JP2005194370A - 摺動部材用ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる摺動部材 - Google Patents

摺動部材用ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる摺動部材 Download PDF

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Abstract

【課題】 摺動剤を使用することなく吸水時の剛性低下を抑制し、かつ自己摩耗、および相手材の摩耗が少なく、摩擦係数が少ない摺動部材用ポリアミド樹脂組成物、およびそれからなる摺動部材を提供する。
【解決手段】(a)ポリアミド樹脂20〜85重量%、(b)ABS樹脂5〜30重量%、(c)ホウ酸アルミニウムウィスカー5〜25重量%、(d)メタケイ酸カルシウムウィスカー5〜25重量%からなり、(a)ポリアミド樹脂のサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.0〜4.0であり、かつ、(b)ABS樹脂のISO1133に従った、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定したメルトフローレートが5〜50g/10minであり、かつ、(d)メタケイ酸カルシウムウィスカーの平均繊維長が220〜290μm、平均繊維径が10.0〜13.0μmであることを特徴とする摺動部材用ポリアミド樹脂。
【選択図】 なし

Description

本発明は成形加工時において表面外観に優れる特定の無機充填材と、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(以下、ABSという)樹脂を特定量配合することによって、吸水時の剛性低下を抑制し、かつ自己摩耗、および相手材の摩耗が少なく、摩擦係数が少ない摺動部材を提供する摺動部材用ポリアミド樹脂組成物、およびそれからなる摺動部材に関する。
ポリアミド樹脂は、その優れた成形性、耐熱性、強靱性、耐薬品性、耐摩耗性などを利用して、自動車、電気・電子部品、家庭電化製品などの分野で広範に使用されている。なかでも、車両用外装部品や、家庭電化製品のハウジング、筐体など、外観が求められる部品にも、金属からの代替として使用されてきている。
中でも摺動剤添加ポリアミド樹脂はその優れた成形性、耐熱性、強靱性にあわせて高い摺動性、詳しくは摩擦係数が低く、相手材への攻撃性が軽減されることから、軸受け、ギア、カム、すべり板、ガイド部材等の材料に用いられている。
従来から合成樹脂系材料、例えば特許文献1または2にはナイロン系摺動材料としては二硫化モリブデン配合ナイロン、ポリエチレン配合ナイロン、ポリ四フッ化エチレン配合ナイロン等が利用されている。
また、特許文献3には摺動性に優れ、かつ機械強度を向上させる方法として、熱可塑性樹脂にポリエチレン、ウィスカー状強化繊維、変性ポリオレフィンを配合することが提案されている。
特開平2−219849号公報 特開昭63−207851号公報 特開平8−283494号公報
しかしながら、二硫化モリブデン配合ナイロンの場合には、成形品の使用環境下において、ポリアミド成分の吸水による剛性低下が原因となり摩擦係数、自己摩耗量が増加するなどの問題がある。一方、ポリエチレンやポリ四フッ化エチレン含有ナイロンの場合には、吸水時の剛性低下を抑制し、摩擦係数や摩耗量を低下させるが、耐熱性や機械強度を大きく低下させるという問題がある。また、熱可塑性樹脂にポリエチレン、ウィスカー状強化繊維、変性ポリオレフィンを配合する場合にはポリエチレンの配合による機械強度の低下が大きいためにウィスカー状強化繊維による補強効果は不十分であるという問題がある。
本発明は成形加工時において表面外観に優れる特定の無機充填材と、ABS樹脂を特定量配合することによって、上記に示すような摺動剤を使用することなく吸水時の剛性低下を抑制し、かつ自己摩耗、および相手材の摩耗が少なく、摩擦係数が少ない摺動部材用ポリアミド樹脂組成物、およびそれからなる摺動部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ホウ酸アルミニウムウィスカー、メタケイ酸カルシウムウィスカーを特定量の割合で配合することにより、前記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、
(1)(a)ポリアミド樹脂20〜85重量%、(b)ABS樹脂5〜30重量%、(c)ホウ酸アルミニウムウィスカー5〜25重量%、(d)メタケイ酸カルシウムウィスカー5〜25重量%からなり、(a)ポリアミド樹脂のサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.0〜4.0であり、かつ、(b)ABS樹脂のISO1133に従った、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定したメルトフローレートが5〜50g/10minであり、かつ、(d)メタケイ酸カルシウムウィスカーの平均繊維長が220〜290μm、平均繊維径が10.0〜13.0μmであることを特徴とする摺動部材用ポリアミド樹脂。
(2)(c)ホウ酸アルミニウムウィスカーが9Al232B23、または2Al233B24で示され、その平均繊維長が10〜30μm、平均繊維径が0.5〜1.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
(3)請求項1記載の摺動部材用ポリアミド樹脂組成物を成形してなる摺動部材、を提供するものである。
本発明の摺動部材用ポリアミド樹脂組成物によれば吸水時の剛性低下を抑制し、かつ優れた摺動性を有する成形品を提供することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるポリアミド樹脂(a)とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とする樹脂である。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、(2,2,4−または2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
本発明において、とくに好適に用いられるポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2ーメチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/610/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン610およびナイロン66/6I/6コポリマー、ならびにナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン6T/12/66コポリマー、ナイロン6T/12/6Iコポリマーなどのヘキサメチレンテレフタラミド単位を有する共重合体から選ばれる少なくとも一種のポリアミドである。これらのポリアミド樹脂は成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
本発明において用いるポリアミド樹脂はサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.0〜4.0の高分子量ポリアミド樹脂であり、好ましくはその相対粘度が2.0〜3.0のものである。2.0未満では成形加工時の機械強度が低下し、4.0を超えると樹脂組成物の成形性が損なわれるため好ましくない。
また本発明においてポリアミド樹脂の割合は20〜85重量%であることが必要であり、好ましくは40〜70重量%である。20重量%未満では耐薬品性に劣り、成形加工時の表面外観が悪化するため相手材の摩耗量が増加する問題があり、また85重量%を超えると吸水時の剛性が低下し自己摩耗量が増加するため好ましくない。
本発明におけるABS樹脂としては、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの乳化重合による三元共重合体、アクリロニトリル−スチレン樹脂とニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)との混合物、ニトリルゴムへのスチレンのグラフト共重合物など公知のものを用いることができるが、グラフト共重合体が好ましく用いられる。共重合組成は、ブタジエン成分が15〜80重量%、アクリロニトリル成分とスチレン成分の合計が85〜20重量%の割合が適当である。またISO1133に従った樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定したメルトフローレートが5〜50g/10minであることが必要であり、好ましくは10〜30g/10minである。メルトフローレートが5g/10min未満では樹脂組成物の成形性が損なわれ、50g/10minを越えると成形加工時の剛性が低下するため好ましくない。
また本発明において吸水時の剛性低下を抑制するために、ABS樹脂の配分量は5〜30重量%であることが必要で、好ましくは10〜20重量%である。添加量が5重量%未満であると吸水時の剛性保持の効果が得られず、添加量が30重量%を越えると成形性が損なわれ、また成形した成形品自体の摩耗量が増加するため好ましくない。
本発明で用いるホウ酸アルミニウムウィスカーは、1つの結晶面のみを成長させることにより繊維状となった微細な単結晶繊維で、9Al232B23、または2Al233B24で示される組成からなるものであり、その平均繊維長が10〜30μm、平均繊維径が0.5〜1.0μmのものが好ましい。
これらのホウ酸アルミニウムウィスカーは表面処理なしでも使用可能であるが、さらに補強効果を向上するためには、カップリング剤による表面処理によってホウ酸アルミニウムウィスカーとマトリックスである樹脂との濡れ性、結合性を改良することが有効であり、通常、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤で表面処理されているものが好適である。
本発明において、ホウ酸アルミニウムウィスカーの配分量は5〜25重量%であることが必要であり、好ましくは10〜20重量%である。添加量が5重量%未満であると本発明の摺動部材用ポリアミド樹脂組成物を摺動部材に成形した場合に摺動性・機械強度が不足するので好ましくなく、一方添加量が25重量%を越えると動摩擦係数が増加し、摺動性が低下する問題がある。本発明に用いられるホウ酸アルミニウムウィスカーは例えばアルボレックスY(R)(四国化成(株)製)を使用することができる。これは繊維径0.05〜5μm、繊維長2〜100μmのもので、表面処理がされていないホウ酸アルミニウムウィスカーである。
本発明に用いるメタケイ酸カルシウムウィスカーは、組成がCaSiO2で示される単結晶繊維であり、その平均繊維長が220〜290μm、平均繊維径が10.0〜13.0μmであることが必要である。平均繊維長が220μm未満では成形加工時の機械強度が低下するため好ましくなく、290μmを超えると相手材の摩耗量が増加するため好ましくない。
本発明においてメタケイ酸カルシウムウィスカーの配分量は5〜25重量%であることが必要であり、好ましくは10〜20重量%である。添加量が5重量%未満であると摺動性・機械強度が不足するので好ましくなく、一方添加量が25重量%を越えると動摩擦係数が増加し、摺動性が低下する問題がある。
これらのメタケイ酸カルシウムウィスカーは表面処理なしでも使用可能であるが、さらに補強効果を向上するためには、カップリング剤による表面処理によってメタケイ酸カルシウムウィスカーとマトリックスである樹脂との濡れ性、結合性を改良することが有効であり、通常、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤で表面処理されているものが好適である。本発明に用いられるメタケイ酸カルシウムウィスカーは例えばSH600(キンセイマテック製)をそのまま使用することができる。これは平均繊維長が220〜290μm、平均繊維径が10.0〜13.0μmのもので、表面処理がされていないメタケイ酸カルシウムウィスカーである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分、例えば耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、導電性粒子(カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、着色防止剤(次亜リン酸塩等)、他の重合体を含有することができる。
次に本発明のポリアミド樹脂組成物を得る方法について例を挙げて説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、各成分を公知の混練方法により溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法には特に制限はなく、ポリアミド樹脂の溶融状態下で機械的剪断を行うことができればよい。その処理方法もバッチ式または連続式のいずれでも良いが、連続的に製造できる連続式の方が生産性の面から好ましい。具体的な混練装置にも制限はなく、例えば単軸または二軸の押出機、混練機、ニーダーなどが挙げられるが、特に二軸押出機が生産性の面で好ましい。スクリューアレンジはメタケイ酸カルシウムウィスカーおよびホウ酸アルミニウムウィスカーをより均一に分散させるためにニーディングゾーンを設けることが好ましい。また、溶融混練時に発生する水分や、低分子量の揮発成分を除去する目的で、溶融混練装置にベント口を設けることも好ましい。押出機を用いる場合には、供給口を2つ以上有する押出機を使用して、280℃付近の溶融温度にて第一の(上流側の)供給口からポリアミド樹脂(a)とABS樹脂(b)を供給して(a)、(b)成分を溶融混練した後、さらにウィスカーを均一に分散させ補強効果を向上させるために下流側の供給口からサイドフィーダーにより(c)成分および(d)を配合することが必要である。溶融混練時のスクリュー回転数は、成形加工時において良好な表面外観および機械強度を得るために、200rpm付近であることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物を成形する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、押出成形、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられ、特に限定されないが、生産性などの点から射出成形や射出圧縮成形が好ましく、またその成形条件は、良好な表面外観および摺動性を得るために、例えばシリンダ温度280℃、金型温度80℃の成形条件で成形することが好ましい。
本発明の組成物から作成される摺動部材としては、ブッシング、ベアリング、スリーブ、スリップシリンダー、ガイドレール、スイッチ部品、ギア、カムなどに好ましく用いることができる。
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
[評価方法]
(1)一般機械特性
実施例、比較例で得られたポリアミド樹脂ペレットを用いて、以下の標準方法に従って測定した。
引張強度、引張伸び
ASTM D638に準拠して行った。日精樹脂工業射出成形機PS60E9ASEにて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した1号ダンベル型試験片(試験片厚み:1/8インチ(3.2mm))を用い、試験速度10mm/minで試験を行った。
曲げ強度、曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して行った。日精樹脂工業射出成形機PS60E9ASEにて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した曲げ試験片(試験片厚み:1/4インチ(6.4mm))を用い、試験速度3mm/minで試験を行った。
Izod衝撃強度
ASTM D256に準拠して行った。日精樹脂工業射出成形機PS60E9ASEにて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した衝撃試験片(試験片厚み:1/8インチ(3.2mm)、モールドノッチ)を用いて試験を行った。
(2)摩擦・摩耗試験
日精樹脂工業射出成形機PS60E9ASEにてシリンダ温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した30×30×3mmの角板を用い、下記の条件にてORIE NTEC製鈴木式摩擦・摩耗試験機にて試験を実施した。
<試験条件>
周速:10cm/sec
荷重:40kg/cm2
相手材:S45Cリング(外径25.6mm、内径20.0mm)
潤滑:無潤滑
時間:24hr。
[参考例1]ポリアミド樹脂B(相対粘度:1.90)の製造方法
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩90wt%、εカプロラクタム10wt%及び安息息酸0.012(モル/モル塩)を重合缶に投入し、さらに投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大1.75MPaに調節しながら最終到達温度は280℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズし、ポリアミド樹脂Bを得た。得られたポリアミドの98重量%硫酸中、25℃、0.01g/ml濃度で測定した溶液相対粘度は1.90、融点は242℃であった。
[参考例2]ABS樹脂B(メルトフローレート:55g/10min)の製造方法
公知の溶液重合法によりブタジエン成分が10重量%、アクリロニトリル成分とスチレン成分の合計が90重量%のABS樹脂Bを得た。得られたABS樹脂のISO1133に従った、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定したメルトフローレートは55g/10minであった。
[実施例1〜7]、[比較例1〜15]
以下に示す各材料を表1に示す割合で、東芝機械株式会社社製二軸押出機TEM−58を用いて、上流側の供給口からポリアミド樹脂およびABS樹脂を供給し、下流側の供給口からホウ酸アルミニウムウィスカーおよびメタケイ酸アルミニウムウィスカーを供給しスクリュー回転を200rpmにて溶融混練後ペレット化した。得られたペレットを80℃、12時間の条件で真空乾燥した。乾燥したペレットを用いて、日精樹脂工業射出成形機PS60E9ASEで、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて試験片と30×30×3mmの角板を成形し、絶乾時および吸水時の一般機械特性、摺動特性評価を行った。なお吸水時の特性評価については、各試験片を60℃、95%RHの条件で大気平衡吸水率まで吸水処理を行った後に実施した。
(a−1)ポリアミド樹脂A:”アミラン(R)”CM3301(東レ社製、98%硫酸溶液中測定相対粘度:2.95)
(a−2)ポリアミド樹脂B:参考例1にて調整(98%硫酸溶液中測定相対粘度:1. 90)
(a−3)ポリアミド樹脂C:”アミラン”CM6041(東レ社製、98%硫酸溶液中 測定相対粘度:4.20)
(b−1)ABS樹脂A:”トヨラック”ABS900−352(東レ社製、メルトフローレート:18g/10min(ISO1133準拠、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定))
(b−2)ABS樹脂B:参考例2にて調整(メルトフローレート:55g/10min(ISO1133準拠、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定))
(b−3)ABS樹脂C:トヨラック(R)ABS470−X68(東レ社製、メルトフ ローレート:2g/10min(ISO1133準拠、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定))
(c)ホウ酸アルミニウムウィスカー:アルボレックスY(R)(四国化成(株) 製、平均繊維長:15〜25μm、平均繊維径:0.5〜1.0μm)
(d−1)メタケイ酸カルシウムウィスカーA:SH600(キンセイマテック (株)製、平均繊維長:220〜290μm、平均繊維径:10.0〜13.0μm)
(d−2)メタケイ酸カルシウムウィスカーB:SH1800(キンセイマテック(株)製、平均繊維長:30〜35μm、平均繊維径:3.5μm)
(d−3)メタケイ酸カルシウムウィスカーC:SH400(キンセイマテック(株)製、平均繊維長:300〜360μm、平均繊維径:20μm)
ポリ四フッ化エチレン樹脂:テフロン(R)6J(三井デュポンフロロケミカル(株) 製)
ポリエチレン樹脂:ハイゼックス5000(三井化学工業(株)製)
変性ポリオレフィン:LDPE−g−AS(日本油脂(株)製)。
Figure 2005194370
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実施例1〜4の組成における動摩擦係数は0.30〜0.35と低摩擦であり、相手材比摩耗量は0であった。実施例5〜7の組成における動摩擦係数は0.35〜0.50と低く、相手材比摩耗量は0.006〜0.013と低かった。一方、比較例1および6の組成における動摩擦係数は0.44〜0.58でありABS樹脂の配合量が少ないため、特に吸水時の剛性が低下し摺動特性が劣る結果であった。本発明に用いられるウィスカーをそれぞれ単独で使用した場合、比較例2〜3でわかるように動摩擦係数が0.45〜0.58であり、ホウ酸アルミニウムウィスカーとメタケイ酸カルシウムウィスカーを併用した実施例1〜2と比較し摺動性が大きく劣る結果であった。比較例4および5の組成においては、用いた各成分の組成比が請求項に示す範囲外であり、いずれも動摩擦係数、および比摩耗量が大きく摺動性が劣る結果であった。相対粘度が1.90であるポリアミド樹脂を用いた比較例8では成形加工時の機械強度が低下することにより、動摩擦係数が増加し、一方相対粘度が4.20であるポリアミド樹脂を用いた比較例9では樹脂組成物の成形時における表面外観が大きく悪化したために相手材比摩耗量が増加し、それぞれ摺動性に劣る結果であった。メルトフローレートが55g/10minであるABS樹脂を用いた比較例10では成形加工時の剛性が低下することにより、動摩擦係数が増加し、メルトフローレートが2g/10minであるABS樹脂を用いた比較例11では樹脂組成物の成形時における表面外観が大きく悪化したために相手材比摩耗量が増加し、それぞれ摺動性に劣る結果であった。比較例12〜13においては、平均繊維長、および平均繊維径が請求項に示す範囲外であるメタケイ酸カルシウムウィスカーを用いたためにいずれも動摩擦係数、比摩耗量が増加する結果であった。比較例14においては、ポリ四フッ化エチレン樹脂を用いたことにより、絶乾時の摺動性には優れるが、機械強度が低く、特に吸水時においては剛性が大きく低下しており動摩擦係数が増加する結果であった。比較例15においてはポリエチレン樹脂、ウィスカーを併用したことにより、絶乾時の摺動性は優れるが、吸水時においてはポリエチレン樹脂の配合による剛性低下が大きく、摺動性が低下する結果であった。

Claims (3)

  1. (a)ポリアミド樹脂20〜85重量%、(b)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂5〜30重量%、(c)ホウ酸アルミニウムウィスカー5〜25重量%、(d)メタケイ酸カルシウムウィスカー5〜25重量%からなり、(a)ポリアミド樹脂のサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.0〜4.0であり、かつ、(b)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂のISO1133に従った、樹脂溶融温度220℃、荷重10kgで測定したメルトフローレートが5〜50g/10minであり、かつ、(d)メタケイ酸カルシウムウィスカーの平均繊維長が220〜290μm、平均繊維径が10.0〜13.0μmであることを特徴とする摺動部材用ポリアミド樹脂。
  2. ホウ酸アルミニウムが、9Al232B23、または2Al233B24で示され、その平均繊維長が10〜30μm、平均繊維径が0.5〜1.0μmである(C)ホウ酸アルミニウムウイスカーであることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材用ポリアミド樹脂組成物。
  3. 請求項1記載の摺動部材用ポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする摺動部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN101245171B (zh) * 2007-02-13 2011-10-26 上海普利特复合材料有限公司 长纤维增强丙烯腈-丁二烯-苯乙烯/聚酰胺复合材料及其制备方法

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