JP2005206062A - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】補強コード層の配設位置を適正化することにより、操縦安定性とランフラット耐久性の双方を高いレベルで両立させたランフラットタイヤを提供する。
【解決手段】ランフラットタイヤ1は、少なくともサイドウォール部5に断面三日月状の補強ゴム層13を配設してなる。カーカス10のプライ本体部7とプライ折返し部8との間に、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補強コード層14を配設し、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15は、タイヤ径方向高さH1がタイヤ断面高さSHの30〜70%の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線Mよりもタイヤ幅方向外側にあり、補強コード層14のタイヤ径方向内端縁17は、タイヤ径方向高さH2がタイヤ断面高さSHの25%以下の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向内側にあることにある。
【選択図】図1

Description

この発明は、ビードコア及びゴムフィラーを埋設した一対のビード部、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部、並びに両サイドウォール部間にまたがって延びるトレッド部の各部にわたってトロイド状に延びるプライ本体部及びこのプライ本体部から延びビードコアの周りに折り返されたプライ折返し部で構成される少なくとも1枚のプライからなるカーカスと、カーカスのクラウン部外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層とを具えるとともに、少なくともサイドウォール部に断面三日月状の補強ゴム層を配設してなるランフラットタイヤに関するものであり、特にかかるタイヤの操縦安定性とランフラット耐久性の双方を高いレベルで両立させる。
パンク等によってタイヤ内圧が低下した際にもある程度の距離の走行が可能である、いわゆるランフラットタイヤとしては、サイドウォール部に断面三日月状の補強ゴム層を配設して、正常時にはタイヤ荷重をタイヤ内圧で支持し、一方、ランフラット走行時にはタイヤ荷重を補強ゴム層で肩代わり支持するランフラットタイヤ、いわゆるサイド補強型ランフラットタイヤが知られている。
このようなランフラットタイヤは高性能車両に適用するのが通例であり、この点で走行距離の殆ど全てにわたって発揮されるべき各種のタイヤ性能、特に操縦安定性には高い水準が要求されている。
操縦安定性を低下させる主原因としては、リムに固定され直接的に駆動力を受けるビード部と、駆動力と逆方向の抵抗力を路面から受けるトレッド部との間に回転の角速度の差が生じる結果、サイドウォール部に発生するねじり変形が知られている。
かかるサイドウォール部のねじり変形を抑制するため、特許文献1には、ビードフィラーのトレッド部側に上部フィラーを配置し、この上部フィラーの外側からビードフィラーの内側に沿って、上部フィラーとビードフィラーとの間に、一層の補強コード層を、その高さがタイヤ断面高さの50%を超えないように配置した乗用車用ラジアルタイヤが記載されている。しかし、このタイヤは、内部に空気が充填された通常状態での走行しか想定しておらず、タイヤ内圧が低下することによりサイドウォール部が大きく撓み変形する上、カーカスコードに張力が加わらないランフラット状態での走行を想定して補強コード層の適正化が図られていない。
サイド補強型ランフラットタイヤのサイドウォール部の剛性を高めるため、特許文献2及び3には、コードをゴム被覆してなる補強コード層をサイドウォール部に埋設したタイヤが記載されている。しかし、これらのタイヤでは、補強コード層はサイドウォール部の撓み変形の抑制のために設けられているにすぎず、ねじり変形を抑制して操縦安定性を向上させることを考慮して補強コード層の適正化が図られていない。
さらに、これらの補強コード層をランフラットタイヤに用いると、一般に補強コード層端部のゴムに歪が集中しやすく、ここがセパレーション故障の発生の核となるため、補強コード層を用いないランフラットタイヤと比較して、ランフラット耐久性が低下するという問題がある。
特開昭63−284006号公報 特開2000−25423号公報 特開平11−192822号公報
したがって、この発明の目的は、補強コード層の配設位置、特にその両端縁の位置を適正化することにより、操縦安定性とランフラット耐久性の双方を高いレベルで両立させたランフラットタイヤを提供することにある。
上記の目的を達成するため、この発明は、ビードコア及びゴムフィラーを埋設した一対のビード部、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部、並びに両サイドウォール部間にまたがって延びるトレッド部の各部にわたってトロイド状に延びるプライ本体部及びこのプライ本体部から延びビードコアの周りに折り返されたプライ折返し部で構成される少なくとも1枚のプライからなるカーカスと、カーカスのクラウン部外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層とを具えるとともに、少なくともサイドウォール部に断面三日月状の補強ゴム層を配設してなるランフラットタイヤにおいて、カーカスのプライ本体部とプライ折返し部との間に、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補強コード層を配設し、タイヤ幅方向断面にて、補強コード層のタイヤ径方向外端縁は、タイヤ径方向高さがタイヤ断面高さの30〜70%の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向外側に位置し、補強コード層のタイヤ径方向内端縁は、タイヤ径方向高さがタイヤ断面高さの25%以下の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向内側に位置することを特徴とするランフラットタイヤである。
ここで「タイヤ径方向高さ」とは、リム径ライン位置(リム径を測定する位置)又はこれからタイヤ幅方向に沿って延ばした延長線と測定すべき点との間を、タイヤ径方向に沿って測定した距離をいうものとし、「厚み中心線」とは、タイヤのビード部、サイドウォール部及びトレッド部の各部のタイヤ幅方向の厚みの中心を結んだ仮想線のことをいうものとする。
また、補強コード層を構成するコードがスチールコード又は有機繊維コードであることが好ましい。
さらに、補強コード層を構成するコードは、タイヤ周方向とのなす角度が0〜60°の範囲にあることが好ましい。ここで補強コード層を構成するコードの「タイヤ周方向とのなす角度」とは、補強コード層のタイヤ径方向外端縁におけるコードの延在方向とタイヤ周方向のなす角を鋭角側から測定した角度をいうものとする。
さらにまた、ゴムフィラーは、補強コード層がタイヤの厚み中心線の横断を可能にする形状を有することが好ましい。ここで「補強コード層がタイヤ厚み中心線の横断」するとは、タイヤ幅方向断面にて、補強コード層が、その両端縁を結ぶ線分とタイヤ厚み中心線が交差するような位置にあることをいうものとする。この場合には、ゴムフィラーを、補強コード層を挟み込む配置関係になる2つの分割ゴム部で構成することがさらに好ましい。
加えて、カーカスを構成するプライのうち、少なくとも1枚のプライは、ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、その折返し端が前記ベルト層とカーカスのクラウン部との間に位置する、いわゆるエンベロープ構造を有することが好ましく、この場合には、カーカスが1枚のプライで構成されることがさらに好ましい。
この発明に従うタイヤは、偏平率が50%以下の、いわゆる偏平タイヤに特に有効である。
この発明によれば、補強コード層を配設することによりタイヤのねじり剛性を高めるとともに、補強コード層の配設位置を適正化することにより補強コード層端縁でのセパレーションの発生を抑制した結果、操縦安定性とランフラット耐久性の双方を高いレベルで両立したランフラットタイヤが得られる。
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的なランフラットタイヤ(以下「タイヤ」という。)のタイヤ幅方向左半断面図である。
図1に示すタイヤ1は、ビードコア2及びゴムフィラー3を埋設した一対のビード部4、ビード部4からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部5、並びに両サイドウォール部5間にまたがって延びるトレッド部6の各部にわたってトロイド状に延びるプライ本体部7及びこのプライ本体部7から延びビードコア2の周りに折り返されたプライ折返し部8で構成される少なくとも1枚のプライ9からなるカーカス10と、カーカス10のクラウン部11外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層、図1では2層のベルト層12a、12bとを具えるとともに、少なくともサイドウォール部5に断面三日月状の補強ゴム層13を配設してなる。
そして、この発明の構成上の主な特徴は、カーカス10のプライ本体部7とプライ折返し部8との間に、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補強コード層、図1では1層の補強コード層14を配設し、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15は、タイヤ径方向高さ、すなわちリム径ライン位置16又はこれからタイヤ幅方向に沿って延ばした延長線Lとタイヤ径方向外端縁15との間を、タイヤ径方向に沿って測定した距離H1がタイヤ断面高さSHの30〜70%の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線Mよりもタイヤ幅方向外側にあり、補強コード層14のタイヤ径方向内端縁17は、タイヤ径方向高さ、すなわちリム径ライン位置16又はこれからタイヤ幅方向に沿って延ばした延長線Lとタイヤ径方向内端縁17との間を、タイヤ径方向に沿って測定した距離H2がタイヤ断面高さSHの25%以下の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向内側にあることにある。
以下、この発明が上記構成を採用するに至った経緯を作用とともに説明する。
走行中のタイヤ車輪には、リムを介してビード部に伝わる駆動力と、トレッド部と路面との摩擦により発生し、タイヤ車輪の駆動力とは反対方向に作用する抵抗力が働く。この結果、リムに固定されたビード部と路面に接触するトレッド部との間に回転の角速度の差が生じ、サイドウォール部にねじり変形が発生する。特に、サイド補強型ランフラットタイヤでは、ランフラット走行時には、カーカスコードに十分な張力が加わっておらず、補強されたサイドウォール部の固有の剛性のみでタイヤ荷重を支持しているため、通常のタイヤと比較して、サイドウォール部のねじり変形が大きくなり、ランフラット走行時の操縦安定性を低下させる主原因となっている。
こうしたねじり変形を抑制するには、サイドウォール部の剛性を高めることが有効であり、従来より補強コード層を配設することによってサイドウォール部の剛性を高めたタイヤが知られている。特に、ねじり剛性を高める観点からは、補強コード層のタイヤ径方向外端縁をタイヤ最大幅位置近傍に、補強コード層のタイヤ幅方向内端縁をビードコア近傍にそれぞれ配置することが有効であることが知られている。これは、補強コード層のタイヤ径方向外端縁をタイヤ最大幅位置近傍に配置することにより、ねじり変形が最大となるタイヤ最大位置での変形を効果的に抑制できるからであり、また、補強コード層のタイヤ幅方向内端縁をビードコア近傍に配置することにより、リムに固定されたビード部へのねじり変形の集中を防ぐことができるからである。
しかし、単に上記の関係を満たすように補強コード層を配設したのでは、操縦安定性は向上するものの、補強コード層の両端縁のゴムに歪が集中し、ここがセパレーション故障の発生の核となるため、補強コード層を用いないランフラットタイヤと比較して、ランフラット耐久性が低下するという問題があった。発明者は、この原因について鋭意研究を重ね、ランフラット走行時のタイヤは、サイドウォール部が撓み変形する結果、タイヤ最大幅位置近傍では、タイヤの厚み中心線よりタイヤ幅方向外側に位置する部分が引張り歪を受け、ビードコア近傍では、リムフランジにより、タイヤの厚み中心線よりタイヤ幅方向内側に位置する部分が引張り歪を受けることを見出した。一般に、コード補強ゴム材料における破壊特性は、コード端部のゴムへの歪の集中によって支配されており、特に、端部に圧縮歪が加わった場合に寿命が低下することが知られている。そこで発明者は、補強コード層の両端縁を引張り歪の作用する領域にそれぞれ配置する、すなわち、タイヤ径方向外端縁15をタイヤの厚み中心線Mよりもタイヤ幅方向外側に配置し、タイヤ径方向内端縁17をタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向内側に配置すれば、タイヤ1のねじり剛性を高めつつ、補強コード層14の両端縁15、17でのセパレーションの発生を抑制できる結果、操縦安定性とランフラット耐久性の双方を高いレベルで満足させることができることを見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15のタイヤ径方向高さH1をタイヤ断面高さSHの30〜70%の範囲とし、補強コード層14のタイヤ径方向内端縁17のタイヤ径方向高さH2をタイヤ断面高さSHの25%以下の範囲とするのは、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15及びタイヤ径方向内端縁17をそれぞれ上記範囲外に配置すると、ねじり剛性を有効に高めることができないからである。より一層ねじり剛性を高める観点からは、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15のタイヤ径方向高さH1をタイヤ断面高さSHの40〜60%の範囲とし、補強コード層14のタイヤ径方向内端縁17のタイヤ径方向高さH2をタイヤ断面高さSHの15%以下の範囲とすることが好ましい。
また、補強コード層14を構成するコードがスチールコード又は有機繊維コードであることが好ましい。高弾性コードを用いることで、より一層ねじり剛性が高まり、操縦安定性が向上するからである。さらに好ましくは、引張り破断強度が5cN/dtex以上のコードを用いる。有機繊維コードとしては、アラミド若しくはナイロン等の芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)を用いたコードが好ましい。
図2は補強コード層14を構成するコード18とタイヤ周方向Cとのなす角を説明するための図である。図2に示すように、補強コード層14を構成するコード18は、タイヤ周方向Cとのなす角度αが0〜60°の範囲にあることが好ましい。角度αが60°を超えると、ねじり剛性が不足して、十分な操縦安定性を得られないからである。より好ましくは、角度αを15〜50°の範囲とする。角度αを15°未満の場合には生産性が著しく低下するからであり、50°を超える場合には45°を境にしてラジアルカーカスとの交差により発生する剛性が低下するのでせん断剛性が不足し、ねじり剛性が低下していくためである。
さらにまた、ゴムフィラー3は、補強コード層14がタイヤの厚み中心線Mの横断を可能にする形状を有することが好ましい。ゴムフィラー3をかかる形状とすることにより、補強コード層14の両端縁15、17を適正位置に配置することが容易となるからである。さらに、サイドウォール部5の剛性を高める観点からは、ゴムフィラー3をサイドウォール部5まで延長して配設することが有効であるが、この場合には、補強コード層14がゴムフィラー3を横断できず、補強コード層14の両端縁15、17を適正位置に配置することが困難となる。かかる場合には、図3に示すように、ゴムフィラー3を、補強コード層14を挟み込む配置関係になる2つの分割ゴム部19a、19bで構成することが、補強コード層14の両端縁15、17を適正位置に配置することが容易となることから、好ましい。
加えて、図3に示すように、カーカス10を構成するプライのうち、少なくとも1枚のプライ9は、ビードコア2の周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、その折返し端20がベルト層12bとカーカス10のクラウン部11との間に位置する、いわゆるエンベロープ構造を有することが好ましい。ランフラット走行時にはサイドウォール部5が撓み変形するため、特に道路環境の悪い地域で、石や段差によりサイドウォール部5に位置するカーカス10のコードが破断するおそれがあるが、カーカス10をエンベロープ構造とすれば、サイドウォール部5やバットレス部に位置するカーカス部分がプライ本体部7とプライ折返し部8の2枚で構成されるため、カーカス10のコードの破断を有効に抑制することができ、ランフラット耐久性が向上するからである。
また、前記のような性能に加えて、タイヤの軽量化、コストダウンも同時に求められている場合には、カーカス10が1枚のプライで構成されることが好ましい。カーカスを1枚のプライで構成することにより、部材数の減少による軽量化、材料費の削減によるコストダウン、および生産性の向上によるコストダウンが可能となるからである。
さらに、補強ゴム層13を構成するゴムは、ゴム硬さ(JIS K 6253に規定するスプリング式硬さ試験機A型により得られたゴム硬さのことをいうものとする。)が70〜90の範囲にあることが好ましい。ゴム硬さが70未満の場合にはサイドウォール部5を有効に補強することができず、操縦安定性及びランフラット耐久性が低下するからであり、90を超える場合にはサイドウォール部の剛性が高くなりすぎ、通常走行時の乗心地性が低下するからである。
さらにまた、ゴムフィラー3を構成するゴムは、ゴム硬さが70〜90の範囲にあることが好ましい。ゴム硬さが70未満の場合にはサイドウォール部5を有効に補強することができず、操縦安定性及びランフラット耐久性が低下するからであり、90を超える場合にはサイドウォール部の剛性が高くなりすぎ、通常走行時の乗心地性が低下するからである。
図3に示すように、ゴムフィラー3を分割ゴム部19a、19bで構成する場合には、プライ本体部7に隣接する分割ゴム部19aを構成するゴムのゴム硬さを、プライ折返し部8に隣接する分割ゴム部19bを構成するゴムのゴム硬さと等しくすることが好ましい。分割ゴム部19a、19bのゴム硬さをこのような関係とすることにより、ランフラット走行時のサイドウォール部の変形が屈曲点を持たず、歪が一点に集中するのを防ぐことができるからである。同様の理由で、補強ゴム層13を構成するゴムのゴム硬さを、分割ゴム部19a、19bを構成するゴムのゴム硬さと等しくすることが好ましい。
また、補強ゴム層13のタイヤ径方向内端縁21は、タイヤ径方向高さH3がタイヤ断面高さSHの15〜35%の範囲にあることが好ましい。補強ゴム層13のタイヤ径方向内端縁21のタイヤ径方向高さH3がタイヤ断面高さSHの15%未満の場合にはサイドウォール部の剛性が高くなりすぎ、通常走行時の乗心地性が低下するからであり、35%を超える場合にはサイドウォール部5を有効に補強することができず、操縦安定性及びランフラット耐久性が低下するからである。
さらに、図1に示すように、ゴムフィラー3が単一のゴム部で構成されている場合には、ゴムフィラー3のタイヤ径方向外端縁22は、タイヤ径方向高さH4がタイヤ断面高さSHの25〜50%の範囲にあることが好ましい。タイヤ径方向高さH4がタイヤ断面高さSHの25%未満の場合にはビード部近傍に位置するサイドウォール部を補強する効果が低下し、ランフラット耐久性が低下するからであり、50%を超える場合には乗心地性の悪化が懸念されるからである。
あるいは、図3に示すように、ゴムフィラー3が分割ゴム部19a、19bで構成されている場合には、プライ本体部7に隣接する分割ゴム部19aのタイヤ径方向外端縁22のタイヤ径方向高さH5及びタイヤ径方向内端縁23のタイヤ径方向高さH6、プライ折返し部8に隣接する分割ゴム部19bのタイヤ径方向外端縁24のタイヤ径方向高さH7及びタイヤ径方向内端縁25のタイヤ径方向高さH8、並びに補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15のタイヤ径方向高さH1及びタイヤ径方向内端縁17のタイヤ径方向高さH2が、H8<H2<H6<H7<H1<H5なる関係を満たすことが好ましい。かかる関係を満たすことにより、サイドウォール部が変形した際にも、各部の剛性の差による歪の集中を防ぐことができる上、生産性も向上するからである。
さらにまた、カーカス10を構成するプライのうち、少なくとも1枚のプライは、ビードコア2の周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、その折返し端20のタイヤ径方向位置が補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15のタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向外側にあることが好ましい。カーカス10をこのように構成すると、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15がプライ折返し部8で覆われ、張力を持たない補強コード層14の端部の動きを抑制できるので、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15でのセパレーションの発生がより一層有効に抑制されるからである。
加えて、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15のタイヤ幅方向位置が、ゴムフィラー3のタイヤ径方向外端縁22又は分割ゴム部19bのタイヤ径方向外端縁24のタイヤ幅方向位置よりもタイヤ幅方向外側にあることが好ましい。補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15を、ゴムフィラー3のタイヤ径方向外端縁22又は分割ゴム部19bのタイヤ径方向外端縁24よりもタイヤ幅方向外側に配置することにより、補強コード層14のタイヤ径方向外端縁15へのランフラット走行時の圧縮歪の集中を抑制し、耐久性を向上することができるからである。
なお、上述したところは、この発明の実施態様の一部を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、図1及び図3では1枚のプライのみでカーカスを構成した例を示したが、カーカスを、図4に示すように2枚のプライ、又はそれ以上の枚数のプライで構成してもよい。
次に、この発明に従うタイヤを試作し、性能評価を行ったので、以下に説明する。
実施例1〜6のタイヤは、タイヤサイズが245/45R18の乗用車用タイヤであり、ゴム硬さが83であり、タイヤ径方向内端縁のタイヤ径方向高さが22mmである補強ゴム層と、ゴム硬さが83の分割ゴム部で構成されるゴムフィラーと、スチールの撚りコード(1×3)を38本/50mmで打ち込んだ補強コード層(実施例1〜4)、アラミド繊維の撚りコード(総デニール数:2000d)を50本/50mmで打ち込んだ補強コード層(実施例5)、又はPET繊維の撚りコード(総デニール数:2000d)を50本/50mmで打ち込んだ補強コード層(実施例6)とを有し、表1に示す諸元を有する。
比較のため、タイヤサイズ、補強ゴム層が実施例1〜6のタイヤと同じであり、ゴム硬さが83の単一ゴム部で構成されるゴムフィラーを有し、表1に示す諸元を有するものの、図5に示すように、補強コード層を有しないタイヤ(従来例)、及びスチールの撚りコード(1×3)を38本/50mmで打ち込んだ補強コード層を有するが、図6に示すように、その配設位置がこの発明の範囲外であるタイヤ(比較例)についても併せて試作した。
前記各供試タイヤをJATMAに定められた標準リム(8JJ)に取り付けてタイヤ車輪とし、次の各試験を行った。
1.ねじり剛性
前記各タイヤ車輪にタイヤ内圧を200kPa(相対圧)とし、トレッド部を環状の金属リングで固定して回転不能にし、ホイールに回転力を加え、その際のねじり角度と反力としてのトルクを測定し、トルク/ねじり角度の値をねじり剛性として評価した。
2.操縦安定性
前記各タイヤ車輪をテスト車両の4輪に装着し、タイヤ内圧:200kPa(相対圧)、タイヤ負荷荷重:4.4kNの条件下で、テストコースを各種走行モードで走行したときの操縦安定性をプロのドライバーによるフィーリングにより評価した。
3.ランフラット耐久性
前記各タイヤ車輪をテスト車両の4輪に装着し、右前輪を除く3輪のタイヤ内圧は200kPa(相対圧)とし、右前輪のタイヤ内圧は0kPa(相対圧)とし、タイヤ負荷荷重:4.0kNの条件下で、直進主体のテストコースを走行し、タイヤが故障するまでの走行距離を測定し、この測定値によって評価した。
ねじり剛性、操縦安定性及びランフラット耐久性の各評価結果を表1に示す。なお、表1に示す評価結果は従来例の評価結果を100としたときの指数比で示してあり、数値の大きいほど性能が優れている。
Figure 2005206062
表1に示す結果から、実施例1〜6のタイヤは、従来例のタイヤと比べて操縦安定性が格段に優れていながら、比較例のタイヤのようにランフラット耐久性を著しく損なうことなく、従来例のタイヤと同等レベルのランフラット耐久性を維持しており、総合的な性能に優れていることが分かる。
この発明により、補強コード層の配設位置、特にその両端縁の位置の適正化を図り、操縦安定性とランフラット耐久性の双方を高いレベルで両立させたランフラットタイヤを提供することが可能となった。
この発明に従う代表的なランフラットタイヤのタイヤ幅方向左半断面図である。 補強コード層を構成するコードとタイヤ周方向とのなす角を説明するための図である。 この発明に従う他のランフラットタイヤのタイヤ幅方向左半断面図である。 この発明に従う他のランフラットタイヤのタイヤ幅方向左半断面図である。 従来例のランフラットタイヤのタイヤ幅方向左半断面図である。 比較例のランフラットタイヤのタイヤ幅方向左半断面図である。
符号の説明
1 タイヤ
2 ビードコア
3 ゴムフィラー
4 ビード部
5 サイドウォール部
6 トレッド部
7 プライ本体部
8 プライ折返し部
9 プライ
10 カーカス
11 クラウン部
12a、12b ベルト層
13 補強ゴム層
14 補強コード層
15 補強コード層のタイヤ径方向外端縁
16 リム径ライン測定位置
17 補強コード層のタイヤ径方向内端縁
18 コード
19a、19b 分割ゴム部
20 プライ折返し端
21 補強ゴム層のタイヤ径方向内端縁
22、24 分割ゴム部のタイヤ径方向外端縁
23、25 分割ゴム部のタイヤ径方向内端縁

Claims (7)

  1. ビードコア及びゴムフィラーを埋設した一対のビード部、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部、並びに両サイドウォール部間にまたがって延びるトレッド部の各部にわたってトロイド状に延びるプライ本体部及びこのプライ本体部から延びビードコアの周りに折り返されたプライ折返し部で構成される少なくとも1枚のプライからなるカーカスと、カーカスのクラウン部外周側に位置し、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層のベルト層とを具えるとともに、少なくともサイドウォール部に断面三日月状の補強ゴム層を配設してなるランフラットタイヤにおいて、
    カーカスのプライ本体部とプライ折返し部との間に、コードをゴム被覆してなる少なくとも1層の補強コード層を配設し、
    タイヤ幅方向断面にて、
    補強コード層のタイヤ径方向外端縁は、タイヤ径方向高さがタイヤ断面高さの30〜70%の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
    補強コード層のタイヤ径方向内端縁は、タイヤ径方向高さがタイヤ断面高さの25%以下の範囲にあり、かつタイヤの厚み中心線よりもタイヤ幅方向内側に位置することを特徴とするランフラットタイヤ。
  2. 補強コード層を構成するコードがスチールコード又は有機繊維コードである請求項1に記載のランフラットタイヤ。
  3. 補強コード層を構成するコードは、タイヤ周方向とのなす角度が0〜60°の範囲にある請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
  4. ゴムフィラーは、補強コード層がタイヤの厚み中心線の横断を可能にする形状を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のランフラットタイヤ。
  5. ゴムフィラーは、補強コード層を挟み込む配置関係になる2つの分割ゴム部で構成する請求項4に記載のランフラットタイヤ。
  6. 前記カーカスを構成するプライのうち、少なくとも1枚のプライは、ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、その折返し端が前記ベルト層とカーカスのクラウン部との間に位置する、いわゆるエンベロープ構造を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のランフラットタイヤ。
  7. 前記カーカスが1枚のプライで構成される請求項6に記載のランフラットタイヤ。
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