JP2005174655A - リチウム電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来技術よりも安全性の高いリチウム電池を提供すること。
【解決手段】正極活物質は酸素除去材料及び/又は蓄熱材料により被覆されたことを特徴とするリチウム電池。ここで、酸素除去材料としては鉄、チタン、亜鉛、マグネシウム、ALPO、SAPO及びカーボンナノチューブから選択されることが好ましい。蓄熱材料としてはインジウム、Sn−58Bi及び50Bi−28Pb−22Snなどである。つまり、正極活物質から放出される酸素を速やかに除去できるように正極活物質の表面を酸素除去材料で被覆するとともに、正極活物質の温度上昇を効果的に抑制するために正極活物質の表面を蓄熱材料で被覆した。更に通常の電池反応を阻害しないように、酸素除去材料や蓄熱材料は、多孔質導電性材料に担持されていることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】正極活物質は酸素除去材料及び/又は蓄熱材料により被覆されたことを特徴とするリチウム電池。ここで、酸素除去材料としては鉄、チタン、亜鉛、マグネシウム、ALPO、SAPO及びカーボンナノチューブから選択されることが好ましい。蓄熱材料としてはインジウム、Sn−58Bi及び50Bi−28Pb−22Snなどである。つまり、正極活物質から放出される酸素を速やかに除去できるように正極活物質の表面を酸素除去材料で被覆するとともに、正極活物質の温度上昇を効果的に抑制するために正極活物質の表面を蓄熱材料で被覆した。更に通常の電池反応を阻害しないように、酸素除去材料や蓄熱材料は、多孔質導電性材料に担持されていることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
本発明は、安全性の高いリチウム電池に関する。
高いエネルギー密度を有する電池として、リチウム電池が知られている。リチウム電池はリチウム−遷移元素複合酸化物を正極活物質に採用することが一般的である。リチウム−遷移元素複合酸化物としてはリチウムコバルト酸化物の実用化が先行しているが、コバルトの資源量が少なく、資源量が豊富であるニッケルやマンガンを利用したリチウムニッケル酸化物やリチウムマンガン酸化物が将来のリチウム電池の正極活物質として期待されている。特にリチウムニッケル酸化物は資源量が豊富なほか、電池特性の観点からも期待されている。
ところで、リチウムニッケル酸化物などのリチウム−遷移元素複合酸化物を用いたリチウム電池はSOC(state of charge)が高い状態で長時間放置すると、結晶構造に変化が生じて正極活物質の格子にある酸素が放出されることがある。放出された酸素は反応性が高く、リチウム電池の構成要素(セパレータや電解液など)と反応してリチウム電池の劣化の原因になる。また、万が一、大量の酸素が放出されることがあれば、発熱、発煙が起きる可能性もある。特に、格子からの酸素の放出は過充電状態や高温時で顕著であり、無視できない問題である。リチウム電池は高いエネルギー密度のために、実用化する時には高い安全性が求められるからである。
従来からリチウム電池の安全性を向上するために、種々の技術が提案されている。そのなかで、正極活物質から放出される酸素に着目したものとしては、正極に金属酸化物からなる酸素吸収材と導電材との複合材料を含有させる技術が開示されている(特許文献1)。特許文献1には「このように構成することにより、高温時に正極から発生する酸素が補足でき、電解液の酸化反応が低減できるので、過充電時や高温環境下使用時での電池の発火、爆発を防止することができる。」と記載されている。また、150℃以上600℃以下の温度範囲で潜熱を伴う相転移を有する物質を正極の近傍あるいは正極の中に少なくとも1種類配置するリチウム電池が開示されている(特許文献2)。特許文献2には「電池の発熱を吸熱物質で吸収するとともに、電池の温度上昇を抑制し、過充電特性等の安全の向上を図る」と記載されている。
特開平11−144734号公報
特開平11−40200号公報
しかしながら、安全性を向上することに行き過ぎはなく、更に高い安全性が確保できる技術の開発が望まれている。
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、従来技術よりも安全性の高いリチウム電池を提供することを解決すべき課題とする。
正極活物質から酸素が放出される機構について概略的に説明する。正極活物質が多量に脱Liした状態で放置されると、結晶構造に欠陥が生じ、複合酸化物を構成する金属元素と酸素元素との結合力が低下する。その結果、酸素が放出される。酸素放出は、特に温度の高い環境下で顕著である。詳細な機構は明らかではないが、ニッケル酸リチウムにおいてはNi3+からNi4+への酸化数の変化を伴う現象であると推測される。この酸素を放出する温度は、通常の充電状態において、後述する正極活物質の熱分析の結果から180℃以上であることが判明した。過充電状態では更に低い温度でも酸素の脱離がおきる可能性が示唆されており、また、実際に電池温度が180℃程度にまで上昇することがありうる。その際に酸素が放出されることが考えられる。そこで、本発明者は鋭意研究を行った結果、酸素は正極活物質から放出されるので、酸素除去材料は正極活物質のできるだけ近傍に配置することが望ましいことに想到した。そして、特に正極活物質を酸素除去材料により被覆することで、放出される酸素の影響を最小限に抑えることができるとの知見に基づき本発明を完成した。
すなわち、本発明のリチウム電池は、集電体と該集電体上に形成された正極活物質を含む正極合材層とをもつ正極と、負極とを有するリチウム電池であって、前記正極活物質は酸素除去材料により被覆されたことを特徴とする。ここで、酸素除去材料としては鉄、チタン、亜鉛、マグネシウム、ALPO、SAPO及びカーボンナノチューブから選択される1以上の物質からなることが好ましい。
更に上記課題を解決する他の本発明のリチウム電池は、正極活物質が蓄熱材料により被覆されていることを特徴とする。蓄熱材料は前述の酸素除去材料と共存して用いることも可能である。正極活物質からの酸素の放出は前述したように温度の上昇により促進されるので正極活物質の表面に蓄熱材料を配置することで正極活物質の温度上昇を効果的に抑制でき、結果として酸素放出も抑制できる。ここで、蓄熱材料としては融点が100℃から200℃程度の低融点材料、特に低融点金属を採用することが好ましい。特に蓄熱材料としては融点が157℃であるインジウムや、融点が138℃であるSn−58Bi及び融点が100℃である50Bi−28Pb−22Snから選択される1種以上の低融点金属を採用することが好ましい。
これらの前記酸素除去材料又は前記蓄熱材料は、多孔質導電性材料に担持されていることが好ましい。正極活物質は通常の電池反応において、負極との間でリチウム元素をやり取りしたり、正極との間で電子をやり取りしたりする必要がある。多孔質導電性材料は多数存在する細孔の存在によりリチウム元素の移動が担保され、且つ導電性も担保されている。従って、多孔質導電性材料に酸素除去材料や蓄熱材料を担持した材料にて、正極活物質を完全に被覆しても本来必要な電池反応を阻害するおそれが少ない。具体的に好ましい多孔質導電性材料としては、炭素系材料である。
本発明のリチウム電池は集電体とその集電体上に形成された正極活物質を含む正極合材層とをもつ正極と負極とを有する。正極活物質は酸素除去材料及び/又は蓄熱材料により被覆されていることを特徴としている。
本発明のリチウム電池は、コイン型電池、ボタン型電池、円筒型電池及び角型電池等の公知の電池構造をとることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極をセパレータを介して重畳あるいは捲回等して電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を非水電解液とともに電池ケース内に挿設し、これを密閉してリチウム電池を完成することができる。
正極は、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる正極活物質に導電材および結着剤を混合し、必要に応じ適当な溶媒を加えて、ペースト状の正極合材としたものを、アルミニウム等の金属箔製の集電体表面に塗布、乾燥し、その後プレスによって活物質密度を高めることによって形成する。
正極活物質にはリチウム遷移金属複合酸化物等の公知の正極活物質を用いることができる。リチウム−遷移金属複合酸化物は、その電気抵抗が低く、リチウムイオンの拡散性能に優れ、高い充放電効率と良好な充放電サイクル特性とが得られるため、本正極活物質に好ましい材料である。たとえばリチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物や、各々にAl、そしてCr等の遷移金属を添加または置換した材料等である。なお、これらのリチウム−金属複合酸化物を正極活物質として用いる場合には単独で用いるばかりでなくこれらを複数種類混合して用いることもできる。
正極活物質の表面には酸素除去材料及び/又は蓄熱材が被覆されている。酸素除去材料及び/又は蓄熱材料はすべての正極活物質を被覆することができるだけの量が混合されることが好ましいが、少量の添加でも安全性を向上する作用は発揮できると考えられる。つまり、正極活物質から発生した酸素によってリチウム電池の他の構成要素が酸化されて発熱することで、更に正極活物質からの酸素の生成が促進されると、最終的には連鎖的に熱暴走に近い状態にまで至ることがあるが、酸素除去材料により酸素を一部でも除去することや蓄熱材料により温度上昇を抑制することで熱暴走反応の連鎖を断ち切ることができるからである。なお、正極活物質の表面を覆った酸素除去材料及び/又は蓄熱材料の厚みとしては特に限定されないが、100nm〜10μm程度が好ましい。
酸素除去材料は酸素(主に正極活物質から放出されたもの)を除去してリチウム電池を構成する他の構成要素に接触することを防止する作用を発揮する材料である。酸素の除去の機構は特に限定しないが、酸化反応などの化学的機構や、表面吸着、溶解などの物理的機構などを利用し、吸収乃至は吸着させることで酸素を効果的に除去することができる。例えば、酸素除去材料としては金属を採用することができる。鉄、チタン、亜鉛、マグネシウムが好ましい金属として例示できる。これら金属は硝酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物、アルコキシドなどの水やアルコールなどの溶媒に溶解できる状態で溶液にし、目的物(正極活物質や後述する多孔質導電性材料)をその溶液に浸漬した後、乾燥、還元操作を行うことで単体としての金属を得ることができる。還元操作は水素、一酸化炭素などの還元剤とともに加熱することで行うことができる。還元は完全に行うことは必ずしも必須ではなく、一部を還元して一部に酸化物を有していたり、安定状態よりも低い酸化数にまで還元するのみでもよい。また、酸素除去材料としてはゼオライト、Al及びPの縮合酸素塩であるALPO、非ゼオライト性分子ふるいと称される材料のうちのSAPO、カーボンナノチューブなど(以下、まとめて「ゼオライトなど」と称することもある)の比表面積が大きくその表面にて酸素を吸着できる材料を採用することもできる。ゼオライトなどは多孔質導電性材料などの目的物とともに粉砕したり、メカノヒュージョン法と称される方法などを採用することで被覆できる。より適正に被覆を行うには酸素除去材料の粒子径が被覆される材料である正極活物質や多孔質導電性材料の粒子径よりも小さいことが好ましい。特に10分の1以下であるとより好ましい。この好ましい粒子径は後述する酸素除去材料などを担持した多孔質導電性材料で正極活物質を被覆する場合や、蓄熱材料についても妥当する。
多孔質導電性材料は正極活物質から、リチウム元素及び電子が移動できるようにする作用をもつ材料である。つまり、リチウムイオンが通過できる程度の細孔を有する導電性の材料である。例えば、カーボンブラック、活性炭などの炭素材料が好ましい多孔質導電性材料として挙げられる。この多孔質導電性材料の表面に酸素除去材料を付着乃至は被覆させて担持したものを正極活物質の表面に被覆する。多孔質導電性材料の表面に酸素除去材料を付着乃至は被覆する方法としては特に限定しないが、前述したように、酸素除去材料を溶解させて被覆する方法や、酸素除去材料とともに粉砕することで被覆乃至は付着させる方法などがある。また、メカノヒュージョン法によっても粉末状の酸素除去材料を多孔質導電性材料の表面に適正に付着させることができる。酸素除去材料及び/又は酸素除去材料を担持した多孔質導電性材料により正極活物質を被覆する方法としても、混合粉砕やメカノヒュージョン法が採用できる。粉砕は(振動)ボールミルなど通常の粉砕装置が採用できる。メカノヒュージョン法でもオングミルなど通常の装置が採用できる。
蓄熱材料は融解や相転移などにより熱エネルギーを内部エネルギーとして保持することでリチウム電池の熱暴走時の発熱による温度上昇を抑制する作用をもつ材料である。蓄熱材料としては低融点材料が挙げられる。低融点材料は熱暴走時の電池温度付近に融点をもつ材料であり、融解することにより温度上昇を抑制する。低融点材料の融点としては100℃から200℃程度の材料が好ましい。低融点材料としては、低融点金属、一般的にはんだと称される材料、Sn−Ag系材料、Sn−Bi系材料、Sn−Zn系材料、インジウムなどが挙げられる。低融点金属は溶融後も導電性及び熱伝導性が高いので好ましい。特にインジウムは融点が157℃でありリチウムニッケル酸化物から酸素が放出される温度である180℃以上にまで正極活物質の温度が上昇することを効果的に抑制することが可能になる。その他にも融点が138℃のSn−58Biや融点が100℃の50Bi−28Pb−22Snなども好ましい低融点金属である。これらを含めた低融点金属がリチウム電池の熱暴走を抑制するには好ましい。低融点金属は融解により熱を吸収するので、分解反応により熱を吸収する機構よりも分解物による影響を考慮しなくても良い点で好ましい。また、融解により熱吸収を行うので熱容量を向上することにより蓄熱する方法よりも単位体積あたりの蓄熱量を増やすことができる。そして、有機物の融解を利用した蓄熱材料よりも自身の安定性が高い。
これら蓄熱材料は酸素除去材料と組み合わせて用いることができるほか、単独で用いることもできる。酸素除去材料と組み合わされることで、高い酸素脱離抑制効果を発揮でき、より高い安全性をもつリチウム電池が得られると考えられる。正極活物質を被覆する際には多孔質導電性材料と組み合わせることで電池性能の低下を抑制できる。蓄熱材料を多孔質導電性材料や正極活物質に被覆する方法は酸素除去材料で説明した方法と同様の方法が採用できる。
導電材は、正極の電気伝導性を確保するためのものであり、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉状体の1種または2種以上を混合したものを用いることができる。結着剤は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものでポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。これら活物質、導電材、結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。これら導電材の一部乃至は全部について前述した酸素除去材料及び/又は蓄熱材料を被覆することもできる。
負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出する負極活物質を用いることができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そのなかでも特に炭素材料を用いることが好ましい。比表面積が比較的大きくでき、リチウムの吸蔵、放出速度が速いため大電流での充放電特性、出力・回生密度に対して良好となる。特に、出力・回生密度のバランスを考慮すると、充放電に伴ない電圧変化の比較的大きい炭素材料を使用することが好ましい。中でも結晶性の高い天然黒鉛や人造黒鉛などからなるものを用いることが好ましい。このような結晶性の高い炭素材を用いることにより、負極のリチウムイオンの受け渡し効率を向上させることができる。
このように負極活物質として炭素材料を用いた場合には、これに必要に応じて正極で説明したような導電材および結着材を混合して得られた負極合材が集電体に塗布されてなるものを用いることが好ましい。
非水電解液は、有機溶媒に電解質を溶解させたものである。
有機溶媒は、通常リチウム電池の非水電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではない。例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン等及びそれらの混合溶媒が適当である。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの高誘電率の主溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの低粘性の副溶媒との混合有機溶媒が好ましい。また、副溶媒として、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及びブチルラクトンなどを用いてもよい。
電解質は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4およびLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)2、LiN(SO3CF3)2、LiN(SO2C2F5)2およびLiN(SO2CF3)(SO2C4F9)から選ばれる有機塩、並びにその有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
これらの電解質の使用により、電池性能をさらに優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においてもさらに高く維持することができる。電解質の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、電解質および有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
セパレータは、正極および負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。なおセパレータは、正極と負極との絶縁を担保するため、正極および負極よりもさらに大きいものとするのが好ましい。
ケースは、特に限定されるものではなく、公知の材料、形態で作成することができる。
ガスケットは、ケースと正負の両端子部の間の電気的な絶縁と、ケース内の密閉性とを担保するものである。たとえば、電解液にたいして、化学的、電気的に安定であるポリプロピレンのような高分子等から構成できる。
〔試験電池の作製〕
(実施例1:酸素除去材料(Fe)を添加した試験電池)
硝酸鉄水溶液中に、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を浸漬した。その後、水素ガスを1%含む窒素ガス中にて120℃で2時間乾燥後、700℃で2時間還元を行った。鉄元素は同時に還元されて主として金属鉄として微粉カーボン表面に担持された。得られた粉末は、酸素除去材料としてのFe/C粉末であり、平均粒径が0.15μm、鉄含有割合10%(質量基準)であった。
(実施例1:酸素除去材料(Fe)を添加した試験電池)
硝酸鉄水溶液中に、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を浸漬した。その後、水素ガスを1%含む窒素ガス中にて120℃で2時間乾燥後、700℃で2時間還元を行った。鉄元素は同時に還元されて主として金属鉄として微粉カーボン表面に担持された。得られた粉末は、酸素除去材料としてのFe/C粉末であり、平均粒径が0.15μm、鉄含有割合10%(質量基準)であった。
Fe/C粉末10質量部とLiNiO2系正極活物質(平均粒径8μm)90質量部とを窒素雰囲気下で混合粉砕した。粉砕条件は、直径60mm、長さ90mmの円筒状のミリング容器内にて直径10mmのセラミックスボール50個とともに振動数800rpmで5時間粉砕を行った。その結果、正極活物質粉末の表面にFe/C粉末が被覆された酸素除去材料で被覆された正極活物質が得られた。特に示さないもののSEMにて観察したところ正極活物質の表面にFe/C粉末が被覆されていることを確認した。
酸素除去材料により被覆された正極活物質75質量部、導電材としてのカーボンブラックを8質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を1質量部、N−ピロリドン中にて混合して正極合材ペーストを調製してアルミニウム製の集電材(厚み15μm)の両面に塗布し窒素雰囲気中で乾燥させることで各30μmの厚みの正極合材層とした。合材ペーストの塗布後、50mm×700mmの長方形に切り出した。そして、その長方形の長辺の端で幅20mm形成した正極合材層を掻き取り正極シートを形成した。
負極活物質としてのグラファイトを92.5質量部、結着材としてのPVDFを7.5質量部、N−ピロリドン中にて混合して負極合材ペーストを調製して銅製の集電材(厚み20μm)の両面に塗布し乾燥させることで各40μmの厚みの負極合材層とした。合材ペーストの塗布後、切断することにより、50mm×700mmの長方形に切り出した。そして、その長方形の長辺の端で幅20mm形成した負極合材層を掻き取り負極シートを形成した。
正負極シートの間に厚さ8μm、50mm×700mmの長方形の多孔質ポリエチレン製のセパレータを挟んで電極体とした。
その後、ケース内に電極体を電解液(1mol/L LiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=3/7(体積比)溶液)と共に収納して実施例1の試験電池とした。
(比較例1:酸素除去材料(Fe)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例1で製造したFe/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例1とした。具体的には、実施例1の製造工程において、Fe/C粉末及び正極活物質を一緒に粉砕する工程を除き、Fe/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例1の試験電池を製造した。
実施例1で製造したFe/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例1とした。具体的には、実施例1の製造工程において、Fe/C粉末及び正極活物質を一緒に粉砕する工程を除き、Fe/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例1の試験電池を製造した。
(実施例2:蓄熱材料(In)を添加した試験電池)
Inの含有量が30質量部に相当する硝酸インジウムを微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)70質量部に、浸漬・蒸発・乾固後、実施例1と同じ条件にて還元を行い蓄熱材料としての金属インジウムをカーボンに担持し、インジウムが担持された微粉カーボン(In/C粉末)を得た。
Inの含有量が30質量部に相当する硝酸インジウムを微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)70質量部に、浸漬・蒸発・乾固後、実施例1と同じ条件にて還元を行い蓄熱材料としての金属インジウムをカーボンに担持し、インジウムが担持された微粉カーボン(In/C粉末)を得た。
そして、実施例1において、酸素除去材料としてのFe/C粉末に代えて、In/C粉末を同比率だけ用い正極活物質粉末とともにミリングすることで蓄熱材料により被覆された正極活物質を得た。その後、結着材としてPVDFに代えてカルボキシメチルセルロース(CMC)を同量用いたほかは実施例1と同様にして実施例2の試験電池を得た。なお、ミリングの条件は実施例1と同様に行った。以下の実施例及び比較例についてもミリングを行う場合には実施例1と同様に行った。
(比較例2:蓄熱材料(In)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例2で製造したIn/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例2の試験電池とした。具体的には、実施例2の製造工程において、In/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、In/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例2の試験電池を製造した。
実施例2で製造したIn/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例2の試験電池とした。具体的には、実施例2の製造工程において、In/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、In/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例2の試験電池を製造した。
(実施例3:酸素除去材料(ゼオライト)を添加した試験電池)
酸素除去材料としてのゼオライト(ZSM−5:細孔径0.53×0.56nm及び0.51×0.55nm、SiO2/Al2O3=70)を15質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を85質量部とを良く混合してゼオライトが担持された微粉カーボン(ZSM−5/C粉末)を得た。
酸素除去材料としてのゼオライト(ZSM−5:細孔径0.53×0.56nm及び0.51×0.55nm、SiO2/Al2O3=70)を15質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を85質量部とを良く混合してゼオライトが担持された微粉カーボン(ZSM−5/C粉末)を得た。
そして、実施例1において、酸素除去材料としてのFe/C粉末に代えて、ZSM−5/C粉末を同比率だけ用い正極活物質粉末とともにミリングすることで酸素除去材料により被覆された正極活物質を得た。その後、実施例1と同様にして実施例3の試験電池を得た。
(比較例3:酸素除去材料(ゼオライト)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例3で製造したZSM−5/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例3の試験電池とした。具体的には、実施例3の製造工程において、ZSM−5/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、ZSM−5/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例3の試験電池を製造した。
実施例3で製造したZSM−5/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例3の試験電池とした。具体的には、実施例3の製造工程において、ZSM−5/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、ZSM−5/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例3の試験電池を製造した。
(実施例4:酸素除去材料(TiOx)を添加した試験電池)
多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)及びTiイソプロパノールをエタノール中に分散させ、徐々に水を添加することでTiイソプロパノールを加水分解して水酸化チタンを微粉カーボン上に担持させた(Tiとして10%(質量基準))。その後、水素ガスを1%含む窒素ガス中にて120℃で2時間乾燥後、700℃で2時間還元を行った。水酸化チタンは還元されて酸素除去材料としての不定比酸化物(TiOx)として微粉カーボン表面に担持された(TiOx/C粉末)。
多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)及びTiイソプロパノールをエタノール中に分散させ、徐々に水を添加することでTiイソプロパノールを加水分解して水酸化チタンを微粉カーボン上に担持させた(Tiとして10%(質量基準))。その後、水素ガスを1%含む窒素ガス中にて120℃で2時間乾燥後、700℃で2時間還元を行った。水酸化チタンは還元されて酸素除去材料としての不定比酸化物(TiOx)として微粉カーボン表面に担持された(TiOx/C粉末)。
そして、実施例1において、酸素除去材料としてのFe/C粉末に代えて、TiOx/C粉末を同比率だけ用い正極活物質粉末とともにミリングすることで酸素除去材料により被覆された正極活物質を得た。その後、実施例1と同様にして実施例4の試験電池を得た。
(比較例4:酸素除去材料(TiOx)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例4で製造したTiOx/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例4の試験電池とした。具体的には、実施例4の製造工程において、TiOx/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、TiOx/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例4の試験電池を製造した。
実施例4で製造したTiOx/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例4の試験電池とした。具体的には、実施例4の製造工程において、TiOx/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、TiOx/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例4の試験電池を製造した。
(実施例5:酸素除去材料(カーボンナノチューブ)を添加した試験電池)
酸素除去材料としてのカーボンナノチューブを5質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を95質量部とを良く混合した(カーボンナノチューブ/C粉末)。
酸素除去材料としてのカーボンナノチューブを5質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を95質量部とを良く混合した(カーボンナノチューブ/C粉末)。
そして、実施例1において、酸素除去材料としてのFe/C粉末に代えて、カーボンナノチューブ/C粉末を同比率だけ用い正極活物質粉末とともにミリングすることで酸素除去材料により被覆された正極活物質を得た。その後、実施例1と同様にして実施例5の試験電池を得た。
(比較例5:酸素除去材料(カーボンナノチューブ)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例5で製造したカーボンナノチューブ/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例5の試験電池とした。具体的には、実施例5の製造工程において、カーボンナノチューブ/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、カーボンナノチューブ/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例5の試験電池を製造した。
実施例5で製造したカーボンナノチューブ/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例5の試験電池とした。具体的には、実施例5の製造工程において、カーボンナノチューブ/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、カーボンナノチューブ/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例5の試験電池を製造した。
(実施例6:蓄熱材料(Sn−58Bi)を添加した試験電池)
蓄熱材料としてのSn−58Bi粉末(平均粒径0.1μm)を30質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を70質量部とを良く混合してSn−58Biが担持された微粉カーボン(Sn−58Bi/C粉末)を得た。
蓄熱材料としてのSn−58Bi粉末(平均粒径0.1μm)を30質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を70質量部とを良く混合してSn−58Biが担持された微粉カーボン(Sn−58Bi/C粉末)を得た。
そして、実施例2において、In/C粉末に代えて、Sn−58Bi/C粉末を同比率だけ用い正極活物質粉末とともにミリングすることで蓄熱材料により被覆された正極活物質を得た。その後、実施例2と同様にして実施例6の試験電池を得た。
(比較例6:蓄熱材料(Sn−58Bi)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例6で製造したSn−58Bi/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例6の試験電池とした。具体的には、実施例6の製造工程において、Sn−58Bi/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、Sn−58Bi/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例6の試験電池を製造した。
実施例6で製造したSn−58Bi/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例6の試験電池とした。具体的には、実施例6の製造工程において、Sn−58Bi/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、Sn−58Bi/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例6の試験電池を製造した。
(実施例7:蓄熱材料(50Bi−28Pb−22Sn)を添加した試験電池)
蓄熱材料としての50Bi−28Pb−22Sn粉末(平均粒径0.1μm)を30質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を70質量部とを良く混合して50Bi−28Pb−22Snが担持された微粉カーボン(50Bi−28Pb−22Sn/C粉末)を得た。
蓄熱材料としての50Bi−28Pb−22Sn粉末(平均粒径0.1μm)を30質量部と、多孔質導電性材料としての微粉カーボン(平均粒子径150nm、比表面積1350m2/g)を70質量部とを良く混合して50Bi−28Pb−22Snが担持された微粉カーボン(50Bi−28Pb−22Sn/C粉末)を得た。
そして、実施例2において、In/C粉末に代えて、50Bi−28Pb−22Sn/C粉末を同比率だけ用い正極活物質粉末とともにミリングすることで蓄熱材料により被覆された正極活物質を得た。その後、実施例2と同様にして実施例7の試験電池を得た。
(比較例7:蓄熱材料(50Bi−28Pb−22Sn)を添加しているが正極活物質を被覆していない試験電池)
実施例7で製造した50Bi−28Pb−22Sn/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例7の試験電池とした。具体的には、実施例7の製造工程において、50Bi−28Pb−22Sn/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、50Bi−28Pb−22Sn/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例7の試験電池を製造した。
実施例7で製造した50Bi−28Pb−22Sn/C粉末を正極活物質に被覆することなく製造した電池を比較例7の試験電池とした。具体的には、実施例7の製造工程において、50Bi−28Pb−22Sn/C粉末及び正極活物質を一緒にミリングする工程を除き、50Bi−28Pb−22Sn/C粉末を正極合材ペーストにそのまま添加したほかは、同様にして比較例7の試験電池を製造した。
(参考例)
酸素除去材料及び蓄熱材料により被覆していない正極活物質を用いて同様に製造した電池を参考例の試験電池とした。
酸素除去材料及び蓄熱材料により被覆していない正極活物質を用いて同様に製造した電池を参考例の試験電池とした。
〔容量試験〕
各実施例及び比較例の試験電池並びに参考例の試験電池のそれぞれについて、3.0Vから4.2Vの間で1Cにて充放電を1000サイクル繰り返すサイクル試験を行った前後の電池容量及びその変化率を測定した。その結果、実施例、比較例及び参考例のいずれの試験電池も電池容量並びに変化率には大きな差が認められなかった。つまり、正極活物質に酸素除去材料及び/又は蓄熱材料を被覆しても電池性能には影響を与えないことが判った。
各実施例及び比較例の試験電池並びに参考例の試験電池のそれぞれについて、3.0Vから4.2Vの間で1Cにて充放電を1000サイクル繰り返すサイクル試験を行った前後の電池容量及びその変化率を測定した。その結果、実施例、比較例及び参考例のいずれの試験電池も電池容量並びに変化率には大きな差が認められなかった。つまり、正極活物質に酸素除去材料及び/又は蓄熱材料を被覆しても電池性能には影響を与えないことが判った。
〔酸素脱離試験〕
実施例2及び比較例2の試験電池はSOCを110%で、その他の試験電池はSOCを150%に調整した後、20分間放置した。その後、各試験電池を分解して正極から正極合材層を掻き取った試験試料についてTPD(Temperature programed desorption)分析を行った。TPD分析の条件としては装置としては入りガス温度を制御する加熱炉を用い、検出器として質量分析器を採用した。試験試料を加熱炉内に入れた後に窒素ガス流通下において、室温から220℃まで5℃/分の速度で昇温させながら、加熱炉からの排出ガスについて連続的に質量分析器にて質量分析を行った。質量分析器ではM/Z=32のピーク(酸素)を継続的に測定することで酸素の脱離・放出の様子を観察した。
実施例2及び比較例2の試験電池はSOCを110%で、その他の試験電池はSOCを150%に調整した後、20分間放置した。その後、各試験電池を分解して正極から正極合材層を掻き取った試験試料についてTPD(Temperature programed desorption)分析を行った。TPD分析の条件としては装置としては入りガス温度を制御する加熱炉を用い、検出器として質量分析器を採用した。試験試料を加熱炉内に入れた後に窒素ガス流通下において、室温から220℃まで5℃/分の速度で昇温させながら、加熱炉からの排出ガスについて連続的に質量分析器にて質量分析を行った。質量分析器ではM/Z=32のピーク(酸素)を継続的に測定することで酸素の脱離・放出の様子を観察した。
〔結果〕
各実施例の試験電池由来の試験試料(以下、「実施例1の試料」などと称する)からは酸素のピークが認められなかった。比較例1の試料からは140℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例2の試料からは190℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例3の試料からは140℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例4の試料からは130℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例5の試料からは135℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例6の試料からは130℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例7の試料からは128℃付近から立ち上がるピークが認められた。
各実施例の試験電池由来の試験試料(以下、「実施例1の試料」などと称する)からは酸素のピークが認められなかった。比較例1の試料からは140℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例2の試料からは190℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例3の試料からは140℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例4の試料からは130℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例5の試料からは135℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例6の試料からは130℃付近から立ち上がるピークが認められた。比較例7の試料からは128℃付近から立ち上がるピークが認められた。
酸素除去材料も蓄熱材料も有さない参考例の試料について、SOCの値と酸素が脱離する温度との関係を調べた結果を図1に示す。図1には酸素のピークが立ち上がる温度を縦軸に、SOCを横軸にプロットしてある。この結果からSOCが110%では150℃程度で酸素脱離が始まっており、SOCが150%では130℃程度で酸素脱離が始まっていることが判る。
以上の結果から、いずれの比較例の試験電池も酸素除去材料及び蓄熱材料ともに含有させていない参考例の試験電池よりも高い温度まで酸素を脱離することがなかった。更に、正極活物質を酸素除去材料や蓄熱材料により被覆した各実施例の試験電池においては試験に採用したTPD分析の条件では酸素の脱離が全く認められず、より高い安全性が発揮されることが期待される。
その理由としては、各実施例の試験電池では正極活物質の表面に直接、酸素除去材料などが被覆されていることにより、脱離してくる酸素をより完全に捕捉できることや温度の上昇の抑制がより完全にできるために、酸素の発生が比較例よりも抑えられたものと考えられる。比較例の試験電池でもある程度の酸素脱離を抑制する効果があったが、単純に正極合材内に酸素除去材料や蓄熱材料を分散しただけではその効果に限界があることが示された。
〔結論〕
以上、本実施例の試験電池は酸素除去材料や蓄熱材料を有しない参考例の試験電池と比較してはもちろんのこと、酸素除去材料や蓄熱材料を単純に正極合材内に分散した比較例の試験電池よりも高い酸素脱離抑制効果を発揮することが判った。そして、各実施例の試験電池は各比較例の試験電池や参考例の試験電池と比べても遜色のないサイクル特性をもつことも明らかとなった。従って本発明を適用した場合にすると、他の電池特性に影響を与えることなく酸素脱離抑制効果が向上できることが明らかとなった。
以上、本実施例の試験電池は酸素除去材料や蓄熱材料を有しない参考例の試験電池と比較してはもちろんのこと、酸素除去材料や蓄熱材料を単純に正極合材内に分散した比較例の試験電池よりも高い酸素脱離抑制効果を発揮することが判った。そして、各実施例の試験電池は各比較例の試験電池や参考例の試験電池と比べても遜色のないサイクル特性をもつことも明らかとなった。従って本発明を適用した場合にすると、他の電池特性に影響を与えることなく酸素脱離抑制効果が向上できることが明らかとなった。
Claims (8)
- 集電体と該集電体上に形成された正極活物質を含む正極合材層とをもつ正極と、負極とを有するリチウム電池であって、
前記正極活物質は酸素除去材料により被覆されたことを特徴とするリチウム電池。 - 前記正極活物質は、前記酸素除去材料に代えて、又は、該酸素除去材料に加えて、蓄熱材料により被覆されている請求項1に記載のリチウム電池。
- 前記酸素除去材料は、鉄、チタン、亜鉛、マグネシウム、ゼオライト、ALPO、SAPO及び/又はカーボンナノチューブから選択される1以上の物質からなる請求項1又は2に記載のリチウム電池。
- 前記蓄熱材料は、100℃から200℃の範囲に融点をもつ低融点材料である請求項2又は3に記載のリチウム電池。
- 前記蓄熱材料は、インジウム、Sn−58Bi及び50Bi−28Pb−22Snから選択される1種以上の低融点金属を含む請求項4に記載のリチウム電池。
- 前記酸素除去材料又は前記蓄熱材料は、多孔質導電性材料に担持されている請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム電池。
- 前記多孔質導電性材料は、炭素系材料である請求項6に記載のリチウム電池。
- 前記正極活物質は、ニッケル酸リチウムである請求項1〜7のいずれかに記載のリチウム電池。
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-
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