JP2005220447A - 耐熱性ポリアミドメルトブロー不織布 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ジカルボン酸単位の60〜100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位からなり、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.4〜1.2dl/gであり、かつその末端基の10%以上が封止されているポリアミドからなるメルトブロー不織布であって、該不織布を構成する繊維の繊維径分布(CV%)が20〜60%であり、かつその構成繊維の10〜60%が2本以上の束状に融着した繊維からなることを特徴とするメルトブロー不織布。
Description
そして、濾過する対象の水−粒子混合物が高温(70℃以上)の場合、汎用のポリアミド樹脂では容易に劣化してしまい、フィルターとしての性能を充分発揮できないケースが多く見受けられた。
通常、熱可塑性樹脂をメルトブロー法により紡糸する場合、極めて低粘度にて紡糸することが必要であるため、通常の溶融成形に使用する樹脂よりも低分子量の樹脂を高温で処理することが必要になるが、このような条件下で紡糸を行った場合、紡糸の際の熱劣化により生ずる熱分解オリゴマーにより、ノズル汚れが生じ易く、あるいは紡糸繊維が途中で切断されるため、ウェブ内にいわゆる「ショット」と呼ばれる樹脂塊が混入しウェブの性能を著しく低下させてしまうという問題がある。このことは、フィルターとして使用しようとする場合、致命的な欠点となる場合が多いため、この末端基封止は特に重要である。
末端封止率(%)=[(A−B)/A]×100・・・(1)
〔式中、Aは分子鎖末端基総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、Bはカルボキシル基末端およびアミノ基末端の合計数を表す〕
メルトブロー法の基本原理については、インダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー(Industrial and Engineering Chemistry)48巻、第8号(p1342〜1346)、1956年に基本的な装置及び方法が開示されており、本発明においてもこれらの方法を応用してメルトブロー不織布を製造することが可能である。
すなわち、既に述べた粘度を有する樹脂を、押出機で溶融押出し、メルトブローダイへ導き、メルトブローノズルから紡糸して、これを捕集成形装置にて捕集し不織布とする工程において、ノズルから捕集装置に向かって繊維を吹き飛ばすためのブローガスを水蒸気に置き換える、あるいはこの中に水蒸気を吹き込むことである。水蒸気を吹き込む場合には、ブローガス流量よりもスチーム流量比が多くなるようにすることで本発明のメルトブロー不織布を効率よく製造することが可能になる。
この理由は定かではないが、水蒸気の存在により、繊維を吹き飛ばす流体の密度が上がり、繊維を吹き飛ばす力が格段に向上する。その結果、繊維径を細くする力がより強力になり、より細い繊維をより樹脂劣化の少ない温度(より低い紡糸温度)で製造可能になる。そして、同時に水の存在により、紡糸中の繊維の周囲が保温され繊維融着を生ずるために適度な繊維束を有するメルトブロー不織布が製造可能になると推定している。
ノズル直下の繊維流の温度制御としては、各種文献等で二次エアと称して、ブロー繊維流を冷却し、紡糸の安定性を向上する方法が提案されているが、本発明の方法は、ほぼ同様な装置を使うものの、その目的は、従来のものとは逆に繊維同士の融着を生じさせるものであり、また、紡糸繊維のおよびその周囲の温度を高く保つことにより、繊維の細化を促進させることにある。
この流体は、その取り扱い性や製造コストへの影響から、空気が好ましいが、それに限るものではなく、例えば、スチームや窒素ガスなど、メルトブロー紡糸を阻害することなく、ブロー繊維流及びその周囲の温度を所定の範囲に管理できるものであれば特に限定されるものではない。この場合、工程管理の指標として、ノズルから繊維噴出し方向に3cm、なおかつノズル幅方向中央部においてウェブ流れ方向5cmの地点における温度(この温度を、便宜上「ノズル近傍温度」と呼ぶ)を用い、この温度が40〜150℃であることが望ましく、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは50〜80℃である。ノズル近傍温度が40℃未満の場合は、繊維融着が少なすぎてウェブ強度が確保し難い、繊維束が少なすぎて、ウェブ構造が粗になりすぎてフィルターとして使用する場合に、十分な濾過性能を確保できない。一方、ノズル近傍温度が150℃を超える場合は、紡出樹脂の粘度が下がりすぎて熱風の勢いに負け断糸してしまうか、あるいは繊維が融着しすぎて、繊維束が非常に多くなり、不織布構造そのものを確保することが困難になってしまう。
さらに、ノズルから紡出する樹脂量は、ノズル1孔あたり、0.05〜3g/分の範囲にあることが好ましい。この量が0.05g/分未満では、紡出した樹脂が繊維状に細化される過程においてその破断してしまい、その破断端が不織布欠点の原因となる可能性が大きく、さらには、製造速度が極めて遅くなるため、コスト高になってしまう。また、3g/分を超える場合には、繊維の細化過程において、吐出された樹脂流が細化される前に固化してしまい、十分な繊維径に到達することが困難になる可能性が高い。
すなわち、得られたメルトブロー不織布における繊維径のCV%が20〜60%の範囲にあることにより、不織布を構成する繊維の繊維径は、1μm未満のものから、十数μmにわたり分布する。そしてこの細い繊維が濾別に働き、太い繊維が空隙を作り、この空隙に濾過した粒子を封じ込めることにより不織布の表面だけでなく不織布内部においても濾過が行われるのである。さらに、本発明のメルトブロー不織布においては、ブローガスにスチームを混合する等、製造条件の調整により2本以上の束状になった繊維をウェブ内の繊維の本数において10〜60%含ませることが可能になる。この束状繊維の存在により、不織布の微細構造を破壊することなく、さらに大きな空隙を作り、先に述べた極細繊維とともに、より多くの濾過粒子を不織布繊維内に封じ込めることが可能になり、結果としてより長い寿命を有するフィルターを形成するのである。
この濡れ性により、特に水系の濾液を濾過する場合に、濾過初期において水がフィルターを通過しやすくなるため、初期圧損が高くなることがなく、また濾過中も水分の通過を阻害することがないため、無用な濾過圧損の上昇を防ぐことが可能である。しかしながら、汎用のポリアミド不織布、例えばナイロン6からなるメルトブロー不織布の場合、濾過初期と安定後の濾過状態に差が生ずることがよくある。これは、濡れ性が良すぎるため、濾液の水により繊維が膨潤し、繊維の空隙が大きく変化することが原因であると考えられる。これに対し本発明のメルトブロー不織布は、適度な濡れ性を有するため、水を吸収しても寸法の変化は非常に小さく、安定した状態で濾過が行える。
該不織布の濡れ性については、例えばフィルム濡れ張力試験方法(JIS K6768)を用いて、比較評価することが可能であり、一例として繊維径約4μm、見かけ密度約0.11g/cm3のナイロン6メルトブロー不織布の濡れ性は、73mN/m以上であるのに対し、本発明のポリアミド不織布の濡れ性は、形態により多少の差があるものの61〜64mN/mと、ナイロン6よりも明らかに低い値を示しており、濡れ性が低いことがわかる。
平均ポアサイズが大きすぎると、幾ら極細繊維が混在しているとはいえ、充分な捕集効率を確保することは困難であり、目的とする性能の確保が難しい。また、平均繊維径が2μm未満では、捕集効率は確保できるものの濾過時の圧力損失が大きくなり、フィルターの寿命が極端に短くなってしまい、実用的ではなくなってしまう。さらに、本発明のメルトブロー不織布は、基本的に連続繊維により構成されていることが短繊維の脱落等がなく、濾液を脱落した繊維で汚染する心配がないという点で好ましい。
1H−NMR(500MHz,重水素化トリフルオロ酢酸中、50℃で測定)を用い、各末端基ごとの特性シグナルの積分値よりカルボキシル基末端、アミノ基末端および封止末端の数をそれぞれ測定し、前記の式(1)から末端封止率を求めた。測定に用いた代表的なシグナルの化学シフト値を以下に示す。
濃硫酸中、30℃にて、0.05,0.1,0.2,0.4g/dlの濃度の試料の固有粘度(ηinh)を測定し、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
不織布の任意の部分について、走査型電子顕微鏡にて、倍率1000倍で写真を撮影する。この写真に2本の対角線を引き、この対角線と交差する繊維につき、その径を測定し、倍率から換算する。ただし、対象となる繊維の状態が、他の繊維との融着や焦点ズレ等により不明確であるときは、測定対象外とした。この測定は、各サンプルにつき、1000本の繊維について行い、その平均値と変動率を求め、この平均値を不織布の繊維径、変動率を繊維径分布(CV%)とした。
繊維径測定に使用した写真を用い、同様に引いた対角線と交わる繊維について、束状態の繊維と単繊維状態の繊維とに分けて数え、単繊維数100本以上になる枚数の写真を撮影し、そこに写っている繊維全数について数え、下記式により算出した。なお束状繊維は、2本以上の繊維が100μm以上の長さにわたって融着した形態になっているものとし、1つの束を1本とカウントした。
束状繊維の割合=繊維束状態の繊維本数/(繊維束状態の繊維本数+単繊維状態の繊維本数)×100(%)
JIS L1096に準じて測定した。
JISL1906に準じて測定した。なお、通気度はフラジール形法により測定した。
サンプルを80℃に保った熱水中に7日間浸漬したのち、取り出し、濾紙にはさんで水分を除去、さらに25℃、60%RHの雰囲気で3日間放置することで自然乾燥した後の強度を測定し、処理前の強度との比を求めて評価した。
バブルポイント法を用いて測定した。なお、測定の際に使用した液体は、フロリナートFC40(住友スリーエム社製)を選択した。
JIS K6768に準拠し、濡れ張力試験混合液(和光純薬工業社製)を用いて濡れ張力を測定した。
評価サンプルを50cm角の正方形に切り4つ折りにし、これを濾紙で濾過をする要領でロートに取り付けた。これに、JIS Z8901の7種、8種、11種試験粉末(関東ローム層粉末)を各々200ppm相当、計600ppmの懸濁液を調製し、試液とした。これを1000mlロートへ注ぎ、3分間放置して通水性および捕集性能を確認した。通水性は、この時の濾過水量であり、捕集性能は、通水後の濾材を乾燥した後に重量を測り、増加重量と投入粒子重量の比から計算した。
テレフタル酸19.8mol、1,9−ノナンジアミン14mol、2−メチル−1,8−オクタンジアミン5mol、安息香酸1.0mol、次亜リン酸ナトリウム一水和物(原料に対して0.1重量%)0.06molおよび蒸留水2.2リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは2.20MPaまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.20MPaに保持しながら反応を続けた。次に30分かけて圧力を1.0MPaまで下げ、さらに1時間反応させてプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。次いで230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合することによりポリアミドを得た。得られたポリアミドの末端封止率は50%、極限粘度[η]は0.60dl/gであった。
ブローガスとして用いるスチーム流量を18Nm3/分・mとし、ノズル近傍温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてメルトブロー不織布を得た。(表2)
ブローガスとして、流量9m3/分・mのエアと流量9m3/分・mのスチームの混合気体を用いると共に、二次エアを使用すること以外は実施例1と同様にしてメルトブロー不織布を得た。この時のノズル近傍温度は96℃であった。(表2)
ブローガスとして、流量5m3/分・mのエアと流量13m3/分・mのスチームの混合気体を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法にてメルトブロー不織布を得た。この時、ノズル近傍温度は98℃であった。(表2)
ブローガスとして、流量19Nm3/分・mのエアを使用し、さらに二次エアを流量400Nm3/分、温度200℃としたこと以外は実施例1と同様にしてメルトブロー不織布を製造した。この時、ノズル近傍温度は121℃であった。(表2)
実施例1と同様のポリマー原料から末端封止率20%であるポリアミド樹脂を得た。得られたポリアミド樹脂を用い、ブローガスを19Nm3/分・mの流量のスチームとし、さらに二次エアを流量200Nm3/分、温度150℃としたこと以外は実施例3と同様にしてメルトブロー不織布を製造した。この時、ノズル近傍温度は114℃であった。(表2)
ブローガスとして18Nm3/分・mのエアを使用したこと以外は実施例1と同様にメルトブロー不織布を得た。このときのノズル近傍温度は19℃であった。この不織布は、繊維融着少ないため、繊維束の比率が低く、さらに繊維が細くなっていないため、良好な濾過効率を得ることができなかった。
二次エア温度を250℃としたこと以外は、実施例3と同じ方法で、メルトブロー不織布を製造しようとしたが、このときのノズル近傍温度は183℃となり、紡糸時に繊維が破断してしまい紡糸そのものが安定に行えなかった。
原料樹脂として、末端封止率5%のポリアミド樹脂を使用し、ブローガスとして18Nm3/分・mの空気を使用し、比較例1と同様の条件でメルトブロー不織布を製造したが、樹脂劣化が著しく、ショットの発生により長時間安定に不織布製造できなかった。
ポリアミド樹脂の極限粘度がそれぞれ0.7dl/g、0.8dl/gの樹脂を原料として使用して、実施例2と同様の方法にてメルトブロー不織布をそれぞれ製造した。
極限粘度1.4dl/gのポリアミド樹脂を原料として使用したこと以外は、実施例2と同じ条件でメルトブロー不織布を得たが、紡糸状態はあまり安定ではなく、ショットが発生する上に、繊維径が太く、十分な濾過効率を確保できなかった。
原料樹脂として、極限粘度0.8dl/gのナイロン6を使用し、ブローガスとして290℃のエア18Nm3/分・mを使用してメルトブロー不織布を製造した。得られた不織布は、耐熱水性が38%と低かった。
テレフタル酸19.8mol、1,9−ノナンジアミン20.2mol、安息香酸1.1mol、次亜リン酸ナトリウム一水和物(原料に対して0.1重量%)0.06molおよび蒸留水2.2リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは2.20MPaまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.20MPaに保持しながら反応を続けた。次に30分かけて圧力を1.0MPaまで下げ、次に30分かけて圧力を1.0MPaまで下げ、さらに1時間反応させてプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合することによりポリアミドを得た。得られたポリアミドの末端封止率は50%、極限粘度[η]は0.63g/dlであった。
得られたポリアミド樹脂を押し出し機で溶融押出しし、実施例2と同様にしてメルトブロー不織布を得た。(表2)
2:ブローガス流
3:二次エア
4:ブロー繊維流
Claims (4)
- ジカルボン酸単位の60〜100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位からなり、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.4〜1.2dl/gであり、かつその末端基の10%以上が封止されているポリアミドからなるメルトブロー不織布であって、該不織布を構成する繊維の繊維径分布(CV%)が20〜60%であり、かつその構成繊維の10〜60%が2本以上の束状に融着した繊維からなることを特徴とするメルトブロー不織布。
- ジカルボン酸単位の60〜100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が40:60〜99:1であり、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.4〜1.2dl/gであり、その末端基の10%以上が封止されているポリアミドからなるメルトブロー不織布であって、該不織布を構成する繊維の繊維径分布(CV%)が20〜60%であり、かつその構成繊維の10〜60%が2本以上の束状に融着した繊維からなることを特徴とするメルトブロー不織布。
- 該メルトブロー不織布が、2〜10μmの平均繊維径を有する連続繊維から構成され、かつ平均ポアサイズが5〜200μmである請求項1または2に記載のメルトブロー不織布。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のメルトブロー不織布を用いてなるフィルター。
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