JP2005219587A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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勝彦 建部
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Abstract

【課題】運転者がステアリング操作部材を操作する操舵速度と、車輪を転舵するために変位させられる可動部材の変位速度との比率をモータによって変更可能な車両用操舵装置において、そのモータによって車輪の転舵角を自動的に制御するアクティブ操舵を、運転者に与える違和感を一層軽減しつつ実行する。
【解決手段】モータを駆動源とするギヤ比変更機構22を用いたアクティブ操舵の実行に関連して、そのアクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を低減させるために操舵トルクを電気パワーステアリング26を介して制御する操舵トルク制御を行う。その操舵トルク制御は、実操舵トルクと目標操舵トルクとの偏差に基づいて電気パワーステアリングをフィードバック制御する偏差フィードバック制御と、実操舵トルクの時間微分値に基づいて電気パワーステアリングをフィードバック制御する微分フィードバック制御とのうちの少なくとも一方を含むように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、運転者がステアリング操作部材を操作する操舵速度と、車輪を転舵するために変位させられる可動部材の変位速度との比率をモータによって変更可能な車両用操舵装置に関するものであり、特に、そのモータによって車輪の転舵角を自動的に制御する技術に関するものである。
車両用操舵装置は、一般に、運転者によって操作される操作機構と、車輪を転舵する転舵機構とを含むように構成される。
操作機構は、通常、運転者によって操作されるステアリング操作部材と、そのステアリング操作部材と共に変位させられる可動部材とを備えている。ステアリング操作部材の一例は、ステアリングホイールであり、可動部材の一例は、ステアリング軸である。
一方、転舵機構は、通常、運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて変位させられる第1可動部材と、車輪と共に変位させられる第2可動部材とを含むように構成される。
転舵機構の一例は、ラックアンドピニオン方式を採用したものであり、この例においては、第1可動部材がピニオン(回転部材の一例)、第2可動部材がラック(直線変位部材の一例)にそれぞれ該当する。それらピニオンおよびラックはいずれもギヤの一種である。
この車両用操舵装置においては、例えば、運転者の操舵フィーリング、車両の操舵特性、操縦安定性、車両安定性等の改善を目的として、車両の操舵を部分的にまたは完全に電気的に制御する技術の研究および開発が行われている。
車両の操舵を部分的にまたは完全に電気的に制御する装置の第1の従来例は、電気パワーステアリングと称されるものである。この電気パワーステアリングによれば、電動モータまたは圧力源を動力源として、運転者がステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するために当該操舵装置に付与されるアシストトルクの大きさが電気的に制御される。この種の操舵装置は、動力源が電動モータである場合には特に、電動パワーステアリングと称される。
車両の操舵を部分的にまたは完全に電気的に制御する第2の従来例が特許文献1に記載されている。この従来例は、いわゆるステアリングギヤ比が可変である形式の操舵装置である。具体的には、運転者がステアリング操作部材を操作する操舵速度と、車輪を転舵するために変位させられる可動部材の変位速度との比率(以下、「伝達率」ともいう。)がモータによって変更される。
この第2の従来例においては、さらに、運転者のステアリング操作に依存することなく、上記モータによる上記伝達率の制御によって車輪の転舵角を変化させるアクティブ操舵が行われ、それにより、横風等の外乱による車両挙動の変化が防止される。したがって、この第2の従来例によれば、横風等の外乱による車両挙動の変化を防止するために、運転者が自らステアリング操作を行う修正操舵が省略可能となる。
この第2の従来例においては、アクティブ操舵が実行されて転舵機構の作動力が変化すると、その変化がステアリング操作部材を介して運転者に伝達されてしまう。すなわち、アクティブ操舵に起因した操舵トルク(操舵反力)の変化が発生してしまうのである。そのため、アクティブ操舵が実行されると、運転者が違和感を感じてしまう可能性がある。
このような違和感を防止するため、この第2の従来例においては、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を打つ消すために、操舵補助力が補正される。その操舵補助力は、電動式パワーステアリング装置の電動モータによって発生させられるため、この第2の従来例においては、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を打ち消すためにその電動モータの駆動量が補正されることになる。
特開平5−77751号公報
以上説明した第2の従来例においては、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を打ち消すために、操舵補助力の補正量が、ステアリング操作部材としてのステアリングホイールの操舵角と車輪の転舵角との偏差に相当する第1操舵トルクと、操舵角の変化速度と転舵角の変化速度との比に相当する第2操舵トルクとの和として決定される。
この第2の従来例においては、第1操舵トルクは、それと上記偏差との間に予め設定された固定的な関係に従って決定されるし、同様に、第2操舵トルクも、それと上記比との間に予め設定された固定的な関係に従って決定される。
しかし、それら第1および第2操舵トルクの和が、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの実際の変化量に常に精度よく一致するとは限らない。なぜなら、操舵トルクと、操舵角と転舵角との偏差とが常に一義的に互いに対応すると考えるのは不合理であり、また、同様に、操舵トルクと、操舵角の変化速度と転舵角の変化速度との比が常に一義的に互いに対応すると考えるのも不合理であるからである。
そのため、この第2の従来例においては、アクティブ操舵に起因する操舵トルクが、それの実際値によって高い精度で監視されるというよりむしろ、それの予測値によってそれほど高くはない精度で監視され、そのようにして監視される操舵トルクに基づいて電動式パワーステアリング装置がフィードフォワード制御される。よって、この第2の従来例では、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を精度よく打ち消すことが困難である。
一般に、電動式パワーステアリング装置の個体間の製造ばらつきや、同じ個体についての経時的変化、同じ個体が置かれている環境の変化等が原因となり、同じ指令が入力されても電動式パワーステアリング装置の実際の出力が常に同じになるとは限らない。この問題は特に、操舵トルクを微妙に制御することが必要である場合に重大である。
それにもかかわらず、この第2の従来例においては、操舵トルクの実際値、すなわち、電動式パワーステアリング装置の実際の出力が直接的に反映される物理量が監視されるようにはなっていない。この理由によっても、この第2の従来例では、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を精度よく打ち消すことが困難である。
要するに、この第2の従来例においては、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を打ち消すために、電動式パワーステアリング装置が、操舵トルクの実際値を監視することなく、フィードフォワード制御されるようになっているのであり、そのため、この第2の従来例では、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を精度よく打ち消すことが困難なのである。
以上説明した知見に基づき、本発明は、運転者がステアリング操作部材を操作する操舵速度と、車輪を転舵するために変位させられる可動部材の変位速度との比率をモータによって変更可能な車両用操舵装置において、そのモータによって車輪の転舵角を自動的に制御するアクティブ操舵を、運転者に与える違和感を一層軽減しつつ実行することを課題としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を変化させて車両を操舵する車両用操舵装置であって、
可動部材によって前記車輪を転舵する転舵機構と、
前記可動部材を駆動し得るモータにより、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操舵速度と前記可動部材の変位速度との比率を変更する比率変更機構と、
運転者が前記ステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを当該車両用操舵装置に付与するアシスト機構と、
それら比率変更機構とアシスト機構とを電気的に制御するコントローラであって、(a)前記比率変更機構を介して前記転舵角を変化させるアクティブ操舵と、(b)そのアクティブ操舵の実行に関連して、そのアクティブ操舵に起因する前記操舵トルクの変化を低減させるために前記操舵トルクを前記アシスト機構を介して制御する操舵トルク制御とを行い、かつ、その操舵トルク制御が、前記操舵トルクの実際値である実操舵トルクと前記操舵トルクの目標値である目標操舵トルクとの偏差に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する偏差フィードバック制御と、前記実操舵トルクの時間微分値と前記偏差の時間微分値との少なくとも一方に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する微分フィードバック制御とのうちの少なくとも一方を有するものと
を含む車両用操舵装置。
この装置によれば、操舵トルクの実際値またはそれの時間微分値に基づいてアシスト機構がフィードバック制御されることにより、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化が低減させられる。したがって、この装置によれば、アシスト機構を、操舵トルクの実際値を監視することなく、フィードフォワード制御する場合より、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を精度よく低減させることが容易となる。
特に、この装置が、操舵トルク制御を偏差フィードバック制御を有する態様で実施される場合には、操舵トルクの目標値である目標操舵トルクが想定されたうえで、操舵トルクの実際値である実操舵トルクが目標操舵トルクに接近するように、アシスト機構が制御される。したがって、この態様においては、目標操舵トルクの設定次第で、アクティブ操舵中の実操舵トルクの変化、すなわち、例えば操舵フィーリングを自由に決定することが容易となる。
その偏差フィードバック制御は、例えば、ステアリング操作部材が中立位置にある保舵状態、すなわち、実操舵トルクが0に維持されるべき状態に限って実行されるように設計することが可能である。この場合には、事実上、目標操舵トルクが0に設定されるため、特に目標操舵トルクを意識して偏差フィードバック制御を設計することは不可欠ではない。しかし、これは、偏差フィードバック制御が実行される条件を限定してはじめて可能になることなのであって、このような条件限定が行われる限り、事実上、0である目標操舵トルクが意識されたことに他ならない。
また、特に、本項に係る装置が、操舵トルク制御が微分フィードバック制御を有する態様で実施される場合には、操舵トルクの変化に敏感に応答するようにアシスト機構を制御することが容易になる。したがって、この場合には、アクティブ操舵が実行される全体期間のうち特に、そのアクティブ操舵に伴う実操舵トルクの、操舵トルク制御を実行しない場合における時間的変化勾配が大きい部分期間(例えば、アクティブ操舵の開始時、その終了時、車輪の転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時等)において、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を精度よく低減させることが容易となる。
本項における「転舵機構」は、例えば、ラックとピニオンとが噛み合ったラックアンドピニオン方式を採用することが可能であり、この場合、前記可動部材がラックに相当すると考えることも、ピニオンに相当すると考えることも可能である。
本項における「アシスト機構」は、アシストトルクの大きさを電気的に制御可能である機構であれば足りる。したがって、動力源として電動モータを用いてそれの出力トルクを制御する形式としたり、その動力源として高圧源を用いてそれの圧力の高さを電磁バルブ等、電気的圧力制御器を用いて制御する形式とすることが可能である。
本項における「可動部材」は、直線変位を行う直線変位部材(例えば、ラック)を意味する場合や、回転変位を行う回転部材(例えば、ピニオン)を意味する場合がある。
(2) 前記操舵トルク制御が、前記偏差フィードバック制御を有するものであり、
前記コントローラが、予め定められた第1条件が成立したときにおける前記実操舵トルクに基づいて前記目標操舵トルクを決定する目標操舵トルク決定手段を含む(2)項に記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵の実行中、操舵トルクに関して運転者が違和感を感じずに済むためには、運転者が期待する操舵トルクと実際の操舵トルクとが互いに整合することが必要である。そして、運転者が期待する操舵トルクは、例えば、ステアリング操作部材の保舵状態(運転者がステアリング操作部材を、それの操作位置が実質的に変化しないように、保持する状態であり、操作位置が変化するようにステアリング操作部材を操作する操舵状態と対立する概念である。)においてアクティブ制御が開始される場合には、その開始時における実操舵トルクである。その実操舵トルクは、その保舵状態においてステアリング操作部材が中立位置に位置する場合には、0であるのに対し、中立位置から外れた位置(操舵位置)に位置する場合には、0ではない大きさを有する。
いずれにしても、操舵トルク制御の目的が、アクティブ操舵の実行中に操舵トルクに関して運転者が感じる違和感を抑制することにある限り、目標操舵トルクを実操舵トルクとの関係において決定することは、その目的達成度を向上させるために重要である。
このような知見に基づき、本項に係る装置において、目標操舵トルクが実操舵トルクに基づいて決定される。さらに、この装置においては、第1条件の設定次第で、目標操舵トルクの大きさが変化する。したがって、この装置によれば、目標操舵トルクの大きさを高い自由度で決定することが可能となる。
(3) 前記第1条件が、前記アクティブ操舵の開始時に成立するものである(2)項に記載の車両用操舵装置。
一般に、運転者は、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を、ステアリング操作部材の保舵状態すなわち定常状態の方が、そうでない状態すなわち過渡状態より感じ易い傾向がある。一方、そのような保舵状態においてアクティブ操舵が開始される場合には、そのアクティブ操舵中、実操舵トルクがそのアクティブ操舵の開始時の大きさに維持されれるように制御されれば、運転者が実操舵トルクに関する違和感を感じることが抑制される。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、第1条件が、アクティブ操舵の開始時に成立するものとされ、その結果、そのアクティブ操舵の開始時における実操舵トルクに基づき、偏差フィードバック制御のための目標操舵トルクが決定される。
(4) 前記目標操舵トルク決定手段が、前記アクティブ操舵の開始時における前記実操舵トルクと実質的に等しくなるように前記目標操舵トルクを決定するものである(3)項に記載の車両用操舵装置。
この装置が、ステアリング操作部材の保舵状態においてアクティブ操舵が実行される場合に実行されると、そのアクティブ操舵中、実操舵トルクが、そのアクティブ操舵の開始時と実質的に等しい大きさに維持される。その結果、運転者が操舵トルクに関する違和感を感ずることが抑制される。
(5) 前記コントローラが、さらに、前記アクティブ操舵の同じ実行期間において、前記目標操舵トルク決定手段によって目標操舵トルクが決定された後に、予め定められた第2条件が成立したときには、そのときにおける前記実操舵トルクに基づき、前記決定された目標操舵トルクを更新する目標操舵トルク更新手段を含む(2)ないし(4)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵の実行中、運転者が常に、同じ大きさの操舵トルクを期待するとは限らない。アクティブ操舵の実行中、運転者がステアリング操作部材の操作位置を変更しないという保証がないからである。そのため、アクティブ操舵の同じ実行期間において、運転者が期待する操舵トルクが増加する場合もあれば減少する場合もある。
例えば、アクティブ操舵の同じ実行期間において、運転者が期待する操舵トルクが、そのアクティブ操舵の開始時には小さいがその後に増加する場合には、それにもかかわらず、目標操舵トルクを、そのアクティブ操舵の開始時における実操舵トルクに基づいて決定し、以後、目標操舵トルクの変更を許さないとすれば、運転者が期待する操舵トルクの増加に目標操舵トルクが追従しない。そのため、アシスト機構が発生するアシストトルクが過剰となり、その結果、実操舵トルクが過剰に軽減されてしまう可能性がある。
逆に、アクティブ操舵の同じ実行期間において、運転者が期待する操舵トルクが、そのアクティブ操舵の開始時には大きいがその後に減少する場合には、それにもかかわらず、目標操舵トルクを、そのアクティブ操舵の開始時における実操舵トルクに基づいて決定し、以後、目標操舵トルクの変更を許さないとすれば、運転者が期待する操舵トルクの減少に目標操舵トルクが追従しない。そのため、アシスト機構が発生するアシストトルクが不足することとなり、その結果、実操舵トルクの軽減量が不足してしまう可能性がある。
これに対し、本項に係る装置においては、アクティブ操舵の同じ実行期間において、前記目標操舵トルク決定手段によって目標操舵トルクが決定された後に、予め定められた第2条件が成立したときには、そのときにおける実操舵トルクに基づき、前記決定された目標操舵トルクが更新される。
したがって、この装置によれば、アクティブ操舵中、目標操舵トルクを固定することが不適切である場合には、目標操舵トルクを、運転者が期待する操舵トルクに追従するように変化させることが可能となる。その結果、この装置によれば、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を低減させるためにアシスト機構に発生するアシストトルクが過剰となって操舵フィーリングが軽過ぎたり、そのアシストトルクが不足して操舵フィーリングが重過ぎるという不都合を回避することが容易となる。
(6) 前記第2条件が、運転者が前記ステアリング操作部材を保持する保舵状態の開始時に成立するものである(5)項に記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵の実行中、運転者が維持されることを期待する操舵トルクの大きさが変化する場合がある。例えば、アクティブ操舵の実行中、その途中から新たな保舵状態が開始される場合である。
このような場合の一例においては、アクティブ操舵が保舵状態において開始されたが、同じアクティブ操舵中、運転者がステアリング操作を行った後にステアリング操作部材を保持すると、新たな保舵状態が開始される。この例においては、新たな保舵状態の開始時における操舵トルク、すなわち、その保舵状態中、運転者が維持されることを期待する操舵トルクの大きさが、その保舵状態に先行する時期(例えば、先行する保舵状態)において運転者が期待していた操舵トルクの大きさとは異なる可能性がある。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、アクティブ操舵の実行中、その途中で保舵状態が開始されたときには、そのときにおける実操舵トルクに基づき、目標操舵トルクが更新される。
(7) 前記コントローラが、前記アクティブ操舵の一回の実行期間の全体を通じて、前記操舵トルク制御を継続的に実行する第1操舵トルク制御手段を含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
(8) 前記コントローラが、前記アクティブ操舵の一回の実行期間において、前記操舵トルク制御を1回のみまたは離散的に複数回、かつ、各回の操舵トルク制御の継続時間が前記アクティブ操舵の実行期間の長さより短くなるように実行する第2操舵トルク制御手段を含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、アクティブ操舵の一回の実行期間のうち、操舵トルク制御を行うことがより有効である少なくとも一回の離散的な期間に限って操舵トルク制御を実行することが可能となる。その結果、この装置によれば、アクティブ操舵の実行中継続して操舵トルク制御を実行しなければならない場合に比較し、無駄な操舵トルク制御や、かえって操舵フィーリングを損なう操舵トルク制御を回避することが容易となる。
(9) 前記操舵トルク制御が、前記偏差フィードバック制御を有するものであり、
前記第2操舵トルク制御手段が、前記アクティブ操舵の実行に伴って前記実操舵トルクが時間と共に変化する変化勾配が、前記操舵トルク制御を実行しないと、設定勾配以上となる可能性がある場合に、前記偏差フィードバック制御を実行する偏差フィードバック制御手段を含む(8)項に記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、操舵トルク制御を実行しないと、アクティブ操舵に起因する実操舵トルクの変化勾配が増加してしまう可能性がある場合に限り、偏差フィードバック制御が実行され、それにより、実操舵トルクの急変が抑制される。したがって、この装置によれば、無駄な偏差フィードバック制御を容易に省略可能となるとともに、連続的な偏差フィードバック制御に起因して実操舵トルクが不足することを容易に抑制可能となる。
(10) 前記偏差フィードバック制御手段が、前記アクティブ操舵の開始時と、その終了時と、そのアクティブ操舵中において前記転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時とのうちの少なくとも一つにおいて、前記偏差フィードバック制御を実行するものである(9)項に記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵に起因する実操舵トルクの変化勾配は、そのアクティブ操舵の開始時と終了時とに増加する傾向がある。さらに、実操舵トルクは車輪と路面との間の摩擦力を原因とする物理量であるため、その摩擦力が変化すれば、実操舵トルクも変化する。一方、その摩擦力は、車輪の転舵角に応じて変化するため、実操舵トルクも、車輪の転舵角に応じて変化する。そして、後に詳述するように、それら転舵角と実操舵トルクとの間にヒステリシスが存在する。同じ転舵角に対応する実操舵トルクがその転舵角の増加過程と減少過程との間において互いに一致しないのである。したがって、車輪の切り返し時には、実操舵トルクの変化勾配が増加する傾向がある。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、偏差フィードバック制御が、アクティブ操舵の開始時と、その終了時と、そのアクティブ操舵中において車輪の転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時とのうちの少なくとも一つにおいて実行される。
(11) 前記偏差フィードバック制御手段が、少なくとも前記車輪切り返し時に前記偏差フィードバック制御を実行するために、前記転舵角の速度に関連する物理量に基づき、前記偏差フィードバック制御を実行すべき時期であるか否かを判定するものである(10)項に記載の車両用操舵装置。
車輪切り返し時においては、車輪の転舵角が増加過程から減少過程に、または逆に減少過程から増加過程に転換するため、車輪切り返し時であるか否かは、例えば、転舵角の速度の符号の時間的変化を監視したり、転舵角の速度が0でない値から0に変化したか否かを監視することによって判定することが可能である。いずれにしても、車輪切り返し時であるか否かは、転舵角の速度に関連する物理量を監視すれば、判定することが可能である。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、少なくとも車輪切り返し時に偏差フィードバック制御を実行するために、転舵角の速度に関連する物理量に基づき、偏差フィードバック制御を実行すべき時期であるか否かが判定される。
本項における「転舵角の速度に関連する物理量」は、転舵角の速度そのものを含み、また、例えば、転舵機構がラックアンドピニオン式である場合には、ラックの軸方向変位速度として定義したり、ピニオンの角速度として定義することが可能である。
(12) 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるために前記アシスト機構に発生させるアシストトルクであるトルク変化低減アシストトルクを、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操作状態に応答するように変更する第1トルク変更手段を含む(1)ないし(11)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵に起因した変化が操舵トルクに発生した場合、その変化の大きさが同じであっても、運転者がステアリング操作部材を操作する操作状態に応じ、その変化を運転者が感じる程度が異なる可能性がある。具体的には、運転者が実操舵トルクを感じる感度は、例えば、ステアリング操作部材が中立位置に近いほど、アシストトルクが小さいため、敏感であり、また、操作状態が保舵状態に近いほど敏感である。
前記アシスト機構は、操舵トルク制御のみに使用されるのではなく、通常のアシスト制御、すなわち、アクティブ操舵の有無とは無関係に操舵トルクを軽減するためのアシスト制御にも使用される場合がある。この場合には、アクティブ操舵中、ステアリング操作部材が中立位置から外れるほど、その通常のアシスト制御の効果が増加し、その結果、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化が、操舵トルク制御に依存しなくても、通常のアシスト制御によって抑制される傾向が増す。それにもかかわらず、操舵トルク制御を累積的に実行すると、例えば、実操舵トルクが必要以上に軽減されて操舵フィーリングが悪化する事態も起こりかねない。
前記操舵トルク制御が偏差フィードバック制御を有する場合には、例えば、その偏差フィードバック制御のための目標操舵トルクが決定される。この目標操舵トルクは、アクティブ操舵中、運転者が期待する実操舵トルクとできる限り一致するように決定することが理想的であり、例えば、ステアリング操作部材の保舵状態、すなわち、実操舵トルクがほぼ定常的である場合には、目標操舵トルクを適切に決定することが容易である。
これに対し、ステアリング操作部材の操舵状態、すなわち、実操舵トルクが過渡的である場合には、目標操舵トルクを適切に決定することが困難である。一方、目標操舵トルクが適切に決定されない場合には、そのような不適切な目標操舵トルクに基づいて偏差フィードバック制御を実行するよりむしろ、実行しない方が望ましい場合があり、また、偏差フィードバック制御を実行するにしても、通常より弱く実行することが望ましい。
要するに、アクティブ操舵に起因した操舵トルクの変化を低減させるための操舵トルク制御の主な目的が、アクティブ操舵に起因して運転者が操舵トルクに関して違和感を感ずることを抑制することにあることを重視すれば、操舵トルク制御は、運転者の操作状態に応じ、必要な場合に特に強調されるように実行することが、例えば、無駄な操舵トルク制御や、かえって操舵フィーリングを損なう操舵トルク制御を省略するために有効である。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、操舵トルク制御の実行中、アクティブ操舵に起因して操舵トルクに発生する変化を低減させるためにアシスト機構に発生させるアシストトルクであるトルク変化低減アシストトルクが、運転者がステアリング操作部材を操作する操作状態に応答するように変更される。
本項および下記の各項における「操作状態」は、例えば、ステアリング操作部材の操作位置を意味するように解釈したり、運転者がステアリング操作部材を操作する操舵速度を意味するように解釈することが可能である。
(13) 前記第1トルク変更手段が、前記ステアリング操作部材が中立位置に近いほど前記トルク変化低減アシストトルクを増加させることと、前記操作状態が運転者が前記ステアリング操作部材を保持する保舵状態に近いほど前記トルク変化低減アシストトルクを増加させることとの少なくとも一方を行うものである(12)項に記載の車両用操舵装置。
(14) 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の終了時期を、その操舵トルク制御を開始させる原因となったアクティブ操舵の終了時期より遅い時期まで遅延させる遅延制御を行う遅延制御手段を含む(1)ないし(13)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵の終了時に、操舵トルク制御によってアシスト機構に発生させられるトルク変化低減アシストトルクがちょうど0であるとは限らない。そのため、それにもかかわらず、アクティブ操舵の終了に付随して直ちに操舵トルク制御を終了させたのでは、そのアクティブ操舵の終了後に、操舵トルクの変化が発生する可能性がある。
そこで、本項に係る装置においては、操舵トルク制御の終了時期を、その操舵トルク制御を開始させる原因となったアクティブ操舵の終了時期より遅い時期まで遅延させる遅延制御が実行される。
本項における「遅延制御」は、例えば、予め設定された時間(固定または可変)が満了するまで操舵トルク制御を続行させる時限制御として定義したり、操舵トルク制御がアシスト機構に指令する値、すなわち、トルク変化低減アシストトルクが実質的に0になるまで操舵トルク制御を続行することとして定義することが可能である。
さらに、本項における「遅延制御」は、その実行期間中、操舵トルク制御を同じ強さで実行するものとして定義したり、時間の経過につれて徐々に効果が弱められるように操舵トルク制御を実行するものとして定義することができる。
(15) 前記操舵トルク制御が、前記微分フィードバック制御を有するものであり、
前記コントローラが、前記アクティブ操舵の実行に伴って前記実操舵トルクが時間と共に変化する変化勾配が、前記操舵トルク制御を実行しないと、設定勾配以上となる場合に、前記微分フィードバック制御を実行する微分フィードバック制御手段を含む(1)ないし(14)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、操舵トルク制御を実行しないと、アクティブ操舵に起因する実操舵トルクの変化勾配が増加してしまう可能性がある場合に限り、微分フィードバック制御が実行され、それにより、実操舵トルクの急変が抑制される。したがって、この装置によれば、無駄な微分フィードバック制御を容易に省略可能となるとともに、連続的な微分フィードバック制御に起因して操舵トルク制御が振動的になることを容易に抑制可能となる。
(16) 前記微分フィードバック制御手段が、前記アクティブ操舵の開始時と、その終了時と、そのアクティブ操舵中において前記転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時とのうちの少なくとも一つにおいて、前記微分フィードバック制御を実行するものである(15)項に記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、前記(10)項において説明した知見と同様な知見に基づき、微分フィードバック制御が、アクティブ操舵の開始時と、その終了時と、そのアクティブ操舵中において転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時とのうちの少なくとも一つにおいて実行される。
(17) 前記コントローラが、前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるために前記アシスト機構に発生させるトルク変化低減アシストトルクを前記比率変更機構の作動状態に応答するように変更する第2トルク変更手段を含む(1)ないし(16)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を素早く低減させるためには、その操舵トルクの変化傾向を早期に予測するとともに、そのように予測される変化傾向が大きいほど、トルク変化低減アシストトルクをその操舵トルクの変化に対して敏感に応答させるべく、トルク変化低減アシストトルクを制御するフィードバック制御を強調することが望ましい。
また、物理現象としては、比率変更機構におけるモータの出力であるアクティブ操舵角の変化を原因として実操舵トルクが変化するため、実操舵トルクの変化傾向を早期に予測するために、モータ出力の変化傾向を監視することが望ましいとともに、モータ出力の変化傾向をより早期に予測するためには、例えば、モータの作動加速度の大きさを監視することが望ましい。
以上要するに、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を素早く低減させるためには、比率変更機構の作動状態を考慮して操舵トルク制御の強さを変化させることが望ましいのである。
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置においては、アクティブ操舵に起因して操舵トルクに発生する変化を低減させるためにフィードバック制御によってアシスト機構に発生させるトルク変化低減アシストトルクが、比率変更機構の作動状態に応答するように変更される。
(18) 前記第2トルク変更手段が、前記モータの作動加速度が大きいほど前記トルク変化低減アシストトルクを増加させるものである(17)項に記載の車両用操舵装置。
(19) さらに、前記実操舵トルクを直接検出する操舵トルクセンサを含む(1)ないし(18)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、実操舵トルクを高い精度で検出することが容易となる。
(20) 前記コントローラが、前記モータの駆動電流を、前記実操舵トルクを反映する情報として用いるものである(1)ないし(18)項のいずれかに記載の車両用操舵装置。
アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化すなわち負荷変動は、比率変更機構に発生させられるトルクに比例し、そのトルクは、比率変更機構におけるモータの駆動電流に比例する。したがって、そのモータの駆動電流を参照すれば、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を、前記(19)項における「操舵トルクセンサ」なしで取得することが可能である。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、モータの駆動電流が、実操舵トルクを反映する情報として用いられる。
(21) 運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を変化させて車両を操舵する車両用操舵装置であって、
可動部材によって前記車輪を転舵する転舵機構と、
前記可動部材を駆動し得るモータにより、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操舵速度と前記可動部材の変位速度との比率を変更する比率変更機構と、
運転者が前記ステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを当該車両用操舵装置に付与するアシスト機構と、
それら比率変更機構とアシスト機構とを電気的に制御するコントローラであって、(a)前記比率変更機構を介して前記転舵角を変化させるアクティブ操舵と、(b)そのアクティブ操舵の実行に関連して、前記モータの駆動電流と、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操作状態とに基づき、前記アクティブ操舵に起因する前記操舵トルクの変化を低減させるために前記操舵トルクを前記アシスト機構を介して制御する操舵トルク制御とを行うものと
を含む車両用操舵装置。
前述のように、モータの駆動電流は、アクティブ操舵に起因する実操舵トルクの変化を表す情報として用いることが可能である。したがって、この場合には、モータの駆動電流に基づき、実操舵トルクを想定しつつ、アシスト機構をフィードバック制御することが可能である。
また、前述のように、例えば、アクティブ操舵中に運転者が操舵トルクに関して感じる違和感が抑制されるとともに、操舵トルクの制御目標値の不適切な設定によって不適切な制御が操舵トルクについて実行されないようにするために、操舵トルク制御を、運転者がステアリング操作部材をほぼ中立位置において定常的に保持する保舵状態(以下、「中立保舵状態」という。)に限って実行するか、ないしは、その中立保舵状態においてそれ以外の状態におけるより強調されるように実行することが望ましい。操舵トルク制御の実行タイミングをそのように適正化するためには、運転者がステアリング操作部材を操作する操作状態を考慮して操舵トルク制御を行うことが望ましい。
このような知見に基づき、本項に係る装置においては、アクティブ操舵の実行に関連して、比率変更機構におけるモータの駆動電流と、運転者がステアリング操作部材を操作する操作状態とに基づき、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を低減させるために操舵トルクがアシスト機構を介して制御される。
(22) 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるために前記アシスト機構に発生させるべきトルク変化低減アシストトルクを前記モータの駆動電流が大きいほど増加するように変更する第3トルク変更手段を含む(21)項に記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、操舵トルク制御によって結果的に、アクティブ操舵に起因する実操舵トルクの変化が大きいほど大きなトルク変化低減アシストトルクがアシスト機構に発生させられる。
(23) 前記コントローラが、さらに、前記操舵トルク制御の実行中、前記トルク変化低減アシストトルクを、前記ステアリング操作部材が中立位置に近いほど増加するように変更することと、前記操作状態が運転者が前記ステアリング操作部材を保持する保舵状態に近いほど増加するように変更することとの少なくとも一方を行う第4トルク変更手段を含む(22)項に記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、操舵トルク制御が、ステアリング操作部材が中立位置に近いほど強調されるように実行されることと、ステアリング操作部材の操作状態が保舵状態に近いほど強調されるように実行されることとの少なくとも一方が行われる。
特に、操舵トルク制御が、ステアリング操作部材が中立位置に近く、かつ、ステアリング操作部材の操作状態が保舵状態に近いほど強調されるように実行される場合には、この操舵トルク制御が、前述の中立保舵状態において相対的に強調されることとなる。その中立保舵状態においては、実操舵トルクの変化は、すべてアクティブ操舵に起因し、運転者の操舵に起因しない。そして、そのような実操舵トルクの変化は、モータの駆動電流に反映される。
したがって、操舵トルク制御が、ステアリング操作部材が中立位置に近く、かつ、ステアリング操作部材の操作状態が保舵状態に近いほど強調されるように実行される場合には、アクティブ操舵に起因する実操舵トルクの変化のみを低減させるかまたは打ち消すアシストトルクを精度よくアシスト機構に発生させることが容易である。
(24) 運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を変化させて車両を操舵する車両用操舵装置であって、
可動部材によって前記車輪を転舵する転舵機構と、
前記可動部材を駆動し得るモータにより、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操舵速度と前記可動部材の変位速度との比率を変更する比率変更機構と、
運転者が前記ステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを当該車両用操舵装置に付与するアシスト機構であって、前記操舵トルクが0近傍で変化しても前記アシストトルクが変化しない不感帯を有するようにそれら操舵トルクとアシストトルクとの間に設定された対応関係に従い、入力されたアシスト指令であって前記操舵トルクを表すものに応じ、そのアシスト機構が出力すべき前記アシストトルクを決定するものと、
それら比率変更機構とアシスト機構とを電気的に制御するコントローラであって、(a)前記比率変更機構を介して前記転舵角を変化させるアクティブ操舵と、(b)そのアクティブ操舵の実行に関連して、前記アシスト指令を前記アシスト機構に対して出力することにより、前記アクティブ操舵に起因する前記操舵トルクの変化を低減させるために前記操舵トルクを前記アシスト機構を介して制御する操舵トルク制御とを行うものと
を含み、そのコントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、
前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるトルク変化低減アシストトルクを前記アシスト機構によって発生させるためにそのアシスト機構に対して出力すべきトルク変化低減アシスト指令を、前記不感帯から外れた大きさを有する前記操舵トルクを表す基本指令と、その基本指令に対して追加的な補助指令との組合せとして決定し、
前記トルク変化低減アシストトルクの予測値に対応する前記操舵トルクをみかけ操舵トルクとして、前記対応関係と実質的に同じ対応関係に従って決定し、その決定されたみかけ操舵トルクを表す前記アシスト指令として前記基本指令を決定し、
前記操舵トルクの実際値である実操舵トルクに基づいて前記補助指令を決定するものである車両用操舵装置。
アシスト機構は、そもそも、通常のアシスト制御、すなわち、アクティブ操舵の有無を問わず、操舵トルクを軽減する制御を実行するために車両に設けられてきた。また、アシスト機構においては、通常、それが発生させるべきアシストトルクが、そのときの操舵トルクに応じて決定される。
一方、アシスト機構は、通常のアシスト制御においては、特にステアリング操作部材が中立位置近傍に位置する状態において、そのステアリング操作部材の操作位置の変化に対して操舵トルクが敏感に応答するため、不感帯を設け、運転者がステアリング操作に安心感を感じるように設計される。
具体的には、アシスト機構においては通常、操舵トルクが0近傍で変化してもアシストトルクが変化しない不感帯を有するようにそれら操舵トルクとアシストトルクとの間に対応関係が設定される。さらに、そのように設定された対応関係に従い、入力されたアシスト指令に応じ、そのアシスト機構が出力すべきアシストトルクが決定される。
上記不感帯は、通常のアシスト制御においては、ステアリング操作の安心感を向上させるために有効であるが、例えば、前述の中立保舵状態においてアクティブ操舵が開始された場合であって、そのアクティブ操舵に起因して操舵トルクに発生する変化が上記不感帯を逸脱しない程度の小さなものであった場合には、その操舵トルクの変化を低減させるためのアシストルクをアシスト機構によって発生させることができない。なぜなら、この場合には、アクティブ操舵の開始時における実操舵トルクがほぼ0であり、しかも、そのアクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化量が単独で上記不感帯を逸脱するほどに大きくはないからである。
これに対し、アクティブ操舵の開始時における実操舵トルクが上記不感帯から逸脱するほどに大きいか、または、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化量が単独で、もしくはもともとの実操舵トルクと組み合わせられれば上記不感帯を逸脱するほどに大きい場合がある。この場合には、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化をアシスト機構に入力するだけで、その変化を低減させるためのアシストトルクがアシスト機構によって発生させられることになる。
本発明者らは、操舵トルクに応じてアシストトルクが決定される形式の上述のアシスト機構を使用しつつも、アクティブ操舵の開始時における実操舵トルクがほぼ0であり、しかも、そのアクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化量が単独で上記不感帯を逸脱するほどに大きくはない場合であっても、アシスト機構によってアシストトルクを発生させる技術を開発した。
その技術によれば、アクティブ操舵に起因して操舵トルクに発生する変化を低減させるトルク変化低減アシストトルクをアシスト機構によって発生させるためにそのアシスト機構に対して出力すべきトルク変化低減アシスト指令が、前記不感帯から外れた大きさを有する操舵トルクを表す基本指令と、その基本指令に対して追加的な補助指令との組合せとして決定される。
この技術によれば、さらに、トルク変化低減アシストトルクの予測値が取得され、その予測値に対応する操舵トルクがみかけ操舵トルクとして、前記対応関係と実質的に同じ対応関係に従って決定される。その予測値は通常、0でない値であるため、それに対応するみかけ操舵トルクは、自動的に、上記不感帯から逸脱した大きさを有することとなる。そのようにして決定されたみかけ操舵トルクを表すアシスト指令として、基本指令が決定される。この基本指令がアシスト機構に入力されれば、そのアシスト機構により、上記予測値と等しいアシストトルクが発生させられるはずである。
この技術によれば、さらに、実操舵トルクに基づいて補助指令が決定され、その決定された補助指令は、上記基本指令に対して追加的な関係を有するようにアシスト機構に入力される。
以上の説明から明らかなように、この技術を実施すれば、アクティブ操舵の開始時における実操舵トルクが上記不感帯内にあっても、その不感帯を逸脱した大きさを有する基本指令を有するようにアシスト指令が決定される。したがって、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を低減させるためのアシストトルクがアシスト機構によって発生させられる。
さらに、その基本指令の精度が不十分であったため、その基本指令に基づいてアシスト機構によって発生させられたアシストトルクが不足または過剰であれば、それを補償するためのアシストトルクが、その基本指令に追加される補助指令に基づいてアシスト機構によって発生させられる。
補助指令により表わされる操舵トルクが単独では上記不感帯から逸脱し得ない大きさしか有しないとしても、その補助指令は、上記不感帯より大きい操舵トルクを表す基本指令に対して追加的な関係を有するようにアシスト機構に入力される。したがって、補助指令がアシスト機構に入力されれば、その補助指令は、前記対応関係のうち、補助指令が変化すればそれに応じてアシストトルクが変化する領域(アシスト指令に対するアシストトルクの感度が前記不感帯より高い領域)に適用されることとなる。
よって、その補助指令により表わされる操舵トルクが小さくても、それに応じてアシストトルクが変化させられる結果、その補助指令に見合ったアシストトルクがアシスト機構によって発生させられる。これにより、補助指令による微妙なアシストトルクの制御が可能となる。
本項において「前記対応関係と実質的に同じ対応関係」は、前記対応関係と全く同じ対応関係として定義したり、前記対応関係に近似した対応関係として定義することが可能である。例えば、前記対応関係が曲線のグラフで表わされるように定義される場合に、それと実質的に同じ対応関係を、少なくとも1本の直線のグラフで近似的に表わされるように定義することが可能である。
例えば、前記対応関係(以下、説明の便宜上、「第1の対応関係」という。)が、操舵トルクからアシストトルクに向かう方向性を有するように定義される場合には、それと実質的に同じ対応関係(以下、説明の便宜上、「第2の対応関係」という。)は、アシストトルクから操舵トルクに向かう方向性を有するように定義されることとなり、両者は互いに逆向きの方向性を有することになる。
したがって、この場合には、第2の対応関係に従い、アシストトルクからそれに対応する操舵トルクを決定することは、第1の対応関係に従い、アシストトルクからそれに対応する操舵トルクを逆方向に決定すること、すなわち、逆変換することに相当する。
(25) 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行時に、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操作状態と前記転舵機構の作動状態と当該車両用操舵装置の操舵特性との少なくとも一つに基づき、前記アシスト機構のフィードフォワード制御によって実現すべき前記トルク変化低減アシストトルクとして前記予測値を決定する予測値決定手段を含む(24)項に記載の車両用操舵装置。
一般に、車両用操舵装置においては、例えば、転舵機構によって代表されるように、相互に力を伝達すべき複数の部材(例えば、ラックとピニオン、フェースギヤとピニオン、一対のギヤ)がそれぞれの接触面において相互に押し付けられる。そのため、それら複数の部材の接触面間に摩擦力(以下、「部材間摩擦力」という。)が存在する。その部材間摩擦力の大きさは、複数の部材の接触面間の法線力の大きさによって変化する。一方、その部材間摩擦力の向きは、それら複数の部材間の相対変位の向きによって変化する。
その相対変位の向きは、ステアリング操作部材と前記可動部材との間の相対変位の向きを反映する。例えば、転舵機構がラックアンドピニオン方式を採用する場合には、その相対変位の向きは、ステアリング操作部材とピニオンとの間の相対変位の向きであり、ピニオンとラックとの間の相対変位の向きでもある。
上述の部材間摩擦力の大きさまたは向きが変化すると、その変化が直接または間接にステアリング操作部材を介して運転者に伝達され、その結果、その変化が運転者に操舵トルクの変化として認識されてしまう。
一方、アクティブ操舵が実行され、その結果、上述の相対変位の向きが反転すると、上述の接触面間の法線力の大きさが大きくかつ急に変化することから、上述の部材間摩擦力の向きのみならず大きさも変化するとともに、その変化が操舵トルクの変化として運転者に認識されてしまう。そのため、操舵トルクと車輪の転舵角との間にヒステリシスを有する関係が成立することになる。
一方、アクティブ操舵によって車輪の転舵角を変化させようとすれば、上述の部材間摩擦力の変化の有無を問わず、車輪のタイヤと路面との間に作用するタイヤ−路面間摩擦力が変化し、それに応じて転舵機構の作動力も変化する。この変化も、部材間摩擦力の変化の場合と同様にして、操舵トルクの変化として運転者に認識されてしまう。一方、このときの転舵機構の作動力すなわちタイヤ−路面間摩擦力は、車輪の転舵角に対して有限の傾きを有するように変化させられる。その傾きは、車両用操舵装置の操舵特性に相当する。
したがって、アクティブ操舵が実行されると、操舵トルクと車輪の転舵角(例えば、ラックの直線変位量、ピニオンの回転角に相当する。)との間に、傾きとヒステリシスとの双方を有する関係が成立することになる。そのため、アクティブ操舵が実行されると、ヒステリシスの幅(すなわち、上述の部材間摩擦力の変化量)に基づく第1変化と、傾き(すなわち、上述のタイヤ−路面間摩擦力の変化量)に基づく第2変化とが重畳的に操舵トルクに現れることとなる。
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置においては、操舵トルク制御の実行時に、運転者がステアリング操作部材を操作する操作状態と転舵機構の作動状態と当該車両用操舵装置の操舵特性との少なくとも一つに基づき、アシスト機構のフィードフォワード制御によって実現すべきトルク変化低減アシストトルクとして、前記(24)項における「予測値」が決定される。
本項および下記の各項において「操舵特性」は、例えば、当該操舵装置への入力すなわち作動力と、当該操舵装置からの出力すなわち転舵されるべき車輪の転舵角との関係として定義することが可能である。ここに、当該操舵装置への入力は、転舵されるべき車輪に対して行われるものであり、その入力の大きさは、車輪のタイヤと路面との間の摩擦力を反映する。その摩擦力の大きさは、例えば、前記可動部材の作動力(例えば、前述のラックの軸力)として検出することが可能である。
したがって、「操舵特性」は、例えば、転舵機構に対する入力と出力との関係として定義することが可能である。具体的には、可動部材の作動力(例えば、前述のラックの軸力、タイヤと路面との間の摩擦力)と、その可動部材の作動量(例えば、前述のラックの直線変位量)との関係として定義することが可能である。
さらに、「操舵特性」は、転舵されるべき車輪に対する入力と出力との関係として定義することも可能である。具体的には、例えば、可動部材の作動力(例えば、前述のラックの軸力、タイヤと路面との間の摩擦力)と、車輪の転舵角(アクティブ操舵中に車輪が転舵される角度に等しい。)との関係として定義することが可能である。
(26) 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、前記実操舵トルクと前記操舵トルクの目標値である目標操舵トルクとの偏差に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する偏差フィードバック制御と、前記実操舵トルクの時間微分値と前記偏差の時間微分値との少なくとも一方に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する微分フィードバック制御とのうちの少なくとも一方を実行するために前記アシスト機構に対して追加的に出力すべき前記アシスト指令として前記補助指令を決定する補助指令決定手段を含む(24)または(25)項に記載の車両用操舵装置。
この装置によれば、実操舵トルクと目標操舵トルクとの偏差またはその偏差もしくは実操舵トルクの時間微分値がフィードバックされることにより、基本指令のみ、またはその基本指令と前回の補助指令との組合せでは不足または過剰であるアシストトルクを補充または削減するための今回の補助指令が決定される。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従う車両用操舵装置(以下、単に「操舵装置」という。)のうちのハードウエア構成が斜視図で示されている。この操舵装置は、操作部10と転舵部12とを備えている。操作部10は、運転者によって回転操作されるステアリングホイール14と、それと共に回転するステアリング軸16とを含んでいる。これに対し、転舵部12は、車両において前側に位置する左右の操舵車輪20(図1においては右側の車輪20のみが代表的に示されている。)を転舵するための部分である。
転舵部12は、具体的には、ギヤ比変更機構22と、ラックアンドピニオン方式の操舵機構24と、電気パワーステアリング26とを備えている。
操舵機構24は、車輪20を変向するために車両において横方向に直線変位させられるラック軸30と、それと交差するピニオン軸32とを備えている。図2に示すように、ラック軸30にはラック34というギヤが形成される一方、ピニオン軸32にはピニオン36というギヤが形成されている。それらラック34とピニオン36とはかみ合わされてラックアンドピニオン機構38を構成しており、これにより、ピニオン36の回転運動がラック34の直線運動に変換される。
ギヤ比変更機構22は、ステアリングホイール14の回転速度すなわち操舵速度と、ピニオン軸32の回転速度との比率であるステアリングギヤ比を電気的に変更する機構である。このギヤ比変更機構22は、図2に示すように、ハウジング40と、ステアリング軸16と同軸のモータ42と、そのモータ42とピニオン軸32とを互いに連結する減速機46とを含んでいる。モータ42は、ハウジング40に固定のステータ48と、ロータ50とを有しており、そのロータ50が減速機46を経てピニオン軸32に連結されている。
減速機46は、例えば、ストレイン・ウェーブ・ギヤリング式であり、ステアリング軸16と一体的にかつ同軸に回転する制御ギヤ54と、ピニオン軸32と一体的にかつ同軸に回転するドリブンギヤ56とを備えている。ドリブンギヤ56の歯数は、制御ギヤ54の歯数よりn個少ない。制御ギヤ54は、ステアリング軸16が停止状態にあれば、ステータギヤとして機能する。
それら制御ギヤ54とドリブンギヤ56とは、共に、それらの内歯においてフレキシブルギヤ58の外歯にかみ合わされる。フレキシブルギヤ58は、薄いベルト状を成す金属弾性体であるため、弾性変形可能である。フレキシブルギヤ58は、ドリブンギヤ56と同数の外歯を備えている。したがって、フレキシブルギヤ58との間に回転数差をドリブンギヤ56は発生させないのに対し、制御ギヤ54は発生させる。
フレキシブルギヤ58の内周面に、断面が楕円である外周面を有する剛体の波動発生器60が相対回転可能に嵌合される。波動発生器60は、ロータ50と同軸にかつ一体的に回転させられる。波動発生器60が回転させられると、フレキシブルギヤ58は、自身の楕円の向きが波動発生器60によって変化させられつつ、回転させられる。
モータ42および波動発生器60が1回転すると、ドリブンギヤ56は、制御ギヤ54より歯数がn個少ないため、モータ42および波動発生器60の回転方向とは逆方向にn歯分回転する。その結果、それら制御ギヤ54とドリブンギヤ56との間に回転数差が発生させられ、それがピニオン軸32に伝達される。それにより、モータ42の回転速度より低い速度にピニオン軸32の回転速度が減速される。
電気パワーステアリング26は、ラック軸30に同軸に搭載されている。電気パワーステアリング26は、図2に示すように、ラック軸30と同軸のモータ62と、そのモータ62の回転運動をラック軸30の直線運動に変換する運動変換機構としてのボールねじ64とを備えている。モータ62は、ロータ66と図示しないステータとを備えており、ロータ66にラック軸30が同軸にかつ摺動可能に挿通されるとともに、それらロータ66とラック軸30との間にボールねじ64が配置されている。
図2に示すように、ステアリングホイール14からピニオン軸32までの力伝達系の途中にトルクセンサ70が配置されている。トルクセンサ70は、弾性ねじれを利用することにより、運転者によってステアリングホイール14に加えられる操舵トルク(これは、操舵反力に等しい。)を検出する。したがって、ステアリングホイール14とピニオン軸32とは、完全に剛体的に連結されているのではなく、一定範囲内での弾性ねじれを伴うように互いに連結されている。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、転舵部12が前記(1)項における「転舵機構」の一例を構成し、ギヤ比変更機構22が同項における「比率変更機構」の一例を構成し、電気パワーステアリング26が同項における「アシスト機構」の一例を構成し、直接的にはピニオン軸32、間接的にはラック軸30が同項における「可動部材」の一例を構成しているのである。
図2に示すように、ギヤ比変更機構22および電気パワーステアリング26は、トルクセンサ70と、図3に示す操舵角センサ72およびアクティブ操舵角センサ74の出力信号に基づき、電子制御ユニット(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」という。)80によって制御される。操舵角センサ72は、運転者がステアリングホイール14を回転操作する角度を操舵角θsとして検出する。
アクティブ操舵角センサ74は、ギヤ比変更機構22に設けられ、モータ42のロータ50の回転角(ハウジング40に対するロータ50の相対回転角)をアクティブ操舵角θafsとして検出する。アクティブ操舵角θafsは、本実施形態においては、ステアリングホイール14が中立位置に位置する限り、車両において前側に位置する操舵車輪20がアクティブ操舵によって転舵される角度に相当する。
図3に示すように、ECU80は、コンピュータ82を主体として構成されている。コンピュータ82は、よく知られているように、CPU84とROM86とRAM88とがバス80によって互いに接続されて構成されている。ROM86には、CPU84によって実行されるべき各種プログラムが予め記憶されている。それらプログラムは、アクティブ操舵プログラム、パワーアシスト制御プログラムおよびトルク変化低減制御プログラムを含んでいる。
すなわち、本実施形態においては、ECU80が前記(1)項における「コントローラ」の一例を構成しているのである。
アクティブ操舵プログラムは、ECU80により、運転者のステアリング操作に依存しないでギヤ比変更機構22を介して車輪20の転舵角を変化させるアクティブ操舵を行うためにコンピュータ82によって実行される。本実施形態においては、車輪20が前輪であるため、そのアクティブ操舵により、前輪転舵角が自動的に変化させられることになる。
図4には、このアクティブ操舵プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このアクティブ操舵プログラムはコンピュータ82によって繰返し実行される。
このアクティブ操舵プログラムの各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、車速センサ、車輪速度センサ、車両のヨーレイトを検出するセンサ、車両の横加速度を検出するセンサ等、車両の状態量を検出する車両状態量センサ92(図3参照)の出力信号に基づき、車両状態量が検出される。
次に、S2において、その検出された車両状態量に基づき、車両の走行安定性が通常走行時より低下しているか否かが判定される。今回は、低下していないと仮定すれば、判定がNOとなり、直ちにこのアクティブ操舵プログラムの一回の実行が終了する。これに対し、今回は、車両の走行安定性が低下していると仮定すれば、判定がYESとなり、S3に移行する。
このS3においては、運転者のステアリング操作に依存することなく、カウンタステアリングを自動的に行うことが必要であると判定される。今回は、車輪20の転舵角(横スリップ角)の制御によって車輪20の横力を制御し、それにより、車両のヨーイングモーメントを制御することが、車両安定性を向上させるために必要であるからである。
続いて、S4において、そのオートカウンタステアリングの実現に適当なモータ42の制御量が決定される。その制御量は、例えば、前記検出された車両状態量を考慮して決定される。その後、S5において、その決定された制御量に基づき、モータ42が駆動される。これにより、アクティブ操舵が行われ、車両の安定性が低下することが回避される。
以上で、このアクティブ操舵プログラムの一回の実行が終了する。
前記パワーアシスト制御プログラムは、ECU80により、運転者の操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを電気パワーステアリング26によって発生させるためにコンピュータ82によって実行される。
本実施形態においては、ECU80により、ステアリングホイール14から運転者に作用する操舵トルクがアクティブ操舵に起因して変化すべき変化分を電気パワーステアリング26のアシストトルクによって補償することにより、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化を低減させるトルク変化低減制御(これが前記(1)項における「操舵トルク制御」の一例である。)が実行される。アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化分を補償する補償トルクすなわちトルク変化低減アシストトルクを決定するために、前記トルク変化低減制御プログラムがコンピュータ82によって実行される。
前記パワーアシスト制御プログラムは、上述の、操舵トルクの軽減すなわち通常のアシスト制御という目的の他に、上記決定されたトルク変化低減アシストトルクを電気パワーステアリング26によって発生させることをも目的として実行される。
なお付言するに、アクティブ操舵に起因する操舵トルクの変化分を補償するトルク変化低減アシストトルクは、具体的には、アクティブ操舵に起因して操舵トルクが増加する可能性がある場合には、操舵トルクを減少させるアシストトルクがトルク変化低減アシストトルクであり、逆に、アクティブ操舵に起因して操舵トルクが減少する可能性がある場合には、操舵トルクを増加させるアシストトルクがトルク変化低減アシストトルクである。
図5には、上記パワーアシスト制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このパワーアシスト制御プログラムも繰返し実行される。
このパワーアシスト制御プログラムの各回の実行時には、まず、S31において、トルクセンサ70の出力信号に基づき、実操舵トルクTsが検出される。次に、S32において、その検出された実操舵トルクTsに基づき、通常アシスト(通常のアシスト制御)を行うためのアシストトルクである通常アシストトルクTaNが決定される。
図6には、電気パワーステアリング26について成立する操舵トルクTsとアシストトルクTaとの対応関係がグラフで表わされている。電気パワーステアリング26については、操舵トルクTsを表すアシスト指令が入力されると、電気パワーステアリング26によって出力すべきアシストトルクTaが、図6のグラフで表される対応関係に従って決定される。この対応関係は、操舵トルクTsが0近傍で変動しても、それに対応するアシストトルクTaが0に維持されるように、アシストトルクTaに不感帯が設定されている。
したがって、図5のS32においては、S31において検出された実操舵トルクTsに対応するアシストトルクTaが、上記対応関係に従い、通常アシストトルクTaNとして決定されることになる。
続いて、S33において、前記トルク変化低減制御プログラムの実行によって決定されたトルク変化低減アシスト指令がRAM88から読み込まれる。その後、S34において、前記決定された通常アシストトルクTaNと、その読み込まれたトルク変化低減アシスト指令によって表わされるトルク変化低減アシストトルクTaRとを合成する(例えば、単純にまたは重みを付けて加算する)ことにより、最終アシストトルクTaFが決定される。最終アシストトルクTaFは、例えば、通常アシストトルクTaNとトルク変化低減アシストトルクTaRとの和として決定される。
なお付言するに、本実施形態においては、例えば、パワーアシストの目的が通常アシストにあるかトルク変化低減制御にあるかを問わず、「アシストトルクTa」という用語と「アシスト指令」という用語とは、実現すべきトルクの大きさおよび向きに関して観念的に互いに共通する用語であると考えることが可能である。
続いて、S35において、その決定された最終アシストトルクTaFに基づき、モータ62の目標駆動電流が決定される。その後、S36において、その決定された目標駆動電流に基づき、モータ62が駆動される。これにより、適当なアシストルクが電気パワーステアリング26によって発生させられる。
以上で、このパワーアシスト制御プログラムの一回の実行が終了する。
図7には、前記トルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このトルク変化低減制御プログラムも繰返し実行される。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S101において、アクティブ操舵角センサ74により、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S102において、現在、アクティブ操舵の実行中であるか否かが判定される。例えば、上記検出されたアクティブ操舵角θafsに基づき、ギヤ比変更機構22が作動中であるか否かが判定される。
今回は、アクティブ操舵中ではないと仮定すれば、S102の判定がNOとなり、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。これに対し、今回は、アクティブ操舵中であると仮定すれば、S102の判定がYESとなり、S103以下のステップに移行する。
S103においては、トルクセンサ70により、実操舵トルクTsが検出される。実操舵トルクTsがサンプリングされるのである。続いて、S104において、現在、一連のアクティブ操舵の開始時であるか否かが判定される。今回は、開始時であると仮定すれば、判定がYESとなり、S105において、S104において検出された最新の実操舵トルクTsと等しい値として目標操舵トルクT0が決定される。
その後、S106において、その決定された目標操舵トルクT0がRAM88にストアされる。続いて、S107において、RAM88から最新の目標操舵トルクT0が読み出される。その後、S108において、最新の実操舵トルクTsから、その読み出された目標操舵トルクT0を差し引いた値として、操舵トルクTsの偏差Tpが決定される。
続いて、S109において、実操舵トルクTsの微分値Tdが取得される。この微分値Tdは、例えば、実操舵トルクTsの今回値から前回値を引き算した値として取得することが可能である。実操舵トルクTsの前回値が存在しない場合には、例えば、微分値Tdが0として取得される。
その後、S110において、上記決定された偏差Tpに基づく偏差フィードバック制御(比例フィードバック制御)と、上記取得された微分値Tdに基づく微分フィードバック制御とを一緒に実行することによって電気パワーステアリング26によって実現すべきトルク変化低減制御量が決定される。トルク変化低減制御量は、例えば、偏差Tpと偏差フィードバック制御ゲインKpとの積で表わされる比例項と、微分値Tdと微分フィードバック制御ゲインKdとの積で表わされる微分項との和を用いて決定することが可能である。電気パワーステアリング26は、偏差Tpも微分値Tdも0に近づくことにより、実操舵トルクTsが目標操舵トルクT0に近づくようにフィードバック制御される。
続いて、S111において、その決定されたトルク変化低減制御量に基づき、電気パワーステアリング26に対して出力すべきトルク変化低減アシスト指令が決定される。その後、S112において、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。実際には、そのトルク変化低減アシスト指令がRAM88にストアされ、前記パワーアシスト制御プログラムの実行によってそのトルク変化低減アシスト指令がRAM88から読み出され、必要な処理を施された後、電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
以上、このトルク変化低減制御プログラムの今回の実行が、一連のアクティブ操舵の開始時に行われる場合を説明したが、開始時以後に行われる場合には、S104の判定がNOとなり、S105およびS106がスキップされる。したがって、今回は、目標操舵トルクT0が更新されず、その結果、一連のアクティブ操舵中、目標操舵トルクT0がそのアクティブ操舵の開始時における実操舵トルクTsと等しい値にホールドされる。
その後、S107以下のステップが、一連のアクティブ操舵の開始時におけると同様にして実行される。
図8には、このトルク変化低減制御プログラムの実行内容が、前記パワーアシスト制御プログラムの実行内容と組み合わされて、ブロック線図で概念的に表わされている。
アクティブ操舵角θafsをトリガとして、実操舵トルクTsがサンプリングされて目標操舵トルクT0が決定されるとともに、その目標操舵トルクT0は、アクティブ操舵の開始時における値にホールドされる。実操舵トルクTsは、偏差フィードバック制御(図8および他の図においては「偏差FB」で表す。)のための偏差Tpと、微分フィードバック制御(図8および他の図においては「微分FB」で表す。)のための微分値Tdとの取得に用いられる。それら偏差Tpと微分値Tdとを用いてトルク変化低減アシスト指令が決定される。
実操舵トルクTsは、さらに、前述のように、通常アシストのための通常アシスト指令を決定するためにも用いられる。その決定された通常アシスト指令と、上記トルク変化低減アシスト指令との和として最終アシスト指令(図8においては「電気PSアシスト指令」で表す。)が決定される。通常アシスト指令は、前述の通常アシストトルクTaNを実現するために電気パワーステアリング26に対して出力されるものである。
図9には、本実施形態におけるトルク変化低減制御の一実行例が、トルク変化低減制御を実行しない比較例との比較においてグラフで表わされている。図9に示す制御例においては、運転者がステアリングホイール14をほぼ中立位置において保持する中立保舵状態において一連のアクティブ操舵が開始されると仮定されている。図9には、さらに、そのトルク変化低減制御量(前述のアシスト指令に相当する。)の時間的推移がグラフで、偏差フィードバック制御に関連する部分と、微分フィードバック制御に関連する部分とに分離して表わされている。
図9から明らかなように、トルク変化低減制御が実行されない場合には、アクティブ操舵に起因した変化が操舵トルクTsに顕著に現れるのに対し、トルク変化低減制御が実行される場合には、その変化が良好に低減させられる。したがって、本実施形態によれば、アクティブ操舵が原因で、運転者が操舵トルクTsすなわち操舵フィーリングに関して違和感を感じる可能性が軽減される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82が図4に示すアクティブ操舵プログラムを実行することにより、前記(1)項における「アクティブ操舵」の一例が実行され、また、コンピュータ82が図5におけるS33ないしS36と図7に示すトルク変化低減制御プログラムとを実行することにより、同項における「操舵トルク制御」の一例が実行されるのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図7におけるS105を実行する部分が前記(2)項における「目標操舵トルク決定手段」の一例を構成し、アクティブ操舵の開始時であることが同項における「第1条件」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
第1実施形態においては、アクティブ操舵の開始時に目標操舵トルクT0がそのときにおける実操舵トルクTsと等しい値に決定されると、アクティブ操舵の同じ実行期間中、目標操舵トルクT0が同じ値にホールドされる。しかし、アクティブ操舵の同じ実行期間中、運転者が同じ大きさの操舵トルクTsを期待するとは限らない。アクティブ操舵の同じ実行期間中、運転者がステアリングホイール14を操作する操作状態が、操舵角θsが実質的に変化しない保舵状態(定常状態)から、操舵角θsが時間と共に変化する操舵状態(過渡状態)に、または、操舵状態から保舵状態に遷移する場合があるからである。
例えば、アクティブ操舵が、ステアリングホイール14が中立位置にある保舵状態(中立保舵状態)において開始され、その後、ステアリングホイール14の操作(回転)という過渡状態を経て、ステアリングホイール14が中立位置から外れた非中立位置にある保舵状態(非中立保舵状態)に遷移する場合がある。この場合には、アクティブ操舵の同じ実行期間中、ステアリングホイール14の操作状態が、中立保舵状態、操舵状態および非中立保舵状態の順に変化させられる。中立保舵状態においては、操舵トルクTsは本来であれば0であり、非中立保舵状態においては、操舵トルクTsは本来であれば0より大きい。
この場合には、目標操舵トルクT0が、アクティブ操舵の開始時に0に決定され、そのアクティブ操舵の終了時まで0にホールドされると、2回目の保舵状態すなわち非中立保舵状態において、実操舵トルクTsが0に近づくように制御される可能性がある。そうすると、運転者は、期待していた大きさより実操舵トルクTsが低減させられてしまい、操舵フィーリングの重厚感が損なわれる可能性がある。
これに対し、本実施形態においては、アクティブ操舵の開始時に目標操舵トルクT0が決定された後、アクティブ操舵の同じ実行期間中に、保舵状態にあることが検出されたならば、その都度、目標操舵トルクT0が、最新の保舵状態における実操舵トルクTsと等しい値に更新される。これにより、本実施形態によれば、アクティブ操舵の同じ実行期間中、運転者の操作状態、すなわち、運転者が期待する操舵トルクTsの変化に追従するように、目標操舵トルクT0が可変値として決定される。その結果、目標操舵トルクT0の決定精度の低下が原因となって操舵フィーリングが低下する事態の発生を回避することが容易となる。
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、アクティブ操舵プログラム、パワーアシスト制御プログラムおよびトルク変化低減制御プログラムがコンピュータ82によって実行される。それらプログラムのうち、アクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムは第1実施形態と共通する。
図10には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このトルク変化低減制御プログラムにおいては、第1実施形態と共通するステップが多いため、共通するステップについては、第1実施形態において対応するステップを特定することによって詳細な説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S201において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S202において、前記S102と同様にして、現在、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。アクティブ操舵中ではない場合には、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了し、これに対し、アクティブ操舵中である場合には、S203に移行する。
このS203においては、前記S103と同様にして、実操舵トルクTsが検出される。続いて、S204において、前記S104と同様にして、現在、アクティブ操舵の開始時であるか否かが判定される。開始時である場合には、S205において、前記S105と同様にして、目標操舵トルクT0が最新の実操舵トルクTsを用いて決定される。その後、S206において、前記S106と同様にして、その決定された目標操舵トルクT0がRAM88にストアされる。以下、S207ないしS212のステップが、前記S107ないしS212と同様にして実行される。
これに対し、現在、アクティブ操舵の開始後であると仮定すれば、S204の判定がNOとなり、S213において、操舵角センサ72によって操舵角θsが検出される。続いて、S214において、運転者がステアリングホイール14を操作する操作状態が保舵状態であるか否か、すなわち、保舵中であるか否かが判定される。
このS214は、例えば、前記検出された操舵角θsの時間微分値である操舵角速度ωsの絶対値が設定値以下であるとう第1の条件と、その操舵角速度ωsの時間微分値である操舵角加速度αsの絶対値が設定値以下であるという第2の条件との双方またはいずれかが成立するか否かを判定し、成立する場合には、現在の操舵状態が保舵状態であると判定するように実行することが可能である。
今回は、保舵中ではないと仮定すれば、S214の判定がNOとなり、S205およびS206がスキップされ、その結果、目標操舵トルクT0が、更新なしでホールドされる。これに対し、今回は、保舵中であると仮定すれば、S214の判定がYESとなり、S205に移行する。
このS205においては、最新の実操舵トルクTsを用いて目標操舵トルクT0が決定されるため、その最新の実操舵トルクTsが、当該アクティブ操舵の開始時における実操舵トルクTsすなわち初回の実操舵トルクTsから変化していれば、目標操舵トルクT0が更新されることになる。続いて、S206において、そのようにして決定された目標操舵トルクT0がRAM88にストアされる。この際、RAM88においては、古い目標操舵トルクT0が、更新された目標操舵トルクT0に書き換えられる。
図11には、このトルク変化低減制御プログラムの実行内容がブロック線図で概念的に表されている。本実施形態においては、まず、アクティブ操舵角θafsをトリガとして、実操舵トルクTsがサンプリングされるとともに、目標操舵トルクT0がそのサンプリング値にホールドされる。さらに、操舵角θsに基づく操舵角情報(操舵角速度ωsまたは操舵角加速度αsを含む。)をトリガとして、目標操舵トルクT0が更新される。
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、実操舵トルクTsが、さらに、目標操舵トルクT0と共に、偏差フィードバック制御にも用いられる。実操舵トルクTsは、さらに、微分フィードバック制御にも用いられる。それら偏差フィードバック制御と微分フィードバック制御との双方を実行するためにトルク変化低減アシスト指令が決定され、それが電気パワーステアリング26に対して出力される。
本発明者らは、本実施形態におけるトルク変化低減制御(目標操舵トルクT0の更新あり)の効果を、目標操舵トルクT0を更新しないトルク変化低減制御(以下、「比較例」という。)との比較において確認するために、次のような実験を行った。
図12の1段目および2段目の各グラフに示すように、まず、ステアリングホイール14の操作状態が中立保舵状態、操舵角θsが0から正の値に増加する操舵状態、操舵角θsがその正の位置にホールドされる第1の非中立保舵状態、操舵角θsが負の値に減少する操舵状態、および、操舵角θsがその負の値にホールドされる第2の非中立保舵状態に順に遷移する状況を再現した。1段目のグラフは、上記比較例について操舵角θsの時間的推移を示し、2段目のグラフは、本実施形態について操舵角θsの時間的推移を示している。
それら比較例および本実施形態のいずれについても、中立保舵状態においてトルク変化低減制御を開始した。図12の3段目のグラフは、比較例につき、操舵トルクTsの時間的推移を示し、4段目のグラフは、本実施形態につき、操舵トルクTsの時間的推移を示している。
なお付言するに、トルク変化低減制御が開始されるためにはアクティブ操舵の開始が前提である。しかし、操舵角θsが時間と共に変化する状況においてアクティブ操舵を実行すると、操舵トルクTsが、操舵角θsに起因する成分と、アクティブ操舵に起因する成分との重ね合せとして構成されることになり、一方、トルク変化低減制御による操舵トルクTsの制御態様を解析するために、アクティブ操舵に起因する成分をも考慮することは不可欠ではない。
そこで、図12においては、説明を簡単にするために、トルク変化低減制御の実行中、アクティブ操舵角θafsは0に維持され、その結果、トルク変化低減制御の効果が、操舵角θsに起因する実操舵トルクTsのみに現れるようになっている。
図12の5段目および6段目の各グラフは、トルク変化低減制御量の時間的推移を、比較例と本実施形態とについてそれぞれ示している。比較例においては、第1および第2の非中立保舵状態の開始に伴って目標操舵トルクT0の更新が行われなかったため、トルク変化低減制御量が変化しなかった。そのため、トルク変化低減制御量が理想値より増加する傾向が発生した。これに対し、本実施形態においては、第1および第2の非中立保舵状態の開始に伴って目標操舵トルクT0の更新が行われたため、それに伴ってトルク変化低減制御量が変化した。そのため、トルク変化低減制御量が理想値より増加する傾向が比較例より軽減された。
図12の3段目および4段目の両グラフを対比すれば明らかなように、第1の非中立保舵状態と第2の非中立保舵状態との間における操舵トルクTsの差ΔTが、比較例においては小さく、本実施形態においては大きい。このことは、操舵角θsの同じ変化量に応じた操舵トルクTsの変化量ΔTが、比較例においては小さく、本実施形態においては大きいことを意味する。比較例における変化量ΔTの方が本実施形態における変化量ΔTより小さいのは、比較例におけるトルク変化低減制御量が本実施形態におけるトルク変化低減制御量が大きいため、比較例においては、電気パワーステアリング26によって発生させられたアシストトルクが過剰気味であったことに起因すると推測される。
一方、操舵角θsの変化に対して、操舵トルクTsの変化量ΔTが大きいほど、剛性感があることを意味するため、本実施形態によれば、トルク変化低減制御が原因で、運転者が操舵中にステアリングホイール14から感じる手応感(剛性感)が不足してしまう傾向を軽減することが容易となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図10におけるS205、S213およびS214を実行する部分が前記(5)項における「目標操舵トルク更新手段」の一例を構成し、アクティブ操舵中においてその開始後に保舵状態が開始されることが同項における「第2条件」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
第1実施形態においては、アクティブ操舵の実行期間の全体を通じて、トルク変化低減アシストトルクを発生させるフィードバック制御が継続的に実行される。そのため、トルク変化低減アシストトルクが過剰となり、運転者が操舵中にステアリングホイール14から感じる剛性感が低下する傾向があある。
これに対し、本実施形態においては、アクティブ操舵中、フィードバック制御が複数回、離散的に実行される。離散的に実行される各回のフィードバック制御を部分フィードバック制御と称することにすれば、本実施形態においては、その部分フィードバック制御が、一連のアクティブ制御の開始時と、その終了時と、車輪切り返し時とにそれぞれ実行される。
ここで、図9における3段目のグラフを参照すれば、トルク変化低減制御を実行しない場合には、アクティブ操舵中、操舵トルクTsが、そのアクティブ操舵の開始時と、終了時とにおいて急変する。操舵トルクTsが時間と共に変化する変化勾配が、開始時と終了時とにおいて大きくなるのである。さらに、アクティブ操舵の実行期間の中央においては、操舵トルクTsが増加からピーク値を経て減少に転換するが、その転換時期は、車輪20の転舵角が増加から減少に転換する車輪切り返し時に該当する。この車輪切り返し時にも、操舵トルクTsの変化勾配が大きい。
一方、運転者は、操舵トルクTsの変化勾配が大きいほど、アクティブ操舵中、操舵トルクTsに関して違和感を感じ易い。したがって、操舵トルクTsの変化勾配が大きい時期に限ってフィードバック制御を実行してトルク変化低減アシストトルクを発生させるようにトルク変化低減制御プログラムを設計すれば、運転者がアクティブ操舵中、ステアリングホイール14から感ずる剛性感の低下を回避しつつ、運転者が操舵トルクTsに関して感ずる違和感を抑制することが容易となる。
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、アクティブ操舵プログラム、パワーアシスト制御プログラムおよびトルク変化低減制御プログラムがコンピュータ82によって実行される。それらプログラムのうち、アクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムは第1実施形態と共通する。
図13には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このトルク変化低減制御プログラムにおいては、第1実施形態と共通するステップが多いため、共通するステップについては、第1実施形態において対応するステップを特定することによって詳細な説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S301において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。
次に、S302において、ラックアンドピニオン機構38におけるピニオン32の角度がピニオン角θpinとして検出される。このピニオン角θpinは、車輪20の転舵角を反映する物理量であり、その転舵角は、操舵角θsとアクティブ操舵角θafsとの合成値を意味する。このピニオン角θpinの角速度の符号の変化を監視すれば、車輪切り返し時であるか否かを判定することが可能である。本実施形態においては、そのピニオン角θpinが図3に示すピニオン角センサ102によって検出される。そのピニオン角センサ102は、例えば、レゾルバ式を採用することが可能である。
続いて、図13のS303において、上記検出されたピニオン角θpinに基づき、ピニオン角速度ωpinが取得される。例えば、ピニオン角θpinの今回検出値から前回検出値を引き算した値を用いてピニオン角速度ωpinが取得される。
その後、S304において、前記S102と同様にして、現在、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。アクティブ操舵中ではない場合には、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了し、これに対し、アクティブ操舵中である場合には、S305に移行する。
このS305においては、前記S103と同様にして、実操舵トルクTsが検出される。続いて、S306において、前記S104と同様にして、現在、アクティブ操舵の開始時であるか否かが判定される。開始時である場合には、S307において、部分フィードバック制御(図13および他の図においては「部分FB」で表す。)において、部分フィードバック制御を開始することが指令される。
その後、S308において、前記S105と同様にして、目標操舵トルクT0が最新の実操舵トルクTsを用いて決定される。その後、S309において、前記S108と同様にして、偏差Tpが取得され、続いて、S310において、前記S109と同様にして、微分値Tdが取得される。
その後、S311において、ゲインが設定される。本実施形態においては、前記取得された偏差Tpおよび微分値Tdに基づき、前記S110と同様にして、トルク変化低減制御量が決定されるが、そのトルク変化低減制御量は、暫定値であって、それと上記ゲインとの積として、最終的なトルク変化低減制御量が決定される。
したがって、本実施形態においては、ゲインが1に設定されれば、トルク変化低減制御量の暫定値がそのまま最終値として採用されるとともに、トルク変化低減アシストトルクのためのフィードバック制御が実行される。一方、ゲインが0に設定されれば、事実上、フィードバック制御が禁止される。本実施形態においては、ゲインを可変値として設定することにより、部分フィードバック制御が達成されるようになっている。
図14には、ゲインを設定するために用いる規則がグラフで表されている。ゲインは、各回の部分フィードバック制御の経過時間tに応答して変化させられる。経過時間tが0から増加すると、ゲインが0から1に向かって大きな勾配で増加させられる。ゲインはやがて0に向かって、増加時より緩やかな勾配で減少させられる。経過時間tが、予め定めされた最大時間tMAXに達するときに、ゲインがちょうど0に減少する。したがって、本実施形態においては、各回の部分フィードバック制御の終了時期が、時間によって管理される。すなわち、部分フィードバック制御は、時限制御なのである。
よって、図13のS311においては、図14にグラフで表される規則に従い、今回の部分フィードバック制御の開始時期からの経過時間tに応じて、今回のゲインが設定される。
その後、S312において、前述のようにしてトルク変化低減制御量の暫定値が決定され、その決定された暫定値と、上記設定されたゲインとの積として、トルク変化低減制御量の最終値が決定される。続いて、S313において、前記S111と同様にして、トルク変化低減アシスト指令が決定され、その後、S314において、前記S112と同様にして、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。
続いて、S315において、上記設定されたゲインが0であるか否かが判定される。今回は、ゲインが0ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S316において、実操舵トルクTsが再度、検出される。その後、S309に戻り、今回の部分フィードバック制御が継続される。これに対し、今回は、ゲインが0であると仮定すれば、S315の判定がYESとなり、S317において、今回の部分フィードバック制御が終了させられる。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
以上、現在、アクティブ操舵の開始時である場合を説明したが、開始時ではない場合には、S306の判定がNOとなり、S318において、アクティブ操舵の終了時であるか否かが判定される。この判定は、例えば、前記検出されたアクティブ操舵角θafsを監視することによって行うことが可能である。
今回は、アクティブ操舵の終了時であると仮定すれば、S318の判定がYESとなり、S307ないしS317のステップが、アクティブ操舵の開始時と同様にして実行され、それにより、一回の部分フィードバック制御が実行される。これに対し、今回は、アクティブ操舵の開始時でも終了時でもないと仮定すれば、S318の判定がNOとなり、S319において、車輪切り返し時であるか否かが判定される。
このS319においては、例えば、前記取得されたピニオン角速度ωpinの符号が反転した直後であるか否かを判定し、そうであれば車輪切り返し時であると判定することが可能である。また、そのピニオン角速度ωpinが、正または負の値から0に変化して負または正の値に変化した直後であるか否か(ゼロクロス状態にあるか否か)を判定し、そうであれば車輪切り返し時であると判定することが可能である。
今回は、車輪切り返し時ではないと仮定すれば、S319の判定がNOとなり、部分フィードバック制御が実行されることなく、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。これに対し、今回は、車輪切り返し時であると仮定すれば、S319の判定がYESとなり、S307ないしS317の実行により、部分フィードバック制御が実行される。
図15には、本実施形態におけるトルク変化低減制御の一実行例が3つのグラフで表されている。この制御例においては、中立保舵状態においてアクティブ操舵が実行され、そのアクティブ操舵中、そのアクティブ操舵のみを原因として、ピニオン角θpinが増加と減少とを周期的に繰り返される。図15における1段目のグラフにおいては、上向きの矢印と、下向きの矢印と、上向きの矢印とが、時間の経過につれて順に並んでいるが、1番目の矢印は、ピニオン角θpinが減少から増加に転換する時を示しており、2番目の矢印は、ピニオン角θpinが増加から減少に転換する時を示しており、3番目の矢印は、ピニオン角θpinが減少から増加に転換する時を示している。したがって、いずれの矢印も、車輪切り返し時を示している。
図15における2段目のグラフは、ゲインの時間的推移を示している。ゲインは、車輪切り返し時が到来するごとに、0からそれより大きい値に変化して設定時間(前記最大時間tMAXに等しい。)、0でない値を取るように設定される。その結果、図15における3段目のグラフに示すように、車輪切り返し時が到来するごとに、部分フィードバック制御が時限制御として実行される。図15には、3回の部分フィードバック制御が離散的に実行される様子が示されている。
図16には、本実施形態におけるトルク変化低減制御の効果が、アクティブ操舵中、フィードバック制御を実行しない比較例との比較においてグラフで表わされている。
図16に示される制御例においては、ピニオン角θpinと操舵トルクTsとの関係(以下、「操舵トルク特性」という。)がヒステリシスを有している。図16における1段目のグラフは、比較例における操舵トルク特性を示し、2段目のグラフは、本実施形態における操舵トルク特性を示している。いずれのグラフにおいても、車輪切り返し時に該当する各部分が丸で囲まれて示されている。
図16における1段目のグラフで示すように、比較例においては、車輪切り返し時に、ピニオン角θpinに対する操舵トルクTsの変化勾配が大きい。これに対し、2段目のグラフで示すように、本実施形態においては、車輪切り返し時に、ピニオン角θpinに対する操舵トルクTsの変化勾配が小さい。
したがって、本実施形態によれば、アクティブ操舵によって車輪切り返しが行われる際に、操舵トルクTsの変化が低減させられ、その結果、運転者がアクティブ操舵による車輪切り返し時にステアリングホイール14から感ずるショックが緩和される。よって、アクティブ操舵中に運転者が操舵トルクTsに関して違和感を感ずることが抑制される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図13におけるS306ないしS319を実行する部分が前記(8)項における「第2操舵トルク制御手段」の一例を構成しているのである。さらに、コンピュータ82のうち図13におけるS306、S308、S309、S312、S313、S318およびS319を実行する部分が前記(9)ないし(11)項のいずれかにおける「偏差フィードバック制御手段」の一例を構成しているのである。さらに、ピニオン角速度ωpinが前記(11)項における「転舵角の速度に関連する物理量」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
アクティブ操舵中、前記不感帯を超える操舵トルクTsが発生させられる場合には、トルク変化低減制御なしでも、電気パワーステアリング26の通常アシスト制御により、そのアクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化が低減させられる。したがって、トルク変化低減制御が特に有効であり、かつ、必要であるのは、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsが上記不感帯を超えないほどに小さい場合である。一方、操舵角θsの絶対値が大きいほど、操舵トルクTsが増加する傾向がある。
したがって、操舵角θsが大きいほど、通常アシスト制御とトルク変化低減制御との累積的実行により、結果的に発生させられるアシストトルクが過剰気味になってしまう可能性がある。
このような知見に基づき、本実施形態においては、操舵角θsが大きいほどトルク変化低減制御が弱められる。
さらに、一般に、運転者は、ステアリングホイール14を操作する操舵角速度ωsが大きいときほど、アクティブ操舵に起因して操舵トルクTsが変化しても、その変化に対して鈍感である。したがって、このような運転者の感度特性を考慮すれば、操舵角速度ωsが大きいほど、トルク変化低減制御が無駄に行われる可能性があることになる。
さらにまた、トルク変化低減制御が偏差フィードバック制御を含む場合には、目標操舵トルクT0を精度よく決定することが望ましいが、運転者がステアリングホイール14を操作する操作状態が保舵状態ではなく、操舵状態すなわち過渡状態である場合には、アクティブ操舵中に運転者が期待する操舵トルクを想定することが困難であるため、目標操舵トルクT0を精度よく決定することも困難である。
一方、目標操舵トルクT0を精度よく決定することができない状況においては、精度不良の目標操舵トルクT0を用いて無理に偏差フィードバック制御を実行するよりむしろ、偏差フィードバック制御を完全にないしは部分的に省略することが望ましい場合もある。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、さらに、操舵角速度ωsが大きいほどトルク変化低減制御が弱められる。
本実施形態においては、アクティブ操舵中、前記偏差Tpと前記微分値Tdとの少なくとも一方に基づき、予め定められた規則に従い、トルク変化低減制御量の暫定値が決定される。その暫定値は、第1ないし第3実施形態のいずれかにおいて決定されたトルク変化低減制御量と等しくなるように決定することが可能である。
さらに、本実施形態においては、そのようにして決定された暫定値をそのままトルク変化低減制御量の最終値として用いるべきか、その暫定値より小さい値(本実施形態においては、例えば、0である。)をトルク変化低減制御量の最終値として用いるべきかが判定される。本実施形態においては、その判定のために、操舵角θsに応じて減少する部分評価値Eθと、操舵角速度ωsに応じて減少する部分評価値Eωとが取得され、さらに、それら部分評価値EθとEωとの積として総合評価値ETが取得される。
その総合評価値ETがしきい値Ethより小さくはない場合には、トルク変化低減制御を強調させることが望ましいとして、上記暫定値がそのまま、トルク変化低減制御量の最終値として用いられる。これに対し、総合評価値ETがしきい値Ethより小さい場合には、トルク変化低減制御を強調させることが望ましくないか、ないしはトルク変化低減制御を禁止することが望ましいとして、トルク変化低減制御量が0に補正される。
このようなトルク変化低減制御量の補正を行うためにコンピュータ82によって制御量補正プログラムが実行される。この制御量補正プログラムは、第1ないし第3実施形態におけるアクティブ操舵プログラム、パワーアシスト制御プログラムおよびトルク変化低減制御プログラムと共に、コンピュータ82によって実行される。本実施形態においては、その制御量補正プログラムがトルク変化低減制御プログラムから独立して設けられているが、単一のプログラムをコンピュータ82によって実行させることによってそもそものトルク変化低減制御と今回の制御量補正とを行うことが可能である。
図17には、その制御量補正プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。この制御量補正プログラムも、他のプログラムと同様に、コンピュータ82によって繰返し実行される。
この制御量補正プログラムの各回の実行時には、まず、S401において、操舵角センサ72により、操舵角θsが検出される。次に、S402において、その検出された操舵角θsに対応する部分評価値Esが、例えば図18の(a)にグラフで概念的に表わされている規則に従って決定される。
続いて、S403において、前記検出された操舵角θsを用いることにより、操舵角速度ωsが取得される。その後、S404において、その取得された操舵角速度ωsに対応する部分評価値Eωが、例えば図18の(b)にグラフで概念的に表わされている規則に従って決定される。
続いて、S405において、それら取得された部分評価値EsとEωとの積として総合評価値ETが取得される。その後、S406において、その取得された総合評価値ETがしきい値Ethより小さいか否かが判定される。小さい場合には、S407において、前記トルク変化低減制御プログラムの実行によって決定されたトルク変化低減制御量が0に補正され、それにより、フィードバック制御が禁止される。これに対し、総合評価値ETがしきい値Ethより小さくはない場合には、S407がスキップされる。
いずれの場合にも、以上で、この制御量補正プログラムの一回の実行が終了する。
なお付言するに、本実施形態においては、総合評価値ETがしきい値Ethより小さいために、トルク変化低減制御を強調させるべきではないと判定された場合には、トルク変化低減制御量が0に減少させられるようになっている。ただし、この場合に、トルク変化低減制御量の全体を0に減少させるのではなく、部分的に0に減少させるようにして本発明を実施することが可能である。例えば、トルク変化低減制御量が、偏差フィードバック制御に係る成分と、微分フィードバック制御に係る成分とを含む場合に、それら2つの成分のいずれか一方のみを0に減少させることが可能である。
さらに付言するに、本実施形態においては、運転者がステアリングホイール14を操作する操作状態に関連する操作情報が、操舵角θsに着目して取得されるようになっているが、他の物理量に着目して取得するようにして本発明を実施することが可能である。そのような他の物理量としては、例えば、ピニオン角θpinが考えられる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図17の制御量補正プログラムを実行する部分が前記(12)項における「第1トルク変更手段」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
第1実施形態においては、一連のアクティブ操舵の終了に伴ってトルク変化低減制御が終了させられ、それにより、トルク変化低減制御量が急に0に減少させられる。しかし、アクティブ操舵の終了直前にトルク変化低減制御量がちょうど0となるという保証はなく、それにもかかわらず、トルク変化低減制御を終了させてしまうと、その終了後に操舵トルクTsに変化が発生し、運転者がステアリングホイール14からショックを感じてしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態においては、トルク変化低減制御の終了時期が、そのトルク変化低減制御の動機となったアクティブ操舵の終了時期より遅い時期まで遅延させる。これにより、トルク変化低減制御がアクティブ操舵の終了後にも継続させられる。トルク変化低減制御のうち、アクティブ操舵の終了後に実行される部分を遅延制御と称することとすれば、本実施形態においては、その遅延制御が時限制御として実行される。遅延制御の終了時期がその遅延制御の実行時間によって決定されるのである。
さらに、本実施形態においては、遅延制御の実行時間を管理するために可変のゲインが使用される。このゲインは、第1ないし第4実施形態と同様にして決定されたトルク変化低減制御量に掛け算されることにより、トルク変化低減制御量の最終値を決定するために使用される。このゲインは、アクティブ操舵中は1にホールドされる一方、アクティブ操舵の終了後は、その終了時期からの経過時間すなわち遅延制御の連続実行時間tに応じて減少させられる。このゲインは、最大時間tMAXの経過時に0に一致させられる。
以上概略的に説明したトルク変化低減制御を実行するためにコンピュータ82によってトルク変化低減制御プログラムが実行される。このトルク変化低減制御プログラムは、第1ないし第4実施形態におけるアクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムと共に、コンピュータ82によって実行される。
図19には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。以下、このトルク変化低減制御プログラムの内容を説明するが、第1実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムと共通するステップについては、対応関係を明記することにより、重複した説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S501において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S502において、前記S102と同様にして、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。
続いて、S503において、前記ゲインが1に設定される。その後、S504において、前記S103と同様にして、実操舵トルクTsが検出される。続いて、S505ないしS509が、前記S104ないしS108と同様にして実行される。
その後、S510において、前記S110に準じて、トルク変化低減制御量の暫定値が決定される。ただし、本実施形態においては、トルク変化低減制御が偏差フィードバック制御は含むが微分フィードバック制御は含まないように構成されているため、このS510においては、S509において取得された偏差Tpに基づいてトルク変化低減制御量の暫定値が決定される。
このS510においては、さらに、そのようにして決定された暫定値と、前記設定されたゲインとの積として、トルク変化低減制御量の最終値が決定される。今回は、ゲインが1に設定されているため、トルク変化低減制御量については、暫定値がそのまま最終値として用いられることになる。
その後、S511において、前記S111と同様にして、トルク変化低減アシスト指令が決定され、続いて、S512において、前記S112と同様にして、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
S501ないしS512の実行が繰り返されるうちに、今回のアクティブ操舵が終了すれば、S502の判定がYESからNOに切り換わる。その後、S513において、遅延制御中であるか否かが判定される。具体的には、アクティブ制御の終了時期からの経過時間tが最大時間tMAXに達していないか否かが判定される。今回は、遅延制御中であると仮定すれば、判定がYESとなり、S514に移行する。
このS514においては、前記ゲインが設定される。このゲインは、経過時間tにつれて1から減少しやがて0となる規則に従って設定される。図20には、そのような規則の一例がグラフで表されている。
その後、S504を経てS505が実行されれば、今回は、アクティブ操舵の開始時ではないため、S505の判定がNOとなり、S506およびS507がスキップされる。続いて、S508およびS509を経てS510が実行される。このS510においては、そこにおいて決定されたトルク変化低減制御量の暫定値と、上記設定されたゲインとの積としてトルク変化低減制御量の最終値が決定される。この最終値は、ゲインが0に近づくにつれて減少し、それに伴い、遅延制御が次第に弱められる。
続いて、S511およびS512が実行され、以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
S501、S502、S513、S514およびS504ないしS512の実行が繰り返されるうちに、アクティブ操舵の終了時期からの経過時間tが最大時間tMAXに到達したと仮定すれば、S513の判定がNOとなり、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。この場合には、S512がスキップされるため、事実上、トルク変化低減制御量が0に決定されたことと等価である。
図21には、本実施形態におけるトルク変化低減制御の一実行例がグラフで表わされている。図21における1段目および2段目の両グラフから明らかなように、アクティブ操舵中、ゲインが1にホールドされる。
この制御例においては、3段目のグラフから明らかなように、アクティブ操舵中、アクティブ操舵角θafsが0から増加してピーク値に到達した後に減少に転じ、やがて0に復元される。このようなアクティブ操舵角θafsの変化に起因して操舵トルクTsが変化しようとするが、5段目のグラフで表わされているように、アクティブ操舵中、トルク変化低減制御量が適切に決定されてフィードバック制御が行われる結果、4段目のグラフで表わされているように、アクティブ操舵中、操舵トルクTsの変化が低減される。
1段目および2段目の両グラフで表わされているように、アクティブ操舵が終了すると、ゲインは直ちに0に減少させられるのではなく、緩やかな勾配で0に向かって減少させられる。遅延制御が実行されるのであり、その間、5段目のグラフで表わされているように、トルク変化低減制御量が0でない値を有するとともに、その値の絶対値はしだいに減少しやがて0となっている。4段目のグラフで表わされているように、その漸減に伴い、アクティブ操舵の終了時に0でなかった操舵トルクTsが徐々に0に接近させられる。
したがって、本実施形態によれば、アクティブ操舵の終了後における遅延制御のおかげで、アクティブ操舵の終了に伴って運転者がステアリングホイール14から感じるショックが良好に緩和される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図19におけるS513およびS514を実行する部分が前記(14)項における「遅延制御手段」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
第1実施形態においては、アクティブ操舵中、トルク変化低減アシストトルクを発生させるために、前記偏差Tpと前記微分値Tdとの少なくとも一方に基づいてフィードバック制御が実行されるが、それと並行して、フィードフォワード制御を実行することが可能である。このフィードフォワード制御については、後の実施形態において詳しく説明するが、前述の部材間摩擦力を正確に把握しない限り、フィードフォワード制御の目標値、すなわち、トルク変化低減アシストトルクの予測値を正確に決定することが困難である。
一方、アクティブ操舵の実行期間のうち特に開始時において、フィードフォワード制御の目標値を正確に決定することが困難である。操作部10および転舵部12において互いに力を伝達するために互いに係合する2部材は、互いに接触した状態においてそれら2部材間の力伝達を行い得る。そのような接触状態においてはじめて部材間摩擦力が発生するが、それら2部材間にまったく隙間がないわけではない。したがって、各部材のいずれの側に隙間が存在するかを正確に把握し得ない限り、部材間摩擦力の推定ひいてはフィードフォワードの目標値の決定を正確に行うことが困難である。特に、ステアリングホイール14が中立位置に位置する場合には、各部材のいずれの側に隙間が存在するかを正確に把握することは困難であるため、中立保舵状態においてアクティブ操舵が開始された場合には、その初期においてフィードフォワード制御を精度よく実行することが困難である。
このようなフィードフォワード制御をフィードバック制御と並行して実行するか否かにかかわらず、中立保舵状態においてアクティブ操舵が開始された場合には、その初期において、実操舵トルクTsが大きな勾配で変化する可能性があり、そのため、その初期においてフィードバック制御を敏感に実行することが、その初期において操舵トルクTsの変化を効果的に低減させるために重要である。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、トルク変化低減制御が微分フィードバック制御のみを含むように構成されるとともに、その微分フィードバック制御が、アクティブ操舵の開始時に設定時間実行される。微分フィードバック制御が時限制御として実行されるのであり、その連続実行時間は、予め定められた最大時間tMAXと一致する。
さらに、本実施形態においては、微分フィードバック制御の実行時間を管理するために可変のゲインが使用される。このゲインは、前述のようにして決定されたトルク変化低減制御量に掛け算されることにより、トルク変化低減制御量の最終値を決定するために使用される。このゲインは、アクティブ操舵の開始時からの経過時間tが最大時間tMAXに達しないうちは1にホールドされる一方、その到達後には、急に0に減少させられる。
以上概略的に説明したトルク変化低減制御を実行するためにコンピュータ82によってトルク変化低減制御プログラムが実行される。このトルク変化低減制御プログラムは、第1ないし第3実施形態におけるアクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムと共に、コンピュータ82によって実行される。
図22には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。以下、このトルク変化低減制御プログラムの内容を説明するが、第1実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムと共通するステップについては、対応関係を明記することにより、重複した説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S601において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S602において、前記S102と同様にして、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。
続いて、S603において、時限制御期間内であるか否かが判定される。具体的には、アクティブ操舵の開始時からの経過時間tが最大時間tMAXを超えないか否かが判定される。今回は、時限制御期間内であると仮定すれば、判定がYESとなり、S604に移行する。
このS604においては、前記S103と同様にして、実操舵トルクTsが検出される。続いて、S605において、前記S109と同様にして、微分値Tdが取得される。
その後、S606において、前記ゲインが設定される。このゲインは、例えば図23にグラフで表される規則に従い、経過時間tの現在値に対応する大きさを有するように設定される。
続いて、S607において、前記取得された微分値Tdに基づき、微分フィードバック制御のためのトルク変化低減制御量の暫定値が決定される。さらに、その決定されたトルク変化低減制御量の暫定値と、上記設定されたゲインとの積としてトルク変化低減制御量の最終値が決定される。
続いて、S608において、前記S111と同様にして、トルク変化低減アシスト指令が決定され、続いて、S609において、前記S112と同様にして、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
S601ないしS609の実行が繰り返されるうちに、経過時間tが最大時間tMAXに到達すれば、S603の判定がYESからNOに切り換わる。その後、S604ないしS609がスッキプされ、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。S604ないしS609がスキップされることは、事実上、トルク変化低減制御量が0に決定されたこと、すなわち、微分フィードバック制御が禁止されることと等価である。
図24には、本実施形態におけるトルク変化低減制御の一実行例がグラフで表わされている。図24における2段目のグラフから明らかなように、アクティブ操舵の開始時から設定時間、ゲインが1にホールドされ、その後、0に減少させられる。
図24における3段目のグラフは、アクティブ操舵中、微分フィードバック制御を実行しない場合の操舵トルクTsの時間的推移を比較例として示している。これに対し、4段目のグラフは、本実施形態における微分フィードバック制御を実行した場合の操舵トルクTsの時間的推移を示している。それらグラフをアクティブ操舵の初期について互いに比較すれば、操舵トルクTsが、微分フィードバック制御の実行のおかげで、微分フィードバック制御を実行しない場合より低減させられていることが分かる。
図24における5段目のグラフは、本実施形態における微分フィードバック制御の実行中、トルク変化低減制御量が急峻に変化させられることを示している。このような変化は、ゲインが1である期間に限り現れる。
なお付言するに、本実施形態においては、アクティブ操舵中、その初期に限って微分フィードバック制御が強調されるようになっているが、例えば、それに代えて、またはそれと共に、車輪切り返し時とアクティブ操舵の末期との少なくとも一方に微分フィードバック制御が強調されるようにして本発明を実施することが可能である。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図22におけるS603ないしS609を実行する前記(15)項における「微分フィードバック制御手段」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第7実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
アクティブ操舵中、前記アクティブ操舵プログラムの実行によってギヤ比変更機構22のモータ42にアクティブ操舵指令値が供給され、それにより、モータ42が作動させられてアクティブ操舵角θafsが変化させられる。
一方、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化を素早く低減させるためには、操舵トルクTsの変化傾向を早期に予測するとともに、そのように予測される変化傾向が大きいほど、トルク変化低減アシストトルクをその操舵トルクTsに対して敏感に応答させるべく、トルク変化低減アシストトルクを制御するフィードバック制御を強調することが望ましい。
また、物理現象としては、アクティブ操舵角θafsの変化を原因として、実操舵トルクTsが変化するため、実操舵トルクTsの変化傾向を早期に予測するために、アクティブ操舵角θafsの変化傾向を監視することが望ましいとともに、アクティブ操舵角θafsの変化傾向をより早期に予測するためには、例えば、アクティブ操舵角加速度αafsの大きさを監視することが望ましい。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、フィードバック制御が、アクティブ操舵角加速度αafsが大きいほど強調されるように実行される。このようにフィードバック制御の強さを変化させるために可変のゲインが用いられる。第1ないし第6実施形態と同様にして決定されたトルク変化低減制御量が暫定値として用いられ、その暫定値とゲインとの積としてトルク変化低減制御量の最終値が決定される。ゲインは、アクティブ操舵角加速度αafsが大きいほど増加するように設定される。
さらに、本実施形態においては、フィードバック制御が、微分フィードバック制御のみを含むように構成されている。
以上概略的に説明したトルク変化低減制御を実行するためにコンピュータ82によってトルク変化低減制御プログラムが実行される。このトルク変化低減制御プログラムは、第1ないし第3実施形態におけるアクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムと共に、コンピュータ82によって実行される。
図25には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。以下、このトルク変化低減制御プログラムの内容を説明するが、第1実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムと共通するステップについては、対応関係を明記することにより、重複した説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S701において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S702において、前記S102と同様にして、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。
今回は、アクティブ操舵中であると仮定すれば、S703において、前記S103と同様にして、実操舵トルクTsが検出される。続いて、S704において、アクティブ操舵角加速度αafsが取得される。このアクティブ操舵角加速度αafsは、例えば、アクティブ操舵角速度ωafsの今回検出値から前回検出値を差し引いた値を用いて取得することが可能である。アクティブ操舵角速度ωafsは、例えば、アクティブ操舵角θafsの今回検出値から前回検出値を差し引いた値を用いて取得することが可能である。
その後、S705において、前記ゲインが設定される。このゲインは、上記取得されたアクティブ操舵角加速度αafsの絶対値に基づき、例えば図26にグラフで表わされている規則に従って設定される。その規則は、アクティブ操舵角加速度αafsの絶対値が大きいほど、ゲインが増加することを表す規則である。
続いて、S706において、前記S109と同様にして、前記微分値Tdが取得される。その後、S707において、その取得された微分値Tdに基づき、微分フィードバック制御を実行するためのトルク変化低減制御量が暫定値として決定され、その決定された暫定値と、前記設定されたゲインとの積として、トルク変化低減制御量の最終値が決定される。
続いて、S708において、前記S111と同様にして、その決定された最終値に基づいてトルク変化低減アシスト指令が決定され、その後、S709において、前記S112と同様にして、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
以上、アクティブ操舵中である場合を説明したが、アクティブ操舵中ではない場合には、S702の判定がNOとなり、微分フィードバック制御が省略されることにより、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
なお付言するに、本実施形態においては、モータ42の作動加速度がアクティブ操舵角加速度αafsとして把握されるとともに、そのアクティブ操舵角加速度αafsが、アクティブ操舵角θafsの検出値(実測値)を用いて取得される。ただし、例えば、アクティブ操舵角加速度αafsは、前記アクティブ操舵指令値(例えば、アクティブ操舵角θafsを表す指令値)を用いて取得するようにして本発明を実施することが可能である。
さらに、本実施形態においては、図26にグラフで表すように、アクティブ操舵角加速度αafsとゲインとの関係が比例関数で表わされている。ただし、その関係を、高次曲関数線で表わしたり、指数関数で表すようにして本発明を実施することが可能である。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図25におけるS704、S705およびS707を実行する部分が前記(17)項における「第2トルク変更手段」の一例を構成しているのである。さらに、アクティブ操舵角加速度αafsが前記(18)項における「モータの作動加速度」を反映する物理量の一例なのである。
次に、本発明の第8実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
一般に、運転者は、中立保舵状態においてアクティブ操舵が開始された場合の方が、その他の状態においてアクティブ操舵が開始された場合より、そのアクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化を敏感に感じる。したがって、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化を低減させるためのトルク変化低減制御は、特に、中立保舵状態において開始されたアクティブ操舵に関連して実行することが有効である。
一方、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化(負荷変動)は、ギヤ比変更機構22が出力する出力トルクを反映し、その出力トルクは、モータ42の駆動電流に比例する。例えば、モータ42がACモータであって、それに対してd−q軸制御が行われる場合には、q軸電流は、そのモータ42の出力トルクに比例する。したがって、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化は、トルクセンサ70を用いなくても、モータ42の駆動電流を監視することによって検出することが可能である。
また、アクティブ操舵が中立保舵状態において実行される場合には、操舵トルクTsがすべて、そのアクティブ操舵に起因するのに対し、アクティブ操舵が、非中立保舵状態において実行される場合には、操舵トルクTsにおいて、アクティブ操舵に起因する成分と、運転者の操舵に起因する成分とが重畳する。そのため、アクティブ操舵が非中立保舵状態において実行される場合には、全操舵トルクTsのうち、アクティブ操舵のみに起因する成分を、それ以外の要因に起因する成分から分離して抽出することが困難である。
一方、アクティブ操舵のみに起因する操舵トルクTsの変化を正確に取得し得ない状況においては、その取得値を不可欠とするフィードバック制御を実行するよりはむしろ、実行を制限するかないしは禁止することが望ましい場合もある。
アクティブ操舵のみに起因する操舵トルクTsの変化を正確に取得し得ない状況においては、そのフィードバック制御を制限するかないしは禁止する場合、中立保舵状態においては許可し、非中立保舵状態においては禁止するというように、それら2つの状態間においてフィードバック制御の強さが不連続であると、その不連続であることに運転者が違和感を感じる傾向がある。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、アクティブ操舵が実行され、かつ、中立保舵状態にある場合に、モータ42の駆動電流に基づいてフィードバック制御が完全に実行されるとともに、ステアリングホイール14の操作状態が、その中立保舵状態から外れるにつれて連続的に、そのフィードバック制御の強さが弱められる。本実施形態においては、フィードバック制御の強さを可変にするために、可変のゲインが用いられ、このゲインは、ステアリングホイール14の操作状態に応じて連続的に変化させられる。
ステアリングホイール14の操作状態が中立保舵状態であることを厳密に検出するためには、操舵角θsが実質的に0であり、かつ、操舵角速度ωsも実質的に0である状態を検出することが望ましい。しかし、本実施形態においては、操舵角θsが実質的に0である事実をもって操作状態が中立保舵状態であると判定される。
とはいえ、操舵角θsが実質的に0であり、かつ、操舵角速度ωsも実質的に0である場合に、操作状態が中立保舵状態であると判定するようにして本発明を実施したり、少なくとも操舵角速度ωsが実質的に0である場合に、操作状態が中立保舵状態であると判定するようにして本発明を実施することも可能である。
ところで、偏差フィードバック制御を実行するためには、実操舵トルクTsのみならず目標操舵トルクT0が必要である。一方、中立保舵状態におけるアクティブ操舵においては、目標操舵トルクT0は0に決定すべきである。
そして、本実施形態においては、モータ42の駆動電流に基づくフィードバック制御が偏差フィードバック制御のみを含むように設計され、その偏差フィードバック制御については、その完全な実行が中立保舵状態に限定されることから、目標操舵トルクT0が0に決定される。したがって、本実施形態においては、その偏差フィードバック制御を実行するためにコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムに、目標操舵トルクT0を決定するステップが概念上は存在するが、現実的には存在しない。
以上概略的に説明したトルク変化低減制御を実行するためにコンピュータ82によってトルク変化低減制御プログラムが実行される。このトルク変化低減制御プログラムは、第1ないし第3実施形態におけるアクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムと共に、コンピュータ82によって実行される。
図27には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。以下、このトルク変化低減制御プログラムの内容を説明するが、第1実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムと共通するステップについては、対応関係を明記することにより、重複した説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S801において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S802において、前記S102と同様にして、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。
今回は、アクティブ操舵中であると仮定すれば、S703において、モータ42の駆動電流Idが検出される。この駆動電流Idは、図3に示す電流センサ104によって実測したり、モータ42に供給される駆動電流指令値を用いて検出することが可能である。
続いて、図27のS804において、操舵角センサ72により、操舵角θsが検出される。その後、S805において、その検出された操舵角θsに対応するゲインの値が、例えば図28にグラフで表わされるような規則に従って設定される。図28に示すゲインの最大値MAXは、通常1であるが、1より大きい値とすることは可能である。
続いて、図27のS806において、前記検出された駆動電流Idに基づき、偏差フィードバック制御を実行するためのトルク変化低減制御量が暫定値として決定される。その暫定値は、例えば、駆動電流Id[A]と、定数k(ギヤ比変更機構22に応じて調整される定数)との積として決定することが可能である。このS806においては、さらに、その決定された暫定値と、前記設定されたゲインとの積として、トルク変化低減制御量の最終値が決定される。
続いて、S807において、前記S111と同様にして、その決定された最終値に基づいてトルク変化低減アシスト指令が決定され、その後、S808において、前記S112と同様にして、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
以上、アクティブ操舵中である場合を説明したが、アクティブ操舵中ではない場合には、S802の判定がNOとなり、偏差フィードバック制御が省略されることにより、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
図29には、本実施形態におけるトルク変化低減制御の一実行例がグラフで表わされている。この制御例においては、アクティブ操舵が中立保舵状態において実行されるとともに、1段目のグラフで表わされているように、そのアクティブ操舵中、アクティブ操舵角θafsが、正弦波を描くように時間と共に変化させられる。
図29には、2段目のグラフが、アクティブ操舵中、トルク変化低減制御が実行されない場合の操舵トルクTsの時間的推移を比較例として示している。これに対し、3段目のグラフは、アクティブ操舵中、本実施形態におけるトルク変化低減制御が実行された場合の操舵トルクTsの時間的推移を示している。さらに、4段目のグラフは、そのトルク変化低減制御の実行によって決定されるトルク変化低減制御量の時間的推移を示している。
それら2段目および3段目の両グラフを対比すれば明らかなように、トルク変化低減制御が実行されれば、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化が良好に低減させられる。
なお付言するに、本実施形態においては、ステアリングホイール14の操作状態が中立保舵状態から外れるにつれてゲインが連続的に減少させられてフィードバック制御の強さが連続的に低下させられる。したがって、フィードバック制御の強さにつき、操作状態が中立保舵状態から非中立保舵状態に遷移するフェードアウトと、非中立保舵状態から中立保舵状態に遷移するフェードインとがいずれも連続的に行われることとなり、そのような遷移に伴って操舵トルクTsが急変することが抑制される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ECU80が前記(20)項における「コントローラ」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ82が図4に示すアクティブ操舵プログラムを実行することにより、前記(21)項における「アクティブ操舵」の一例が実行され、また、コンピュータ82が図5におけるS33ないしS36と図27に示すトルク変化低減制御プログラムとを実行することにより、同項における「操舵トルク制御」の一例が実行されるのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図27におけるS806を実行する部分が前記(22)項における「第3トルク変更手段」の一例を構成し、コンピュータ82のうち図27におけるS804ないしS806を実行する部分が前記(23)項における「第4トルク変更手段」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第9実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態とハードウエア構成が共通し、ソフトウエア構成のみが異なるため、共通する要素については同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、電気パワーステアリング26が、図6にグラフで表されているように、操舵トルクTsが0近傍で変化してもアシストトルクTaが変化しない不感帯を有するようにそれら操舵トルクTsとアシストトルクTaとの間に設定された対応関係に従い、入力されたアシスト指令であって操舵トルクTsを表すものに応じ、その電気パワーステアリング26が出力すべきアシストトルクTaを決定するように設計されている。
この電気パワーステアリング26は、従来からの電気パワーステアリングであって十分な使用実績を有するものと共通のハードウエア構成およびソフトウエア構成を使用することにより、通常アシストを実行するためにそもそも設計されている。したがって、この電気パワーステアリング26は、その通常アシストに際し、入力されるアシスト指令の変動にもかかわらず、出力されるアシストトルクTaが時間的に安定であるように、種々の工夫が施されている。そのような工夫の一つが上述の対応関係の設定である。
よって、その対応関係をできる限りそのまま利用しつつ、この電気パワーステアリング26によってトルク変化低減制御を実行することが、この電気パワーステアリング26の利点すなわちロバスト性を享受しつつトルク変化低減制御を実行するために望ましい。
しかしながら、上記対応関係を利用する限り、前述の不感帯によって引き起こされ得る問題を解決することが必要である。
不感帯は、前述のように、通常アシストにおいて、運転者が中立位置近傍においてステアリングホイール14を操作する際に、それに伴う操舵角θsの変化に対して操舵トルクTsが敏感に応答し、それにより、運転者がステアリング操作に安心感を感じることができるように設けられている。したがって、通常アシストにおいては、その不感帯においては、操舵トルクTsの変化に対してアシストトルクTaが敏感に応答しないようになっているのである。
これに対し、トルク変化低減制御においては、操舵トルクTsの変化に対してアシストトルクTaが敏感に応答することが、アクティブ操舵に起因する操舵トルクTsの変化を低減させるために望ましい。そのため、操舵トルクTsが0近傍である領域については、操舵トルクTsとアシストトルクTaとの関係が、通常アシストとトルク変化低減制御との間において逆転する。
したがって、それにもかかわらず、電気パワーステアリング26の利点を享受しつつ、その電気パワーステアリング26を利用してトルク変化低減制御によってアシストトルクTaを発生させるためには、電気パワーステアリング26に対して出力すべきトルク変化低減アシスト指令の決定手法に何らかの対策を講ずることが望ましい。
以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、まず概略的に説明すれば、トルク変化低減制御が実行されれば、トルク変化低減アシスト指令が、前記不感帯から外れた大きさを有するみかけ中心操舵トルクTsvc(これが前記(24)項における「基本指令」の一例である。)と、そのみかけ中心操舵トルクTsvcに対して追加的な追加操舵トルクTsA(これが前記(24)項における「補助指令」の一例である。)との組合せとして決定される。
さらに、トルク変化低減アシストトルクの予測値である予測トルクが決定される。この予測トルクは、電気パワーステアリング26のフィードフォワード制御によって実現すべきトルク変化低減アシストトルクとして決定される。
その決定された予測トルクTaEに基づいて上記みかけ中心操舵トルクTsvcが決定される。図6にグラフで表わされる対応関係は、そもそも、操舵トルクTsからアシストトルクTaを求めるものであるが、本実施形態においては、アシストトルクTaから操舵トルクTsを求める第2の対応関係が用いられる。
この第2の対応関係は、上記対応関係(以下、第2の対応関係と区別するために、「第1の対応関係」という。)を入出力に関して逆変換したものに相当する。したがって、本実施形態においては、予測トルクTaEに対応するみかけ中心操舵トルクTsvcが、第2の対応関係に従って決定される。
本実施形態においては、さらにまた、実操舵トルクTcに基づいて追加操舵トルクTsAが決定される。この追加操舵トルクTsAは、例えば、実操舵トルクTc、すなわち、上記フィードフォワード制御のみでは打ち消すことができなかった操舵トルクTcと実質的に等しくなるように決定することが可能である。
この追加操舵トルクTsAと、上記みかけ中心操舵トルクTsvcとの和がみかけ全操舵トルクTsvTであり、これを表すトルク変化低減アシスト指令が決定されて電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上概略的に説明したトルク変化低減制御を実行するためにコンピュータ82によってトルク変化低減制御プログラムが実行される。このトルク変化低減制御プログラムは、第1ないし第3実施形態におけるアクティブ操舵プログラムおよびパワーアシスト制御プログラムと共に、コンピュータ82によって実行される。
図30には、本実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。以下、このトルク変化低減制御プログラムの内容を説明するが、第1実施形態におけるトルク変化低減制御プログラムと共通するステップについては、対応関係を明記することにより、重複した説明を省略し、異なるステップについてのみ詳細に説明する。
このトルク変化低減制御プログラムの各回の実行時には、まず、S901において、前記S101と同様にして、アクティブ操舵角θafsが検出される。次に、S902において、前記S102と同様にして、アクティブ操舵中であるか否かが判定される。
続いて、S903において、トルク変化低減アシストトルクTaの予測値である予測トルクTaEが決定される。このS903の詳細が図31に予測トルク決定ルーチンとしてフローチャートで概念的に表わされているが、これについては後述する。
続いて、S904において、みかけ中心操舵トルクTsvcが決定される。このみかけ中心操舵トルクTsvcは、上記決定された予測トルクTaEに応じ、前述の第2の対応関係に従って決定される。この第2の対応関係の一例は、図32の(a)にグラフで表わされているように、図6にグラフで表わされている第1の対応関係を忠実に逆変換したものである。別の例は、図32の(b)にグラフで表わされているように、第1の対応関係を折れ線で近似したものを逆変換したものである。
いずれにしても、このS904においては、第2の対応関係に従い、予測トルクTaEからみかけ中心操舵トルクTsvcが決定される。ここに、予測トルクTaEは、通常、第1の対応関係におけるアシストトルクTaの不感帯を超える大きさを有するように決定される。したがって、このS904において決定されることとなるみかけ中心操舵トルクTsvcに対応するアシストトルクTaが第1の対応関係に従って決定されれば、その対応するアシストトルクTaは上記不感帯を超えるほどに大きい。
その後、S905において、前記S103と同様にして、実操舵トルクTsが検出される。続いて、S906において、追加操舵トルクTsAが決定される。この追加操舵トルクTsAは、例えば、前記検出された実操舵トルクTsと等しい値として決定されるが、その実操舵トルクTsに基づき、それとは異なる値として決定するようにして本発明を実施することが可能である。
その後、S907において、それら決定されたみかけ中心操舵トルクTsvcと追加操舵トルクTsAとの和としてみかけ全操舵トルクTsvTが決定される。続いて、S908において、前記S111と同様にして、その決定されたみかけ全操舵トルクTsvTに基づいてトルク変化低減アシスト指令が決定される。その後、S909において、前記S112と同様にして、その決定されたトルク変化低減アシスト指令が電気パワーステアリング26に対して出力される。
以上で、このトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
以上、アクティブ操舵中である場合を説明したが、アクティブ操舵中ではない場合には、S902の判定がNOとなり、偏差フィードバック制御が省略されることにより、直ちにこのトルク変化低減制御プログラムの一回の実行が終了する。
図33には、0を中心とする操舵トルクTsの変動域ΔTAに対応するアシストトルクTaの変化量ΔT1と、不感帯から外れた値を中心とする操舵トルクTsの変動域ΔTBに対応するアシストトルクTaの変化量ΔT2とが、第1の対応関係を表すグラフ上に示されている。ここに、変動域ΔTAの幅が変動域ΔTbの幅より大きいが、不感帯の存在が原因で、変化量ΔT1が変化量ΔT2より小さい。
本実施形態においては、概念的に説明すれば、みかけ中心操舵トルクTsvcが用いられることにより、操舵トルクTsの変動域ΔTが、不感帯から外れた位置に移動させられる。したがって、図33におけるグラフのうち、勾配が0ではない領域を利用することにより、アクティブ操舵中、アシストトルクTaを発生させることが可能となる。よって、本実施形態によれば、実操舵トルクTsの変動量が僅かであっても、それに対して敏感に応答するようにアシストトルクTaが電気パワーステアリング26によって発生させられることとなる。
したがって、本実施形態によれば、電気パワーステアリング26のそもそもの利点を享受しつつ、電気パワーステアリング26によってトルク変化低減制御を適度な応答性のもとに実行することが容易となる。
ここで、図31の予測トルク決定ルーチンを説明する。
本実施形態においては、当該操舵装置が、トルク変化低減制御が実行されない状態においてアクティブ操舵が実行されると、当該操舵装置の内部における摩擦力の変化に起因する第1変化と、車輪20のタイヤと路面との間の摩擦力の変化に起因する第2変化とが重畳的に操舵トルクTsに発生する操舵特性を有している。
この操舵特性は、図34に示すように、横軸には操舵角θs(またはピニオン角θpin(すなわち、車輪20の転舵角))、縦軸には操舵トルクTsが取られた座標系において、操舵トルクTsが操舵角θsの変化に対して有限の傾きとヒステリシスとを有して変化することとして表わされる。
そのため、本実施形態においては、トルク変化低減制御なしでアクティブ操舵が実行されると、図34に示すように、ヒステリシスの幅に基づく第1変化(前述の部材間摩擦力の変化に基づく変化)ΔT1と、傾きに基づく第2変化(前述のタイヤ−路面間摩擦力の変化に基づく変化)ΔT2とが重畳的に操舵トルクTsに発生してしまう。
以上、操舵角θsと操舵トルクTsとの関係を図34に示すグラフを用いて説明したが、保舵状態においてアクティブ操舵が実行されると、操舵角θsは変化せずにピニオン角θpinが変化する。このときのピニオン角θpinと操舵トルクTsとの関係は、図34に示すグラフにおいて操舵角θsをピニオン角θpinに置換したものに相当する。
図35には、操舵角θsと操舵トルクTsとの関係が、第1変化ΔT1の量に着目してグラフで表わされている。このグラフから明らかなように、操舵トルクTsの第1変化ΔT1の量は、操舵角θsの変化が開始されるタイミングによって異なる。このことは後に詳述する。
そして、本実施形態においては、第1変化ΔT1および第2変化ΔT2のうち第1変化ΔT1が抑制されるように、前記予測トルクTaEが決定される。
図31の予測トルク決定ルーチン実行時には、まず、S1101において、操舵角センサ72によって操舵角θsが検出される。次に、S1102において、ピニオン角センサ102によってピニオン角θpinが検出される。
続いて、S1103において、操舵角θsの今回検出値から前回検出値を引き算することによって操舵角速度ωsが取得される。その後、S1104において、ピニオン角θpinの今回値から前回値を引き算することによってピニオン角速度ωpinが取得される。
続いて、S1105において、前述の部材間摩擦力に基づいてステアリングホイール14に発生する部材間摩擦トルクTfricがROM86またはRAM88から読み込まれる。本実施形態においては、部材間摩擦トルクTfricが固定値としてROM86に予め記憶されている。部材間摩擦トルクTfricは、図35に示すように、操舵トルクTsに関するヒステリシスの幅の半値を意味する。
図35には、さらに、次の操舵特性も示されている。すなわち、理想的な中立保舵状態(操舵トルクTsがヒステリシスの幅の中心に位置する状態)において、操舵トルクTsが増加する向きにアクティブ操舵が開始されたと仮定すれば、操舵トルクTsがΔT1aだけ増加するのである。この場合には、部材間摩擦トルクTfricと同じ量、操舵トルクTsが増加する。
これに対し、操舵状態に近い保舵状態(操舵トルクTsがヒステリシスの幅の端位置に位置する状態)において、操舵トルクTsが増加する向きにアクティブ操舵が開始されたと仮定すれば、操舵トルクTsがΔT1bだけ増加する。すなわち、部材間摩擦トルクTfricの2倍と同じ量、操舵トルクTsが増加するのである。
いずれの場合にも、アクティブ操舵に起因して操舵トルクTsが変化する向きは、アクティブ操舵開始前におけるステアリングホイール14の操作状態と、そのアクティブ操舵開始後における車輪20の転舵状態との関係に応じて変化する。
以上説明した知見に基づき、図31のS1106においては、S1105において読み込まれた部材間摩擦トルクTfricに乗じられる係数Kが決定される。
具体的には、図36に表で表わされている規則に従って係数Kが、+2、+1、0、−1および−2のいずれかとして決定される。その規則は、ステアリングホイール14の操作状態(変位状態)と車輪20の転舵状態(車輪20、ラック軸30またはピニオン軸32の変位状態)との関係が場合分けされ、各場合ごとに係数Kが特定される。以下、具体的に説明する。
(1) 第1の場合、すなわち、ステアリングホイール14が保持状態にあるために操舵角速度ωsが0であり、かつ、ピニオン軸32が右きり状態にあるためにピニオン角速度ωpinの符号が正である場合には、係数Kが「+1」に決定される。
(2) 第2の場合、すなわち、ステアリングホイール14が保持状態にあるために操舵角速度ωsが0であり、かつ、ピニオン軸32が左きり状態にあるためにピニオン角速度ωpinの符号が負である場合には、係数Kが「−1」に決定される。
(3) 第3の場合、すなわち、ステアリングホイール14が左きり状態にあるために操舵角速度ωsの符号が負であり、かつ、ピニオン軸32が保舵状態にあるためにピニオン角速度ωpinが0である場合には、係数Kが「+1」に決定される。
(4) 第4の場合、すなわち、ステアリングホイール14が左きり状態にあるために操舵角速度ωsの符号が負であり、かつ、ピニオン軸32が右きり状態にあるためにピニオン角速度ωpinの符号が正である場合には、係数Kが「+2」に決定される。
(5) 第5の場合、すなわち、ステアリングホイール14が右きり状態にあるために操舵角速度ωsの符号が正であり、かつ、ピニオン軸32が保舵状態にあるためにピニオン角速度ωpinが0である場合には、係数Kが「−1」に決定される。
(6) 第6の場合、すなわち、ステアリングホイール14が右きり状態にあるために操舵角速度ωsの符号が正であり、かつ、ピニオン軸32が左きり状態にあるためにピニオン角速度ωpinの符号が負である場合には、係数Kが「−2」に決定される。
以上説明した規則に従って係数Kが決定されれば、その後、図31のS1107において、その決定された係数Kに、前記読み込まれた部材間摩擦トルクTfricが乗じられることにより、予測トルクTaEが決定される。その決定された予測トルクTaEが電気パワーステアリング26によって実現されれば、アクティブ操舵に起因する部材間摩擦力の発生に伴う操舵トルクTsの変化が抑制される。
以上で、この予測トルク決定ルーチンの一回の実行が終了する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ82が図4に示すアクティブ操舵プログラムを実行することにより、前記(24)項における「アクティブ操舵」の一例が実行され、また、コンピュータ82が図5におけるS33ないしS36と図30に示すトルク変化低減制御プログラムとを実行することにより、同項における「操舵トルク制御」の一例が実行されるのである。
さらに、本実施形態においては、コンピュータ82のうち図31の予測トルク決定ルーチンを実行する部分が前記(25)項における「予測値決定手段」の一例を構成し、コンピュータ82のうち図30におけるS905およびS906を実行する部分が前記(26)項における「補助指令決定手段」の一例を構成しているのである。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
本発明の第1実施形態に従う車両用操舵装置のハードウエア構成を示す斜視図である。 図1に示す車両用操舵装置を示す部分正面断面図である。 図1および図2に示す車両用操舵装置の電気系統を示すとともにECU80の構成を示すブロック図である。 図3におけるコンピュータ82によって実行されるアクティブ操舵プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図3におけるコンピュータ82によって実行されるパワーアシスト制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図5のパワーアシスト制御プログラムの実行に利用される操舵トルクTsとアシストトルクTaとの間における第1の対応関係を表すグラフである。 図3におけるコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図7のトルク変化低減制御プログラムの実行によって実行されるトルク変化低減制御の内容を表すブロック線図である。 図7のトルク変化低減制御プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。 本発明の第2実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図10のトルク変化低減制御プログラムの実行によって実行されるトルク変化低減制御の内容を表すブロック線図である。 図10のトルク変化低減制御プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。 本発明の第3実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図13におけるS311においてゲインを設定するために参照される規則の一例を表すグラフである。 図13のトルク変化低減制御プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。 第3実施形態の効果を比較例と対比して説明するためのグラフである。 本発明の第4実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行される制御量補正プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図17のS402およびS404において部分評価値EθおよびEωを決定するためにそれぞれ参照される2つの規則を例示的に表すグラフである。 本発明の第5実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図19のS514においてゲインを設定するために参照される規則の一例を表すグラフである。 図19のトルク変化低減制御プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。 本発明の第6実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図22のS606においてゲインを設定するために参照される規則の一例を表すグラフである。 図22のトルク変化低減制御プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。 本発明の第7実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図25のS705においてゲインを設定するために参照される規則の一例を表すグラフである。 本発明の第8実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図27のS805においてゲインを設定するために参照される規則の一例を表すグラフである。 図27のトルク変化低減制御プログラムの一実行例を説明するためのグラフである。 本発明の第9実施形態に従う車両用操舵装置のECU80のコンピュータ82によって実行されるトルク変化低減制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。 図30のS903の詳細を予測トルク決定ルーチンとして概念的に表すフローチャートである。 図30のS904において利用されるアシストトルクTaと操舵トルクTsとの間における第2の対応関係の2つの例をそれぞれ表すグラフである。 第9実施形態の効果を説明するためのグラフである。 図31の予測トルク決定ルーチンの実行によって予測トルクTaEが決定される原理を説明するためのグラフである。 図31の予測トルク決定ルーチンの実行によって予測トルクTaEが決定される原理を説明するための別のグラフである。 図31のS1106において係数Kを決定するために参照される規則の一例を表形式で表す図である。
符号の説明
14 ステアリングホイール
16 ステアリング軸
20 車輪
22 ギヤ比変更機構
24 操舵機構
26 電気パワーステアリング
30 ラック軸
32 ピニオン軸
42 モータ
46 減速機
80 ECU
82 コンピュータ

Claims (26)

  1. 運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を変化させて車両を操舵する車両用操舵装置であって、
    可動部材によって前記車輪を転舵する転舵機構と、
    前記可動部材を駆動し得るモータにより、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操舵速度と前記可動部材の変位速度との比率を変更する比率変更機構と、
    運転者が前記ステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを当該車両用操舵装置に付与するアシスト機構と、
    それら比率変更機構とアシスト機構とを電気的に制御するコントローラであって、(a)前記比率変更機構を介して前記転舵角を変化させるアクティブ操舵と、(b)そのアクティブ操舵の実行に関連して、そのアクティブ操舵に起因する前記操舵トルクの変化を低減させるために前記操舵トルクを前記アシスト機構を介して制御する操舵トルク制御とを行い、かつ、その操舵トルク制御が、前記操舵トルクの実際値である実操舵トルクと前記操舵トルクの目標値である目標操舵トルクとの偏差に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する偏差フィードバック制御と、前記実操舵トルクの時間微分値と前記偏差の時間微分値との少なくとも一方に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する微分フィードバック制御とのうちの少なくとも一方を有するものと
    を含む車両用操舵装置。
  2. 前記操舵トルク制御が、前記偏差フィードバック制御を有するものであり、
    前記コントローラが、予め定められた第1条件が成立したときにおける前記実操舵トルクに基づいて前記目標操舵トルクを決定する目標操舵トルク決定手段を含む請求項1に記載の車両用操舵装置。
  3. 前記第1条件が、前記アクティブ操舵の開始時に成立するものである請求項2に記載の車両用操舵装置。
  4. 前記目標操舵トルク決定手段が、前記アクティブ操舵の開始時における前記実操舵トルクと実質的に等しくなるように前記目標操舵トルクを決定するものである請求項3に記載の車両用操舵装置。
  5. 前記コントローラが、さらに、前記アクティブ操舵の同じ実行期間において、前記目標操舵トルク決定手段によって目標操舵トルクが決定された後に、予め定められた第2条件が成立したときには、そのときにおける前記実操舵トルクに基づき、前記決定された目標操舵トルクを更新する目標操舵トルク更新手段を含む請求項2ないし4のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  6. 前記第2条件が、運転者が前記ステアリング操作部材を保持する保舵状態の開始時に成立するものである請求項5に記載の車両用操舵装置。
  7. 前記コントローラが、前記アクティブ操舵の一回の実行期間の全体を通じて、前記操舵トルク制御を継続的に実行する第1操舵トルク制御手段を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  8. 前記コントローラが、前記アクティブ操舵の一回の実行期間において、前記操舵トルク制御を1回のみまたは離散的に複数回、かつ、各回の操舵トルク制御の継続時間が前記アクティブ操舵の実行期間の長さより短くなるように実行する第2操舵トルク制御手段を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  9. 前記操舵トルク制御が、前記偏差フィードバック制御を有するものであり、
    前記第2操舵トルク制御手段が、前記アクティブ操舵の実行に伴って前記実操舵トルクが時間と共に変化する変化勾配が、前記操舵トルク制御を実行しないと、設定勾配以上となる可能性がある場合に、前記偏差フィードバック制御を実行する偏差フィードバック制御手段を含む請求項8に記載の車両用操舵装置。
  10. 前記偏差フィードバック制御手段が、前記アクティブ操舵の開始時と、その終了時と、そのアクティブ操舵中において前記転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時とのうちの少なくとも一つにおいて、前記偏差フィードバック制御を実行するものである請求項9に記載の車両用操舵装置。
  11. 前記偏差フィードバック制御手段が、少なくとも前記車輪切り返し時に前記偏差フィードバック制御を実行するために、前記転舵角の速度に関連する物理量に基づき、前記偏差フィードバック制御を実行すべき時期であるか否かを判定するものである請求項10に記載の車両用操舵装置。
  12. 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるために前記アシスト機構に発生させるアシストトルクであるトルク変化低減アシストトルクを、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操作状態に応答するように変更する第1トルク変更手段を含む請求項1ないし11のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  13. 前記第1トルク変更手段が、前記ステアリング操作部材が中立位置に近いほど前記トルク変化低減アシストトルクを増加させることと、前記操作状態が運転者が前記ステアリング操作部材を保持する保舵状態に近いほど前記トルク変化低減アシストトルクを増加させることとの少なくとも一方を行うものである請求項12に記載の車両用操舵装置。
  14. 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の終了時期を、その操舵トルク制御を開始させる原因となったアクティブ操舵の終了時期より遅い時期まで遅延させる遅延制御を行う遅延制御手段を含む請求項1ないし13のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  15. 前記操舵トルク制御が、前記微分フィードバック制御を有するものであり、
    前記コントローラが、前記アクティブ操舵の実行に伴って前記転舵角が時間と共に変化する変化勾配が、前記操舵トルク制御を実行しないと、設定勾配以上となる場合に、前記微分フィードバック制御を実行する微分フィードバック制御手段を含む請求項1ないし14のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  16. 前記微分フィードバック制御手段が、前記アクティブ操舵の開始時と、その終了時と、そのアクティブ操舵中において前記転舵角が変化する向きが反転する車輪切り返し時とのうちの少なくとも一つにおいて、前記微分フィードバック制御を実行するものである請求項15に記載の車両用操舵装置。
  17. 前記コントローラが、前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるために前記アシスト機構に発生させるトルク変化低減アシストトルクを前記比率変更機構の作動状態に応答するように変更する第2トルク変更手段を含む請求項1ないし16のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  18. 前記第2トルク変更手段が、前記モータの作動加速度が大きいほど前記トルク変化低減アシストトルクを増加させるものである請求項17に記載の車両用操舵装置。
  19. さらに、前記実操舵トルクを直接検出する操舵トルクセンサを含む請求項1ないし18のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  20. 前記コントローラが、前記モータの駆動電流を、前記実操舵トルクを反映する情報として用いるものである請求項1ないし18のいずれかに記載の車両用操舵装置。
  21. 運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を変化させて車両を操舵する車両用操舵装置であって、
    可動部材によって前記車輪を転舵する転舵機構と、
    前記可動部材を駆動し得るモータにより、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操舵速度と前記可動部材の変位速度との比率を変更する比率変更機構と、
    運転者が前記ステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを当該車両用操舵装置に付与するアシスト機構と、
    それら比率変更機構とアシスト機構とを電気的に制御するコントローラであって、(a)前記比率変更機構を介して前記転舵角を変化させるアクティブ操舵と、(b)そのアクティブ操舵の実行に関連して、前記モータの駆動電流と、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操作状態とに基づき、前記アクティブ操舵に起因する前記操舵トルクの変化を低減させるために前記操舵トルクを前記アシスト機構を介して制御する操舵トルク制御とを行うものと
    を含む車両用操舵装置。
  22. 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるために前記アシスト機構に発生させるべきトルク変化低減アシストトルクを前記モータの駆動電流が大きいほど増加するように変更する第3トルク変更手段を含む請求項21に記載の車両用操舵装置。
  23. 前記コントローラが、さらに、前記操舵トルク制御の実行中、前記トルク変化低減アシストトルクを、前記ステアリング操作部材が中立位置に近いほど増加するように変更することと、前記操作状態が運転者が前記ステアリング操作部材を保持する保舵状態に近いほど増加するように変更することとの少なくとも一方を行う第4トルク変更手段を含む請求項22に記載の車両用操舵装置。
  24. 運転者によるステアリング操作部材のステアリング操作に基づいて車輪の転舵角を変化させて車両を操舵する車両用操舵装置であって、
    可動部材によって前記車輪を転舵する転舵機構と、
    前記可動部材を駆動し得るモータにより、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操舵速度と前記可動部材の変位速度との比率を変更する比率変更機構と、
    運転者が前記ステアリング操作部材に加える操舵トルクを軽減するためのアシストトルクを当該車両用操舵装置に付与するアシスト機構であって、前記操舵トルクが0近傍で変化しても前記アシストトルクが変化しない不感帯を有するようにそれら操舵トルクとアシストトルクとの間に設定された対応関係に従い、入力されたアシスト指令であって前記操舵トルクを表わすものに応じ、そのアシスト機構が出力すべき前記アシストトルクを決定するものと、
    それら比率変更機構とアシスト機構とを電気的に制御するコントローラであって、(a)前記比率変更機構を介して前記転舵角を変化させるアクティブ操舵と、(b)そのアクティブ操舵の実行に関連して、前記アシスト指令を前記アシスト機構に対して出力することにより、前記アクティブ操舵に起因する前記操舵トルクの変化を低減させるために前記操舵トルクを前記アシスト機構を介して制御する操舵トルク制御とを行うものと
    を含み、そのコントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、
    前記アクティブ操舵に起因して前記操舵トルクに発生する変化を低減させるトルク変化低減アシストトルクを前記アシスト機構によって発生させるためにそのアシスト機構に対して出力すべきトルク変化低減アシスト指令を、前記不感帯から外れた大きさを有する前記操舵トルクを表わす基本指令と、その基本指令に対して追加的な補助指令との組合せとして決定し、
    前記トルク変化低減アシストトルクの予測値に対応する前記操舵トルクをみかけ操舵トルクとして、前記対応関係と実質的に同じ対応関係に従って決定し、その決定されたみかけ操舵トルクを表わす前記アシスト指令として前記基本指令を決定し、
    前記操舵トルクの実際値である実操舵トルクに基づいて前記補助指令を決定するものである車両用操舵装置。
  25. 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行時に、運転者が前記ステアリング操作部材を操作する操作状態と前記転舵機構の作動状態と当該車両用操舵装置の操舵特性との少なくとも一つに基づき、前記アシスト機構のフィードフォワード制御によって実現すべき前記トルク変化低減アシストトルクとして前記予測値を決定する予測値決定手段を含む請求項24に記載の車両用操舵装置。
  26. 前記コントローラが、前記操舵トルク制御の実行中、前記実操舵トルクと前記操舵トルクの目標値である目標操舵トルクとの偏差に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する偏差フィードバック制御と、前記実操舵トルクの時間微分値と前記偏差の時間微分値との少なくとも一方に基づいて前記アシスト機構をフィードバック制御する微分フィードバック制御とのうちの少なくとも一方を実行するために前記アシスト機構に対して追加的に出力すべき前記アシスト指令として前記補助指令を決定する補助指令決定手段を含む請求項24または25に記載の車両用操舵装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101619646B1 (ko) * 2014-11-24 2016-05-10 현대자동차주식회사 능동 전륜 조향 시스템의 리드스티어 제어 방법
US10118638B2 (en) * 2015-12-07 2018-11-06 Hyundai Mobis Co., Ltd. Motor driven power steering system and control method thereof

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