JP2005183253A - リチウム二次電池用負極活物質及びリチウム二次電池並びにリチウム二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用負極活物質及びリチウム二次電池並びにリチウム二次電池用負極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 充放電時の合金体積の膨張収縮による微粉化、集電体からの剥離、導電材との接触不良、といった従来からの問題を解決できるとともに、負極表面での電解液に分解を抑制することが可能なリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【解決手段】 リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属と水素とを含み、かつ内部にポアが形成されてなることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質を採用する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウム二次電池用負極活物質及びリチウム二次電池並びにリチウム二次電池用負極活物質の製造方法に関するものであり、特に、サイクル特性を向上することが可能なリチウム二次電池用負極活物質に関するものである。
リチウム二次電池の負極活物質の高容量化の研究は、負極活物質を炭素とする電池システムが実用化される以前から行われ、現在もSiやSn、Al等の金属材料を中心に活発に行われているものの、未だ実用化には至っていない。これは主として、充放電する際にSiやSn、Al等の金属がリチウムと合金化して体積の膨張収縮が生じ、これが金属の微粉化を招き、サイクル特性が低下するといった不具合を解決できないためである。
また、Si、Sn、Al等の金属材料の表面の状態も重要であり、充放電時にこれら金属材料に表面で電解液の分解反応が生じ、サイクル特性が劣化する場合がある。
そこで、これらの問題を解決すべく、下記特許文献1に示されているような非晶質合金や、下記非特許文献1または下記非特許文献2に示されているNi-Si系合金のように、リチウムと合金化が可能な金属及びリチウムと合金化しない金属からなる結晶質合金が検討されている。
特開2002−216746号公報 「第42回電池討論会予稿集」、社団法人電気化学会電池技術委員会、平成13年11月21日、p.296−297 「第43回電池討論会予稿集」、社団法人電気化学会電池技術委員会、平成14年10月12日、p.326−327
しかし、特許文献1及び非特許文献1、2に記載された材料であっても、充放電時の合金体積の膨張収縮による微粉化、集電体からの剥離、導電材との接触不良、といった従来からの問題を完全に解決できなかった。
また、従来から、金属材料を多孔質化することにより充放電時の膨張収縮を低減させる方法も検討されているが、サイクル劣化を改善させるには不十分であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、充放電時の合金体積の膨張収縮による微粉化、集電体からの剥離、導電材との接触不良、といった従来からの問題を解決できるとともに、負極表面での電解液の分解を抑制することが可能なリチウム二次電池用負極活物質及びリチウム二次電池並びにリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属と水素とを含み、かつ内部にポアが形成されてなる粉体であることを特徴とする。
上記の構成によれば、負極活物質中に水素が含まれているため、材料製造時もしくは電池の組み立て迄におこる負極材料表面における酸化等の反応が抑制されて、その結果、電解液の分解反応が抑制されて分解生成物の堆積を防止することができ、サイクル特性を向上させることができる。
更に、上記金属とリチウムとが合金化した際には体積膨張するが、このとき金属内部のポアが潰れるため、見かけ上の体積膨張が相殺される。これにより負極活物質の微粉化を防止してサイクル特性を向上することができる。また、ポアに電解液が含浸して、負極活物質に対するリチウムイオンの拡散を効率よく行うことができ、これにより充放電反応を円滑に進めることができる。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質においては、前記ポアの平均孔径が1nm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。平均孔径が1nm未満だと、充電時の体積膨張を緩和できないので好ましくなく、平均孔径が5μmを越えると体積あたりのエネルギー量が少なくなるので好ましくない。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、先に記載の負極活物質であり、前記ポアの内部に水素が含有されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、ポア内の水素が、材料製造時もしくは電池の組み立て迄におこる負極活物質内に含まれるポアの壁面における酸化等の反応が抑制されて、その結果、電解液の分解反応が抑制されて分解生成物の堆積を防止することができる。これにより、サイクル特性を向上させることができる。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、先に記載の負極活物質であり、前記リチウムと合金化が可能な金属が、Si、Al、Snのいずれかであることを特徴とする。この構成によれば、負極活物質の充放電容量を高めることができる。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、先に記載の負極活物質であり、前記リチウムと合金化が可能な金属がSiであり、更に前記金属中に、Si相及びSiM相を有するとともに、X相またはSiX相のいずれか一方または両方を含むものであることを特徴とする。ただし、前記MはNi、Co、As、B、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Yのうちの少なくとも1種以上の元素であり、元素XはAg、Cu、Auのうちの少なくとも1種以上の元素であり、Cuは元素Mと元素Xに同時に選択されないものとする。
元素MはSiと合金化し、Liとは合金化しない元素であるため、粒子中にSi相の他にSiM相が含まれることにより、Si層単独の場合と比べて粒子自体の膨張収縮量を少なくすることができ、粒子自体の微粉化を防いでサイクル特性を向上することができる。
また、Si相より低抵抗であるX相またはSiX相のいずれか一方または両方が含まれるので、負極活物質の比抵抗を低減することができる。
なお、CuはSiと合金化するとともに、Siよりも低抵抗であるため、元素Mと元素Xの両方の性質を有する元素である。従って、本発明においては、元素Mと元素Xの双方にCuを加えることにするが、Cuは元素Mと元素Xに同時に選択されないものとした。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質においては、ラマンスペクトルにおけるSiとHとの結合に由来する600〜630cm−1のピークの強度I(620)と、結晶性Siに由来する500〜530cm−1のラマンシフトの強度I(520)との強度比I(620)/I(520)が0.004以上であることが好ましい。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属からなる溶湯に、水素ガスまたは水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを溶解させた後に、前記溶湯を凝固させることにより製造されたものであることが好ましい。
また本発明のリチウム二次電池用負極活物質は、前記金属溶湯を鋳型内で一方向凝固させることにより、前記ポアのアスペクト比を1.2以上にしたものであることが好ましい。
また、本発明のリチウム二次電池は、先のいずれかに記載のリチウム二次電池用負極活物質を備えたことを特徴とする。
また、本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属と水素とを含み、かつ内部にポアが形成されてなるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法であり、少なくとも一種類以上の前記金属からなる溶湯に、水素ガスまたは水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを溶解してから、前記溶湯を一方向凝固することにより、凝固した金属内部に水素を含有するポアを形成することを特徴とする。
金属に対する水素の溶解度は一般に、金属が溶融しているとき(液体のとき)に高く、凝固しているとき(固体のとき)に低くなる。このガス溶解度の差を利用して、水素を溶融状態の金属に溶解させてから金属を一方向凝固させることにより、固体に固溶されない水素が気泡となって金属組織中に残存する。
Si、Al、Sn等のリチウムと合金化が可能な金属の溶湯に水素を溶解させてから一方向凝固させることにより、金属内部に水素で満たされたポアが多数形成されてなる負極活物質を得ることができる。
本発明のリチウム二次電池用負極活物質によれば、充放電時の合金体積の膨張収縮による微粉化、集電体からの剥離、導電材との接触不良、といった問題を解決できるとともに、負極表面での電解液に分解を抑制することにより、リチウム二次電池の充放電容量及びサイクル特性を向上させることができる。
また本発明のリチウム二次電池によれば、充放電容量及びサイクル特性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本実施形態のリチウム二次電池用の負極活物質は、少なくとも一種類以上のリチウムと合金化が可能な金属からなる粉末であり、この金属粉末には水素が含有され、更に金属内部にポアが形成されてなるものである。
また、リチウムと合金化が可能な金属としては、Si、Al、Snを例示できる。これらの金属は、リチウムと合金化が可能である他に、水素の溶解量が溶融状態と凝固状態で大きく異なるという特性がある。この特性により、後述する製造方法によって水素を含有するポアを金属内部に容易に形成させることができる。
負極活物質中に水素が含まれているため、材料製造時もしくは電池の組み立て迄におこる負極活物質の表面もしくは活物質内に含まれるポアの壁面における酸化等の反応が抑制されて、その結果、充電時の電解液の分解反応が抑制されて分解生成物の堆積を防止することができ、サイクル特性を向上させることができる。
また、上記金属とリチウムとが合金化した際に体積膨張するが、このとき金属内部のポアが潰れるため、見かけ上の体積膨張が相殺される。これにより負極活物質の微粉化を防止してサイクル特性を向上することができる。また、ポアに電解液が含浸して、負極活物質に対するリチウムイオンの拡散を効率よく行うことができ、これにより充放電反応を円滑に進めることができる。
本発明に係る負極活物質は、平均粒径が5〜30μm程度のものが好ましい。これに対してポアの平均孔径は、1nm以上5μm以下の範囲であることが好ましい。ポアの平均孔径が1nm未満だと、充電時の体積膨張を緩和できないので好ましくなく、平均孔径が5μmを越えると体積あたりのエネルギー量が少なくなるので好ましくない。またポアのアスペクト比は1.2以上であることが好ましい。
また、負極活物質の平均粒径については、一般にSiが含まれる金属粉末はリチウムイオン電池の既存負極材料として用いられている黒鉛粉末より抵抗が高いため、導電助材を使用することが好ましいが、平均粒径5μm以下になると、導電助材の粒径より金属粉末の平均粒径が小さくなる場合が生じ、導電助材の効果が得にくくなり、容量やサイクル特性などの電池特性が低下するので好ましくない。平均粒径が30μmを越えると、リチウム二次電池における負極活物質の充填密度が低下するので好ましくない。
また本発明に係る負極活物質においては、リチウムと合金化が可能な金属がSiであり、更に、負極活物質内部にSi相及びSiM相が含まれるとともに、X相またはSiX相のいずれか一方または両方が含まれるものであることが好ましい。
Si相は、負極活物質の充放電反応に関与する相であり、充電時にリチウムと合金化してLiSi相を形成し、放電時にはリチウムを放出してSi単相に戻る。
また、SiM相は、充放電時にリチウムと反応せず、金属の一粒子の形状を維持して粒子自体の膨張収縮を抑制する。SiM相を構成する元素Mは、リチウムと合金化しない金属元素であり、Ni、Co、As、B、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Yの中から選択される少なくとも1種以上の元素である。特に元素MとしてはNiを用いることが好ましく、この場合のSiM相の組成はSiNi相となる。
またX相は、金属粉末に導電性を付与して負極活物質自体の比抵抗を低減させる。X相を構成する元素Xは、比抵抗が3Ω・m以下の金属元素であり、Ag、Cu、Auの中から選択される少なくとも1種以上の元素である。特にCuはリチウムと合金化しないので、膨張抑制効果があり好ましい。また、AgはSiとほとんど合金化しないため、元素MにAgと合金化しない金属を選択することにより、Agが単独相として存在し、粒子の伝導度を向上できるので好ましい。
なお、CuはSiと合金化するとともに、Siよりも低抵抗であるため、元素Mと元素Xの両方の性質を有する元素である。従って、本発明においては、元素Mと元素Xの双方にCuを加えることにするが、Cuは元素Mと元素Xに同時に選択されないものとした。
また、X相に代えて、あるいはX相とともに、SiX相が析出していても良い。SiX相は、X相と同様に多相合金粉末に導電性を付与して負極活物質自体の比抵抗を低減させる。
次に合金組成について言及すると、Siは、Si単相とSiM相さらにはSiX相を形成する元素であるため、合金の状態図より判断して、SiM相、SiX相を形成してもなおSi単相が生成されるように組成比を選ぶことにより、Siの容量を得ることができる。しかし、Si量が過剰に増えると、Si相が多く析出して充放電時の負極活物質全体の膨張収縮量が大きくなり、負極活物質が微粉化してサイクル特性が低下するので好ましくない。具体的には、負極活物質におけるSiの組成比が30質量%以上70質量%以下の範囲であることが好ましい。
元素Mは、SiとともにSiM相を形成する元素であるため、合金の状態図より判断してその全量がSiと合金化するように添加することが好ましい。M量がSiと合金化できる量を上回ると、Siがすべて合金化され、容量の大幅な低下を招くので好ましくない。また、M量が少ないと、SiM相が少なくなり、Si相の膨張抑制効果が減少し、サイクル劣特性が低下してしまうので好ましくない。また、M相は異なる元素、M1相、M2相、M3相というように複数存在してもかまわない。Mの組成比はSiとの固溶限界が元素により異なるため具体的に限定することはできないが、SiとMが固溶限界まで合金化したとしてもなおSi相が存在するように考慮した組成比であることが好ましい。また、元素Mはリチウムと合金化しないので、不可逆容量を持つことがない。
またXの組成比が多くなると、比抵抗が低減するものの、Si相が相対的に減少して充放電容量が低下してしまう。一方、Xの組成比が少ないと、負極活物質の比抵抗が高くなって充放電効率が低下する。このため、負極活物質におけるXの組成比は1質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。
次に、上記の負極活物質を用いたリチウム二次電池について説明する。このリチウム二次電池は、上記の負極活物質を備えた負極と、正極と、電解質を少なくとも具備してなるものである。
リチウム二次電池の負極は、例えば、負極活物質を構成する金属粉末が結着材によってシート状に固化成形されたものを例示できる。また、負極はシート状に固化成形されたものに限らず、円柱状、円盤状、板状若しくは柱状に固化成形されたペレットであっても良い。
結着材は、有機質または無機質のいずれでも良いが、負極活物質と共に溶媒に分散あるいは溶解し、更に溶媒を除去することにより負極活物質の粉末同士を結着させるものであればどのようなものでもよい。また、負極活物質と共に混合し、加圧成形等の固化成形を行うことにより負極活物質を結着させるものでもよい。このような結着材として例えば、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フェノール樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが使用でき、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー、等の樹脂を例示できる。
また、本発明に係る負極においては、負極活物質及び結着材の他に、導電助材としてカーボンブラック、黒鉛粉末、炭素繊維、金属粉末、金属繊維等を添加しても良い。
次に正極としては例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、LiFeO、V、TiS、MoS等、及び有機ジスルフィド化合物や有機ポリスルフィド化合物等のリチウムを吸蔵、放出が可能な正極活物質を含むものや、Ni、Mn、Co系等の複合酸化物を例示できる。また正極には、上記正極活物質の他に、ポリフッ化ビニリデン等の結着材や、カーボンブラック等の導電助材を添加しても良い。
正極及び負極の具体例として、上記の正極または負極を金属箔若しくは金属網からなる集電体に塗布してシート状に成形したものを例示できる。
更に電解質としては、例えば、非プロトン性溶媒にリチウム塩が溶解されてなる有機電解液を例示できる。
非プロトン性溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの二種以上を混合した混合溶媒を例示でき、特にプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)のいずれか1つを必ず含むとともにジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)のいずれか1つを必ず含むものが好ましい。
また、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y十1SO)(ただしx、yは自然数)、LiCl、LiI等のうちの1種または2種以上のリチウム塩を混合させてなるものを例示でき、特にLiPF、LiBF4、LiN(CFSO2、LiN(CSOのいずれか1つを含むものが好ましい。
また電解質の別の例として、PEO、PVA等のポリマーに上記記載のリチウム塩のいずれかを混合させたものや、膨潤性の高いポリマーに有機電解液を含浸させたもの等、いわゆるポリマー電解質を用いても良い。
更に、本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、電解質のみに限られず、必要に応じて他の部材等を備えていても良く、例えば正極と負極を隔離するセパレータを具備しても良い。
かかるリチウム二次電池によれば、上記の負極活物質を具備しており、充放電にともなう膨張収縮が少ないので、負極活物質が微粉化したり、集電体から脱落するおそれがなく、また導電材との接触も維持され、充放電容量を向上できるとともにサイクル特性を向上できる。
また、負極活物質粉末の表面もしくは活物質内に含まれるポアの壁面が、材料製造時もしくは電池の組み立て迄に酸化等の反応が抑制されるので、非水電解液の分解反応が抑制され、充放電容量を向上できるとともにサイクル特性を向上できる。
更に、負極活物質粉末に多数のポアが形成されているので、リチウム二次電池の負極活物質として用いた場合に当該ポアに非水電解液が含侵し、充放電反応を円滑に行うことができる。
また、導電性の高いX相またはSiX相を含む場合には負極活物質内部でのリチウムイオンの拡散を効率よく行うことができ、高率充放電が可能になる。
次に、本実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を説明する。本実施形態のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、金属溶湯に水素ガスを溶解させる工程と、金属溶湯を一方向凝固させる工程と、凝固後の金属体を粉砕する工程とから構成されている。
まず、金属溶湯に水素ガスを溶解させる工程では、図1に示すように、リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属を、例えば高周波誘導加熱炉1で加熱して金属溶湯4とする。高周波誘導加熱炉1は、るつぼ2と、このるつぼ2の周囲に巻回された高周波誘導コイル3とから構成されている。溶解させる金属は、Si、Al、Snのいずれか1種以上でも良く、Siの他に元素Mと元素Xを添加しても良い。また、金属を溶解させる際の雰囲気は、水素ガス雰囲気または水素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気とすることが好ましい。なお、高周波誘導加熱炉1は、後述する図2に示すように、あらかじめ水素ガス雰囲気または水素ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気としたチャンバ内に収納された状態で用いることが望ましい。
溶解時の雰囲気中の水素圧(水素分圧)は0.2〜5MPa程度にすることが好ましい。水素分圧を高くするほど、溶湯4内の水素ガス濃度が上昇するが、溶湯4内の水素濃度が過剰になると、金属の凝固の際に粗大なポアが形成されてしまう虞がある。また、水素分圧が低すぎると溶湯4内の水素ガス濃度が低下し、凝固時に十分なポアが形成されなくなり、また、ポア内に貯蔵される水素量も減少する。このため、水素圧(水素分圧)は上記の範囲が好ましい。
また、水素圧(分圧)は、金属が完全に溶解してから少なくとも3分程度は保持することが好ましい。これにより、金属溶湯4に水素ガスが十分に溶解し、金属溶湯4における水素ガス濃度を高めることができる。
また金属溶湯4の温度は、金属の種類により異なるが、金属の融点以上とすることが好ましい、例えばSiの場合は、1410〜1700℃にすることが好ましい。金属溶湯4の温度を高くするほど、溶湯4における水素ガスの溶解度は高くなるが、あまり温度が高くなると、溶湯4内の水素濃度が過剰になり、金属の凝固の際に粗大なポアが形成されてしまう虞があるので好ましくない。
次に、金属溶湯を一方向凝固させる工程では、図2に示すような、ポーラス金属製造装置5を用いる。このポーラス金属製造装置5は、チャンバ6と、チャンバ6内に収納された上述の高周波誘導加熱炉1と、冷却装置7とから構成されている。冷却装置7は、上下端が開口した中空円筒状の鋳型8と、この鋳型8の下端側に装着された冷却ユニット9とから構成されている。また、チャンバ6には、雰囲気制御手段10が接続されており、この雰囲気制御手段10によってチャンバ6内の雰囲気を調整できるようになっている。雰囲気制御手段10は、圧力計11と、圧力計11の先の配管に取り付けられた三方バルブ12と、三方バルブ12から先の分岐配管に接続された真空ポンプ13と、三方バルブ12から先の別の分岐配管に接続されたガスボンベ14とから構成されている。
そして、高周波誘導加熱炉1内の金属溶湯4を、冷却装置7の鋳型8に流し込む。次に、冷却ユニット9を作動させて、鋳型8内の金属溶湯4を鋳型8の下側から冷却させる。そうすると、鋳型8の下側から金属溶湯4の凝固が始まり、金属溶湯4の凝固が徐々に鋳型8の上側に向けて進行する。図2には、鋳型8の下側の金属溶湯4が凝固して金属体15となり、鋳型8の上側では金属溶湯4が凝固されていない状態が示している。このようにして、金属溶湯を一方向凝固させる。
金属に対する水素の溶解度は一般に、金属が溶融しているとき(液体のとき)に高く、凝固しているとき(固体のとき)に低くなる。このガス溶解度の差を利用して、水素を溶融状態の金属に溶解させてから金属を一方向凝固させることにより、固体に固溶されない水素が気泡(ポア)となって金属組織中に残存する。ポアには水素が満たされる。
図3には、一方向凝固された金属体15の斜視図を示す。一方向凝固された金属体15には、水素が満たされた多数のポア16が形成されている。このポア16は、一方向凝固の際に、気泡となった水素が金属溶湯から外に向けて抜けようとしたときに、金属が凝固されて水素が取り残された結果生じたものである。このため、ポアは、一方向凝固の冷却方向に沿って細長い形状になる。即ちポアのアスペクト比が1.2以上になる。
そして、得られた金属体15を平均粒径5〜30μm程度となるように粉砕することにより、本発明に係る負極活物質が得られる。
また、上記活物質に含有される水素量の多寡を表す指標として、ラマン分光法の測定スペクトルにおいて、Si-H結合に由来する620cm−1付近のピークと結晶性Siに由来する500〜520cm−1のラマンシフトのピーク比I(620)/I(520)を用いた。I(620)/I(520)が0.004以上であれば、Si-H結合が合金表面の酸化を抑制し、電解液との副反応がおこりにくくなるため、初期特性、サイクル特性をはじめとする電池特性の向上が期待できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
5mm角程度の大きさの塊状のSiを55重量部と、Ni粉末を35重量部と、Cu粉末10重量部を混合して混合原料とした。そして、この混合原料を、図2に示すチャンバ6内の高周波誘導加熱炉1のるつぼ2に投入した。次に、真空ポンプ13を作動させてチャンバ6内を1×10−3Paになるまで減圧し、減圧後、ガスボンベ14から水素とヘリウムの混合ガスを導入し、水素分圧が2.8MPaになるように調整した。
次に、高周波誘導加熱炉1を作動させて混合原料を溶解して金属溶湯4とした。そして金属溶湯4の温度を1600℃に保った状態で10分間放置することにより、雰囲気中の水素を金属溶湯に十分に溶解させた。
次に、図2に示すように、高周波誘導加熱炉1から金属溶湯4を冷却装置7の鋳型8に流し込んだ。尚、鋳型8は、カーボン製の中空円筒状の部材であり、その寸法は外径100mm、内径80mm、高さ200mmの大きさである。
次に、冷却ユニット6を作動させて金属溶湯4を一方向凝固させた。このようにして、多数のポアを有する金属体15を製造した。そして、この金属体15を粉砕することにより、平均粒径10μmの実施例1の負極活物質を製造した。
(実施例2)
チャンバ内の水素分圧を1MPaとしたこと以外は上記実施例1と同様にして実施例2の負極活物質を製造した。
(比較例1)
5mm角程度の大きさの塊状のSiを55重量部と、Ni粉末を35重量部と、Cu粉末10重量部を混合して混合原料とした。そして、この混合原料を、図2に示すチャンバ6内の高周波誘導加熱炉1のるつぼ2に投入した。次に、真空ポンプ13を作動させてチャンバ6内を1×10−3Paになるまで減圧し、減圧後、ガスボンベ14からヘリウムのみを導入し、ヘリウム圧が2.8MPaになるように調整した。
次に、高周波誘導加熱炉1を作動させて混合原料を溶解して金属溶湯とし、この金属溶湯をるつぼ2内でそのまま放冷して凝固させた。凝固後、粉砕することにより、平均粒径10μmの比較例1の負極活物質を製造した。
(比較例2)
5mm角程度の大きさの塊状のSiを55重量部と、Ni粉末を35重量部と、Cu粉末10重量部を混合して混合原料とした。そして、この混合原料を、図2に示すチャンバ6内の高周波誘導加熱炉1のるつぼ2に投入した。次に、真空ポンプ13を作動させてチャンバ6内を1×10−3Paになるまで減圧し、減圧後、ガスボンベ14からヘリウムのみを導入し、ヘリウム圧が2.8MPaになるように調整した。
次に、高周波誘導加熱炉1を作動させて混合原料を溶解して金属溶湯とし、この金属溶湯をるつぼ2内でそのまま放冷して凝固させた。凝固後、粉砕することにより、合金粉末を得た。この合金粉末を5Nの水酸化ナトリウム水溶液中に入れ、60℃に保ってゆっくり攪拌しながら1時間かけて含侵処理することにより、合金粉末表面のSi相を一部溶解させた。その後、ナトリウムの残留がないように純水で十分に洗浄してから乾燥し、粒度の調整を行って平均粒径10μmとした。このようにして、比較例2の負極活物質を製造した。
(比較例3)
平均粒径1μmの市販のSi粉末を比較例3の負極活物質とした。
上記の実施例1及び2並びに比較例1〜3の負極活物質を用いてリチウム二次電池を製造した。各々の負極活物質70重量部と、導電材として平均粒径3μmの黒鉛粉末20重量部と、ポリフッ化ビニリデン10重量部とを混合し、N−メチルピロリドンを加えてから攪拌してスラリーを作成した。次にこのスラリーを厚さ14μmの銅箔上に塗布してから乾燥し、これを圧延して厚さ40μmの負極電極を作成した。作成した負極電極を直径13mmの円形に打ち抜き、この負極電極に多孔質ポリプロピレン製のセパレータを挟んで対極として金属リチウムを重ね、更に容積比でEC:DEC=3:7の混合溶媒にLiPFを1.3モル/Lの濃度で添加してなる電解液を注液することにより、コイン型のリチウム二次電池を製造した。
得られたリチウム二次電池に対して、電池電圧0V〜1.5Vの範囲で0.2Cの電流密度による充放電を30サイクル繰り返し行った。そして30サイクル後の容量維持率を求めた。結果を表1に示す。
また、各々の負極活物質について、Siと水素の結合量を示す指標としてラマンスペクトルにおける600〜620cm−1付近ピーク強度と500〜520cm―1にかけてのピーク強度の比I(620)/I(520)を測定した。その結果を表1に示す。また、図4及び図5にラマンスペクトルの測定結果を示す。
Figure 2005183253
表1に示すように、実施例1及び2の負極活物質を用いたリチウム二次電池は、容量維持率が良好であることが分かった。一般に、金属溶湯中に溶解する水素のモル数は、Sieverts則により水素圧の平方根に比例することが知られているが、特に実施例1の負極活物質は、水素分圧が高かったため、水素が合金溶湯中によく溶解し、また圧力によってポアの径が小さくなったため、良好な特性が得られたものと考えられる。
また、実施例1及び2のI(620)/I(520)は、比較例1〜3と比べて高い値を示しており、負極活物質表面にSi−H結合が多く存在していることが分かる。
一方、比較例1の負極活物質は、ヘリウム100%の雰囲気で放冷して凝固させたため、ポアを一切含有しておらず、合金中に水素が含まれていない。このためポアによって電解液を含浸させたり、水素によって電解液の分解反応を抑制させたりする効果が得られず、容量維持率が低下したものと考えられる。
また比較例2の負極活物質は、水酸化ナトリウム水溶液による処理により、表面のSiが溶解して多孔質な粒子になったものの、比較例1と同様に合金中に水素が含まれていないため、電解液の分解反応の抑制効果が得られず、容量維持率が低下したものと考えられる。
更に比較例3の負極活物質は、Siのみを含み、Cu等の導電性金属を含まないため、容量維持率が低下したものと考えられる。
図1は本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を説明するための工程図。 図2は本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を説明するための工程図。 図3は本発明のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を説明するための工程図。 図4は実施例1、2と比較例1〜3のラマンスペクトルの測定結果を示すグラフ。 図5は図4の部分拡大図。
符号の説明
1…高周波誘導加熱炉、4…金属溶湯(溶湯)、5…ポーラス金属製造装置、6…チャンバ、7…冷却装置、8…鋳型、9…冷却ユニット、10…雰囲気制御手段

Claims (10)

  1. リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属と水素とを含み、かつ内部にポアが形成されてなる粉体であることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質。
  2. 前記ポアの平均孔径が1nm以上5μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  3. 前記ポアの内部に水素が含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  4. 前記リチウムと合金化が可能な金属が、Si、Al、Snのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  5. 前記リチウムと合金化が可能な金属がSiであり、更に前記金属中にSi相及びSiM相を有するとともに、X相またはSiX相のいずれか一方または両方を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
    ただし、前記MはNi、Co、As、B、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Yのうちの少なくとも1種以上の元素であり、元素XはAg、Cu、Auのうちの少なくとも1種以上の元素であり、Cuは元素Mと元素Xに同時に選択されないものとする。
  6. ラマンスペクトルにおけるSiとHとの結合に由来する600〜630cm−1のピークの強度I(620)と、結晶性Siに由来する500〜530cm−1のラマンシフトの強度I(520)との強度比I(620)/I(520)が0.004以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  7. リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属からなる溶湯に、水素ガスまたは水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを溶解させた後に、前記溶湯を一方向凝固させることにより製造されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  8. 前記金属溶湯を鋳型内で一方向凝固させることにより、前記ポアのアスペクト比を1.2以上にしたことを特徴とする請求項7に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のリチウム二次電池用負極活物質を備えたことを特徴とするリチウム二次電池。
  10. リチウムと合金化が可能な少なくとも一種類以上の金属と水素とを含み、かつ内部にポアが形成されてなるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法であり、
    少なくとも一種類以上の前記金属からなる溶湯に、水素ガスまたは水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを溶解してから、前記溶湯を一方向凝固することにより、凝固した金属内部に水素を含有するポアを形成することを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。

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