JP2005162081A - ハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気走行中に駆動力の急増でエンジン動力が必要になった走行モード切り替え瞬時t1に目標クラッチ締結力Tc*を0からTc1*にしてエンジンクラッチをスリップ締結状態にする。クラッチのスリップ締結でエンジンがクランキングされ、エンジン回転数Neが始動可能回転数Nigに達する瞬時t2にエンジンを始動させ、同時にTc*を0にしてクラッチを解放させる。始動によりエンジン回転数Neが上昇してNes(≧Ni)以上になるt3に、Tc*を0からTc2*にしてクラッチを再度スリップ締結状態にする。これによりイナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされて駆動輪に向かい、クラッチを完全締結させる場合よりも大きな駆動力で車輪を駆動して駆動力急増要求を満足させ得る。
【選択図】図5
Description
ところで、発進後に或る車速以上になると、モータ回転数が許容上限に達したり、駆動力不足になるなどのため、モータからの動力の代わりに、或いは、これと併用してエンジンからの動力により車両を走行させるのが常である。
このエンジン始動技術は、電気走行からエンジン走行への切り替え時に電気的なエネルギーの一部がエンジンの始動に費やされて駆動力の一時的な低下を生じ、駆動力の引けと呼ばれる減速ショックが発生することから、これを防止するためにエンジンの始動を、電気走行用のモータおよびエンジン始動用のスタータの双方により遂行させるというものである。
要求駆動力の急増に符合するよう大きなトルクが駆動輪に向かう態様でエンジンを始動させることにならず、運転者がアクセル操作で望んだ要求駆動力に見合う大きな駆動力を車輪に向かわせることができない。
従って従来の提案技術では、要求駆動力の急増に伴うエンジンの始動に際し、運転者に駆動力不足を感じさせると問題を生ずる。
この着想を具体化して上記駆動力急増時の駆動力不足に関する問題の解決を実現したハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法を提案することを目的とする。
先ず前提となるハイブリッド変速機は、車両を、モータからの動力のみにより電気走行させたり、クラッチを経て入力されるエンジン動力および前記モータからの動力によりハイブリッド走行させるようなハイブリッド変速機とする。
電気走行中に解放状態であった上記クラッチをスリップ締結させてエンジンをクランキングさせる。
このクランキングによりエンジン回転数が始動可能回転数になった時、エンジンの始動指令を発すると同時に、上記スリップ締結状態にしたクラッチの締結力を一旦低下させる。
エンジン始動後エンジン回転数(クラッチのエンジン側回転数)がクラッチの変速機側回転数よりも高い設定値になった時以後、クラッチを再度スリップ締結状態にするため、
該クラッチをエンジン始動直後に一気に完全締結させる場合に較べ、クラッチのスリップによりイナーシャトルクがエンジントルクに上乗せされることから、エンジントルク以上の大きな駆動力を車輪に向かわせることができ、要求駆動力急増時のエンジン始動ではあっても大きな駆動力不足を運転者に感じさせることがなく、この点に関する従来の問題を解消することができる。
図1は、本発明のエンジン始動方法を実施可能なハイブリッド変速機1を搭載した車両の駆動系を、その制御システムと共に示す。
つまりハイブリッド変速機1は、軸線方向(図の左右方向)に2個の単純遊星歯車組21,22を同軸に配して具える。
エンジン2に近い側における遊星歯車組22を、リングギヤR2、サンギヤS2、および、これらギヤに噛合させたピニオンP2により構成する。
ピニオンP1,P2を共通なキャリアCに回転自在に支持して、遊星歯車組21,22がラビニョオ型プラネタリギヤセットを構成するようになす。
環状ステータ25sと内側ロータ25riとで内側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状ステータ25sと外側ロータ25roとで外側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
これら入力情報をもとに所定の演算を行い、エンジンコントローラ6に対しては、エンジン始動指令や目標エンジントルクTe*に関する指令を、また、クラッチコントローラ7に対しては目標クラッチ締結力Tc*に関する指令を、更に、モータコントローラ8に対してはモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクTm1*,Tm2*に関する指令を供給する。
クラッチコントローラ7は、統合コントローラ9から目標クラッチ締結力Tc*に関する指令を受けると、これが達成されるようなクラッチ締結油圧Pcをクラッチ3に供給して、クラッチ締結力を指令値になるよう制御し、
モータコントローラ8は、統合コントローラ9から目標モータ/ジェネレータトルクTm1*,Tm2*に関する指令を受けると、これらが達成されるようモータ/ジェネレータMG1,MG2をトルク制御する。
図3はメインルーチンで、先ずステップSにおいて、アクセル開度APOをもとに運転者が駆動力の急増を要求したか否かを判定する。
この判定に当たっては、アクセル開度APOの変化速度が設定速度以上で、且つ、アクセル開度APOが図5に示す設定値APOs以上である時をもって、運転者の要求駆動力が急増したと判定する。
ここで、アクセル開度APOに関する上記の設定値APOsは高車速ほど大きくし、これにより、車速ごとに駆動力の急増判定を正確に行うことができる。
ステップS1で、運転者が駆動力の急増を要求したと判定する図5の瞬時t1に至って初めて、制御をステップS2に進め、ここで図5に示すように目標クラッチ締結力Tc*を0から所定の締結力Tc1*に増大させる。
クラッチコントローラ7は、この目標クラッチ締結力Tc*を実現するための図5に示すようなクラッチ締結油圧Pcをクラッチ3に供給して、クラッチ3の締結力を上記の目標値となし、クラッチ3をスリップ締結状態にする。
図3のステップS3では、エンジン回転数Neが図5に例示する始動可能回転数Nigに達したか否かにより、エンジンが点火により始動可能な回転速度になったか否かを判定する。
エンジンが始動可能な回転数になるまでステップS3は制御をステップS2に戻し、ここでクラッチ3を上記のスリップ締結状態に維持してエンジン回転数Neを更に上昇させる。
かかるクラッチ3の解放は、クラッチ3のスリップによる引きずりエネルギー損失をなくしてエンジン回転数Neの速やかな上昇を促進し得ると共に、クラッチ3のスリップによる発熱を抑制して、その後の後述するスリップ締結時の熱負荷に余裕を持たせることができる。
また、図5の瞬時t2以後においてクラッチ3を解放状態にしたが、その狙いである、クラッチ3の発熱抑制によりその後の熱負荷に余裕を持たせる目的が達成される限りにおいて、クラッチ3は上記解放状態の代わりに、締結力を低下させるだけでもよい。
次のステップS12においては、クラッチコントローラ7への目標クラッチ締結力Tc*を図5に例示するような設定値Tc2*とし、この設定値Tc2*は、上記目標エンジントルクTe*(最大エンジントルク)のもとで、エンジン回転数Neがクラッチ3の変速機側回転数Niよりも高く保たれるような、つまり、クラッチ3をスリップ締結状態となすような設定値とする。
更にこの時、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御する前者の制御は、エンジントルクTeが最大値になるよう制御することから、図5の瞬時t3以後における駆動力Toの波形から明らかなように駆動力Toを一層要求駆動力の急増に見合うよう大きなものにすることができ、当該駆動力急増時における駆動力不足を一層確実に緩和することができる。
ステップS14では、車輪タイヤの駆動スリップが駆動スリップを発生しているか否かをチェックし、発生していなければステップS15をスキップし、発生していればステップS15においてタイヤスリップ抑制制御を行う。
ステップS15での制御は、上記車輪タイヤの駆動スリップが抑制されるようクラッチ3の締結力(目標クラッチ締結力Tc*)を低下させ、更に、当該クラッチ締結力の低下でエンジン回転数が許容上限を越えるエンジンの過回転を回避するために、エンジントルク(目標エンジントルクTe*)を低下させるものである。
ステップS16でQ≧Qsと判定するクラッチ3の過熱時は、ステップS17およびステップS18の処理によりクラッチ3の過熱対策処理を行う。
ステップS17では、エンジンコントローラ6への目標エンジントルクTe*を低下させてエンジントルクが低下するようエンジンを制御し、これによりクラッチ3のスリップ量を減じて過熱対策とする。
ステップS18では、クラッチコントローラ7への目標クラッチ締結力Tc*を上昇させてクラッチ3をスリップし難くし、これによりクラッチ3の過熱対策を行う。
2 エンジン
3 クラッチ
4 ディファレンシャルギヤ装置
5L 左駆動輪
5R 右駆動輪
6 エンジンコントローラ
7 クラッチコントローラ
8 モータコントローラ
9 統合コントローラ
11 エンジン回転センサ
12 入力回転センサ
13 アクセル開度センサ
21 単純遊星歯車組
22 単純遊星歯車組
23 出力歯車組
24 出力軸
25 複合電流2層モータ
MG1,MG2 モータ/ジェネレータ
Claims (10)
- 車両を、モータからの動力のみにより電気走行させたり、クラッチを経て入力されるエンジン動力および前記モータからの動力によりハイブリッド走行させるハイブリッド変速機を搭載した車両において、前記電気走行中に運転者が要求する駆動力が急増したのを受けてエンジンを始動させるに際し、
電気走行中に解放状態であった前記クラッチをスリップ締結させてエンジンをクランキングし、
該クランキングによりエンジン回転数が始動可能回転数になった時エンジンの始動指令を発すると同時に、前記スリップ締結状態のクラッチの締結力を低下させ、
エンジン回転数が前記始動により上昇して、前記クラッチの変速機側回転数よりも高い設定値になった時以後、該クラッチを再度スリップ締結状態にすることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1に記載のエンジン始動方法において、
前記エンジンの始動指令が発せられてから、前記クラッチを再度スリップ締結状態にするまでの間、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1または2に記載のエンジン始動方法において、
前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、エンジン回転数が前記クラッチの変速機側回転数よりも高く保たれているよう、エンジントルクおよびクラッチ締結力を制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、時々刻々のエンジン回転数のもとで最大エンジントルクが発生するようエンジンを制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、該クラッチの発熱量が設定値以上になった時、該クラッチの締結力を増大させることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
前記クラッチを再度スリップ締結状態にした時以後、該クラッチの発熱量が設定値以上になった時、該クラッチの締結力を増大させると共に、エンジントルクが低下するようエンジンを制御することを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
車輪の駆動スリップ発生時、前記クラッチの締結力を低下させることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項7に記載のエンジン始動方法において、
車輪の駆動スリップ発生時に、前記クラッチの締結力低下と併せて、エンジンの過回転防止用にエンジントルクを低下させることを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
前記クラッチを再度スリップ締結状態にすべきであると判断するためのエンジン回転数に関した前記設定値は、最大エンジントルクを発生させるためのエンジン回転数に対応させたことを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。 - 請求項1乃至9のいずれか1項に記載のエンジン始動方法において、
運転者が操作するアクセルの開度が設定値以上になる時をもって前記要求駆動力の急増を判定し、この設定値を高車速ほど大きくしたことを特徴とするハイブリッド変速機搭載車の駆動力急増時エンジン始動方法。
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