JP2005228856A - ダイシング用基体フイルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】40〜75質量%のポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂と60〜25質量%のポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖にポリオキシアルキレン鎖がブロック結合されている親水性ポリエチレン樹脂又は親水性ポリプロピレン樹脂とのブレンド樹脂により成形された層Aとポリエチレン系樹脂により成形された層Bとの少なくとも2層の積層であって、且つ該2層の有する体積抵抗率が500V印加の下で109〜1012Ω・cmである。更にもう1層のポリエチレン系樹脂による層B1を積層してダイシング受台に対しての滑性の更なる改善。
【選択図】 なし
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Description
該台紙は、基本的には該ウェハを固定する粘着層とダイシングカッターの切り込みを受ける樹脂層(ダイシング基体層)とから構成されている。この樹脂層としては、一般にポリオレフィン系フイルム又はポリ塩化ビニル系フイルムが使用されているが、ポリ塩化ビニル系フイルムは、特に環境問題等で衰退にあるのが実情である。
この静電気に関しては、特に最近のより小サイズのウェハチップの中により多くの情報を集積する傾向の中で、より大きく問題として取り上げられるようになってきている。
つまり、この静電気の発生は、ウェハチップに集積された情報の破壊に繋がると言う危険性が高いと言うことからである。これ等の諸問題点を課題とする特許技術も公開されている。
尚、ウェハのチッピング問題は、ダイシング台紙、特にその台紙に適正な剛性がなく、それが低すぎる場合に見られる。つまりダイサーの切り込み動作でもって該台紙自身が微動し、その結果ウェハの切り込み位置がズレて切り欠けとなって現れると言うものである。
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとビニルモノマとのコポリマ、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂によるフイルムに、1〜8Mradの電子線又はγ線を照射したものをダイシング基体層とするもの(例えば特許文献1参照。)、エチレンを主成分とするメチルメタアクリレートとのコポリマをダイシング基体層とするもの(例えば特許文献2参照。)、エチレンにメタアクリル酸とC3〜C8のメタアクリル酸アルキルエステルとの3元コポリマをダイシング基体層とするもの(例えば特許文献3参照。)、ポリオレフィン系フイルムによる基体層の拡張性が内面位相差に関係があることを見出し、該層の表面粗度と共に、この内面位相差に特定条件を付しもの(この内面位相差は、押出し温度を高めにし、ドローをかけずに引取り急冷することで発現)(例えば特許文献4参照。)等がある。
ポリエチレン、ポリプロピレン等による基体シートと粘着層との中間にアクリル系の両性又はカチオン系界面活性剤、無水マレイン酸−スチレン系のアニオン界面活性剤等による帯電防止層又はこれ等の界面活性剤による帯電防止層に変えて加熱硬化型帯電防止層が積層されてなるもの(例えば特許文献5、6参照。)、ポリプロピレン(具体的には、ポリエチレン系樹脂とのブレンドポリプロピレン樹脂)100重量部に、ポリオキシエチレン鎖を持つモノマとブタジエンとを共重合して得たポリマを10〜200重量部混合して成形したフイルム(2軸混練機で混練後、押出機で押出す)を基材とし、これに放射線重合性粘着剤による層を積層したもの(例えば特許文献7参照。)、更には放射線重合性粘着剤による粘着層及び該粘着層上に剥離用フイルムが積層された帯電防止性を有する半導体加工用粘着シートであって、該剥離用フイルムを剥がした際の該シートの粘着面の耐電圧を200V以下として特定したもの(例えば特許文献8参照。)等が挙げられる。
尚、該特許文献8に記載の半導体加工用粘着シートの具体的構成は、帯電防止性の付与された基材フイルムに、該粘着層及び剥離用フイルムが積層されているものである。ここで該基材フイルムとしては、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等樹脂に、一般に知られているアニオン系、カチオン系又はノニオン系の界面活性剤(添加量の記載特になし。)の練り込み成形によるもの、更には実施例1では、(この一般的界面活性剤とは異なる)ポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマ(ペレスタット300)による高分子型帯電防止剤の練り込み成形によるものが挙げられている。つまりポリプロピレン100重量部に、該高分子型帯電防止剤を15重量部を2軸混練機で混練後、押出機で押出して厚さ150μmシートを得、これに放射線重合性粘着層及び剥離用フイルムとを積層して半導体加工用粘着シートとする。そしてこれを7日間以上熟成した後、該剥離用フイルムを剥がした際の帯電圧を測定し80Vを得たと言うものである。
ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン樹脂にポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖にポリオキシアルキレン鎖がブロック結合されている親水性ポリエチレン樹脂(以下親水性PE樹脂と呼ぶ。)又は親水性ポリプロピレン樹脂(以下親水性PP樹脂と呼ぶ。)をブレンドした樹脂によって形成される。この層は、D基体フイルムの中心層となるもので、前記各特性発現の中枢的作用をする。つまりこの作用は、前記の主としてウエハチッピングの発生、切り屑の発生及び静電気の発生を大きく抑制する。そして拡張性も十分とは言えないが、改良の方向に作用する。これは特に該ポリプロピレン系樹脂とのブレンドの場合に見られ、一般に拡張性の悪いポリプロピレン系樹脂によるダイシング台紙にとって有利になる。
まず、ポリオレフィン鎖、好ましくはポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖は、一方のポリオキシアルキレン鎖とブロック状で結合されている。この結合の媒介は、エステル基、アミド基、エーテル基、ウレタン基等によって行われているが、エステル基又はエーテル基によっているのが、例えばブレンド性又は半導電性の点で有利である。このポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖がブロック結合で存在することで、ブレンドするポリエチレン系樹脂(以下bPE樹脂と呼ぶ。)又はポリプロピレン系樹脂(以下bPP樹脂と呼ぶ。)との相溶性が適性に得られ、これが前記する他の界面活性剤等に見られるようなブリードアウトの現象のないことにも繋がる。
尚、前記する従来公知の界面活性剤等の併用は、その添加量が少量と言えどもブリードアウトする危険性が高いので好ましくない。
一方のポリオキシアルキレン鎖の分子量は、耐熱性及び反応性(この酸変性のポリエチレン又はポリプロピレンとの)の点から1000〜15000程度であるのが良い。
このポリオキシアルキレン鎖は半導電性の電気抵抗を有しているが、その抵抗は体積抵抗率は105〜1010Ω・cm程度である。この範囲にあることで、後述するブレンド比とのバランスで、本発明に言う体積抵抗率(以下ρvと呼ぶ。)109〜1012Ω・cmの発現をもたらす。
bPE樹脂及びbPP樹脂共に、一般に知られているポリエチレン又はポリプロピレン単独ポリマ、エチレン又はプロピレンを主成分(一般に90モル%以上)とする他のオレフィンモノマ又はビニルモノマとのコポリマ又はこれ等のブレンド樹脂等が挙げられる。
bPE樹脂又はbPP樹脂へ親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂がブレンドされると、そのブレンド量の増加につれて、特にウエハのチッピング(切り欠け)のより一層の改善(特にbPE樹脂に対してその改善効果が大きく現れる)とρvの低下による静電気発生の抑制効果を大きくする。しかし、一方では、若干の改良作用のある拡張性に更なる改良はなく、むしろ悪くなる傾向になる。また適正なフイルム剛性の範囲からはずれて行く方向になり(チッピングへの影響)、より硬くなることで使いずらくもなる。更には層Aとしての成形性も悪化傾向になる。この改善の領域と改悪傾向の始まるところの境界が60質量%であり、これ以上の増量はこのブレンド成分の組合せであっても本発明は達成されないと言うことになる。
一方、25質量%未満と少ない場合では、切り屑の抑制効果が小さくなること、チッピング(特にbPE樹脂との組合せの場合)にも改良効果が見られないこと、拡張性(特にbPP樹脂との組合せの場合)に改良傾向が見られなくなること、そして少なくとも必要とする半導電性(つまりρv1012Ω・cm)も得られなくなり、静電気対応のできないD基体フイルムになってしまう。
尚、ここでの拡張性への影響は、特にダイシング受台を上昇してダイシング台紙を拡張する場合、該部材のエッジ部分で起こるネッキングに基づくものであり、それによって全体の均一拡張が失われることになる。
まずbPE樹脂は、bPE樹脂50〜70質量%と親水性PE樹脂50〜30質量%、bPP樹脂は、bPP樹脂55〜65質量%と親水性PP樹脂45〜35質量%である。
まず層Aには、特にポリエチレン系樹脂の成形によって、少なくとも該層Bを積層して2層とする必要がある。これは次ぎのような理由による。
この層Bは、特に十分に満足できる拡張性を付与するのに必要な層である。つまり層A自身は、前記するように拡張性は十分に満足できるものではない。そこでこの十分でない拡張性を十分に満足できる拡張性にまで至らしめるのに、このポリエチレン系樹脂による層Bの積層が必要である。
前記2層をD基体フイルムとするダイシング台紙は、層A面がダイシング受台面に接する。しかし該受台面に対する該層A面の滑性は十分であるとは言えない。この面の滑性は親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂のブレンド量の増加と共に悪くなる方向にある。そこでこの不十分な層A面滑性を優れた滑性にしておくのが層B1による積層である。
又、前記の層B1による拡張性の助勢作用も伴い、より良化傾向にもなる。更には層Aに対して両面層が同じポリエチレン系樹脂によりなることで、フイルム反りと言う危険性のないD基体フイルムが得られもする。
尚、層Bと層B1とは、前記するように、該両層の主たる作用効果は異なることから、それに相応する異種の該樹脂の組み合わせの場合もある。例えば層Bには(メタ)アクリル酸又はそのエステルとの共重合ポリエチレン,層B1にはLDPEと言った組合せである。
これは特に層A中の親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂のブレンド量が少ない場合、層Aの層厚が薄い場合又は該層B及び/又は層B1の層厚が厚くて、少なくとも必要とするρv1012Ω・cmが得難い場合である。このような場合に、該層B及び/又は層B1に親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂が含有されると、該ρvが容易に得られるようになると言うものである、この場合のブレンド量は、あくまでも該電気抵抗に対しての補助的量であり、他の前記特性に悪影響がでるような量であってはならない。その限界量を例示すると20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
まず層A/層Bの場合であるが、(中枢層である)層Aは、少なくとも層Bよりも厚く設定する。これは特にダイシングにおけるダイサーが必要とする切り込み深さ、(層Bが電気絶縁層であっても)必要とするρv109〜1012Ω・cmが、より容易に得られることによる。つまり層Bよりも厚くした方が良いのは、この切り込みを安全且つ確実に行うためには、層Bをカット通過して層Aにまで達する必要があるが、更に層Aを通過して深く切り込んでは良くないので、この層Aの中で停止する必要があるからである。
そして、このρvについても、(基本的には、前記の通り親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂のブレンド比によって得られるが)、この層Aの厚さが薄くなればなる程、この上限のρvの発現も容易ではなくなるので、より厚層での設定が良いと言うことからである。
そこでその層A/層Bの具体的厚さであるが、層Aは70〜250μm、好ましくは80〜150μmである。70μm未満は前記切り込み深さが不足であり、ρvの発現にも影響するようになり、250μmを越えると、必要以上の厚さであり、硬くなり取扱い上も良くなくなる。
一方、層Bは5〜25μm、好ましくは10〜20μmである。5μm未満では、前記する特に拡張性においての有効な助勢作用が働かなくなり、25μmを越すと仮に前記の限度以内(20質量%)で親水性PE樹脂をブレンドしても必要とする上限のρv1012Ω・cmも得難くなる。
層A、層Bは前記の通りの厚み構成でよいが、層Bに対する層B1は、本来の助勢作用である滑性の付与からは、層Bよりも薄くて良い。しかしD基体フイルムとして反り発生の危惧からは同厚さで設定するのが良い。
このρvは、層A/層B又は層B/層A/層B1の両面に直流電圧を500Vを印加して測定した時の電気抵抗率、つまり構成層全体が有する体積抵抗率である。従って表面の有する表面抵抗率とは本質的に異なるものである。これは仮に表面抵抗率が109〜1012Ω/□、更にはそれ以下の範囲にあるダイシング台紙を使っても、例えばウエハチップのピックアップ時に発生する静電気発生の問題解決にはならないからである。つまり静電気発生の本質的な解決のためには、表面で発生した静電気が直ちにアースされ系外に逃げなけねばならず、その為にはD基体フイルム全体が半導電性、つまりρvをもって成っていなければならない。これが特に表面にのみ所定の抵抗率をもってなる該フイルムであるとか、更には多層中に半導電性層が介在され積層されているダイシング台紙では、静電気は一瞬流れても更に系外にまで容易には流れない。その結果ウエハチップ内の記憶情報を破壊するとか、表面で絶縁破壊を起すような危険に至る。
ここでρvの下限が109Ω・cmとされるが、本来除電作用から言えば、このρvは低い程好ましい。しかし前記するように、本発明では他の作用効果発現とのバランスの上に立ってなるものであり、これを上限することでこのバランスは採れると共に、109Ω・cmも有れば、少なくとも上記ピックアップ時の静電気発生の問題解決には十分である。逆に上限の1012Ω・cmは、前記の他の作用効果発現を保ちつつ、静電気発生の問題解決に少なくとも必要なρvである。
尚、層A/層B又は層B/層A/層B1の表面抵抗率を500V印加の下で測定して見るとρvよりも約2〜3桁高く、表面は電気絶縁的の状態にある。
該各D基体フイルムの製造手段には種々の方法が考えられるが、その中で次ぎに説明する製造方法が好ましく例示できる。
次ぎの方法によって得られる層A用のフイルムと層B用のフイルムとを成形と同時に、つまり共押出法により積層するか又は予め両フイルムを成形し、別途ドライラミネーションにより積層する。好ましいのは前者である。これは生産性もあるが、層間の密着強度がより強固になり一体的フイルムとして得られ、これにより改良された拡張性のあるD基体フイルムが得られ易くなるからでもある。
尚、共押出法による積層の場合は、2台の押出機から2層用のTダイを通して積層されるが、同時合流(積層)の位置により、フイードブロック、マルチマニホールド、マルチスロッドの各ダイがある。何れでも良い。
<層A用のフイルム>
前記ブレンド比で混合されたポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂と親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂とのブレンド樹脂を、まず水分率を乾燥又は加湿することによって500〜3000ppmに調整する。これを計量部溝深さ3.5〜7.5mm、圧縮比1.5〜2.5、押出し該樹脂温度145〜235℃の範囲で漸増高温調整されてなるフルフライト漸減深型スクリュー押出機に供給し、約210〜230℃の中で一定温度に制御されたTダイからフイルム状で押出し、無延伸で40〜100℃で冷却して引取る。
<層B用のフイルム>
前記ポリエチレン系樹脂を計量部溝深さ1.5〜3.0mm、圧縮比2.5〜3.5で、押出し該樹脂温度150〜210℃の範囲で漸増高温調整されてなるフルフライト漸減深型スクリュー押出機に供給し、温度200〜210℃の中で一定温度に制御されたTダイからフイルム状で押出し、無延伸で40〜100℃で冷却して引取る。
この場合の製造方法は、前記2層の場合と、積層の順序と共押出し積層を採る場合は、3台の押出機により3層Tダイが使用されること以外は同じ条件で製造される。つまり、層Aは前記の層A用フイルム、層B及び層B1は前記の層B用のフイルムの製造条件による。
予めの溶融混練によるチップブレンドよりも、ドライブレンドのものを成形原料とするのが良い。これは後述もするように、特にρvの有効な発現のためである。敢えて事前に溶融混練する場合には、まず2軸押出機は使用せずに、1軸押出機を使い、この押出機も前記層A用のフイルムの押出機条件のもので行い、且つ樹脂圧も可能な限り低い領域で行い、(強いせん断応力の掛る溶練は避け)ガット状で押出し、チップとして得るようにするのが良い。つまり本発明に関しては、一般に2種以上のブレンドで行われる十分な分散のための予備的溶融混練は好ましくないものである。
スクリュ−には、他にト−ーピ−ド型(計量部にフライトがない)とダルメ−ジ型(計量部がらせん角の大きい浅溝多重ネジ)もあるが、これ等のスクリュ−は、何れも特に計量部で送り出されてくる溶融ブレンド樹脂に、高いせん断応力が付加され易い。こうなると、特にρvの有効な発現を阻害する結果になり、好ましいものではない。
この圧縮比は、一般に供給原料の見掛け比重(例えばチップ状であれば小さくて良く、粉末状であれば大きい方が良い)とより溶融混練の要否(要であれば大きく、否であれば小さく。)に関係する。本発明では前記するように、必要以上の溶融混練は良くないことと、供給原料はチップ同志の単なるドライブレンドが良い。この両方の効果はいずれも小さい圧縮比範囲で有効に発現し、この範囲が1.5〜2.5と言うことである。つまり2.5を越えると溶融混練作用が加わり易くなり、1.5未満になると(見掛け比重の小さいチップ状とは言え)安定した原料供給ができなくなる。
この条件には、例えば押出しブレンド樹脂温度(間接的にはバレル温度とTダイ温度で決まる)、樹脂圧、Tダイから押し出された後の引落し率、冷却温度、延伸の有無等があるが、本発明では、特に該ブレンド樹脂温度、延伸、冷却に注意し設定するのが望ましい。
まず該ブレンド樹脂であるが、これはバレル内にある該ブレンド樹脂温度を145〜235℃、好ましくは150〜230℃の範囲で漸増昇温調整し、Tダイ内にある該ブレンド樹脂温度を210〜230℃の中で一定温度として設定する必要がある。
ここで該ブレンド樹脂温度の漸増高温調整の意味は、FFスクリューの供給部領域〜圧縮部領域〜計量部領域に向かって、連続的又は階段的に昇温調整すると言うことであるが、これはこの何れの領域にあっても、その領域での230℃を越える急な昇温が起こる危険性があるからである。従って、昇温は連続的であるのが理想的である。
特にブレンド樹脂温度に関して、注意する必要のある温度は、最高の230℃である。これは、この温度を越えると特にブレンド樹脂中の親水性のPE樹脂又はPP樹脂の熱分解が起こり易くなり、それに伴う前記の各効果、特にρvの有効な発現、拡張性及びウェハのチッピングの改善を阻害するようになる。
下限の145℃は、供給部領域でのブレンド樹脂の予熱であり、これよりも低いと、圧縮部領域での温度をより高くすることになり、(可塑化が行われる)この領域での急な加熱は好ましくないからである。
尚、樹脂圧と引落し率については、樹脂圧は、Tダイからの吐出量、つまり所望する層Aフイルムの厚さと面積(つまり生産量)により変える程度に留め、必要以上に高い樹脂圧が掛らないようにする。これも前記する必要以上の混練によるρvの問題を起させないための予防措置である。
引落し率は5〜10%程度とし、大きくならないようにする。これはTダイから吐出されたフイルム状物が柔らかく、且つネックインが大きいためで、これを事前に防ぐためである。従って冷却の為のロ−ルは、この5〜10%の範囲が維持できる位置に設けるのが良い。その他TダイとFFスクリュ−の先端との間に配置されるスクリ−ンメッシュ付きブレカプレ−トは、ゴミの除去と樹脂圧調整を考慮し、適宜目開きのスクリ−ンメッシュを選ぶ。
尚、前記D基体フイルムは、好ましいのはTダイ法によるが、インフレーション法によっても製造できないものではない。
又、層A、層B、層B1に使用される前記各樹脂に、一般に知られるオレフィン系樹脂の添加剤(例えば酸化防止剤、耐候剤等)の微量添加はあっても良い。
一般に樹脂同志のブレンドにしても、ある種の添加剤をブレンドするにしても、十分なる溶融混練の下で成形し、これ等ブレンド物質を可能な限り均一分散した状態にするのが常套手段になっている。ところが本発明にあっては、全く逆で十分なる溶融混練は可能なかぎり避けることが重要な手段となっている。
とによって得られた2層フイルムを使って、その断面を走査型電子顕微鏡によって観察し、その拡大写真(倍率5000倍)を撮った。その結果を図1と図2に示す。ここで図1が実施例1、図2が参考例1である。各図で白っぽい部分が親水性PP樹脂のペレスタット300、黒っぽい部分がマトリックス樹脂の結晶性PP樹脂である。分散状態に差のあることが良く判る。つまり実施例1が親水性PP樹脂が連続した多数の層状で分散しているのに対して、参考例1では、(部分的には層状もあるが)大部分がその層状が切れて孤立的分散状態になっている。つまり、図1ではマトリックス樹脂である(絶縁性)結晶性PP樹脂の間隙が非常に狭いのに対し、図2ではマトリックス樹脂である(絶縁性)結晶性PP樹脂の間隙が非常に広い。
このことは、効果の一つのρvを比較すると、実施例1の方がはるかに小さい電気抵抗を示している。これはより電気が通り易い状態にあり、これが多数の層状分散の親水性PP樹脂によってもたらされていると考えられる。
ちなみに両サンプルを23℃、50%RHの雰囲気下に48時間放置した後、オネストメ−タにより電荷半減期(秒)を測定して見たところ、実施例1では1秒、参考例1では4秒で電荷が半減した。この結果は、仮にダイシングした場合に静電気がD基体フイルム内に発生した場合、実施例1は参考例1よりも4倍の速度で早く除電されることになる。
尚、この粘着層には、一般的なアクリル系、ゴム系の粘着性樹脂、電子線照射による粘着性低下性樹脂等が使用されるが、この積層は、例えば別途離型紙に該粘着性樹脂をグラビヤロール等で均一にコーテングしておきこれを層B面に転移・貼着することで形成される。
尚、本文中及び以下の各例で言う拡張性とρvは次の通り測定して得た値である。
●拡張性、
各例で得た(D基体)フイルムをサンプルとして、これに予め10×10mmのマス目を描写しておく。そして直径300mmの円形にカットして、これを外径150mmの円筒体(自動的に上下動する)の表面に当接し、該フイルムの端部全周囲をチャック固定する。次ぎに該円筒体を200cm/分の速度で20mm押し上げ該フイルムを全方向に拡張する。そして中央に位置するマス目の縦と横方向の伸長を測る。縦と横方向の長さが何れも110%以上であれば、拡張性に優れるフイルムとして〇、少なくとも一方の伸びが110%未満であれば拡張性に劣るフイルムとして×と記す。
●ρv(Ω・cm)
各例で得たフイルムをA3サイズにカットして、これの両面にDC電圧500v印加して、10ヶ所に渡って三菱化学株式会社製の抵抗測定器“ハイレスタIP・HRブロ−ブ”にてρvを測定する。
尚、測定は10秒経過後に行い、その値は平均値で示す。
◎層A用樹脂、
bPP樹脂として、(少量のエチレンがランダムに共重合されてなる)結晶性PP樹脂(株式会社グランドポリマー製、品種F327)60質量%と親水性PP樹脂(三洋化成株式会社製、品種ペレスタット300、融点135℃)40質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で水分率は2500ppm。
◎層B用樹脂、
エチレンを主成分とするエチルアクリレートとの共重合エチレン樹脂(三井デユポンポリケミカル株式会社製 商品名EVAFLEX 品種EEAのA―701、軟化温度73℃)で水分率は200ppm。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の2台の押出機と成形条件とによって、温度225℃に温調されたスリット幅600μmの2層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して層A/層BからなるD基体フイルムを得た。
FFスクリュー押出機・・L/D=28、計量部溝深さ6.2mm、圧縮比1.8、
◎成形条件・・押出温度は供給部領域に相当する部分のバレル温度150〜180℃、圧縮領域に相当する部分のバレル温度190〜215℃、計量部領域に相当する部分のバレル温度205〜235℃に漸増高温調整、樹脂圧21.5MPa、引き落とし率7%、冷却ロール温度80℃、無延伸。
<層B用の押出機と成形条件>
◎FFスクリュー押出機・・L/D=28、計量部溝深さ1.5mm、圧縮比3.0、
◎成形条件・・押出温度は供給部領域に相当する部分のバレル温度150〜175℃、圧縮領域に相当する部分のバレル温度185〜195℃、計量部領域に相当する部分のバレル温度200〜205℃に漸増高温調整、樹脂圧18.5MPa、引き落とし率7%、冷却ロール温度80℃、無延伸。
◎層A用樹脂、
bPP樹脂として、PP樹脂系ブレンド樹脂(非晶性ポリオレフィン樹脂と結晶性PP樹脂とのブレンド樹脂で、宇部興産株式会社製、品種CAP350、融点135℃)60質量%と実施例1と同じ親水性PP樹脂40質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で水分率は1500ppm。
◎層B用樹脂、
エチレンとブチルアクリレート(約7質量%含有)との共重合エチレン樹脂(アトフィナ ジャパン株式会社製 商品名ロトリル 品種7BA01、融点107℃)で水分率は200ppm。
◎層B1用樹脂、
LDPE樹脂(宇部興産株式会社製、品種F522N、融点109℃)で水分率は150ppm。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の3台の押出機と成形条件とによって、温度225℃に温調されたスリット幅600μmの3層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して層B/層A/層B1からなるD基体フイルムを得た。
◎FFスクリュー押出機・・L/D=28、計量部溝深さ4.0mm、圧縮比2.0、
◎成形条件・・実施例1と同じ、但し樹脂圧21.0MPa。
<層B用及び層B1用の押出機と成形条件>
◎実施例1の層B用と同じ押出機と成形条件、但し樹脂圧は各18.6MPa。
◎層A用樹脂
bPE樹脂として、LDPE樹脂(宇部興産株式会社製、品種F522N、融点109℃)
50質量%と実施例1と同じ親水性PP樹脂50質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で水分率は1300ppm。
◎層B用樹脂、
実施例1と同じEVAFLEX 品種EEAのA―701。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の2台の押出機と成形条件とによって、温度200℃に温調されたスリット幅600μmの2層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して層A/層BからなるD基体フイルムを得た。
◎押出温度を供給部領域に相当する部分のバレル温度145〜170℃、圧縮領域に相当する部分のバレル温度175〜185℃、計量部領域に相当する部分のバレル温度190〜205℃に漸増高温調整し、樹脂圧19.6MPaに変更する以外は実施例1と同じ。
<層B用の押出機と成形条件>
◎実施例1と同じ。但し樹脂圧17.6MPa。
◎層A用樹脂
bPP樹脂として実施例2と同じブレンドPP系樹脂”CAP350”65質量%と同じ親水性PP樹脂”ペレスタット300”35重量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で、水分率は1300ppm。
◎層B、層B1用樹脂(共通)、
実施例2と同じLDPE樹脂”F522N”80質量%と同じ親水性PP樹脂”ペレスタット300”20質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で、水分率は1500ppm。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の3台の押出機と成形条件とによって、温度225℃に温調されたスリット幅600μmの3層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して層B/層A/層B1からなるD基体フイルムを得た。
◎実施例2と同じ。但し樹脂圧は20.6MPa。
<層B用の押出機と成形条件>
◎実施例2と同じ。但し樹脂圧は19.6MPa。
◎層A用樹脂
bPP樹脂として実施例2と同じブレンドPP系樹脂”CAP350”53質量%と同じ親水性PP樹脂”ペレスタット300”47質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で、水分率は2000ppm。
◎層B、層B1用樹脂(共通)、
実施例2と同じLDPE樹脂”F522N”で、水分率100ppm。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の3台の押出機と成形条件とによって、温度225℃に温調されたスリット幅600μmの3層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して層B/層A/層B1からなるD基体フイルムを得た。
◎実施例2と同じ。
<層B用の押出機と成形条件>
◎実施例2と同じ。
◎層A用樹脂、
bPP樹脂として、実施例1と同じ結晶性PP樹脂”品種F327”50質量%とポリスチレンエラストマー(水添スチレンーブタジエン共重合エラストマー)(日本スチレンラバー株式会社製、品種ダイナロン1320P)15質量%、そして同じ親水性PP樹脂”ペレスタット300”35質量%との3種をタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で、水分率は2200ppm。
◎層B用樹脂、
実施例2と同じLDPE樹脂”F522N”85質量%と同じ親水性PP樹脂”ペレスタット300”15質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で、水分率は1000ppm。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の2台の押出機と成形条件とによって、温度215℃に温調されたスリット幅600μmの2層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して2層からなるD基体フイルムを得た。
◎実施例1と同じ。但し樹脂圧21.6MPa。
<層B用の押出機と成形条件>
◎実施例1と同じ。但し樹脂圧19.6MPa。
◎層A用樹脂、
LDPE樹脂”F522N”72質量%と同じ親水性PP樹脂”ペレスタット300”28質量%とをタンブルミキサーにてドライブレンドしたブレンド樹脂で、水分率は950ppm。
◎層B用樹脂、
LDPE樹脂”F522N”で水分率140ppm。
以上の各樹脂を原料として、これを下記内容の2台の押出機と成形条件とによって、温度205℃に温調されたスリット幅600μmの2層用Tダイから共押出しを行い、同時積層して2層からなるD基体フイルムを得た。
両層共じで、実施例1の層B用の押出機と成形条件。
実施例1と同じ層A用樹脂を使って、温度225℃に制御されたスリット幅600μmの単層Tダイから、同じ層A用の押出機と成形条件によって層Aからなる単層フイルムを得た。但し樹脂圧は22.0MPa。
得られた該フイルムの厚さは80μmであり、これの拡張性、ρvを測定し表1にまとめた。
実施例1において、層A用樹脂の結晶性PP樹脂”F327”と親水性PP樹脂”ペレスタット300”とのブレンド比を85質量%と15質量%とに変える以外、他の種々条件は同じで2層共押出しを行い、2層フイルムを得た。該フイルムの全厚は80μm、層A及び層Bに相当する厚さは各60μmと20μmであった。このフイルムについても拡張性、ρvを測定し表1にまとめた。
実施例1において、層A用樹脂の結晶性PP樹脂”F327”と親水性PP樹脂”ペレスタット300”とのブレンド比を35質量%と65質量%とに変える以外、他の種々条件は同じで2層共押出しを行い、2層フイルムを得た。該フイルムの全厚は70〜85μmでバラツキがあった(これはA層用に相当するブレンド樹脂自身の成形性が悪くなっていることによると考えられる)。このフイルムについても拡張性、ρvを測定し表1にまとめた。
実施例1における層A用樹脂として、まずタンブルミキサーにてドライブレンドした後、更に2軸溶融混練押出機(L/D=7/1、異方向回転で樹脂は内側運び)(バレル加熱温度は150〜205℃に漸増高温)にて溶融混練しつつガットとして押出し、冷却と共にチップカット(約1.5mm径×2mm)した。この混練ブレンド樹脂を用いる以外は、該例と同じ条件でもって2層フイルムを成形した。得られた該フイルムの厚さは80μmで、層Aは65μm、層Bは15μmであった。外観上は実施例1と差はなかった。これの拡張性、ρvを測定し表1にまとめた。
Claims (3)
- 40〜75質量%のポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂と60〜25質量%のポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖にポリオキシアルキレン鎖がブロック結合されている親水性ポリエチレン樹脂又は親水性ポリプロピレン樹脂とのブレンド樹脂により成形された半導電性層Aとポリエチレン系樹脂により成形された層Bとの少なくとも2層の積層であって、且つ該2層の有する体積抵抗率が直流電圧500V印加の下で109〜1012Ω・cmであることを特徴とするダイシング用基体フイルム。
- 40〜75質量%のポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂と60〜25質量%のポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖にポリオキシアルキレン鎖がブロック結合されている親水性ポリエチレン樹脂又は親水性ポリプロピレン樹脂とのブレンド樹脂により成形された半導電性層Aとポリエチレン系樹脂により成形された層B及び層B1とが該層B/該層A/該層B1の順で3層積層され、且つ該3層の有する体積抵抗率が直流電圧500V印加の下で109〜1012Ω・cmであることを特徴とするダイシング用基体フイルム。
- 半導電性層Aにおいて、親水性ポリエチレン樹脂又は親水性ポリプロピレン樹脂が多数の層状に微分散している請求項1又は2に記載のダイシング用基体フイルム。
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