本発明の目的は、微細なピンを、容易に製造することができるようにしたピンの製造方法、このピンを金型のために用いる成形体の製造方法、このピンを用いる金型、ピンを金型として用いて製造された微細配線部品を提供することである。
本発明は、金属製棒状体の少なくとも一部分を、合成樹脂製保持体に保持し、
この棒状体は、径5〜30μm、径に対する長さのアスペクト比3〜10であり、
レーザ光を照射して、保持体を除去しつつ棒状体を加工することを特徴とするピンの製造方法である。
また本発明は、レーザ光は、フェムト秒のオーダだけ持続する間欠的なパルス状のフェムト秒レーザ光であることを特徴とする。
また本発明は、棒状体は直円柱状であり、
保持体は、
棒状体をその棒状体の軸線を含む仮想平面よりも外方にわたって外周面を部分的に被覆し、前記外周面の頂部は、被覆部から露出している被覆部を有することを特徴とする。
本発明に従えば、タングステンWなどの金属製である棒状体107の少なくとも一部分を、合成樹脂製保持体101に保持し、たとえばフェムト秒(略称FS)レーザ光などのレーザ光を照射して棒状体を希望する寸法形状に加工し、この棒状体をレーザ光で加工する際、そのレーザ光が保持体101に照射されることによって、保持体が、その棒状体の加工のために照射された保持体の領域で、保持体が部分的に除去される。棒状体のレーザ光が照射されない部分は、保持体に保持されたままであり、これによって保持体を把んで取扱うことができ、1または複数の棒状体のハンドリングが容易となる。
保持体に保持された棒状体を、溶剤に浸漬するなどして保持体を溶解し、これによって棒状体を容易に得ることができる。こうして径5〜30μm、たとえば10〜20μmφであって、径に対する長さのアスペクト比3〜10、たとえば5である棒状体を、容易に製造することができ、そのハンドリングが容易であり、生産性が向上される。
棒状体は、直円柱状であってもよく、レーザ光の照射によって加工されて、軸直角断面が矩形、たとえば正方形であって、その1辺がたとえば前述のように5〜30μmの軸部52を形成することができ、この軸部の断面形状は、四角形のほか、六角形、およびそのほかの多角形などの形状であってもよい。前記径というのは、ピンの軸線に垂直な平面内における外形の最大長さを言い、あるいはまた正方形断面の1辺の長さであってもよい。
前記レーザ光は、ピンの切り出しのために、パルス状の高エネルギを有するいわゆるFS(フェムト秒、Femto Second)レーザ光が、好ましく用いられる。このFSレーザ光は、フェムト秒(10−15sec.)のオーダだけ持続する間欠的なパルス状であり、これによってばりが生じることなく、細長いピンを、正確に切り出すことができ、好ましい。
本発明に従えば、棒状体は、保持体の被覆部123,124で、その棒状体の軸線を含む仮想平面よりも外方にわたって部分的に被覆し、その棒状体の外周面の頂部125は、被覆部から露出している。これによってレーザ光による棒状体の加工が容易であり、保持体のレーザ光による無駄な除去が不要となり、生産性が良好である。
こうして本発明では、たとえば直径20μmφまたは1辺が20μm角の正方形などの多角形の断面形状を有し、長さが50〜200μm、たとえば長さ100μmのピンを、熱履歴を発生することなく、また、ばりが出ないようにして、容易に製造することができる。その結果、従来から困難であった電子回路基板、電子部品、半導体装置などの高アスペクト比のスルーホールを形成することができ、あるいはまたそれらの微細配線部品の壁面に形成された細長い溝を形成して配線導体を埋込む配線パターンを形成することもまた可能になる。
また本発明は、保持体は、棒状体を前記被覆部に対応した受け溝を有する金属製スタンパを作成し、
受け溝に棒状体を載置し、
合成樹脂製板またはシートを、スタンパと棒状体との上に配置して、スタンパと前記板またはシートとが相互に近接する方向の押圧力を作用して、前記板またはシートを塑性変形加工して製造し、
塑性変形した前記板またはシートに、棒状体が保持されることを特徴とする。
また本発明は、スタンパは、
フォトリソグラフィ法によって、フォトレジスト用基板上に前記受け溝に対応する凸部を有するフォトレジスト層を形成し、
フォトレジスト層から成る前記凸部と、露出したフォトレジスト用基板との上に、金属メッキを施して、前記受け溝が形成された金属メッキ層を形成し、
この形成された金属メッキ層を、フォトレジスト用基板から剥離して製造することを特徴とする。
また本発明は、受け溝は、載置される棒状体の前記軸線に関して左右の各外周面を受ける外方に拡った受け面を有することを特徴とする。
棒状体を保持するワークホルダとしての機能を果たす保持体121は、フォトリソグラフィ法などによって得られる金属製スタンパ101を用いてトランスファ成形または照射成形などの手法で得ることができる。こうして得られた金属製スタンパの受け溝102に棒状体107を載置して合成樹脂製前記板またはシート117を載せて加圧してプレス加工して塑性変形させる。これによって棒状体は塑性変形した前記板またはシートから成る保持体に保持され、棒状体と保持体との相互の変位が防がれる。したがってレーザ光の照射による棒状体の加工を、正確に行うことができる。
金属製スタンパに形成される受け溝は、たとえばその軸直角断面が等脚台形であってもよい。こうしてたとえば直円柱状である棒状体を、一対の外方に拡った受け面103,104で安定して受けることができるようになる。このことによってもまた、加工精度を高めることができる。
また、本発明では、ワークホルダとしての保持体121ごとに加工材料を運ぶことができる。その結果、今までオイルや溶剤に加工品を浸漬して運搬していたのに対して、本発明では、そのまま加工材料をワークホルダごと運搬が可能となり、後工程に持っていくことができるので、従来のように、ピンセットで触ったり、その際の衝撃で発生する材料の変形等がなくなる。
また本発明は、レーザ光による棒状体の加工後、棒状体を、その長手方向の途中で、予め定める長さに切断し、
切断された棒状体を保持している保持体の合成樹脂を、溶剤によって溶解して、切断さ
れた棒状体を得ることを特徴とする。
また本発明は、前述の方法によって製造された前記ピンを含む金型の金型キャビティに、合成樹脂を供給して成形体を成形して得ることを特徴とする成形体の製造方法である。
また本発明は、前述の方法によって製造された前記ピンは、レーザ光によって加工された軸部に連なって外方に拡った基端部を有し、
一表面に、深さ方向に一様な断面形状を有する取付孔が形成され、他表面に、厚み方向外方になるにつれて断面形状が大きくなるように拡大孔が、前記取付孔の底に連通して形成される基材を含み、
前記基端部が、前記拡大孔内で、前記取付孔の前記底付近に係止し、
前記ピンの基端部と、板体の拡大孔の内面とは、金属メッキによって固定されることを特徴とする金型である。
また本発明は、前述の方法によって製造される成形体は、前記ピンによって成形された透孔または細長い溝を有し、
この透孔または細長い溝に配線導体が設けられてスルーホールまたは溝に埋め込まれた配線パターンが形成されることを特徴とする微細配線部品である。
本発明に従えば、透孔または細長い有底溝に金属メッキによって導電材料を堆積、充填してスルーホールを形成する際、透孔内で導電材料が堆積しやすく、透孔の長尺方向両端部に連なる表面では、導電材料のメッキ層の堆積厚さが、薄いという特性がある。またこのメッキ層は、微細な溝内では、厚く堆積して形成され、その溝に連なる外表面上では、メッキ層が薄いという特性がある。本発明では、これらの透孔および溝以外の表面では、金属メッキの際に生じるメッキ層が薄いという特性を利用し、エッチングによって、このような不要な金属メッキ層を、容易に除去することができ、微細配線部品の製造を容易にすることができる。
半導体チップの面積がたとえば1mm2以上のサイズを載せる微細配線部品のパッケージは、成形によって製作される。従来のCCD(電荷蓄積素子)パッケージやC−MOS(相補形金属酸化膜半導体)パッケージを作るのとほとんど同じ工法で、少なくともチップ面積1mm2の微細パッケージを成形できることが、可能となる。たとえば、パッケージMEMSなどにおいて、従来では後工程がパッケージMEMSのダウンサイジングに対応できなかったため、実装されるMEMSストラクチャは小さくすることができなかったが、本発明によって思いきったダウンサイジングが可能となる。
しかも成形体の構成が、配線となる溝やスルーホール、バンプなどが1回の成形で全て行われる。CCDやC−MOSのダウンサイジング、またはMEMSストラクチャをフリップチップ実装するパッケージでは、その成形体の構成が、配線となる溝やスルーホールが1回の成形で全て行われることが可能となり、従来の工法のように、レーザで孔を空けたり、セラミックパッケージのように1枚1枚を積み重ねて製作するといった工程が無くなる。
本発明に従えば、アスペクト比が比較的大きいスルーホールが設けられた成形品が実現される。したがってたとえば1〜5mm2程度の平面の面積を有する半導体チップによって実現される半導体素子、たとえば歪ゲージなどの圧力センサを搭載した半導体装置が、小形に実現されることができるとともに、その製造が容易であり、大量生産が容易になる。またこのようなスルーホールおよび配線導体が埋め込まれた溝には、大電流を流すことができるように断面形状を大きくすることも、容易に可能である。
本発明によれば、たとえば金型などの用途に好適な微細なピンを容易に製造することができ、生産性が高まる。また棒状体のレーザ光による加工時の芯出し、ハンドリングが、合成樹脂製保持体の把持、取扱いによって、容易になる。本発明によれば、微細なピンを保持する保持体は、成形用材料を用いてトランスファ成形または照射成形などの成形の手法で製造することができ、このことによっても生産性が向上される。
図1は、本発明の実施の一形態によって製造されるピン47の斜視図である。このピン47は、後述の図28に示される基材48とともに金型44を構成する。ピン47は基本的に、軸直角断面が正方形である軸部52と、この軸部52の軸線方向に連なる基端部49を有する。基端部49は、直円柱状である。軸部52の1辺の長さD1は、たとえば5〜20μm、または10〜20μmである。基端部49の直径D2は、20〜30μmφであり、たとえば30μmφであってもよい。ピン47の軸部52の軸線方向に沿う長さL1は、100μmである。基端部49の長さL2は、たとえば10〜50μmであってもよく、20〜30μmであってもよい。ピン47は、たとえばタングステンWなどの金属製である。図2〜図20を参照して、ピン47の製造方法を説明する。
図2は、スタンパ101の斜視図である。ピン47を製造する第1ステップでは、たとえばNiなどの金属から成るスタンパ101を作成して準備する。このスタンパ101には、1または複数(たとえばこの実施の形態では複数)の受け溝102が形成される。受け溝は、直線状に細長く延び、たとえばその長さeは3cm、隣接する受け溝102間のピッチfは2cmであってもよい。スタンパ101の全体の形状は、1辺6cmの正方形であって偏平な板状である。
図3は、図2のスタンパ101に形成された受け溝102の断面図である。受け溝102の軸線に直角な断面は、等脚台形であって、一対の外方(図3の上方)に拡ったV字状の受け面103,104、および受け面103,104の下端部に連なる底面105を有する。スタンパ101の表面106から底面105までの深さAは、たとえば15μm、受け面103,104の外方端間の間隔Bは30μmであり、表面106に対する受け面102の内方の傾斜角度Cは45度である。
図4は、ピン47の製造のために用いられる棒状体107を示す斜視図である。棒状体107は、前述のようにタングステンWから成り、直円柱状であり、直径D3は、基端部49の外形D2と同一であり(D2=D3)、たとえば本発明の実施の形態では、前述のように30μmであってもよい。この棒状体107の長さL3は、受け溝102の長さe以下の値であり(L3≦e)、たとえばL3=2.95〜2.98cmである。
図5は、スタンパ101の複数の各受け溝102に棒状体107を嵌めて載置した状態を示す斜視図である。第2ステップでは、図5に示されるように、棒状体107が受け溝2に載置される。
図6は、図5に示されるように棒状体107が受け溝102に載置された状態を示す拡大断面図である。棒状体107は、前述のように直円柱状であり、その受け溝102内で、各受け面103,104に参照符108,109で示されるように線接触して受けられる。この状態で棒状体107の下部は、底面105から図6の上方に隙間を有し、こうして棒状体107は受け溝102に安定して受けられるが、この底面105との隙間は、なくてもよい。参照符108,109で示される接触位置は、スタンパ101の平坦な表面106よりも受け溝102の内方(図6の下方)に存在し、したがってこの表面106に臨んで受け面103,104と棒状体107の外周面との間には、空間111,112が
形成されることになる。
棒状体107の軸線113は、スタンパ101の厚み方向(図6の上下方向)で、表面106とほぼ同一位置にあってもよく、空間111,112は、棒状体107の外周面の前記表面106と同一位置114,115よりも受け溝102の内方(図6の下方)になるにつれて、軸線113寄りに近づき、これによって外周面114と接触位置108との間には、表面106に沿ってΔEが存在することになり、このことは左右対称な位置115と接触位置109とに関しても同様である。底面105と表面106とは、平行である。
図7は、棒状体107を保持するためにフィルム117を塑性変形してプレス加工する状態を示す断面図である。このフィルムは、板またはシートと称することもでき、また本発明の考え方によれば、その厚みに対応して、板またはシートは、フィルムであってもよい。第3ステップでは、受け溝102に載置された棒状体107の図7における上方で、フィルム117を、この棒状体107およびスタンパ101の表面106よりも上方で、フィルム117を配置し、この状態で、スタンパ101を支持する支持部材118、およびフィルム117を支持するもう1つの支持部材119を、相互の近接方向にプレス加工装置によって近接変位する。こうしてスタンパ101とフィルム117とが相互に近接する方向の押圧力が作用され、フィルム117が塑性変形加工されて、保持体121(次の図8参照)が得られる。
図8は、保持体121が棒状体107を保持した状態を示す拡大断面図である。第4ステップでは、前述の図7に示されるフィルム117のプレス加工によって、フィルム117を構成する材料が、前述の空間111,112に入り込み、被覆部123,124が形成され、塑性変形したフィルム117から成る保持体121に棒状体107が保持されて固定され、上下逆にしても、また後述のFSレーザ光による加工時にも、保持体121から棒状体107が不所望に外れることは、ない。
フィルム117および保持体121を構成する合成樹脂は、本発明の実施の形態では、アペル(三井化学社製商品名)であって、環状オレフィンコポリマーが好ましく、透明性に優れ、高防湿性を有し、高耐熱性を有する。この合成樹脂材料は、ポリオレフィン樹脂と非晶性樹脂の性能を融合し、さらに耐熱性、流動性を自由に制御することができ、透光性であって透明であり、高防湿性、高耐熱性に優れたアペル(三井化学社製製品名)が好適する。この材料は、たとえばフィルム状またはシート状であり、フィルムであり、これによって平面度Rmax3μm以下であり、棒状体を保持する被覆部123,124の高さ
H1は、たとえば10μmのオーダで高精度で製造することができる。この材料は、前述のように防湿性に優れており、熱可塑性材料PC(ポリカーボネート)の吸水性0.2であるのに対して、本件材料は、0.01以下である。フェムト秒レーザ光を用いる環境は常温だが、運搬や金型組立て場所は夏場に湿度が高い場合があり、PCを用いて成形した場合、タングステンWが、樹脂の吸湿によりワークホルダから外れるおそれがある。上述の材料を用いることによって、この問題が解決される。この材料はまた光透過率が良好であり、透明度が優れており、これによって保持体121に埋没しているタングステンWもフェムト秒レーザで容易に探知でき、加工できることも特徴であるが、アペルの透過率はフェムト秒レーザの波長領域である700〜800nmでは90%以上なので、PCの最大88%よりも効率よく加工できる。保持体121のプレス加工時、温度150℃、押圧力10kg/cm2である。フィルム117は、0.4mm厚、1辺4cmの正方形の形状を有する板状体である。
図9は、保持体121に棒状体107が保持された状態を示す断面図である。第5ステップでは、図8に示される保持体121をスタンパ101から剥離して分離する。棒状体
107は、前述のフィルム117がプレス加工によって空間111,112に入り込んで形成された被覆部123,124によって保持される。これらの被覆部123,124は、棒状体107を、その棒状体107の軸線113を含むスタンパ101の表面106と同一の仮想平面よりも外方(図9の上方)にわたって棒状体107の外周面を部分的に被覆する。棒状体107の頂部125は、被覆部123,124から露出している。
図10は、保持体121に保持されている棒状体107を、レーザ光127の照射によって加工する状態を示す断面図である。第6ステップでは、このようにレーザ光127を棒状体107に照射して棒状体107の希望する長さにわたって軸部52(前述の図1参照)を形成するためにレーザ光127を照射し、このときレーザ光127によって保持体121が同時に除去される。レーザ光127は、フェムト秒レーザ光である。フェムト秒レーザ光の光軸128は、保持体121の表面106に垂直であり、この光軸128に関してレーザ光127の拡り角度θ1は、45度であり、したがってレーザ光127の円錐状の頂角は90度である。こうして棒状体107の軸部52の表面131が、その棒状体107の軸線113に沿って長さL1以上の長さにわたって、加工される。保持体121は、XYZ直交座標系テーブルにおける水平なXY平面内で移動する定盤ステージに着脱可能に取付けられ、鉛直なZ軸は、光軸128と平行である。保持体121が着脱可能に取付けられたテーブルをXY平面内で変位し、レーザ光127によって棒状体107を加工して、軸部52の表面131を形成する。
図11は、保持体121に保持された棒状体107をレーザ光127によって、前述の図10の次に加工する状態を示す断面図である。保持体121の下面が固定された定盤ステージを、XYZ直交座標系のXY平面に沿ってX軸方向に移動し、レーザ光127によって、軸部52の表面132を加工する。このとき保持体121は、レーザ光127の照射によって除去される。こうして第6ステップでは、保持体121に保持された棒状体107がレーザ光127の照射によって、軸部52のための直交する表面131,132が形成される。
図12は、図10および図11に示される前述の第6ステップによって形成された棒状体107を簡略化して示す斜視図である。レーザ光127によって平坦な表面131,132が形成され、レーザ光127が照射されていない部分135,136は、保持体121の被覆部123,124によって被覆されたままの状態となっている。
図13は、保持体121によって棒状体107が保持されている状態で、図10および図11の第6ステップの後、上下を反転させた状態を示す断面図である。第7ステップでは、前述の第6ステップの次に、保持体121を上下反転し、保持体121がレーザ光127のレーザ源に対向させる。第7ステップは、このような棒状体107を保持体121とともに上下反転する。
図14は、図13のように反転された棒状体107および保持体121に、前述と同様なレーザ光127を照射する状態を示す断面図である。第8ステップでは、反転された棒状体107にレーザ光127を照射し、これによって軸部52のための表面123が加工される。このレーザ光127は、表面133の加工時、保持体121をも除去する。
図15は、棒状体107の軸部52の表面134を形成する状態を示す断面図である。こうして図14および図15に示される第8ステップでは、棒状体107および保持体121が前述の図9〜図11の状態から第7ステップで反転された後、レーザ光127による相互に直交する表面133,134が棒状体107の軸線113に沿って前述の長さL1(図1、図12参照)以上の長さにわたって、形成される。
図16は、棒状体107が保持体121によって保持された状態でレーザ光127が照射されて前述の図6〜図8が実行され、軸直角断面が正方形である軸部52が形成された状態を示す断面図である。軸部52は、レーザ光127によって加工された4つの表面131,134を有し、その軸直角断面が正方形である。
図17は、第8ステップの実行後に得られた棒状体107の軸直角断面図である。軸部52の軸線は、棒状体107の軸線113に一致している。
図18は、前述の図16に示される棒状体107が保持体121に保持された状態を示す平面図である。各棒状体107の軸部52の形成のために前述のようにレーザ光127が照射されることによって、保持体121は、そのレーザ光127によって除去されて貫通孔137または凹所が形成される。
第9ステップでは、図18の参照符138,139で棒状体107とともに保持体211を、たとえばレーザ光127を用いて切断する。切断位置138は、軸部52の遊端面を形成する。切断位置139は、軸部52に連なる基端部49の遊端面を形成する。したがって基端部49は、保持体121の一部分で保持されたままである。これによって微細なピン47の取扱いがきわめて容易になる。
図19は、図18に示される第9ステップで得られたピン47が保持体121の一部分140によって保持された部材141から、ピン47を得るための第10ステップを示す断面図である。この第10ステップでは、容器142には、溶剤143が貯留され、この容器142内の溶剤143に、前記部材141が浸漬される。溶剤143は、部材140の保持体121の一部分140を構成する合成樹脂を溶解する。これによって複数の各ピン47を容易に得ることができる。溶剤143は、たとえば芳香族系溶剤であってもよく、たとえばアセトン、ガソリンなどであってもよい。その後、溶剤143内からピン47を取出して、完成品が得られる。
図20は、レーザ光127の強度の時間変化を示すオシロスコープによって得られた波形を示す写真である。フェムト秒のオーダでパルス状のレーザ光127が、間欠的に複数回発生される。このレーザ光127のパルスの回数を計数することによって、棒状体107、さらには保持体121の加工される量が決定される。各レーザ光127のパルス状持続期間は、たとえば図20のように150フェムト秒であってもよい。
こうして本発明の実施の形態では、プレス加工で成形したワークホルダというアプリケーションの保持体121に材料である棒状体107を挟み固定することで、レーザ加工中でも材料の撓み、曲り、捩れなどの不所望な変形、変位が矯正されることによって、最終的には加工時のピンの位置精度を気にせず、微細加工の部分を作業者がハンドリングしなくても、ホルダである前記一部分140を持てば、その中に微細ピン加工品47が完成しており、運搬が容易であることを可能とする。こうして得られるピン47は、後述のように金型の一部分として用いることができるが、本発明によって製造されるピンは、金型だけでなく、そのほかの広範囲の技術分野において、使用することができる。フィルム117および保持体121を構成する合成樹脂は、前述の環状オレフィンコポリマーだけでなく、そのほかの種類の合成樹脂、たとえば耐熱ポリ塩化ビニル、およびそのほかの種類の合成樹脂材料が用いられてもよい。棒状体107およびピン47を構成する金属材料は、タングステンWだけでなく、そのほかの種類の金属が用いられてもよい。
図21は、ピン47を用いて成形されたパッケージ本体22を含む圧力検出装置21の断面図である。パッケージ本体22には、配線導体から成るスルーホール23が形成され、このスルーホール23の図21における下端部にはバンプ24が形成され、こうしてパ
ッケージ25が形成される。このパッケージ25には、保持部材26に固定された圧力センサである半導体素子27が収納される。半導体素子27は、半導体チップから成り、その平面の面積は、たとえば1〜5mm2であってもよい。半導体素子27は、たとえば歪ゲージなどであってもよく、MEMSストラクチャと呼ばれるチップでもよい。パッケージ本体22には、基台28が固定され、この基台28には、筒体29が固定される。基台28および筒体29に同軸に形成された通路31には、半導体素子27が臨み、この通路31には、検出されるべき圧力が作用する。半導体素子27に関して通路31とは反対側でパッケージ本体22には、常温で大気圧の密閉空間32が形成され、半導体素子27の検出されるべき圧力による微小な変形が許容される。
図22は、パッケージ25ならびに保持部材26および半導体素子27を分解して示す断面図である。図23は、保持部材26および半導体素子27を示す斜視図である。半導体素子27が予め固定された保持部材26は、パッケージ本体22に形成された凹所35に嵌め込まれ、半導体素子27は取付面36上に配置され、これによって半導体素子27の接続端子33は、スルーホール23の図22における上端部に電気的に接続される接続端子37に、たとえば導電性ペーストなどを介して電気的に接続される。すなわち接続端子37には、半導体素子27の接続端子33との接続のために、たとえばビットペーストを予め塗布し、その後、接続するようにしてもよい。保持部材26には、前記通路31に連通する通路38が形成される。
図24は、パッケージ25の平面図である。スルーホール23の端部41は、配線パターン42を介して、前述の接続端子37に連なる。接続端子37を含む配線パターン42は、スルーホール23と同時に、金属メッキによって形成される。
図25は、パッケージ25の構成を簡略化して示す斜視図である。スルーホール23の端部に連なるバンプ24は、たとえば直径50μm、深さ10μmであってもよい。スルーホール23は、たとえば直径にD1=20μm、長さL1=100μmであって、直径D1に対する長さL1のアスペクト比A(=L1/D1)=5であってもよい。このスルーホール23の径は、5〜30μmであり、アスペクト比3〜10であってもよい。バンプ24は、BGA(Ball Grid Array)の機能を有する。スルーホール23は、6個設け
られる。スルーホール、バンプは、エキシマレーザ、UV(紫外線)−YAGレーザを用いず、微細加工されたニッケルピン47を用いて成形によって得られるたとえば直径20μm、アスペクト5のスルーホールや直径50μm深さ10μmのバンプを持つ。MEMSストラクチャをフリップチップ実装できるパッケージが容易に作れるようになる。その結果、MEMS全体のコスト中半分を占めるパッケージの工程が、少なくともワイヤボンダからフリップチップ実装に変わることで、大幅なコストダウンが期待できる。
スルーホールの前後はたとえば直径50μm、深さ10μmのバンプを持つパッケージができ、従来のようにパッケージを作った後に、配線をフォトリソグラフィ法等で作る必要がなくなる。溝の深さを大きくとれるスタンパを用い、アスペクト2の溝深さを持たせることで、配線抵抗である特性インピーダンスを下げ、高周波対応の配線を持ったパッケージが実現される。先行技術のパッケージはONOFF動作程度にしか使われなかったパッケージの配線信号が、高周波対応になったことで、チップテスター用途で開発が急がれているマイクロマシンリレーなどの高周波対応が必要とされるMEMSストラクチャ用のパッケージとしても使われることが可能となる。
図26は、パッケージ25と保持部材26と半導体素子27との構成を示す断面図である。前述のように保持部材26に固定された半導体素子27は、パッケージ25の取付面37に、保持部材26の凹所35への嵌め込みによって、固定されて搭載される。
図27は、図26に示されるパッケージ25に、筒体29の基端部が固定された基台8を固定する工程を示す断面図である。基台28の図27における下面は、パッケージ本体22の上端部に固定され、保持部材26は基台28にも固定される。こうして半導体素子27は、通路31,38に臨む。本発明の実施の他の形態では、半導体素子27が図27の保持部材26の下面に固定され、この保持部材26の上面が基台28の下面に固定され、こうして保持部材26、半導体素子27、基台28および筒体29が一体的に組立てられ、この組立てられた基台28の下面が、パッケージ本体22の上端部に固定され、これによって保持部材26および半導体素子27が凹所35に嵌め込まれて、構成されるようにしてもよい。
図28は、パッケージ用金型44を示す断面図である。この金型44は、パッケージ本体22にスルーホール23のための透孔45(後述の図40および図41参照)とバンプ24のための凹所46を形成するために用いられる。金型44は基本的に、ピン47と基材48とを有し、このピン47の基端部49は、基材48に立設して固定される。基材48は、平坦面50と、この平坦面50から隆起部51が隆起して形成される。隆起部51は、短い円柱状である。この隆起部51には、後述の中空直円柱状の取付孔53と、この取付孔53の底に連通する中空円錐台状の拡大孔54とが同軸に形成される。ピン47の基端部49は、拡大孔54の小径側の端部内で、したがって取付孔53の底付近に配置され、金属メッキによるメッキ金属55によって固定される。ピン47および基材48、さらにはメッキ金属55は、たとえばNiなどの金属から成る。
図29〜図38を参照して、金型44の製造方法を説明する。金型44の製造のために、先ず第1のステップでは、前述のピン47が準備される。
図29は、第2ステップにおいて準備される基材48の斜視図である。基材48は、前述のように平坦面50から隆起した隆起部51を有する。
図30は、図29に示される基材48の製造方法を示す断面図である。まず図30(1)において、フォトマスク112を準備し、図30(2)において平面度および平行度のよいガラス基板110の上にフォトレジスト111を塗布した後、微細な隆起部51のパターンが描写されたフォトマスク112をガラス基板110の上方に配置して、UV(紫外線)ランプ113を用いて露光する。そうすると、フォトレジスト111の紫外線照射部分111aが硬化して、パターンが焼き付けられる。
次にフォトレジスト111を現像すると、図30(3)に示すように、紫外線照射部分111aが除去され、パターンに対応した部分が残る。次に図30(4)において、現像された表面にスパッタまたは無電解メッキ等によってNiメッキ膜114を形成し、図30(5)のように厚くし、その後、次に図30(6)に示すように、Niメッキ膜114をガラス基板110から剥離し、残存したフォトレジスト111を除去することで、パターンに応じた凸凹形状を有するNiメッキ膜114が得られ、このNiメッキ膜114を金型取付用に外観加工を施すと、基材48となるスタンパが得られる。
図31は、図30に示される製造方法によって得られたスタンパを用い、その隆起部51に取付孔53および拡大孔54を形成する第3ステップを示す簡略化した斜視図である。前述の図30に示される製造方法によって得られた図29の基材48に、レーザ源68からFSレーザ光69を照射し、前述の取付孔53および拡大孔54を形成する。このレーザ光69は、前述のレーザ光127と同様であってもよい。この第3ステップはさらに詳細に、図32〜図34に示される。
図32は、前述の図29に示される基材48の隆起部51付近の拡大断面図である。図
32に示されるように、FSレーザ光69によって取付孔53を形成する。この取付孔53は、ピン47の径D1とほぼ等しいか、わずかに大きい内径を有し、基端部49が挿通することができない内径D1に選ばれる。取付孔53は、底71を有する。
図33は、図32に示される取付孔53が形成された基材48を、その隆起部51とは反対側の面から大径孔72と小径孔73とを形成する構成を説明するための断面図である。これらの大径孔72と小径孔73とは、取付孔53と同一の直線上に各軸線をそれぞれ有する。大径孔72および小径孔73は、FSレーザ光69によって中空円柱状に形成される。
図34は、図33によって形成された大径孔72および小径孔73を、FSレーザ光69によってさらに加工し、中空円錐台状の拡大孔54を形成した状態を示す断面図である。FSレーザ光69の焦点距離のずれによって大径孔72と小径孔73とを含む拡大孔54が形成される。この拡大孔54の小径の先端部は、取付孔53の底71に連なり、こうして取付孔53と拡大孔54とは、共通な一直線上に軸線を有して連なる。取付孔53および拡大孔54の各内面には、銅などの金属スパッタによって、金属メッキのための下地処理を行う。
図35は、ピン47の先端部を拡大孔54から挿入してそのピン47の基端部49を、拡大孔54内で取付孔53の底71付近に配置する第4ステップを示す断面図である。ピン47の軸線は、隆起部51の表面に垂直に保持される。
図36は、ピン47の基端部49が、拡大孔54内で、取付孔53の底71付近に係止した第4ステップの状態で、この基端部49と拡大孔54の内面とを、金属メッキを施してメッキ金属75で固定する第5ステップを示す断面図である。
下地処理された取付孔53および拡大孔54の各内面とともに、ピン47の基端部49には、無電解銅メッキを施し、その後、電解メッキを行って、メッキ金属75である銅を、これらの取付孔53および拡大孔54内に充填し、ピン47を隆起部51に固定する。
図37は、前述の第5ステップの金属メッキによってピン47が隆起部51に立設されて固定された状態を示す断面図である。メッキ金属75は、拡大孔54から図37の下方に部分的に突出している。基材48の表面にも薄い金属メッキ層76,77が形成される。
図38は、図37に示されるメッキ金属75の余分な部分と薄いメッキ層76,77を除去する第6ステップを示す断面図である。薄いメッキ層76,77は、たとえば塩化第2鉄などを用いたエッチングによって容易に除去することができる。またメッキ金属75の拡大孔54から部分的に突出した余分なメッキ金属は、たとえば研磨などによって除去することができる。こうして金型44が完成する。
図39〜図41は、前述の図38において完成されたパッケージ用金型44を用いてパッケージ本体22をトランスファ成形する方法を説明する。図39は、金型44を含むトランスファ成形用の全体の金型装置81を示す断面図である。パッケージ用金型44は、たとえばNiなどから成る補強部材82によって基材が保持される。パッケージ用金型44とともに用いられるもう1つの金型83は、前述の金型44とともに金型キャビティ84を形成する。
金型83は、パッケージ本体22の取付面36を形成する金型面86および密閉空間32のための金型凸部87などを有する。金型面86には、図24に示される配線パターン
42を形成するための微細な凸部87が固定される。スタンパ88は、前述の図30と同様にして、接続端子37を備える配線パターン42に対応した凸部がフォトリソグラフィおよび金属メッキの手法で製造されてもよい。
図40は、図39に示される金型装置81を用いてトランスファ成形する状態を示す断面図である。金型キャビティ84内には、熱硬化性合成樹脂が成形材料として供給される。熱硬化性合成樹脂に代えて、熱可塑性合成樹脂であってもよい。金型キャビティ84に充填される成形材料は、たとえば三井化学製商品名エポックスRであり、150℃、成形時間4分で成形処理することができる。
図41は、成形後のパッケージ本体22を示す断面図である。パッケージ本体22には、1回のトランスファ成形によって、スルーホール23のための透孔45、バンプ24のための凹所46および接続端子37を含む配線パターン42がメッキ金属の埋込みによって形成されるためのスタンパ88を用いた微細な配線パターン用溝が、一挙に形成される。配線パターン42の溝の幅は、たとえば10μmであり、深く形成してアスペクト比をたとえば2またはそれ以上に形成することができる。これによって配線抵抗である特性インピーダンスを小さくし、高周波対応配線を形成することができる。こうしてパッケージ本体22に微細配線パターンを形成した成形品であるパッケージを、大量に製造することができる。配線パターン42の幅は、30μm未満である。
本発明では、配線パターン42のための溝は、成形によってパッケージ本体22に形成されるので、たとえばYAGレーザによる加工を施す必要がなく、配線パターン用溝の形成が容易であり、またスルーホール23のための透孔45とスタンパ88による配線パターン42のための溝との誤差によるずれは、前述の単一回の成形でパッケージ本体22を製造するので、小さくすることができ、高精度のパッケージ本体22を製造することができ、スルーホール23と配線パターン42との接続部分の交差は、問題にならない。溝には、微細な配線パターンと凹凸が逆のパターンを備えた、スタンパを用いて成形される絶縁基板の表面にたとえば10μm幅の微細な配線パターンを形成させる。スルーホールの接続配線を微細化できることが可能となる。スルーホールからの直接配線として、他の基板への微細配線接続が可能となる。
スタンパ88による配線パターン42は、微細配線幅であっても、アスペクト比を大きくすることができ、こうしてスルーホール23および配線パターン42に、大電流を流すことが可能である。
スタンパ88に関して、微細な配線パターンと凹凸が逆のパターンを備えたスタンパを用いて、絶縁基板の少なくとも表面にある樹脂に前記微細な配線パターンを転写させることにより、溝幅が30μm以下の溝を含む微細な配線パターンを表面に形成する。この工法を用いることで、パッケージ表面に微細パターンを持った成形品が容易に大量に製作することが可能となる。
スタンパ表面上に加工したピン47を取付け、この上に成形することで、成形品にスルーホールを構築することが可能となり、従来からレーザ加工に頼らざらなかったスルーホールが、容易に形成可能となる。
配線パターン42の溝を深く形成し、微細配線幅でもアスペクトが高く作れる工法を用いており、パッケージ表面の配線パターンに大電流を流すことが可能であり、断線しにくい。本件発明者の実験によれば、高周波測定では、幅10μmアスペクト2以上の1cmの配線ポテンシャルにおいて、21GHzの高周波を流した結果、シュミレーション値12dBに対し、8dBと4dB近いロス低減を実証している。
図42〜図45は、前述の図41に示されるパッケージ本体22に金属メッキを施す工程を説明する。図42は、パッケージ本体22の透孔45を含む全ての表面に無電解銅メッキ処理を施した状態を示す断面図である。無電解銅メッキ処理によって、パッケージ本体22の全表面に薄い金属メッキ層91が形成される。
図43は、図42に示される金属メッキ層91を有するパッケージ本体22の前記金属メッキ層91を選択的に除去した状態を示す断面図である。パッケージ本体22の透孔45およびバンプに対応した凹所46および配線パターン42における金属メッキ層91を残し、そのほかの必要のない部分を、エッチングなどの手法で除去する。
図44は、スルーホール23、バンプ24および配線パターン42がパッケージ本体22に形成されたパッケージ25を示す断面図である。前述の図43に示される選択的な金属メッキ層91を有するパッケージ本体22の電解メッキを施す。こうしてスルーホール23のための透孔45、バンプ44のための凹所46および配線パターン42のための溝が、銅であるメッキ金属によって充填される。
図45は、図44における金型25の取付面36付近の拡大断面図である。配線パターン用溝93内には、メッキ金属が充填されて、接続端子37を含む配線パターン42がスルーホール23と電気的に接続された状態でスルーホール23の形成と同時に、形成される。