JP2005162081A - ハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気走行中に駆動力の急増に伴ってエンジンを始動する時に、駆動力急増要求を満足させ得るようなエンジン始動方法を提供する。
【解決手段】電気走行中に駆動力の急増でエンジン動力が必要になった走行モード切り替え瞬時t1に目標クラッチ締結力Tc*を0からTc1*にしてエンジンクラッチをスリップ締結状態にする。クラッチのスリップ締結でエンジンがクランキングされ、エンジン回転数Neが始動可能回転数Nigに達する瞬時t2にエンジンを始動させ、同時にTc*を0にしてクラッチを解放させる。始動によりエンジン回転数Neが上昇してNes(≧Ni)以上になるt3に、Tc*を0からTc2*にしてクラッチを再度スリップ締結状態にする。これによりイナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされて駆動輪に向かい、クラッチを完全締結させる場合よりも大きな駆動力で車輪を駆動して駆動力急増要求を満足させ得る。
【選択図】図5

Description

本発明は、ハイブリッド変速機を搭載した車両の駆動力急増時におけるエンジンの始動方法、特に、要求駆動力が急増したことに伴うエンジンの始動に際し、要求駆動力の急増に符合するトルクが駆動輪に向かうようエンジンを始動する技術に関するものである。
ハイブリッド変速機は、車両を、モータからの動力のみにより電気走行させたり、クラッチを経て入力されるエンジン動力および上記モータからの動力によりハイブリッド走行させることができる。
そしてハイブリッド変速機搭載車の場合、発進時は発進の滑らかさや、制御のし易さなどの観点から、電気走行を用いるのが殆どある。
ところで、発進後に或る車速以上になると、モータ回転数が許容上限に達したり、駆動力不足になるなどのため、モータからの動力の代わりに、或いは、これと併用してエンジンからの動力により車両を走行させるのが常である。
従って発進時は、上記の電気走行中に、ハイブリッド変速機とエンジンとの間におけるクラッチを締結させてエンジンをクランキングさせ、エンジンが始動可能回転数になったところで、エンジンを点火および燃料供給により始動させる必要がある。
電気走行からエンジン走行への切り替え時におけるエンジン始動技術としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
このエンジン始動技術は、電気走行からエンジン走行への切り替え時に電気的なエネルギーの一部がエンジンの始動に費やされて駆動力の一時的な低下を生じ、駆動力の引けと呼ばれる減速ショックが発生することから、これを防止するためにエンジンの始動を、電気走行用のモータおよびエンジン始動用のスタータの双方により遂行させるというものである。
特開平11−082261号公報
ところで、運転者がアクセル操作により要求する要求駆動力が急増したことに伴うエンジンの始動に際しては、かかる要求駆動力の急増に符合するようできるだけ大きなトルクが駆動輪に向かう態様でエンジンを始動する必要がある。
しかし、特許文献1に記載のように電気走行用のモータおよびエンジン始動用のスタータの双方によりエンジンを始動させたところで、電気的なエネルギーの一部がエンジンの始動に費やされることによる駆動力の一時的な低下に起因した減速ショックを防止することはできても、
要求駆動力の急増に符合するよう大きなトルクが駆動輪に向かう態様でエンジンを始動させることにならず、運転者がアクセル操作で望んだ要求駆動力に見合う大きな駆動力を車輪に向かわせることができない。
従って従来の提案技術では、要求駆動力の急増に伴うエンジンの始動に際し、運転者に駆動力不足を感じさせると問題を生ずる。
本発明は、ハイブリッド変速機とエンジンとの間にクラッチがあって、これを介してエンジン動力がハイブリッド変速機に入力されることから、そして、このクラッチをエンジン始動直後に一気に完全締結させるのでなくスリップ締結させれば、このスリップ締結によりイナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされてエンジントルク以上の大きな駆動力を車輪に向かわせることができるとの事実認識に基づき、
この着想を具体化して上記駆動力急増時の駆動力不足に関する問題の解決を実現したハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明によるハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法は、請求項1に記載した以下のごときものとする。
先ず前提となるハイブリッド変速機は、車両を、モータからの動力のみにより電気走行させたり、クラッチを経て入力されるエンジン動力および前記モータからの動力によりハイブリッド走行させるようなハイブリッド変速機とする。
上記の電気走行中、運転者が要求する駆動力が急増したのを受けてエンジンを始動させるに当たっては、
電気走行中に解放状態であった上記クラッチをスリップ締結させてエンジンをクランキングさせる。
このクランキングによりエンジン回転数が始動可能回転数になった時、エンジンの始動指令を発すると同時に、上記スリップ締結状態にしたクラッチの締結力を一旦低下させる。
上記始動指令を受けて始動されたエンジンの回転数(クラッチのエンジン側回転数)が上昇し、このエンジン回転数(クラッチのエンジン側回転数)がクラッチの変速機側回転数よりも高い設定値になった時以後、クラッチを再度スリップ締結状態にする。
かかる本発明による電気走行中の駆動力急増時のエンジン始動方法によれば、
エンジン始動後エンジン回転数(クラッチのエンジン側回転数)がクラッチの変速機側回転数よりも高い設定値になった時以後、クラッチを再度スリップ締結状態にするため、
該クラッチをエンジン始動直後に一気に完全締結させる場合に較べ、クラッチのスリップによりイナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされることから、エンジントルク以上の大きな駆動力を車輪に向かわせることができ、要求駆動力急増時のエンジン始動ではあっても大きな駆動力不足を運転者に感じさせることがなく、この点に関する従来の問題を解消することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明のエンジン始動方法を実施可能なハイブリッド変速機1を搭載した車両の駆動系を、その制御システムと共に示す。
車両の駆動系は、ハイブリッド変速機1と、その入力側におけるエンジン2と、これら両者間に介在させたクラッチ3と、ハイブリッド変速機1の出力側におけるディファレンシャルギヤ装置4と、ハイブリッド変速機1からの出力をディファレンシャルギヤ装置4により分配されて伝達される左右駆動輪5L,5Rとで構成する。
ハイブリッド変速機1は、フロントエンジン・リヤホイール駆動車(FR車)用のトランスミッションとして用いるのに有用な、図2に示すごとき以下の構成となす。
つまりハイブリッド変速機1は、軸線方向(図の左右方向)に2個の単純遊星歯車組21,22を同軸に配して具える。
エンジン2から遠い側における遊星歯車組21を、リングギヤR1、サンギヤS1、および、これらギヤに噛合させたピニオンP1により構成し、
エンジン2に近い側における遊星歯車組22を、リングギヤR2、サンギヤS2、および、これらギヤに噛合させたピニオンP2により構成する。
ここで遊星歯車組22のピニオンP2は、遊星歯車組21まで延在するロングピニオンとし、該ピニオンP2を遊星歯車組21のピニオンP1にも噛合させ、
ピニオンP1,P2を共通なキャリアCに回転自在に支持して、遊星歯車組21,22がラビニョオ型プラネタリギヤセットを構成するようになす。
このラビニョオ型プラネタリギヤセットに同軸に複合電流2層モータ25を設け、この複合電流2層モータ25は、内側ロータ25riと、これを包囲する環状の外側ロータ25roとを、変速機ケース内に同軸に回転自在に支持して具え、これら内側ロータ25riおよび外側ロータ25ro間における環状空間に同軸に配置した環状ステ-タ25sを変速機ケースに固設して構成する。
環状ステータ25sと内側ロータ25riとで内側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状ステータ25sと外側ロータ25roとで外側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
遊星歯車組21,22で構成されるラビニョオ型プラネタリギヤセットにおけるサンギヤS1に第1のモータ/ジェネレータMG1(内側ロータ25ri)を結合し、サンギヤS2に第2のモータ/ジェネレータMG2(外側ロータ25ro)を結合する。
以上の構成になるハイブリッド変速機1を車両の駆動系に挿入するに際しては、リングギヤR2をクラッチ3を介してエンジン2の出力軸に結合し、キャリアCを出力歯車組23を介して出力軸24に結合し、出力軸24を図1のごとくディファレンシャルギヤ装置4の入力に結合する。
かようにして構成した車両駆動系の制御システムは図1に示すように、エンジン2の始動を含めた制御を司るエンジンコントローラ6と、クラッチ3の締結力制御を司る油圧源を含むクラッチコントローラ7と、ハイブリッド変速機1におけるモータ/ジェネレータMG1,MG2を制御するモータコントローラ8と、これらコントローラ6〜8に対する統合コントローラ9とで構成する。
統合コントローラ9は、エンジン回転数(クラッチ3のエンジン側回転数)Neを検出するエンジン回転センサ11からの信号と、変速機入力回転数(クラッチ3の変速機側回転数)Niを検出する入力回転センサ12からの信号と、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ13からの信号とを入力され、
これら入力情報をもとに所定の演算を行い、エンジンコントローラ6に対しては、エンジン始動指令や目標エンジントルクTe*に関する指令を、また、クラッチコントローラ7に対しては目標クラッチ締結力Tc*に関する指令を、更に、モータコントローラ8に対してはモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクTm1*,Tm2*に関する指令を供給する。
エンジンコントローラ6は、統合コントローラ9からのエンジン始動指令や目標エンジントルクTe*に関する指令を受けると、これらが達成されるようエンジン2を始動させたり、トルク制御し、
クラッチコントローラ7は、統合コントローラ9から目標クラッチ締結力Tc*に関する指令を受けると、これが達成されるようなクラッチ締結油圧Pcをクラッチ3に供給して、クラッチ締結力を指令値になるよう制御し、
モータコントローラ8は、統合コントローラ9から目標モータ/ジェネレータトルクTm1*,Tm2*に関する指令を受けると、これらが達成されるようモータ/ジェネレータMG1,MG2をトルク制御する。
統合コントローラ9は、本発明に係わる電気走行中の駆動力急増時エンジン始動制御を、図3および図4に示すように、そして、車両発進時からの動作タイムチャートである図5に例示するごとくに実行する。
図3はメインルーチンで、先ずステップSにおいて、アクセル開度APOをもとに運転者が駆動力の急増を要求したか否かを判定する。
この判定に当たっては、アクセル開度APOの変化速度が設定速度以上で、且つ、アクセル開度APOが図5に示す設定値APOs以上である時をもって、運転者の要求駆動力が急増したと判定する。
ここで、アクセル開度APOに関する上記の設定値APOsは高車速ほど大きくし、これにより、車速ごとに駆動力の急増判定を正確に行うことができる。
ステップS1で、運転者が駆動力の急増を要求していないと判定する間は、制御をステップS1に戻して運転者が駆動力の急増を要求するまで、図3のメインルーチンを実行させずに待機する。
ステップS1で、運転者が駆動力の急増を要求したと判定する図5の瞬時t1に至って初めて、制御をステップS2に進め、ここで図5に示すように目標クラッチ締結力Tc*を0から所定の締結力Tc1*に増大させる。
この所定の締結力Tc1*は、エンジン回転数をクランキング用に好適な所定の速度で上昇させるような締結力とする。
クラッチコントローラ7は、この目標クラッチ締結力Tc*を実現するための図5に示すようなクラッチ締結油圧Pcをクラッチ3に供給して、クラッチ3の締結力を上記の目標値となし、クラッチ3をスリップ締結状態にする。
かかるクラッチ3のスリップ締結状態によりエンジン2がクランキングされるようになり、エンジン回転数Neが図5の瞬時t1以後に示すように上昇する。
図3のステップS3では、エンジン回転数Neが図5に例示する始動可能回転数Nigに達したか否かにより、エンジンが点火により始動可能な回転速度になったか否かを判定する。
エンジンが始動可能な回転数になるまでステップS3は制御をステップS2に戻し、ここでクラッチ3を上記のスリップ締結状態に維持してエンジン回転数Neを更に上昇させる。
エンジン回転数Neが始動可能回転数Nigに達する図5の瞬時t2においてステップS3は制御をステップS4に進め、このステップS4において統合コントローラ9はエンジン始動指令をエンジンコントローラ6へ発すると共にクラッチ解放(Tc*=0)指令をクラッチコントローラ9へ発する。
エンジンコントローラ6は上記エンジン始動指令を受けると、エンジンへの点火指令や燃料噴射指令によりエンジン2を始動させ、この始動によりエンジン回転数NeおよびエンジントルクTeはそれぞれ図5の瞬時t2以後におけるごとくに上昇する。
クラッチコントローラ9は上記クラッチ解放(Tc*=0)指令を受けると、クラッチ締結油圧Pcを図5の瞬時t2以後におけるごとく0となし、クラッチ3を指令通りに解放状態にする。
かかるクラッチ3の解放は、クラッチ3のスリップによる引きずりエネルギー損失をなくしてエンジン回転数Neの速やかな上昇を促進し得ると共に、クラッチ3のスリップによる発熱を抑制して、その後の後述するスリップ締結時の熱負荷に余裕を持たせることができる。
なお、図5の瞬時t2以後におけるエンジン回転数Neの更なる速やかな上昇を実現するためには、瞬時t2以後、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンコントローラ7を介してエンジン2を制御するのがよい。
また、図5の瞬時t2以後においてクラッチ3を解放状態にしたが、その狙いである、クラッチ3の発熱抑制によりその後の熱負荷に余裕を持たせる目的が達成される限りにおいて、クラッチ3は上記解放状態の代わりに、締結力を低下させるだけでもよい。
図3のステップS5では、ステップS4での始動によりエンジン回転数(クラッチ3のエンジン側回転数)Neが、クラッチ3の変速機側回転数(変速機入力回転数)Niよりも高い図5に例示した設定値Nes以上になったか否かを、つまり、クラッチ3をスリップ締結状態にするとイナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされてエンジントルク以上の大きな駆動力を車輪に向かわせることができる回転状態か否かをチェックする。
ここで、エンジン回転数Neに関する上記の設定値Nesは、最大エンジントルクを発生させるためのエンジン回転数に対応させるのがよく、この場合、イナーシャトルクを上乗せする対象であるエンジントルクが最大トルクであることにより、駆動力を大きくすることができると共に、これを達成させるのに必要なエンジン回転数Neの設定値Nesへの上昇を速やかに完遂させることができる。
ステップS5でNe< Nesと判定する間は、つまり、クラッチ3をスリップ締結状態にしてもイナーシャトルクのエンジントルクに上乗せされないと判定する間は、Ne≧ Nesになるまで待機し、Ne≧ Nesとなる図5の瞬時t3に制御をステップS6に進めて、駆動力増大用にクラッチ3をスリップ締結状態にする。
ステップS6の処理は図4に示すごときもので、先ずステップS11において、エンジンコントローラ6への目標エンジントルクTe*を、時々刻々のエンジン回転数のもとでの最大エンジントルクとし、クラッチ3を再度スリップ締結状態にする図5の瞬時t3以後は、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御する。
次のステップS12においては、クラッチコントローラ7への目標クラッチ締結力Tc*を図5に例示するような設定値Tc2*とし、この設定値Tc2*は、上記目標エンジントルクTe*(最大エンジントルク)のもとで、エンジン回転数Neがクラッチ3の変速機側回転数Niよりも高く保たれるような、つまり、クラッチ3をスリップ締結状態となすような設定値とする。
かくしてステップS11およびステップS12では、図5の瞬時t3以後、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御すると共に、かかる最大エンジントルクのもとでエンジン回転数Neがクラッチの変速機側回転数Niよりも高く保たれているよう(クラッチ3をスリップ締結状態にするよう)クラッチ締結力Tc*を制御することとなる。
後者のようにエンジン回転数Neがクラッチの変速機側回転数Niよりも高く保たれるクラッチ3のスリップ締結状態は、イナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされてエンジントルク以上の大きな駆動力を車輪に向かわせることができ、図5の瞬時t3以後における駆動力Toの波形から明らかなように駆動力Toを要求駆動力の急増に見合うよう大きなものにすることができ、当該駆動力急増時における駆動力不足を緩和することができる。
更にこの時、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御する前者の制御は、エンジントルクTeが最大値になるよう制御することから、図5の瞬時t3以後における駆動力Toの波形から明らかなように駆動力Toを一層要求駆動力の急増に見合うよう大きなものにすることができ、当該駆動力急増時における駆動力不足を一層確実に緩和することができる。
図4の次のステップS13においては、クラッチ3を再度スリップ締結状態にする図5の瞬時t3以後のクラッチ3の発熱量Qを、クラッチの前後回転数差やクラッチ締結力や瞬時t3からの経過時間をもとに演算して推定する。
ステップS14では、車輪タイヤの駆動スリップが駆動スリップを発生しているか否かをチェックし、発生していなければステップS15をスキップし、発生していればステップS15においてタイヤスリップ抑制制御を行う。
ステップS15での制御は、上記車輪タイヤの駆動スリップが抑制されるようクラッチ3の締結力(目標クラッチ締結力Tc*)を低下させ、更に、当該クラッチ締結力の低下でエンジン回転数が許容上限を越えるエンジンの過回転を回避するために、エンジントルク(目標エンジントルクTe*)を低下させるものである。
ステップS16においては、ステップS13で推定した図5の瞬時t3以後におけるクラッチ3の発熱量Qが設定値Qs以上か否かにより、クラッチ3が過熱状態になるか否かをチェックし、過熱しなければ制御をステップS11に戻してステップS11〜ステップS16のループを繰り返す。
ステップS16でQ≧Qsと判定するクラッチ3の過熱時は、ステップS17およびステップS18の処理によりクラッチ3の過熱対策処理を行う。
ステップS17では、エンジンコントローラ6への目標エンジントルクTe*を低下させてエンジントルクが低下するようエンジンを制御し、これによりクラッチ3のスリップ量を減じて過熱対策とする。
ステップS18では、クラッチコントローラ7への目標クラッチ締結力Tc*を上昇させてクラッチ3をスリップし難くし、これによりクラッチ3の過熱対策を行う。
以上の実施例による駆動力急増時のエンジン始動方法を採用すると、アクセルを急踏みして車両を発進させる場合について示すと車両加速度Gは、クラッチ3のスリップ締結により例えば図6に実線で示すような時系列変化を呈し、発進時から瞬時t1までの間において車両加速度Gが、クラッチ3を完全締結させておく場合の破線で示す車両加速度Gの時系列変化に較べ、前記したイナーシャトルクの上乗せ分に相当するハッチングを付して示した部だけ大きくなり、要求駆動力の急増にマッチした車両駆動力を得ることができる。
なお車両加速度Gは、本実施例のようにクラッチ3をスリップ締結状態にする場合、クラッチ3の前後回転差が無くなる図6の瞬時t1を境にそれ以後、クラッチ3を完全締結させておく場合よりも逆に小さくなることから、この瞬時t1にクラッチ3をスリップ締結状態から完全締結状態に切り替え、以後クラッチ3を完全締結状態にしておくのが、大きな駆動力を得る上では有利であること勿論である。
本発明の駆動力急増時エンジン始動方法を実施可能なハイブリッド変速機を搭載した車両の駆動系を、その制御システムと共に示すシステム図である。 図1におけるハイブリッド変速機の線図的な縦断側面図である。 図1における統合コントローラが、本発明による駆動力急増時エンジン始動方法を実行する時のメインルーチンを示すフローチャートである。 同メインルーチンにおける駆動力増大用クラッチスリップ制御のサブルーチンを示すフローチャートである。 本発明による駆動力急増時エンジン始動方法を実行した時の動作タイムチャートである。 本発明による駆動力急増時エンジン始動方法を実行した時の車両加速度の時系列変化を、通常の方法を実行した時の車両加速度の時系列変化と比較して示すタイムチャートである。
符号の説明
1 ハイブリッド変速機
2 エンジン
3 クラッチ
4 ディファレンシャルギヤ装置
5L 左駆動輪
5R 右駆動輪
6 エンジンコントローラ
7 クラッチコントローラ
8 モータコントローラ
9 統合コントローラ
11 エンジン回転センサ
12 入力回転センサ
13 アクセル開度センサ
21 単純遊星歯車組
22 単純遊星歯車組
23 出力歯車組
24 出力軸
25 複合電流2層モータ
MG1,MG2 モータ/ジェネレータ

Claims (10)

  1. 車両を、モータからの動力のみにより電気走行させたり、クラッチを経て入力されるエンジン動力および前記モータからの動力によりハイブリッド走行させるハイブリッド変速機を搭載した車両において、前記電気走行中に運転者が要求する駆動力が急増したのを受けてエンジンを始動させるに際し、
    電気走行中に解放状態であった前記クラッチをスリップ締結させてエンジンをクランキングし、
    該クランキングによりエンジン回転数が始動可能回転数になった時エンジンの始動指令を発すると同時に、前記スリップ締結状態のクラッチの締結力を低下させ、
    エンジン回転数が前記始動により上昇して、前記クラッチの変速機側回転数よりも高い設定値になった時以後、該クラッチを再度スリップ締結状態にすることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  2. 請求項1に記載のエンジン始動方法において、
    前記エンジンの始動指令が発せられてから、前記クラッチを再度スリップ締結状態にするまでの間、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  3. 請求項1または2に記載のエンジン始動方法において、
    前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、エンジン回転数が前記クラッチの変速機側回転数よりも高く保たれているよう、エンジントルクおよびクラッチ締結力を制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
    前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
    前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、該クラッチの発熱量が設定値以上になった時、該クラッチの締結力を増大させることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
    前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、該クラッチの発熱量が設定値以上になった時、該クラッチの締結力を増大させると共に、エンジントルクが低下するようエンジンを制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
    車輪の駆動スリップ発生時、前記クラッチの締結力を低下させることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  8. 請求項7に記載のエンジン始動方法において、
    車輪の駆動スリップ発生時に、前記クラッチの締結力低下と併せて、エンジンの過回転防止用にエンジントルクを低下させることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
    前記クラッチを再度スリップ締結状態にすべきであると判断するためのエンジン回転数に関した前記設定値は、最大エンジントルクを発生させるためのエンジン回転数に対応させたことを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
    運転者が操作するアクセルの開度が設定値以上になる時をもって前記要求駆動力の急増を判定し、この設定値を高車速ほど大きくしたことを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
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