JP2005161594A - インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高アルカリインク用いた場合や極小オリフィスを作成した場合においても長時間安定した吐出が可能であるインクジェットヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】 貴金属との密着性に優れたメルカプト基を構造中に導入したエポキシ化合物を、インク流路形成材料として使用する。
【選択図】 図1
【解決手段】 貴金属との密着性に優れたメルカプト基を構造中に導入したエポキシ化合物を、インク流路形成材料として使用する。
【選択図】 図1
Description
本発明はインクジェット記録方式に用いる記録液小滴を発生するためのインクジェットヘッドの構成部材に関するものである。
インクジェット記録方式(液体噴射記録方式)に適用されるインクジェットヘッドは、一般に微細なインク吐出口(以下、オリフィスと称す)、液流路および該液流路の一部に設けられる液体吐出エネルギー発生部を複数備えている。従来、このようなインクジェットヘッドを作製する方法としては、例えば特開平6−286149号公報に記載の次のような工程が知られている。
まず、インク吐出圧力発生素子が形成された基板上に溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成し、このインク流路パターン上に、インク流路壁となるエポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤を含む被覆樹脂層を形成し、フォトリソグラフィーによりインク吐出圧力発生素子上にオリフィスを形成し、次いで前記溶解可能な樹脂を溶出してインク流路を形成し、インク流路壁となる被覆樹脂層を硬化する。
前記インク流路壁となる被覆樹脂に含まれるエポキシ樹脂としては、特開平03−184868号公報に記載のビスフェノールA、F、S骨格を有するエポキシ樹脂、o―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、特開昭60−161973号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭64−9216号公報、特開平2−140219号公報に記載のオキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂等が知られている。
特開昭60−161973号公報
特開昭63−221121号公報
特開昭64−9216号公報
特開平2−140219号公報
特開平03−184868号公報
特開平6−286149号公報
前記インク流路壁となる被覆樹脂に含まれるエポキシ樹脂としては、特開平03−184868号公報に記載のビスフェノールA、F、S骨格を有するエポキシ樹脂、o―クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、特開昭60−161973号公報、特開昭63−221121号公報、特開昭64−9216号公報、特開平2−140219号公報に記載のオキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂等が知られている。
ところで、近年の記録技術の進展に伴い、インクジェット記録技術にはより高精細な記録が求められている。このような要求を満たす一つの方法としてインクジェットヘッドより吐出されるインク滴の極小化、すなわちインクジェットヘッドの極小オリフィス化が挙げられる。しかし、従来の製造方法で極小オリフィスを有するインクジェットヘッドを作成すると、インク流路壁の吸インクによる体積膨潤の影響が無視できなくなり、オリフィスの変形を生じる虞がある。その結果、吐出されるインク滴の吐出方向がばらつき出力される画像にムラを生じる場合がある。
また、インクジェット記録技術による画像記録への高度な要求に伴ってインクに要求される性能も高度なものとなってきており、インク中に保湿剤としての尿素が含有されるようになってきている。さらに記録物の耐水性を向上させるために色材としても水難溶性染料を用いるようになり、この染料を溶解させるためにインク中にアルカリ塩を含有させる構成をとっている。
このようにインク中に尿素やアルカリ塩が含有されているとインクは比較的高いアルカリ性を示すものとなるが、高アルカリインクは極性溶媒と同様にエポキシ樹脂の硬化物であるインク流路壁を膨潤させやすい。従って、高アルカリインクを用いた上述の製造方法で作成された従来のインクジェットにおいてはインク流路壁が吸インクによる体積膨潤で変形し所望の吐出状態を得られない虞や、インク流路壁の基板からの剥離の虞があり、インクジェットヘッドの信頼性の観点からも必ずしも充分とは言えないものである。
このように、上述のインクジェット製造方法では極小オリフィスを作成した場合や、高アルカリインクを用いた際のインク流路壁の膨潤量の低減という技術課題がある。
本発明は前述した従来技術における問題点を解決し、高アルカリインク用いた場合や極小オリフィスを作成した場合においても長時間安定した吐出が可能であるインクジェットヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前述した従来技術における問題点を解決して上記課題を達成すべく鋭意研究した結果、従来のインクジェットヘッドにおけるインク流路壁の構成部材として用いられているエポキシ樹脂に関して、(I)に示すシロキサン構造と、(II)に示す構造単位を有するエポキシ樹脂を用いればインク流路壁のインク耐性が向上し、すなわちインク流路壁の吸インクによる体積膨潤量が低減され、所望の安定した吐出が可能なインクジェットヘッドを得られることが判明した。
上記のように本発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、インク流路壁の吸インクによるオリフィスの変形を生じにくい信頼性の高いインクジェットヘッドを提供できるものである。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のインク流路壁の構成部材として用いるシロキサン構造を有するエポキシ樹脂は、シロキサン構造部位が疎水性を示すことより、該樹脂をインク流路壁の構成部材に用いることで、インク流路壁の吸インクによる体積膨潤量を低減することができる。
本発明に用いる、前記シロキサン構造を有するエポキシ樹脂は、例えば活性水素を有する有機化合物を開始剤にし、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドを開環重合させたポリエーテル化合物、すなわち、ビニル基側鎖を有するポリシクロヘキセンオキサイド重合体に、メトキシ基を有するシリコン化合物を縮合反応させ、最後にビニルシクロヘキサンを過酢酸などによってエポキシ化することにより得る事ができる。または、前述のビニル基側鎖を有するポリシクロヘキセンオキサイド重合体をある程度エポキシ化した後に、残存するビニル基に対してSi−H基を有するジメチルポリシロキサンを白金触媒下で付加反応させることにより得ることも可能である。
上述の(I)及び(II)の構造単位を有するエポキシ樹脂としては、具体的には下記式(III)、(IV)で示されるものが挙げられるが、無論本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明におけるインク流路壁となる樹脂組成物に含まれるシロキサン構造を有するエポキシ樹脂のシリコン含有量は、5%〜50%であることが望ましい。すなわち、シロキサン構造を有するエポキシ樹脂のシリコン含有量が5%未満であると所望のインク耐性を得ることができず、またシリコン含有量が50%以上であると、インク流路壁が高い撥水性を有してしまい、連続してインクを吐出する際にインクのリフィルが低下してしまう恐れがあるからである。
また、本発明のシロキサン構造を有するエポキシ樹脂においては、好ましくはエポキシ当量が100以上、さらに好ましくはエポキシ当量が100以上500以下のものが好適に用いられる。これはエポキシ当量が150以下であると硬化時における架橋密度が高くなってしまい硬化収縮に伴う収縮応力が甚大なものとなり基板との密着性に問題が生じる場合があるからである。また、エポキシ当量が500以上となると、硬化時における架橋密度が低くなってしまい、硬化収縮に伴う収縮応力は低減されるが硬化物の機械的強度も低下して耐インク性などの面において問題を生じるからである。
本発明に用いられるエポキシ樹脂の硬化剤としては、芳香族ヨウドニウム塩、芳香族スルホニウム塩や旭電化工業より上市されているSP−150、SP−170、SP−172やRhodia社より上市しているRhodorsil2074等の光カチオン重合開始剤を用いることが望ましい。これらの光カチオン重合開始剤は紫外線の照射によりカチオン重合を開始させるものである。
また、これらインク流路壁となる樹脂組成物に対しては、必要に応じて添加剤などを適宜添加することが可能である。たとえば、エポキシ樹脂の弾性率を下げる目的で可撓性付与剤を添加したり、あるいは基板との更なる密着力を得るためにシランカップリング剤を添加することなどが挙げられる。
なお、本発明におけるシロキサン構造を有するエポキシ樹脂を他のエポキシ樹脂と混合してインク流路壁の構成部材として用いても、何ら問題は無い。
また、本発明のインクジェットヘッドは、より高精細なオリフィスを得るためにフォトリソグラフィーにてオリフィスを形成することが望ましい。
以下、本発明の実施例を示す。
本実施例においては、本発明記載のシロキサン構造を有するエポキシ樹脂を基板上に配置し、加速試験によって該樹脂硬化物の吸インクによる体積膨潤量の測定を行った。
まず、基板としては6インチSiウエハを準備し熱酸化によって1.0μmのSiO2層を形成した。次いで表1記載の比較例を含む3種類の樹脂組成物を適当な溶剤にて溶解したものをスピンコートによって成膜し、90℃5分のベークを行うことにより塗布溶媒を蒸発させ20μm厚に成膜した。
次いでキヤノン製マスクアライナーMPA600を用い、露光量3000mJ/cm2で基板上の前記樹脂組成物のパターニングをおこない、露光後ホットプレート上で90℃4分間加熱後にメチルイソブチルケトン/キシレン混合溶媒で現像し、さらに現像後に200℃1時間加熱し本硬化を行った。こうして長さ5cm、幅20μmのライン&スペースパターンを形成した。
次いでこれら試料を、エチレングリコール/尿素/イソプロピルアルコール/黒色染料/水=5/3/2/3/87からなるインクに浸漬(60℃ 1週間)し、ラインパターン幅の寸法変化を観察した。
インク浸漬終了後、試料を水洗しブロー乾燥させた後、ラインパターン幅を測定したところ、本発明の構成である実施例(1)、(2)の樹脂組成物のライン&スペースパターンをシリコンウエハー上に設けた試料に関してはラインパターン幅の増大率は2〜3%であった。一方、比較例ではインク膨潤によりパターン幅の増大率は8%であった。
この結果から、本発明のシロキサン構造を有するエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物の硬化物は、吸インクによる体積膨潤量が少なく、且つ基板との密着性も問題が無い優れた材料であることが確認された。
本実施例では表1記載の樹脂組成物を、インク流路壁構成部材として以下の製造方法で極小オリフィスを有するインクジェットヘッドを作成し、吸インクによるオリフィス形状安定性の評価を行った。以下、図面を参照しながら説明する。
図1に示すようにインク供給口形成用マスク3を設けた結晶軸(100)のSiウエハー基板1上にインク圧力発生素子として電熱変換素子(TaN)2を配置し、更に保護層としてSiN層4、Ta層5を形成した。なお、電気熱変換素子2にはその素子を動作させるための制御信号入力電極が接続されている。(不図示)図2に図1のA−A‘断面図を示す。
次いで前記基板1上に密着層としてポリエーテルアミドからなる層6を以下の方法で厚み2.0μmにて形成した。ポリエーテルアミド層には日立化成工業(株)社製HIMAL1200を用い、スピナーで前記基板1上に塗布し、100℃/30分+250℃/1時間ベークを行った。
次いで前記HIMAL上に東京応化工業(株)社製ポジレジストOFPR800を用いてパターニングを行い、更にOFPRパターンをマスクとしてO2プラズマアッシングによりHIMAL層のパターニングを行い、最後にマスクとして使用したOFPRパターンを剥離することで図3に示す密着層を形成した。
次いで図4に示すがごとく、基板1上に東京応化工業(株)ポジレジストODURからなるインク流路パターンを形成した。(厚み12μm:図4参照)
更に、表1記載の実施例(1)の樹脂組成物を適当な溶剤に溶解させたもの(8)を基板1上ソルベントコートにて形成し、フォトリソグラフィーによって極小オリフィス9(直径8μm)を形成した。(図5参照)
次いで前記基板1をSi異方性エッチングによりエッチングし、インク供給口10を形成した。(図6参照)
次いでインク供給口上のSiN膜、及びODURからなるインク流路パターン7を除去し、さらにノズル構成部材である前記エポキシ樹脂8を完全に硬化させるために、200℃/1時間加熱を行い、インクジェットヘッドを得た。(図7参照)
次いで、作成したインクジェットヘッドで前述の高アルカリインクで50000枚のテストプリントを行なったところ、インク流路壁の構成部材に比較例の樹脂組成物を用いたインクジェットヘッドは吸インクによる体積膨潤でオリフィスの変形を生じ、若干の画像の乱れを生じた。これに対してインク流路壁の構成部材に実施例(1)及び(2)の樹脂組成物を用いたインクジェットヘッドは画像の乱れは生じなかった。以上のように本発明にかかる実施例においては、いずれもインク流路壁の吸インクによる体積膨潤が少なく長時間安定した吐出が可能である信頼性の高いインクジェットヘッドが得られることが分かる。
更に、表1記載の実施例(1)の樹脂組成物を適当な溶剤に溶解させたもの(8)を基板1上ソルベントコートにて形成し、フォトリソグラフィーによって極小オリフィス9(直径8μm)を形成した。(図5参照)
次いで前記基板1をSi異方性エッチングによりエッチングし、インク供給口10を形成した。(図6参照)
次いでインク供給口上のSiN膜、及びODURからなるインク流路パターン7を除去し、さらにノズル構成部材である前記エポキシ樹脂8を完全に硬化させるために、200℃/1時間加熱を行い、インクジェットヘッドを得た。(図7参照)
次いで、作成したインクジェットヘッドで前述の高アルカリインクで50000枚のテストプリントを行なったところ、インク流路壁の構成部材に比較例の樹脂組成物を用いたインクジェットヘッドは吸インクによる体積膨潤でオリフィスの変形を生じ、若干の画像の乱れを生じた。これに対してインク流路壁の構成部材に実施例(1)及び(2)の樹脂組成物を用いたインクジェットヘッドは画像の乱れは生じなかった。以上のように本発明にかかる実施例においては、いずれもインク流路壁の吸インクによる体積膨潤が少なく長時間安定した吐出が可能である信頼性の高いインクジェットヘッドが得られることが分かる。
1 Si基板
2 インク吐出圧力発生素子
3 インク供給口
4 SiN膜
5 Ta膜
6 密着層
7 インク流路パターン
8 ノズル構成部材
9 吐出口
10 インク供給口
2 インク吐出圧力発生素子
3 インク供給口
4 SiN膜
5 Ta膜
6 密着層
7 インク流路パターン
8 ノズル構成部材
9 吐出口
10 インク供給口
Claims (8)
- 前記シロキサン構造を有するエポキシ樹脂中のシリコン含有量が5wt%以上50wt%以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記シロキサン構造を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量が2000以下であることを特徴とする請求項1ないし2記載のインクジェットヘッド。
- インク吐出圧力発生素子が形成された基体上に溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成する工程と、前記溶解可能な樹脂層上にインク流路壁となる被覆樹脂層を形成する工程と、インク吐出圧力発生素子上方にインク吐出口を形成する工程と、前記溶解可能な樹脂層を溶出し、インク流路を形成する工程と、を有するインクジェットヘッドの製造方法において、前記インク流路壁となる被覆樹脂層が下記(I)に示すシロキサン構造と(II)に示す構造単位を有するエポキシ樹脂を少なくとも含む樹脂組成物からなることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記シロキサン構造を有するエポキシ樹脂中のシリコン含有量が5wt%以上50wt%以下であることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記シロキサン構造を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量が2000以下であることを特徴とする請求項4ないし5に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記樹脂組成物が光カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする請求項4ないし6記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記インク吐出口を形成する工程がフォトリソグラフィーを用いることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003401106A JP2005161594A (ja) | 2003-12-01 | 2003-12-01 | インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100823746B1 (ko) * | 2005-12-16 | 2008-04-21 | 캐논 가부시끼가이샤 | 수지 조성물, 수지 경화물 및 액체 토출 헤드 |
-
2003
- 2003-12-01 JP JP2003401106A patent/JP2005161594A/ja not_active Withdrawn
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KR100823746B1 (ko) * | 2005-12-16 | 2008-04-21 | 캐논 가부시끼가이샤 | 수지 조성물, 수지 경화물 및 액체 토출 헤드 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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