JP2005175874A - 伝送線路及び高周波モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下部電極2上に誘電体基板1を配置し、該誘電体基板上に、スロット部Wを持った電極3a、3bを設置し、スロット部Wら間隔を隔てて配置された導体4を支持する部材5a、5bを設けた伝送線路を構成する。
【選択図】図1
Description
特許文献1では、この構造にした利点として、線路の特性及びICなどの電子部品との接続が容易に可能となることを挙げている。
特許文献2では、この構造の利点として小型化の他に積層を用いた作製方法の容易さによる低コスト化を挙げている。
また、特許文献2では、伝送特性の伝送損失が課題として残されている。
本発明は、前記の課題を解決できるものであり、良好な伝送特性を保持したまま、従来よりも構造的に簡易化できる伝送線路を提供することを目的とする。
本発明の伝送線路は、誘電体板1と、当該誘電体板1の両面に、当該誘電体板1に接触した状態でそれぞれ配置された電極板2,3と、そのいずれか片側の電極板3から所定の間隔を置いて導体板4を支持するために、当該片側の電極板3に取り付けられた側面支持部材5と、前記導体板4とを備え、前記片側の電極板3には、高周波信号の伝送方向に沿ったスロット部Wが形成され、前記誘電体基板1の厚みt及び比誘電率εは、前記電極板2と電極板3で挟まれた誘電体板1で構成される高周波信号の導波領域において、当該高周波信号を減衰させる伝送モード(遮断伝送モード)となるような値に設定され、前記電極板3と導体板4とで形成される空間の厚み(a−t)は、当該空間で構成される高周波信号の導波領域において、当該高周波信号を減衰させる伝送モード(遮断伝送モード)となるような値に設定されていることを特徴とする。
本発明の伝送線路の設計は、比誘電率εを持つ誘電体を内部に挿入した導波管のLSEモードをベースにして行うことができる。
この導波管の遮断周波数fcは、誘電体を含む導波管の全厚さaにより決定され、次式より求められることが知られている。ただし誘電体の厚さtとする。
kc2=ε0μ0ωc
ωc=2πfc
kc1 cotkc1t=kc2cotkc2(a−t)
ただし、kc1 、kc2 は、それぞれ、誘電体の領域、空気の領域における波数である。これらの連立方程式を解くことより遮断周波数fcを決定できる。
次に本発明の伝送線路における、幅Wのスロット部を形成した電極板3の役割を説明する。
伝送線路を伝搬する高周波信号が、側面方向(図1の+x方向、−x方向)に漏れ出すことになれば、伝送に大きなロスが発生するので、これを避けるための工夫が必要である。
このような幅Wのスロット部を形成した電極板3を備えた本発明の構造は、側面支持部材5を金属でなく誘電体で構成する場合、あるいは、前記厚み(a−t)の空間を第2の誘電体板で置き換えて、第2の誘電体板によって導体板4を支える構造とし、かつ側面にビアを設けない場合などにおいても、有効である。
また、上部の領域(電極板3と導体板4の間)を空気で満たす場合、マイクロストリップ線路やコプレーナ線路との接続も容易となる。
本発明の構造では、特に、前記厚み(a−t)の空間を第2の誘電体板で満たす場合、第1及び第2の誘電体板、導体板、電極板が平行に積層可能なので、製造過程において、一体に形成することができる。したがって、製造工程を少なくすることができ、製造容易になり、さらなる低コスト化が可能となる。
図2は、本発明の伝送線路の断面構造を示すための断面図である。
伝送線路は、平面状の下部電極2の上に一定厚みtの誘電体基板1を、誘電体基板1が下部電極2の上面に接触した状態で配置し、誘電体基板1の上に、幅WのスロットGが形成された上部電極3を、上部電極3が誘電体基板1の上面に接触した状態で設置している。スロットGを隔てた上部電極3の両サイドをそれぞれ上部電極3a,3bという(3a,3bを総称して3とする)。
これらの下部電極2、誘電体基板1、上部電極3,スロットG及び空間Sにより伝送線路を構成している。伝送線路内の高周波信号の伝送方向をzで示す。
特に、セラミック材料を用いれば、セラミック誘電体の比誘電率は通常5から25と、樹脂基板に比べて高いので、誘電体層を薄くでき、素子の小型化に有効である。
前記導体材料は、金、銀、銅などである。
側面支持部材5が誘電体である場合シールド効果がないので、空間Sの高さhは、高周波信号の周波数において、導体3,4間の空間Sを電磁波が横方向x(高周波信号の伝送方向zに垂直な方向)に伝搬する場合に、この横方向の伝搬モードが遮断領域となるような高さに選ぶことが好ましい。これは、導体3,4間の空間S内の電波が側面に漏れ出すのを防ぐためである。
したがって、誘電体基板1の厚みt、比誘電率εは、使用する周波数が遮断周波数fc′を超えないように選ぶ必要がある。
さらに、高周波信号のz方向への伝送について考察する。高周波信号は、前述したように下部電極2、誘電体基板1、スロットG、空間Sにより構成される伝送線路内をz方向に伝送する。この伝送線路は、下部電極2と導体板4との間を、厚さtの誘電体基板1と、高さhの空気の充填された空間Sとで満たしたような構成になっている。
この場合、伝送線路の遮断周波数fcは、誘電体基板1の厚みt、比誘電率ε、誘電体を含む伝送線路の全厚さa(a=h+t)を用いて、[課題を解決するための手段]で説明したように連立方程式を解くことによって決定される。
この伝送線路の内部電界は、下部電極2、導体板4の表面でそれぞれゼロになり、それから離れるに従って増大する。このため、下部電極2に接して配置された誘電体基板1に蓄積される電界エネルギーは、誘電体基板1を下部電極2から離して設置している場合と比べて小さくなる。
この結果、伝送線路製造時の加工誤差に対する要求が緩和され、伝送線路の製造が容易になる。
伝送線路は、平面状の下部電極2の上に一定厚みt1の第1の誘電体基板1a(以下単に「誘電体基板1a」という)を、誘電体基板1aが下部電極2の上面に接触した状態で配置し、誘電体基板1aの上に、スロットGが形成された上部電極3を、上部電極3が誘電体基板1aの上面に接触した状態で設置している。スロットGを隔てた上部電極3の両サイドをそれぞれ上部電極3a,3bという。
これらの下部電極2、誘電体基板1a,1b、上部電極3,スロットG、導体板4により伝送線路を構成している。
とりわけ、ガラスセラミックスなどの低温で焼成が可能なセラミック材料を用いると、導体パターンを低抵抗の銅、銀などによって形成することができるので望ましい。
この構造は、誘電体基板1a,1bを積層することで一体に成形できるという利点がある。
誘電体基板1aは、下部導体2と上部電極3とで挟み込まれた平行平板の構造となっているが、誘電体基板1aの側面方向に電波が漏れ出さないためには、平行平板の遮断周波数fc′を超えない周波数領域で設計を行う必要がある。従来のマイクロ波帯では、あまり考慮する必要がなかったが、ミリ波帯では波長が短いので、誘電体基板1aの厚みt1が厚く、比誘電率εが高い試料では、遮断周波数fc′を超える場合も生じる。平行平板の遮断周波数fc′は、次式で表される(μは透磁率)。
したがって、誘電体基板1aの厚みt1、比誘電率εは、使用する周波数が遮断周波数fc′を超えないように選ぶ必要がある。
誘電体基板1bも、上部電極3と上部導体4とで挟み込まれた平行平板の構造となっているが、誘電体基板1bの側面方向xに電波が漏れ出さないためには、誘電体基板1aの場合と同様、平行平板の遮断周波数fc′を超えない周波数領域で設計を行う必要がある。
この場合、伝送線路の遮断周波数fcは、誘電体基板1aの厚みt1、誘電体基板1bの厚みt2、あるいは誘電体を含む伝送線路の全厚さa(a=t1+t2)、比誘電率ε1,ε2を用いて、[課題を解決するための手段]で説明したように連立方程式を解くことによって決定される。
図4は、本発明の伝送線路のさらに他の構造を示す断面図である。
この伝送線路は、図2の構造と基本的に同様であるが、異なるところは、伝送線路の側面に平板状の遮蔽導体6a、6bが設けられた構造となっている。このように遮蔽導体6a、6bを設けることで、遮蔽導体6a、6bがなければ誘電体基板1aの側面から電磁波の放射が生ずる条件においても、電磁波の放射を防ぐことができる。
本発明の伝送線路は、特にミリ波帯において最も効果があり、低コストかつ小型化が期待できる。
図5は、高周波モジュールの構成の一例を示すブロック図である。高周波モジュールは、アンテナ端子ANTに接続され、送信系と受信系とを切り替えるフィルタからなるデュープレクサ21と、デュープレクサ21から出力される受信信号を増幅するための低雑音増幅器22と、デュープレクサ21に接続され、所定の送信通過帯域の送信信号を増幅する高周波増幅回路23とを多層基板に実装してなるものである。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
伝送モード解析は、LSEモードを想定し、さらに構造の左右対称性より中央に電気壁を設けた1/2モデルで計算を行った。
伝送線路の構造を図6に示す。伝送方向をzとする。誘電体基板1の厚さtを1.5mm,比誘電率を2.5とする。誘電体基板1の上には、中央の電気壁から距離W(W=2.3mm)離れた位置及びその右側(x方向)に上部電極3bを載せている。誘電体基板1の上部には厚さh(h=1mm)の空気があり、上部電極3bの厚さは、tやhに比べて無視できるほど薄いものとする。したがって、伝送線路の全厚さは2.5mmとなる。誘電体基板1の下面と、空気で満たされた誘電体基板1の上部空間の上面は、金属壁(図示せず)で閉じている。電極及び金属壁の導電率は銅の値、58×106S/mとした。伝送方向zの終端面は開放端として放射条件を設定している。
60GHzを中心とし、50GHzから70GHzにかけて周波数掃引を行い、Sパラメータの伝送特性S21及び反射特性S11を算出した。この計算結果を図7に示す。この結果から、50GHzから70GHzにわたって損失の少ない良好な伝送特性S21が得られることが分かった。60GHzを超えたあたりでやや伝送特性S21が乱れているが解析上の誤差の範囲であると考えている。
2 下部電極
3、3a、3b 上部電極
4 導体板
5a、5b 支持部材
6a、6b 遮蔽導体
G スロット
Claims (9)
- 誘電体板と、当該誘電体板の両面に、当該誘電体板に接触した状態でそれぞれ配置された電極板と、そのいずれか片側の電極板から所定の間隔を置いて導体板を支持するために、当該片側の電極板に取り付けられた側面支持部材と、前記導体板とを備え、
前記片側の電極板には、高周波信号の伝送方向に沿ってスロット部が形成され、
前記誘電体基板の厚み及び比誘電率は、前記電極板と電極板で挟まれた誘電体板で構成される高周波信号の導波領域において、当該高周波信号を減衰させる伝送モードとなるような値に設定され、
前記電極板と導体板とで形成される空間の厚みは、当該空間で構成される高周波信号の導波領域において、当該高周波信号を減衰させる伝送モードとなるような値に設定されていることを特徴とする伝送線路。 - 前記2枚の電極板、誘電体板及び導体板で構成される高周波信号の伝送方向に沿った導波領域において、伝送モードは、主電界が電極板及び導体板に平行となるLSEモードである請求項1記載の伝送線路。
- 前記スロット部が形成された電極板と導体板とで形成される空間は、空気で満たされている請求項1又は請求項2記載の伝送線路。
- 前記側面支持部材は、遮蔽導体で形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の伝送線路。
- 第1の誘電体板と、当該第1の誘電体板の両面に、当該誘電体板に接触した状態でそれぞれ配置された電極板と、そのいずれか片側の電極板に、当該電極板に接触した状態で配置された第2の誘電体板と、当該第2の誘電体板の他面に当該第2の誘電体板に接触した状態で配置された導体板とを備え、
前記片側の電極板には、高周波信号の伝送方向に沿ったスロット部が形成され、
前記第1の誘電体基板の厚み及び比誘電率は、前記電極板と電極板で挟まれた第1の誘電体板で構成される高周波信号の導波領域において、当該高周波信号を減衰させる伝送モードとなるような値に設定され、
前記第2の誘電体基板の厚み及び比誘電率は、前記電極板と導体板で挟まれた第2の誘電体板で構成される高周波信号の導波領域において、当該高周波信号を減衰させる伝送モードとなるような値に設定されていることを特徴とする伝送線路。 - 前記スロット部の両側に、前記第1及び/又は第2の誘電体基板を貫通するビアホール導体を所定の間隔を置いて複数個設けた請求項5記載の伝送線路。
- 前記第1及び第2の誘電体基板の側面は、遮蔽導体でシールドされている請求項5記載の伝送線路。
- 前記誘電体板、導体板、電極板が一体に形成されている請求項5又は請求項6記載の伝送線路。
- 前記請求項1から請求項8のいずれかに記載の伝送線路と高周波デバイスとを組み合わせたことを特徴とする高周波モジュール。
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