JP2005179366A - 皮膚のホメオスタシスを維持するための化粧品又は皮膚科学的製剤におけるステロイド性又は非−ステロイド性EcR受容体リガンドの使用 - Google Patents

皮膚のホメオスタシスを維持するための化粧品又は皮膚科学的製剤におけるステロイド性又は非−ステロイド性EcR受容体リガンドの使用 Download PDF

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Abstract

【課題】 上皮のホメオスタシスを維持する化粧品又は皮膚科学的製剤における、少なくとも一つのEcR受容体リガンドの使用を提供すること。
【解決手段】 本発明は、上皮のホメオスタシスを維持する化粧品又は皮膚科学的製剤における、少なくとも一つのEcR受容体リガンドの使用に関し、さらに該組成物を適用することから成る、上皮のホメオスタシスを維持する化粧処置方法にも関する。EcR受容体リガンドとして、エクディステロイド、ハロフェノジド、メトキシフェノシド、テブフェノジド、ヒドラジド、ベンズアミド、クエルセチン又はクメストロールを使用することができる。

Description

本発明は、皮膚のホメオスタシスを維持する化粧品又は皮膚科学的製剤における、少なくとも一つのEcR受容体リガンドの使用に関する。
本発明はさらに、本発明に従う組成物を適用することから成る、皮膚のホメオスタシスを維持する化粧処置方法にも関する。
表皮のホメオスタシスは、表皮を生理的な状態に維持すること、すなわち、表皮細胞の再生及び分化が平衡状態で保持されねばならないことと定義される。
特に、表皮は持続的な再生を行っている角質化し多層化した表皮組織である。表皮の厚さを一定に保つために、胚域(基底層)は表面で除去される細胞の数に等しい数の細胞を生成する。この脆弱な平衡は病的な状態、例えば乾癬の場合に変化する。表皮の厚さは増大し、次いでストレス及び/又は過増殖の状態を示すマーカーであるタンパク質MRP8/MRP14が強く発現する。細胞再生の速度が表面における細胞の除去の速度に等しくなくなった場合に、表皮は萎縮の兆候を示すこともある。
本出願人は、予期せざることに、エクディステロイドを使用することによって皮膚のホメオスタシスの維持が可能であることを見出した。
エクディステロイドは動物界の昆虫だけでなく、植物界においても重要な役割を果たしていることが公知である。特に昆虫においては、これらのステロイドホルモンは成長及び増殖に中心的な役割を果たす。
このため、エクディステロン又はβ−エクディゾン((2b,3b,5b,22R)−2,3,14,20,22,25−ヘキサヒドロキシコレステ−7−エン−6−オン)が含まれるエクディステロイドは、皮膚の老化の兆候に対抗し、かつ皮膚の障壁作用を改良するために使用されてきた。米国特許第5,198,225号は特に、エクディステロイドの皮膚構造再生作用の老化防止製品、特にしわ防止製品への化粧品としての使用を記載する。特許FR 2 696 075は、表皮の保護作用を修復、維持及び/又は強化するための化粧品製剤におけるエクディステロイドの使用を記載する。しかしながら、エクディステロイドが表皮のホメオスタシスを維持するために使用されたことはなかった。
エクディステロンの皮膚における生物学的な標的は知られていない。節足動物における脱皮及び変態に対するエクディステロンの活性は、このホルモンとEcR受容体との相互反応に依存する。現在まで、哺乳動物におけるEcR受容体は記載されたことがない。この受容体を同定するために出願人は、再構成したヒトの皮膚の組織学的な切片に、数種類の昆虫の特異的なEcR抗体(抗体9B9、Developmental Biology, 1996, 180: 258-272)で免疫標識を行った。切片の分析は標識を示し、それは特に皮膚の基底膜及び表皮の上層及び真皮中の核の周囲に存在した。
従って、本発明の第1の主題は、皮膚のホメオスタシスを維持するための、化粧品又は皮膚科学的組成物における、EcR受容体リガンドの使用である。
本発明の他の主題は、本組成物に基づく皮膚のホメオスタシスを維持する化粧処置方法である。
他の主題は以下の記載及び例を読むことによって明らかとなろう。
“皮膚のホメオスタシス”という用語は、表皮の生理を維持すること、すなわち細胞の再生と分化の速度を正常に維持することを意味する。
従って、皮膚のホメオスタシスは、過増殖関連のマーカー又はストレス関連のマーカーが発現することなく、正常な生理学的条件下で皮膚を平衡に維持することによって反映される。
表皮が萎縮する場合、表面で除去される細胞の損失を細胞の再生がもはや補償しなくなる。インビトロにおいて再構成した皮膚のモデルで研究することによって、本出願人は、培養培地中に存在するEcR受容体リガンドが再構成した表皮の生きた層の厚さを大きく増加させるが、角質層を減少させることがなく、従って表皮の萎縮を阻止することを示した。さらに、表皮の厚さの増加は細胞の過増殖とは結びついていない。従って本発明の目的は、健康な表皮の厚さに対応する、表皮の作用を最適に発現するのに適した厚さに皮膚を維持することである。
過増殖及び/又はストレス(紫外線による、機械的な又は化学的ストレス)の過程で発現するタンパク質マーカーは、タンパク質MRP8及びMRP14を含む。従って、皮膚細胞におけるこれらのタンパク質の存在が検出されることは、異常な生理状態の形跡を意味する。特に、過増殖した表皮及び再構成した皮膚にタンパク質MRP8を検出することができるが、このタンパク質が正常な皮膚の濾胞間表皮に見出されることはない。
培養培地にエクディステロンを添加するとこれらのタンパク質をコードする遺伝子の発現及びこれらのタンパク質自体を大きく減少させ、このことはこれらの細胞が正常な生理状態に戻ったことを示す。
種々のEcR受容体リガンドを使用することができる。以下のものを好ましくは使用することができる:エクディステロイド(エクディステロンを含む)、ハロフェノジド(RH−0345)、メトキシフェノシド(RH−2485)、テブフェノジド(RH−5992)、ヒドラジド(Roehm & Haas Annu. Rev. Entomol. 1998, 43, 545-69)、ベンズアミド(Sumitomo Chemical Co.(Agricultural Chemical Research Laboratory)製のBTBHIB、Biochemical and Biophysical Research Communications, 1996, 227, 427-32)、クエルセチン又はクメストロール(これらは共にエストロゲンをベースとするフラボノイドである)。
EcR受容体リガンドの質量は、使用する最終組成物の最終質量に対して、0.001%〜10%、好ましくは0.01%〜5%である。
使用する組成物はさらに一又は複数の追加の化合物を含むことができ、それを落屑剤、保湿剤及び脱色剤又は着色剤から選択する。
本発明に従う組成物はさらに、水及び/又は一又は複数の化粧品として受容可能な有機溶媒を含むことができる。これらの溶媒を、親水性有機溶媒、親油性有機溶媒及び両親媒性有機溶媒、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。
親水性有機溶媒のうち例としてあげることができるものは以下を含む:1〜8の炭素原子を含む直鎖又は分岐した低級モノアルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール及びイソブタノール、任意にオキシエチレン化したポリエチレングリコール、ポリオール、例えばプロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール及びその誘導体、グリコールエーテル及びプロピレングリコールエーテル。
挙げることができる両親媒性有機溶媒はポリオール、例えばプロピレングリコール誘導体を含む。
挙げることができる親油性有機溶媒は脂肪エステルを含む。
本発明に従う組成物はさらに以下のような添加物を含むことができる:脂肪物質、保存剤、安定剤、不透明化剤、柔軟剤、シリコーン、発泡剤、抗酸化剤、pH調節剤、乳化剤、標準的な親水性又は親油性ゲル化剤及び/又は増粘剤、親水性又は親油性活性剤、芳香剤、乳化剤、封鎖剤、ポリマー、酸性化剤又は塩基性化剤、フィラー、フリーラジカル補足剤、セラミド、保湿剤、ビタミン、界面活性剤、抗フケ剤、プロペラント、染料及び化粧品で通常使用する他の添加物。
これらの種々の添加物の量は、対象となる分野で従来から使用されているものである。当業者は、一又は複数の任意の化合物を注意して選択して本発明に従う組成物に添加して、本発明に従う組成物に伴う有利な性質を損なわないか実質的に損なわないようにするであろう。
本発明に従う組成物は化粧品として及び/又は皮膚科学的に特に適しており、リンスをせずに長期間接触した後であっても頭皮の刺激を生じない。
少なくとも一つのEcR受容体リガンドを含む本発明に従う組成物は、ジェル、ミルク、ローション、セラム、マスク又はクリームの形態にあることができる。
本発明の他の主題は、少なくとも一つのEcR受容体リガンドを含む組成物の化粧品として有効な量をヒトの皮膚へ適用することによる、皮膚のホメオスタシスを維持する化粧処置方法である。
以下の例は本発明を説明するが、本発明を制限するものではない。
例1:表皮の厚さの測定
再構成した表皮をAsselineau他、1985(Asselineau D, Bernard BA, Bailly C. & Darmon M: Epidermal morphogenesis and induction of 67 kD Keratin Polypeptide by culture at the air liquid interface, Exp Cell Res 159: 536-539)の技術に従って製造した。
空気/流体界面にさらした最初の日から、培養培地にエクディステロンを存在させて(1〜1000μg/ml)表皮を培養した。表皮を7日培養した。培養培地を取り替えることによって48時間ごとにこの処置を更新した。7日間の処置の後で、表皮を収穫した。HES(ヘマトキシリンエオシンサフロン)で染色した後で組織学的検査を行った。
表皮の厚さの測定を組織学的な切片に対して行った。このために、一つの視野に対して10個の測定を行う。5視野を計量する。これらの測定をX10の対物レンズを有するLeica Q600S映像分析システムを使用して行う。各試料について得られた平均の厚さは測定した50個の測定値に対応する。得られた値の組を表Iにまとめる:
表I:エクディステロンで7日処置した後のμmで表した表皮の厚さ
Figure 2005179366
カッコ内の数字は標準偏差を表す。
再構成した表皮の培養培地へエクディステロンを適用すると、生きた層のレベルにおいて表皮の厚さが増加する結果となる。表皮の厚さの増加は不全角化(角質層の核)又は角質層の厚さの減少を伴わない。表皮の分化は多数の顆粒層の存在によって特徴付けられる。
例2:培地におけるエクディステロンの量の関数としての細胞増殖の測定
角化細胞を乳房形成から誘導する。これらの角化細胞を分離し、次いで成長因子(EGF(表皮成長因子):10ng/ml、0.4μg/ml、インスリン5μg/ml、BPE(ウシ下垂体抽出物)4ml/L)を懸濁したKGM培地(Clonetics)で培養する。
細胞を8時間〜48時間エクディステロンで処理する。エクディステロンでの処理中に培養培地にはEGFは存在しない。
エクディステロンを以下の濃度で試験した:1μg/ml、0.1μg/ml及び0.01μg/ml。
Figure 2005179366

Figure 2005179366
エクディステロンで48時間処理した後、対照の細胞と比較して細胞の顕著な増加は観察されない。
エクディステロンで処理したことによって生じた表皮の生きた層の厚さの増加は、従って過増殖に伴うものではない。
例3:細胞周期の分析
細胞周期の分析はフローサイトメトリーによる細胞集団のDNA含量を研究することから成る。これらの研究を規定の培地(KGM−Clonetics)中で単層として培養した正常なヒトの角化細胞に対して行った。
角化細胞を乳房形成から誘導する。角化細胞を分離し、次いで成長因子(EGF:10ng/ml、0.4μg/ml、インスリン5μg/ml、BPE(ウシ下垂体抽出物)4ml/L)を懸濁したKGM培地(Clonetics)で培養する。
細胞を8時間〜48時間エクディステロンで処理する。エクディステロンでの処理中に培養培地にはEGFは存在しない。
エクディステロンを以下の濃度で試験した:1μg/ml、0.1μg/ml及び0.01μg/ml。
フローサイトメトリーにおける細胞周期分析で行う手順は以下の刊行物に記載されている:Staiano-Coico L., Higgins P. J., Darzynkiewicz Z.他; 1986 Human keratinocyte culture. Identification and stagind of epidermal cell subpopulations. J. Clin. Invest. 77, 396-404。分析をBecton-Dickinson社製のCalibur 3C Trieurフローサイトメトリーを使用して行った。
フローサイトメトリーでの計数による細胞周期の種々の相分析の結果、相G0/G1とG2/Mの間の細胞集団における変化が角化細胞培養培地中に存在するエクディステロンの量の関数として現れる。
従って、エクディステロンよる処理後の表皮の生きた層の厚さにおける増加は、細胞周期の変化の結果である。
例4:過増殖現象に含まれるマーカーの発現の調節:ゲノムの結果
例1の場合と同じ条件下で再構成した表皮の培地にエクディステロンを適用した。
7日処理した後、表皮を収穫した。メッセンジャーRNA(mRNA)の発現の分析は、エクディステロンの処理によってMRP8/MRP14のmRNAの発現が1.7の比率で減少し、過増殖及び/又はストレス状態に伴うマーカーであるプソリアシンの発現は3.5の比率で減少する。
従って、エクディステロンは表皮の過増殖及び/又はストレス状態に伴うマーカーの発現を正常化する。
例5:過増殖現象に含まれるマーカーの発現の調節:タンパク質発現の結果
例1の場合と同じ条件下で再構成した表皮の培地にエクディステロンを適用した。
タンパク質MRP8及びMRP14は、再構成した皮膚において、乾癬症の皮膚において、また過増殖ではあるが分化能を維持している角化細胞によって、強く発現されるタンパク質である。タンパク質マーカーMRP8及びMRP14の分析を、組織学的な切片に対する免疫蛍光によって行った。
組織学的な切片の分析は、表皮の上層に対してMRP8及びMRP14の発現をエクディステロンが抑制することを示す。
例6:化粧組成物
多重エマルションを以下の方法で製造する:
一次エマルションを、相Aの成分を室温で混合し、別途層Bの成分を室温で混合し、急速に撹拌しながら相Bを相Aへゆっくり加えることによって製造する。三重エマルションを製造するには、複数の相を製造し、次いで急速に撹拌しながら相Aを相Bへゆっくり加える。これに相Cを加え、次いで相Dを加える。均一化が完了するまで撹拌を継続する。
1.一次エマルション
Figure 2005179366





2.複合エマルション
Figure 2005179366

Claims (17)

  1. 上皮のホメオスタシスを維持する化粧品又は皮膚科学的組成物製剤の製造のための、少なくとも一つのEcR受容体リガンドの使用。
  2. EcR受容体リガンドがエクディステロイドである、請求項1に記載の使用。
  3. EcR受容体リガンドがハロフェノジドである、請求項1に記載の使用。
  4. EcR受容体リガンドがメトキシフェノシドである、請求項1に記載の使用。
  5. EcR受容体リガンドがテブフェノジドである、請求項1に記載の使用。
  6. EcR受容体リガンドがヒドラジドである、請求項1に記載の使用。
  7. EcR受容体リガンドがベンズアミドである、請求項1に記載の使用。
  8. EcR受容体リガンドがクエルセチンである、請求項1に記載の使用。
  9. EcR受容体リガンドがクメストロールである、請求項1に記載の使用。
  10. EcR受容体リガンドの質量が最終組成物の総質量に対して0.001%〜10%であることを特徴とする、請求項1ないし9の1項に記載の使用。
  11. EcR受容体リガンドの質量が最終組成物の総質量に対して0.01%〜5%であることを特徴とする、請求項1ないし9の1項に記載の使用。
  12. 組成物がさらに一又は複数の追加の化合物を含むことができ、それを落屑剤、保湿剤及び脱色剤又は着色剤から選択することを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の使用。
  13. 組成物がさらに水、アルコール及び一又は複数の化粧品として受容可能な有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項1ないし12の1項に記載の使用。
  14. 組成物がさらに一又は複数の化粧品として受容可能な添加物を含むことを特徴とする、請求項1ないし13の1項に記載の使用。
  15. 組成物が水性若しくは水性−アルコール性溶液又は水性若しくは水性−アルコール性ジェルの形態にあることを特徴とする、請求項1ないし14の1項に記載の使用。
  16. 組成物がミルク、ジェル、ムース、セラム又はローションの形態にあることを特徴とする、請求項1ないし15の1項に記載の使用。
  17. 請求項1ないし16のいずれか1項に記載の少なくとも一つのEcR受容体リガンドを含む組成物の化粧品として有効な量をヒトの皮膚へ適用することを特徴とする、上皮のホメオスタシスを維持する化粧処置方法。
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