JP2005176321A - 圧電共振器を用いたフィルタ - Google Patents

圧電共振器を用いたフィルタ Download PDF

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Abstract

【課題】 減衰帯域での減衰量を確保しつつ、通過帯域での損失を抑えることが可能な圧電共振器を用いたフィルタを提供する。
【解決手段】 直列圧電共振器11は、入力端子15aと出力端子15bとの間に直列接続される。並列圧電共振器12aは、一方電極が入力端子15aと直列圧電共振器11との接続点に、他方電極がインダクタ13aの一方端子に、それぞれ接続されている。並列圧電共振器12bは、一方電極が直列圧電共振器11と出力端子15bとの接続点に、他方電極がインダクタ13bの一方端子に、それぞれ接続されている。インダクタ13a及び13bの他方端子は、それぞれ接地されている。追加圧電共振器14は、並列圧電共振器12aの他方電極と、並列圧電共振器12bの他方電極との間に接続されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧電共振器を用いたフィルタに関し、より特定的には、携帯電話や無線LAN等の移動体通信端末の無線回路に用いられる圧電共振器を用いたフィルタに関する。
携帯電話や無線LAN等に内蔵される部品は、より小型化、軽量化、かつ高性能化されることが要求されている。これらの要求を満足する部品の1つとして、圧電体によって構成される圧電共振器を用いたフィルタが挙げられる(特許文献1を参照)。以下、このフィルタの一例を、図面を参照して説明する。
まず、フィルタの構成を説明する前に、フィルタに用いられる圧電共振器の構造について説明する。図21は、基本的な圧電共振器の単体構造を示す斜視図である。図22は、図21のB−B断面図である。図23A及び図23Bは、それぞれ圧電共振器の回路記号及び等価回路図である。図24は、圧電共振器単体の周波数特性を示す図である。
図21を参照して、圧電共振器210は、上部電極層211、圧電体層212、下部電極層213、絶縁体層214及びキャビティ215を、シリコンやガラス等の基板216上に形成することで構成される。キャビティ215は、非貫通で基板216上に設けられる。このキャビティ215を覆うように、二酸化珪素(SiO2 )や窒化珪素(Si34 )等からなる絶縁体層214が形成される。絶縁体層214の上には、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タングステン(W)、白金(Pt)等からなる下部電極層213が形成される。下部電極層213の上には、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3 )、タンタル酸リチウム(LiTaO3 )、ニオブ酸カリウム(KNbO3 )等からなる圧電体層212が形成される。圧電体層212の上には、下部電極層213と同様の材料からなる上部電極層211が形成される。上部電極層211、圧電体層212、下部電極層213及び絶縁体層214は、振動部218を構成する。従って、この振動部218は、図22のように基板216の一部221によって支持されている構造となる。キャビティ215は、この圧電体層212の機械的な振動を閉じ込めるために設けられている。
上部電極層211と下部電極層213との間に電圧を印加することにより、圧電体層212に電界が発生し、この電界によって起こる歪みが機械的な振動として励振され、これが電気的な共振特性及び反共振特性へと変換される。圧電共振器210の共振周波数fr 及び反共振周波数fa は、振動部218の各層の厚みと大きさ、また各材料定数等のパラメータによって求められる。図23Aに示す圧電共振器210の等価回路は、図23Bのように静電容量C0 、等価定数C1 及び等価定数L1 で表される。なお、抵抗成分が非常に小さいため、図23Bの等価回路では省いている。静電容量C0 は、上部電極層211と下部電極層213とで挟まれた容量とみたてると、真空中の誘電率ε0 、圧電体の比誘電率εr 、電極面積S及び圧電体の厚みdから、下記式(1)で求めることができる。
0 =ε0εr×S/d … (1)
また、図23Bの等価回路において、インピーダンスが0となる直列共振とインピーダンスが無限大となる並列共振とから、共振周波数fr 及び反共振周波数fa は、それぞれ下記式(2)及び式(3)で求められる。圧電共振器210単体の周波数特性は、図24に示すようになる。
r =1/(2π×√(C11)) … (2)
a =fr×√(1+C1/C0) … (3)
図25は、上述した周波数特性を有する圧電共振器を3段用いた従来のフィルタの回路図の一例を示す図である。図25において、従来のフィルタ250は、直列圧電共振器251と、並列圧電共振器252a及び252bと、インダクタ253a及び253bとで構成される。直列圧電共振器251は、入力端子255aと出力端子255bとの間に直列接続される。並列圧電共振器252aは、一方電極が入力端子255aと直列圧電共振器251との接続点に、他方電極がインダクタ253aの一方端子に、それぞれ接続されている。並列圧電共振器252bは、一方電極が直列圧電共振器251と出力端子255bとの接続点に、他方電極がインダクタ253bの一方端子に、それぞれ接続されている。インダクタ253a及び253bの他方端子は、それぞれ接地されている。
この構成による従来のフィルタ250は、並列圧電共振器252a及び252bによる周波数特性(図26グラフ(a)の実線)と、直列圧電共振器251による周波数特性(図26グラフ(a)の点線)との2つを有していることになる。従って、並列圧電共振器252a及び252bの反共振点262と、直列圧電共振器251の共振点263とを、ほぼ一致させるように、フィルタ250の各パラメータを設定すれば、図26グラフ(b)に示すような通過帯域265を持つフィルタを実現することができる。
特許第2800905号明細書
しかしながら、上記従来のフィルタでは、通過帯域の前後の周波数帯域で大きな減衰量を得ることは、構成上期待できない。よって、このフィルタは、ある2つの周波数帯域について、一方を通過させ他方を減衰させる必要がある装置、典型的には携帯電話や無線LAN等の移動体通信端末のフィルタに使用することができない。例えば、W−CDMA用の受信フィルタでは、受信帯域が2.11〜2.17GHzで送信帯域が1.92〜1.98GHzである。
また、上記従来のフィルタ構成では、大きな値のインダクタを並列圧電共振器と接地との間に設けなければならず、新たに基板等の外付け回路が必要となり、フィルタのサイズが大きくなるという問題も有していた。
それ故に、本発明の目的は、減衰帯域での減衰量を確保しつつ、通過帯域での損失を抑えることが可能な圧電共振器を用いたフィルタを提供することである。また、本発明の目的は、回路に必要なインダクタの値や数を低減してサイズの小型化を図った圧電共振器を用いたフィルタを提供することである。
本発明は、少なくとも複数の圧電共振器を構成に用いたフィルタに向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明のフィルタは、入出力端子間に直列接続された1つ以上の直列圧電共振器と、直列圧電共振器に対してラダー型に並列接続された2つ以上の並列圧電共振器と、2つ以上の並列圧電共振器の少なくとも2つにそれぞれ設けられ、当該並列圧電共振器の直列圧電共振器に接続されていない電極と接地との間を接続するインダクタと、少なくとも1つの、並列圧電共振器のインダクタが接続された電極のいずれか2つを接続する追加圧電共振器とで構成される。
典型的なフィルタ構成は、入出力端子間に、直列接続された直列圧電共振器と、直列圧電共振器の一方端子に一方電極が接続された第1の並列圧電共振器と、直列圧電共振器の他方端子に一方電極が接続された第2の並列圧電共振器と、第1の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第1のインダクタと、第2の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第2のインダクタと、第1の並列圧電共振器の他方電極と第2の並列圧電共振器の他方電極との間を接続する追加圧電共振器とで構成される。この構成では、直列圧電共振器と追加圧電共振器とが同数であることが好ましい。
また、他の典型的なフィルタ構成としては、入出力端子間に、直列接続された第1及び第2の直列圧電共振器と、第1の直列圧電共振器の一方端子に一方電極が接続された第1の並列圧電共振器と、第1の直列圧電共振器の他方端子と第2の直列圧電共振器の一方端子とに一方電極が接続された第2の並列圧電共振器と、第2の直列圧電共振器の他方端子に一方電極が接続された第3の並列圧電共振器と、第1の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第1のインダクタと、第3の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第2のインダクタと、第1の並列圧電共振器の他方電極と第3の並列圧電共振器の他方電極との間を接続する追加圧電共振器とで構成される。この構成では、第1及び第2の直列圧電共振器と追加圧電共振器とが、偶奇が同じである複数個で構成されることが好ましい。
また、他の典型的なフィルタ構成としては、入出力端子間に、直列接続された第1〜第3の直列圧電共振器と、第1の直列圧電共振器の一方端子に一方電極が接続された第1の並列圧電共振器と、第1の直列圧電共振器の他方端子と第2の直列圧電共振器の一方端子とに一方電極が接続された第2の並列圧電共振器と、第2の直列圧電共振器の他方端子と第3の直列圧電共振器の一方端子とに一方電極が接続された第3の並列圧電共振器と、第3の直列圧電共振器の他方端子に一方電極が接続された第4の並列圧電共振器と、第1の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第1のインダクタと、第2の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第2のインダクタと、第3の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第3のインダクタと、第4の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第4のインダクタと、第1の並列圧電共振器の他方電極と第nの並列圧電共振器(n=2〜4のいずれか)の他方電極との間を接続する第1の追加圧電共振器と、第1及び第n以外の並列圧電共振器の他方電極間を接続する第2の追加圧電共振器とで構成される。
このフィルタを構成する直列圧電共振器、並列圧電共振器及び追加圧電共振器としては、薄膜弾性波共振器が考えられる。この薄膜弾性波共振器は、上部電極と下部電極との間に圧電体層を挟み、当該下部電極の下にキャビティを設ける構成とすればよい。また、キャビティを設けない薄膜弾性波共振器として、上部電極と下部電極との間に圧電体層を挟み、当該下部電極の下に、低インピーダンス層と高インピーダンス層とを交互に積層して形成される音響多層膜を設ける構成も考えられる。さらに、各々の圧電共振器は、等価回路上で隣り合う圧電共振器との間の電極接続を同一の配線層で行うことが好ましい。
また、このフィルタを構成する圧電共振器としては、弾性表面波共振器が考えられる。この弾性表面波共振器は、圧電基板上にインターディジタルトランスデューサ電極と反射器電極とを伝搬方向に対して近接配置する構成とすればよい。
上記のように、本発明の圧電共振器を用いたフィルタによれば、追加圧電共振器をいずれか2つの並列圧電共振器の他方電極間に少なくとも1つ挿入する。これにより、通過帯域における通過損失の抑制及び帯域幅の増大を維持したまま、減衰帯域で所望の減衰量を確保することが可能となる。
本発明が提供する特徴的な構成は、信号の入出力端子に対して、直列に挿入される1つの直列圧電共振器と、並列に挿入される2つの並列圧電共振器とで構成される3段以上のラダー型フィルタであれば、段数に関係なく適用可能である。以下、1つの直列圧電共振器と2つの並列圧電共振器とで構成される3段ラダー型フィルタを一例に挙げて、本発明を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ10の回路図である。図1において、本第1の実施形態のフィルタ10は、直列圧電共振器11と、並列圧電共振器12a及び12bと、インダクタ13a及び13bと、追加圧電共振器14とで構成される。
直列圧電共振器11は、入力端子15aと出力端子15bとの間に直列接続される。並列圧電共振器12aは、一方電極が入力端子15aと直列圧電共振器11との接続点に、他方電極がインダクタ13aの一方端子に、それぞれ接続されている。並列圧電共振器12bは、一方電極が直列圧電共振器11と出力端子15bとの接続点に、他方電極がインダクタ13bの一方端子に、それぞれ接続されている。インダクタ13a及び13bの他方端子は、それぞれ接地されている。追加圧電共振器14は、並列圧電共振器12aの他方電極と、並列圧電共振器12bの他方電極との間に接続されている。
図1のように追加圧電共振器14を接続することによって、従来の図25に示す回路に加えて、図2に示す直列回路網の等価回路が加わることになる。この図2の等価回路における共振周波数fr 及び反共振周波数fa は、上述した式(2)及び式(3)で同様に求めることが可能である。しかし、この場合には、インダクタ13a及び13bの影響を考慮する必要があり、実際の共振周波数f0 は共振周波数fr よりも低くなる。つまり、この共振周波数f0 を適切に制御することで、所望の位置に減衰帯域を設けることができる。
図3に、図1に示すフィルタ10の通過特性(実線)と、図26に示す従来のフィルタ250の通過特性(点線)とを示す。フィルタ10の通過特性は、追加圧電共振器14の共振周波数を調整して、所望の周波数帯域(減衰帯域)において十分な減衰量を確保している。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ10によれば、追加圧電共振器を2つの並列圧電共振器の他方電極間に挿入する。これにより、従来のフィルタ250に比べて、通過帯域における通過損失の抑制及び帯域幅の増大を維持したまま、減衰帯域で所望の減衰量を確保しつつ、通過帯域での損失を抑えることが可能となる。よって、この構成による本発明のフィルタを、携帯電話や無線LAN等の移動体通信端末の受信フィルタ又は送信フィルタに利用することが可能となる。
なお、図4Aに示すように、入力端子15aと並列圧電共振器12aの一方電極との間に直列圧電共振器11aを、並列圧電共振器12bの一方電極と出力端子15bとの間に直列圧電共振器11bをそれぞれ挿入する、フィルタ40の構成も考えられる。このフィルタ40でも、追加圧電共振器14の共振周波数を適切に調整することで、所望の周波数帯域(減衰帯域)において十分な減衰量を確保することができる。
また、図4B及び図4Cのように、直列に挿入される2つの直列圧電共振器と、並列に挿入される3つの並列圧電共振器とで構成される5段のラダー型フィルタに、追加圧電共振器14を挿入するフィルタ構成も考えられる。
(第2の実施形態)
図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ50の回路図である。図5Aにおいて、本第2の実施形態のフィルタ50は、3つの直列圧電共振器11a〜11cと、4つの並列圧電共振器12a〜12dと、4つのインダクタ13a〜13dと、追加圧電共振器14とで構成される。
直列圧電共振器11a〜11cは、入力端子15aと出力端子15bとの間に直列接続される。並列圧電共振器12a〜12dの一方電極は、入力端子15a、直列圧電共振器11a〜11c及び出力端子15bを接続した各接続点のいずれかに、それぞれ接続されている。並列圧電共振器12a〜12dの他方電極は、インダクタ13a〜13dの一方端子にそれぞれ接続されている。インダクタ13a〜13dの他方端子は、それぞれ接地されている。追加圧電共振器14は、並列圧電共振器12bの他方電極と、並列圧電共振器12cの他方電極との間に接続されている。なお、この追加圧電共振器14は、並列圧電共振器12a〜12dの他方電極のいずれか2点間に接続されればよく、図5Aに示す接続形態以外にも図5B〜図5Fに示す接続形態が考えられる。
上述したように、図5Aのように追加圧電共振器14を接続することによって、図2に示す直列回路網の等価回路が加わることになる。よって、この共振周波数f0 を適切に制御することで、所望の位置に減衰帯域を設けることができる。
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ50によれば、追加圧電共振器をいずれか2つの並列圧電共振器の他方電極間に挿入する。これにより、従来のフィルタ250に比べて、通過帯域における通過損失の抑制及び帯域幅の増大を維持したまま、減衰帯域で所望の減衰量を確保することが可能となる。
なお、上記第2の実施形態では、並列圧電共振器12a〜12dの他方電極のいずれか2点間に接続される追加圧電共振器14が、1つである場合を説明した。しかし、この追加圧電共振器は、2つ接続されても構わない。この場合、図6A〜図6Cで示すように、2つの追加圧電共振器が、並列圧電共振器12a〜12dの他方電極のいずれか2点間に重複することなく、それぞれ接続されることが条件となる。
また、追加圧電共振器の数は、1つ又は2つに限られず、希望する通過特性や製品サイズ/コスト等に応じて自由に設定することができる。また、各並列圧電共振器に接続される追加圧電共振器の数は、図5A〜図5F、図6A〜図6C及び図7A〜図7Xに示す回路等のように、それぞれ1つであることが特性上好ましいが、図8A及び図8Bに示す回路等のように、1つの並列圧電共振器に複数の追加圧電共振器を接続する構成であってもよい。この構成でも、圧電体層の材料、厚さ及び大きさ等を最適に設定すれば、所望の通過特性を十分に得ることが可能である。
また、本発明のフィルタ構成の場合、並列圧電共振器12a〜12dの他方電極に接続されるインダクタ13a〜13dは、追加圧電共振器14が接続されてなければ省略することができる。すなわち、追加圧電共振器が接続されていない並列圧電共振器の他方電極は、直接接地してもよい(例えば図9)。また、入力端子と直列圧電共振器との間及び直列圧電共振器と出力端子との間にインダクタが挿入されていても構わない(例えば図10)。なお、本発明のフィルタに含まれるこれらのインダクタは、追加圧電共振器を挿入することによって、従来のフィルタ(図25等)に対して値を小さくすることができる。本発明のフィルタは、通常半導体基板上に形成されるので、フィルタに必要なインダクタを電極、配線、ボンディングワイヤ、バンプ等の寄生インダクタで形成することが可能となる。インダクタを配線で構成した半導体チップ110の一例を図11Aに、インダクタをボンディングワイヤで構成した半導体パッケージ111の一例を図11Bに示す。フィルタが形成された半導体チップは、必要に応じてプリント基板や低温焼結セラミック(LTCC)上に配置されてもよい。
(第3の実施形態)
上述したように、各図に示したフィルタ回路は、半導体基板上で各圧電共振器が各圧電共振器の電極で接続されて構成される。上記図11Aは、図5Aに示したフィルタ50の回路を構成した半導体チップ110の上面図である。図中、格子状の網掛け部分は圧電共振器11a〜11c、12a〜12d及び14の上部電極を、点網掛け部分は上層配線を、斜線網掛け部分は下層配線又はインダクタ13a〜13dを示している。この図11Aの半導体チップ110のようにスペースを無駄なく使用するためには、圧電共振器の電極接続層を、図12のように圧電体層を挟む毎に上下交互に変えることが最も効果的である。従って、追加圧電共振器14も上層と下層との間に挿入する構成にすれば、チップ設計上も容易となる。
図12の例では、並列圧電共振器12bの他方電極が「上層」で形成され、並列圧電共振器12cの他方電極が「下層」で形成されているので、この間に追加圧電共振器14を挿入することは容易となる。一方、並列圧電共振器12aの他方電極と並列圧電共振器12cの他方電極との間や、並列圧電共振器12bの他方電極と並列圧電共振器12dの他方電極との間は、双方とも同一層で電極が形成されている。このため、追加圧電共振器を挿入する場合には、上下電極層を一部短絡させて上層と下層とを接続する必要がある。
そこで、第3の実施形態では、圧電共振器の数を調整して追加圧電共振器が上層と下層との間に挿入できるようにしたフィルタ構成を説明する。図13及び図14は、この構成を用いた第3の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタの回路図の一例である。
図13は、2つの圧電共振器を直列接続した追加圧電共振器134を用いたフィルタ130の構成である。これにより、並列圧電共振器12aの他方電極と並列圧電共振器12cの他方電極とが同一層でも、追加圧電共振器134を挿入することができる。図14は、直列圧電共振器側に圧電共振器141をさらに追加して、追加圧電共振器14の両極側の層を異ならせたフィルタ140の構成である。
なお、もともと追加圧電共振器の両極側の層が異なっている場合でも、図15に示す直列圧電共振器151や追加圧電共振器154のように構成することも可能である。
このように、フィルタに挿入する追加圧電共振器の数と、この追加圧電共振器が挿入される間の直列圧電共振器の数とが、両方とも偶数又は両方とも奇数(すなわち、偶奇が同じ)となるように、フィルタを構成する圧電共振器の数を制御すれば、上下電極層を一部短絡させて上層と下層とを接続する必要がなくなる。
(圧電共振器の構造1)
本発明の各実施形態のフィルタに用いられる直列圧電共振器、並列圧電共振器及び追加圧電共振器の一般的な構造は、図21で説明したとおりであるが、これ以外の構造も考えられる。以下、図21に示した以外の圧電共振器の構造について説明する。
図21では、絶縁体層214でキャビティ215を覆うような構造にしているが、図16のように、絶縁体層214によって全て覆われないキャビティ165であってもよい。このような構造にすれば、振動部218の各層を堆積後に、キャビティ165に充填された物質をエッチングにより除去することが可能となる。なお、キャビティは、振動部218の振動を妨げない構造であればよく、間口は四角形だけでなく、多角形、円又は楕円等のいかなる形状であってもよい。また、キャビティを側面から見た場合にテーパがついていてもよい。また、キャビティは、基板216の下部に貫通していてもよい。
また、図22のようにキャビティ215を設けて基板216の一部で支持部221を構成する代わりに、図17のように基板216の上に個別の支持部171を設けて、振動部218が振動するキャビティ175を確保してもよい。
また、キャビティを設けない構成としては、図18及び図19に示す構造が考えられる。図18及び図19の圧電共振器180の構造は、上部電極層211と下部電極層213とに挟まれた圧電体層212で構成された振動部218が、音響多層膜の上に配置され、音響多層膜は基板216の上に構成される。この音響多層膜は、厚さが4分の1波長である音響インピーダンスの低い層184と音響インピーダンスの高い層185とを交互に積層して形成される。振動部218から見て音響多層膜の1層目を低インピーダンス層184とすることにより、圧電体層212に対する負荷インピーダンスを十分に小さくし、圧電体層212と基板216とを音響的にアイソレートするようにした構造である。このような構造により、振動部218は、基板216に固定されているにも関わらず、何にも支持されていない自由振動の状態に近づき、図21の圧電共振器210と同様の動作を示す。この低インピーダンス層184及び高インピーダンス層185の積層数は、多ければ多いほど振動部218が基板216と音響的にアイソレートされる。
なお、低インピーダンス層184には、二酸化珪素(SiO2 )や窒化珪素(Si34 )等の材料を、高インピーダンス層185には、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、モリブデン(Mo)、酸化ハフニウム(HfO2 )、酸化チタン(TiO 2 )、酸化ジルコニウム(ZrO2 )等の材料が用いられる。
また、圧電共振器210の層構成は一例であり、上部電極の上側にパッシベーション膜として圧電体層を薄く付したり、圧電体層と電極間に絶縁層を設けても同様の効果が得られ、本発明の構成要素はこれに限るものではない。
また上部電極層211、圧電体層212、下部電極層213及び絶縁体層214で構成される振動部218の面積は、それぞれ異なっていてもよい。さらに、上部電極層211及び下部電極層213以外の各層は、各圧電共振器間において一続きに生成されていてもよい。
また、電極形状は、キャビティ形状と同様、丸型、多角形又はくびれ型等のいかなる形状であっても同様の効果が得られる。
(圧電共振器の構造2)
図20は、上記第1の実施形態に係るフィルタ10の圧電共振器を弾性表面波共振器で構成した弾性表面波フィルタ200の一例を示した図である。弾性表面波共振器は、圧電基板206上にインターディジタルトランスデューサ電極と反射器電極とを伝搬方向に対して近接配置することにより構成される。弾性表面波フィルタ200は、圧電基板206上に、直列弾性表面波共振器201a〜201c、並列弾性表面波共振器202a〜202d、及び追加弾性表面波共振器204とを形成し、圧電基板206上の配線電極により接続することにより構成される。ここで、弾性表面波共振器の共振周波数に関しては、電極指ピッチやメタライゼーションレシオ、あるいは電極膜厚等を調整することにより、所望のフィルタ特性を得るために最適に設定されている。また、第1の電極パッド205aは、インダクタンス成分を介して入出力端子の一方に接続され、第2の電極パッド205bは、インダクタンス成分を介して入出力端子の他方に接続される。また、接地電極パッド203a〜203dは、並列弾性表面波共振器202a〜202dに接続されており、インダクタンス成分を介して接地される。さらに、接地電極パッド203bと203cとの間には、追加弾性表面波共振器204が接続される。
本発明の圧電共振器を用いたフィルタは、小型であり、所望の減衰帯域における高減衰量及び通過帯域内の低損失特性を有し、携帯電話や無線LAN等の移動体通信端末における無線回路内のフィルタ等として有用である。また、仕様に応じて無線基地局用のフィルタ等の用途にも応用できる。
本発明の第1の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ10の回路図 追加圧電共振器14によって追加される等価回路図 フィルタ10の通過特性を示す図 図1のフィルタ10を応用した他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10を応用した他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10を応用した他のフィルタの回路図 本発明の第2の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ50の回路図 図5Aのフィルタ50と等価である他のフィルタの回路図 図5Aのフィルタ50と等価である他のフィルタの回路図 図5Aのフィルタ50と等価である他のフィルタの回路図 図5Aのフィルタ50と等価である他のフィルタの回路図 図5Aのフィルタ50と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図1のフィルタ10と等価である他のフィルタの回路図 図5Aに示したフィルタ50の回路を構成した半導体チップ110の上面図 図5Aに示したフィルタ50の回路を構成した半導体パッケージ111の上面図 半導体チップ110における各圧電共振器の接続層を説明する図 本発明の第3の実施形態に係る圧電共振器を用いたフィルタ130の回路図 図13のフィルタ130と等価である他のフィルタ140の回路図 図13のフィルタ130と等価である他のフィルタ150の回路図 他の圧電共振器の単体構造を示す斜視図及び断面図 他の圧電共振器の単体構造を示す斜視図及び断面図 他の圧電共振器の単体構造を示す斜視図及び断面図 他の圧電共振器の単体構造を示す斜視図及び断面図 圧電共振器を弾性表面波共振器で構成した弾性表面波フィルタ200の一例を示す図 基本的な圧電共振器の単体構造を示す斜視図及び断面図 基本的な圧電共振器の単体構造を示す斜視図及び断面図 圧電共振器の回路記号及び等価回路図 圧電共振器の回路記号及び等価回路図 圧電共振器単体の周波数特性を示す図 従来の圧電共振器を用いたフィルタ250の回路図 フィルタ250の通過特性を示す図
符号の説明
10、40、50、130〜180、210、250 フィルタ
200 弾性表面波フィルタ
11、11a〜11b、12a〜12d、14、134、141、151、154、251、252 圧電共振器
13a〜13d、253 インダクタ
15a〜15b、205a〜205b、255a〜255b 端子(電極パッド)
110 半導体チップ
111 半導体パッケージ
165、175、215 キャビティ
171、221 支持部
184 低インピーダンス層
185 高インピーダンス層
201a〜201c、202a〜202d、204 弾性表面波共振器
206、216 基板
211、213 電極層
212 圧電体層
214 絶縁体層
218 振動部

Claims (13)

  1. 少なくとも複数の圧電共振器を構成に用いたフィルタであって、
    入出力端子間に直列接続された1つ以上の直列圧電共振器と、
    前記直列圧電共振器に対してラダー型に並列接続された2つ以上の並列圧電共振器と、
    前記2つ以上の並列圧電共振器の少なくとも2つにそれぞれ設けられ、当該並列圧電共振器の前記直列圧電共振器に接続されていない電極と接地との間を接続するインダクタと、
    少なくとも1つの、前記並列圧電共振器の前記インダクタが接続された電極のいずれか2つを接続する追加圧電共振器とで構成される、フィルタ。
  2. 入出力端子間に、直列接続された直列圧電共振器と、
    前記直列圧電共振器の一方端子に一方電極が接続された第1の並列圧電共振器と、
    前記直列圧電共振器の他方端子に一方電極が接続された第2の並列圧電共振器と、
    前記第1の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第1のインダクタと、
    前記第2の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第2のインダクタと、
    前記第1の並列圧電共振器の他方電極と前記第2の並列圧電共振器の他方電極との間を接続する追加圧電共振器とで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
  3. 前記直列圧電共振器と前記追加圧電共振器とが、同数で構成されることを特徴とする、請求項2に記載のフィルタ。
  4. 入出力端子間に、直列接続された第1及び第2の直列圧電共振器と、
    前記第1の直列圧電共振器の一方端子に一方電極が接続された第1の並列圧電共振器と、
    前記第1の直列圧電共振器の他方端子と前記第2の直列圧電共振器の一方端子とに一方電極が接続された第2の並列圧電共振器と、
    前記第2の直列圧電共振器の他方端子に一方電極が接続された第3の並列圧電共振器と、
    前記第1の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第1のインダクタと、
    前記第3の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第2のインダクタと、
    前記第1の並列圧電共振器の他方電極と前記第3の並列圧電共振器の他方電極との間を接続する追加圧電共振器とで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
  5. 前記第1及び第2の直列圧電共振器と前記追加圧電共振器とが、偶奇が同じである複数個で構成されることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ。
  6. 入出力端子間に、直列接続された第1〜第3の直列圧電共振器と、
    前記第1の直列圧電共振器の一方端子に一方電極が接続された第1の並列圧電共振器と、
    前記第1の直列圧電共振器の他方端子と前記第2の直列圧電共振器の一方端子とに一方電極が接続された第2の並列圧電共振器と、
    前記第2の直列圧電共振器の他方端子と前記第3の直列圧電共振器の一方端子とに一方電極が接続された第3の並列圧電共振器と、
    前記第3の直列圧電共振器の他方端子に一方電極が接続された第4の並列圧電共振器と、
    前記第1の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第1のインダクタと、
    前記第2の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第2のインダクタと、
    前記第3の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第3のインダクタと、
    前記第4の並列圧電共振器の他方電極と接地との間を接続する第4のインダクタと、
    前記第1の並列圧電共振器の他方電極と前記第nの並列圧電共振器(n=2〜4のいずれか)の他方電極との間を接続する第1の追加圧電共振器と、
    前記第1及び第n以外の並列圧電共振器の他方電極間を接続する第2の追加圧電共振器とで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
  7. 前記直列圧電共振器、前記並列圧電共振器及び前記追加圧電共振器が、薄膜弾性波共振器で構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
  8. 前記薄膜弾性波共振器は、上部電極と下部電極との間に圧電体層を挟み、当該下部電極の下にキャビティを設ける構成であることを特徴とする、請求項7に記載のフィルタ。
  9. 前記薄膜弾性波共振器は、上部電極と下部電極との間に圧電体層を挟み、当該下部電極の下に、低インピーダンス層と高インピーダンス層とを交互に積層して形成される音響多層膜を設ける構成であることを特徴とする、請求項7に記載のフィルタ。
  10. 前記直列圧電共振器、前記並列圧電共振器及び前記追加圧電共振器は、等価回路上で隣り合う圧電共振器との間の電極接続を同一の配線層で行うことを特徴とする、請求項8に記載のフィルタ。
  11. 前記直列圧電共振器、前記並列圧電共振器及び前記追加圧電共振器は、等価回路上で隣り合う圧電共振器との間の電極接続を同一の配線層で行うことを特徴とする、請求項9に記載のフィルタ。
  12. 前記直列圧電共振器、前記並列圧電共振器及び前記追加圧電共振器が、弾性表面波共振器で構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
  13. 前記弾性表面波共振器は、圧電基板上にインターディジタルトランスデューサ電極と反射器電極とを伝搬方向に対して近接配置する構成であることを特徴とする、請求項12に記載のフィルタ。
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