JP2005144769A - 多機能性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】誘電体/金属/誘電体の構成は選択光透過性、透明導電性を有する構成として公知であるが、従来の方法では生産性良く透過率の高い積層体を得ることは出来なかった。本発明は、これらの問題を解決して、(1)高い可視光透過性と赤外線反射率を有する選択光透過性、(2)透明導電性、透明電磁波シールド性を有する多機能性積層体、及びその生産性の高い製造方法を提供しようとするものである。
【解決手段】基材の上に設けられたAgを主成分とするAg膜上に、少なくとも、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂を含む光干渉層を設けることにより、透明でかつ赤外線反射能、低抵抗である積層体を生産性良く得られる。更に粒子状透明誘電体として酸化チタンを選択すると、有機物分解、超親水性のいわゆる光触媒効果も同時に有する積層体を得ることができる。

Description

本発明は(1)高い可視光透過性と赤外線反射率を有する選択光透過性、(2)透明導電性、透明電磁波シールド性、(3)光触媒効果を有する積層体に関する。及びそれを効率よく生産する製造方法に関する。詳しくは、基材の上に設けられたAgを主成分とするAg膜上に、少なくとも屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と、樹脂を含む光干渉層を設けることにより得られる多機能性積層体に関する。このような特性を有する積層体は、選択光透過性を生かした建物窓、温室、冷蔵冷凍ショーケースなどの省エネルギー目的だけでなく、ディスプレイ、タッチパネル用の透明導電性フィルム、及び透明電磁波シールドなどの用途にも使用される。更にこの粒子状透明誘電体に酸化チタンを用いることにより、同時に光触媒効果を有する積層体にもなる。
金属は、電気伝導性、赤外線反射能、電磁波シールド性を有するが、可視光に不透明である。金属薄膜の膜厚を薄くするだけでは透過率向上にも限界があり、かつ電気伝導性、赤外線反射能、電磁波シールド性も低下する。そこで、Ag、Au、Al、Ni、Moなどの導電性の高い金属と、高屈折率の透明誘電体とを積層することにより、可視光透過率を向上させる試みが1984年Fanによって発表されて以来幅広く検討がなされてきた。特許公報としても、特開昭56−126152、特開昭64−30743、特開2000−117871、特開平5−100113、特開平5−98420などが提案されている。また、月刊ディスプレイ2003年8月号にも、ZnS、ITO、TiO2の高屈折率誘電体でAg、Auなどの金属を挟んだ構成が解説されており、これらの構成は公知である。
高屈折率の透明誘電体を製膜する方法には、スパッタリング法と蒸着法が通常用いられる。しかし、スパッタリング法は堆積速度が小さいため生産性が悪く、蒸着法は分布も含め膜厚の制御が困難であった。また特公昭64−30743号公報にも記載されているように、Ag膜上に透明誘電体としての酸化物層を形成する際、酸素を導入すると、これによってAg層が劣化してしまう場合が有る。この他に、透明誘電体として酸化チタンを有機チタネートのコーティングにより設ける方法が帝人(株)より提案されている。しかしこれは生産性の改善は行われるが、有機物が残留して完全な酸化チタン層にはならず、屈折率も低くなるという問題があった。また、特開平5−100113号公報ではプラズマ重合膜を誘電体層に用いられる提案がなされている。しかし、これは有機化合物の不飽和炭化水素、複素環化合物を原料としているため、得られた膜の屈折率が高くならず、透過率向上効果が不十分であった。
特開昭56−126152 特開昭64−30743 特開2000−117871 特開平5−100113 特開平5−98420 特開昭64−30743 J.C.C.Fan and F.J.Bachner,Appl.Opt.15(1976)1012 月刊ディスプレイ、Vol9、No8、p30(2003)
上述したように、誘電体/金属/誘電体の構成は公知であるが、従来の方法では生産性良く透過率の高い積層体を得ることは出来なかった。本発明は、これらの問題を解決して、(1)高い可視光透過性と赤外線反射率を有する選択光透過性、(2)透明導電性、透明電磁波シールド性を有する多機能性積層体及びその生産性の高い製造方法を提供する。
本発明者は、上述課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、基材の上に設けられたAgを主成分とするAg膜上に、少なくとも、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂を含む光干渉層を設けることにより、透明でかつ赤外線反射能、低抵抗である積層体を生産性良く得られる事を見つけ、本発明に到達した。更に粒子状透明誘電体として酸化チタンを選択すると、有機物分解、超親水性のいわゆる光触媒効果も同時に有する積層体が得られることを見出した。
本発明の多機能積層体は、(1)高い可視光透過性と赤外線反射率を有する選択光透過性、(2)透明導電性、透明電磁波シールド性を有し、かつその生産性の高い製造方法を提供する。さらに材料の選択によっては、同時に光触媒効果も有する。しかもその光触媒効果は、二つの点で重要な意味を有する。一つ目は光触媒効果の高性能化である。これは光触媒層の背面にAg膜が存在するため、透過した光が再反射されて、これも光触媒作用に寄与することである。二つ目は特性の保持効果である。例えば省エネルギー効果を期待して本発明の選択光透過性積層体を窓に貼り付けた場合、その表面が有機物で汚れたり、あるいは結露してしまうと、省エネルギー効果を低減させてしまう。本発明の多機能積層体では、単に室内を光触媒効果で有毒ガスを除去するというだけでなく、その除去効果が高くなり、更に本来の積層体の機能を保持し続けるという二重の効果がある。
次に、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明でいう基材としては、Agを主成分とするAg膜、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂を含む光干渉層が形成できるものであれば何でも良い。最終商品の要求特性に応じて適宜選択される。例えば可視光透過性を高くすることに重点をおく場合には、ガラス、透明高分子フィルムが好適に用いられる。透明高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂を製膜したものがあげられる。中でもポリエチレンテレフタレート樹脂を製膜したフイルムが、熱及び機械的強度特性、価格などの点で最も好適に用いられる。この基材の膜厚も目的に応じて適宜選択されるが、通常は5μmから数mmの範囲で用いられる。
本発明で用いられるAgを主成分とするAg膜とは、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、他の金属などが含まれていても良い。例えばCuを0.5〜10%添加することにより耐光性が、Au、Pt、Pdの添加により耐熱性が改善される。このAg膜は、スパッタリング、真空蒸着法などで形成することが出来る。この膜厚も用途、目的によって選択されるが、高い可視光透過性を要求される場合には、50〜200Å、更に好ましくは60〜150Åが好ましい。これより薄すぎると、赤外線反射率、導電性の低下、膜の耐久性不良などの問題が発生することが有る。一方、厚すぎると可視光透過性が低下する。電磁波シールド用途に用いる場合は、要求される抵抗値と可視光透過率のバランスから適宜決定される。
次に光干渉層について説明する。本発明における光干渉層とは、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂を含むことを特徴とする。つまり、蒸着法、スパッタリング法の物理的製膜法では、良好な特性を得ようとすると、製膜速度が遅くなる。本発明の大きな特徴のひとつは、粒子状透明誘電体と樹脂の混合物をコーティングにより形成することにあり、これによって生産性がすぐれた積層体が得られる。まず、粒子状透明誘電体について述べる。屈折率は波長によって異なるが、ここでの屈折率は波長550nmにおいて2.0以上ということを意味する。また、ここでの透明誘電体とは可視光に対して透明な酸化物、硫化物を意味するものでこれらを満足するものとして、例えば酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化エルビウム、酸化セリウム、酸化ビスマス、硫化亜鉛などがあげられる。これらは単独で用いても良いし、他の誘電体などと混合して用いても良い。また粒子状とは、球状、鱗片状、針状などその外観形状を問うものではなく、連続膜に対する意味での粒子状のものであるということが、本発明の大きな特徴である。膜形成によってその一部が、化学結合していても、あるいは凝集や見かけ上接触していても良い。粒子の表面は滑らかであっても、凹凸の多い複雑な形状であっても良い。またこの粒径は、目的によって適宜選択されるが、あまり大きすぎると表面での散乱が多くなってしまうので、1μ以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは30nm以下が好ましい。下限は製造上のコスト、作り易さの観点から1nm以上が好適に用いられる。この中で、酸化チタンは、紫外、可視光によって有機物分解、親水性などのいわゆる光触媒効果が有るので、より好ましい。とりわけ粒径が10nmから30nmであるアナターゼ型、ブルッカイト型の酸化チタンを用いると、光触媒効果が大きくなるのでより好ましい。この酸化チタン層の中には、可視光に対する応答性を良くするなどの目的で、Cr、Tiなど金属や他の酸化物が含まれていても良い。
本発明では、同じ光触媒の材料を用いた場合でも、その下にAg膜があることにより、光触媒効果が大きくなるという特徴を有する。これは酸化チタン層を通過した光がAg膜表面で反射し、この反射光も光触媒作用に寄与するものと考えられる。これも新規性のある発明効果であり、実施例で証明する。さらに、基材として透明高分子フィルムを用いた場合、光触媒層によって透明高分子フィルムも分解するため、通常は基材と光触媒層の間にもアンカー層を設ける必要がある。しかし本発明の積層体では、基材と光触媒層の間にAg膜が存在するため、これがアンカー層の役割も果たすというメリットがある。
次に、光干渉層の中の構成成分である樹脂について説明する。本発明における透明誘電体は粒子状であるので、それだけを例えば水、有機溶剤などに分散してコーティング、乾燥するだけでは膜強度が小さい。樹脂はこれらをつなぎとめるバインダーとしての役割を果たす。この樹脂としては、有機系ポリマー、金属アルコキシド及びその加水分解生成物、有機シリケート、シランカップリング材、シリコーン樹脂などの無機系ポリマーなど、その目的に応じて使い分けされる。本発明の光干渉層は屈折率が高い方が可視光透過率の点で好ましいので、その点では、有機系ポリマーより、反応生成物である酸化物の屈折率が高い、有機チタネート、有機ジルコネート等の金属アルコキシド及びその加水分解生成物が好ましい。また、粒子状透明誘電体として酸化チタンを用いた時は、その親水性を高めること、及びその樹脂自体の分解を防止するために、シリコンを主成分とする樹脂が好ましい。これには、有機シリケート及びその加水分解生成物やガラスレジン、シリコーン樹脂などがあげられる。これらのシリコンを主成分とする樹脂を用いた場合、その屈折率は1.5前後と小さいので、酸化チタン微粒子量に対する比率は小さいほうが好ましい。例えば、酸化チタン微粒子と樹脂を1:1の割合で使用すると、屈折率は2.0前後になってしまう。また、光干渉層の膜厚は可視光透過率を重視する場合には、光干渉の最適膜厚に設計する。一方、酸化チタンを用いてかつ光触媒効果を重要視するには厚くする方が良い。前者の場合、使用する材料、屈折率によって異なるが、1000Å以下、更に好ましくは200〜500Åの範囲が好適に用いられる。一方、後者で特に有機物分解効果を重要視する場合には、1μm以上の膜厚が好適に用いられる。
これらの粒子状透明誘電体と樹脂の混合物を、コーティングにより形成して積層体を得るのが、本発明の大きな特徴である。これらを混合するには、どのような方法を用いても良い。両者を粉末状にして混合した後、適当な溶媒で分散しても良いし、例えば有機チタネートやトリメトキシシランなどを加水分解させる時に、粒子状透明誘電体を添加、分散しても良い。また、これらをコーティングする際には、膜厚制御、コーティング安定性などの目的で、溶剤を加えても良い。この時用いられる溶剤としては、水や炭素数1〜4程度の低級アルコールが好適に用いられる。これらの中に、分散安定剤など他の添加剤が添加されていても良い。これらをコーティングする方法は、グラビアコーター、リバースロールコーター、エアドクタコーター、ブレードコーターなど通常のコーティング設備が使用される。また枚葉式でコーティングする場合は、バーコーターなども用いられる。コーティング条件は、積層体の目的、使用する基材、樹脂の種類及びその硬化状態などによって、適宜選択される。
本発明では、Ag膜上に光干渉層を設けるが、Ag膜と光干渉層の間に、Ag膜の熱的、化学的劣化防止や、Ag膜と光干渉層の接着性向上などの目的で、シリコン、クロム、チタン層のいずれか又はこれらの合金層が設けられていても良い。Ag膜を形成後、光干渉層を設けるまでに時間が経過した時、Ag膜の膜厚が薄い場合、環境によってはAg膜が劣化する場合がある。また、光干渉層のコーティング、乾燥などによる劣化も状況によっては発生することがある。これに対し、シリコン、クロム、チタン層は有効である。これらの層は形成後、一部もしくは殆どが酸化されていても良い。これらの層の膜厚が厚くなると、ここでの光吸収が生じ、Ag膜での赤外線反射率が低くなったり、積層体の可視光透過性が低下したりするので、薄い方が好ましい。実際には、耐環境性などの効果と合わせて決定されるが、好ましくは50Å以下、更に好ましくは30Å以下の膜厚が用いられる。これらは、真空蒸着法、スパッタリング法などの通常の方法で形成されるが、膜厚の均一性が高いスパッタリング法が好適に用いられる。
次に構成について説明する。本発明は、基材の上に設けられたAgを主成分とするAg膜上に、少なくとも、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂を含む光干渉層を設けたことを特徴とする多機能性積層体である。光干渉層は、基材とAg膜の間にも設けることにより、可視光透過率を更に向上することが出来る。また、基材とAg膜の間に、両者の密着性向上、Ag膜の耐久性向上の目的で、有機系ポリマー、シランカップリング材、金属、酸化物などのアンカーコート層を設けても良い。また、この多機能性積層体の最表面に、有機系ポリマー、酸化物などの保護層を必要に応じて設けても良い。光触媒効果を発揮させたい場合には、この保護層は無い方が好ましい。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
厚さ100μmのポリエステルフィルム上に、100ÅのAg膜をDCスパッタリング法によって設けた。そして、その上に酸化チタン(屈折率2.4、粒径10nm)と無機系樹脂からなる酸化チタン微粒子コーティング液(多木化学株式会社製、タイノックCZK-521)を用いて350Åの光干渉層を設け、本発明の積層体を得た。これは、原液を12倍にイソプロピルアルコール/水混合液(1:1)で希釈し、バーコーターを用いてコーティングし、160℃で乾燥した。
この積層体の550nmでの透過率を島津製作所製分光測定器(UV-1)、全光線透過率をスガ試験機株式会社製測定器(HGM-2B)で測定した。またこの光触媒効果については、(1)メチレンブルー水溶液の光分解、と(2)表面の水の濡れ性について評価した。(1)は濃度20ppmのメチレンブルー水溶液中に積層体を浸漬し、
ブラックライトによる水溶液の20時間後の脱色状態を、660nmでの吸光度(ABS)を測定することにより、定量評価した。また(2)はブラックライト1時間照射後の表面に対して、純水の接触角を測定することにより行った。また、表面抵抗の測定は、三菱化学(株)製Loresta-GP MCP-T600を用い、四端子法で行った。赤外線反射率は、波長10μmでの垂直反射率を測定することにより行った。これらの評価結果を、他の実施例、比較例と共に表1、表2に示した。
ポリエステルフィルムとAg膜の間にも、実施例1と同様の方法で350Åの光干渉層を設けた以外は、実施例1と同様にして、本発明の積層体を得た。
実施例1の光干渉層の代わりに、粒径20nmの酸化ジルコニウム粒子と有機シリケート混合液を用いて、同様の方法で350Åの光干渉層を設けた以外は実施例1と同様にして、本発明の積層体を得た。
実施例1の光干渉層の代わりに、粒径20nmの酸化チタン粒子とテトラブチルチタネート混合液を用いて、同様の方法で350Åの光干渉層を設けた以外は実施例1と同様にして、本発明の積層体を得た。
実施例1において、Ag膜と光干渉層の間に、スパッタリング法により15ÅのTi層を設けた以外は実施例1と同様にして、本発明の積層体を得た。実施例1の構成では、光干渉層を設けるまでの日数が長かったりするとAg膜が一部腐蝕する現象も見られたが、この構成では全くそのような現象は発生しなかった。
(比較例1)
実施例1で、光干渉層のないAg膜までの積層体を作成し、同様の評価を行った。
(比較例2)
実施例1で、Ag膜の無い光干渉層だけの積層体を作成し、同様の評価を行った。
(比較例3)
実施例1で、Ag膜の代わりに膜厚100ÅのCr膜を設け積層体を作成し、同様の評価を行った。
実施例、比較例の積層体の評価結果を、透過率、光触媒効果については表1、表面抵抗、赤外線反射率については、表2に示す。水の接触角は小さいほど濡れ性が良いことを意味する。また、△ABSは初期と20時間後のメチレンブルー水溶液の吸光度(ABS)変化を意味し、これが大きいほどメチレンブルーの分解が進んだことを意味する。
実施例1では、可視光透過率も高いうえ、接触角低下、吸光度変化の光触媒効果も大きい。また、表面抵抗も低く、赤外線反射率も高い。実施例2ではAg膜を光干渉層で挟んだ構成のため、透過率が一層向上し、80%以上になる。実施例3では粒子状透明誘電体が酸化ジルコニウムであるが、この場合も高い可視光透過率、低抵抗、高い赤外線反射率の特性を有する。しかし、この場合には濡れ性向上、有機物分解の光触媒効果は小さい。実施例4は、光干渉層を構成する樹脂を変更した例であるが、この場合にも、高い可視光透過率、優れた光触媒効果、低抵抗、高い赤外線反射率を示す。反応生成物が高屈折率である酸化チタンに近い組成になる材料を樹脂として用いているため、光干渉層が高屈折率になるためか、結果として実施例1より高い可視光透過率が得られた。実施例5では、実施例1と同様な優れた特性が得られるだけでなく、生産の収率向上、製品の安定性なども優れている。
比較例1の光干渉層が無い場合には、可視光透過率も低く、光触媒効果も無い。また、接触角測定後水滴を放置しておくと、その部分に腐食が観察された。比較例2のようにAg膜が無く、酸化チタンが用いられている場合には、可視光透過率は優れているが、表面抵抗は高く、赤外線反射率は低い。光触媒効果はある程度有るが、実施例1に比較すると小さい。また、比較例3のようにAgの代わりにCrを用いたものでは、可視光透過率も低くなり、光触媒効果も小さくなる。また、表面抵抗も高くなり、赤外線反射率も低くなる。
以上示したように、本発明の多機能性積層体は、(1)高い可視光透過性と赤外線反射率を有する選択光透過性、(2)透明導電性、透明電磁波シールド性を有する。更に、材料を選択することにより、(3)光触媒効果も有する多機能積層体である。また、光干渉層をコーティングにより形成するので、効率よく生産することができる。このような特性を有する積層体は、選択光透過性を生かした建物窓、温室、冷蔵冷凍ショーケースなどの省エネルギー目的だけでなく、ディスプレイ、タッチパネル用の透明導電性フィルム、及び透明電磁波シールドなどの用途にも使用される。更にこの粒子状透明誘電体に酸化チタンを用いることにより、同時に光触媒効果を有する積層体にもなる。

Claims (6)

  1. 基材の上に設けられたAgを主成分とするAg膜上に、少なくとも、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂を含む光干渉層を設けたことを特徴とする多機能性積層体。
  2. 該光干渉層の粒子状透明誘電体が、酸化チタンであることを特徴とする請求項第1項記載の多機能性積層体。
  3. 該光干渉層を構成する樹脂が、シリコンを主成分とする樹脂であることを特徴とする請求項1及び2項記載の多機能性積層体。
  4. Ag膜と光干渉層の間に、50Å以下の膜厚のシリコン、クロム、チタン層のいずれか又はこれらの合金層が設けられていることを特徴とする請求項1項から3項記載の多機能性積層体。
  5. Ag膜の膜厚が、60Åから150Åの範囲であることを特徴とする、請求項1項から4項記載の多機能性積層体。
  6. 光干渉層を、屈折率が2.0以上の粒子状透明誘電体と樹脂の混合物をコーティングにより形成したことを特徴とする請求項1項から5項記載の多機能性積層体の製造方法。
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