出口に設置された流量計で測定され、初期値は68,000kg/hであった。塔底液は、リボイラの管側に流通させた。
【0063】
6ヶ月連続運転を行った後、運転を停止してリボイラを点検した。点検の結果、蓄積物は無く、また運転中のリボイラ供給液量は安定し、運転中の閉塞も無くかった。
【0064】
比較例3
導入ノズル3を塔本体1の最下部から鉛直下方に突設したこと以外は、実施例4と同様な操作を行った。
【0065】
4ヶ月運転後、リボイラ供給液量が徐々に減少し始めた。分解反応塔の運転を停止し、内部を点検した結果、リボイラの管に閉塞が確認された。
【0066】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、塔底液中の重合物や重合禁止剤がリボイラに流入することが抑制され、リボイラの閉塞が防止される。そのため、塔設備を長期にわたり連続して安定に運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る塔設備の下部の縦断面図である。
【図2】別の実施の形態に係る塔設備の下部の縦断面図である。
【図3】さらに別の実施の形態に係る塔設備の下部の縦断面図である。
【図4】実施の形態に係る塔設備を採用した蒸留装置の系統図である。
【図5】実施の形態に係る塔設備を採用した高沸物分解反応装置の系統図である。
【符号の説明】
1 塔本体
2 抜出ノズル
3 導入ノズル
5 リボイラ
21 還流槽
31 液槽
Claims (6)
- 易重合性化合物を処理するための塔設備であって、
塔本体と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラとを有する易重合性化合物用の塔設備において、
該導入用管状部材が塔本体の側面に連なっていることを特徴とする易重合性化合物用の塔設備。 - 易重合性化合物を処理するための塔設備であって、
塔本体と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラとを有する易重合性化合物用の塔設備において、
該塔本体は、下端部に下方に突出するポット部を備えており、
前記導入用管状部材が該ポット部の側面に連なっていることを特徴とする易重合性化合物用の塔設備。 - 易重合性化合物を処理するための塔設備であって、
塔本体と、該塔本体の塔底液が導入用管状部材を介して導入されるリボイラとを有する易重合性化合物用の塔設備において、
該塔本体の下端から下方に塔底液の抜き出し用の管状部材が延設されており、
前記導入用管状部材が該抜き出し用管状部材の側面に連なっていることを特徴とする易重合性化合物用の塔設備。 - 請求項3において、前記抜き出し用管状部材の管径aと前記導入用管状部材の管径bとの比a/bが0.5以上であることを特徴とする易重合性化合物用の塔設備。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記導入用管状部材の上流端付近は下流側に向って水平又は上り勾配となっていることを特徴とする易重合性化合物用の塔設備。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、易重合性化合物がアクリル酸及び/又はメタクリル酸又はそれらのエステルの少なくとも一種であることを特徴とする塔設備。
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