<第1実施形態>
以下、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置100について説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、運転者によって操作されるステアリング部材としてのステアリングホイール1に連結され運転者によるステアリングホイール1の操作(以下、「ステアリング操作」と称する。)に伴って回転する入力シャフト2と、車輪6を転舵するラック軸5に連係する出力シャフト3と、入力シャフト2と出力シャフト3を連結するトーションバー4と、を備える。入力シャフト2、出力シャフト3、及びトーションバー4によってステアリングシャフト7が構成される。
出力シャフト3の下部には、ラック軸5に形成されたラックギヤ5aと噛み合うピニオンギヤ3aが形成される。ステアリングホイール1が操舵されると、ステアリングシャフト7が回転し、その回転がピニオンギヤ3a及びラックギヤ5aによってラック軸5の直線運動に変換され、ナックルアーム14を介して車輪6が転舵される。
電動パワーステアリング装置100は、運転者によるステアリングホイール1の操舵を補助するための動力源である電動モータ10と、電動モータ10の回転を出力シャフト3に減速して伝達する減速機11と、運転者によるステアリング操作に伴う入力シャフト2と出力シャフト3との相対回転によってトーションバー4に作用するトルクを検出するトルクセンサ12と、電動モータ10を制御する制御部としてのコントローラ30と、電動モータ10に流れる電流値を検出する電流センサ10b(図2)と、をさらに備える。
電動モータ10には、電動モータ10の回転角度を取得するモータ回転角センサ10aが設けられる。モータ回転角センサ10aは、レゾルバによって構成される。
減速機11は、電動モータ10の出力軸に連結されるウォームシャフト11aと、出力シャフト3に連結されウォームシャフト11aに噛み合うウォームホイール11bと、からなる。電動モータ10が出力する回転トルクは、ウォームシャフト11aからウォームホイール11bに伝達されて出力シャフト3に付与される。
運転者によるステアリング操作に伴って入力シャフト2に付与される操舵トルクはトルクセンサ12によって検出され、トルクセンサ12はその操舵トルクに対応する電圧信号をコントローラ30に出力する。コントローラ30は、トルクセンサ12からの電圧信号に基づいて、電動モータ10が出力するトルクを演算し、そのトルクが発生するように電動モータ10の駆動を制御する。このように、電動パワーステアリング装置100は、入力シャフト2に付与される操舵トルクをトルクセンサ12によって検出し、その検出結果に基づいて電動モータ10の駆動をコントローラ30によって制御して運転者のステアリング操作を補助する。
入力シャフト2には、ステアリングホイール1の回転角度である舵角を検出する舵角検出部としての舵角センサ15が設けられる。入力シャフト2の回転角度とステアリングホイール1の舵角とは等しいため、舵角センサ15にて入力シャフト2の回転角度を検出することによってステアリングホイール1の舵角が得られる。舵角センサ15の検出結果はコントローラ30に出力される。
舵角センサ15は、図示しないが、例えば、入力シャフト2と一体に回転するセンターギヤと、センターギヤに噛み合う2つのアウターギヤと、を備え、2つのアウターギヤの回転に伴う磁束の変化に基づいて、センターギヤの回転角度、すなわち入力シャフト2の回転角度を演算するものである。
コントローラ30は、電動モータ10の動作を制御するCPUと、CPUの処理動作に必要な制御プログラムや設定値等が記憶されたROMと、トルクセンサ12や舵角センサ15等の各種センサが検出した情報を一時的に記憶するRAMと、を備える。
電動パワーステアリング装置100は、上述したように、トルクセンサ12の検出結果に基づいて運転者によるステアリング操作を補助する他に、運転者のステアリング操作によることなく車両外の情報に基づいて自動的に操舵することができる。コントローラ30は、トルクセンサ12によって検出された操舵トルクに基づいて電動モータ10を制御する操舵補助と車両外の情報に基づいて電動モータ10を制御する自動操舵とを選択的に行う。
運転者による手動操舵から自動操舵への切り換えは、運転者の操作によって自動運転モードが選択されることによって実行される。一方、自動操舵から手動操舵への切り換えは、後述するコントローラ30の介入判定部33(図2参照)が運転者によるステアリング操作が行われていると判定した場合、あるいは、運転者の操作によって自動運転モードが解除されることによって実行される。
図2に示すように、コントローラ30は、運転者によるステアリング操作時に、各種センサからの検出値に基づいて電動モータ10によるアシスト制御を行うアシスト制御部50と、車両の移動目標位置に基づいて設定される舵角目標値に基づく信号と舵角センサ15によって検出された舵角に基づく信号との偏差に応じて電動モータ10を制御する自動操舵制御部60と、を備える。
アシスト制御部50は、トルクセンサ12によって検出されたトルクと、車両に設けられた車速センサ16によって検出された車速と、舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の舵角と、に基づいてアシスト力目標値を演算する。
自動操舵は、車両の自動運転システム40からの指令信号(舵角目標値)に基づいて行われる。具体的には、自動運転システム40は、車両外の情報として走行中の車線の境界線(白線)を検出し、自車両が車線内の走行を維持するために必要な舵角目標値を演算し、その舵角目標値を自動操舵制御部60に出力する。舵角目標値は、言い換えると、車両の移動目標位置に基づいて設定される。自動操舵制御部60は、舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の舵角と、自動運転システム40から入力された舵角目標値と、に基づいて、自動操舵目標値を演算する。詳細については、後述する。
コントローラ30は、アシスト力目標値及び自動操舵目標値に基づいて電動モータ10に印加する電流を制御する電流制御部31と、電動モータ10の駆動を制御するための駆動回路32と、トルクセンサ12によって検出されるトルクに基づいて運転者によるステアリング介入操作を判定する介入判定部33と、をさらに備える。電動パワーステアリング装置100では、電流センサ10bによって検出された電動モータ10の電流値を、電流制御部31に帰還させてフィードバック制御を行う。
介入判定部33は、自動操舵中、トルクセンサ12によって検出されるトルクに基づいて運転者によるステアリング操作が行われているかを判定する(以下では、自動操舵時の運転者によるステアリング操作を「運転者によるステアリング介入操作」ともいう。)。具体的には、介入判定部33は、トルクセンサ12によって検出されるトルクが一定時間所定値以上となった場合に、運転者によるステアリング介入操作が行われたと判定する。介入判定部33は、その判定結果に基づいて、自動操舵制御部60による制御を無効あるいは停止させることで、電動モータ10をアシスト制御のみで制御する。
次に、図3を参照して、自動操舵制御部60について説明する。図3は、自動操舵制御部60のブロック図である。
自動操舵制御部60は、自動運転システム40から入力された舵角目標値と舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の舵角とに基づいて、電動モータ10を制御するための角速度目標値を演算する角速度目標値演算部61を備える。
角速度目標値演算部61は、自動運転システム40から出力された舵角目標値と舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の舵角との差に基づいて舵角目標値にステアリングホイール1の舵角が一致するように電動モータ10を制御するための位置制御目標値を演算する位置制御部62と、自動運転システム40から出力された舵角目標値の単位時間当たりの変化に基づいて目標変化補償信号を演算する目標変化補償部63と、を備える。
位置制御部62によって位置制御目標値を演算するときには、舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の舵角が用いられる。しかし、舵角センサ15の検出周期は間隔が比較的長く、ステアリングホイール1が素早く操舵された際には、舵角センサ15のみではステアリングホイール1の舵角を精度良く検出することができない。
そこで、位置制御部62は、ステアリングホイール1の舵角をより高精度に検出するために、舵角センサ15よって検出された舵角を、モータ回転角センサ10aにて検出されたモータ回転角を用いて補正することによって高精度舵角を演算する。具体的に説明すると、モータ回転角センサ10aは、舵角センサ15の検出周期よりも短い周期で電動モータ10の回転角変化量であるモータ回転角を検出する。モータ回転角センサ10aで検出されたモータ回転角と減速機11の減速比(出力シャフト3と電動モータ10の減速比)から出力シャフト3の回転角度変化量を得ることができる。したがって、舵角センサ15によって検出される舵角に、モータ回転角センサ10aで検出されるモータ回転角と減速機11の減速比から得られる出力シャフト3の回転角度変化量を加算することによって、短い周期でステアリングホイール1の高精度舵角を演算することができる。これにより、ステアリングホイール1が素早く操舵された際であっても、高精度な舵角を得ることができる。本実施形態では、モータ回転角センサ10aは、舵角検出器の一部として機能する。
このように、電動パワーステアリング装置100では、ステアリングホイール1の舵角は、モータ回転角センサ10aによって検出された電動モータ10のモータ回転角と、舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の回転角とに基づいて、演算される。これにより、高精度な舵角を得ることができる。なお、例えば、舵角センサ15の検出周期は10msec程度であり、モータ回転角センサ10aの検出周期は1msec以下であるが、舵角センサ15の検出周期が短ければ、舵角センサ15によって検出された舵角のみを用いてもよい。
位置制御部62は、舵角目標値とステアリングホイール1の舵角との差を演算し、この差にPD制御を実施して所定のゲインを乗じることで、ステアリングホイール1の目標とする角速度に相当する位置制御目標値を演算する。具体的には、位置制御部62は、自動運転システム40から出力された舵角目標値と舵角センサ15によって検出されたステアリングホイール1の実際の舵角との差に基づいて、ステアリングホイール1の舵角を舵角目標値に一致させるための位置制御目標値を演算する。つまり、位置制御部62は、舵角目標値とステアリングホイール1の実際の舵角との差とに基づいた位置フィードバック制御を行う。なお、ゲインは、例えば、単位時間の逆数に相当するものである。
目標変化補償部63は、自動運転システム40から出力された前回の舵角目標値と今回の舵角目標値との差を単位時間(舵角目標値が出力される間隔)で除算し、PID制御を実施することによって、目標変化補償信号を演算する。
角速度目標値演算部61は、位置制御部62によって演算された位置制御目標値に目標変化補償部63によって演算された目標変化補償信号を加算する。これは、舵角目標値の変化に対する追従性を向上させることを目的としている。以下に詳細に説明する。
舵角目標値が急激に変化すると、位置制御部62による制御では、舵角目標値の変化に対して電動モータ10の制御が追従できない(遅れが生じる)ことがある。舵角目標値が実際の舵角よりも大きい状態から実際の舵角よりも小さな状態まで急激に変化する場合を例に説明する。
舵角目標値が変化を始めた時点では、舵角目標値は実際の舵角よりも大きいので、位置制御部62は、ステアリングホイール1の舵角が大きくなるような位置制御目標値を出力する。このため、電動モータ10はステアリングホイール1の舵角が大きくなるように駆動される。位置制御部62は、舵角目標値が減少していても、実際の舵角が舵角目標値よりも小さければ、実際の舵角が舵角目標値と一致するようにステアリングホイール1の舵角が大きくなるような位置制御目標値を出力する。そして、舵角目標値がさらに減少し実際の舵角よりも小さくなると、位置制御部62は、この時点から、舵角目標値に追従するためにステアリングホイール1の舵角が小さくなるような位置制御目標値を出力する。このように、位置制御部62による制御では、舵角目標値が急激に小さくなるような変化が生じても、実際の舵角が舵角目標値と一致するまでステアリングホイール1の舵角が大きくなるような位置制御目標値の出力が続けられるので、遅れが生じやすい。
このため、角速度目標値演算部61は、舵角目標値の変化速度に相当する目標変化補償信号を演算し、位置制御部62によって演算された位置制御目標値に目標変化補償部63によって演算された目標変化補償信号を加算して角速度目標値を生成する。これにより、舵角目標値が急激に変化した場合であっても、目標変化補償部63にて演算された目標変化補償信号によって、舵角目標値の変化が補償される。したがって、位置制御目標値に目標変化補償信号を加算して生成された角速度目標値によって制御を行うことで、位置制御部62にて演算された位置制御目標値のみによって制御を行うよりも舵角目標値の変化に対する追従性が向上する。
自動操舵制御部60は、トルクセンサ12によって検出されたトルクに基づいてトーションバー4の捩れ角を演算し、捩れ角に基づいてトーションバー4の捩れを抑制する方向に電動モータ10を制御するための振動補償信号を演算する振動補償部70をさらに備える。
振動補償部70は、トルクセンサ12によって検出されたトルクからトーションバー4の捩れ角を演算する捩れ角演算部71を備える。振動補償部70は、捩れ角演算部71によって演算された捩れ角にPD制御を実施し振動補償信号を演算する。
振動補償信号は、ステアリングホイール1の慣性とトーションバー4のばね性とに起因して発生するステアリングホイール1の振動を抑制するための信号である。ここで、ステアリングホイール1の慣性とトーションバー4のばね性とに起因して発生するステアリングホイール1の振動について、具体的に説明する。
自動操舵時に、電動モータ10が作動すると、電動モータ10の回転は減速機11を介して出力シャフト3に伝達される。出力シャフト3が回転すると、トーションバー4及び入力シャフト2を介してステアリングホイール1が回転する。このとき、トーションバー4はばね性を有しており、かつ、ステアリングホイール1にはその場に留まろうとする慣性が働くので、出力シャフト3が回転を始めるとトーションバー4に捩れが生じる。そして、ステアリングホイール1は、トーションバー4が捩れた分だけ出力シャフト3に遅れて回転を始める。その後、電動モータ10が停止しても、ステアリングホイール1は、トーションバー4のばね力とステアリングホイールの慣性によって回転を続け、トーションバー4の捩れが解消した位置を超えてトーションバー4を逆方向に捩る。このようにして、トーションバー4が逆方向に捩れると、舵角センサ15によって検出される舵角と舵角目標値との間に差が生じる。これにより、電動モータ10は、この差を無くすために、出力シャフト3を逆方向に回転させるように作動する。これと同時に、トーションバー4はそのばね力によって、再びトーションバー4自身の捩れを解消しようと逆方向に回転する。そして、電動モータ10は、舵角目標値になると停止するが、ステアリングホイール1は、トーションバー4の捩れが解消した位置になってもその慣性によって回転を続け、トーションバー4をさらに逆方向に捩ってしまう。このような動作が繰り返されることで、ステアリングホイール1が振動する。
振動補償部70は、このような振動を抑制するために、振動補償信号を電動モータ10に対して出力する。具体的には、振動補償部70は、出力シャフト3が左方向に回転してトーションバー4に捩れが生じているときには、トーションバー4の捩れ角の大きさに応じてトーションバー4の捩れを抑制する方向、つまり、出力シャフト3の左方向への回転を抑制するような振動補償信号を電動モータ10に出力する。これにより、電動モータ10の左回転方向へのトルクが抑制されるので、トーションバー4の捩れが抑制される。したがって、ステアリングホイール1の慣性とトーションバー4の捩れに起因して発生するステアリングホイール1の振動が抑制される。同様に、振動補償部70は、出力シャフト3が右方向に回転してトーションバー4に捩れが生じているときには、トーションバー4の捩れ角に応じてトーションバー4の捩れを抑制する方向、つまり、出力シャフト3の右方向への回転を抑制するような振動補償信号を電動モータ10に出力する。これにより、電動モータ10の右回転方向へのトルクが抑制されるので、トーションバー4の捩れが抑制される。したがって、ステアリングホイール1の慣性とトーションバー4の捩れに起因して発生するステアリングホイール1の振動が抑制される。振動補償信号は、捩れ角演算部71によって演算された捩れ角が大きければ、その分、トーションバー4を捩る方向への電動モータ10の回転(トルク)を抑制するような信号になるように演算される。つまり、振動補償信号は、捩れ角の大きさに応じた値に演算されるとともに、電動モータ10に対して捩れを打ち消す方向に作用するので、トーションバー4の捩れを精度良く抑制できる。
自動操舵制御部60は、角速度目標値演算部61によって演算された角速度目標値と振動補償部70によって演算された振動補償信号とに基づいて補正角速度目標値を演算する補正角速度目標値演算部としての加算器64と、モータ回転角センサ10aによって検出されたモータ回転角からステアリングホイール1の角速度を演算する角速度演算部65と、加算器64によって演算された補正角速度目標値と角速度演算部65によって演算されたステアリングホイール1の角速度との偏差d(差)を演算する偏差演算部としての減算器66と、減算器66によって演算された偏差dに基づいて電動モータ10を制御するための自動操舵目標値を生成する角速度制御部67と、をさらに備える。
加算器64は、角速度目標値に振動補償信号を加算して、補正角速度目標値を演算する。
角速度演算部65は、モータ回転角センサ10aによって検出された単位時間あたりのモータ回転数から電動モータ10の回転軸の角速度を演算する。さらに、角速度演算部65は、電動モータ10の回転軸の角速度に減速機11の減速比を除算することによって、ステアリングホイール1の角速度を演算する。このようにして角速度演算部65によって演算されたステアリングホイール1の角速度は、ステアリングホイール1の実際の角速度に相当する。なお、ステアリングホイール1の角速度は、舵角センサ15の検出周期が短ければ、舵角センサ15よって検出された舵角を基に演算してもよい。
角速度制御部67は、偏差dに基づいて比例制御を行うための比例器67aと、偏差dに基づいて積分制御を行うための積分器67bと、偏差dに基づいて微分制御を行うための微分器67cと、を備える。角速度制御部67は、比例器67a、積分器67b及び微分器67cによって偏差dに基づいてPID制御を実施して自動操舵目標値を生成する。具体的には、角速度制御部67は、偏差dに基づいて、補正角速度目標値にステアリングホイール1の実際の角速度が一致するように電動モータ10を制御するための自動操舵目標値を生成する。つまり、角速度制御部67は、ステアリングホイール1の角速度の目標値とステアリングホイール1の実際の角速度との偏差d(差)に基づいた速度フィードバック制御を行う。
上述のように、自動操舵制御部60では、加算器64において角速度目標値に振動補償部70によって演算された振動補償信号が加算されて補正角速度目標値が演算される。加算器64によって演算された補正角速度目標値と角速度演算部65によってフィードバックされた角速度との偏差dは、振動補償信号が加算された信号どうしの差になるので、偏差dは比較的小さな値となる。これにより、角速度制御部67における制御を安定させることができる。
自動操舵制御部60は、自動操舵中に運転者によってステアリングホイール1が操作されたときに、トルクセンサ12によって検出されたトルクの値が第1の閾値αに達すると、減算器66によって演算された偏差dの角速度制御部67への入力を制限する制限部としての偏差制限部80をさらに備える。
偏差制限部80は、図4に示すように、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差、具体的には、減算器66によって演算された角速度と補正角速度目標値との偏差dを0として出力する。また、偏差制限部80は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αよりも小さな第2の閾値βまで低下したときに、偏差dをそのまま出力する。このように、偏差制限部80には、第1の閾値αと第2の閾値βとの間に不感帯が設けられているので、例えば、トルクが第1の閾値αを挟んで小刻みに変化したときにハンチングが発生することを防止できる。
図3を参照して、以上のように構成された自動操舵制御部60による自動操舵について説明する。
角速度目標値演算部61に自動運転システム40から舵角目標値が入力されると、角速度目標値演算部61は、舵角センサ15によって検出された舵角が舵角目標値に一致するように電動モータ10を制御するための角速度目標値を演算する。さらに、この角速度目標値に振動補償部70によって演算された振動補償信号が加算されて補正角速度目標値が演算される。これと並行して、角速度演算部65は、モータ回転角センサ10aによって検出されたモータの回転角からステアリングホイール1の実際の角速度を演算する。
角速度制御部67は、加算器64によって演算された補正角速度目標値と角速度演算部65によって演算されたステアリングホイール1の角速度との差(偏差d)に基づいて、補正角速度目標値にステアリングホイール1の実際の角速度が一致するように電動モータ10を制御するための自動操舵目標値を演算する。
このようにして演算された自動操舵目標値は、電流制御部31に入力され、電流制御部31は、駆動回路32を介して電動モータ10を制御する。電動モータ10は、ステアリングホイール1の角速度が舵角目標値になるように減速機11を介してステアリングシャフト7を回転させる。
電動モータ10が回転を始めると、上述のようにステアリングホイール1の慣性とトーションバー4のばね性に起因してトーションバー4が捩れる。トーションバー4が捩れるとトルクセンサ12によってトルクが検出され、このトルクが振動補償部70の捩れ角演算部71に入力される。捩れ角演算部71は、トーションバー4の捩れ角を演算する。振動補償部70は、この捩れ角に基づいてトーションバー4の捩れを抑制する方向に電動モータ10を制御する振動補償信号を演算する。振動補償部70によって演算された振動補償信号は、加算器64において角速度目標値演算部61によって演算された角速度目標値に加算される。そして、減算器66によって補正角速度目標値とステアリングホイール1の角速度との差(偏差d)が演算され、その偏差dは、角速度制御部67に入力される。角速度制御部67は、偏差dに基づいてPID制御を行い電動モータ10を制御するための自動操舵目標値を演算する。このように、電動モータ10は、振動補償部70によって演算された振動補償信号が加算された自動操舵目標値によって、トーションバー4の捩れ角の大きさに応じてトーションバー4の捩れを抑制する方向に制御されつつ、ステアリングホイール1の角速度が舵角目標値になるように制御される。言い換えると、電動モータ10は、トーションバー4の捩れ角の大きさに応じた分だけ回転方向のトルクを抑制されながら、ステアリングホイール1の角速度が舵角目標値になるように制御される。これにより、ステアリングホイール1の慣性とトーションバー4のばね性に起因して発生するステアリングホイール1の振動を抑制することができる。
次に、自動操舵中に運転者によるステアリング介入操作が行われたときの制御について説明する。
自動操舵中に運転者がステアリングホイール1を操作すると、トーションバー4にトルクが作用する。トーションバー4に作用したトルクは、トルクセンサ12によって検出され、偏差制限部80に入力される。偏差制限部80は、入力されたトルクが第1の閾値α以上になると、減算器66によって演算された偏差dを0として出力する。これにより、角速度制御部67には、偏差dが0として入力される。
これと同時に介入判定部33では、運転者によるステアリング介入操作が行われているか否かを判定する。具体的には、介入判定部33は、検出されたトルクが一定時間第1の閾値α以上である場合には、運転者によるステアリング介入操作が行われているとして、自動操舵制御部60による電動モータ10の制御を無効あるいは停止させる。検出されたトルクが第1の閾値α以上の値であっても、トルクが第1の閾値α以上の値を一定時間継続していない場合には、運転者によるステアリング介入操作が行われていない、あるいは、ステアリング介入操作が中断されたものとして自動操舵制御部60による電動モータ10の制御を継続する。なお、第1の閾値αや判定時間は、運転者の手などがステアリングホイール1に当たってしまった場合や、上述のようにステアリングホイール1に振動が発生した場合の誤判定を防止できる値に設定される。
電動パワーステアリング装置100では、トルクセンサ12によって検出されたトルクが第1の閾値α以上になると、介入判定部33による判定が完了しているか否かにかかわらず、偏差制限部80によって角速度制御部67へ入力される偏差dを0とする。これにより、角速度と補正角速度目標値との間に偏差dが存在していても、角速度制御部67には、偏差dとして0が入力される。つまり、角速度と補正角速度目標値との間に偏差dが存在していても、角速度制御部67に偏差dとして0を入力することにより、角速度制御部67の比例器67a、積分器67b、及び微分器67cによる制御を制限する。言い換えると、角速度制御部67に偏差dとして0を入力することにより、角速度制御部67の比例器67a、積分器67b、及び微分器67cによる制御を実質的に無効にする。これにより、角速度制御部67から出力される自動操舵目標値が一定となるので、自動操舵制御部60からの信号(自動操舵目標値)に基づいて電動モータ10が発生するトルクも一定となる。よって、自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇が抑制される。
このように、電動パワーステアリング装置100では、自動操舵中、運転者によってステアリングホイール1が操作され、トルクセンサ12によって検出されたトルクが第1の閾値αに達した場合には、介入判定部33による判定状況にかかわらず偏差制限部80が角速度制御部67による制御を制限する。これにより、自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇を抑制することができる。よって、自動操舵中、運転者がステアリングホイール1を操作したときに、運転者がステアリングホイール1から覚えるトルクの上昇による違和感を低減できる。
自動操舵制御部60において、このような制御が行われなければ、介入判定部33によってステアリング介入操作の判定を行っている間も、角速度制御部67は、舵角を舵角目標値に近づけるような(偏差を小さくするような)自動操舵目標値を生成する。このようにして生成された自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が制御されても、運転者がステアリングホイール1を操作しているため、舵角目標値との差分を解消することができない。このため、角速度制御部67は、偏差dを解消するため積分器67bによって偏差dを積分し、前回の自動操舵目標値よりも大きな自動操舵目標値を生成する。これにより、電動モータ10を駆動する電流値が大きくなり、舵角を舵角目標値に近づける方向、つまり、運転者のステアリング操作とは反対の方向に作用するトルクが大きくなる。
介入判定部33によって手動操作の判定を行っている間は、このようなフィードバック制御が繰り返され、角速度制御部67は、積分器67bによって偏差dを順次積分するので、自動操舵目標値も順次大きくなる。これにより、自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が発生する、運転者のステアリング操作とは反対の方向へのトルクが徐々に大きくなってしまう。
そのため、電動パワーステアリング装置100では、自動操舵中、運転者によってステアリングホイール1が操作されたときに、介入判定部33による判定にかかわらず、トルクセンサ12によって検出されたトルクの値が第1の閾値に達すると、偏差制限部80が角速度制御部67による制御、特に積分器67bによる積分制御を制限する。これにより、運転者のステアリング操作とは反対の方向に作用するトルクの上昇を抑制することができる。よって、自動操舵中、運転者がステアリングホイール1を操作したときに、運転者がステアリングホイール1から覚えるトルクの上昇による違和感を低減できる。さらに、介入判定部33によって自動操舵制御が無効化あるいは停止されたときのトルクの急激な低下が抑制されるので、トルクの急激な変化による違和感を低減できる。
上記実施形態では、偏差制限部80は、第1の閾値αあるいは第2の閾値βで切り換えられるように構成されているが、図5に示すように、偏差制限部80は、トルクセンサ12によって検出されたトルクが第1の閾値αから第2の閾値βの範囲内にあるときは、トルクが大きくなるにつれて偏差dを小さくするように構成してもよい。このように構成することで、トルクの変化を滑らかにすることができる。
また、上記実施形態では、介入判定部33の閾値を第1の閾値αとしたが、これに限らず、介入判定部33の閾値を第3の閾値γとし、第1の閾値αを第3の閾値γよりも小さな値に設定してもよい。つまり、介入判定部33による介入判定のための閾値と角速度制御部67による制御を制限するための閾値とを異なるトルクに設定してもよい。
例えば、運転者によるステアリング介入操作の速度が遅い場合には、トルクが第1の閾値αに達するまでに時間を要するため、積分器67bによる偏差dの積算がより進んでしまう。このため、第1の閾値αを第3の閾値γよりも小さな値に設定することで、積分器67bによる偏差dの積算が少ないときに、積分器67bに基づく積分制御を制限する。これにより、角速度制御部67によって生成される自動操舵目標値の上昇を早めに抑制できるので、トルクの上昇に伴う運転者の違和感をより低減できる。
以上の第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
電動パワーステアリング装置100では、自動操舵制御部60は、自動操舵中に運転者によってステアリングホイール1が操作されたときに、トルクセンサ12によって検出されたトルクの値が第1の閾値αに達すると、比例器67a、積分器67b及び微分器67cによる制御を制限する偏差制限部80を備える。これにより、自動操舵中、運転者によってステアリングホイール1が操作されたときに、自動操舵制御部60によって生成された自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇を抑制することができる。したがって、ステアリング介入操作中に運転者がステアリングホイール1から覚えるトルクの上昇による違和感を低減できる。さらに、介入判定部33によって自動操舵制御が無効化あるいは停止されたときのトルクの急激な低下が抑制されるので、運転者がステアリングホイール1から覚えるトルクの急激な変化による違和感を低減できる。
また、電動パワーステアリング装置100では、自動操舵制御部60は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値α以上のときに偏差制限部80によって偏差dを0にするので、角速度制御部67における比例器67a、積分器67b及び微分器67cによる制御をより確実に制限することができる。よって、自動操舵制御部60によって生成された自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇をより抑制できる。
電動パワーステアリング装置100では、自動操舵制御部60は、ステアリングホイール1の角速度を演算する角速度演算部65、をさらに備える。これにより、電動モータ10は、舵角に加えて角速度目標値とステアリングホイール1の角速度との差に基づいて制御されるので、制御の精度及び応答性が向上する。
電動パワーステアリング装置100では、自動操舵制御部60は、角速度目標値演算部61によって演算された角速度目標値と振動補償部70によって演算された捩れ角に基づいてトーションバー4の捩れを抑制する方向に電動モータ10を制御する振動補償信号とに基づいて電動モータ10を制御する。これにより、電動モータ10は、トーションバー4の捩れ角に基づいて回転方向のトルクを抑制されながら、ステアリングホイール1の角速度が舵角目標値になるように制御される。したがって、ステアリングホイール1の慣性とトーションバー4のばね性に起因して発生するステアリングホイール1の振動を抑制することができる。
なお、上記電動パワーステアリング装置100では、偏差制限部80によって偏差dを0にしていたが、図6に示す変形例に示す切換スイッチ180を用いることによって偏差dを0にすることもできる。以下に、変形例について説明する。
図6に示す変形例では、自動操舵制御部60が、偏差制限部80に換えて、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、角速度目標値として角速度演算部65によって演算された角速度を出力する制限部としての切換スイッチ180を備える。
切換スイッチ180は、加算器64と減算器66との間に設けられる。切換スイッチ180は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、角速度目標値として角速度演算部65によって演算された角速度を出力するように切り換えられる。これにより、減算器66によって演算される偏差を0にすることができる。
また、図7に示す変形例のように、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、角速度演算部65によって演算された角速度として角速度目標値を出力するように切り換えられるように切換スイッチ180を設けてもよい。この場合であっても、減算器66によって演算される偏差dを0にすることができる。
さらに、上記実施形態において、各閾値α、β、γを車速に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、車両の車速が早くなるにつれて、第1の閾値αを小さくするように構成してもよい。車速が早い場合には、運転者がステアリングホイール1を急激に操作することが少ない。言い換えると、車速が早い場合には、トーションバー4に大きなトルクが発生することがほとんどない。このため、第1の閾値αを小さくすることで、ステアリング操作によって発生するトルクが小さくても角速度制御部67による制御を制限する。これにより、運転者がステアリングホイール1から覚えるトルクの上昇による違和感を車速に応じて適切に低減できる。
<第2実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態の電動パワーステアリング装置100と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
電動パワーステアリング装置200の基本的な構成は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置100と同様である。第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置100では、比例器67a、積分器67b及び微分器67cに入力される偏差dを制限しているのに対し、電動パワーステアリング装置200では、積分器67bに入力される偏差dのみを制限している点で相違している。
電動パワーステアリング装置200では、自動操舵制御部60は、減算器66と積分器67bとの間に設けられ、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、積分器67bに基づく積分制御のみを制限する制限部としての積分制限部280を備える。
積分制限部280は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、積分器67bに入力される偏差を0にする。つまり、電動パワーステアリング装置200では、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、積分器67bに基づく積分制御のみを制限する。
積分器67bに基づく積分制御が制限されたときでも、角速度制御部67では、比例器67aによる比例制御及び微分器67cによる微分制御が行われる。しかし、比例制御及び微分制御は、偏差dが存在しても積分制御のように偏差dが積算されることがない。このため、自動操舵目標値が積分制御が行われたときのように徐々に大きくなることがない。したがって、自動操舵中、運転者がステアリングホイール1が操作したときに、自動操舵目標値に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇を抑制することができる。よって、電動パワーステアリング装置200においても、運転者がステアリングホイール1から覚えるトルクの上昇による違和感を低減できる。
なお、積分制限部280は、積分器67bの出力側に設けてもよい。この場合には、積分制限部280は、例えば、ON/OFFスイッチによって構成することができる。
以上の第2実施形態の電動パワーステアリング装置200は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
電動パワーステアリング装置100,200は、運転者によって操作されるステアリング部材(ステアリングホイール1)に連結され、運転者によるステアリング部材(ステアリングホイール1)の操作に伴って回転するステアリングシャフト7と、ステアリングシャフト7の一部を構成するトーションバー4と、トーションバー4に作用するトルクを検出するトルクセンサ12と、ステアリングシャフト7に回転トルクを付与する電動モータ10と、トルクセンサ12によって検出されたトルクに基づいて電動モータ10を制御する操舵補助と車両外の情報に基づいて電動モータ10を制御する自動操舵とを選択的に行う制御部(コントローラ30)と、ステアリング部材(ステアリングホイール1)の舵角を検出する舵角検出部(モータ回転角センサ10a、舵角センサ15)と、を備え、制御部(コントローラ30)は、自動操舵時に、車両の移動目標位置に基づいて設定される舵角目標値に基づく信号と舵角検出部(モータ回転角センサ10a、舵角センサ15)によって検出された舵角に基づく信号との偏差(偏差d)に応じて電動モータ10を制御する自動操舵制御部60を有し、自動操舵制御部60は、偏差(偏差d)に基づいて積分制御を行うための積分器67bと、自動操舵中に運転者によってステアリング部材(ステアリングホイール1)が操作されたときに、トルクセンサ12によって検出されたトルクの値が第1の閾値αに達すると、積分器67bに基づく積分制御を制限する制限部(偏差制限部80、切換スイッチ180、積分制限部280)と、を有する。
この構成によれば、自動操舵中、運転者によってステアリング部材(ステアリングホイール1)が操作されたときに、自動操舵制御部60からの信号(自動操舵目標値)に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇を抑制することができる。したがって、自動操舵中、運転者がステアリング部材(ステアリングホイール1)を操作したときに、運転者がステアリング部材(ステアリングホイール1)から覚えるトルクの上昇による違和感を低減できる。
また、電動パワーステアリング装置100は、制限部(偏差制限部80)は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差(偏差d)を0として出力することによって積分器67bに基づく積分制御を制限する。
電動パワーステアリング装置100では、制限部(切換スイッチ180)は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、舵角目標値に基づく信号として舵角に基づく信号を出力することによって積分器67bに基づく積分制御を制限する。
電動パワーステアリング装置100では、制限部(切換スイッチ180)は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値α以上に達したときに、舵角に基づく信号として舵角目標値に基づく信号を出力することによって積分器67bに基づく積分制御を制限する。
これらの構成によれば、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値α以上のときに、角速度制御部67に入力される偏差dを0にすることができる。これにより、積分器67bによって偏差dが積分されて信号(自動操舵目標値)が生成されることがないので、運転者のステアリング操作とは反対の方向に作用するトルクが上昇することを確実に抑制できる。
また、電動パワーステアリング装置200では、自動操舵制御部60は、偏差dに基づいて比例制御を行うための比例器67aと、偏差dに基づいて微分制御を行うための微分器67cと、をさらに備え、制限部(積分制限部280)は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、積分器67bに基づく積分制御のみを制限する。
この構成によれば、積分器67bに基づく積分制御が制限されるので、偏差dが積分されず自動操舵制御部60によって生成される信号(自動操舵目標値)が大きくなることがない。したがって、自動操舵中、運転者がステアリング部材(ステアリングホイール1)を操作したときに、自動操舵制御部60からの信号(自動操舵目標値)に基づいて電動モータ10が発生するトルクの上昇を抑制することができる。
また、電動パワーステアリング装置100,200では、制限部(偏差制限部80)は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αに達したときに、舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差(偏差d)を0として出力し、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αよりも小さな第2の閾値βまで低下したときに、舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差(偏差d)をそのまま出力する。
この構成によれば、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αを挟んで小刻みに変化しても制御が切り換わることがないので、制御が安定する。
また、電動パワーステアリング装置100,200では、制限部(偏差制限部80)は、トーションバー4に作用するトルクが第1の閾値αから第2の閾値βの範囲内にあるときは、トーションバー4に作用するトルクが大きくなるにつれて舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差(偏差d)を小さくする。
この構成によれば、トーションバー4に作用するトルクが大きくなるにつれて舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差(偏差d)を小さくするので、トルクの変化を滑らかにすることができる。したがって、運転者がステアリング部材(ステアリングホイール1)から覚えるトルクの変化による違和感を低減できる。
また、電動パワーステアリング装置100,200では、自動操舵制御部60は、舵角に基づいてステアリング部材(ステアリングホイール1)の角速度を演算する角速度演算部65と、舵角目標値と舵角とに基づいて電動モータ10を制御するための角速度目標値を演算する角速度目標値演算部61と、を備え、舵角目標値に基づく信号と舵角に基づく信号との偏差(偏差d)は、角速度と角速度目標値との偏差dである。
この構成によれば、電動モータ10は角速度に基づいて制御されるので、舵角のみによる制御に比べて制御の精度及び応答性が向上する。
また、電動パワーステアリング装置100,200では、トーションバー4に作用するトルクが一定時間第3の閾値γ以上であるときに、自動操舵制御部60による制御を停止させる介入判定部33をさらに備え、第1の閾値αは、第3の閾値γよりも小さな値に設定される。
この構成によれば、第1の閾値αを第3の閾値γよりも小さな値に設定することで、積分器67bによる偏差dの積算が少ないときに、積分器67bに基づく積分制御を制限できる。これにより、角速度制御部67によって生成される信号(自動操舵目標値)の上昇を早めに抑制できるので、ステアリング操作の速度が遅いときにトルクの上昇に伴う運転者の違和感をより低減できる。
また、電動パワーステアリング装置100,200では、自動操舵制御部60は、車両の車速が早くなるにつれて第1の閾値αを小さくする。
この構成によれば、運転者がステアリング部材(ステアリングホイール1)から覚えるトルクの上昇による違和感を車速に応じて適切に低減できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
電動パワーステアリング装置100,200では、振動補償部70、介入判定部33は、設けられていなくてもよい。また、自動操舵目標値は、角速度目標値及び角速度によって生成されているが、舵角目標値に基づく信号と、舵角センサ15、モータ回転角センサ10aによって検出された舵角に基づく信号と、の偏差に基づいていれば、どのようなものであってもよい。