磁気ヘッドは磁気テープの仕様に合わせて設計されている。磁気テープの薄手化に伴い、磁気テープよりもかなり厚いクリーニングテープを用いて磁気ヘッドをクリーニングした場合、クリーニングテープと磁気ヘッドとのヘッドコンタクトが大きく異なるため、磁気ヘッドの形状を変化させてしまい、その結果、再度磁気テープを走行させた時に、磁気テープと磁気ヘッド間にスペーシングが生じ出力を低下させる恐れがあった。すなわち、磁気テープの厚さとヘッドコンタクトとは密接な関係があることから、磁気テープが薄手化されれば、その薄手化された磁気テープと同じヘッドコンタクトが得られるよう、クリーニングテープも磁気テープに合わせ薄手化することが好ましい。
すなわち、本発明におけるクリーニングテープの全体の厚さは4.5μm以上6.0μm以下が好ましい。4.5μm未満では、クリーニングテープ自体の幅方向の強度が小さくなることでヘッドコンタクトが悪化し、6.0μmより厚くなると、磁気テープの薄手化に対応することが難しくなる。
また、クリーニングテープの全体の厚さは、対象とする磁気記録再生装置で用いられる磁気テープの厚さの80%以上120%以下であることが好ましい。この範囲を外れると、対象とする磁気テープと厚さがかけ離れてしまうため、ヘッドコンタクトが悪化し、ひいては出力の低下に繋がる。
また、全体の厚さを合わせることに加え、対象とする磁気テープと同じ製造工程を利用して、クリーニングテープを作製することが好ましい。こうすることで、厚さのみならず、剛性なども磁気テープと合わせることができ、良好なヘッドコンタクトを得ることができる。また、製造コストを抑えることができる面からも好ましい。
本発明に用いられる非磁性支持体の長手方向のヤング率は6GPa(610kg/mm2)以上が好ましく、8GPa(820kg/mm2)以上がより好ましく、10GPa(1020kg/mm2)以上が最も好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が6GPa(610kg/mm2)以上が好ましいのは、長手方向のヤング率が6GPa(610kg/mm2)未満では、テープ走行が不安定になるためである。また、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率の比は、0.65以上0.86以下の範囲が好ましく、0.70以上0.81以下の範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率の比が、0.65未満あるいは0.86を超えると、ヘッドコンタクトが悪化するからである。
非磁性支持体の厚さは、3.0μm以上4.0μm以下であるものが好ましく、より好ましくは3.1μm以上3.7μm以下である。非磁性支持体の厚さがこの範囲を外れると、ヘッドコンタクトが悪化し、ひいては出力の低下に繋がる。
非磁性支持体材料としては、前記特性を満足するものであれば限定されないが、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレートなどが好ましい。また、非磁性支持体をさらに高剛性化するために、これらの材料を高延伸することで、表面に金属や半金属またはこれらの酸化物の層を設けることで、非磁性支持体を補強することもできる。
クリーニング層の厚さは、0.05μm以上0.30μm以下であることが好ましく、0.08μm以上0.25μm以下であることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、クリーニング層の厚さが0.05μm未満では、均一塗布の安定性に乏しく表面性が悪くなる。またクリーニング層の厚さが0.30μmを超えると、磁気テープの仕様と相関がとれなくなり、ヘッドコンタクトが悪化する、磁気テープとの製造の共通化ができなくなるなどの問題がある。
下塗層の厚さは、0.5μm以上1.3μm以下であることが好ましく、0.5μm以上0.9μm以下であることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、下塗層の厚さが0.5μm未満では、クリーニングテープ自体の幅方向の剛性が低下してしまい、ヘッドコンタクトが悪化し、クリーニングテープ走行中のヘッドに対する緩衝効果が低減してしまうなどの恐れがある。また、下塗層の厚さが1.3μmより厚いと、磁気テープの仕様と相関がとれなくなり、ヘッドコンタクトが悪化する、磁気テープとの製造の共通化ができなくなるなどの問題がある。
バックコート層の厚さは0.3μm以上0.9μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.7μm以下であることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.3μm未満では、クリーニングテープ自体の幅方向の強度が小さくなるために、ヘッドコンタクトが悪化し、0.9μmを越えるとバックコート層側へのカール(クリーニング層が凸になる方向)が大きくなりすぎてヘッドコンタクトが悪化する。
また、カールの大きさは、0.05mm以上0.30mm以下が好ましい。この範囲を外れると、ヘッドコンタクトが悪化する。なお、カールの大きさとは、クリーニング層が凸になる方向へのカールをいう。なお、バックコート層の厚さをコントロールしたり結合剤の種類を適時選定したりすることにより、カールの大きさをこの範囲に設定することができるが、これらの方法に限定されることはない。
ところで、高記録密度対応の磁気ヘッドには、従来のものと比較し、ヘッド表面の磁性薄層部分の材料全体が軟らかく摩耗しやすいため、従来の比較的表面が粗いクリーニングテープで磁気ヘッドをクリーニングすると、ヘッド表面の磁性薄層部分に傷がついたりヘッドの寿命が短くなったりするなどもさることながら、ヘッドが偏摩耗を起こすなどの新たな懸念点が生まれる。
そこで、高記録密度対応の磁気ヘッドに関しては、従来注目されていなかったヘッドの偏摩耗という問題に対処しなければならない。
すなわち、クリーニング層の中心線平均表面粗さは4.0nm以上8.0nm以下であることが好ましい。また、クリーニング層の中心線平均表面粗さは、対象とする磁気テープの表面粗さよりも大きいことが好ましい。この範囲が好ましいのは、クリーニング層の中心線平均表面粗さが4.0nmよりも小さいと、クリーニング効果が小さくなり、8.0nmを超えてしまうと、粗大突起がヘッド表面の磁性薄層部分を傷付けてしまうからである。
また、鋼球摩耗量は0.8×10−6mm3以上3.5×10−6mm3以下であることが好ましい。この範囲が好ましいのは、磁気ヘッドとクリーニングテープが接触する際、鋼球摩耗量が0.8×10−6mm3よりも小さいと、クリーニング効果や、偏摩耗を修復する効果が小さくなり、3.5×10−6mm3よりも大きいと、クリーニング層の研磨能力が高くなりすぎることで、ヘッド寿命を短くしてしまうからである。
クリーニング層の中心線平均表面粗さや鋼球摩耗量を上記範囲に設定するには、例えば、研磨剤の種類や含有率条件、分散時の処理条件、非磁性支持体にクリーニング層を塗布形成した後に行うカレンダ処理条件、クリーニング層に施すラッピング/ロータリ/ティッシュ処理(LRT処理)の条件を単独または組み合わせてコントロールする他、従来公知の他の方法でコントロールすることができる。また、磁気テープと製造を共通化することを考慮すると、塗膜組成は共通にして、カレンダ処理条件、LRT処理の条件などをコントロールすることがより好ましい。なお、LRT処理とは、一般に、クリーニングテープのクリーニング層表面を研磨テープで研磨する工程(L:ラッピング)と、その後に回転ドラムでクリーニングテープのクリーニング層表面を平滑化する工程(R:ロータリ)と、その後にクリーニングテープのクリーニング層表面またはクリーニング層表面およびバックコート層表面の汚れを拭き取る工程(T:ティッシュ)とを含む処理方法のことをいう。上記、カレンダ、ロータリ条件を変化させることで、クリーニング層の中心線表面粗さがコントロールでき、カレンダ、ラッピング、ロータリ条件を変化させることで、クリーニング層の鋼球摩耗量がコントロールできる。
従来、例えば、記録再生がヘリカルスキャン方式のものにおいては、磁気誘導型ヘッドなどが用いられているが、さらに高記録密度を目指す場合には、磁気抵抗効果素子型ヘッド(MRヘッド)などの高感度磁気ヘッドが必要となる。MRヘッドは、使用時に電流が流されているので、電気抵抗の大きな帯電し易い材料が接触した場合にMR素子が静電破壊される一方、過度に導電性の良いものが接触すると、磁気ヘッドに流されている電流が磁気テープに流れ、その電流による磁界が磁気テープからの磁界を乱すので、MRヘッドにノイズが発生し、正常に機能しなくなるという問題がある。そこで、このようなMRヘッドに用いるクリーニングテープとしては、クリーニングテープと磁気ヘッドの静電破壊や電流の発生による動作不良を生じさせないために、クリーニングテープの表面電気抵抗は、3×103Ω/sq以上5×108Ω/sq以下であることが好ましい。
クリーニングテープの表面電気抵抗は、「社団法人 日本磁気メディア工業会刊 磁気メディア技術マニュアルNo.6 磁気メディアの特性・性能 1993年3月、18頁」に記載の方法で測定することができる。
従来、磁気ヘッドの表面の傷付けを防止することや、磁気ヘッドとのヘッドコンタクトを良好にするために様々な提案がなされている。
特許文献1では、1.5〜5.5μm厚の芳香族ポリアミド支持体上の強磁性粉末及び結合剤を含むクリーニング層のMIRAU法による表面粗さRaが6〜12nm、全体の厚さが4.0〜7.0μmであるクリーニングテープを提案している。支持体および全体の厚さが、本発明で提案している3.0μm以上4.0μm以下および4.5μm以上6.0μm以下と、また、表面粗さが4.0nm以上8.0nm以下と、範囲が重なる部分があるものの、特許文献1では、鋼球摩耗量の好ましい数値範囲については何も言及されていない。また、実施例にて開示されているヘッド摩耗量から推測すると、特許文献1のクリーニングテープでは、研磨能力が高くなりすぎて、ヘッド寿命が短くなると推定される。これは、クリーニング層の鏡面化処理の際に樹脂ロールを用いているために、表面粗さ形状が、Raから想定されるよりも、実際の最大突起高さが大きいからと考えられる。
特許文献2では、芳香族ポリアミド支持体上に下層塗布層とクリーニング層とをこの順に有し、クリーニング層の表面粗さRaが3〜6nmであり、クリーニング層面が室温において凸向きに0.4〜2.0mmの範囲のカールを有するクリーニングテープを提案している。表面粗さが、本発明で提案している4.0nm以上8.0nm以下と範囲が重なる部分があるものの、カールの好ましい範囲が0.4〜2.0mmであることを開示しており、本発明で提案している0.05mm以上0.30mm以下とは異なる。本発明者らの検討によると、この範囲では、カールが大きくなりすぎヘッドコンタクトが悪化する。
特許文献3では、テープ走行方向におけるスティフネスE×T3(E:クリーニングテープのヤング率、T:クリーニングテープの厚さ)が1×10−3〜5×10−3(N・mm)であり、表面粗さRaが10〜20nmであることを特徴とするクリーニングテープを提案している。本発明において提案しているクリーニングテープのスティフネスは、例えばおよそ1.6×10−3(N・mm)ほどであり、特許文献3で提案されている範囲と重なる部分があるものの、中心線平均表面粗さに関しては、特許文献3は10〜20nmを提案しており、本発明で提案する4.0nm以上8.0nm以下とは異なる。そのため、研磨能力が高くなりすぎて、ヘッド寿命が短くなる。
特許文献4では、クリーニング層の厚さが0.05〜1.0μmであり、角型比が0.6〜0.98であることを特徴とし、蒸着テープとメタルテープとのヘッドあたり互換性を良好にした磁気記録装置用クリーニング媒体を提案している。特許文献4では、鋼球摩耗量の好ましい数値範囲については何も言及されていない。また、特許文献4では、中心線平均表面粗さが1.0〜8.0nmが好適であると開示されているものの、実施例において、鏡面化処理を施す際には、温度40℃で金属ロールとエポキシ樹脂ロールから構成されるロールを用いているため、中心線平均表面粗さが本発明と同じ程度であっても、研磨能力が本発明よりも高くなり、ヘッド寿命が短くなると推測される。
また、上記各特許文献には本発明で課題としているヘッドの偏摩耗対策についての概念は一切記載されておらず、ヘッドの偏摩耗対策方法を見出したのは、本発明が初めてである。
次に、本発明のクリーニングテープの構成要素について詳細に説明する。
〈クリーニング層〉
クリーニング層に含有させる研磨剤には、強磁性鉄系金属磁性粉末や窒化鉄系磁性粉末、板状六方晶フエライト磁性粉末などの磁性粉末を用いることができる。
強磁性鉄系金属磁性粉末や窒化鉄系磁性粉末の平均粒子径は、10nm以上150nm以下の範囲にあるのが好ましく、15nm以上100nm以下の範囲がより好ましく、20nm以上60nm以下の範囲が最も好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm未満であると、粒子の表面エネルギーが大きくなって分散が困難になり、平均粒子径が150nmより大きくなると、高記録密度に対応しうる磁気テープの仕様と相関がとれなくなる。
また、板状六方晶フエライト磁性粉末の平均粒子径(板面方向の大きさ)は10nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上30nm以下がより好ましく、10nm以上20nm以下がさらに好ましい。平均粒子径が10nm未満となると、粒子の表面エネルギーが増大するため塗料中への分散が困難になり、50nmを超えると、高記録密度に対応しうる磁気テープの仕様と相関がとれなくなる。
なお、上記の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真から各粒子の最大径(針状粉では長軸径、板状粉では板径)を実測し、100個の平均値により求めたものである。
また、この強磁性鉄系金属磁性粉末や窒化鉄系磁性粉末のBET比表面積は、35m2/g以上が好ましく、40m2/g以上がより好ましく、50m2/g以上が最も好ましい。通常100m2/g以下である。六方晶フエライト磁性粉末のBET比表面積は、1m2/g以上100m2/g以下が好ましい。
なお、磁性粉末として、本発明のクリーニングテープのクリーニング層と対象となる磁気テープの磁性層とで同じ強磁性鉄系金属磁性粉末や窒化鉄系磁性粉末を使用する場合には、その保磁力は80kA/m以上320kA/m以下が好ましく、飽和磁化量は、80A・m2/kg以上200A・m2/kg以下(80emu/g以上200emu/g以下)が好ましく、100A・m2/kg以上180A・m2/kg以下(100emu/g以上180emu/g以下)がより好ましい。六方晶フエライト磁性粉末の保磁力は、120kA/m以上320kA/m以下が好ましく、飽和磁化量は、40A・m2/kg以上70A・m2/kg以下(40emu/g以上70emu/g以下)が好ましい。なお、これらの磁性粉末の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で外部磁場1273.3kA/m(16kOe)の条件で測定した場合のものである。
クリーニング層に含有させる非磁性粉末としては、例えばα−アルミナ、β−アルミナ、溶融アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素などが挙げられ(カーボンブラックのような軟質の非磁性粉末は除く)、これらは単独あるいは組み合わせて用いることができる。これらの平均粒子径は10nm以上500nm以下、より好ましくは60nm以上300nm以下である。この範囲が好ましいのは、粒子径が10nm未満であると分散が困難となり、500nmを超えると表面性が悪化してしまうからである。なお、研磨剤の添加量は磁性粉末に対して、5重量%以上13重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%であることがより好ましい。また、これらの一部は、結合剤と有機溶剤中に分散されたスラリーとして添加されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
クリーニング層には、導電性向上と表面潤滑性向上を目的に従来公知のカーボンブラック(CB)を添加することができる。これらのCBとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用でき、平均粒子径が10nm以上100nm以下のものが好ましい。この範囲が好ましいのは、粒径が10nm未満になるとカーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、クリーニング層が脆弱になってしまう。添加量は磁性粉末に対して0.2重量%以上5重量%以下が好ましく、0.5重量%以上4重量%以下がより好ましい。
クリーニング層(後述する下塗層においても同様)に含有させる結合剤としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂とを組み合わせたものが挙げられる。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。
官能基として-COOH、-SO3-M、-OSO3-M、-P=O(OM)3、-O−P=O(OM)2[Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩]、-OH、-NR'-R''、-N+-R'''-R''''R'''''[R'、R''、R'''、R''''、R'''''は水素または炭化水素基]、エポキシ基を有する高分子からなるウレタン樹脂などの結合剤が使用される。このような結合剤を使用するのは、上述のように磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SO3M基同士の組み合わせが好ましい。
これらの結合剤は、全固形分100重量部に対して、7重量部以上50重量部以下、好ましくは10重量部以上35重量部以下の範囲で用いられる。また、結合剤として、塩化ビニル系樹脂5重量部以上30重量部以下と、ポリウレタン樹脂2重量部以上20重量部以下とを、複合して用いるのが最も好ましい。
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用することが好ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、バインダ樹脂100重量部に対して、通常1重量部以上30重量部以下の割合で用いられる。より好ましくは5重量部以上20重量部以下である。
〈下塗層〉
本発明のクリーニングテープにおいては、非磁性支持体とクリーニング層との間に下塗層を設けることが好ましい。下塗層に添加する非磁性粉末には、例えばα−アルミナ、β−アルミナ、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、含水酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素などが挙げられる。通常、長軸長0.05μm以上0.2μmμm以下、短軸長5nm以上200nm以下の非磁性の酸化鉄を主に、必要に応じて平均粒子径0.01以上0.1μm以下のカーボンブラック、平均粒子径0.1μm以上0.5μm以下の酸化アルミニウムを補助的に含有させることができる。
〈バックコート層〉
本発明のクリーニングテープにおいては、走行性向上などを目的として、非磁性支持体におけるクリーニング層とは反対側の面にバックコート層を設けることが好ましい。
バックコート層に含ませるカーボンブラック(CB)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。通常、小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラックを使用する。小粒径カーボンブラックには、平均粒子径が5nm以上200nm以下のものが使用されるが、平均粒子径10nm以上100nm以下のものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、平均粒子径が10nm以下になるとカーボンブラックの分散が難しく、平均粒子径が100nmを超えると、多量のカーボンブラックを添加することが必要になり、表面が粗くなることにより、クリーニング層への裏移り(エンボス)の原因になるからである。大粒径カーボンブラックとして、小粒径カーボンブラックの5重量%以上15重量%以下、平均粒子径200nm以上400nm以下の大粒径カーボンブラックを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラック合計の添加量は全無機粉末重量を基準にして60重量%以上98重量%以下が好ましく、70重量%以上95重量%以下がより好ましい。中心線表面平均粗さは3nm以上8nm以下が好ましく、4nm以上7nm以下がより好ましい。
また、バックコート層には強度向上を目的に、平均粒子径が10nm以上700nm以下、より好ましくは20nm以上400nm以下の非磁性粉末を添加することができる。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm未満であると非磁性粉末の分散性が悪く、400nmを超えると突起により表面が粗くなりすぎてしまうためである。非磁性粉末の成分は、アルミニウムに限らず、セリウムなどの希土類元素、ジルコニウム、珪素、チタン、マンガン、鉄などの元素の酸化物または複合酸化物が用いられる。添加量はバックコート層中のバインダ樹脂を除く全固形分を基準にして2重量%以上40重量%以下が好ましく、5重量%以上30重量%以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、2重量%未満であると、添加による補強効果が十分に発揮されず、40重量%を超えると突起により表面性が粗くなりすぎてヘッド摩耗が大きくなるからである。
バックコート層には、結合剤として、前述したクリーニング層や下塗層に用いる樹脂と同じものを使用できるが、これらの中でも摩擦係数を低減し走行性を向上させるため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを複合して併用することが好ましい。バインダ樹脂の含有量は、通常、前記カーボンブラックと前記無機非磁性粉末との合計量100重量部に対して40重量部以上150重量部以下、好ましくは50重量部以上120重量部以下、より好ましくは60重量部以上110重量部以下、さらに好ましくは70重量部以上110重量部以下である。前記範囲が好ましいのは、50重量部未満では、バックコート層の強度が不十分であり、120重量部を越えると摩擦係数が高くなりやすいためである。セルロース系樹脂を30重量部以上70重量部以下、ポリウレタン系樹脂を20重量部以上50重量部以下使用することが好ましい。また、さらに結合剤を硬化するために、ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を用いることが好ましい。
バックコート層には、前述したクリーニング層や下塗層に用いる架橋剤と同様の架橋剤を使用する。架橋剤の量は、結合剤100重量部に対して、通常、10重量部以上50重量部以下の割合で用いられ、好ましくは10重量部以上35重量部以下、より好ましくは10重量部以上30重量部以下である。前記範囲が好ましいのは、10重量部未満ではバックコート層の塗膜強度が弱くなりやすく、35重量部を越えるとSUSに対する動摩擦係数が大きくなるためである。
〈潤滑剤〉
下塗層には、クリーニング層と下塗層に含まれる全粉末に対して0.5以上重量%以上5.0重量%以下の高級脂肪酸を含有させ、0.2重量%以上3.0重量%以下の高級脂肪酸のエステルを含有させると、ヘッドとの摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の高級脂肪酸添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5.0重量%を越えると下塗層が可塑化してしまい強靭性が失われる。また、この範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えるとクリーニング層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付くなどの副作用があるからである。脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸としては、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。磁性層における脂肪酸の添加量としては、クリーニング層と下塗層の間で脂肪酸が転移するので、特に限定されるものではなく、クリーニング層と下塗層を合わせた脂肪酸の添加量を上記の量とすればよい。下塗層に脂肪酸を添加すれば、必ずしもクリーニング層に脂肪酸を添加しなくてもよい。
また、クリーニング層には、炭素数が8乃至22である飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族ビスアミドなどを添加することが好ましく、例えばパルミチン酸、ステアリン酸などのアミドが使用可能である。
脂肪酸アミドの融点は20℃以上150℃以下であることが好ましく、30℃以上110℃以下であることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、融点が150℃を超えると、塗膜表面にブリードアウトを生じやすいためである。また、脂肪酸アミドの添加量はクリーニング層に含有される磁性粉末100重量部に対して、1.0重量部以上3.5重量部以下であることが好ましく、2.0重量部以上3.0重量部以下であることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、添加量が1.0重量部未満であると脂肪酸アミドの塗膜表面への移行性効率が低下し、ヘッド/クリーニング層界面での直接接触が起りやすく焼付き防止効果による汚れの低減効果が小さくなり、3.5重量部を越えると塗膜表面上に過剰にブリードアウトしてしまいヘッド汚れなどの欠陥が発生するためである。
また、クリーニング層に、クリーニング層と下塗層に含まれる全粉末に対して0.2重量%以上3.0重量%の高級脂肪酸のエステルを含有させると、テープ走行時の摩擦係数が小さくなるので好ましい。この範囲の高級脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では摩擦係数低減効果が小さく、3.0重量%を越えるとヘッドに貼り付くなどの副作用があるためである。なお、クリーニング層の潤滑剤と下塗層の潤滑剤の相互移動を排除するものではない。
〈有機溶剤〉
磁性塗料、非磁性塗料、バックコート塗料に使用する有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラハイドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は混合して使用され、さらにトルエンなどと混合して使用される。
〈製造工程〉
本発明のクリーニング層表面を、エージング処理条件や鏡面化処理条件をコントロールすることで、クリーニング層表面のクリーニング効果を制御することができる。
本発明のクリーニングテープの製造において、各塗料塗布後のエージング処理は、40℃以上100℃以下の範囲の雰囲気下が好ましく、60℃以上80℃以下の範囲の雰囲気下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、エージング処理での温度が40℃未満であると、生産効率が低下したり塗膜の架橋率が低下したりすることで剛性が不足してしまい、100℃を超えると媒体の熱変形が大きくなってしまうためである。エージング処理時間は、20時間以上100時間以下が好ましく、48時間以上80時間以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、エージング処理時間が20時間未満では、塗膜の架橋率が不足してしまい、100時間を超えると生産効率が低下してしまうためである。
また、鏡面化処理は主に5段乃至9段、より好ましくは7段からなる金属ロールを用いて行うことが好ましい。また、処理の温度は50℃以上150℃以下が好ましく、90℃以上110℃以下の範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは、処理温度が50℃未満では、塗膜中の研磨剤の充填性が低下して塗膜の剛性が不足してしまい、150℃を超えると、ロールへ塗膜成分が付着してロール汚れが増大してしまうためである。処理の線圧は9.8×104N/m以上2.7×105N/m以下が好ましく、1.6×105N/m以上2.3×105N/m以下の範囲がより好ましい。この範囲が好ましいのは、処理線圧が9.8×104N/m未満であると塗膜中の研磨剤の充填性が低下して塗膜の剛性が不足してしまい、2.7×105N/mを超えると、クリーニング層中の研磨剤がクリーニング層中に潜り込む割合が高くなり、クリーニング効果が低減するためである。
なお、前述した塗布後のエージング処理、鏡面化処理の順序は限定されるものではなく、クリーニングテープの種類、用途により、エージング処理後鏡面化処理、あるいは鏡面化処理後エージング処理のどちらかの方法を選択することができる。
〈LRT処理条件〉
本発明のクリーニング層表面を、LRT処理条件をコントロールして調整することでクリーニング層表面のクリーニング効果を制御することができる。
ラッピング処理では、図1に示すようにラッピングテープ1は、回転ロール2によってクリーニングテープ3の送り方向とは反対方向に、2cm/min以上30cm/min以下の範囲に含まれる一定の速度で移動させることが好ましい。図1の下部側からガイドブロック4によって押さえられることによってクリーニングテープ3のクリーニング層3A側と接触し、このときのクリーニングテープ巻き出しテンションおよびラッピングテープのテンションを一定(各0.39N、0.98N)として研磨処理を行うことが好ましい。この工程で使用するラッピングテープ1は、例えば、M20000、WA10000、K10000などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ロータリ処理では、図1に示す空気抜き用溝付ロータリホイール5、例えば、協和精工社製ロータリホイール(幅1吋(25.4mm)、直径30mmφ、空気抜き用溝2mm幅、溝本数12)を使用することが好ましい。クリーニングテープ3の走行方向と反対方向に、200rpm以上5000rpm以下の範囲に含まれる一定の回転速度で回転させることが好ましい。また、クリーニングテープ3のクリーニング層3Aに対して30度以上200度以下の範囲に含まれる一定の接触角度で接触させ、クリーニング層3Aの表面処理を行うことが好ましい。回転ドラムを構成するロータリホイールの材質は、通常アルミニウム金属およびSUS鋼であるが、これら以外にMRヘッド用のスライダ材料(例えば、アルミナ/チタニア/カーバイド)などを使用することが好ましいが、これらに限定されるものではない。ホイールの材質の表面粗さは、0.02μm以下が好ましく、0.015μm以下がより好ましく、0.01μm以下がさらに好ましい。実際上の下限は金属加工上の問題から0.005μmの表面粗さが実状である。この範囲が好ましいのは、0.02μmを越えると、磁性層の表面性が粗くなり過ぎるためである。
ティッシュ処理では、ティッシュ6として、例えば東レ社製のトレシーなどの不織布を、クリーニングテープ3の送り方向と反対方向に2mm/min以上30mm/min以下の範囲に含まれる一定の速度で送り、回転棒7・8でそれぞれクリーニングテープ3のバックコート層3Bおよびクリーニング層3Aの表面に押し当ててクリーニング処理を行うことが好ましい。この工程により、スリッタ工程、ラッピング処理工程、ロータリ工程等で発生した研磨屑や未反応の架橋剤が除去される。このティシュ処理工程は、可能な限りロータリ工程に近いところで行うことが好ましい。その理由は、ロータリ工程で絞りだされた未反応の架橋剤が再び磁性層に染み込まないうちに未反応の架橋剤を拭き取れるからである。
なお、LRT処理を行う際のクリーニングテープ3の送り速度は、200m/min以上1000m/min以下の範囲に含まれる一定の速度であることが好ましい。
以下に実施例によって本発明を詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例の部は重量部を示す。
クリーニング層の厚さと下塗層の厚さをそれぞれ0.1μm、0.5μmに変更した以外は実施例1と同様にして実施例5のクリーニングテープを作製した。
(比較例1):
非磁性支持体をポリエチレンテレフタレートフイルム(MD:7.5GPa、TD:5.5GPa、厚さ4.4μm、商品名:ルミラー、東レ社製)に変更し、クリーニング層の厚さと下塗層の厚さをそれぞれ0.35μm、1.4μmに変更した以外は、実施例4と同様にして比較例1のクリーニングテープを作製した。
(比較例2):
≪クリーニング層用塗料成分≫の(1)混練工程の組成を下記のように変更し、バックコート層の厚さを1.0μmに変更し、鏡面化処理を2回施した以外は、実施例1と同様にして比較例2のクリーニングテープを作製した。
≪クリーニング層用塗料成分≫
(1)混練工程
・ 強磁性鉄系金属粉 100部
〔Co/Fe:24at%、
Y/(Fe+Co):4.7at%、
Al/(Fe+Co): 8.2at%、
σs :155A・m2/kg、
Hc:188kA/m、
平均粒子径:100nm〕
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 12部
(含有−SO3 Na基:0.7×10−4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 5.5部
(含有−SO3 Na基:1.0×10−4当量/g)
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 2.0部
・α−アルミナ (平均粒子径:200nm) 20部
・メチルアシッドホスフェート(MAP) 2.5部
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 80部
(比較例3):
バックコート層の厚さを1.2μmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3のクリーニングテープを作製した。
(比較例4):
≪クリーニング層用塗料成分≫の(2)希釈工程の組成を下記のように変更し、鏡面化処理とLRT処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして比較例4のクリーニングテープを作製した。
≪クリーニング層用塗料成分≫
(2)希釈工程
・α−アルミナスラリー 5部
(住友化学社製、α−アルミナ平均粒子径:200nm、含有率45%)
・ステアリン酸n−ブチル(SB) 1.0部
・パルミチン酸アミド 2.0部
・シクロヘキサノン 110部
・メチルエチルケトン 110部
・テトラハイドロフラン 30部
・トルエン 80部
(比較例5):
鏡面化処理の際、金属ロールから樹脂ロールに変更し、LRT処理時のクリーニングテープの送り速度を300m/分に変更した以外は、実施例4と同様にして比較例5のクリーニングテープを作製した。
(比較例6):
鏡面化処理の際の線圧を2.94×105N/mに変更した以外は、実施例5と同様に比較例6のクリーニングテープを作製した。
評価は、以下の方法にて行った。
〈中心線平均表面粗さ〉
ZYGO社製汎用三次元表面構造解析装置NewView5000による走査型白色光干渉法にて、測定視野を350μm×260μm、Z軸方向の走査長を5μmで測定し、クリーニング層の中心線平均表面粗さをRaとして求めた。
〈鋼球摩耗体積〉
20℃、50%RHの環境下で、直径6.35mm(1/4インチ)のSUS製鋼球を、荷重3gf(29.4mN)で磁気テープ上の長さ20mmを、1往復ごとにテープ上の未測定部分を擦るように、摺動速度58.3mm/sで合計50往復させ、テープサンプルのみを交換し、同様にして20サンプル摺動させたとき、鋼球の摺動によって生じた円形の摩耗面の半径(r:mm)と鋼球の半径(R:mm)とから、下記の式より磁性層の鋼球摩耗体積(V:mm3)を算出した。
V=(π/3)×{2R3 −(2R2 +r2 )*√(R2 −r2 )}
〈ヘッド傷付き〉
23℃、50%RHの環境下でクリーニングテープを5分間走行させた後のヘッド摺動面を、ニコン社製光学顕微鏡MM−60を用い、500倍の倍率で観察した。スクラッチなしの場合を○、スクラッチありの場合を×とした。
〈ヘッド摩耗〉
ヘッドが初期状態のヒューレットパッカード社製DAT72ドライブにおいて、アカシ社製微小硬度計HM−122を用い、ヘッド摺動面にヌープ圧子を一定荷重(50mN)で押し当て圧痕を付け、その圧痕の長軸長(d1)を測定した。そして、23℃、50%RHの環境下でクリーニングテープを30分間走行させた後、再び圧痕の長軸長(d2)を測定し、下記に示す式で算出したヘッド摩耗量(○:0.02μm未満、△:0.02μm以上0.05μm以未満、×:0.05μm以上)を評価した。
ヘッド摩耗量h(μm):h=0.0328*(d1−d2)
〈出力回復効果および再生波形平坦度〉
ヘッドが初期状態のヒューレットパッカード社製DAT72ドライブを用い、日立マクセル社製DAT72テープ(リファレンステープ)の出力を測定した。そして、偏摩耗を生じさせることを目的に、50℃、5%RHの環境下で市販のDAT72テープを長時間走行させ、ヘッドに偏摩耗が生じ、リファレンステープの出力が50%以下になることを確認してから、クリーニングテープを2分間走行させた。その後、リファレンステープの最大出力値を測定し、その値の初期状態での出力の値に対する割合(○:95%以上、△:75%以上95%未満、×:75%未満)を求め、出力回復効果として評価した。また、RF再生出力波形をオシロスコープで観察し、再生出力波形の最大部に対する最小部の割合(○:90%以上、△:70%以上90%未満、×:70%以下)を求め、再生波形平坦度として評価した。
〈カールの大きさ〉
長さ10cm(テープ幅:3.81mm)に切り取ったクリーニングテープをガラス板上にクリーニング層を上向けにしてのせ、幅方向にカールしている状態をガラス表面から最も高い点までの高さを、ニコン社製光学顕微鏡MM−60にて観察し、測定した値である。
評価結果を表1に示す。
表1から分かるように、比較例1では、クリーニングテープの厚さが本発明の範囲を越えて厚いため、クリーニングテープを走行させることにより磁気ヘッドが形状異常を起こして、ヘッドコンタクトが悪化し、再生波形平坦度が悪化した。比較例2では、クリーニングテープの研磨能力が本発明の範囲を越えて高いため、ヘッドを傷付け、ヘッド寿命が短くなった。比較例3では、カールの大きさが大きいため、ヘッドコンタクトが悪化し、再生波形平坦度が悪化した。比較例4では、研磨能力が本発明の範囲をはずれて低くなり、出力回復効果が低下した。比較例5では、クリーニングテープの表面が本発明の範囲を越えて粗く、研磨能力も本発明の範囲を越えて高いため、ヘッドを傷付け、ヘッド寿命を短くしてしまった。比較例6では、クリーニングテープの表面が本発明の範囲をはずれて平滑で、研磨能力が本発明の範囲をはずれて低いため、ヘッドコンタクトを悪化させることはないものの、クリーニング効果を発揮できない。
一方、実施例1乃至5に係る本発明の各クリーニングテープは、比較例1乃至6に係る各クリーニングテープに比べ、各諸特性で優れている。また、前述の方法により、各実施例におけるクリーニングテープの表面電気抵抗を測定すると、いずれも3×103Ω/sq以上5×108Ω/sq以下の範囲にあった。このように、本発明によれば、適度な研磨能力を有するため、良好なヘッドコンタクトが得られ、ヘッド形状を変化させずヘッドの偏摩耗を修復できる、優れたクリーニングテープを提供できる。