JP2005208195A - 光学素子の多層膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】 固体レーザ等に用いられる光学結晶上に形成される多層膜において、クラックの発生を有効に防止することができる多層膜を提供する。
【解決手段】 光学結晶からなる基板10に複数の光学薄膜(第1層膜31乃至第5層膜35及び介在層20)を積層してなる光学素子Aの多層膜Bであって、複数の光学薄膜のうち介在層20は、SiO2膜である。また、基板10は、CLBO又はLBOである。
【選択図】 図1
【解決手段】 光学結晶からなる基板10に複数の光学薄膜(第1層膜31乃至第5層膜35及び介在層20)を積層してなる光学素子Aの多層膜Bであって、複数の光学薄膜のうち介在層20は、SiO2膜である。また、基板10は、CLBO又はLBOである。
【選択図】 図1
Description
本発明は光学素子の多層膜に係り、特に固体レーザ等に用いられる光学結晶上にコートされる多層膜であって、応力によるクラックの発生が防止された光学素子の多層膜に関する。
従来、Nd:YAG,Nd:YVO4,Nd:YLiF4等の半導体LD励起による高出力固体レーザと非線形光学結晶(素子)との組合せにより、さまざまな波長変換が行われている。このような波長変換機能を有する非線形光学結晶として、BBO,LBO,CBO,CLBO,KTP等が知られている。
一般に非線形光学結晶を含む光学材料表面には、使用される一又は複数の光に対し反射防止効果を備えこれらを選択的に透過させる反射防止膜が施される。このような反射防止膜を表面に施さない場合、使用される波長光に対して数%程度以上の反射が生じてしまう。
例えば、KTP結晶を基板として形成された2波長反射防止膜としては、屈折率が異なる2種類の誘電体膜(Al2O3,SiO2)を交互に積層(例えば、6層)し、各層の膜厚を基本波長の0.25倍以下とする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
特開平4−333834号公報(第4−7頁、第2−3図)
例えば、KTP結晶を基板として形成された2波長反射防止膜としては、屈折率が異なる2種類の誘電体膜(Al2O3,SiO2)を交互に積層(例えば、6層)し、各層の膜厚を基本波長の0.25倍以下とする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、このような反射防止膜を実際に形成する場合には、所定の光学性能を確保するため、積層させる薄膜材料の種類に制限が生じる。このような制限のもとで積層された光学薄膜は、薄膜自体が持つ応力に起因してクラックが生じてしまう場合がある。
また、薄膜自体が持つ応力以外にも、基板に使用する光学材料の熱膨張率と薄膜の熱膨張率に大きな差がある場合には、薄膜にクラックが発生してしまうことがある。これは、薄膜が光学材料の熱膨張による変形に追従できないことによるもので、反射防止膜をコートした後やコート後の環境試験等で薄膜にクラック(割れ)が発見されることがある。
そして、非線形光学結晶等の光学結晶に形成された反射防止膜について、クラックの発生を防止する技術には先行例がない。
また、薄膜自体が持つ応力以外にも、基板に使用する光学材料の熱膨張率と薄膜の熱膨張率に大きな差がある場合には、薄膜にクラックが発生してしまうことがある。これは、薄膜が光学材料の熱膨張による変形に追従できないことによるもので、反射防止膜をコートした後やコート後の環境試験等で薄膜にクラック(割れ)が発見されることがある。
そして、非線形光学結晶等の光学結晶に形成された反射防止膜について、クラックの発生を防止する技術には先行例がない。
本発明の目的は、上記問題に鑑み、固体レーザ等に用いられる光学結晶上に形成される多層膜において、クラックの発生を有効に防止することができる多層膜を提供することにある。
前記課題は、光学結晶からなる基板に複数層の光学薄膜を積層してなる光学素子の多層膜であって、前記複数層のうち前記基板と接する層には、応力緩和層としてのSiO2膜が形成されることにより解決される。
光学結晶は、一般にガラスと比べて線膨張係数が大きいため、成膜時の基板の熱膨張による応力を原因として、基板と接する光学薄膜にクラックが生じるおそれがある。しかし、本発明は、光学結晶からなる基板に設けた多層膜を構成する光学薄膜のうち、基板と接する層をSiO2で形成し応力緩和層としている。SiO2膜は、ポーラスな膜(膜層中に多くの空孔が存在し、分子充填率が低い)であるため、応力緩和効果を有すると考えられる。このように構成することにより、基板と接する層であるSiO2膜がその後の多層膜のクッション層として働くため、多層膜にクラックが発生することを防止することができ、光学素子の良品率を向上させることが可能となる。これにより、光学素子の品質に対する信頼性が向上する。
光学結晶は、一般にガラスと比べて線膨張係数が大きいため、成膜時の基板の熱膨張による応力を原因として、基板と接する光学薄膜にクラックが生じるおそれがある。しかし、本発明は、光学結晶からなる基板に設けた多層膜を構成する光学薄膜のうち、基板と接する層をSiO2で形成し応力緩和層としている。SiO2膜は、ポーラスな膜(膜層中に多くの空孔が存在し、分子充填率が低い)であるため、応力緩和効果を有すると考えられる。このように構成することにより、基板と接する層であるSiO2膜がその後の多層膜のクッション層として働くため、多層膜にクラックが発生することを防止することができ、光学素子の良品率を向上させることが可能となる。これにより、光学素子の品質に対する信頼性が向上する。
また、前記多層膜を、光学結晶であるCLBO又はLBOからなる基板に積層するとよい。CLBOは屈折率がSiO2と略同程度であるので、従来、CLBOにコートしていた多層膜の構成において、新たにSiO2膜を基板と接する位置に追加して形成しても、従来の多層膜の光学特性にほとんど影響を与えることがなく、多層膜のクラックの発生を防止することができる。
また、前記基板と接するSiO2膜は、50nmから500nmの範囲の膜厚に形成すればよい。前記多層膜は、反射防止膜とすることができる。
また、前記基板と接するSiO2膜は、SiO2を蒸着材料として真空蒸着法にて形成することができる。また、SiOを蒸着材料として酸素雰囲気中で蒸着することも可能である。
また、前記基板と接するSiO2膜は、SiO2を蒸着材料として真空蒸着法にて形成することができる。また、SiOを蒸着材料として酸素雰囲気中で蒸着することも可能である。
本発明は以上のように構成されているので、固体レーザに用いられる光学結晶に形成される反射防止膜において、基板に接する層がSiO2にて形成されることにより、SiO2膜が光学結晶の熱膨張による応力に起因するクラックの発生を防止し、固体レーザ等に用いられる光学素子の信頼性を向上させることができる。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施例及び比較例の光学素子の断面説明図である。図2,図4,図6はそれぞれ実施例1,2,3の2波長反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。図3,図5はそれぞれ比較例1,2の2波長反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。
以下に説明する構成等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
以下に説明する構成等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1(A)は、本発明の一実施例の固体レーザ装置に用いられる波長変換素子(光学素子)Aの断面説明図である。また、同図(B)は、比較例に係る波長変換素子A´の断面説明図である。波長変換素子A,A´は、それぞれ波長変換機能を有する非線形光学結晶である基板10に、多層膜B,B´が形成されたものである。
実施例に係る波長変換素子Aの多層膜Bは6層構成であり、基板10の表面から遠い側から順に、光学薄膜である第1層膜31乃至第5層膜35、及び介在層膜20が基板10上に形成されている。
多層膜Bは、この第1層膜31乃至第5層膜35及び介在層膜20によって、所望の波長帯域において入射するレーザ光の反射率が極めて低減された分光反射率特性が達成される。このうち、第1層膜31乃至第5層膜35によって、機能性多層膜である反射防止膜が構成される。一方、第6層膜である介在層膜20によって、積層された反射防止膜の応力緩和が図られており、第6層膜は応力緩和層として機能するものである。
実施例に係る波長変換素子Aの多層膜Bは6層構成であり、基板10の表面から遠い側から順に、光学薄膜である第1層膜31乃至第5層膜35、及び介在層膜20が基板10上に形成されている。
多層膜Bは、この第1層膜31乃至第5層膜35及び介在層膜20によって、所望の波長帯域において入射するレーザ光の反射率が極めて低減された分光反射率特性が達成される。このうち、第1層膜31乃至第5層膜35によって、機能性多層膜である反射防止膜が構成される。一方、第6層膜である介在層膜20によって、積層された反射防止膜の応力緩和が図られており、第6層膜は応力緩和層として機能するものである。
一方、比較例に係る波長変換素子A´の多層膜B´は5層構成であり、基板10の表面から遠い順に、第1層膜31乃至第5層膜35が基板10上に形成されている。つまり、多層膜B´は、反射防止膜として機能する。
以上のように、波長変換素子Aは、波長変換素子A´の第1層膜31乃至第5層膜35に介在層膜20を追加した構成である。したがって、第1層膜31乃至第5層膜35については、使用する光学材料及びその膜厚等は同一である。
以上のように、波長変換素子Aは、波長変換素子A´の第1層膜31乃至第5層膜35に介在層膜20を追加した構成である。したがって、第1層膜31乃至第5層膜35については、使用する光学材料及びその膜厚等は同一である。
実施例及び比較例において、第1層膜31乃至第5層膜35及び介在層膜20は、真空蒸着法を用いて形成した。つまり、真空槽内に光学結晶からなる基板を配置して、蒸着材料を所定条件下で光学膜厚を制御しながら順次所定膜厚となるように蒸着した。
介在層膜20としては、以下に述べるようにSiO2膜を成膜したが、SiO2を蒸着材料として真空蒸着法(電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、高周波加熱蒸着法)を用いてコートした。また、蒸着材料としてSiOを用いて酸素雰囲気中でコートしてもよい。また、これに限らず、イオンプレーティング法やイオンアシスト蒸着法、スパッタリング法等を用いてもよい。
介在層膜20としては、以下に述べるようにSiO2膜を成膜したが、SiO2を蒸着材料として真空蒸着法(電子ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、高周波加熱蒸着法)を用いてコートした。また、蒸着材料としてSiOを用いて酸素雰囲気中でコートしてもよい。また、これに限らず、イオンプレーティング法やイオンアシスト蒸着法、スパッタリング法等を用いてもよい。
実施例1及び比較例1の多層膜B,B´は、波長532nmの可視光及び当該波長の2倍高調波である波長266nmの紫外光を選択的に透過させる2波長反射防止膜である。多層膜B,B´は、CLBO結晶(波長266nmにおいて屈折率約1.52、波長532nmにおいて屈折率約1.47)を基板10として、光入射側(空気側)より順に第1層,第2層,・・・と薄膜を5層又は6層積層した多層膜から成る。また、光学膜厚は、各層材料の屈折率(n)に物理的膜厚(d)を乗じた数であって、設計主波長λ0(532nm)に対する厚さとして表している。
なお、第2層膜及び第4層膜のM3(登録商標Patinal、MERCK社製真空蒸着材料)は、Al2O3とLa2O3の混合物からなる高屈折率材料である。
なお、第2層膜及び第4層膜のM3(登録商標Patinal、MERCK社製真空蒸着材料)は、Al2O3とLa2O3の混合物からなる高屈折率材料である。
比較例1の多層膜B´の膜構成は、上記2波長(532nm及び266nm)を含む前後の波長において分光反射率が0.4%以下となる反射防止帯域が広く得られるように設計されたものである。構成としては、第1層側から第5層側にかけて、低屈折率材料,高屈折率材料が交互に所定の膜厚で積層されたものであり、基板10に接する第5層には、低屈折率材料であるMgF2膜が形成されている。
比較例1(表2)の膜構成による多層膜B´を光学結晶CLBOの基板10上に形成した。多数のサンプルについて信頼性試験等を行ったところ、外観検査において、あるサンプルにクラックが発見された。このように、比較例1では、最適な光学特性を得るように設計した場合、多層膜全体にクラックが生じてしまう場合がある。これは、成膜時の基板10の熱膨張による応力が原因と考えられる。
なお、CLBOの線膨張係数は、a軸方向が2×10−5/℃,c軸方向が−2×10−5/℃程度であり、この値は、10−6〜10−7オーダーであるガラス等の線膨張係数と比べると非常に大きい。したがって、CLBOはSiO2等の薄膜材料と比べて熱に対して変形量が大きく、CLBO基板にコートされた薄膜に対して、大きな応力を与えることとなる。
比較例1(表2)の膜構成による多層膜B´を光学結晶CLBOの基板10上に形成した。多数のサンプルについて信頼性試験等を行ったところ、外観検査において、あるサンプルにクラックが発見された。このように、比較例1では、最適な光学特性を得るように設計した場合、多層膜全体にクラックが生じてしまう場合がある。これは、成膜時の基板10の熱膨張による応力が原因と考えられる。
なお、CLBOの線膨張係数は、a軸方向が2×10−5/℃,c軸方向が−2×10−5/℃程度であり、この値は、10−6〜10−7オーダーであるガラス等の線膨張係数と比べると非常に大きい。したがって、CLBOはSiO2等の薄膜材料と比べて熱に対して変形量が大きく、CLBO基板にコートされた薄膜に対して、大きな応力を与えることとなる。
一方、実施例1の多層膜Bは、比較例1の多層膜B´に所定の膜厚のSiO2からなる介在層を第6層として追加した構成である。本例では、光入射側(空気側)の多層膜に対する介在層として、膜応力を考慮して基板10と第5層膜との間に、SiO2膜をコートしている。このSiO2膜の厚さは、物理的膜厚で約182nm、光学膜厚で0.5である。
実施例1(表1)の膜構成による多層膜Bを光学結晶CLBOの基板10上に形成した。比較例1と同様に、多数のサンプルについて高温放置試験等の信頼性試験を行ったところ、多層膜のクラックはいずれのサンプルについても発見されなかった。このように、実施例1では、介在層であるSiO2膜によって、多層膜の膜割れの発生が有効に防止された。
また、実施例1では、比較例1と比べて、信頼性試験においても非常に良好な結果が得られた。
SiO2膜は、一般には薄膜中で圧縮の内部応力として働くことが知られており、CLBO基板と第5層膜との間に設けることにより、CLBO基板の熱膨張による応力を緩和する働きを持ち、結果として多層膜の亀裂の発生を防ぐことができると考えられる。
実施例1(表1)の膜構成による多層膜Bを光学結晶CLBOの基板10上に形成した。比較例1と同様に、多数のサンプルについて高温放置試験等の信頼性試験を行ったところ、多層膜のクラックはいずれのサンプルについても発見されなかった。このように、実施例1では、介在層であるSiO2膜によって、多層膜の膜割れの発生が有効に防止された。
また、実施例1では、比較例1と比べて、信頼性試験においても非常に良好な結果が得られた。
SiO2膜は、一般には薄膜中で圧縮の内部応力として働くことが知られており、CLBO基板と第5層膜との間に設けることにより、CLBO基板の熱膨張による応力を緩和する働きを持ち、結果として多層膜の亀裂の発生を防ぐことができると考えられる。
図2,図3に、それぞれ実施例1(表1),比較例1(表2)の膜構成における分光反射率特性を示す。先ず、比較例1では、波長266nm及び波長532nm付近において良好な反射防止効果を有しており、少なくとも波長250nmから波長285nm,波長495nmから波長575nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られている。また、波長532nmにおいては、略0%の極めて良好な反射率が得られている。
一方、実施例1では、比較例1の膜構成に追加して第6層として、光学膜厚が0.5のSiO2膜を形成したものであるが、この膜構成による分光反射率特性も良好なものとなった。この膜構成でも、少なくとも波長250nmから波長285nm,波長495nmから波長575nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られた。
一方、実施例1では、比較例1の膜構成に追加して第6層として、光学膜厚が0.5のSiO2膜を形成したものであるが、この膜構成による分光反射率特性も良好なものとなった。この膜構成でも、少なくとも波長250nmから波長285nm,波長495nmから波長575nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られた。
このように、比較例1と実施例1とを比較すると、波長266nm及び波長532nm付近の反射率特性にはほとんど影響を与えないことが分かった。つまり、実施例1では、比較例1と同様の良好な反射率特性を維持したまま、多層膜のクラックを防止することが可能となった。
すなわち、実施例1及び比較例1の基板10として用いた光学結晶は、非線形結晶であるCLBOであり、この光学材料の屈折率は約1.47である。また、介在層の材料として用いたSiO2の屈折率は約1.46である。このように、両者の屈折率が非常に近い値であるため、CLBO基板と第5層膜との間にSiO2膜を形成しても、全体の反射率特性にほとんど影響を与えなかったものと考えられる。
さらに、実施例1のSiO2膜は、光学膜厚が0.5に設定されたため、このことによっても全体の反射率特性にほとんど影響を与えなかったと考えられる。
さらに、実施例1のSiO2膜は、光学膜厚が0.5に設定されたため、このことによっても全体の反射率特性にほとんど影響を与えなかったと考えられる。
実施例2及び比較例2の膜構成による多層膜B,B´も波長266nm及び波長532nmにおいて反射防止効果を有する2波長反射防止膜である。
比較例2の膜構成(表4)は、CLBO基板上に、空気側から低屈折率材料(MgF2)と高屈折率材料(HfO2)を交互に積層した5層膜構成である。比較例2は、上記光学材料をCLBO上に5層積層する場合に、波長266nm及び波長532nm付近で、0.4%以下の反射防止帯域が広く形成されるように設定されたものである。
一方、実施例2の膜構成(表3)は、比較例2の膜構成と同一構成の5層膜を形成し、さらにCLBO基板と第5層膜との間に介在層としてSiO2膜が形成された6層膜構成である。
すなわち、実施例2は、比較例2の膜構成に加えて、CLBO基板と第5層膜との間に、光学膜厚で0.5の厚さのSiO2膜が形成された点が異なる。
比較例2の膜構成(表4)は、CLBO基板上に、空気側から低屈折率材料(MgF2)と高屈折率材料(HfO2)を交互に積層した5層膜構成である。比較例2は、上記光学材料をCLBO上に5層積層する場合に、波長266nm及び波長532nm付近で、0.4%以下の反射防止帯域が広く形成されるように設定されたものである。
一方、実施例2の膜構成(表3)は、比較例2の膜構成と同一構成の5層膜を形成し、さらにCLBO基板と第5層膜との間に介在層としてSiO2膜が形成された6層膜構成である。
すなわち、実施例2は、比較例2の膜構成に加えて、CLBO基板と第5層膜との間に、光学膜厚で0.5の厚さのSiO2膜が形成された点が異なる。
実施例2(表3)の膜構成による多層膜Bを光学結晶CLBOの基板10上に形成した多数のサンプルについても、高温放置試験等の信頼性試験を行った。しかし、多層膜のクラックはいずれのサンプルについても発見されなかった。また、信頼性試験の結果も良好であった。
図4,図5に、それぞれ実施例2(表3),比較例2(表4)の膜構成における分光反射率特性を示す。先ず、比較例2では、波長266nm及び波長532nm付近において良好な反射防止効果を有しており、少なくとも波長240nmから波長280nm,波長505nmから波長520nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られている。また、波長266nm及び波長532nmにおいては、略0%の極めて良好な反射率が得られている。
一方、実施例2では、比較例2の膜構成に追加して第6層として、光学膜厚が0.5のSiO2膜を形成したものであるが、この膜構成による分光反射率特性も良好なものとなった。この膜構成でも、少なくとも波長245nmから波長280nm,波長505nmから波長520nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られた。
一方、実施例2では、比較例2の膜構成に追加して第6層として、光学膜厚が0.5のSiO2膜を形成したものであるが、この膜構成による分光反射率特性も良好なものとなった。この膜構成でも、少なくとも波長245nmから波長280nm,波長505nmから波長520nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られた。
このように、実施例2では、比較例2と同様の良好な反射率特性を維持したまま、多層膜のクラックを防止することが可能となった。
上記実施例1,2では、介在層膜として、SiO2膜を光学膜厚で0.5だけコートしているが、上述のように、CLBOとSiO2とは屈折率が非常に近いため、SiO2膜の膜厚は、必ずしも光学膜厚で0.5(もしくは0.5の整数倍)としなくてもよい。
また、比較例1,2の5層膜構成に、第6層膜としてSiO2膜を50nmから500nmの物理的膜厚の範囲でコートした反射防止膜のサンプルを形成した。そして、これらのサンプルについてクラックの発生の有無を外観観察した。この結果、いずれのサンプルについてもクラックの発生は観察されなかった。また、これらのサンプルについて分光反射率特性を調べたところ、波長266nm及び波長532nmにおいて、広い波長反射防止帯域を維持していることが分かった。
また、比較例1,2の5層膜構成に、第6層膜としてSiO2膜を50nmから500nmの物理的膜厚の範囲でコートした反射防止膜のサンプルを形成した。そして、これらのサンプルについてクラックの発生の有無を外観観察した。この結果、いずれのサンプルについてもクラックの発生は観察されなかった。また、これらのサンプルについて分光反射率特性を調べたところ、波長266nm及び波長532nmにおいて、広い波長反射防止帯域を維持していることが分かった。
実施例3の多層膜Bは、波長1064nm及び当該波長の2倍高調波である波長532nmの光を選択的に透過させる2波長反射防止膜である。多層膜Bは、LBO結晶(波長532nmにおいて屈折率約1.60)を基板10として、光入射側(空気側)より順に第1層,第2層,・・・と薄膜を5層積層した多層膜から成る。そして、実施例3の多層膜Bは、第1層側から低屈折率材料であるSiO2,高屈折率材料であるHfO2を交互に所定の膜厚で積層した構成である。
このとき、介在層としての第5層膜はSiO2膜となり、第5層膜は多層膜のクラックを防止するための応力緩和層として機能する。
このとき、介在層としての第5層膜はSiO2膜となり、第5層膜は多層膜のクラックを防止するための応力緩和層として機能する。
なお、LBOの線膨張係数は、x軸方向が10.8×10−5/℃,y軸方向が−8.8×10−5/℃,z軸方向が3.2×10−5/℃程度であり、ガラス等の線膨張係数と比べると非常に大きい。また、CLBOと比べてもさらに線膨張係数が大きい。したがって、LBO基板にコートされた薄膜に対しても、大きな応力が与えられることとなる。
また、LBOの屈折率が約1.60である。これに対し、介在層としてLBO基板に直接成膜された第5層膜の光学材料はSiO2であり、その屈折率は約1.46である。このように、LBOとSiO2の屈折率の差は、上述の実施例1,2でのCLBOとSiO2の屈折率の差よりも大きく、単に、LBO基板に介在層としてSiO2膜を追加した構成とすると、全体の反射防止膜の分光反射率特性に大きな影響がでてしまう。
したがって、実施例3では、LBO基板に直接成膜されたSiO2膜が分光反射率特性に与える影響を考慮して、膜厚の設定を行う必要がある。すなわち、実施例3の第5層膜のSiO2膜は、反射防止膜のクラックを防ぐ応力緩和層として機能すると共に、反射防止効果をも兼ねるものである。
したがって、実施例3では、LBO基板に直接成膜されたSiO2膜が分光反射率特性に与える影響を考慮して、膜厚の設定を行う必要がある。すなわち、実施例3の第5層膜のSiO2膜は、反射防止膜のクラックを防ぐ応力緩和層として機能すると共に、反射防止効果をも兼ねるものである。
実施例3(表5)の膜構成による多層膜Bを光学結晶LBOの基板10上に形成した。多数のサンプルについて高温放置試験等の信頼性試験を行ったところ、多層膜のクラックはいずれのサンプルについても発見されなかった。また、実施例3でも信頼性試験においても非常に良好な結果が得られた。
図6に、実施例3(表5)の膜構成における分光反射率特性を示す。図6に示すように、実施例3では、波長532nm及び波長1064nm付近において良好な反射防止効果を有している。少なくとも波長500nmから波長560nm,波長990nmから波長1140nmにわたって、分光反射率が0.4%以下となる広い波長反射防止帯域が得られている。また、波長532nm及び波長1064nmにおいては、略0%の極めて良好な反射率が得られている。
なお、実施例3の膜構成において、第5層膜の光学膜厚を0.5だけシフトさせて厚く形成してもクラックの発生が防止されると共に、良好な反射防止効果を維持することができた。
なお、実施例3の膜構成において、第5層膜の光学膜厚を0.5だけシフトさせて厚く形成してもクラックの発生が防止されると共に、良好な反射防止効果を維持することができた。
なお、上記実施形態では、介在層膜20を有する膜構成として、5層構成,6層構成の多層膜を示したが、これに限らず、複数膜の構成であればよいことは勿論である。
10 基板、20 介在層膜、31 第1層膜、32 第2層膜、33 第3層膜、34 第4層膜、35 第5層膜、A,A´ 波長変換素子、B,B´ 多層膜
Claims (6)
- 光学結晶からなる基板に複数層の光学薄膜を積層してなる光学素子の多層膜であって、
前記複数層のうち前記基板と接する層には、応力緩和層としてのSiO2膜が形成されたことを特徴とする光学素子の多層膜。 - 前記多層膜は、光学結晶であるCLBO又はLBOからなる基板に積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の多層膜。
- 前記基板と接するSiO2膜は、50nmから500nmの範囲の膜厚に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の多層膜。
- 前記多層膜は、反射防止膜であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子の多層膜。
- 前記基板と接するSiO2膜は、SiO2を蒸着材料として真空蒸着法にて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の多層膜。
- 前記基板と接するSiO2膜は、SiOを蒸着材料として酸素雰囲気中で蒸着されたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の多層膜。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004012758A JP2005208195A (ja) | 2004-01-21 | 2004-01-21 | 光学素子の多層膜 |
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JP2004012758A JP2005208195A (ja) | 2004-01-21 | 2004-01-21 | 光学素子の多層膜 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012185495A (ja) * | 2011-02-15 | 2012-09-27 | Canon Inc | 光学用部材、その製造方法及びそれを用いた光学系 |
WO2020251060A1 (ja) * | 2019-06-14 | 2020-12-17 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 光学素子 |
-
2004
- 2004-01-21 JP JP2004012758A patent/JP2005208195A/ja not_active Withdrawn
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