JP2005153648A - パワーアシスト型の移動体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 台車1には、モータ3が発生するトルク、人が与えたトルク、転がり摩擦トルク・下りトルクが印加される。質量推定部62は、加速度検出部61の加速度と電流検出部5の電機子電流を用いて台車1の質量を推定する。質量補償部64は、推定質量を等価的に変更するための電流に変換し、その電流を調整(可変)する。転がり摩擦係数推定部63は、推定質量と電機子電流を用いて路面の転がり摩擦係数を推定する。転がり摩擦トルク・下りトルク補償部65は、推定質量、推定転がり摩擦係数、路面の傾斜角を用いて転がり摩擦トルク・下りトルクの補償に必要なモータ電流を発生する。そのモータ電流は、アシスト率αにより調整(可変)できる。
【選択図】 図2
Description
例えば台車は、手押し用ハンドルを有し、車椅子は、乗者の手動操作用のハンドリムを備えている。台車や車椅子は、ハンドルやハンドリム等の操作部に連動して作動するトルクセンサ或いはポテンショメータを備え、そのトルクセンサ或いはポテンショメータによって操作力を検出している。(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)
一方従来のパワーアシスト型の台車等は、操作力に対応してモータ駆動トルクを発生しているが、負荷のトルクを考慮していないため、台車等の慣性モーメントを小さくし、台車の質量を見かけ上小さくすることができない。そのため台車等の積載物の質量の変化、或いは台車等の加速、減速に対して高速応答することができない。また台車の質量を見かけ上小さくすることもできない。そのため台車等の操作性が悪く、台車の見かけ上の質量を小さくできないため、台車等の衝突時の衝撃が大きく、運転の安全性にも問題がある。
さらに従来のパワーアシスト型の台車等は、ハンドルやハンドリム等の操作部に連動するトルクセンサやポテンショメータによって操作力を検出しているため、操作部を操作しない限り操作力を検出できない。したがって操作者が操作部を操作しない限りパワーアシストを開始しない。
請求項2に記載のパワーアシスト型の移動体は、モータの力と人の力で移動するパワーアシスト型の移動体において、移動体の加速度とモータの電機子電流を用いて移動体の等価慣性モーメントを推定し、その推定した等価慣性モーメントを用いて移動体の質量を推定する質量推定部、その推定した質量を等価的に変更するための電流に変換し、その電流を調整する質量補償部、前記推定した質量及び移動体の加速度が0のときの電機子電流を用いて路面の転がり摩擦係数を推定する転がり摩擦係数推定部、その推定した転がり摩擦係数、前記推定した質量、路面の傾斜角及びアシスト率を用いて転がり摩擦トルク・下りトルクを補償する電流を発生する転がり摩擦トルク・下りトルク補償部、電機子電流、質量補償部の電流及び転がり摩擦トルク・下りトルク補償部の電流により電機子電流を制御する電流制御部を備えていることを特徴とする。
請求項3に記載のパワーアシスト型の移動体は、モータの力と人の力で移動するパワーアシスト型の移動体において、移動体の加速度とモータの電機子電流を用いて移動体の等価慣性モーメントを推定し、その推定した等価慣性モーメントを用いて移動体の質量を推定する質量推定部、その推定した質量を等価的に変更するための電流に変換し、その電流を調整する質量補償部、前記推定した質量及び移動体の加速度が0のときの電機子電流を用いて路面の転がり摩擦係数を推定する転がり摩擦係数推定部、その推定した転がり摩擦係数、前記推定した質量、路面の傾斜角、アシスト率及び車輪の回転方向情報を用いて転がり摩擦トルク・下りトルクを補償する電流を発生する転がり摩擦トルク・下りトルク補償部、電機子電流、質量補償部の電流及び転がり摩擦トルク・下りトルク補償部の電流により電機子電流を制御する電流制御部を備えていることを特徴とする。
請求項4に記載のパワーアシスト型の移動体は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載のパワーアシスト型の移動体において、移動体は台車又は車椅子であることを特徴とする。
本願発明の台車等の移動体は、転がり摩擦トルク・下りトルク補償部において、下りトルクに対するアシスト率を調整(可変)して、例えば傾斜した路面において台車が下がろうとする力を残すことにより、台車等を押すとき実際に傾斜路面で台車を押す感覚で操作できるから、台車の操作性が向上する。
まず図1、図2によりパワーアシスト型の台車の概要を説明する。
図1(a)は、台車の正面図、図1(b)は、台車を傾斜角θの斜面に置いたときの側面図である。
図1において、1は台車、11はベースフレーム、121,122は車輪、13は積載物、2は減速機、3はモータである。
図2は、図1の台車の制御システムの概要図である。
台車1には、モータ3が発生した駆動トルクTM、人が与えたトルクTHが印加され、同時に路面の転がり摩擦による転がり摩擦トルクと傾斜路面に置かれた台車1が下がろうとする下りトルクTμθが印加される。台車1は、それらのトルクによって速度v(m/s)で移動する。モータ3は、電流制御部5によって制御された電機子電流(モータ電流)によって回転し、減速機2を介して回転力を台車1へ伝える。電機子電流は、電流センサ(電流検出器)4によって検出する。
質量補償部64は、推定質量に質量調整係数βを乗じて推定質量を調整する。そのため質量補償部64は、推定質量を等価的に変更するための電流に変換し、その変換した電流に質量調整係数βを乗じて電流の大きさを調整し、その調整した電流を電流制御部5へ供給する。したがって質量調整係数βを調整(可変)することにより台車1の総質量を見かけ上調整して小さくすることができる。
台車の走行路面が平らで、固く滑らかな場合には、下りトルクや転がり摩擦トルクは小さくなるから、転がり摩擦トルク・下りトルク補償部65は、設けなくてもよい。
図3は、機械的パラメータと電気的パラメータを用いて記載した台車のブロック図である。
図3において、20は、減速機を含む台車(モータ除く)の台車部、30は、モータ部である。50は、誤差増幅器、電力増幅器等からなる増幅器で図2の電流制御部を構成し、電流を電圧に変換する。61〜65は、図2と同じであり、66は、路面の傾斜角θを検出する傾斜角センサである。
αは転がり摩擦トルク・下りトルクを調整するアシスト率
βは質量調整係数
ωは車輪(タイヤ)の角速度(rad/s)
ηは減速機の伝達効率
μは車輪と路面の転がり摩擦係数
θは路面の傾斜角(rad)
Dは車輪の直径(m)
gは重力加速度=9.807(m/s2)
iaは電機子電流(A)
imcは転がり摩擦トルク・下りトルクを補償するモータ電流(電機子電流)(A)
JLは台車の質量を車軸から見た等価慣性モーメント(kgm2)、Jmはモータの慣性モーメント(kgm2)
Ksはモータ軸と車軸間のコンプライアンス、KTはモータのトルク定数(Nm/A)、KEはモータの逆起電力定数(Vs/rad)
Laは電機子のインダクタンス(H)
mは台車の全質量(kg)
Nは減速機の減速比(1:N)
Raは電機子の抵抗(Ω)
sはラプラス演算子
TMはモータが発生したモータトルク(Nm)、THは人が与えたトルク(Nm)、Tμθは転がり摩擦トルク・下りトルク(Nm)、TSは車軸トルク(Nm)
vは台車が走行する速度(m/s)
である。
なお以下各符号は、単位を省略して使用する。
図1の車輪の直径をD、車輪の総質量をm、台車の速度をv、路面の転がり摩擦係数をμ、路面の傾斜角をθとすると、台車に人の力が加わらないで一定走行しているときの車軸トルクTSと車輪の回転角速度ωは、(1)式と(2)式により求めることができる。
増幅器50は、電流検出器4、質量補償部64、転がり摩擦トルク・下りトルク補償部65からの電流を電圧に変換する。増幅器50の電圧は、ブロック34の電圧とともにブロック31に印加し、電機子電流(モータ電流)に変換する。ブロック32は、その電流をトルクに変換する。ブロック32のトルクは、ブロック25からのトルクとともにブロック33に印加し、回転角速度に変換する。ブロック33の回転角速度は、台車部20のブロック26によってN分の1に減速する。またブロック33の回転角速度は、ブロック34によって電圧に変換してブロック31へ印加する。なおモータが発生するトルク=KT×電機子電流の関係にあるから、トルク定数KTと逆起電力定数KEは、モータの電機子に任意の電流を流してモータのトルクを計測し、その電機子電流とモータのトルクから求めることができる。
ブロック26のモータの角速度とブロック21の車輪の角速度ωは、ブロック24,23によってモータトルクTMに変換する。モータトルクTMは、人が与えたトルクTH、転がり摩擦トルク・下りトルクTμθとともにブロック21へ印加する。
台車に操作者の押す力が加わると、台車に加速トルクが印加され車軸トルクTSは、(5)式となる。
(5)式は、1項の加速トルクと2項の転がり摩擦トルク・下りトルクの和となる。したがって台車が一定速度で走行しているときは、加速トルクは発生しないから、台車には、2項の転がり摩擦トルク・下りトルクを補償するトルクを供給すればよい。なお操作者が台車を止めようとすると、(5)式第1項は、減速トルクとなる。台車が衝突した場合も同様である。
転がり摩擦係数μの推定転がり摩擦係数(^付きμ)は、推定質量、路面の傾斜角θ、台車の加速度が0のときの電機子電流ia0を用い、(5)式の2項と(7)式を用いて(10)式により求めることができる。
ここで台車の進行方向が逆になり、車輪が逆回転した場合に対処するため、(11)式の計算をする際、回転速度検出部67からの回転方向情報に基づいて推定転がり摩擦係数(^付きμ)に(+),(−)の極性符号を付して、転がり摩擦トルクの補償に必要なモータ電流を計算している。なお推定転がり摩擦係数は、車輪の回転方向に関係なく一定であるが、転がり摩擦トルクの補償の計算上極性符号を付す。
電流検出器、速度計、加速度計、傾斜角センサの出力は、コンピュータPCのAD変換器ADCによってデジタル信号に変換し、CPUによって処理し、処理された信号は、DA変換器DACによってアナログ信号に変換して電流制御部へ供給する。なおアナログ信号に変換せずにデジタル信号のままで処理することも可能である。CPUは、デジタル入出力回路DIOを介して供給されるクロックによって動作する。
図5は、台車の総質量80〜170kgの範囲で推定した。なお実験に用いた台車の総質量は、積載量が0のとき80kgであるので、質量80kgから実験した。
台車のパラメータの値は、Ra=0.13Ω、La=0.5mH、KE=0.076Vs/rad、KT=0.076Nm/A、Jm=0.00045kgm2、D=0.12m、KS=0.0002rad/Nm、N=13、θ=5度である。
また図5(b)によると、推定した転がり摩擦係数は、実転がり摩擦係数(直線)と一致し、台車の総質量に関係なく一定であるから、転がり摩擦係数の推定が正しく行われていることがわかる。
さらに本実施の形態の台車は、転がりトルク・下りトルク補償部において、下りトルクに対するアシスト率を調整(可変)して、例えば傾斜した路面において台車が下がろうとする力を残すことにより、操作者は、実際に傾斜路面で台車を押すのと同じ感覚で操作できるから、台車の操作性が向上する。
11 ベースフレーム
121,122 車輪
13 積載物
2 減速機
20 台車部
3 モータ
30 モータ部
4 電流センサ(電流検出器)
5 電流制御部
50 増幅器
61 加速度検出部
62 質量推定部
63 転がり摩擦係数推定部
64 質量補償部
65 転がり摩擦トルク・下りトルク補償部
66 傾斜角センサ
67 回転速度検出部
Claims (4)
- モータの力と人の力で移動するパワーアシスト型の移動体において、移動体の加速度とモータの電機子電流を用いて移動体の等価慣性モーメントを推定し、その推定した等価慣性モーメントを用いて移動体の質量を推定する質量推定部、その推定した質量を等価的に変更するための電流に変換し、その電流を調整する質量補償部、電機子電流及び質量補償部の電流により電機子電流を制御する電流制御部を備えていることを特徴とするパワーアシスト型の移動体。
- モータの力と人の力で移動するパワーアシスト型の移動体において、移動体の加速度とモータの電機子電流を用いて移動体の等価慣性モーメントを推定し、その推定した等価慣性モーメントを用いて移動体の質量を推定する質量推定部、その推定した質量を等価的に変更するための電流に変換し、その電流を調整する質量補償部、前記推定した質量及び移動体の加速度が0のときの電機子電流を用いて路面の転がり摩擦係数を推定する転がり摩擦係数推定部、その推定した転がり摩擦係数、前記推定した質量、路面の傾斜角及びアシスト率を用いて転がり摩擦トルク・下りトルクを補償する電流を発生する転がり摩擦トルク・下りトルク補償部、電機子電流、質量補償部の電流及び転がり摩擦トルク・下りトルク補償部の電流により電機子電流を制御する電流制御部を備えていることを特徴とするパワーアシスト型の移動体。
- モータの力と人の力で移動するパワーアシスト型の移動体において、移動体の加速度とモータの電機子電流を用いて移動体の等価慣性モーメントを推定し、その推定した等価慣性モーメントを用いて移動体の質量を推定する質量推定部、その推定した質量を等価的に変更するための電流に変換し、その電流を調整する質量補償部、前記推定した質量及び移動体の加速度が0のときの電機子電流を用いて路面の転がり摩擦係数を推定する転がり摩擦係数推定部、その推定した転がり摩擦係数、前記推定した質量、路面の傾斜角、アシスト率及び車輪の回転方向情報を用いて転がり摩擦トルク・下りトルクを補償する電流を発生する転がり摩擦トルク・下りトルク補償部、電機子電流、質量補償部の電流及び転がり摩擦トルク・下りトルク補償部の電流により電機子電流を制御する電流制御部を備えていることを特徴とするパワーアシスト型の移動体。
- 請求項1、請求項2又は請求項3に記載のパワーアシスト型の移動体において、移動体は台車又は車椅子であることを特徴とするパワーアシスト型の移動体。
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