JP5199742B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
これらの現象が発生すると、運転者は、操舵ハンドルの操作感覚に違和感を抱いてしまうおそれがある。
具体的には、切り替わった操舵トルク調整モードでは、操舵反力は伝達比可変用モータを駆動する電流によって影響されるが、この電流は操舵トルク値を低減するように調整されるので操舵反力は重くならず、例えば、速い−遅い−速いというようなハンドル操舵に対し、操舵反力がうねるように変動することはない。また、例えば、急激かつ大きな操舵速度で操舵ハンドルを回し始めると、最初だけ操舵反力が大きくなりハンドル操舵が引っかかり気味(詰まり気味)になるというような事象も、伝達比可変用モータを駆動するために流れる電流を調節することにより生じない。
さらに、伝達比調整モードから操舵トルク調整モードに切り替わるときに、伝達比可変用モータへの電流値を伝達比調整モード時の電流値から連続的に変化するように制御するので、切り替わり時に操舵反力の急変を生じず、運転者に違和感を与えない。
また、モード切替判定値が所定の閾値に満たないときであって、操舵トルク調整モードに切り替えられており、かつ、今回の第1の目標電流値と、前回の第2の目標電流値との差分の絶対値が、所定の電流閾値以下の場合に、操舵トルク調整モードから伝達比調整モードへ戻す切り替えを切替手段が行うため、操舵反力のジャンプを運転者に感じさせずに、快適な操舵感を実現することができる。
次に、図1から図4を参照しながら本発明の第1の実施形態に係るステアリング装置について説明する。
(ステアリング装置)
先ず、図1を参照しながら適宜図3を参照して、ステアリング装置全体の構成を説明する。図2は可変伝達比機構制御ECUの機能構成ブロック図であり、図3は車速に応じて設定される目標伝達比の値を示す図である。
図1は第1の実施形態に係るステアリング装置の概略構成図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、操舵ハンドル2と、ラック&ピニオン機構3と、電動パワーステアリング装置(電動パワーステアリング)4と、可変伝達比機構5、とを備えている。
可変伝達比機構5は、操舵ハンドル2の回転軸とラック&ピニオン機構3のそれぞれに連結する差動ギアとしての遊星歯車機構31と、転舵輪の転舵角に対する操舵ハンドル2の操舵角(以下、操舵ハンドル角と称する)の伝達比を変化させるために遊星歯車機構31のリングギアを回動させる伝達比可変用モータ33と、伝達比可変用モータ33を駆動制御する可変伝達比機構制御ECU9を有している。
なお、後記するように第1の実施形態では可変伝達比機構制御ECU9A(図2参照)、第2の実施形態では可変伝達比機構制御ECU9C(図10参照)と、符号を使い分けるが、ここでは代表的に可変伝達比機構制御ECU9と表示する。
操舵トルク値Thは、EPS ECU25では補助力の方向や大きさの決定、具体的には、EPS用指示電流を決定するのに利用され、EPS ECU25に含まれるEPSモータ23を駆動する図示しない駆動回路においてEPS用指示電流にもとづいてEPS用指示Dutyを生成し、EPSモータ23をPWM(Pulse Width Modulation)駆動する。
操舵トルク値Thは、可変伝達比機構制御ECU9Aでは、後記する伝達比調整モードから操舵トルク調整モードへの切り替えに利用される。
伝達比可変用モータ33にはそのロータ軸の回転角度(以下、「実モータ角」と称する)θvmを検出するためのモータ角センサ35が設けられ、その信号が可変伝達比機構制御ECU9Aに入力される。
更に、可変伝達比機構制御ECU9Aには、図示省略の車速センサが取得した車速VSが、例えば、通信回線10を介して入力される。
ここで、α、βは定数である。
そして、伝達比Gは、次式で定義されるので、
G=θh/θP ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
目標伝達比GTとそのときの操舵ハンドル角θhから目標ピニオン角θTPは次式のように表される。
θTP=(1/GT)θh ・・・・・・・・・・・・・・(3)
そして、式(3)のθTPを式(1)のθPの代わりに代入すると、伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmは次式のように求まる。
θTvm=(1/β)・{(1/GT)−α}θh ・・・・(4)
次に、図2から図4を参照しながら可変伝達比機構制御ECUの詳細な機能構成について説明する。図4は操舵ハンドル角速度の絶対値に応じて設定される補正係数の値を示す図である。
前記したROMには可変伝達比制御用のプログラム及びデータが格納されており、CPU9aにおいてそのプログラムを実行することによって、図2に示した機能構成ブロックの各機能が実現される。
ちなみに、CPU9aに入力された操舵ハンドル角θhに対しては、図2に示す機能構成ブロック図では図示省略してあるが、操舵ハンドル角θhを時間微分して操舵ハンドル角速度(操舵速度)ωhを刻々算出し、後記する補正係数設定部20に入力する図示しない操舵ハンドル角速度算出部を有する。
伝達比調整モードについて説明する。先ず、目標伝達比設定部11では、車両の車速VSに応じた目標伝達比GTが設定され、目標モータ角設定部12Aへ出力される。車速VSが低車速域であれば、図3に示すように目標伝達比GTを小さく(クイックレシオ化)設定し、車速VSが高車速域であれば、目標伝達比GTを大きく(スローレシオ化)設定する。
ここで、目標電流値IT1には、絶対値の上限を規定する制限値が設けられている。
補正係数設定部20の詳細な機能については、後記するトルク調整モードの中で説明する。
このように、伝達比調整モードにおいては、実モータ角θvmのフィードバックと実電流値Imのフィードバックとが行われるので、実モータ角θvmを目標モータ角θTvmに一致させることができる、換言すれば、伝達比Gを目標伝達比GTに一致させることができる。
次に、操舵トルク調整モードについて図5のフローチャート参照しながら適宜図1、図2、図4を参照して説明する。図5は補正係数設定部における伝達比調整モードとトルク調整モードとの間の切り替え制御及び、トルク調整モードにおける第2の目標電流値の設定制御の流れを示すフローチャートである。
操舵トルク調整モードでは、操舵ハンドル2(図1参照)の操舵力が低減するように、補正係数設定部20において補正係数K1を設定し、乗算部19に出力し、前記伝達比可変用指示電流を調整する点が前記した伝達比調整モードと異なるだけで、他は伝達比調整モードと同じである。伝達比調整モードと重複する部分は説明を省略する。
補正係数K1にマイナス値を許容することで、目標電流値IT1に補正係数K1が乗算部19で乗算された結果の目標電流値IT2が目標電流値IT1の方向と逆転することを許容する。つまり、クイックレシオ方向への伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmをスローレシオ方向への伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmへ変更することを許容し、操舵反力を低減させる。
これは、目標伝達比設定部11で設定される目標伝達比GTが、車速VSが小さいほど目標伝達比GTを小さく、つまり、クイックレシオ側に設定するので、クイックレシオの度合いが強いほど、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が小さくても電動パワーステアリング装置4のEPSモータ23が追従できない傾向があるためである。
なお、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が所定の閾値ωhthを超えた領域での補正係数K1の傾きも車速VSに応じて変化させても良い。
以下に説明するフローチャートのステップS01からステップS13は補正係数設定部20において処理され、ステップS14,S15は乗算部19において処理される。ちなみに、ステップS16は、CPU9aにおける全体制御の中で行われる。
イグニッション・スイッチ(IG)がオンされると、可変伝達比機構制御ECU9Aは起動し、CPU9a(図2参照)において可変伝達比機構制御用のプラグラムがスタートすると、初期設定として伝達比調整モードの状態(IFLAG=0)であるかトルク調整モードの状態(IFLAG=1)であるかを示すフラグをリセットし、伝達比調整モードフラグとする(ステップS01、IFLAG=0)。そして、以後一定の周期でステップS02〜S16を繰り返し処理する。
ステップS02では、車速VS、操舵角速度ωh、操舵トルク値Th、位置F/B制御部14から出力された目標電流値IT1を読み込む。
つまり、操舵ハンドル2の急速な操舵操作により、操舵トルク値Thの絶対値が急上昇してモード切替判定値T*の閾値XTに達するよりも早い時点で、急速な操舵操作を検出して、トルク調整モードに切り替えることができる。
これは、車速VSをある値の低速状態で、そして、同じ操舵角速度ωhを仮定しても、路面の状態、乾燥しているか、濡れているか、舗装された路面か、舗装されていない地面か等の条件により転舵輪が転舵する時に必要な力が異なり、EPSモータ23の補助力が迅速に追従できない状態に柔軟に対処できるように、早めに伝達比調整モードからトルク調整モードに切り替えさせるためである。
このようにすることで、ハンドル操舵反力が急激に重くなるのを早目に回避することができる。
最初は運転者が操舵ハンドル2の操舵操作をしていないか、操舵操作をしていても操舵角速度ωhの絶対値が小さいので、操舵トルク値Thと操舵トルク微分値の合算値の絶対値(モード切替判定値)T*は閾値XT未満であり、ステップS05へ進む。
ステップS14では、IT2=K1×IT1とし、IT2を目標電流値として減算部15(図2参照)に出力する(ステップS15)。そして、ステップS16へ進み、イグニッション・スイッチがオフされているか否か(IG OFF?)をチェックし、IG OFFの場合(Yes)は、一連の制御を終了し、IG OFFでない場合(No)はステップS02に戻り、ステップS02〜S16を繰り返す。
この場合は、まだ、閾値ωhthに達していないと仮定してステップS09へ進み、補正係数K1=1.0とし、ステップS14へ進む。以後前記したようにステップS14〜S16へ進み、ステップS02に戻り、ステップS02〜S16を繰り返す。
ステップS11では、この一連の繰り返しにおける前回の目標電流値IT2と今回のステップS02で読み込んだ目標電流値IT1との差分の絶対値(|前回IT2−IT1|)が閾値ε以下か否かをチェックする。
閾値εを超える場合(No)は、トルク調整モードが継続していると判定されたことを意味し、ステップS07へ進んで、ステップS07〜S16を繰り返す。
閾値ε以下の場合(Yes)は、トルク調整モードが終了したと判定されたことを意味し、ステップS12へ進み、IFLAG=0(伝達比調整モード)として、ステップS13へ進み、更にステップS14〜S16へ進み、ステップS02に戻り、ステップS02〜S16を繰り返す。
ちなみに、閾値εは、操舵トルク反力のジャンプを運転者に感じさせないような値である。
ここで、本実施形態のフローチャートのステップS02が請求項に記載の操舵操作状態情報取得手段に対応し、ステップS03〜S05,S011が請求項に記載の切替手段に対応する。
図7の(a)は、操舵ハンドル角速度ωhの時間推移を示す図であり、(b)は、目標電流値IT1と目標電流値IT2の値の時間推移を示す図であり、(c)は、操舵トルク値Thの時間推移を示す図である。
その後、操舵ハンドル角速度ωhが正の値で減少したのを受けて、補正係数K1が1.0に徐々に近づいていく。つまり、目標電流値IT1と目標電流値IT2とが接近してくる。その差分の絶対値が閾値ε以下になる時間t2において、トルク調整モードから伝達比調整モードに切り替わり、以後、目標電流値IT2の値は目標電流値IT1と同じ値に戻る。
次に、図8、図9を参照しながら第1の実施形態の変形例について説明する。
第1の実施形態では、モード切替判定値T*を用いて、モードの切り替え制御を行ったが、それに限定されるものではない。
本変形例では、例えば、操舵操作状態情報である操舵トルク値Thを伝達比調整モードとトルク調整モードとの切り替えパラメータに用いるとともに、補正係数K1を決定する連続関数の変数としても用いるものである。以下に、本変形例における補正係数設定部20における補正係数K1の設定、及び乗算部19における目標電流値IT2を出力する制御の流れを説明する。
なお、本実施形態では、補正係数K1を算出する連続関数として操舵ハンドル角速度ωhを変数とする関数を用いたが、それに限定されるものではない。後記する本実施形態の変形例において、図9に示すような操舵トルク値Thを変数とする連続関数でも良いし、EPSモータ23のEPS ECU25で生成されるところの指示電流、又は指示電流により生成されるDUTY信号を用いても良い。
以下に説明するフローチャートのステップS111からステップS115は補正係数設定部20において処理され、ステップS116,S117は乗算部19において処理される。ちなみに、ステップS118は、CPU9aにおける全体制御の中でなされる。
イグニッション・スイッチ(IG)がオンされると、可変伝達比機構制御ECU9Aは起動し、CPU9a(図2参照)において可変伝達比機構制御用のプラグラムがスタートすると、一定の周期でステップS111〜S118を繰り返し処理する。
ステップS112では、ステップS111で読み込んだ車速VSに応じた補正係数データを参照する。具体的には、例えば、図9に示したような補正係数K1を決定する操舵トルク値の絶対値|Th|を変数とする連続関数が、所定の車速VSの異なる値に対して数種類用意され、ステップS111で読み込んだ車速VSの値に応じて内挿補間して、所望の連続関数が得られる。
補正係数K1にマイナス値を許容することで、目標電流値IT1に補正係数K1が乗算部19で乗算された結果の目標電流値IT2が目標電流値IT1の方向と逆転することを許容する。つまり、クイックレシオ方向への伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmをスローレシオ方向への伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmへ変更することを許容し、操舵反力を低減させる。
これは、目標伝達比設定部11で設定される目標伝達比GTが、車速VSが小さいほど目標伝達比GTを小さく、つまり、クイックレシオ側に設定するので、クイックレシオの度合いが強いほど、操舵トルク値の絶対値|Th|(操舵反力)が大きくなり、その傾向は運転者が体感的に直感し易いものであるからである。
なお、操舵トルク値の絶対値|ωh|が所定の閾値ωhthを超えた領域での補正係数K1の傾きも車速VSに応じて変化させても良い。
ステップS114では、補正係数K1=1.0とし、ステップS116へ進む。ステップS116では、IT2=K1×IT1とし、IT2を目標電流値として減算部15(図2参照)に出力する(ステップS117)。そして、ステップS118へ進み、イグニッション・スイッチがオフされているか否か(IG OFF?)をチェックし、IG OFFの場合(Yes)は、一連の制御を終了し、IG OFFでない場合(No)はステップS111に戻り、ステップS111〜S118を繰り返す。
また、伝達比調整モードとトルク調整モードの切替、及び補正係数K1の1.0未満への値の設定の両方に操舵トルク値Thを用いているので、伝達比調整モードとトルク調整モードとの切り替えがスムーズに行える。伝達比調整モードからトルク調整モードに切り替わったときにも、補正係数K1が連続して変化するので、操舵反力の急変を生じずに、クイックレシオの状態での操舵ハンドル2の急激な操作による操舵反力の急増を抑制できる。
次に、図10から図13を参照して、適宜図1を参照しながら本発明の第2の実施形態に係るステアリング装置について説明する。
図10は本実施形態に係るステアリング装置における可変伝達比機構制御ECUの機能構成ブロック図であり、図11は目標モータ角設定部の詳細な機能構成ブロック図であり、図12は目標モータ角設定部における目標ピニオン角を補正する制御の流れを示すフローチャートである。
図13の(a)は比較例における伝達比可変用モータの実モータ角θvmと目標モータ角θTvmの時間推移を示す図であり、(b)は第2の実施形態における伝達比可変用モータの実モータ角θvmと目標モータ角θTvmの時間推移を示す図である。
第1の実施形態又は第2の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
(1)前回の操舵操作状態と同じ場合は、前回の目標ピニオン角補正量Δθc1を今回の目標ピニオン角補正量Δθc2とし、加算部12dに入力する。
(2)前回の操舵操作状態から変化があり、かつ、今回の操舵操作状態が「ハンドル切り増し」の場合は、今回の目標ピニオン角補正量Δθc2=0.0とし、加算部12dに入力する。
(3)前回の操舵操作状態から変化があり、かつ、今回の操舵操作状態が「ハンドル切り戻し」又は「ハンドル停止又はハンドル中立」の場合は、その時の実ピニオン角θPと目標ピニオン角θTPとの差分(θP−θTP)を今回の目標ピニオン角補正量Δθc2として算出し、加算部12dに入力する。
詳細は、図12のフローチャートの説明の中で後記する。
目標モータ角算出部12bは、補正された目標ピニオン角θCTPを入力されて、式(1)において、θPの代わりにθCTPを代入して、次式のように目標モータ角θTvmを算出する。
θTvm=(θP−α・θh)/β・ ・・・・・・・・・・・・(5)
目標モータ角算出部12bで算出された目標モータ角θTvmは、減算部13に入力される。
以降は第1の実施形態と同じである。
この処理は、主に、目標ピニオン角補正量算出部12c、加算部12dで行われる。
目標モータ角設定部12Bは、IG ONすると、初期設定として前記した操舵操作状態を示す前回のフラグをIFLAGA=0(「ハンドル停止」の状態)とし、前回の目標ピニオン角の補正量ΔθC1を0.0とする。その後、一定の周期で、フローチャートの処理を行う。そして、IG OFFすると処理を停止する。
ステップS22では、目標ピニオン角補正量算出部12cは、操舵操作状態判定パラメータA*を算出する(A*=θh×ωh)。
ステップS23で正値でない場合(No)は、ステップS25へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、操舵操作状態判定パラメータA*が負値か否かをチェックする。
ステップS25において、操舵操作状態判定パラメータA*が負値の場合(Yes)はステップS26へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、IFLAG=−1(ハンドル切り戻し)とし、ステップS28へ進む。
ステップS25において、操舵操作状態判定パラメータA*が負値でない場合(No)はステップS27へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、IFLAG=0(ハンドル停止又はハンドル中立)とし、ステップS28へ進む。
同じ場合(Yes)はステップS29へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量ΔθC2を前回の補正量ΔθC1と同じとする(ΔθC2=ΔθC1)。
ステップS28において、操舵操作状態を示す前回のフラグとステップS24,S26,又はS27で設定された操舵操作状態を示す今回のフラグIFLAGBとが同じ値でない場合(No)は、ステップS32へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、今回の操舵操作状態を示すフラグが正値か否かをチェックする(IFLAGB>0?)。
ステップS32においてIFLAGBが正値でない場合(No)は、ステップS34へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量ΔθC2=θP−θTPとし、ステップS30へ進む。
ステップS31では、目標ピニオン角補正量算出部12cは、次の繰り返しに用いる前回の補正量ΔθC1を今回の補正量ΔθC2とし(ΔθC1=ΔθC2)、又、今回の操舵操作状態のフラグを次の繰り返しに用いる前回の操舵操作状態のフラグとする(IFLAGA=IFLAGB)。
以上で、一連の繰り返し処理を終わる。
その後、「切り増し」の状態が続くと、ステップS28からステップS29,S30へと進み、ステップS30では、θCTP=θTPとなり、ステップS31では、ΔθC1=0.0,IFLAGA=+1となる。
また、操舵ハンドル2の操舵操作状態が「ハンドル切り増し」から「ハンドル停止」の状態になっても、同様に、伝達比可変用モータ33の追従が遅れていた分の、以後の追従動作を停止する。
したがって、実ピニオン角θPが反映された補正された目標ピニオン角θCTPが目標モータ角算出部12bに出力され、それにもとづく目標モータ角θTvmは実モータ角θvmを反映したものとなる。
次に、図14から図16を参照しながら第2の実施形態の変形例について説明する。本変形例は、第2の実施形態における目標モータ角設定部12Bにおける目標ピニオン角を補正する図12の制御の流れを変更したものである。
図14、図15は、目標モータ角設定部における目標ピニオン角を補正する制御の流れを示すフローチャートである。図16の(a)は、操舵ハンドル角θhの時間推移を示すグラフであり、(b)は、操舵ハンドル角速度ωhの時間推移を示すグラフであり、(c)は、操舵操作状態を示すフラグの値の変化を示すグラフであり、(d)は、補正量ΔθC2の時間推移を示すグラフである。
本変形例は、図12のフローチャートにおいて、(a)操舵ハンドル角θhが0.0度の場合も、操舵操作状態が「ハンドル停止」と認識される点、(b)IG ON直後の「切り戻し」状態でも目標ピニオン角θTPと実ピニオン角θPの差分補正(ΔθC2)を行ってしまう点、(c)「ハンドル切り増し」→「ハンドル停止」及び「ハンドル切り戻し」の時には、常に目標ピニオン角θTPと実ピニオン角θPの差分補正(ΔθC2)を行ってしまい、「右ハンドル切り増し」→「ハンドル切り戻し」→「右又は左ハンドル切り増し」の連続操作が続く場合、「ハンドル切り戻し」の間一定値の差分補正(ΔθC2)を行っていたものが、「右又は左ハンドル切り増し」に移行した途端、差分補正(ΔθC2)がゼロになり、運転者に操舵トルク反力の違和感を与える可能性がある点を改善したものである。
目標モータ角設定部12Bは、IG ONすると、初期設定として前記した操舵操作状態を示す前回のフラグを0(IFLAGA=0(「ハンドル停止」の操舵操作状態))とし、IG ON直後を示すフラグを0(IFLAGC=0)とし、前回の目標ピニオン角の補正量ΔθC1を0.0とする(ステップS41)。
ステップS43では、目標ピニオン角補正量算出部12cは、操舵操作状態判定パラメータA*を算出する(A*=θh×ωh)。
ステップS44で、前記条件を満たさない場合(No)は、ステップS46へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、操舵操作状態判定パラメータA*が負値で、かつ、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が所定の閾値ε0より大きいという条件を満たすか否かをチェックする。
ステップS46において、前記条件を満たさない場合(No)はステップS48へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が所定の閾値ε0以下か否かをチェックする。
ステップS48において、|ωh|が所定の閾値ε0以下の場合(Yes)は、ステップS49へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、IFLAG=0(ハンドル停止)とし、ステップS50へ進む。ステップS48において、|ωh|が所定の閾値ε0より大きい場合(No)は、ステップS45へ進む。
ステップS51では、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量ΔθC2=0.0
とし、次いで、IFLAGBが正値か否かをチェックする(ステップS52)。ステップS52においてFLAGBが正値の場合(Yes)はステップS53へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、IG ON 直後を示すフラグを変更(IFLAGC=1)し、ステップS54へ進む。ステップS51においてFLAGBが正値でない場合(No)はステップS54へ進む。
ステップS55では、目標ピニオン角補正量算出部12cは、前回の補正量ΔθC1=ΔθC2,IFLAGA=IFLAGBとし、符号(B)に従ってステップS42に戻る。
ここで、ステップS42〜ステップS50、ステップS51〜S55の繰り返しは、IG ON後に初めて操舵操作状態が「切り増し」の状態になるまで繰り返され、この間の補正量ΔθC2は、強制的に0.0とされる。これは、IG ON直後に目標ピニオン角θTPに対して実ピニオン角θPの追従遅れ補正を行うのは、停車時の操舵ハンドル角θhの位置から変更しようとするときに、迅速な応答をさせるのに不都合なので、操舵操作状態に関係なく、追従遅れ補正を行わないことを意味する。
ステップS56において同じ場合(Yes)は、ステップS57へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、IFLAGBの値が+1,0,−1のいずれであるかをチェックする。ステップS57においてIFLAGBの値が+1,0の場合は、ステップS58へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量を前回と同じとし(補正量ΔθC2=ΔθC1)、ステップS63へ進む。ステップS57においてIFLAGBの値が−1の場合は、ステップS59へ進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量を前回の補正量ΔθC1にe-Δtを乗じ(補正量ΔθC2=ΔθC1×e-Δt)、ステップS63へ進む。
ちなみに、IFLAGB=+1の場合は、前回の補正量ΔθC1=0.0であり、IFLAGB=0又はIFLAGB=−1の場合は、後記するがステップS61で設定される値(θP−θTP)である。
ステップS64では、目標ピニオン角補正量算出部12cは、次の繰り返しに前回の補正量ΔθC1として用いる今回の補正量ΔθC2を登録し(ΔθC1=ΔθC2)、又、次の繰り返しに用いる前回の操舵操作状態のフラグとして用いる今回の操舵操作状態のフラグを登録する(IFLAGA=IFLAGB)。そして、ステップS65において目標ピニオン角補正量算出部12cは、IG OFFか否かをチェックし、IG OFFの場合(Yes)は、一連の処理を終了し、IG OFFでない場合(No)は、ステップS42に戻り、ステップS42〜S50,S56〜S65の一連の処理を繰り返す。
その場合、ステップS42〜S49でIFLAGB=+1となり、ステップS50からステップS56へ進み、IFLAGB=IFLAGA=+1で、ステップS57,S58へと進み、続いてステップS63へと進む。
ステップS63では、ステップS51(ΔθC2=0.0)及びステップS55を通じて、ステップS58で設定された今回の補正量ΔθC2(=ΔθC1=0.0)を目標ピニオン角θTPに加算し、補正された目標ピニオン角θCTPとする(θCTP=θTP+ΔθC2)。
ステップS64では、ΔθC1=ΔθC2とし、又、今回の操舵操作状態のフラグを次の繰り返しに用いる前回の操舵操作状態のフラグとする(IFLAGA=IFLAGB)。
次いでステップS65に進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、IG OFFか否かをチェックし、IG OFFの場合(Yes)は、一連の処理を終了し、IG OFFでない場合(No)は、符号(D)に従ってステップS42に戻り、繰り返す。
この場合、ステップS42〜S49でIFLAGB=+1となり、ステップS50からステップS56へ進み、ステップS56においてIFLAGA≠IFLAGB(No)となり、ステップS60へと進み、今回の操舵操作状態を示すフラグが正値か否かをチェックする(IFLAGB>0?)。
ステップS60において正値の場合(Yes)は、ステップS62へ進み、正値でない場合(No)は、ステップS61へ進む。
ここでは、前記したようにIFLAGBは正値ではないので、ステップS60においてNoで、ステップS61へ進み、補正量ΔθC2=θP−θTPとなり、ステップS63へ進む。この補正量ΔθC2=θP−θTPは、ステップS63におけるθCTP=θTP+ΔθC2と相俟って、この時点で実ピニオン角θPが目標ピニオン角θTPに対して追従遅れしていた分を補正して、現時点の実ピニオン角θPそのものを現時点の補正された目標ピニオン角θCTPに置き換えることを意味する。
この場合、ステップS42〜S49でIFLAGB=−1となり、ステップS50からステップS56へ進み、IFLAGA=IFLAGB=−1で、ステップS57,S59へと進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量ΔθC2=Δθc1×e-Δtとする。
ここで、e-ΔtのΔtは、ステップS61で設定したIFLAGB=−1の操舵状態(「ハンドル切り戻し」)に移行した最初のタイミングで設定した実ピニオン角θPの目標ピニオン角θTPに対する追従遅れ分の補正量ΔθC2に対して、繰り返し回数ごとに所定のタイムステップΔt分だけ、e-Δtのファクタで補正量ΔθC2を減衰させることを意味する。
「ハンドル切り戻し」の操舵操作状態が継続している間、新たな操舵ハンドル角θhに応じて、目標伝達比GTが設定され、それに応じた目標ピニオン角θTPも新たに更新されるが、その新たな目標ピニオン角θTPに加算される補正量ΔθC2は、ステップS59を繰り返すごとに絶対値が減少していくことになる。
ステップS59の後、前記したようにステップS63〜S65へと進み、ステップS42に戻って、一連の繰り返し処理を行う。
ステップS42〜S49でIFLAGB=0となり、ステップS50からステップS56へ進み、IFLAGA=IFLAGB=0で、ステップS57,S58へと進み、目標ピニオン角補正量算出部12cは、補正量ΔθC2=Δθc1とする。
ここで、「ハンドル停止」の操舵操作状態が継続している間、目標ピニオン角θTPも同一値で更新されるが、その目標ピニオン角θTPに加算される補正量ΔθC2は、ステップS59で一度設定された同じ値が、ステップS58が繰り返されるたびに用いられることを意味する。つまり、補正された目標ピニオン角θCTPは同一値のまま維持され、実ピニオン角θPが目標ピニオン角θTPに対して追従遅れしていた分がキャンセルされ続ける。
ステップS58の後、前記したようにステップS63〜S65へと進み、ステップS42に戻って、一連の繰り返し処理を行う。
ステップS42〜S49でIFLAGB=+1となり、ステップS50からステップS56へ進み、IFLAGA=0、又は−1で、かつ、IFLAGB=+1で、ステップS60へと進み、更にステップS62へ進む。
ステップS62では、補正量ΔθC2=0.0となり、ステップS63へ進む。そして、前記したようにステップS63〜S65へと進み、ステップS42に戻って、一連の繰り返し処理を行う。
そして、「ハンドル切り増し」の操舵操作状態が計測した後の「ハンドル切り戻し」の操舵操作状態において、実ピニオン角θPの目標ピニオン角θTPに対する追従遅れが生じたときに、補正量ΔθC2が設定されるが、図16の(d)に実線示すようにその補正量は繰り返し処理の中で徐々に減衰し、続く「ハンドル切り増し」の操舵操作状態に切り替わるタイミングで補正量ΔθC2=0.0に置き換えかえられるときの補正量ΔθC2のジャンプ量が小さくなる。したがって、運転者に与える違和感をなくすことができる。ちなみに、図12のフローチャートの制御の場合を図16の(d)に2点鎖線で示す。
その結果、運転者に違和感を与える量が低減される。
次に、図17から図19を参照しながら第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第2の実施形態における目標モータ角設定部12Bを目標モータ角設定部12Cに変更したものであり、その他は第2の実施形態又はその変形例と同じである。
図17は、第3の実施形態における目標モータ角設定部のブロック機能構成図である。
図18、図19は、目標モータ角設定部における目標伝達比を変更する制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態における目標モータ角設定部12Cは、図17に示すように操舵状態判定部12e、目標伝達比変更部12f、目標モータ角算出部12gから構成されている。
そして、目標伝達比変更部12fは、IG ON直後ではない状態のとき(IFLGC=1のとき)であって、
(2)「ハンドル切り増し」やハンドルが略直進を示す場合は、「ハンドル切り増し」の操舵操作後の「ハンドル切り戻し」や「ハンドル停止」を示すフラグをリセットし(IFLAGD=0)、目標伝達比設定部11において車速VSに応じて設定される目標伝達比GTをそのまま目標伝達比GXとして目標モータ角算出部12gに出力し、
(3)「ハンドル切り増し」後の「ハンドル切り戻し」又は「ハンドル停止」の状態の場合は、「ハンドル切り増し」の操舵操作後の「ハンドル切り戻し」や「ハンドル停止」を示すフラグを設定(IFLAGD=1)し、その最初の時点において、操舵ハンドル角θhと実ピニオン角θPの比で定まる目標伝達比GXを算出して目標モータ角算出部12gに目標伝達比GXを出力し、IFLAGD=1が継続する間、その同じ目標伝達比GXを目標モータ角算出部12gに出力し続ける。
この処理は、主に、操舵状態判定部12e、で行われる。
目標モータ角設定部12Cは、IG ONすると、目標伝達比変更部12fにおいて、初期設定としてIG ON直後を示すフラグを0(IFLAGC=0)とし、「ハンドル切り増し」後の「ハンドル切り戻し」又は「ハンドル停止」の状態であることを示すフラグ(IFLAGD)を0(IFLAGD=0)とする(ステップS71)。
ステップS73では、操舵状態判定部12eは、操舵操作状態判定パラメータA*を算出する(A*=θh×ωh)。
ステップS74で、前記条件を満たさない場合(No)は、ステップS76へ進み、操舵状態判定部12eは、操舵操作状態判定パラメータA*が負値で、かつ、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が所定の閾値ε0より大きいという条件を満たすか否かをチェックする。
ステップS76において、前記条件を満たさない場合(No)はステップS78へ進み、操舵状態判定部12eは、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が所定の閾値ε0以下か否かをチェックする。
ステップS78において、|ωh|が所定の閾値ε0以下の場合(Yes)は、ステップS79へ進み、操舵状態判定部12eは、IFLAG=0(ハンドル停止)とし、ステップS80へ進む。ステップS78において、|ωh|が所定の閾値ε0より大きい場合(No)は、ステップS75へ進み、更にステップS80へ進む。
ステップS81では、目標伝達比変更部12fは、IFLAGBが正か否かをチェックする。正の場合(Yes)は、ステップS82へ進み、正でない場合(No)はステップS83へ進む。
ステップS82では、目標伝達比変更部12fは、IG ON 直後を示すフラグを変更(IFLAGC=1)し、ステップS83へ進む。
ここで、ステップS72〜ステップS80、ステップS81,S83の繰り返しは、IG ON後に初めて操舵操作状態が「切り増し」の状態になるまで繰り返され、この間の目標伝達比変更部12fから目標モータ角算出部12gに出力される目標伝達比GXは、目標伝達比GTのままとされる。これは、IG ON直後に目標伝達比GTから求まる目標ピニオン角θTPに対して実ピニオン角θPの追従遅れ補正を行うことは、停車時の操舵ハンドル角θhの位置から変更しようとするときに、迅速な応答をさせるのに不都合なので、操舵操作状態に関係なく、目標伝達比GXは、目標伝達比GTのままとし追従遅れ補正を行わないようにすることを意味する。
ステップS85では目標伝達比変更部12fは、ステップS72で読み込んだ目標伝達比設定部11からの目標伝達比GTをそのまま目標伝達比GXとして、目標モータ角算出部12gに出力し、ステップS88に進む。
ステップS84においてYesでステップS86へ進むと、目標伝達比変更部12fは、IFLAGBが正か否かをチェックする。正の場合(Yes)は、ステップS87へ進み、ステップS72で読み込んだ目標伝達比設定部11からの目標伝達比GTをそのまま目標伝達比GXとして、目標モータ角算出部12gに出力し、ステップS88へ進む。ステップS88では、目標伝達比変更部12fは、IFLAGD=0とし、その後ステップS94へ進む。
ステップS89においてYesでステップS91へ進むと、目標伝達比変更部12fは、目標伝達比GXとして、GX=GXpとして、目標モータ角算出部12gに出力し、ステップS92へ進む。
ステップS94では、目標モータ角算出部12gは、目標伝達比変更部12fから入力された目標伝達比GX にもとづいて目標モータ角を算出して、減算部13に出力する(θTvm =(1/β)・{(1/GX )−α}θh )。
そして、ステップS95において目標モータ角設定部12Cは、IG OFFか否かをチェックし、IG OFFの場合(Yes)は、一連の処理を終了し、IG OFFでない場合(No)は、符号(F)に従いステップS72に戻り、ステップS72〜S80,S84〜S95の一連の処理を繰り返す。
ステップS73〜S79でIFLAGB=0,−1となり、ステップS80からステップS84へ進み、|θh|>θhthで、ステップS86,S89へとIFLAGB=+1の後に初めて進む場合は、IFLAGD=0なのでステップS90へ進み、GX=θh/θPとし、その後ステップS92でIFLAGD=1とし、ステップS93で繰り返しにおける前回の目標伝達比GXp=GXとする。
したがって、ステップS84において、Noとなるような操舵ハンドル角θhの絶対値が閾値θhth以下の略直進とみなせる場合は、GX=GTとするので、操舵ハンドル2を中立に戻すと、転舵輪の転舵角も中立位置に戻され、いわゆる、操舵ハンドル2と転舵輪のセンターずれが発生してしまう不具合が生じない。
なお、操舵操作が「ハンドル切り戻し」→「ハンドル停止」になった状態の後、「ハンドル切り増し」の操舵操作状態に移行した場合に、前回の繰り返しにおける目標伝達比GXpを用いることを止め、ステップS72で読み込まれた目標伝達比設定部11で設定された車速VSに応じた目標伝達比GTに切り換わるので、可変伝達比機構5(図1参照)は本来の設定に復帰する。
次に、図20から図22を参照しながら適宜図1を参照して本発明の第4の実施形態について説明する。図20は、第4の実施形態における可変伝達比機構制御ECUの機能構成ブロック図である。可変伝達比機構制御ECU9Dは、機構ブロックとして目標伝達比設定部11、目標モータ角設定部12A、減算部13、位置F/B制御部14、減算部15、電流F/B制御部16、乗算部19、を含んでいる。
ここで、目標伝達比設定部11及び目標モータ角設定部12Aが請求項に記載の伝達比調整設定部に対応し、乗算部19及び補正係数設定部20Bが請求項に記載の操舵トルク調整設定部に対応する。
本実施形態は、第1の実施形態において伝達比調整モードと操舵トルク調整モードの定義は無く、補正係数設定部20Bにおいて連続的に伝達比可変用モータ33(図1参照)の電流を補正して、それを受けて下流側で制御することを特徴とする。本実施形態は、第1の実施形態と基本的に同じ構成であるが、第1の実施形態における可変伝達比機構制御ECU9Aに含まれる補正係数設定部20が補正係数設定部20Bに置き換わっているだけである。第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
補正係数設定部20Bでは、ROMに格納された車速VSに応じた連続関数(図21参照)のデータを参照して、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|に対する補正係数K1を設定する。
補正係数K1にマイナス値を許容することで、目標電流値IT1に補正係数K1が乗算部19で乗算された結果の目標電流値IT2が目標電流値IT1の方向と逆転することを許容する。つまり、クイックレシオ方向への伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmをスローレシオ方向への伝達比可変用モータ33の目標モータ角θTvmへ変更することを許容し、操舵反力を低減させる。
これは、目標伝達比設定部11で設定される目標伝達比GTが、車速VSが小さいほど目標伝達比GTを小さく、つまり、クイックレシオ側に設定するので、クイックレシオの度合いが強いほど、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|が小さくても電動パワーステアリング装置4のEPSモータ23や伝達比可変用モータ33が追従できない傾向があるため、操舵ハンドル角速度|ωh|の増大に対して補正量を大きく変化させる。
以下に説明するフローチャートのステップS101からステップS103は補正係数設定部20Bにおいて処理され、ステップS104,S105は乗算部19において処理される。ちなみに、ステップS106は、CPU9aにおける全体制御の中で行われる。
イグニッション・スイッチ(IG)がオンされると、可変伝達比機構制御ECU9Dは起動し、CPU9a(図20参照)において可変伝達比機構制御用のプラグラムがスタートする。そして、以後一定の周期でステップS101〜S106を繰り返し処理する。
ステップS101では、車速VS、操舵角速度ωh、位置F/B制御部14から出力された目標電流値IT1を読み込む。
ステップS104では、IT2=K1 ×IT1とし、IT2を目標電流値として減算部15(図20参照)に出力する(ステップS105)。そして、ステップS106へ進み、イグニッション・スイッチがオフされているか否か(IG OFF?)をチェックし、IG OFFの場合(Yes)は、一連の制御を終了し、IG OFFでない場合(No)はステップS101に戻り、ステップS101〜S106を繰り返す。
本実施形態によれば、第1の実施形態におけるような伝達比調整モードと操舵トルク調整モードとの切り替えもなく、車速VSが小さいときによりスムーズに、操舵ハンドル角速度の絶対値|ωh|に応じて、伝達比可変用モータ33の目標電流を補正して、運転者の急速な操舵ハンドル2(図1参照)の操舵操作時に運転者に与える操舵反力を低減することができる。
また、操舵力補助機構として電動パワーステアリング装置4を想定したが、本発明の適用はそれに限定されるものではなく、油圧式のパワーステアリング装置に対しても同様に適用できる。
2 操舵ハンドル
3 ラック&ピニオン機構
4 電動パワーステアリング装置(電動パワーステアリング)
5 可変伝達比機構
7 ピニオン角センサ
9,9A,9B,9C,9D 可変伝達比機構制御ECU
9a CPU
11 目標伝達比設定部(伝達比調整設定部)
12A 目標モータ角設定部(伝達比調整設定部)
12B,12C 目標モータ角設定部
12a 目標ピニオン角算出部
12b,12g 目標モータ角算出部
12c 目標ピニオン角補正量算出部
12d 加算部
12e 操舵状態判定部
12f 目標伝達比変更部
13,15 減算部
14 位置F/B制御部
16 電流F/B制御部
17 モータ駆動回路
18 電流センサ
19 乗算部(操舵トルク調整設定部)
20 補正係数設定部
20B 補正係数設定部(操舵トルク調整設定部)
21 トルクセンサ
23 EPSモータ
25 ECU
31 遊星歯車機構
33 伝達比可変用モータ
35 モータ角センサ
Claims (6)
- 可変伝達比機構により転舵輪の転舵角に対する操舵ハンドルの操舵角の伝達比を変化させるとともに、電動パワーステアリングにより操舵時の補助力を発生させるステアリング装置において、
前記伝達比が車速に応じた目標伝達比に設定されるように、前記可変伝達比機構に用いられる伝達比可変用モータの回転角度を設定する伝達比調整モードと、前記操舵ハンドルの操舵力が低減するように、前記伝達比可変用モータを駆動する電流を低減させる操舵トルク調整モードと、を切り替える切替手段と、
前記操舵ハンドルの操作状態を示す操舵操作状態情報を取得する操舵操作状態情報取得手段と、を有し、
前記切替手段は、
前記操舵ハンドルの操舵トルク値にもとづいて算出されるモード切替判定値が所定の閾値以上の場合に、前記伝達比調整モードから前記操舵トルク調整モードへの切り替えを行い、この切り替えの際に、前記操舵操作状態情報取得手段で取得した操舵操作状態情報と、当該操舵操作状態情報を変数にした連続関数とにもとづき補正係数を設定し、前記操舵トルク調整モードの場合における第1の目標電流値に、前記設定された補正係数を乗算して得られる補正後の第2の目標電流値を前記伝達比可変用モータへの電流値とする一方、
前記モード切替判定値が前記所定の閾値に満たないときであって、前記操舵トルク調整モードに切り替えられており、かつ、今回の前記第1の目標電流値と、前回の前記第2の目標電流値との差分の絶対値が、所定の電流閾値以下の場合に、前記操舵トルク調整モードから前記伝達比調整モードへ戻す切り替えを行い、
前記伝達比調整モードから前記操舵トルク調整モードへ切り替える場合に、前記伝達比可変用モータへの電流値が連続的に変化するように制御する
ことを特徴とするステアリング装置。 - 前記モード切替判定値は、前記操舵トルク値に該操舵トルク値を時間微分した操舵トルク微分値を加算した合算値の絶対値である
ことを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。 - 前記操舵操作状態情報とは、前記操舵ハンドルの操舵速度である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリング装置。 - 前記操舵操作状態情報とは、操舵トルク値である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリング装置。 - 前記操舵操作状態情報とは、前記電動パワーステアリングに用いられ前記補助力の発生源となるアシストモータへの指示電流値である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリング装置。 - 可変伝達比機構により転舵輪の転舵角に対する操舵ハンドルの操舵角の伝達比を変化させるとともに、電動パワーステアリングにより操舵時の補助力を発生させるステアリング装置において、
前記伝達比が車速に応じた目標伝達比に設定されるように、前記可変伝達比機構に用いられる伝達比可変用モータの回転角度を設定する伝達比調整モードと、前記操舵ハンドルの操舵力が低減するように、前記伝達比可変用モータを駆動する電流を低減させる操舵トルク調整モードと、を切り替える切替手段と、
前記操舵ハンドルの操作状態を示す操舵操作状態情報を取得する操舵操作状態情報取得手段と、を有し、
前記切替手段は、
前記操舵ハンドルの操舵トルク値にもとづいて算出されるモード切替判定値が所定の閾値以上の場合に、前記伝達比調整モードから前記操舵トルク調整モードへの切り替えを行い、この切り替えの際に、前記操舵操作状態情報取得手段で取得した操舵操作状態情報と、当該操舵操作状態情報を変数にした連続関数とにもとづき補正係数を設定し、前記操舵トルク調整モードの場合における第1の目標電流値に、前記設定された補正係数を乗算して得られる補正後の第2の目標電流値を前記伝達比可変用モータへの電流値とする一方、
前記モード切替判定値が前記所定の閾値に満たないときであって、前記操舵トルク調整モードに切り替えられており、かつ、今回の前記第1の目標電流値と、前回の前記第2の目標電流値との差分の絶対値が、所定の電流閾値以下の場合に、前記操舵トルク調整モードから前記伝達比調整モードへ戻す切り替えを行い、
前記操舵ハンドルの操舵が停止した場合、又は操舵方向が切り替わった場合には、それ以前の操舵方向に前記転舵角が増加しないように、前記伝達比可変用モータの電流を制御する
ことを特徴とするステアリング装置。
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