JP2005150229A - 光ファイバレーザ - Google Patents
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Abstract
【課題】 励起光の光強度が変化しても、発振されるレーザ光のピーク波長がシフトすることがなく、安定して一定の波長のレーザ光を発振することができる光ファイバレーザを提供する。
【解決手段】 エルビウム添加ガラスファイバ3を利得媒質とした、エルビウムイオンのレーザ上準位4I11/2からレーザ下準位4I13/2への遷移によって波長2.8μm帯のレーザ光を発振する光ファイバレーザにおいて、基底準位吸収が生じる第一の励起光と、レーザ下準位4I13/2からの励起準位吸収が生じる第二の励起光とを用いる。第一の励起光を980nm付近の波長帯域の光、第二の励起光を790nm付近の波長帯域の光とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 エルビウム添加ガラスファイバ3を利得媒質とした、エルビウムイオンのレーザ上準位4I11/2からレーザ下準位4I13/2への遷移によって波長2.8μm帯のレーザ光を発振する光ファイバレーザにおいて、基底準位吸収が生じる第一の励起光と、レーザ下準位4I13/2からの励起準位吸収が生じる第二の励起光とを用いる。第一の励起光を980nm付近の波長帯域の光、第二の励起光を790nm付近の波長帯域の光とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした光ファイバレーザに関し、特に波長2.8μm帯のレーザ光を発振する光ファイバレーザに関するものである。
医療用途を中心として、波長が水の吸収帯域である2.8μm〜2.9μmのレーザが利用されている。この2.8μm〜2.9μmのレーザとして、エルビウム添加ガラスファイバ(以下、「EDF」と言う場合がある。)を利得媒質とした光ファイバレーザが提案されている(非特許文献1参照。)。一般に、この光ファイバレーザでは、980nm帯の1つの波長の励起光を用いて波長2.8μm帯のレーザ光を発振している。
図5は、従来の光ファイバレーザから発振された2.8μm帯のレーザ光のピーク波長と励起光の光強度との関係を示すグラフである。
この従来の光ファイバレーザは、励起光源として980nm帯の1つの波長の励起光を用いたものである。励起光の光強度が高くなると、出射されるレーザ光のピーク波長が長波長側にシフトすることが分かる。このため、従来の光ファイバレーザでは、レーザ光の出力を所望の値とするために励起光の光強度を調整する際、励起光の光強度の変化と共にレーザ光のピーク波長が変化してしまう問題がある。例えば、光ファイバレーザを医療用途として使用した場合、レーザ光のピーク波長が変化すると、生体組織の切断、研削能力が低下するなどの問題が生じる。
この従来の光ファイバレーザは、励起光源として980nm帯の1つの波長の励起光を用いたものである。励起光の光強度が高くなると、出射されるレーザ光のピーク波長が長波長側にシフトすることが分かる。このため、従来の光ファイバレーザでは、レーザ光の出力を所望の値とするために励起光の光強度を調整する際、励起光の光強度の変化と共にレーザ光のピーク波長が変化してしまう問題がある。例えば、光ファイバレーザを医療用途として使用した場合、レーザ光のピーク波長が変化すると、生体組織の切断、研削能力が低下するなどの問題が生じる。
このような問題が生じる原因としては、以下のようなことが挙げられる。
一般に、レーザ発振時の各エネルギー準位は、図6のように一本の線で書き表されることが多い。しかしながら、実際には、それぞれの準位は図7に示すように、間隔の狭い幾つかの準位に分かれている。このようないくつかの準位をシュタルク準位という。
発振波長は、発光がどのシュタルク準位間のイオンの遷移によるものであるかによって変化する。励起光強度を大きくした場合、図6に示すように、基底準位4I15/2のイオンが励起されて、エルビウムのレーザ上準位である4I11/2と、エルビウムのレーザ下準位である4I13/2とを共に占めるイオン数が増える。
一般に、レーザ発振時の各エネルギー準位は、図6のように一本の線で書き表されることが多い。しかしながら、実際には、それぞれの準位は図7に示すように、間隔の狭い幾つかの準位に分かれている。このようないくつかの準位をシュタルク準位という。
発振波長は、発光がどのシュタルク準位間のイオンの遷移によるものであるかによって変化する。励起光強度を大きくした場合、図6に示すように、基底準位4I15/2のイオンが励起されて、エルビウムのレーザ上準位である4I11/2と、エルビウムのレーザ下準位である4I13/2とを共に占めるイオン数が増える。
各準位のシュタルク準位は低い方から順に占有されていくため、励起光強度が大きくなると、レーザ下準位は低い方から順に占有されていくため、レーザ下準位である4I13/2のシュタルク準位のうち、エネルギーレベルの低いシュタルク準位は発振に寄与できなくなり、占有数の少ないエネルギーレベルの高い準位が発振に寄与するようになる。その結果。レーザ上準位とのエネルギー間隔が狭くなり、発振波長が長波長側にシフトするという問題がある。
M.ポールナウ(M.Pollnau.)など、アプライド・フィジックス B(Applied Physics B)、1998年、第67巻、p.23−28
M.ポールナウ(M.Pollnau.)など、アプライド・フィジックス B(Applied Physics B)、1998年、第67巻、p.23−28
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、励起光の光強度が変化しても、発振されるレーザ光のピーク波長がシフトすることがなく、安定して一定の波長のレーザ光を発振することができる光ファイバレーザを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした、エルビウムイオンのレーザ上準位4I11/2からレーザ下準位4I13/2への遷移によって波長2.8μm帯のレーザ光を発振する光ファイバレーザであって、基底準位吸収が生じる第一の励起光と、前記レーザ下準位4I13/2からの励起準位吸収が生じる第二の励起光とを用いる光ファイバレーザを提供する。
本発明の光ファイバレーザは、励起の光強度が変化しても、発振されるレーザ光のピーク波長が長波長側にシフトすることなく、安定して一定の波長のレーザ光を効率良く得ることができる。
上記構成の光ファイバレーザは、前記第一の励起光が980nm付近の波長帯域の光、前記第二の励起光が790nm付近の波長帯域の光であることが好ましい。
本発明の光ファイバレーザにあっては、エルビウム添加ガラスファイバが、入射した第一の励起光、第二の励起光によって励起され、波長2.8μm帯のレーザ光を出射する。
上記構成の光ファイバレーザは、前記第一の励起光の波長が960nm〜1020nmであることが好ましい。
980nm付近の波長帯域の光の中でも、波長960nm〜1020nmの光は、効率良く高出力の波長2.8μm〜2.9μmのレーザ光を出射できる。
上記構成の光ファイバレーザは、前記第二の励起光の波長が780nm〜792nmであることが好ましい。
790nm付近の波長帯域の光の中でも、波長780nm〜812nmの光は、レーザ上準位(4I11/2)のエルビウムイオンにESAを生じさせずに、レーザ下準位(4I13/2)のエルビウムイオンにESAを生じさせることができる。
本発明の光ファイバレーザは、エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とし、エルビウムイオンのレーザ上準位4I11/2からレーザ下準位4I13/2への遷移によって波長2.8μm帯のレーザ光を発振する光ファイバレーザであって、基底準位吸収が生じる第一の励起光と、前記レーザ下準位4I13/2からの励起準位吸収が生じる第二の励起光とを用いることによって、励起の光強度が変化しても、発振されるレーザ光のピーク波長が長波長側にシフトすることなく、安定して一定の波長のレーザ光を効率良く得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、この実施形態における光ファイバレーザの一例を示す模式図である。
この光ファイバレーザは、第一の励起光源1と、第二の励起光源2と、利得媒質のエルビウム添加ガラスファイバ3と、コリメートレンズ4、5と、多層膜フィルタ6と、集光レンズ7と、リアミラー8と、アウトプットカプラ9と、長波域透過フィルタ(Long Wave Pass filter)10と、分光器および光パワーメータを備えた光測定器11とから概略構成されている。
図1は、この実施形態における光ファイバレーザの一例を示す模式図である。
この光ファイバレーザは、第一の励起光源1と、第二の励起光源2と、利得媒質のエルビウム添加ガラスファイバ3と、コリメートレンズ4、5と、多層膜フィルタ6と、集光レンズ7と、リアミラー8と、アウトプットカプラ9と、長波域透過フィルタ(Long Wave Pass filter)10と、分光器および光パワーメータを備えた光測定器11とから概略構成されている。
第一の励起光源1としては、基底準位吸収を生じさせて、基底状態(4I15/2)のエルビウムイオンをレーザ上準位(4I11/2)に励起し、波長2.8μm〜2.9μmのレーザ光23を発振することのできる波長帯域の光を出射できるものであればいかなるものでも用いられる。例えば、第一の励起光源1としては、980nm付近の波長帯域、好ましくは960nm〜1020nmの第一の励起光21を出射できる半導体レーザ、チタンサファイヤレーザ、あるいはこれらを備えたレーザモジュールなどが挙げられる。
第二の励起光源2としては、レーザ下準位(4I13/2)からの励起準位吸収を生じさせて、レーザ上準位(4I11/2)からの励起準位吸収がない波長帯域の光を出射できるものであればいかなるものでも用いられる。例えば、第二の励起光源2としては、790nm付近の波長帯域、好ましくは780nm〜792nmの第二の励起光22を出射できる半導体レーザ、チタンサファイヤレーザ、あるいはこれらを備えたレーザモジュールなどが挙げられる。
EDF3としては、フッ化物ガラスや石英ガラスなどにエルビウム(Er)が添加されたガラス材料からなり、利得媒質として利用できるものが挙げられる。また、このEDF3は、波長2.8μm帯のレーザ光23を発振できるようにエルビウムなどの構成元素の組成比が調整されている。
例えば、EDF3としては、エルビウムが添加されたフッ化物ガラスからなり、直径10μmのコアと、コアを包囲する断面形状が100μm×200μmの矩形の第一クラッドと、第一クラッドを包囲する第二クラッドとを有するダブルクラッドファイバなどが挙げられる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、コアの直径、クラッドの形状および大きさなどは任意に設定することができる。
ここで、ダブルクラッドファイバとは、コアの周囲に2重にクラッドが設けられた光ファイバのことである。このようなダブルクラッドファイバでは、この内部に入射した励起光が、コアを包囲する第一クラッド内を伝搬し、この内部で発振して得られたレーザ光が、コア内を伝搬するようになっている。
コリメートレンズ4としては、光学ガラスからなる平凸レンズなどが挙げられる。このコリメートレンズ4は、第一の励起光源1側にその平面が対向し、多層膜フィルタ6側にその凸面が対向するように配置されている。これにより、第一の励起光源1から出射された励起光をコリメートし、多層膜フィルタ6からの反射光を集光する。
コリメートレンズ5としては、光学ガラスからなる平凸レンズなどが挙げられる。このコリメートレンズ5は、第二の励起光源2側にその平面が対向し、多層膜フィルタ6側にその凸面が対向するように配置されている。これにより、第二の励起光源2から出射された励起光をコリメートし、多層膜フィルタ6からの反射光を集光する。
多層膜フィルタ6としては、例えば、屈折率の異なる、SiO2、Ta2O5などの薄膜をそれぞれの厚さ数10nm〜数100nm程度で、数層〜数100層程度積み重ねて作製された誘電体多層膜フィルタがなど挙げられる。この多層膜フィルタ6は、コリメートレンズ4を透過した第一の励起光21およびコリメートレンズ5を透過した第二の励起光22の伝搬路上に配置されており、第一の励起光21と第二の励起光22を合波できるようになっている。
集光レンズ7としては、光学ガラスからなる平凸レンズなどが挙げられる。この集光レンズ7は、多層膜フィルタ6によって合波された第一の励起光21および第二の励起光22の伝搬路上に配置されており、多層膜フィルタ6側にその凸面が対向し、EDF3の入射端面3a側にその平面が対向するように配置されている。これにより、多層膜フィルタ6によって合波された第一の励起光21および第二の励起光22を、EDF3の入射端面3aに設けられたリアミラー8に集光する。
リアミラー8としては、例えば、屈折率の異なる、SiO2、Ta2O5などの薄膜をそれぞれの厚さ数10nm〜数100nm程度で、数層〜数100層程度積み重ねて作製された誘電体多層膜フィルタがなど挙げられる。このリアミラー8は、EDF3の入射端面3aに、上記の誘電体多層膜などを蒸着する方法などによって設けられる。また、このリアミラー8は、第一の励起光21および第二の励起光22を透過し、EDF3で発振したレーザ光を反射するものである。さらに、リアミラー3としては、第一の励起光21および第二の励起光22の透過率が95%、レーザ光の反射率が99%以上のものが望ましく用いられる。
アウトプットカプラ9としては、例えば、端面のフレネル反射をアウトプットカプラとして機能させるものや、誘電体多層膜からなるものなど挙げられる。このアウトプットカプラ9は、EDF3の出射端面3bに、上記の誘電体多層膜などを蒸着する方法などによって設けられる。また、このアウトプットカプラ9は、EDF3から出射されたレーザ光23の一部を反射し、その他を透過するものである。さらに、アウトプットカプラ9としては、レーザ光の反射率が3〜90%のものが望ましく用いられる。
長波域透過フィルタ10としては、屈折率の異なる複数の酸化物が積層されてなるものなどが挙げられる。この長波域透過フィルタ10は、アウトプットカプラ9から出射されるレーザ光23の伝搬路上に配置されている。この長波域透過フィルタ10では、アウトプットカプラ9から出射された波長2.56μm以上の長波長域のレーザ光23のみが透過して、光測定器11側に出力される。
光測定器11としては、例えば、分光器、光パワーメータなどが挙げられる。この光測定器11は、長波域透過フィルタ10を透過したレーザ光23の伝搬路上に配置されている。また、光測定器11では、これに備えられた分光器によって長波域透過フィルタ10を透過したレーザ光23のスペクトルを測定し、光パワーメータによって長波域透過フィルタ10を透過したレーザ光23の強度を測定する。
このような光ファイバレーザでは、リアミラー8とアウトプットカプラ9とが反射鏡として機能し、かつ、これらがEDF3を介して対向配置されていることにより、EDF3、リアミラー8およびアウトプットカプラ9は共振器15として機能する。
この実施形態の光ファイバレーザにおいて、第一の励起光源1から980nm付近の波長帯域の第一の励起光21を出射し、これと同時に第二の励起光源2から790nm付近の波長帯域の第二の励起光22を出射すると、これら第一の励起光21、第二の励起光22は多層膜フィルタ6にて合波され、続いて集光レンズ7にて集光されて、リアミラー8が設けられたEDF3の入射端面3aに結合される。そして、EDF3は、入射した第一の励起光21、第二の励起光22によって励起され、波長2.8μm帯のレーザ光23をアウトプットカプラ9が設けられた出射端面3bから出射する。
次に、本発明の要旨となる第一の励起光21、第二の励起光22について光ファイバレーザの出射原理をもとに、以下に詳細に説明する。
第一の励起光源1から出射された980nm付近の波長帯域の第一の励起光21がEDF3に入射すると、基底準位吸収(以下、「GSA」とも言う。)が生じて基底状態(4I15/2)のエルビウムイオンがレーザ上準位(4I11/2)に励起される。そして、エルビウムイオンがレーザ上準位(4I11/2)からレーザ下準位(4I13/2)に遷移するときに波長2.8μm〜2.9μmのレーザ光23が出射される。
第一の励起光源1から出射された980nm付近の波長帯域の第一の励起光21がEDF3に入射すると、基底準位吸収(以下、「GSA」とも言う。)が生じて基底状態(4I15/2)のエルビウムイオンがレーザ上準位(4I11/2)に励起される。そして、エルビウムイオンがレーザ上準位(4I11/2)からレーザ下準位(4I13/2)に遷移するときに波長2.8μm〜2.9μmのレーザ光23が出射される。
980nm付近の波長帯域の第一の励起光21としては、EDF3を励起し波長2.8μm〜2.9μmのレーザ光23を出射できる波長の光である。このような光の中でも波長960nm〜1020nmの光が好ましく、この光により効率良く高出力の波長2.8μm〜2.9μmのレーザ光23を出射できる。
図7は、EDFのエルビウムイオンのエネルギー準位のうち、レーザ上準位(4I11/2)とレーザ下準位(4I13/2)を示す図である。周知のようにレーザ上準位(4I11/2)とレーザ下準位(4I13/2)は、複数の近接したシュタルク準位から構成されている。
従来のように励起光として980nm帯の1つの波長の励起光のみを用いた場合、励起光の光強度を高くすると、励起されるエルビウムイオンが増加し、励起準位のレーザ上準位(4I11/2)とレーザ下準位(4I13/2)を占めるエルビウムイオンが多くなる。エルビウムイオンは、各準位において、シュタルク準位のうち低いエネルギーレベルから占有していくため、低いエネルギーレベルの準位は占有された状態となる。
従来のように励起光として980nm帯の1つの波長の励起光のみを用いた場合、励起光の光強度を高くすると、励起されるエルビウムイオンが増加し、励起準位のレーザ上準位(4I11/2)とレーザ下準位(4I13/2)を占めるエルビウムイオンが多くなる。エルビウムイオンは、各準位において、シュタルク準位のうち低いエネルギーレベルから占有していくため、低いエネルギーレベルの準位は占有された状態となる。
このため、レーザ上準位(4I11/2)からレーザ下準位(4I13/2)へ遷移するエルビウムイオンは、レーザ下準位(4I13/2)のシュタルク準位のうち、高いエネルギーレベルに遷移することとなり、この高いエネルギーレベルの準位が発光に寄与することになる。これにより、エルビウムイオンが遷移するレーザ上準位(4I11/2)とレーザ下準位(4I13/2)とのエネルギー間隔が狭くなり、発光波長が長波長側にシフトすることになる。
ところで、エルビウムイオンの励起には、GSAによる基底状態(4I15/2)からの励起だけでなく、励起準位吸収(以下、「ESA」と言う。)によるレーザ上準位(4I11/2)またはレーザ下準位(4I13/2)からさらに上の準位などへの励起もある。
本発明では、980nm付近の波長帯域の第一の励起光21と共に、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22を用いることによって、レーザ下準位(4I13/2)のエルビウムイオンにESAを生じさせて、他のエネルギー準位へ励起する。これにより、レーザ下準位(4I13/2)を占めるエルビウムイオン数を低減し、レーザ下準位(4I13/2)のシュタルク準位のうち、低いエネルギーレベルの準位がレーザ光の発光に寄与できるようにする。
以上により、励起光の光強度が高い場合であっても、出射されるレーザ光9のピーク波長がシフトすることがなく、安定して一定の波長のレーザ光9が得られるようにする。
以上により、励起光の光強度が高い場合であっても、出射されるレーザ光9のピーク波長がシフトすることがなく、安定して一定の波長のレーザ光9が得られるようにする。
図2は、基底状態(4I15/2)のエルビウムイオンにおけるGSA、レーザ上準位(4I11/2)のエルビウムイオンにおけるESA、および、レーザ下準位(4I13/2)のエルビウムイオンにおけるESAを示すグラフである。ここで、図2は、各吸収量を励起光の波長でプロットしたものであり、Applied Physics B、1998年、67巻、p.23−28から引用したものである。
図2から、励起光の波長が780nm〜812nmのとき、レーザ下準位(4I13/2)のESAが生じることが分かる。また、励起光の波長が780nm〜792nmのとき、レーザ下準位(4I13/2)のESAが生じるが、レーザ上準位(4I11/2)のESAは生じないことが分かる。
本発明では、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22としては、レーザ下準位(4I13/2)のエルビウムイオンにESAを生じさせることができる波長の光(図2より波長780nm〜812nm)を用いる。このような光の中でも波長780nm〜792nmの光が好ましく、これによりレーザ上準位(4I11/2)のエルビウムイオンにESAを生じさせずに、レーザ下準位(4I13/2)のエルビウムイオンにESAを生じさせることができる。
このため、レーザ下準位(4I13/2)を占めるエルビウムイオン数を低減でき、レーザ下準位(4I13/2)のシュタルク準位のうち、低いエネルギーレベルの準位が発光に寄与できるようにすることができる。さらに、このとき波長2.8nm〜2.9μmのレーザ光23の発光に寄与するレーザ上準位(4I11/2)のエルビウムイオンにはESAが生じないため、レーザ上準位(4I11/2)のエルビウムイオン数が低減することがない。
以上により、980nm付近の波長帯域の第一の励起光21と、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22とを同時に用いることによって、第一の励起光21、第二の励起光22の光強度が高い場合であっても、EDF3から出射されるレーザ光23のピーク波長が長波長側にシフトすることがなく、安定して一定の波長のレーザ光23を効率良く得ることができる。
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第一の励起光源1、第二の励起光源2として、出射口に口出し用ファイバが設けられ、この口出し用ファイバから980nm付近の波長帯域の第一の励起光21と、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22がそれぞれ出射されるものを用いてもよい。この場合、口出し用ファイバを2入力1出力型WDMカプラに接続することによって、980nm付近の波長帯域の第一の励起光21と、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22を合波して1本の光ファイバから出射できるようにすることができる。
例えば、第一の励起光源1、第二の励起光源2として、出射口に口出し用ファイバが設けられ、この口出し用ファイバから980nm付近の波長帯域の第一の励起光21と、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22がそれぞれ出射されるものを用いてもよい。この場合、口出し用ファイバを2入力1出力型WDMカプラに接続することによって、980nm付近の波長帯域の第一の励起光21と、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22を合波して1本の光ファイバから出射できるようにすることができる。
また、励起光源としては、1つの光源で2つの波長の光を発光するものでもよい。
また、EDF3のコア半径、屈折率分布形状、エルビウムの濃度分布などは特に限定されず、例えば、EDF3は、マルチモードファイバや、その断面において第一クラッドの外周が正方形または円形であるものであってもよい。
また、EDF3のコア半径、屈折率分布形状、エルビウムの濃度分布などは特に限定されず、例えば、EDF3は、マルチモードファイバや、その断面において第一クラッドの外周が正方形または円形であるものであってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
図1に示したような光ファイバレーザを用意した。
EDF3として、エルビウムが添加されたフッ化物ガラスからなり、コア径が10μmであり、また第一クラッドの断面形状が100μm×200μmの長方形状のダブルクラッド構造を有するシングルモードファイバを用いた。
EDF3に入射する980nm付近の波長帯域の第一の励起光21の波長を980nm、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22の波長を790nmとした。
この光ファイバレーザから出射された波長2.8μm帯のレーザ光23のピーク波長と第一の励起光21、第二の励起光22の光強度との関係について調べた。結果を図3に示す。
図1に示したような光ファイバレーザを用意した。
EDF3として、エルビウムが添加されたフッ化物ガラスからなり、コア径が10μmであり、また第一クラッドの断面形状が100μm×200μmの長方形状のダブルクラッド構造を有するシングルモードファイバを用いた。
EDF3に入射する980nm付近の波長帯域の第一の励起光21の波長を980nm、790nm付近の波長帯域の第二の励起光22の波長を790nmとした。
この光ファイバレーザから出射された波長2.8μm帯のレーザ光23のピーク波長と第一の励起光21、第二の励起光22の光強度との関係について調べた。結果を図3に示す。
図3の結果から、第一の励起光21、第二の励起光22の光強度が1.5W以上と高い場合であっても、出射されるレーザ光23のピーク波長は約2760nmであり、ほぼ一定であることが分かった。このように、第一の励起光21、第二の励起光22の光強度が変化しても、出射されるレーザ光23のピーク波長が長波長側にシフトすることなく、安定して一定の波長のレーザ光23が得られることが確認された。
(比較例)
第二の励起光源2を、波長532nmの第二の励起光22を出射するものとした以外は、実施例と同様にして、光ファイバレーザから出射された波長2.8μm帯のレーザ光23のピーク波長と第一の励起光21、第二の励起光22の光強度との関係について調べた。結果を図4に示す。
第二の励起光源2を、波長532nmの第二の励起光22を出射するものとした以外は、実施例と同様にして、光ファイバレーザから出射された波長2.8μm帯のレーザ光23のピーク波長と第一の励起光21、第二の励起光22の光強度との関係について調べた。結果を図4に示す。
図4の結果から、第一の励起光21、第二の励起光22の光強度が1.5W以上と高い場合には、出射されるレーザ光23のピーク波長は長波長側にシフトすることが確認された。
これは、波長532nmの励起光では、GSAは起こるが、ESAは起こらないことが原因である。したがって、GSAのみが起こる波長の励起光を用いた二波長励起の光ファイバレーザでは、出射されたレーザ光23の波長が長波長側にシフトしていることから、GSAのみが起こる波長の励起光を、EDF3に二種類入射しても、発振されるレーザ光23の波長シフトの抑制効果がないことが分かる。
これは、波長532nmの励起光では、GSAは起こるが、ESAは起こらないことが原因である。したがって、GSAのみが起こる波長の励起光を用いた二波長励起の光ファイバレーザでは、出射されたレーザ光23の波長が長波長側にシフトしていることから、GSAのみが起こる波長の励起光を、EDF3に二種類入射しても、発振されるレーザ光23の波長シフトの抑制効果がないことが分かる。
1・・・第一の励起光源、2・・・第二の励起光源、3・・・エルビウム添加ガラスファイバ、4,5・・・コリメートレンズ、6・・・多層膜フィルタ、7・・・集光レンズ、8・・・リアミラー、9・・・アウトプットカプラ、10・・・長波域透過フィルタ、11・・・光測定器、15・・・共振器、21・・・第一の励起光、22・・・第二の励起光、23・・・レーザ光。
Claims (4)
- エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした、エルビウムイオンのレーザ上準位4I11/2からレーザ下準位4I13/2への遷移によって波長2.8μm帯のレーザ光を発振する光ファイバレーザであって、
基底準位吸収が生じる第一の励起光と、前記レーザ下準位4I13/2からの励起準位吸収が生じる第二の励起光とを用いることを特徴とする光ファイバレーザ。 - 前記第一の励起光が980nm付近の波長帯域の光、前記第二の励起光が790nm付近の波長帯域の光であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバレーザ。
- 前記第一の励起光の波長が960nm〜1020nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバレーザ。
- 前記第二の励起光の波長が780nm〜792nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバレーザ。
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-
2003
- 2003-11-12 JP JP2003382617A patent/JP2005150229A/ja not_active Withdrawn
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