JP4005582B2 - 中性濃度フィルタ - Google Patents
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Description
この発明の目的はこの問題に鑑み、広い波長域において極めて平坦な分光透過特性を有し、さらには所望の分光透過特性を実現できる中性濃度フィルタを提供することにある。
まず、各種材料の光学定数について簡単に説明する。図1A,Bはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)及びシリコン(Si)について、入射する光の波長と屈折率及び消衰係数の関係をそれぞれ示したものであり、このような光学定数よりアルミニウムと銀は短波長側で、つまり光の波長が短かくなるにつれて透過率が上昇し、それ以外の材料(ここではクロムとシリコン)は短波長側で透過率が低下する。
図2はアルミニウムとハフニウム(Hf)の2種類の金属において、単層膜での分光透過率を測定した結果を示したものであり、アルミニウムは膜厚30nmの膜を合成石英よりなる透明基板上に形成した時の分光透過率であり、ハフニウムは同様に膜厚43nmの膜を形成した時の分光透過率である。
この300〜600nmの波長域において、透過率の変化が小さく、極めて平坦な分光透過率を実現するためには、この2種類の金属の分光透過特性を掛け合わせればよく、つまり2種類の金属を用いて積層構造とすればよい。
図3はこのように減光膜が2種類の金属膜の積層構造とされた中性濃度フィルタの構成を示したものであり、この例ではガラス等の透明な基板10上にアルミニウム膜21及びハフニウム膜22が積層され、2層構造の減光膜20が形成されている。これらアルミニウム膜21及びハフニウム膜22は例えばイオンビームスパッタによって成膜形成され、この例ではアルミニウム膜21の膜厚を8nmとし、ハフニウム膜22の膜厚は27nmとしている。なお、減光膜20上には保護膜30が形成されている。保護膜30は酸化や傷付き等による減光膜20の劣化を防止するもので、酸化膜やフッ化膜とされ、この例では酸化アルミニウム膜が形成されている。
上述したように、波長変化に対して透過率が逆に変化する2種類の膜(金属膜)を用い、それらの膜厚比を選定し、最適な比率とすることで、広い波長域において極めて平坦な分光透過特性を実現することができる。なお、これら金属の光学定数は薄膜形成手法や条件によって若干異なることがあるため、所望の中性濃度フィルタを作製する場合には、そのプロセスでの最適比率を求めることが予め必要になる。
ところで、図3に示したアルミニウム膜21とハフニウム膜22との2層構造を有する中性濃度フィルタは耐熱性の点で難があり、熱が加わると特性が変化してしまうという問題がある。図5は図3の中性濃度フィルタに350℃の熱が加わった後の分光透過特性を示したものであり、分光透過特性は図4の特性からこの図5に示したような特性に変化し、平坦性が悪化する。この理由は酸化の進行や積層されている膜界面での熱拡散等の影響と考えられているが、はっきりとした原因は判っていない。
このようなことから、アルミニウム膜21の膜厚を増やし、ハフニウム膜22の膜厚を減らすことによって加熱後において平坦な分光透過特性を有する中性濃度フィルタの作製を試みた。その結果、アルミニウム膜21の膜厚が30nm程度必要になったが、膜厚が20nm以上になるとアルミニウム膜21にクラックが発生してしまうという問題が発生した。
図7は耐熱性を有する中性濃度フィルタの他の構成例を示したものであり、この例ではアルミニウム膜21とハフニウム膜22とを交互に積層し、計6層構造としたものである。各アルミニウム膜21の膜厚は7.8nmであり、各ハフニウム膜22の膜厚は1.2nmとなっている。
分光透過特性の平坦性はアルミニウム膜21とハフニウム膜22の膜厚比によって決まり、また透過率は膜厚によって決まる。図7に示した中性濃度フィルタは透過率を5%としたものであるが、例えば上記のようにアルミニウム膜21及びハフニウム膜22の各膜厚を7.8nm及び1.2nmとした場合、6層構造を4層もしくは2層構造とすることにより、透過率を5%より大きくすることができ、また層数を6層より増やすことにより透過率を5%より小さくすることができる。つまり、所望の透過率を得るためにはアルミニウム膜21とハフニウム膜22の膜厚比を保った上で、膜厚や層数を変えればよい。
まず、最初に2種類の金属膜を用いる構成及びその問題について説明する。
図9は透過率が1%近傍で平坦な分光透過特性を有する中性濃度フィルタの構成を示したものであり、ここでは減光膜20はアルミニウム膜21とクロム膜23との2層構造となっている。アルミニウム膜21の膜厚は26.6nmであり、クロム膜23の膜厚は18.8nmである。
そこで、クラックの発生を回避すべく、図9に示した中性濃度フィルタにおいて、仮にアルミニウム膜21の膜厚を20nmとすると、分光透過特性は図10において破線で示したような特性となり、平坦な分光透過特性を実現できなくなってしまう。
図12はこの図11に示した中性濃度フィルタの分光透過特性を示したものであり、このようにアルミニウム膜21の膜厚を薄くすることで、つまり20nm以下とすることで熱によるクラックの発生を抑制でき、よって耐熱性を有するものとなり、またアルミニウムと似た特性の銀を用い、計3種類の金属膜で減光膜20を構成することで極めて平坦な分光透過特性を実現できる。
図13及び14はこのような分光透過特性を有する中性濃度フィルタの構成をそれぞれ示したものであり、図13では減光膜20は2種類の材料の膜よりなる2層構造とされ、図14では3種類の材料の膜よりなる3層構造とされている。
図13における減光膜20はアルミニウム膜21とシリコン膜25とよりなり、アルミニウム膜21の膜厚は2nmとされ、シリコン膜25の膜厚は27.4nmとされている。一方、図14における減光膜20はアルミニウム膜21とクロム膜23とシリコン膜25とよりなり、アルミニウム膜21の膜厚は3nmとされ、クロム膜23の膜厚は7nmとされ、シリコン膜25の膜厚は18nmとされている。
図15から明らかなように、図14の中性濃度フィルタの方がより目標特性に近い特性を示しており、つまり3種類の材料を使用することで、2種類の材料を使用する場合よりも、より目標特性を実現しやすいものとなる。
Claims (2)
- 透明基板上に減光膜が形成されてなる中性濃度フィルタであって、
上記減光膜は3種類以上の金属膜が積層された多層構造とされ、
上記3種類以上の金属膜のうちの1つがアルミニウム膜とされ、さらに他の1つが波長変化に対して透過率がアルミニウム膜と逆に変化する膜とされていることを特徴とする中性濃度フィルタ。 - 請求項1記載の中性濃度フィルタにおいて、
上記減光膜上に保護膜が形成されていることを特徴とする中性濃度フィルタ。
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