JP2005224230A - 新規なトリコデルマ菌株と、それによって生産される酵素とその製法、その酵素を用いた機能性糖類の製法、及びその糖類を含む機能性保健食品 - Google Patents

新規なトリコデルマ菌株と、それによって生産される酵素とその製法、その酵素を用いた機能性糖類の製法、及びその糖類を含む機能性保健食品 Download PDF

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Abstract

【課題】新規なトリコデルマ菌株と、それによって生産される酵素、機能性糖類及び機能性保健食品を提供する。
【解決手段】新規菌株トリコデルマ ビリデ TV1(Trichoderma viride TV1)は、シイタケ菌床に発生した汚染菌の中から見出された。この菌株は、酵素キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼ生産能を有する。これらの酵素は、キチン、キチンオリゴ糖、酵母またはラミナランを分解して、機能性が高く、代謝吸収性のよい5〜8糖のキチンオリゴ糖、機能性単糖のN−アセチルグルコサミン、機能性が高く代謝吸収性のよい5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖を多量に安定して生産する。また、これらの糖と、きのこまたはパン酵母分解液中の機能性成分と組み合わせることにより、優れて機能性保健食品を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、新規なトリコデルマ菌株と、それによって生産される酵素とその製法、その酵素を用いた機能性糖類の製法、及びその糖類を含む機能性保健食品に関する。
キチンオリゴ糖は、難消化性、ビフィズス菌利用性、免疫賦活活性、抗感染病効果、急性関節症予防、植物成長促進作用等の作用が知られている。N−アセチルグルコサミンは、急性関節症の予防と治療効果が知られている。酵母およびラミナラン由来のβ−1,3−グルカンオリゴ糖は、抗がん作用、C型肝炎、糖尿病、慢性関節リュウマチ等の改善を示す機能性食品、医薬品、農業分野で応用が知られている。特に、5糖以上のキチンオリゴ糖は、その免疫機能が優れており、注目されている(非特許文献1)。さらに5糖以上のβ−1,3−グルカンオリゴ糖には、免疫調整作用、免疫賦活作用、抗腫瘍作用、抗酸化作用、抗菌作用等があり、米国では高純度免疫賦活成分の薬理作用も公開されている(非特許文献2)。
キチン、キトサン研究会編、「キチン、キトサンハンドブック」、第1版第1刷、日本、技報堂出版(株)、1995年、p.209−226 川村賢司、「高純度超微粒子β−1、3−D−グルカンという確かな選択」、初版第一刷、日本、現代書林、2003年、p.22−108
従来、キチンオリゴ糖は、キチンを加水分解する化学的方法により製造されてきた(特許文献1、2、3)。しかし、化学的方法では酸の混入が避けられず、安全性の観点から食品への応用は困難であった。N−アセチルグルコサミンは、キチンオリゴ糖から塩酸分解法により製造できるが、この方法では、特殊な装置を使用、食品としての安全性に問題がある。β−1,3−グルカンオリゴ糖は、今後キチンオリゴ糖と同様に、制ガン機能を含む高機能性の糖として期待されており、安全性の観点から酵素法による製法が強く望まれる。
特開2002−177000号公報 特開2001−069975号公報 特開2002−272452号公報
本発明は、前記のごとき課題を解決したもので、新規なトリコデルマ菌株と、それによって生産される酵素とその製法、その酵素を用いた機能性糖類の製法、及びその糖類を含む機能性保健食品を提供することを目的としている。
前記課題を解決した本発明の新規なトリコデルマ菌株は、きのこ類及び酵母の分解能に優れたキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、並びにきのこ類及び酵母またはラミナランの分解能に優れたβ−1,3−グルカナーゼの生産能を有するトリコデルマ sp.TV1(Trichoderma sp.TV1)であることを特徴としている。
本発明のトリコデルマ sp.TV1によって生産される機能性糖類の生産酵素は、キチンから機能性の高い5〜8糖のキチンオリゴ糖生産能を有するキチナーゼ、キチンオリゴ糖から機能性N−アセチルグルコサミン生産能を有するN−アセチルグルコサミニダーゼ、並びにきのこ類及び酵母またはラミナランから機能性の高い5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖生産能を有するβ−1,3−グルカナーゼからなることを特徴としている。
本発明の機能性糖類生産酵素の製法は、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたキチナーゼを分離精製するキチナーゼの製法、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたN−アセチルグルコサミニダーゼを分離精製するN−アセチルグルコサミニダーゼの製法、及びトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたβ−1,3−グルカナーゼを分離精製するβ−1,3−グルカナーゼの製法からなることを特徴としている。
本発明の酵素を用いた機能性糖類の製法は、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたキチナーゼを分離精製し、得られたキチナーゼによりキチンを分解することを特徴とする機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖のキチンオリゴ糖の製法、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたN−アセチルグルコサミニダーゼを分離精製し、得られたN−アセチルグルコサミニダーゼによりキチンオリゴ糖を分解する機能性N−アセチルグルコサミンの製法、及びトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたβ−1,3−グルカナーゼを分離精製し、得られたβ−1,3−グルカナーゼによりきのこ類及び酵母またはラミナランを分解する機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖の製法からなることを特徴としている。
本発明の機能性保健食品は、本発明の酵素法で得られた機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖からなるキチンオリゴ糖、機能性N−アセチルグルコサミン及び機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖からなるβ−1,3−グルカンオリゴ糖からなる群から選ばれた少なくともひとつと、きのこ類または酵母分解液中のキチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン、β−1,3−グルカンオリゴ糖及びグアニル酸等の呈味成分からなる群から選ばれた少なくともひとつとを含むことを特徴としている。
本発明には、以下の産業上の効果または利点がある。
(1)本発明の新菌株トリコデルマ sp.TV1は、キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼ生産能を有する。また、β−1,6−グルカナーゼ活性もある。この新菌株は、シイタケ生産現場の菌床で発見されることから採取が容易である。加えて、栄養源として炭素源、窒素源、無機塩類を適宜含有する培地であれば、天然培地でも合成培地でも使用でき培養も容易である。
(2)本発明のトリコデルマ sp.TV1により生産されるキチナーゼは、キチンから機能性が高く、代謝吸収が容易な5〜8糖のキチンオリゴ糖を生産する能力を有する。N−アセチルグルコサミニダーゼは、キチンオリゴ糖から機能性N−アセチルグルコサミンの単糖を生産する能力を有する。β−1,3−グルカナーゼは、きのこ類及び酵母類またはラミナランから制がん性等の機能性が高く、代謝吸収が容易なβ−1,3−グルカンオリゴ糖を生産する能力を有する。
(3)本発明のトリコデルマ sp.TV1によるキチナーゼの製法では、トリコデルマ sp.TV1の培養液中に分泌生産されたキチナーゼを分離精製することにより、高純度のキチナーゼを確実に得ることができる。トリコデルマ sp.TV1によるN−アセチルグルコサミニダーゼの製法では、トリコデルマ sp.TV1の培養液中に分泌生産されたN−アセチルグルコサミニダーゼを分離精製することにより、高純度のN−アセチルグルコサミニダーゼを確実に得ることができる。トリコデルマ sp.TV1によるβ−1,3−グルカナーゼの製法では、トリコデルマ sp.TV1の培養液中に分泌生産されたβ−1,3−グルカナーゼを分離精製することにより、高純度のβ−1,3−グルカナーゼを確実に得ることができる。
(4)本発明のキチンオリゴ糖の製法では、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたキチナーゼを分離精製し、得られたキチナーゼによりキチンを分解することにより、高純度で、効率よく、容易に多量の機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖のキチンオリゴ糖を得ることができる。N−アセチルグルコサミンの製法では、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたN−アセチルグルコサミニダーゼを分離精製し、得られたN−アセチルグルコサミニダーゼによりキチンオリゴ糖を分解することにより、高純度で、効率よく、容易に多量の機能性N−アセチルグルコサミンを得ることができる。β−1,3−グルカンオリゴ糖の製法では、トリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたβ−1,3−グルカナーゼを分離精製し、得られたβ−1,3−グルカナーゼによりきのこ類及び酵母またはラミナランを分解することにより、高純度で、効率よく、容易に多量の機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖を得ることができる。加えて、キチナーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼは、きのこ類や酵母の細胞壁を分解することにより、高分子β−1,3−グルカンを水溶性のオリゴ糖にしたり、グアニル酸などの呈味成分を抽出したりすることもできる。
(5)本発明の機能性保健食品は、本発明の酵素法で得られた機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖のキチンオリゴ糖、機能性N−アセチルグルコサミン、及び機能性が高く、代謝吸収の容易な5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖からなる群から選ばれた少なくともひとつと、きのこ類またはパン酵母分解液中のキチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン、β−1,3−グルカンオリゴ糖及びグアニル酸等の呈味成分からなる群から選ばれた少なくともひとつを含むことにより、キチンオリゴ糖の難消化性、ビフィズス菌利用性、免疫賦活活性、抗感染病効果、植物成長促進作用、N−アセチルグルコサミンの急性関節症の予防や治療における有効性、β−1,3−グルカンオリゴ糖の免疫調整作用、免疫賦活作用、抗腫瘍作用、抗酸化作用、抗菌作用等を活かして、種々の機能性保健食品、医薬、農薬等を調製できる。
本発明のトリコデルマ属に属する新菌株は、シイタケ菌床に発生した汚染菌の中から、キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、及びβ−1,3−グルカナーゼ生産能に関するスクリーニングにより新規に見いだされたもので、トリコデルマ sp.TV1(Trichoderma sp.TV1)と命名して、平成16年2月12日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した。寄託番号は[FERM P−19684]である。トリコデルマ sp.TV1の菌学的性質を下記に示す。
(1)培養的・形態的性質:トリコデルマ sp.TV1は、不完全菌類の一属で、集落の色調は分生子の形成により緑色となる。分生子は楕円状を呈する。形態は分岐を繰り返して不規則な輪生状となり、フィアライドを群生する。分生子は粘塊状に形成される。
トリコデルマ sp.TV1の培養には、通常の糸状菌無機塩類としての培養法を用いる。培養のための栄養源としては、炭素源、窒素源、無機塩類を適宜含有する培地であれば、天然培地でも合成培地でも使用できる。炭素源としては、グルコース、蔗糖、キチン、酵母細胞壁等を使用できる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、酵母エキス、ペプトン、米糠、シイタケ子実体、酵母細胞壁などを使用できる。無機塩類としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、銅の塩類、例えばリン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸亜鉛等を使用できる。これらの他、添加可能な栄養因子として、ビタミン類、アミノ酸、核酸及びその塩類等を使用できる。培養は、好気的条件、例えば振とう培養法、通気攪拌培養法が好適であるが、固体培養法も可能で、pH等の条件に応じて適宜選択すればよい。培養時間に特に制限はないが、好ましくは20〜96時間、さらに好ましくは40〜96時間である。
(2)生理学的・化学分類学的性質:トリコデルマ sp.TV1は、優れたキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼ生産能を有する。得られたキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼ生産菌は、キチン及び酵母細胞壁(あるいはラミナラン)を重合度の高いキチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン、β−1,3−グルカンオリゴ糖に効率よく変換する。
トリコデルマ sp.TV1は、ポテトデキストロー寒天平板培地及びポテトキャロット寒天培地に接種する。生育の範囲はpH4.0〜6.0、温度25〜30℃、培養期間は2〜4日間である。最適生育条件は、pH5.0〜5.5、温度約25℃、培養期間は4日である。培養後生育したカビの集落の色調及び組織を観察した結果、生育は早く、集落の色調は分生子の形成により緑色となる。分生子は楕円状を呈する。形態は分岐を繰り返して不規則な輪生状となり、フィアライドを群生する。分生子は粘塊状に形成される。
(3)同種内の公知菌株との菌学的性質の相違点:後述の表1から明らかのように、本発明のトリコデルマ sp.TV1は、公知菌株トリコデルマ・sp.Uに比較して、キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ、β−1,6−グルカナーゼ活性において顕著な差異があり、すぐれた生産能を示す。
本発明のトリコデルマ sp.TV1の選抜では、シイタケの菌床栽培において、シイタケ子実体の傘の表面に付着していて、傘を溶解した時に得られる分生子を滅菌水にて系統的に希釈する。次いで、希釈液をもとにポテトデキストロー寒天平板培地を用いて純粋培養を行い、単一集落を示すものを純粋菌として選抜する。同定は財団法人日本食品センターに依頼する。
本発明のトリコデルマ sp.TV1によるキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼの製法として、トリコデルマ sp.TV1の通気攪拌培養法または固体培養法を用いるのが実用的である。トリコデルマ sp.TV1の培養物中には、キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼが分泌される。分泌されたキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼは、濾過または遠心分離等の操作で菌体を除き、培養液をそのまま粗キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼとして回収する。
得られた粗キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼからの分離、精製には、硫安による分画沈殿、DABA−Sepharose CL−6B、Ambelite CG−50によるカラムクロマトグラフィー、セファクリルによるゲル濾過等の慣用的酵素精製手段を用いる。分離精製された高純度のキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼは、下記の理化学的性質を示す。
キチナーゼ:
分子量 ;29,000(測定法;SDS−PAGE電気泳動法)
最適pH ;4.5〜5.0
pH安定性;3.0〜5.0
最適温度 ;約50℃
温度安定性;約50℃
気質特異性;キチナーゼによるキチン加水分解物からは、TLC分析の結果、機能性が高く、代謝吸収性のよいキチンオリゴ糖の5−8糖が得られた。また、生成糖の関係を調べた結果、本酵素はエンド型のキチナーゼあることが判明した。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:
分子量 ;約70,000(測定法;SDS−PAGE電気泳動法)
最適pH ;約5.0
pH安定性;4.0〜6.0
最適温度 ;約50℃
温度安定性;約50℃
基質特異性;N−アセチルグルコサミニダーゼによるキチンオリゴ糖の加水分解物からは、TLC分析の結果、機能性の高いN−アセチルグルコサミンが得られた。また生成糖の関係を調べた結果、N−アセチルグルコサミニダーゼは、典型的なN−アセチルグルコサミニダーゼナーゼあることが判明した。
β−1,3−グルカナーゼ:
分子量 ;30,000(測定法;SDS−PAGE電気泳動法)
最適pH ;5.0〜5.5
pH安定性;3.0〜5.5
最適温度 ;55〜60℃
温度安定性;55℃以下
気質特異性;β−1,3−グルカナーゼによるβ−1,3−グルカンを含むラミナランの加水分解物は、TLC分析の結果、β−1,3−グルカン、機能性の高いラミナランオリゴ糖の7−8糖が得られた。また本酵素(β−1,3−グルカナーゼ)からは、酵母細胞壁から機能性が高く、代謝吸収性のよいβ−1,3−グルカンオリゴ糖の7−8糖が得られることが判明した。
培地の調製は、次のように行った。5%のシイタケ子実体粉末を含むフスマ5gに、トリコデルマ合成培地(Natick培地)を加えて殺菌後植菌し、30℃で5日間培養した。トリコデルマ合成培地としては、硫酸アンモニウム14g、リン酸水素二カリウム20g、尿素0.3g、塩化カルシウム3g、硫酸マグネシウム0.3g及び1Lの蒸留水を混合したA液10mlと、硫酸鉄水和物0.05g、硫酸マンガン0.016g、硫酸亜鉛水和物0.014g、塩化カルシウム0.02g及び100mlの蒸留水を加えたB液1mlとを混合し、蒸留水で100mlに定容したものを使用した。
粗酵素液は、次のように調製した。トリコデルマ合成培地には、菌が旺盛に生育した。この培地内から、トリコデルマ・sp.TV1と、同時にトリコデルマ sp.TV1から分泌生産されたキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ及びβ−1,6−グルカナーゼ等の酵素を含む粗酵素液が得られた。
(試験例1:トリコデルマ sp.TV1由来の酵素活性)
トリコデルマ合成培地で保存している溶菌酵素U菌株を対照例として、実施例1で培養して得られた粗酵素液につき、キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ及びβ−1,6−グルカナーゼ活性を測定した。酵素活性の測定は、試験例2の方法によった。その結果を表1に示す。
測定結果から、キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ及びβ−1,6−グルカナーゼ活性は、市販されている溶菌酵素U菌よりも顕著に優れ最強であった。
5%のシイタケ子実体粉末を含むフスマ100gに、トリコデルマ合成培地(Natick培地)100mlを加えて殺菌後植菌し、アルミ製の容器を用いて30℃で5日間培養を行った。培養後、出麹に3倍量の水を加えて1時間酵素を抽出した。抽出後濾過液を7000rpmで15分間遠心分離を行い、培養上澄み液を得た。次に、上澄み液に対して飽和量の硫安を加えて塩析を行った。生じた沈殿物を7000rpm,10分間遠心分離を行い、その沈殿物を脱イオン水100mlに溶解し、溶解後セロハンチューブに入れ、脱イオン水に対して十分に透析した。透析された溶液を凍結乾燥して、粗酵素サンプル12gを得た。粗酵素サンプルは、酵素毎に次の方法により精製し、酵素の大量培養を行うために以下の各試験を行った。
β−1,3−グルカナーゼの精製:実施例2の粗酵素サンプル1gを0.01mol酢酸塩緩衝液(pH5.0)に溶解して、9,000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を得た。この上澄み液を0.01mol酢酸塩緩衝液(pH5.0)で平衡化したDEAE−セファロースに吸着させた後、0.01mol〜0.6mol酢酸塩緩衝液(pH5.0)を用いて直線的濃度勾配で酵素タンパク質を溶出する陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。
その結果、図2に示すように、β−1,3−グルカナーゼの活性ピークとして、ピーク1と2の2つが得られた。ピーク2のエンド型の強いフラクションを集め、コロジオンバッグによる濃縮を行った。キチナーゼはイオン強度の高い最後のピークに出現した。活性の高いフラクションを集め、コロジオンバッグによる濃縮を行った。
さらに、コロジオンバッグによる濃縮で部分的に精製したβ−1,3−グルカナーゼのフラクションを0.01mol酢酸塩緩衝液(pH4.0)で平衡化したDEAE−セファロースCL−6Bを充填したカラム(2.6×30cm)に通して、β−1,3−グルカナーゼを吸着させた後、0.1mol酢酸塩緩衝液(pH5.0)で溶出するとβ−1,3−グルカナーゼのピークが得られた。β−1,3−グルカナーゼ活性の高いフラクションを集め、コロジオンバッグによる濃縮を行った。このフラクションを透析し、セファクリルS100−HRカラムによるゲル濾過クロマトグラフィーを行った。このフラクションについてSDS−PAGEを行った結果、単一のバンドが確認されたので、これをトリコデルマ sp.TV1由来の精製酵素であるβ−1,3−グルカナーゼとした。本酵素の分子量は約30,000であると推定された。
キチナーゼの精製:前記β−1,3−グルカナーゼの精製過程で得たキチナーゼフラクションをコロジオンバッグにより濃縮した。すなわち、キチナーゼフラクションを0.01mol酢酸塩緩衝液(pH4.0)で平衡化したDEAE−セファロースCL−6Bを充填したカラム(2.6×30cm)に通じてキチナーゼを吸着させた後、0.01mol酢酸塩緩衝液(pH5.0)で溶出するとキチナーゼのピークが得られた。キチナーゼ活性の高いフラクションを集め、コロジオンバッグによる濃縮を行った。このフラクションを透析し、セファクリルS100−HRカラムによるゲル濾過クロマトグラフィーを行った。このフラクションについてSDS−PAGEを行った結果、単一のバンドが確認されたので、これをトリコデルマ sp.TV1由来の精製酵素であるキチナーゼとした。本酵素の分子量は約29,000であると推定された。
N−アセチルグルコサミニダーゼの精製:粗酵素サンプル984.28gを0.05molのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解して、9,000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を得た。この上澄み液を0.05mol塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したDEAE−セファロースCL−6Bを充填したカラム(2.6×30cm)に通してN−アセチルグルコサミニダーゼを吸着させ後、それぞれ0.05mol塩酸緩衝液(pH8.0)、リン酸水素二ナトリウム−リン酸二水素カリウム緩衝液(pH7.0)及び(pH6.0)、酢酸緩衝液(pH5.0)を500ml流して分画した。
その結果、図3に示すように、N−アセチルグルコサミニダーゼの活性ピークが3つ得られた。ピーク1(P−1)のフラクションを集め、コロジオンバッグによる濃縮を行った。次いで透析を行った。透析液を0.05mol塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したDEAE−セファロースCL−6Bを充填したカラム(2.6×30cm)に通してピーク1を吸着させ、同緩衝液にグラデイエント法により0〜0.5mol塩化ナトリウム濃度勾配をかけて分画した。N−アセチルグルコサミニダーゼ活性の高いフラクションを集め、コロジオンバッグによる濃縮を行った。このフラクションを透析し、セファクリルS100−HRカラムによるゲル濾過クロマトグラフィーを行った。このフラクションについてSDS−PAGEを行った結果、単一のバンドが確認されたので、これをTV1由来の精製酵素であるN−アセチルグルコサミニダーゼとした。本酵素の分子量は約70,000であると推定された。
(試験例2:酵素活性)
粗酵素サンプル中のキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼ、β−1,6−グルカナーゼについて、下記の力価測定法により測定した。測定結果、キチナーゼ活性は16.28unit/g、N−アセチルグルコサミニダーゼ活性は24.42unit/g、β−1,3−グルカナーゼは4,144unit/gであった。
キチナーゼの活性測定法:45℃の恒温槽中で、試験管に酵素液1mlにつき1%のコロイダルキチン1mlを加え、45℃で30分間反応させた。この時のブランクには、基質に0.05mol酢酸緩衝液(pH5.0)を加えたものを使用した。反応後、フィルター濾過し、別の試験管に上澄み液を0.5mlとり、それにpH9.1のホウ酸緩衝液0.5mlを添加し、管口に蓋をして沸騰水中で3分間煮沸した。直ちにこれを冷却し、酢酸で10倍に希釈したDMAB溶液3mlを加え、38℃の恒温槽中に220分間静置し、550nmにおける吸光度を測定し、生成したN−アセチルグルコサミン量を求め、酵素力価を算出した。上記条件下において、1分間に1μmolのN−アセチルグルコサミン量(分子量221.21)を生成する酵素量を1単位とする。
N−アセチルグルコサミニダーゼの活性測定法(Rondole−Molgan法):45℃の恒温槽中で試験管に酵素液0.1mlに0.34%のp−ニトロフェニール−N−アセチルグルコサミニド溶液(pH5.0)0.9mlを加え、45℃で30分間反応させた。この時のブランクには、基質に0.1mol酢酸緩衝液(pH5.0)を加えたものを使用した。反応後、1molの炭酸ナトリウム溶液2mlを加え、530nmにおける吸光度を測定し、生成したp−ニトロフェニール量を求め、酵素力価を算出した。上記条件下において、1分間に1μmolのp−ニトロフェニール量(139.11)を生成する酵素量を1単位とする。
β−1,3−グルカナーゼの活性測定法:45℃の恒温槽中で試験管に酵素液0.5mlにつき1%のラミナラン溶液(pH5.0)0.5mlを加え、45℃で30分間反応させた。この時のブランクには、基質に0.1mol酢酸緩衝液(pH5.0)を加えたものを使用した。反応後、銅試薬を加え、管口に蓋をして沸騰水中で10分間煮沸した。直ちにこれを冷却し、ヒ素モリブデン酸塩試薬2mlを加え攪拌後、蒸留水を加えて10mlに希釈し、15分間に静置し、500nmにおける吸光度を測定し、生成したグルコース量を求め、酵素力価を算出した。上記条件下において、1分間に1μmolのグルコース量(分子量180.16)を生成する酵素量を1単位とする。
β−1,6−グルカナーゼ活性の測定法:45℃の恒温槽中で試験管に酵素液0.5mlにつき、1%のパストラン溶液(pH5.0)0.5mlを加え、45℃で30分間反応させた。この時のブランクには、基質に0.1mol酢酸緩衝液(pH5.0)を加えたものを使用した。反応後、銅試薬を加え、管口に蓋をして沸騰水中で10分間煮沸した。直ちにこれを冷却し、ヒ素モリブデン酸塩試薬2mlを加え攪拌後、蒸留水を加えて1omlに希釈し、15分間に静置し、500nmにおける吸光度を測定し、生成したグルコース量を求め、酵素力価を算出した。上記条件下において、1分間に1μmolのグルコース量(分子量180.16)を生成する酵素量を1単位とする。
(試験例3:粗酵素液による乾燥シイタケ子実体片の溶解性)
実施例1で得られた粗酵素液10mlを大型試験管に入れ、これに乾燥シイタケ子実体片を加え、45℃で12時間、恒水槽中で作用させた。結果を図1に示す。図1の写真から明らかなように、粗酵素液のキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ及びβ−1,6−グルカナーゼ等の酵素により、シイタケ子実体片は完全に分解された。
(試験例4:最適基質の測定)
トリコデルマ sp.TV1株由来の酵素キチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ及びβ−1,3−グルカナーゼの基質との性質につき、下記の方法で試験した。
キチナーゼ:実施例2の精製酵素に、調製済みの各基質[0.2%グリコールキチン、0.2%キトサンEL、0.2%キトサン9B、0.2%キトサン10B、0.2%コロイダルキチン、0.2%キトサン7B、0.2%PDC(部分的に脱アセチル化したキチン)、0.2%シイタケ菌糸液]を基質として加え、45℃において反応させ、Rondole−Morgan法にしたがって、酵素活性を測定した。結果を図4に示す。図4から明らかなように、脱アセチル度70%のキトサン7Bで最も高い活性を示した。また本酵素は、ある程度脱アセチル化されたキチンに対してもよく反応した。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:実施例2の精製酵素に調製済みのアセチルキチンオリゴ糖液を基質として加え、45℃において反応させ、生成糖をHP薄層クロマトグラフィーで調べた。結果を図5に示す。図5から明らかなように、N−アセチルグルコサミニダーゼは、アセチルキチンオリゴ糖を完全にN−アセチルグルコサミンにした。
β−1,3−グルカナーゼ:実施例2の精製酵素に、調製済みの各基質[1%ラミナラン(Laminarin.digitata)、1%ラミナラン(Eisenia bicyclis)、酵母細胞壁、シイタケ菌糸液]を基質として加え、45℃において反応させ、Nelson−Somogyi法により生成糖を定量して酵素活性を測定した。結果図6に示す。図6から明らかなように、β−1,3−結合もつ基質によく作用した。特に酵母細胞やシイタケ菌糸によく作用した。
(試験例5:最適pHの測定)
キチナーゼ:pH2.0〜pH7.0の各pHの緩衝液で希釈した実施例2の精製酵素液に、0.2%PDCを基質として加え、45℃において反応させ、Rondele−Morgan法にしたがって酵素活性を測定した。結果を図7に示す。最適pHは4.5〜5.0であった。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:pH2.0〜pH7.0の各pHの緩衝液で希釈した実施例2の精製酵素液に0.34%のp−ニトロフェニール−N−アセチルグルコサミニド溶液(pH5.0)を基質として加え、45℃において反応させ、生成したp−ニトロフェニール量を求め、酵素活性を測定した。結果を図8に示す。図8から明らかなように、最適pHは5.0であった。
β−1,3−グルカナーゼ:pH2.0〜pH7.0の各pHの緩衝液で希釈した実施例2の精製酵素液に0.2%PDCを基質として加え、45℃において反応させ、生成糖をNelson−Somogyi法で定量して、酵素活性を測定した。結果を図9に示す。図9から明らかなように、最適pHは5.0〜5.5であった。
(試験例6:pH安定性の測定)
キチナーゼ:pH2.0〜pH7.0の各pHの緩衝液で希釈した実施例2の精製酵素液を一定時間静置後、0.2%PDCを基質として加え、45℃において反応させ、Rondole−Morgan法にしたがって酵素活性を測定した。結果を図10に示す。図10から明らかなように、pH3.0〜pH5.0で安定性を保った。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:pH2.0〜pH7.0の各pHの緩衝液で希釈した実施例2の精製酵素液に0.34%のp−ニトロフェニール−N−アセチルグルコサミニド溶液(pH5.0)を基質として加え、45℃において反応させ、生成したp−ニトロフェニール量を求め酵素活性を測定した。結果を図11に示す。図11から明らかなように、pHは4.0〜6.0で安定性を保った。
β−1,3−グルカナーゼ:pH2.0〜pH7.0の各pHの緩衝液で希釈した実施例2の精製酵素液に1%ラミナラン溶液を基質として加え、45℃において反応させ、生成糖をNelson−Somogyi法で定量して、酵素活性を測定した。結果を図12に示す。図12から明らかなように、pHは3.0〜5.5で安定性を保った。
(試験例7:最適温度の測定)
キチナーゼ:実施例2の精製酵素液に0.2%PDCを基質として加え、20〜70℃まで5〜10℃毎に設定した恒温槽で反応させ、Randole−Morgan法にしたがって酵素活性を測定した。結果を図13に示す。図13から明らかなように、最適温度は50℃付近であった。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:実施例2の精製酵素液に0.34%のp−ニトロフェニール−N−アセチルグルコサミニド溶液(pH5.0)を基質として加え、20〜70℃まで5〜10℃毎に設定した恒温槽で反応させ、生成したp−ニトロフェニール量を求め、酵素活性を測定した。結果を図14に示す。図14から明らかなように、最適温度は50℃附近であった。
β−1,3−グルカナーゼ:実施例2の精製酵素液に1%ラミナラン溶液を基質として加え、20〜70℃まで5〜10℃毎に設定した恒温槽で反応させ、生成糖をNelson−Somogyi法で定量して、酵素活性を測定した。結果を図15に示す。図15から明らかなように、最適温度は55〜60℃であった。
(試験例8:温度安定性の測定)
キチナーゼ:20〜70℃まで5〜10℃毎に設定した恒温槽に、実施例2の精製酵素液を一定時間静置した後、実施例2の精製酵素液に0.2%PDCを基質として加え反応させ、Rondole−Morgan法にしたがって酵素活性を測定した。結果を図16に示す。図16から明らかなように、キチナーゼの温度安定性は、50℃付近まで安定であり、70℃で75%失活した。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:20〜70℃まで5〜10℃毎に設定した恒温槽に、実施例2の精製酵素液を一定時間静置した後、実施例2の精製酵素液に0.34%のp−ニトロフェニール−N−アセチルグルコサミニド溶液(pH5.0)を基質として加えて反応させ、生成したp−ニトロフェニール量を求め、酵素活性を測定した。結果を図17に示す。図17から明らかなように、最適温度は50℃附近であった。
β−1,3−グルカナーゼ:20〜70℃まで5〜10℃毎に設定した恒温槽に、精製酵素液を一定時間静置した後、精製酵素液に1%ラミナラン溶液を基質として加えて反応させ、生成糖をNelson−Somogyi法で定量して、酵素活性を測定した。結果を図18に示す。図18から明らかなように、温度安定性は50℃まで安定であった。
(試験例9:加水分解物産物のHPTLCによる分析)
キチナーゼ:基質である1%PDC溶液0.9mlに、実施例2の精製酵素0.1mlを加え、45℃で各0、1、6、12、24時間反応させた後、10分間煮沸して反応を停止させ、凍結乾燥により濃縮し、これを薄層プレートにスポットした。展開溶液は、ブタノール:エタノール:アンモニア=4:3:3(v・v)を用いた。展開後、30%硫酸を噴霧し、120℃で15分間静置した。標準試料によるHPTLCの結果を図19に示す。図19から明らかなように、1時間反応後から機能性の高いとされる機能性5〜8糖のキチンオリゴ糖の生成が認められた。
N−アセチルグルコサミニダーゼ:実施例2の精製酵素中のキチンオリゴ糖からN−アセチルグルコサミニダーゼにより、図5に示すようにN−アセチルグルコサミンの生成が認められた。
β−1,3−グルカナーゼ:基質である2%ラミナラン溶液0.9mlに、実施例2の精製酵素0.1mlを加え、45℃で各0、1、3、6、12、24時間反応させた後、10分間煮沸して反応を停止させ、凍結乾燥により濃縮し、これを薄層プレートにスポットした。展開溶液は、酢酸:クロロホルム:蒸留水=10:3:1(v・v)を用いた。展開後、30%硫酸を噴霧し、120℃で15分間静置した。標準試料のよるHPTLCの結果を図20に示す。図20から明らかなように、1時間反応後から機能性の高いとされる5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖の生成が認められた。
(試験例11:β−1,3−及びβ−1,6−グルカン由来の還元糖並びにN−アセチルアミノ糖の検出)
実施例2の粗酵素を使用して、シイタケ子実体粉末とビール酵母細胞壁を基質として、シイタケ子実体粉末とビール酵母細胞壁から生成するβ−1,3−及びβ−1,6−グルカン由来の還元糖およびN−アセチルアミノ糖の検出を行った。
シイタケ子実体粉末とビール酵母細胞壁をそれぞれ試験管に入れ、それに実施例2の粗酵素液5mlを加え、45℃の恒温槽中で12時間反応させた後、濾過した反応液上澄み液の生成還元糖をNelson−Somogyi法及びN−アセチルアミノ糖をRondole−Molgan法で測定した。結果を表2、図21、図22、図23、図24、図25に示す。これらの図表から明らかなように、生成還元糖およびN−アセチルアミノ糖量の増加が認められた。これにより、シイタケ子実体粉末とビール酵母細胞壁の成分は、キチナーゼおよびβ−1,3−グルカナーゼ等の酵素により完全に分解することが分かった。
本発明の新菌株トルコデルマ sp.TV1、新菌株により得られる酵素とその製法、その酵素を用いた機能性糖類の製法、その糖類を含む機能性保健食品は、その機能の選択により、機能性健康補助食品分野、医薬品分野、農業分野等に広く利用可能である。
本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、及びβ−1,3−グルカナーゼによるシイタケ子実体の分解結果を示す写真である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼ、β−1,3−グルカナーゼをDEAE−Sepharose CL−6Bで分画した結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するN−アセチルグルコサミニダーゼをDEAE−Sepharose CL−6Bで分画した結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼの最適基質の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するN−アセチルグルコサミニダーゼの最適基質の測定結果を示す説明図である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するβ−1,3−グルカナーゼの最適基質の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼの最適pHの測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するN−アセチルグルコサミニダーゼの最適pHの測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するβ−1,3−グルカナーゼの最適pHの測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼの最適pH安定性の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するN−アセチルグルコサミニダーゼの最適pH安定性の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するβ−1,3−グルカナーゼの最適pH安定性の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼの最適温度の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するN−アセチルグルコサミニダーゼの最適温度の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するβ−1,3−グルカナーゼの最適温度の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼの温度安定性の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するN−アセチルグルコサミニダーゼの温度安定性の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するβ−1,3−グルカナーゼの温度安定性の測定結果を示すグラフである。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するキチナーゼによる部分的脱アセチル化キチン分解産物の薄層クロマトグラフ法で分画した結果を示す説明図である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産するβ−1,3−グルカナーゼによるラミナランの分解産物の薄層クロマトグラフ法で分画した結果を示す説明図である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産する酵素製剤(原粉末)の溶液によるシイタケ子実体粉末の酵素無処理区分の分解結果を示す写真である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産する酵素製剤(原粉末)の溶液によるシイタケ子実体粉末の酵素処理区分の分解結果を示す写真である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産する酵素製剤(原粉末)の溶液によるビール酵母細胞壁の酵素無処理区分の分解結果を示す写真である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産する酵素製剤(原粉末)の溶液によるビール酵母細胞壁の酵素処理区分の分解結果を示す写真である。 本発明のトリコデルマ sp.TV1の生産する酵素製剤(原粉末)の溶液によるシイタケシイタケ子実体粉末及びビール酵母細胞壁の酵素処理区分によるアミノ酸類の増加を示す説明図である。

Claims (11)

  1. きのこ類及び酵母類の分解能に優れたキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ並びに酵母類の分解能に優れたβ−1,3−グルカナーゼの生産能を有するトリコデルマsp.TV1(Trichoderma sp.TV1)。
  2. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1によって生産され、キチンから機能性の高い5〜8糖のキチンオリゴ糖生産能を有することを特徴とするキチナーゼ。
  3. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1によって生産され、キチンオリゴ糖から機能性N−アセチルグルコサミン生産能を有することを特徴とするN−アセチルグルコサミニダーゼ。
  4. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1によって生産され、きのこ類及び酵母またはラミナランから機能性の高い5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖生産能を有することを特徴とするβ−1,3−グルカナーゼ。
  5. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたキチナーゼを分離精製することを特徴とするキチナーゼの製法。
  6. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたN−アセチルグルコサミニダーゼを分離精製することを特徴とするN−アセチルグルコサミニダーゼの製法。
  7. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたβ−1,3−グルカナーゼを分離精製することを特徴とするβ−1,3−グルカナーゼの製法。
  8. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたキチナーゼを分離精製し、得られたキチナーゼによりキチンを分解することを特徴とする機能性の高い5〜8糖のキチンオリゴ糖の製法。
  9. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたN−アセチルグルコサミニダーゼを分離精製し、得られたN−アセチルグルコサミニダーゼによりキチンオリゴ糖を分解することを特徴とする機能性N−アセチルグルコサミンの製法。
  10. 請求項1記載のトリコデルマ sp.TV1を培養し、培養物中に分泌生産されたβ−1,3−グルカナーゼを分離精製し、得られたβ−1,3−グルカナーゼによりきのこ類及び酵母またはラミナランを分解することを特徴とする機能性の高い5〜8糖のβ−1,3−グルカンオリゴ糖の製法。
  11. 請求項8で得られた機能性の高い5〜8糖からなるキチンオリゴ糖、請求項9で得られた機能性N−アセチルグルコサミン及び請求項10で得られた機能性の高い5〜8糖からなるβ−1,3−グルカンオリゴ糖からなる群から選ばれた少なくともひとつと、きのこ類またはパン酵母分解液中のキチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン、β−1,3−グルカンオリゴ糖及びグアニル酸等の呈味成分からなる群から選ばれた少なくともひとつとを含むことを特徴とする機能性保健食品。
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