JP4437930B2 - アクリル酸類の蒸留精製方法 - Google Patents

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本発明は、アクリル酸類の蒸留精製方法に関し、詳しくは、各種化学製品の製造原料となるアクリル酸やアクリル酸エステルの製造過程で、不純物が取り除かれた高純度の精製物を得るための蒸留精製装置を用いてアクリル酸類を蒸留精製する方法を対象にしている。
アクリル酸やアクリル酸エステル(以下、まとめてアクリル酸類と呼ぶ)は、各種化学製品の製造原料として、広く使用されている。
アクリル酸類の工業的製造においては、アクリル酸類の使用目的や要求品質に対応させるために、製造されたアクリル酸類を精製することが行われる。アクリル酸類の製造においては、原料であるプロピレンから生成するマレイン酸等の副生物や製造過程で生成するダイマー酸などが不純物として含まれている可能性があり、これらの不純物を除去する精製工程が必要となる。
アクリル酸類の精製には、蒸留技術が適用される。蒸留による精製は、例えば、アクリル酸類を含む液を蒸発させて、アクリル酸類が多く含まれ不純物の少ない蒸気を取り出して凝縮させることによって、アクリル酸類の精製を行う。蒸気側に不純物、液側に目的物を得る場合もある。
精製効率を高めて高品質のアクリル酸類を製造したり、生産性を向上させたりするために種々の技術が提案されている。
特に、アクリル酸類は、易重合性物質であるため、精製装置内で重合物が生成されて、装置内壁に付着したり配管を閉塞させたりする問題がある。この問題を解決する技術が、数多く提案されている。
例えば、蒸留塔に対して直列に複数基の凝縮器を設置することで、凝縮器よりも下流側の装置内で重合物が生成して付着することを防止する技術がある(特許文献1参照)。
蒸留塔に連結され、蒸留塔内の液を加熱再沸騰させて循環させる再沸器に対して、蒸留塔への連結個所に蒸気分散装置を設置することで、蒸留塔内における蒸気の偏流を抑制し、蒸留塔内における重合物の生成付着を防止する技術がある(特許文献2参照)。
特開2001−131116号公報 特開2000−254403号公報
アクリル酸類の生産性を向上させるために精製装置を大型化すると、装置内部における重合物の生成付着が甚だしくなり、酷い場合には重合物で装置の内部配管が閉塞することも起こる。付着重合物の除去作業のために、装置の稼動を頻繁に止める必要があり、生産効率が低下してしまう。
特に、細い配管が多数配置された構造を有する再沸器では、細管内面に重合物が付着することで、細管の閉塞が起こり易く、閉塞は起こさなくても熱交換効率が大幅に低下してしまい、蒸留装置全体の性能が大きく低下してしまう。
前記した特許文献1、2に記載された従来の技術では、重合物の生成および付着を十分に防止することができなかった。特に大型の精製装置では、比較的に短期間の稼動でも、重合物の付着による性能低下が起こり、稼動を停止して重合物の除去作業を行う必要があった。
本発明の課題は、アクリル酸類の精製における前記問題を解消し、精製装置の内部における重合物の付着を起こり難くして、アクリル酸類の精製工程における生産性を向上させることである。
本発明にかかるアクリル酸類の蒸留精製方法(以下、単に「精製方法」という。)は、アクリル酸とそのエステルを包含するアクリル酸類を含む液が供給され、塔頂からは蒸気が取り出され、塔底からは液が取り出される蒸留塔と、前記蒸留塔の塔頂側に連結され、蒸留塔から取り出された蒸気が供給され、蒸気を凝縮させ、凝縮液の一部を蒸留塔に還流させ、残りの凝縮液を取り出す凝縮器と、前記蒸留塔の塔底側に連結され、蒸留塔内の液が供給され、供給された液を加熱し沸騰させて蒸留塔に戻す再沸器とを備えるアクリル酸類の蒸留精製装置(以下、単に「精製装置」という。)を用いてアクリル酸類を蒸留精製する方法において、前記蒸留塔内の液を分割して前記蒸留塔に対し並列に設置されている複数基の再沸器に送り、それぞれの再沸器での液の加熱沸騰で生じた蒸気を前記蒸留塔に戻すことにより、該蒸留塔内の蒸気流れの偏りを抑制してアクリル酸類の重合を防止する、ことを特徴とする。
本発明にかかるアクリル酸類の精製方法では、蒸留塔に対して並列に配置された複数基の再沸器で、蒸留塔に収容された液を再沸騰させることにより、1基の再沸器だけで再沸騰処理を行う場合に比べて、再沸騰の処理能力を損なったり精製作業の品質性能を損なったりすることなく、装置内部における重合物の付着やそれに伴う閉塞を防止することができる。蒸留塔内における液体あるいは蒸気の偏流をなくして、内部温度の安定を図り、蒸留精製処理の安定化および効率向上を達成できる。
その結果、装置内部の点検や洗浄作業などの間隔を延ばしたり省略したりすることができ、長期間にわたって高品質の精製作業を持続的に実行することができ、アクリル酸類の生産効率の向上あるいは生産コストの低減にも大きく貢献できる。
以下、本発明にかかるアクリル酸類の精製方法やこれに用いる精製装置について詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔アクリル酸類の精製〕
本発明において、アクリル酸類とは、アクリル酸、アクリル酸エステルを包含する概念である。具体的には、アクリル酸エステルとして、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ジアルキルアミノエチルエステルが挙げられる。
これらのアクリル酸類の基本的な製造技術は、通常のアクリル酸類の製造技術を適用できる。原料や反応条件などは、アクリル酸類の使用目的や要求品質に合わせて、通常のアクリル酸類の製造技術を組み合わせて設定すればよい。
反応生成されたアクリル酸類には、未反応の原料や、反応時に添加された添加物、反応に伴う副生物などの不純物が含まれている。使用目的および要求品質に合わせて、好ましくない不純物を除去し、高純度のアクリル酸類を得るために、放散塔、共沸脱水塔、軽沸物分離塔、高沸物分離塔などによる精製工程が行われる。
精製工程で除去すべきものとしては、反応ガスの捕集溶剤である水、高沸点不活性疎水性有機液体(ジフェニルエーテル、ジフェニルなど)、不純物であるマレイン酸、ダイマー酸、酢酸、ホルムアルデヒド、アクロレイン、プロピオン酸、アセトン、フルフラール、ベンズアルデヒド、プロトアネモニンなどが含まれる。通常、不純物の含有量は、好ましくは0.01〜10重量%である。精製工程によって得られるアクリル酸類の純度は、好ましくは99.0〜99.99重量%である。
アクリル酸類の精製装置として、蒸留塔、凝縮器および再沸器を備えた装置を用いる。
〔蒸留塔〕
アクリル酸類を含む液が供給され、目的とするアクリル酸類を含む蒸気あるいは液を取り出す機能を果たす。
基本的には、通常の蒸留装置に利用されている蒸留塔と同様の装置が使用できる。
一般的な蒸留塔には、棚段塔や充填塔が知られている。蒸留塔内における重合物の生成防止の点では棚段塔が好ましい。棚段塔のうち、無堰シープトレイを使用するものが好ましい。
アクリル酸類の精製を行う蒸留塔の塔内温度は、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下に設定する。塔内温度が高過ぎると、重合物を生成し、圧損上昇、配管閉塞の原因となる。塔内温度は、再沸器による加熱条件や蒸留塔に備えた加熱装置によって調整できる。塔内温度は出来るだけ変動が少なく安定していることが望ましい。具体的には、蒸留塔内の同じ位置で測定された温度の変動幅を、0〜10℃に収めることが好ましい。特に、共沸脱水塔の場合は、塔内における組成変化が激しいため、同じ位置での温度変動幅が大きくなる傾向がある。
蒸留塔の形状や大きさは、内部構造や処理方法、処理すべきアクリル酸類の量などによって変わるが、通常、蒸留塔の外形は、円筒状をなしていることが好ましい。蒸留塔の外形が円筒状をなしている場合、蒸留塔の外径は、好ましくは0.5〜6m、より好ましくは2〜6mに設定できる。蒸留塔の高さは、好ましくは2〜40mである。蒸留塔の容量は、好ましくは0.5〜1000mに設定できる。
蒸留塔には、蒸留原料であるアクリル酸類の導入管や、再沸器あるいは凝縮器との間で液を循環させる管路が設けられる。蒸留塔と再沸器との間は、蒸留塔から液を取り出して、再沸器に液を供給する液取出管と、再沸器から蒸留塔に蒸気を戻す蒸気返戻管とで連結される。液取出管には、外部に液を送り出す送出管が連結される。蒸留塔と凝縮器との間は、蒸留塔から蒸気を取り出して凝縮器に供給する蒸気取出管と、凝縮器で凝縮された凝縮液を蒸留塔に戻す液返戻管とで連結される。液返戻管には、精製物を取り出す精製物取出管が連結される。
各配管は、蒸留塔の外周面に直交する方向で連結されるのが普通であるが、蒸留塔の外周面に対して傾斜した方向で連結することもできる。例えば、蒸留塔の外周側面に対して、蒸留塔の中心軸に向けて連結するほか、中心軸から少しずれた方向に向けて連結することもできる。水平方向あるいは垂直方向のほか、上下の斜め方向に向けて連結することもできる。
蒸留塔に対する配管の連結位置および方向を調節することによって、配管と蒸留塔の間を出入りする液や蒸気の流れが変わり、蒸留塔内の流れを均等化させたり偏流を防止したりすることができる。
各配管には、必要に応じて、ポンプや、圧力調整弁、流量調整弁、逆止弁、安全弁、ドレイン弁などの弁類、流量計、温度計などを設置することができる。
蒸留塔には、蒸留塔内の温度や圧力を検知する測定器やセンサなども設置される。蒸留塔内の圧力を調整する加圧装置や減圧装置を組み込むこともできる。
蒸留塔に供給される未精製のアクリル酸類の流量は、好ましくは0.5〜100m/hに設定できる。
蒸留塔には、アクリル酸類の重合防止を目的として、重合禁止剤を供給することができる。重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、酢酸マンガン、ジブチルジチオカルバミン酸銅、N−オキシル化合物、ハイドロキノン、フェノチアジンその他の公知の重合禁止剤が使用できる。これらの重合禁止剤は、アクリル酸類、共沸溶剤、水などに配合しておいて、蒸留塔の塔頂あるいは塔中から供給することができる。空気、酸素などの分子状酸素含有ガスを、塔底や再沸器下部から吹き込むことも、重合防止に有効である。
〔再沸器〕
蒸留塔の塔底側に連結され、蒸留塔に収容された液が供給され、供給された液を加熱し沸騰させて蒸留塔に戻す機能を果たす。
基本的には、通常の蒸留装置に利用されている再沸器と同様の装置が使用できる。
再沸器として、多管式、スパイラル式、プレート式などの形式が知られている。何れの形式も使用できる。再沸器内部での重合物の生成付着を防止するには、多管式が好ましい。多管式の中でも、竪型管内蒸発構造のものが好ましい。
再沸器には、供給液を流通させる細管と、細管を収容し熱媒体が流通する胴部とを備え、細管の管壁を介して、供給液と熱媒体との間で熱交換を果たす。
再沸器の寸法や容量は、アクリル酸類の精製処理に要求される能力に合わせて設定される。本発明では、複数基の再沸器を用いるので、複数基の再沸器の綜合的な能力が、精製装置全体に要求される処理性能を満足するように設定すればよい。
再沸器の細管内径は、好ましくは10〜50mmに設定できる。より好ましくは15〜35mmである。細管長は、好ましくは1〜7m、より好ましくは2〜6mである。再沸器に組み込む細管の本数は、好ましくは10〜3000本である。胴部の径は、好ましくは0.2〜4mに設定できる。より好ましくは2m以下である。再沸処理能力から設計された胴部の径が太くなる場合は、再沸器を複数基に分割して、個々の再沸器の胴部径が太くなり過ぎないようにすることで、再沸器内での重合防止が良好に達成できる。
再沸器に導入される熱媒体は、水蒸気、有機溶媒であるフェニルエーテル系熱媒などが利用される。熱媒体の温度は、好ましくは80〜250℃である。水蒸気の圧力は、好ましくは0.6MPaG以下、より好ましくは0.4MPaG以下に設定できる。
再沸器には、処理液が供給される供給口と、再沸処理された蒸気を送り出す返戻口が設けられ、供給口は蒸留塔の液取出管に連結され、返戻口は蒸留塔につづく蒸気返戻管に連結される。
処理液の流量は、好ましくは1〜3000m/hに設定される。再沸器と蒸留塔との間における処理液あるいは蒸気の循環は、ポンプなどによる強制循環と処理液の自重や蒸気の上昇力などによる自然循環との両方が可能である。通常は、稼動エネルギーが低減できる自然循環を利用するのが好ましい。
1基の蒸留塔に対して、複数基の再沸器が並列に設置される。並列とは、同じ処理液を分割して複数基の再沸器に送り、それぞれの再沸器で再沸処理させることを意味する。同じ処理液を、一つの再沸器で処理した後、その処理後の液を別の再沸器に送ってさらに処理するという複数基の再沸器の直列配置と対峙する技術概念である。
複数基の再沸器は、方式や寸法形状、処理能力などが違っていても良いが、通常は、同一仕様の再沸器を組み合わせるのが、効率的な処理が可能であり、再沸器の製造および保守管理も容易であり、実用的である。同一仕様とは、基本的な形状寸法が同一の機器を意味する。基本的仕様は同一で対称構造の機器も、実質的に同一仕様に含まれる。
再沸器は、蒸留塔内で塔底側に溜まる液を処理するために、蒸留塔の塔底側に配置される。複数基の再沸器を蒸留塔の周囲に均等に、あるいは、対称的に配置するのが、複数基の再沸器の能力を効率的に発揮させることができ、再沸器の保守管理も容易である。具体的には、蒸留塔は垂直方向に延びているので、蒸留塔の中心軸と直交する水平方向で、蒸留塔の中心に対して、点対称になる位置に複数基の再沸器を配置できる。2基の再沸器であれば、蒸留塔の直径延長上で等距離の位置にそれぞれの再沸器を配置することができる。
複数基の再沸器と蒸留塔とを連結する液取出管および蒸気返戻管の配置も、蒸留塔を中心にして均等あるいは対称にするのが好ましい。
具体的には、蒸気返戻管は、複数基の再沸器毎に別々に設け、各蒸気返戻管の蒸留塔への連結位置が、高低差で好ましくは0〜1mであり、水平方向で蒸留塔の中心に対して挟角が好ましくは20〜180°になるように設定できる。より好ましくは60°以上、さらに好ましくは100°以上である。挟角とは、隣接する2本の蒸気返戻管について、それぞれの連結位置から蒸留塔の中心に延ばした仮想線で挟まれた角度を意味する。挟角が広いほど、複数方向から均等に蒸留塔の内部へと再沸蒸気を送り込むことができ、蒸留塔内部における処理液あるいは蒸気の偏流を防止できる。再沸器の設置数が2基の場合に取り得る最大の挟角は、好ましくは180°である。再沸器の設置数が増えれば、最大挟角は小さくなる。連結位置の高さの差も少ないほうが、蒸留塔内部における処理液あるいは蒸気の偏流防止に有効である。
蒸留塔から再沸器に処理液を供給する液取出管の、蒸留塔への取付位置も、蒸留塔から均等に処理液を取り出すことができるようにすれば、蒸留塔内における処理液の滞留や温度の偏りなどが防止できる。具体的には、蒸気返戻管と同様に、高さ位置の差を少なくしたり、挟角を広くしたり、蒸留塔の外周で均等あるいは対称位置に設置することが有効である。
液取出管を、一端が蒸留塔の塔底中央に連結され、他端は複数方向に分岐して、それぞれの再沸器に連結されてなる分岐構造に設定できる。また、複数基の再沸器を、別々の液取出管で蒸留塔の塔底と連結することもできる。何れの場合も、各配管の長さ、曲がり、連結高さ位置などを同じ条件にして、塔底から各再沸器までの液通過圧損に差が生じないようにすることが望ましい。このような構造であれば、蒸留塔からの処理液の取り出しが特定の再沸器に偏ることが避けられる。
蒸気返戻管についても、液取出管と同様に、各再沸器から蒸留塔までのガス通過圧損が同等になるように、配管の設置条件を設定することが望ましい。配管内での重合防止の観点から、配管は極力短くするのが望ましい。再沸器から蒸留塔まで最短距離で直接に連結するのが好ましい。蒸気返戻管は、それぞれの再沸器毎に別々に設けておくことで、蒸留塔におけるガス分散を良好にできる。
〔凝縮器〕
蒸留塔の塔頂側に連結され、蒸留塔から取り出された蒸気が供給され、供給蒸気を凝縮させ、凝縮された液の一部を蒸留塔に還流させ、残りの液を取り出す機能を果たす。
基本的には、通常の蒸留装置に利用されている凝縮器と同様の装置が使用できる。再沸器も凝縮器も、熱交換機能を果たす点では共通しているので、凝縮器の形式、構造、寸法形状などは、前記した再沸器の場合と共通する条件が採用できる。
凝縮器にも、多管式、特に竪型管内凝縮構造のものが好ましく使用される。
1基の蒸留塔に対して、凝縮器は1基だけを設置してもよいし、前記した再沸器と同様に、複数基を設置することもできる。この場合も、蒸留塔に対して並列に配置することが望ましく、前記した再沸器と同様の配置条件が採用できる。
凝縮器の熱媒体は、蒸留塔から送られた蒸気を冷却する低温の熱媒体あるいは冷却媒体である。熱媒体としては、通常の凝縮器と同様の材料が使用できる。具体的には、水、エチレングリコール水溶液が好ましく挙げられる。熱媒体としては、融点が低く、粘度の低い熱媒体材料が好ましい。エチレングリコール水溶液はエチレングリコール濃度10〜50重量%のものが好ましい。熱媒体の温度は、好ましくは0〜50℃に設定される。
凝縮器の寸法や容量は、アクリル酸類の精製処理に要求される能力に合わせて設定される。凝縮器を複数基用いる場合は、複数基の凝縮器の綜合的な能力が、精製装置全体に要求される処理性能を満足するように設定すればよい。
複数基の凝縮器を用いる場合、細管や胴部などの仕様は、再沸器と同程度の範囲に設定できる。凝縮器が1基の場合には、それよりも大容量のものになる。特に、胴部の径は、3m以下になるように設定しておくことが好ましい。胴部の径が太くなり過ぎる場合は、凝縮器も複数基を用いたほうが良い。
凝縮器には、蒸留塔から蒸気が送られる蒸気取出管と、凝縮処理された液を蒸留塔に送り返す液返戻管が連結される。複数基の凝縮器を用いる場合、それぞれの凝縮器と蒸留塔との間を、別々の蒸気取出管あるいは液返戻管でつないでもよいし、複数基の凝縮器に連結された複数の蒸気取出管あるいは液返戻管を途中で合流させて蒸留塔と連結することもできる。
蒸気取出管および液返戻管の蒸留塔への連結位置が複数に分かれる場合、再沸器の場合と同様に、高さ位置の差を少なくしたり、広い挟角に設定したりするのが好ましい。
蒸留塔から凝縮器に供給される蒸気の流量は、好ましくは1〜100ton/hに設定できる。凝縮器と蒸留塔との間における蒸気あるいは凝縮液の循環は、強制循環あるいは自然循環の何れもが採用できる。
凝縮器から送り出された凝縮液は、一部は蒸留塔に還流させ、残りはアクリル酸類の精製品として取り出すことができる。後段のアクリル酸類の処理装置に送り込むこともできる。
〔精製方法〕
本発明の精製装置を使用する以外は、基本的には、通常のアクリル酸類を蒸留精製する方法と共通する技術が適用できる。
再沸器が複数基であるので、蒸留塔から再沸器に再沸処理する液を供給する際に、複数基の再沸器に分割して供給する。このとき、複数基の再沸器に等分に供給するのが好ましい。これによって、蒸留塔および各再沸器における重合物の生成付着を防止し、効率的な再沸処理が行える。特に、再沸器の返戻管から蒸留塔に戻される蒸気が、蒸留塔内で偏流を生じることが防止でき、蒸留塔における蒸留処理が良好に行われる。複数器の再沸器の処理能力を均等に発揮させて、綜合的な処理能力を高め、効率的な再沸処理が行える。
複数基の再沸器が同一仕様で、蒸留塔に対して均等あるいは対称に並列配置されていれば、処理液の等分供給は容易である。
〔精製装置の構造〕
図1、2に示す精製装置は、1基の蒸留塔に対して、再沸器と凝縮器とをそれぞれ2基づつ並列で備えている。
図1に示すように、蒸留塔10は、上下に長い筒状のタンクを有する塔構造を備えている。蒸留塔10の高さ方向の途中には、処理液の導入管12が連結されている。蒸留塔10の上部には、蒸留塔10で生成された蒸気を取り出す蒸気取出管22が連結されている。蒸留塔10の塔底中心には、処理液を取り出す塔底液取出管32が連結されている。
塔底液取出管32は、3方向に分岐している。その一方は外部に液を送り出す送出管16である。残りの2方向は、蒸留塔10に対して対称形に延びて、それぞれが別の再沸器30に連結されている。
<再沸器>
再沸器30は、蒸留塔10から取り出された液を加熱し沸騰させる熱交換器としての機能を有する。再沸器30として、全体が概略円筒状をなす多管式竪型管内蒸発構造のものが用いられる。再沸器30の下端側から液が供給され、上端側から沸騰した液すなわち蒸気を送り出す。
再沸器30の下端には、蒸留塔10の塔底液取出管32の一端が連結されている。塔底液取出管32の別の一端は、蒸留塔10の中心軸Cが塔底を貫通する個所に連結されており、蒸留塔10の連結個所から下方に延びて、左右に分岐したあと、左右の再沸器30に連結されている。塔底液取出管32の分岐位置には、送出管16が連結されている。
再沸器30の上端には蒸気返戻管34が連結され、蒸気返戻管34の他端は蒸留塔10の外周側面に連結されている。再沸器30には、加熱媒体を循環させる熱媒体管36,36を備えている。
左右の再沸器30は、全く同じ仕様の再沸器30、30が対称的に配置されている。すなわち、同じ高さ位置で蒸留塔10から同じ距離だけ離れて平行に配置されている。図2に示す平面形状では、左右一対の再沸器30が、蒸留塔10の中心軸Cに対して、直径方向で対称位置に配置されている。再沸器30の上端に連結された蒸気返戻管34が、蒸留塔10の半径方向を中心軸Cに向かって延び、蒸留塔10の外周面の対称位置に連結されている。一対の再沸器30、あるいは、蒸気返戻管34の蒸留塔10への取付位置が、中心軸Cに対してなす挟角θ=180°である。
<凝縮器>
蒸留塔10の塔頂側で側方には、2基の凝縮器20、20が並列に配置されている。
凝縮器20も、再沸器30と同様に、全体が概略円筒状をなす多管式竪型管内凝縮構造のものが用いられる。凝縮器20の上端側から蒸気が供給され、下端側から凝縮液を送り出す。それぞれの凝縮器20の上端には、蒸留塔10につづく蒸気取出管22が連結されている。蒸気取出管22は、凝縮器20との連結側では2本に分岐しているが、途中で合流して蒸留塔10の外周側面に連結されている。凝縮器20の下端には凝縮液の返戻管24が連結され、液返戻管24は合流して、蒸留塔10の外周側面に連結されている。液返戻管24は、合流位置よりも下流側で、蒸留塔10への連結経路と分かれて、精製液を取り出す凝縮液取出管14に連結されている。凝縮器20には、冷却媒体が循環する熱媒体管26,26も備えている。
図2に示すように、凝縮器20の平面配置は、蒸留塔10の側方で、蒸留塔10の中心軸Cを通る直径線に対して線対称になる位置にそれぞれ凝縮器20が配置されている。蒸気取出管22も、同様に線対称に配置されている。左右の蒸気取出管22が合流したあとは対称軸に沿って蒸留塔10に連結されている。図示を省略しているが、凝縮液の液返戻管24も蒸気取出管22と同様の配置構造が採用できる。
〔精製工程〕
導入管12から蒸留塔10に、別工程あるいは別装置で製造されたアクリル酸類の未精製液が供給される。
蒸留塔10の内部に溜まった未精製液は、塔底液取出管32、一対の再沸器30および蒸気返戻管34との間を還流する。再沸器30では、熱媒体管36に加熱媒体を供給することで、還流する液体を加熱沸騰させて、蒸留塔10に送り返す。
蒸留塔10内で、未精製液の蒸気は上昇する。未精製液に含まれる成分の特性の違いによって、未精製液に含まれるアクリル酸類は蒸留塔10の上部まで上昇するが、不純物は途中までしか上昇できずに落下する。蒸留塔10の上部まで上昇した蒸気には、アクリル酸類の純度が高く、不純物の含有量が少ない。
蒸留塔10の上部で、蒸気取出管22に送り出された蒸気は、凝縮器20で凝縮されて、液返戻管24に送り出される。液返戻管24に送り出された凝縮液は、高純度に精製されたアクリル酸類であり、凝縮液の一部は凝縮液取出管14から取り出して製品となる。
残りの凝縮液は、蒸留塔10に戻され、蒸留塔10の塔底側に移行して、塔底側に溜まった処理液に戻る。
再沸器30における蒸留塔10内の処理液の再沸処理、および、凝縮器20における精製アクリル酸類の回収を連続的に実行することで、導入管12から供給された未精製のアクリル酸類を、連続的に精製処理して回収することができる。
このような精製処理においては、蒸留塔10、再沸器30、凝縮器20や、それらをつなぐ配管22、24、32、34などの内部において、アクリル酸類が重合を起こすことがある。アクリル酸類の重合は、アクリル酸類を含む液や蒸気が凝縮した液が滞留する個所で生じ易い。液や蒸気の流れに偏った流れが生じると、流れが滞る部分で重合物が装置内壁に付着し易い。例えば、多数の細管が配置された再沸器30あるいは凝縮器20では、一部の細管で流れが滞ると細管内壁に重合物が付着して流れ難くなったり、細管が閉塞してしまったりすることも起こる。蒸留塔10の内部で、液体あるいは蒸気の流れに偏りが生じると、流れが滞り易い個所で、蒸留塔10の内壁あるいは内部の設置部材に重合物の付着が生じ、蒸留作用に支障が生じる。
しかし、前記実施形態では、蒸留塔10に対して対称構造で並列に配置された2基の再沸器30に、蒸留塔10内の液体を等分に供給して再沸処理を行わせている。再沸能力が同じ1基の大容量、大型の再沸器30を使用するのに比べて、再沸器30の内部における重合物の生成付着が起こり難くなる。これは、再沸器30が大容量、大型になるほど、多数の細管の間で液体の流速や流量に差が生じ易い。例えば、再沸器30の中心部分と外周部分とでは、流れに違いが生じることは避け難い。加熱媒体による加熱作用も、中心側と外周側とでは違ってくる可能性がある。2基の比較的小型の再沸器30で、1基の大型再沸器30と同じ処理能力を果たすようにすると、それぞれの再沸器30の内部における液体の流れのバラツキや偏りは少なくなり、重合物の生成付着の可能性が低減される。
凝縮器20についても、同じように、1基の大型凝縮基20に比べて、同じ処理能力を2基の比較的に小型の凝縮器20で果たすことにより、凝縮器20の内部における蒸気あるいは凝縮液の流れが適切になり、重合物の生成付着の可能性が低減される。
2基の再沸器30から蒸留塔10への蒸気返戻管34の連結位置が、蒸留塔10に対して対称的に配置されているので、蒸留塔10に戻された蒸気の流れが蒸留塔10の平面方向で均等になり、局部的な流れの偏りが生じ難くなる。これによって、蒸留塔10の内部における重合物の生成付着も防止できる。蒸留塔10内における蒸留作用も全体で均等になり効率的な蒸留作用が達成できる。
〔装置構造の別例〕
図3、4に示す実施形態は、基本的な装置構成は前記実施形態と共通しているが、凝縮器20と蒸留塔10との配管連結構造が相違する。
図3に示すように、2基の凝縮器20、20は、互いに独立した配管経路で蒸留塔10と連結されている。蒸留塔10から凝縮器20へと蒸気を供給する蒸気取出管22、凝縮器20から蒸留塔10に凝縮液を戻す液返戻管24が、それぞれの凝縮器20毎に設けられている。それぞれの液返戻管24の途中には液送出管14が連結されている。なお、図では省略しているが、2本の液送出管14は合流させて、次の工程へつづいていてもよい。
図4に示すように、平面構造では、2基の凝縮器20、20が、蒸留塔10の直径を対称軸にして左右対称位置に配置されている。各凝縮器20の蒸気取出管22および液返戻管24は、蒸留塔10の半径方向から中心Cに延びて、蒸留塔10に連結され、互いの挟角θをなしている。図では、再沸器30とともに表示するために、挟角θが60°程度の狭い角度に設定されているが、より広い挟角θを取ることもできる。例えば、再沸器30と同じ挟角θ=180°に設定することもできる。
以下に、実施例と比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではない。
本発明の精製装置を具体的に構築し、アクリル酸類の精製処理を行った結果を示す。
〔実施例1〕
基本的に図3、4に示す構造の精製装置を用いた。
<蒸留塔>
塔径4m、無堰シープトレイ50段装備、材質SUS316。
<凝縮器>
竪型多管式凝縮器を用いた。2基の凝縮器を、図4において挟角θ=180°すなわち蒸留塔10の直径延長線上に配置した。
細管:外径38.1mm、管壁厚2.11mm、長さ3048mm。
本数1160本、材質SUS316。
胴部:外径1800mm。
<再沸器>
竪型多管式再沸器を用いた。2基の再沸器を図4に示す配置で設置した。
細管:外径38.1mm、管壁厚み2.11mm、長さ4000mm。
本数894本、材質SUS316。
胴部:外径1600mm。
2基の再沸器の挟角:θ=180°。
<精製作業>
未精製のアクリル酸含有液(アクリル酸96.5重量%、アクリル酸ダイマー1.9重量%、マレイン酸0.4重量%、フェノチアジン200重量ppmを含む)を、導入管12から蒸留塔10に、18.7m/hで供給した。
蒸留塔10の塔頂圧力3.3kPa、還流比1.5の処理条件で蒸留を行い、塔頂の蒸気取出管22に、アクリル酸99.9重量%とマレイン酸40重量ppmとを含む蒸気を得た。未精製液に比べて、アクリル酸の純度が高まり、アクリル酸ダイマーなどの不純物の大部分が除去されている。
得られた蒸気は、一対の凝縮器20、20にそれぞれ口径1800mmの蒸気取出管22から供給され、56℃から40℃まで凝縮させた。凝縮器20の熱媒体管26には、30℃の冷却水を通水した。液返戻管24に送り出された凝縮液は、一部が蒸留塔10に戻され、残りは凝縮液取出管14に取り出した。
蒸留塔10の塔底側では、塔底液が口径1100mmの塔底液取出管32から一対の再沸器30、30へと自然循環によって送られた。塔底液の一部は送出管16から抜き出された。再沸器30では、液体が蒸発させられ、口径1250mmの蒸気返戻管34から蒸留塔10に戻された。再沸器30の熱媒体管36には、0.6MPaGの飽和水蒸気を供給した。再沸器30の下部から分子状酸素ガス20Nm/hを供給した。分子状酸素ガスは、重合防止機能を果たす。
上記の稼動条件で、精製装置を1ヶ月稼動させた。稼動終了後、装置内部を点検した。蒸留塔10、凝縮器20および再沸器30のいずれについても、内部に重合物はほとんど認められなかった。
〔比較例1〕
実施例1の精製装置で、凝縮器20および再沸器30を下記のとおりに変更した。
<凝縮器>
竪型多管式凝縮器を1基だけ設置した。
細管:外径38.1mm、管壁厚2.11mm、長さ3048mm。
本数2320本、材質SUS316。
胴部:外径2500mm。
実施例1の凝縮器に比べて、1基当たりの細管本数が多く、胴部の径も大きい。凝縮処理能力としては、実施例1における2基の凝縮器の合計と同等である。
<再沸器>
竪型多管式再沸器を1基だけ設置した。
細管:外径38.1mm、管壁厚み2.11mm、長さ4000mm。
本数1788本、材質SUS316。
胴部:外径2250mm。
実施例1の再沸器に比べて、1基当たりの細管本数が多く、胴部の径も大きい。再沸処理能力としては、実施例1における2基の再沸器の合計と同等である。
<精製作業>
実施例1と同じ条件で稼動させた。蒸留塔10の塔頂からは、アクリル酸99.9重量%、マレイン酸180重量ppmを含む蒸気が得られた。精製物そのものは実施例1とそれほど大きな違いはない。
ところが、稼動21日後に、蒸留塔10内の圧力損失が上昇したために、稼動を停止した。蒸留塔10、凝縮器20および再沸器30の内部を点検したところ、蒸留塔10の内部に設置されたトレイ上に55kgの重合物が蓄積していた。凝縮器20の内部の上管板には2kgが蓄積していた。再沸器30は、57本の細管が重合物で閉塞してしまっていた。
〔実施例2〕
図1、2に示す構造の精製装置を用いた。基本的には実施例1と共通する仕様を採用したが、凝縮器の構造が異なる。異なる仕様項目のみを説明する。
<凝縮器>
基本的には実施例1と共通する。異なる仕様項目は以下のとおりである。
細管:長さ6096mm、本数2948本。
胴部:外径2800mm。
2基の凝縮器と蒸留塔10との連結構造として、図2に示すように、分岐構造の蒸気取出管22および液返戻管24を用いた。
<精製作業>
未精製のアクリル酸含有水溶液(アクリル酸67.5重量%、酢酸2.2重量%、水28.6重量%、残りはマレイン酸、アセトアルデヒド、アクロレインなどと、ハイドロキノン200重量ppmを含む)を、導入管12から蒸留塔10の第23段に、23.0m/hで供給した。
蒸留塔10の塔頂圧力18.7kPaで共沸蒸留を行った。塔頂の蒸気取出管22から取り出され凝縮器20で凝縮処理された塔頂液は、2相に分離しており、共沸剤のトルエン相は全て蒸留塔10に還流させた。水相は廃水として留出させた。還流量は60m/hであった。還流液には重合禁止剤であるフェノチアジン150重量ppmを添加した。
その結果、塔底液として、アクリル酸96.2重量%、酢酸300重量ppmからなる精製物が得られた。
蒸留塔10から凝縮器20へ蒸気を導入した蒸気取出管22は、蒸留塔10側では口径1800mm、2基の凝縮器20、20に連結される分岐部分の口径1300mmであった。凝縮器20内で46℃から37℃まで冷却して凝縮させた。凝縮器20の熱媒体管26には30℃の冷却水を通水した。
蒸留塔10から再沸器30に至る塔底液取出管32は口径1300mmであった。再沸器30で液体から沸騰された蒸気は、口径1250mmの蒸気返戻管34から蒸留塔10に戻った。再沸器30と蒸留塔10との間における液あるいは蒸気の循環は自然循環で行った。再沸器30の熱媒体管36には、0.6MPaGの飽和水蒸気を供給した。それぞれの再沸器30の下部から分子状酸素ガス100Nm/hを供給した。
上記の条件で1ヶ月稼動を続けた。蒸留塔10の内部温度は安定していた。例えば、29段温度は93〜97℃の範囲であった。稼動終了後、各装置内部を点検したところ、蒸留塔10、凝縮器20、再沸器30および各配管の何れにも、内部に重合物の付着は認められなかった。
〔比較例2〕
実施例2を基本にして、以下の装置仕様および作業条件を変更した。
蒸留塔10および凝縮器20とその配置構造は、実施例2と共通するが、再沸器30は以下の仕様のものを1基だけで使用した。
<再沸器>
基本的に実施例2と共通する。異なる仕様項目は以下のとおりである。
細管:長さ4000mm、本数1788本。
胴部:外径2250mm。
再沸器の処理能力は、実施例2における2基の再沸器の合計と同等である。
<精製作業>
実施例2と同様の作業条件で蒸留を行った。塔底液として、アクリル酸96.0重量%、酢酸600重量ppmからなる精製物を得た。蒸留塔10内の温度はかなり変動した。例えば、29段温度は83〜96℃の範囲で変動した。12時間稼動時点で、塔内の圧力損失が増大したため、稼動を停止させた。蒸留塔10、凝縮器20および再沸器30の内部を点検したところ、蒸留塔10のトレイ上には130kgの重合物が認められた。再沸器30では、92本の細管が重合物の付着によって閉塞してしまっていた。
〔実施例3〕
図3、4に示す構造の精製装置を基本にしたが、凝縮器20については1基だけを設置した。基本的には実施例1と共通する仕様を採用し、異なる仕様項目のみを以下に示す。
<蒸留塔>
実施例1と共通する構造で、塔径を2mに変更した。
<凝縮器>
基本的に実施例1と共通する。異なる仕様項目は以下のとおりである。
細管:長さ4000mm、本数492本、材質SUS304。
胴部:外径1900mm。
<再沸器>
基本的に実施例1と共通する。異なる仕様項目は以下のとおりである。
細管:長さ4000mm、本数170本、材質SUS304。
胴部:外径700mm。
2基の再沸器の挟角:θ=180°。
<精製作業>
未精製のアクリル酸エステル液(アクリル酸ブチル78.0重量%、ブチルアルコール18.6重量%、水2.9重量%、フェノチアジン80重量ppmを含む)を、8.0m/hの流量で蒸留塔10の16段に供給した。塔頂圧力33kPa、還流比3で共沸蒸留を行った。塔底液として、アクリル酸ブチル99.9重量%、ブチルアルコール50重量ppmからなる精製物を得た。
蒸留塔10から凝縮器20への蒸気取出管22は口径550mmであった。凝縮器20では、蒸気を83℃から40℃まで冷却して凝縮させた。凝縮器20の熱媒体管26には、30℃の冷却水を通水した。
蒸留塔10から再沸器30への塔底液取出管32は口径450mmであった。蒸気返戻管34は口径550mmであった。蒸留塔10と再沸器30の間の液あるいは蒸気の循環は自然循環で行った。循環液の一部を送出管16に抜き出した。それぞれの再沸器30の熱媒体管36には、0.6MPaGの飽和水蒸気を供給し、再沸器30の下部からは空気4Nm/hを供給した。
上記の条件で1ヶ月稼動させた。蒸留塔10の内部温度は安定していた。例えば35段温度は102〜104℃の範囲であった。稼動終了後に装置内部を点検したところ、蒸留塔10、凝縮器20および再沸器30の何れについても、内部に重合物の存在はほとんど認められなかった。
〔比較例3〕
実施例3を基本にして、以下の装置仕様および作業条件を変更した。
蒸留塔10および凝縮器20とその配置構造は、実施例3と共通するが、再沸器30は以下の仕様のものを1基だけで使用した。
<再沸器>
基本的に実施例3と共通する。異なる仕様項目は以下のとおりである。
細管:本数340本。
胴部:外径950mm。
再沸器の処理能力は、実施例3における2基の再沸器の合計と同等である。
<精製作業>
実施例3と同様の作業条件で蒸留を行った。塔底液として、アクリル酸ブチル99.9重量%、ブチルアルコール200重量ppmからなる精製物を得た。
蒸留塔10内の温度はかなり変動した。例えば、35段温度は99〜104℃の範囲で変動した。1ヶ月稼動後に装置内部を点検したところ、蒸留塔10のトレイ上には6kgの重合物が認められた。再沸器30では、5本の細管が重合物の付着によって閉塞してしまっていた。
〔評価〕
(1)各実施例では何れも、重合物の付着や内部配管の閉塞などの問題は起こらず、蒸留塔内の温度が安定していた。アクリル酸類の精製作業を良好に達成することができた。
(2)1基の再沸器で実施例と同じ処理能力を果たす各比較例では、アクリル酸類の精製自体はできるが、稼動開始後の早い時期で、装置内部に重合物が付着したり内部配管が閉塞してしまったりしている。
蒸留塔の内部温度の変動が大きくなっており、蒸留塔内における液体あるいは蒸気の流れに偏りが生じていたり、不安定な流れになっていたりするものと推測できる。その結果、アクリル酸類の精製作業も不安定になっていた。
(3)アクリル酸の精製を行った実施例1、2およびアクリル酸エステルの精製を行った実施例3の何れについても良好な結果が得られている。本発明は、アクリル酸類に含まれる何れの物質に対しても有効であることが判る。
実施例1、2では、再沸器を複数基にするだけでなく、凝縮器についても複数基を用いている。実施例3では、凝縮器を1基にしている。何れの場合も良好な性能が発揮されている。したがって、再沸器は複数基を用いることが必要であるが、凝縮器については1基でも本発明を実施できる場合があることが判る。実施例1、2に比べて処理量が少なく小型の装置を用いた実施例3の場合、凝縮器が1基であっても、十分に目的が達成できたものと推定できる。
本発明の実施形態を表す精製装置の全体構造図 図1の精製装置の各機器の配置構造を示す平面図 別の実施形態を表す精製装置の全体構造図 図3の精製装置の各機器の配置構造を示す平面図
符号の説明
10 蒸留塔
12 導入管
14 凝縮液取出管
16 送出管
20 凝縮器
22 蒸気取出管
24 液返戻管
26 熱媒体管
30 再沸器
32 液取出管
34 蒸気返戻管
36 熱媒体管
θ 挟角

Claims (3)

  1. アクリル酸とそのエステルを包含するアクリル酸類を含む液が供給され、塔頂からは蒸気が取り出され、塔底からは液が取り出される蒸留塔と、
    前記蒸留塔の塔頂側に連結され、蒸留塔から取り出された蒸気が供給され、蒸気を凝縮させ、凝縮液の一部を蒸留塔に還流させ、残りの凝縮液を取り出す凝縮器と、
    前記蒸留塔の塔底側に連結され、蒸留塔内の液が供給され、供給された液を加熱し沸騰させて蒸留塔に戻す再沸器とを備えるアクリル酸類の蒸留精製装置を用いてアクリル酸類を蒸留精製する方法において
    前記蒸留塔内の液を分割して前記蒸留塔に対し並列に設置されている複数基の再沸器に送り、それぞれの再沸器での液の加熱沸騰で生じた蒸気を前記蒸留塔に戻すことにより、該蒸留塔内の蒸気流れの偏りを抑制してアクリル酸類の重合を防止する、
    ことを特徴とする、アクリル酸類の蒸留精製方法
  2. 前記凝縮器が複数基、前記蒸留塔に対し並列に配置されている請求項1に記載のアクリル酸類の蒸留精製方法
  3. 前記蒸留塔が、外径2〜6mの円筒状をなし、
    前記複数基の再沸器は、水平方向で蒸留塔の中心に対して対称に配置され、
    前記蒸留塔と前記再沸器とは、蒸留塔から液を取り出して、それぞれの再沸器に液を供給する液取出管と、それぞれの再沸器から蒸留塔に蒸気を戻す蒸気返戻管とで連結されている請求項1または2に記載のアクリル酸類の蒸留精製方法
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