JP2005224233A - モズクの納豆菌醗酵物およびその用途 - Google Patents

モズクの納豆菌醗酵物およびその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】オキナワモズクに、生大豆、玄米、玄麦を培地組成とし、納豆菌を植えて培養せしめる醗酵物で、健康食品、医薬品として用いることができる。
【解決手段】原料となるモズクに、生大豆、玄米、玄麦を培地組成とし、納豆菌を植えて培養せしめる。
【効果】免疫賦活作用、活性化酸素阻害活性、血圧降下作用、脳卒中予防効果、カルシウム沈殿阻止効果、抗変異原活性、血漿コレステロール低下効果、肝機能改善効果、血糖値低下効果等があり、食品に添加して健康食品とすることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は種々の有効な薬理作用を有する、新規なモズクの納豆菌醗酵物およびその用途に関する。
従来モズクや納豆菌醗酵物は専ら食用として供されてきたが、本発明者らはモズクや納豆菌醗酵物の機能や成分に着目し、これを他の分野にも利用すべく種々の研究を行ってきた。例えば、免疫賦活作用を有する物質として、オキナワモズク由来フコイダンを得て、これを先に出願した(特許文献1)。および、大豆蛋白、オカラ、米糠および米胚芽の納豆菌醗酵物から得たイソフラボン含有組成物に活性化酸素阻害活性を有することを見出し、これを先に出願した(特許文献2)。および、アンジオテンシ変換酵素阻害能を有する血圧降下ペプチドを生大豆の酵素分解物から(特許文献3)、また、小麦グルテンの酵素分解物から(特許文献4)、各々見出し、これらを先に出願した。一方、海苔をペプシン分解物から血圧降下作用に加えて、脳卒中予防効果、カルシウム沈殿阻止効果、抗変異原活性、血漿コレステロール低下効果、肝機能改善効果、血糖値低下効果等を有することを見出し、これを先に出願した(特許文献5)。
特願2003−359970 特願2003−359971 特願2003−368090 特願2003−413922 特願平10−270906 M.N.Gibbons:Analyst(London),80,268(1955). T.Astrup & S.Mullertz:Archs.Biochem.Biophys.,40,346(1952). A.J.Cunningham et al.:immunology,14,599(1968). 藤原ら:栄食誌,43(3),203(1990). 受田ら:農化誌,72,1181(1998). 山本ら:日胸疾会誌,18,297(1989).
上記のオキナワモズク由来エキスから得られたフコイダンは免疫賦活剤として、ならびに大豆蛋白、オカラ、米糠および米胚芽の納豆菌醗酵物から得たイソフラボン含有組成物は活性化酸素阻害剤として医薬に用いたり、あるいは血圧降下作用、脳卒中予防効果、カルシウム沈殿阻止効果、抗変異原活性、血漿コレステロール低下効果、肝機能改善効果、血糖値低下効果等を有する健康食品に用いたりすることができるが、特に医薬品として用いる場合、その作用を高めるためにはオキナワモズク由来エキス、ならびに大豆蛋白、オカラ、米糠および米胚芽の納豆菌醗酵物をさらに精製する必要があった。また、医薬品ほど厳格な生理活性を必要としない食品を用いる場合にも、オキナワモズク由来エキス、ならびに大豆蛋白、オカラ、米糠および米胚芽の納豆菌醗酵物中には多くの夾雑物が残存しているため、水系の溶媒に溶解させると粘性の高い溶液となるので、ある程度精製したものでないと、用途が限られるという問題があった。さらに、オキナワモズク由来エキス、ならびに大豆蛋白、オカラ、米糠および米胚芽の納豆菌醗酵物が苦みや異味をもつことも、その用途が限られる原因となった。
本発明は、オキナワモズク由来エキス、ならびに大豆蛋白、オカラ、米糠および米胚芽の納豆菌醗酵物の上記問題点を解消し、医薬品、食品等、幅広い利用面においてさらに使いやすいように改良したモズクの納豆菌醗酵物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、原料となるモズクに、生大豆、玄米、玄麦を培地組成とし、納豆菌を植えて培養せしめることを特徴とする醗酵物に関する。
さらに本発明はモズクの納豆菌醗酵物の用途に関するものであって、モズクの納豆菌醗酵物を有効成分とする免疫賦活作用、活性化酸素阻害活性、血圧降下作用、脳卒中予防効果、カルシウム沈殿阻止効果、抗変異原活性、血漿コレステロール低下効果、肝機能改善効果、血糖値低下効果等を有し、モズクの納豆菌醗酵物を食品に添加してなる健康食品に関する。
本発明のモズクの納豆菌醗酵物を製造するには、原料となるモズクに、生大豆、玄米、玄麦を培地組成とし、納豆菌を植えて培養せしめる。本発明において原料として用いられる褐藻類は、モズク、コンブ、ワカメ、ホンダワラ等である。本発明においては、フコイダン(特に、免疫賦活作用を有す)が豊富に含まれるモズクを原料とすることが好ましい。本発明における納豆菌は、学名をBacillus subtillis nattoといい、有胞子の桿菌であって、各種酵素(特に、血栓溶解酵素ナットウキナーゼ)やビタミン(特に、出血の防止や骨粗しょう症に効果あるビタミンK)を産生し、外来の有害菌の発育抑制作用を有することを特徴とする。本発明における納豆菌の培地組成としては、生大豆9.3〜4.7%(重量)、玄米1.3〜5.7%(重量)、玄麦1.6〜5.9%(重量)を合いして破砕・粉砕して粉末化した混合物に加水後、蒸煮させ、ついで冷却して、納豆菌培地組成物を得ることを特徴とする。モズクおよび納豆菌を接種した後、この混合物をジャーファーメンター(通気撹拌醗酵器)に充填して、納豆菌を繁殖して醗酵させることを特徴とするが、ジャーファーメンター醗酵の培養条件は、醗酵が行われる限り特に制限はないが、通常、pHが6.8〜11.7好ましくは7.4〜8.7であり、培養温度が、22〜57℃好ましくは35〜45℃である。培養時間は36〜56時間好ましくは46〜52時間である。
本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物は、例えば、以下の方法により製造することができる。即ち、培地組成として生大豆に、玄米および玄麦を加え破砕・粉砕して粉末化した混合物に加水後、蒸煮させ、ついで冷却して、納豆菌培地組成物を得る。さらに生モズクを加え加水した上でホモジナイズする。このホモジネイトのpHを至適pHに調整する。次いで納豆菌(製造元:宮城野納豆菌製造所)を接種し、至適温度にて至適培養時間、ジャーファーメンターを用い通気撹拌培養させて醗酵液を得る。醗酵液をデラバル型の遠心分離機(回転数;3,000〜6,000rpm)、さらにシャープレス型の超遠心分離機(回転数;8,000〜15,000rpm)で固液分離する。その後、例えば珪藻土(パーライト、ラジオライトなど)ろ過助剤に粉末活性炭(ニッタンの白鷺Aなど)を併用して、加圧型ろ過機(フィルタープレスなど)でろ過して清澄なろ液を得る。得られたろ液は、40〜50℃下で減圧濃縮するか、あるいは、さらにろ過助剤などを用いて再度珪藻土ろ過した後、必要に応じて、メンブランフィルター膜、例えば0.45μmおよび/または0.2μmを用いて濃縮液を精密ろ過により除菌・無菌ろ過することにより、モズクの納豆菌醗酵物の濃縮液が得られる。得られた濃縮液は、さらに40〜50℃下で減圧濃縮されてペースト状になる。他方、得られた濃縮液に対し適切な量の食品添加物、例えば、水溶性食物繊維、乳糖、セルロースなどを加え、凍結乾燥して、粉末状、あるいは顆粒状のモズクの納豆菌醗酵物などが製造される。さらに、上記得られた濃縮液、ペースト状、粉末状、顆粒状のモズクの納豆菌醗酵物をカプセルに封入したモズクの納豆菌醗酵物が製造される。また、錠剤も製造されるが、錠剤は、糖衣錠など、種々の用途に応じて表面がコーティングされた錠剤であり得る。
以上のようにして得られたモズクの納豆菌醗酵物は、静脈内へ繰り返し投与を行った場合、抗体産生を惹起せず、アナフィラキシーショックを起こさせない。また、このモズクの納豆菌醗酵物は天然物成分からのみなり、毒性は極めて低く、安全性は極めて高い(LD50>2g/kg;ラット経口投与)。このモズクの納豆菌醗酵物は、通常用いられる賦形剤等の添加物を用いて注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等に調整することができる。投与方法としては、通常は、各種疾患を患っている哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ラット等)に注射すること、あるいは経口投与することがあげられる。投与量は、例えば、動物体重Kg当たりこのモズクの納豆菌醗酵物を0.1〜1gの量である。投与回数は、通常1日1〜4回程度であるが、投与経路によって、適宜、調整することができる。
上記の各種製剤において用いられる賦形剤、結合剤、潤沢剤の種類は、とくに限定されず、通常の注射剤、散剤、顆粒剤、錠剤あるいはカプセル剤に用いられるものを使用することができる。錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤に用いる添加物としては、下記のものをあげることができる。賦形剤としては、結晶セルロース等の糖類、マンニトール等の糖アルコール類、デンプン類、無水リン酸カルシウム等、結合剤としてはでんぷん類、ヒドロキシプロピルメチルセルローズ等、崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロースおよびそのカリウム塩類、潤滑剤としてはステアリン酸およびその塩類、タルク、ワックス類を挙げることができる。また、製剤の調整にあたっては必要に応じメントール、クエン酸およびその塩類、香料等の矯臭剤を用いることができる。注射用の無菌組成物は、常法により、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物を、注射用水、生理食塩水およびキシリトールやマンニトールなどの糖アルコール注射液、プロピレングリコールやポリエチレングリコール等のグリコールに溶解または懸濁させて注射剤とすることができる。この際、緩衝液、防腐剤、酸化防止剤等を必要に応じて添加することができる。このモズクの納豆菌醗酵物を含有する製剤は凍結乾燥品または乾燥粉末の形とし、用時、通常の溶解剤、例えば水または生理食塩液に溶解して用いることもできる。
上記したように本発明のモズクの納豆菌醗酵物は、モズクの納豆菌醗酵物を有効成分とする免疫賦活作用、活性化酸素阻害活性、血圧降下作用、脳卒中予防効果、カルシウム沈殿阻止効果、抗変異原活性、血漿コレステロール低下効果、肝機能改善効果、血糖値低下効果等を有するので、本発明のモズクの納豆菌醗酵物を食品に添加することによって、これらの作用に基づく健康食品とすることができる。
以下、実施例および試験例をもって本発明をさらに詳細に説明する。
<本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物の製造例>
納豆菌醗酵培地組成としての生大豆75kg、玄米33kg、玄麦36kgを合して破砕機さらには粉砕機を用いて培地組成の粉末化を行う。粉末化した培地組成混合物に1トンの水道水を加え、蒸煮させ、ついで冷却した後、モズク300kgを加え、納豆菌5kg(宮城野納豆菌製造所製)を接種する。炭酸ナトリウムでpHを8.0に調整した後、40℃にて49時間、消泡剤を加えながらジャーファーメンター醗酵(30rpm)を行う。醗酵終了後、直ちに醗酵液をデラバル型遠心分離機を用いて回転数4,500rpmで遠心分離した遠心上清を、さらにシャープレス型超遠心分離機を用いて回転数12,000rpmで遠心分離した遠心上清で固液分離する。その後、珪藻土ろ過助剤としてラジオライト#100(昭和化学工業社製)およびに粉末活性炭として白鷺A(ニッタン)を併用して、フィルタープレスろ過して無臭でかつ清澄なろ液0.8トンを得る。得られたろ液を、45℃下で減圧濃縮機にかけ濃縮液0.4トンとした後に、メンブランフィルター膜0.45μmで精密ろ過し、さらに、メンブランフィルター膜0.2μmで精密ろ過して除菌・無菌ろ過することにより、モズクの納豆菌醗酵液が得られる。最終的に、凍結乾燥にかけ、モズクの納豆菌醗酵物0.12トンが製造される。
このモズクの納豆菌醗酵物中のフコイダン含量を、硫酸−チオグリコール法(非特許文献1)でフコース量を測定し、フコース量×1.7で算出したところ38.2%である。また、モズクの納豆菌醗酵物中の血栓溶解酵素ナットウキナーゼ活性は、フィブリン平板溶解法(非特許文献2)で行い、活性値は、ヒトプラスミンを標準とした検量線よりプラスミンの活性値に換算して求めたところ2134(カゼイン単位/乾燥粉末g)である。さらに、モズクの納豆菌醗酵物中のビタミンK(メナキノン−7:MK−7)の含量を、HPLCによる定量(非特許文献3)をもとに測定した結果、ビタミンK含量は乾燥粉末当り31μgである。
試験例1
<免疫賦活作用:ウサギ末梢血リンパ球のコンカナバリンA刺激に対する幼若化反応の測定>
(株)北山ラベスより成熟雄性日本白色種ウサギ(KBL:JW、SPF、体重2.0kg)を購入し、1週間予備飼育後、健常な動物を試験に供した。飼育は温度23±2℃、湿度55±10%に保った飼育室内の金属製個別ゲージで行った。飼料はオリエンタル酵母社製RC4を1日120g給餌し、水は自家揚水(水道法、水質基準適合)を自由に摂取させた。3匹1群のウサギを用い、試験群として、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物400mg/kg/dayを体重1kg当たり5mLの割合で30日間連続投与した。対照群には同容量の溶媒を投与した。投与開始日ならびに最終投与の翌日、各ウサギの耳静脈からヘパリン処理した注射器で10mLの血液を採取し、3時間以内に、リンパ球分離ならびにH−サイミジン取り込み能測定法による幼若化反応を実施した。各リンパ球の取り込んた放射能から次式により刺激指数(S.I.)を算出した。S.I.=(Con Aを加えた培養系)/(Con Aを加えない培養系)
本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物(400mg/kg/day)を30日間経口投与した後の、ウサギ末梢血リンパ球のCon A刺激による幼若化反応(刺激指数:SI値)で表わし、その結果を表1に示す。
Figure 2005224233
試験例2
<免疫賦活作用:マウス脾細胞の抗体産生能測定>
日本エスエルシー(株)より、5週齢雄性マウス(Slc:C57BL/6、SPF)を購入し、1週間予備飼育を行った後、健常な動物を試験に供した。マウスの飼育は温度23±2℃、湿度55±10%に保った飼育室内のエアコンゲージで行った。飼料はオリエンタル酵母社製MF、水は自家揚水(水道法、水質基準適合)を自由に摂取させた。3匹1群のマウスを用い、試験群として、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物(200mg/kg/day)を体重10g当たり0.1mLの割合で10日間連続経口投与した。対照群には同容量の溶媒を投与した。投与開始から5日後、それそれのマウスの尾静脈にヒツジ赤血球(SRBC、デンカ生研社製)5×10cells/mLを0.2mL投与して免疫した。免疫の5日後、各群のマウスから脾臓を採取し、Eagle’sminimal essential medium(EMEM、日水製薬社製)を入れたシャーレ内で脾細胞を遊離させた。リン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄した後、EMEMで2.5×10cells/mLに調製した脾細胞と50%SRBC浮遊液およびモルモット乾燥補体(デンカ生研社製)を8:1:1の割合で混合した。A.J.Cunninghamらの方法(非特許文献3)に準じて37℃で90分反応後、溶血斑(PFC;plaque forming cell)を計測した。実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物(200mg/kg/day)を10日間経口投与したマウス脾細胞での抗体産生能を抗体産生細胞数であらわし、その結果を表2に示した。
Figure 2005224233
試験例3
<免疫賦活作用:マウス脾細胞幼若化能の測定>
藤原らの方法(非特許文献4)に凖じて脾細胞の幼若化反応(マイトジェン活性)を測定した。試験群として、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物を、25mM HEPES−RPMI 1640培地(日水製薬社製)に対して溶解(最大濃度1mg/mL)し、0.2μのメンブランフィルターろ過により除菌後、同培地により2倍ごと段階希釈を行ったものを供試サンプルとした。
C3H/HeNマウス(6週齢、雄性)の脾臓を無菌的に摘出し、ワイヤーメッシュ上で25mMHEPES−RPMI 1640培地を滴下しながら穏やかに磨砕し、通過液をさらにもう一組のワイヤーメッシュを通すことにより単一細胞浮遊液を調製した。脾細胞は同培地にて3回洗浄後、牛胎児血清10%を含む25mM HEPES−RPMI 1640培地に浮遊させ、96ウェルマイクロプレートに5×10個/100μL/ウェルとなるように分注した。その後、前記の供試サンプル10μLを加え、5%CO雰囲気下、37℃で培養した。なお、陰性対照には25mM HEPES−RPMI 1640培地10μLを、陽性対照にはコンカナバリンA(Con A、終濃度1μg/mL)ならびにリポポリサッカライド(LPS、終濃度100μg/mL)を供試サンプルの代わりに加えている。その後、0.5%の3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5ジフェニル−2Hテトラゾリウムブロマイド(MTT)溶液を10μL加え、さらに3時間培養を行い、しかる後、生じたMTT−フォルマザンを酸−イソプロパノール溶液(0.04N濃度に塩酸を添加)100μLを加えて溶解し、EIAリーダーにて595nmの吸光度を測定した。データは陰性対照の値を100とした相対値にて表示している。マイトジェン活性の結果は表3に示すとおりである。
Figure 2005224233
以上の免疫賦活作用試験の結果、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物はin vivoにおいて有意に免疫機能に影響を及ぼすことが確認され、さらに、in vitroにおいても有意にマイトジェン活性を示すことが確認され、免疫賦活剤として有用である。
試験例4
<活性化酸素阻害活性:活性化酸素フリーラジカル消去作用の測定>
受田らの方法(非特許文献5)に従って測定した。すなわち、2.5mLの緩衝液(50mM)が入った試験管に3mMキサンチン、3mMEDTA、1mMXTT及び試料溶液をそれぞれ0.1mL加え、直ちにトリガーとして57mU/mL XODを0.1mL加えた。25℃で正確に20分間反応させた後,470nmにおける吸光度を測定した。活性化酸素フリーラジカル(スーパーオキシドアニオン)によるXTTの還元を50%阻害する濃度をIC50値とした。その結果、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物の活性化酸素フリーラジカル消去活性すなわち活性化酸素阻害活性(IC50値)は、1.02×10−5g/mLである。
試験例5
<活性化酸素阻害活性:抗酸化作用の測定>
抗酸化作用の測定として、反応液はリノール酸51.1mg、エタノール4.052mL、0.5Mリン酸緩衝液(pH7.0)4.0mL、脱イオン水1.948mLの混合液に、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物0.1、0.2、0.3mg添加し、全量が10mLとなるように調製した。この溶液をネジ付き試験管で密封し50℃の恒温器中に放置し、24時間毎にリノール酸の過酸化物価をロダン鉄法で測定した。すなわち、反応液0.1mL、75%エタノール液9.7mL、30%ロダンアンモニウム液0.1mL、0.02M塩化第二鉄を含む3.5%塩酸溶液0.1mLを添加し、3分間反応させた後、吸光度500nmを測定した。その際、500nmの吸光値が0.300に達するまでの日数を誘導期間(日)とした。その結果、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物の、0.1mgの抗酸化活性(誘導日数)は64.5日、0.2mg;71.5日、0.3mg;87.5日である。
以上の活性化酸素阻害活性試験の結果、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物は、活性化酸素フリーラジカル消去作用および抗酸化作用等の活性化酸素阻害活性を有することが確認された。従って、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物は、活性化酸素阻害剤の対象となる虚血性心疾患者、慢性関節リュウマチ及び重症火傷患者の治療又は予防薬として有用である。
試験例6
<血圧降下作用:アンジオテンシン変換酵素阻害活性の測定>
アンジオテンシン変換酵素(ACE、シグマ社製、酵素番号EC3.4.15.1)2.5mU、合成基質ヒプリル−L−ヒスチジル−L−ロイシン(ペプチド研究所製)12.5mMを用いLiebermanの測定法を改良した山本等の方法(非特許文献6)に準じて測定した。すなわち、生成した馬尿酸を酢酸エチルにて抽出し225nmの吸光度で測定した。被検液での吸光度をEs、被検液の代わりに緩衝液を加えた時の値をEc、予め反応停止液を加えて反応させた時の値をEbとして次式から阻害率を求めた。阻害率(%)=(Ec−Es)/(Ec−Eb)×100
ACE阻害剤の阻害活性IC50値は、ACEの酵素活性を50%(阻害率)阻害するために必要な試料の濃度で示した。その結果、実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物の、ACE阻害活性は、0.19mg/mLである。
試験例7
<血圧降下作用:ラットへ投与した時の降圧効果)
日本チャールズ・リバー社より15週齢雄性高血圧自然発症ラット(以下、SHRと略記する)を購入し、1週間の予備飼育後、収縮期血圧が160mmHg以上(体重280−330g)の動物6匹1群として用いた。ラットは、室温23±2℃、湿度55±10%および12時間明暗(午前6時〜午後6時点灯)に調整された飼育室でステンレスワイヤー製ラット用個別ゲージに1匹ずつ収容し飼育した。飼料はオリエンタル酵母社製MF粉末飼料を、飲水は自家揚水(水道水質基準適合)をそれぞれ自由に摂取させた。血圧は非観血的尾動脈血圧測定装置(理研開発社製、PS−100型)を用いtail−cuff法により、投与前、投与後6時間後のSHR尾動脈の収縮期血圧値(SBP、mmHg)の測定を測定時間毎に5回行い、得られた測定値の最高値と最低値を棄却し、3回の平均値をもって各時間の測定値とした。実施例1におけるモズクの納豆菌醗酵物50mg/kg(試験群)をSHRに経口投与した時のSBP(mmHg)への作用についての結果は表4に示す通りである。
Figure 2005224233
以上の血圧降下作用試験の結果、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物は、in vitroにおいてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有することが確認され、さらに、in vivoにおいても有意に降圧効果を示すことが確認され、血圧降下剤として有用である。
試験例8
<ラットへ長期投与した時の高血圧および脳卒中発症予防効果>
日本チャールズリバー社より5週齢雄性脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットを購入し、1週間の予備飼育後、7匹1群として用い、市販粉末飼料群(対照群)、市販粉末飼料に実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を0.5%配合した飼料群(0.5%配合群)、および市販粉末飼料に実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を1%配合した飼料群(1%配合群)の3群を設け、飼料および飲料水(1%食塩水溶液)を自由摂取させて2ヶ月間の混餌投与試験を実施した。血圧は試験開始から1週間ごとに非観血的に測定し、さらに1日1回、一般症状、神経症状の有無および生死の有無を観察した。これら結果を表5および表6に示す。
Figure 2005224233
Figure 2005224233
表5に示すように、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物の飼料への配合濃度が高くなるにしたがって、脳卒中の発生率は低下し、ラットの生存日数が伸びていることが確認された。また、表6に示すように、収縮期血圧(SBP)は対照区に比べて0.5%配合群ではかなり低下しており、1%配合群ではそれよりさらに低下して、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物が高血圧および脳卒中発症予防効果を有することが確認された。
試験例9
<カルシウム沈殿阻止効果>
カルシウムの吸収促進メカニズムの一つであるカルシウム沈殿阻止能を、リン酸緩衝液中における実施例1のモズクの納豆菌醗酵物共存下での、塩化カルシウムの沈殿阻止能により判定した。すなわち、試験区として、蒸留水に溶解して所定の濃度(0.02、0.2、2、20mg/mL)としたモズクの納豆菌醗酵物3mLと20mM塩化カルシウム溶液1mLを混和後、5mMリン酸緩衝液(pH7.0)4mLを加え、37℃で2時間放置し、遠心分離後(3,000×g、10分)の上清中に溶解しているカルシウムを測定した。なお、比較のためにカゼインホスホペプチド(CPP)を用いて同様の実験を行った。カゼインホスホペプチド(CPP)はカルシウム沈殿阻止能があり、カルシウム吸収を助ける食品素材として広く用いられているものである。結果を表7に示す。
Figure 2005224233
表7に示すように、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物では、濃度依存的にカルシウム沈殿阻止効果が高くなっており、カゼインホスホペプチド(CPP)とほぼ同等であることが確認された。
試験例10
<抗変異原活性>
体内に取り込まれた発癌物質を無毒化する効果の一つである抗変異原活性についてumu−testを行った。umu−testとは、Salmonella typhimurium菌の突然変異に関与しているumu遺伝子の発現を、β−ガラクトシダーゼ活性を指標として測定する変異原性試験の一つである。変異原剤であるTrp−P−1、AF−2およびIQをそれぞれSalmonella typhimurium菌に加えて突然変異を起こさせた時のβ−ガラクトシダーゼ活性を基質X−galの発色によって測定し、これを変異原性100とし、これを基準値として、実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を所定濃度(0.1、0.2、0.3、0.4、0.5mg/mL)添加したものについて同様にβ−ガラクトシダーゼ活性を測定し、基質X−galの発色の度合いを上記基準値と比較した。結果を表8に示す。
Figure 2005224233
表8に示すように、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物の添加濃度が高くなるにしたがって、変異原剤のいずれに対しても変異原性は低下しており、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物が抗変異原活性を有していることが確認された。
試験例11
<ラットへ投与した時の血漿コレステロール濃度低下作用>
実験動物として4週齢のウイスター系雄性ラットを市販固形飼料で1週間予備飼育し、5匹1群として3週間の飼育実験を行った。試験群は、試験飼料としてMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製)に実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を1%配合したものとし、対照群の飼料はMF粉末飼料のみとした。飼料は毎日交換し、飲料水とともに自由摂取させた。動物飼育室は室温23±5℃、湿度53±8%に保ち、12時間ごとの明暗サイクル(午前7時点灯、午後8時消灯)に調整した。試験終了後、ラットを断頭して血液を採取後、直ちに血漿脂質成分(総コレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリド、リン脂質)の定量を行った。それぞれの測定結果を表9に示す。
Figure 2005224233
表9に示すように、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物を投与したことにより、血清中の総コレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリドおよびリン脂質が低下し、脂質代謝改善効果が確認された。
試験例12
<マウスへ投与した時の血漿、肝臓中の脂質成分濃度低下作用>
実験動物として4週齢の雄性ICR系マウスを市販固形飼料で1週間予備飼育し、7匹1群として実験を行った。試験群は、0.5%コレステロールおよび1%コール酸を混入したMF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製)中に、実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を0.3%配合したもの(0.3%配合群)および1%配合したもの(1%配合群)とし、対照群の飼料は0.5%コレステロールおよび1%コール酸を混入したMF粉末飼料のみとした。動物飼育室は室温24±7℃、湿度54±11%に保ち、12時間ごとの明暗サイクル(午前7時点灯、午後8時消灯)に調整した。28日間の試験終了後、エーテル麻酔下に腹部大静脈により採血し、血漿脂質成分(総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド)の定量を行った。また、肝臓コレステロールの実験は、上記マウスの採血後、肝臓を摘出して秤量し、生理食塩水にて灌流してホモジネート液を作製後、総コレステロール、トリグリセリドを測定した。LDLコレステロールは総コレステロール値からHDLコレステロール値を減じて求めた。これら結果を表10および表11に示す。
Figure 2005224233
Figure 2005224233
表10および表11に示すように、対照群と比較して、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物を0.3%および1%配合した群は、血漿の総コレステロール、トリグリセリド、LDLコレステロール、および肝臓の総コレステロール、トリグリセリドの低下が認められた。
試験例13
<肝機能改善効果>
実験動物として6週齢のウイスター系雄性ラットを市販粉末飼料で1週間予備飼育し、7匹1群として試験に供した。予備飼育後、標凖飼料(市販粉末飼料)に実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を1%配合したもの(1%配合群)および3%配合したもの(3%配合群)にて14日間飼育した。なお、対照群は、標準飼料のみで飼育したものとした。動物飼育室は室温22±4℃、湿度55±15%に保ち、12時間ごとの明暗サイクル(午前7時点灯、午後8時消灯)に調整した。次に1規定水酸化ナトリウム溶液でpH7.2に調整したD−ガラクトサミン塩酸塩(シグマ社製)溶液(300mg/mL)を滅菌フィルターで滅菌し、14日目にラットに800mg/kg体重の割合で腹腔内注射した。なお、投与の前後各4時間ずつ絶食させた。D−ガラクトサミン投与から20時間投与後にネンブタール麻酔下で開腹し、心臓より採血し、血漿を分離後、トランスアミナーゼ活性を測定した。これら結果を表12および表13に示す。
Figure 2005224233
Figure 2005224233
表12および表13に示されるように、対照群と比較して、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物を1%および3%配合した群は、濃度依存的にガラクトサミン肝障害による血漿トランスアミナーゼ(GOT、GPT)活性の上昇を抑制した。
試験例14
<血糖値の低下能>
出生後2日目の雄性ウイスター系ラットに0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶かしたストレプトゾトシン(STZ、シグマ社製)80mg/kgを皮下注射し、STZラットを作製した。その後、母乳で4週間、市販固形飼料で4週間飼育した。空腹時の血糖値に基づき、7匹1群に群分けし、それそれ実験食として対照群には標準飼料(市販固形飼料)、試験群として標準飼料に実施例1のモズクの納豆菌醗酵物を1%配合したもの(1%配合群)および3%配合したもの(3%配合群)にて8週間飼育した。動物飼育室は室温22±2℃、湿度55±10%に保ち、12時間ごとの明暗サイクル(午前7時点灯、午後8時消灯)に調整した。実験開始後、2週間間隔にて、5時間絶食した後に尾静脈から採血し血漿中のグルコース濃度を測定した。結果を表14に示す。
Figure 2005224233
表14に示されるように、対照群と比較して、本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物を1%および3%配合した群は、濃度依存的に血漿中のグルコース濃度を低下させた。
本発明におけるモズクの納豆菌醗酵物は、原料となるモズクに、生大豆、玄米、玄麦を培地組成とし、納豆菌を植えて培養せしめることを特徴とする醗酵物であって、免疫賦活作用、活性化酸素阻害活性、血圧降下作用、脳卒中予防効果、カルシウム沈殿阻止効果、抗変異原活性、血漿コレステロール低下効果、肝機能改善効果、血糖値低下効果等があり、食品に添加して健康食品とすることができる。

Claims (11)

  1. 原料となるモズクに、生大豆、玄米、玄麦を培地組成とし、納豆菌を植えて培養せしめることを特徴とする醗酵物。
  2. 請求項1記載のモズクの納豆菌醗酵物を食品に添加してなる健康食品。
  3. 免疫賦活作用を有する請求項2記載の健康食品。
  4. 活性化酸素阻害活性を有する請求項2記載の健康食品。
  5. 血圧降下作用を有する請求項2記載の健康食品。
  6. 脳卒中予防効果を有する請求項2記載の健康食品。
  7. カルシウム沈殿阻止効果を有する請求項2記載の健康食品。
  8. 抗変異原活性を有する請求項2記載の健康食品。
  9. 血漿コレステロール低下効果を有する請求項2記載の健康食品。
  10. 肝機能改善効果を有する請求項2記載の健康食品。
  11. 血糖値低下効果を有する請求項2記載の健康食品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2014041703A1 (ja) * 2012-09-14 2014-03-20 高野 友梨 コラーゲン産生促進懸濁液の製造方法
JP2015021001A (ja) * 2013-07-17 2015-02-02 有限会社湘南予防医科学研究所 納豆菌を用いたマコンブ発酵物の血圧上昇抑制剤

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